あかんわぁ…一ヶ月前から投稿する気はいたけど、久し振りにやろうと思ったら自動保存してたのが消えて、眠気殺してたのにやってたのが消えてしまったことに大きく挫折してしまった…なんで自動保存消えるの?これ自動保存じゃなくて自動消去じゃん…ダメだよ…。
と言うわけでチビチビやってたら出来ました。皆さま大変待たせて申し訳ありません。もうこの章も10話まで行くか行かないかレベルであと少しです。頑張ります。
これは八斎會に突入しリューキュウ事務所が活瓶力也と対峙してから40分前の事。
玄関前で難なく取り押さえることに成功し、警察の協力もあってか移動牢式に収める事ができた。既に敵は気絶してるためか、抵抗する様子もなく微動だに動かない。
「少し遅れましたが私たちも行きましょう!活瓶力也が気絶してる今、気を失ってる内に隔離させて下さい!」
リューキュウの適切な指示と対応のお陰か、すぐ様に取り掛かる敵取引係の警察たち。
活力吸収は相手に触れてる事と、吸息をする事で始めて活力を吸い取り巨大化する事ができる。正面突破を目論むヒーローと忍達の前にしては中々に相性が良かったか…総司の鎖鎌を用いた武器の前では、触れる事が出来ないため、彼女が先陣を切って活瓶をいち早く抑えたのはかなりデカイ。
「然しインパクトの割にはあっけなかったわね」
リューキュウが指示を出してる中、ポツリと率直に愚痴を零す蛙吹。その横で「フッ…」と鼻で笑うは総司。
「所詮は三下……然しながら我々に臆せずの命を賭して奮闘しようとしたその心意気は認めてやろう…まぁ、私の美貌にトチ狂い性欲を剥き出してしまうのは些か仕方ない…目を瞑ってやろう」
長髪をふわりと華麗に払いながら、余裕と言わんばかりにプライド高い姿勢を振る舞う。
「個性凄く厄介なのに直ぐ制圧できた…やっぱり前にニュースで取り上げられてた巨大化敵の鎮圧の事件の成果が生かされてるんやね!」
「中も荒れてるみたいだよ、急いだ方が良いよ!」
華麗と相性良好のチームプレイに胸が踊るお茶子に、戦の混声に溢れかえってる門の方へ指を向ける波動ねじれは、先へ進むことを促す。この先彼女達は何が待ち受けてるか分からない…だからこそ、仲間のピンチに一秒でも早く駆けつけなければならない。
況してや本人の希望とはいえ、インターンに死人が出るなんてそれこそ最悪だ。
「ケロ…ッ」
そんな時にふと蛙吹が弱気な声を出してはガタリと倒れこむ。
「梅雨ちゃん!?」
蛙吹の急な変化に、お茶子が駆けつけに来る束の間──
「なん…だ…?急に体に力が…入らん……」
同じく、先程まで強者の余裕と振る舞い麗しくしてた総司も、鎖鎌を持つのもやっとで、膝を地面に下ろしてしまってる。
「この現象は…そんな、まさか!?!」
蛙吹や総司だけではない、周りの警察官達や敵受取係も体調が悪くなり、バタバタと力無く倒れてしまう。幸い命に別状がある訳でもないが、この不可解な現象が何たるか、リューキュウは直ぐに気付く。
「活瓶力也!?いや…彼は気絶してる、その上触れてなければ個性は発動しない…」
まるで活力が抜き取られたかのように、次から次へと感染するように倒れてしまうリューキュウ事務所と警察達。
「イテッ…なんだこりゃ」
気絶してた活瓶がピクリと反応し、気絶から眼を覚ます。移動牢式がギチギチと破壊するような嫌な音を立て、それと同時に力也の体が少し大きくなってる様にも見える。
「そんな!?触れてないのに何故?!」
誤情報を捕まされた?
嫌、そんなはずは無い。確かに戸籍登録に個性の詳細は既に登録されているし、戦闘の時も触れずに周りの人間の活力を吸収などしていなかった。仮に出来てるのなら出し惜しみせず使ってるだろうに…とてと力を隠してただなんて見えやしない。
「おぉー…来てますわぁ〜来てますわぁ〜…入中から貰ったトリガーが今になって漸く効いてきたァ〜…今じゃ呼吸するだけで、吸ってるぞ!活力を!!」
バキィン!!と割れるような音が際立て、体の大きさが止まること知らず大きくなっていく。
「凄く元気になってきたあァァ──!!!」
どうやら、まだまだ戦いは終わらせてくれないらしい。高ぶる衝動にウキウキと駆られながら、渾身の拳を振りかざし、街を荒らす。
今じゃ一撃だけで一家丸々殴り潰し、此方側が弱体化してる上に向こうがパワーアップでは一気に勝機が薄くなる。これぞ形勢逆転とやらなのだろう。
こうしてそれが過ぎて役40分後──まだ奮闘は終わらず、活力瓶は凡ゆる暴虐の限りを尽くしている。幸いヒーロー学生と警察、総司と言った学生組は無事だそうで、波動ねじれは一人で何とか注目を引き立てている。
リューキュウまで活力を奪われ、何とか踏ん張るだけで精一杯だ。
「あー…めんどくせぇ…」
「にゃんにゃん…にゃん…」
「酒飲みテー…」
「…お餅たべたい…」
やる気のない脱力感ある声だけが投げられ、怠惰的に寝転んだり尻餅ついたりしてしまう始末だ。リューキュウは皆を守るように背中の翼を広げて盾になっている。幸い此方側に危害を加えず波動ねじれに注目が傾いてるのが救いだが…彼女はどの位持つだろうか…。
「ねじれちゃん!!」
「はっはぁーー!!」
何度も波動を飛ばすも全く効いてない様子で、ペースを下げることなく何度も激しい暴走を続けるばかり。
幾重ものの建物の被害や損傷が大きく、民間人も避難を余儀なくされている。
「おい、薬が切れた。そこのお嬢ちゃん、お尻触らせてくれよォ!!」
「ムゥーーッ!やだ!」
波動ねじれ──個性『波動』
自分の活力をエネルギーに変えて衝撃波を放つ。そしてその波動はねじれているため速度はない。
「クッ…まさか、この私が……こんな、ところで…」
リューキュウの影に守られながら、脱力感と活性を失われたことに、己の怠慢に腹が立つ。
幾ら個性による影響とはいえど、常に完璧を振舞ってた彼女が活力が吸われた事で、何も出来ない体を動かすこともままならないような失態。それらは常に誰もが美しく完璧で居続けた総司にとってはとんでもない残酷な仕打ちだ。
(考えろ…!体が動かない…から、なんだ?! 戦場の死地で、活力がないから、動けないじゃ…そんなの戦いじゃ通らない…!そんなもの、意味がない…!!)
頭の中で分かっていても、体が言うことを聞かない。
そもそもの話、プライド意識が高い総司にとって、失態やこの体たらくは勿論のこと、何よりも守られていることだ。
無様な姿を曝け出し、完璧主義と常に言い張ってる自分が誰かに助けられ守られてしまってるこの体たらくが、総司に冷静さを欠かさせ、苛立ちを込み上げさせていく。
彼女の完璧主義としての思想は、誰かに救われる事や守られることは違反する。
(もし、焔だったらどうする…?雅緋だったら……)
此処で頭に過ぎるのは、嘗て蛇女の選抜メンバーとしてライバルと認めた焔。次には今も蛇女を支え、憑黄泉討伐者の雅緋。
何故二人が浮かび上がったのか…なんて考えることすらバカバカしく思えてしまう。
「がんば…ろうよ……」
「何ッ…?」
隣で弱々しい声が、総司の耳に伝わる。声主に振り返ると、息を荒げながら、何とか立ち上がろうとするお茶子。
もう既に活力は吸い取られ、立てる気力さえ湧かないのに、己を鼓舞するように、小さな言葉をポツリと呟く。
「デク…くんや、ねじれ先輩に……他のみんなも…先に行って必死に頑張っとる……エリちゃん助ける為に動いとんのに…ウチらだけ動けないって……そんなの…」
震えながらも何とか奮い立たせるお茶子は、顔色が悪くなりつつも、それでも喉を絞り出して声を出す。
「ケロ……お茶子ちゃんの言う通りだわ…。折角皆んなが危険を冒してまでも動いてくれてるのに、私達だけ何もできないままじゃ…エリちゃんにも皆んなにも…顔向けできないわ…」
お茶子同様にグロッキー状態だった蛙吹も、体に力が入らずとも、薄れる意識の中で何とか喝を入れる。
「……心意気は良しとして…策はあるのか?この体たらくではマトモに応戦にも駆け付けれない…私が言うのもなんだが、普通の戦闘では勝ち目はないぞ」
「あら、普段は弱音を吐かない総司ちゃんが珍しいわ…ケロケロ…」
「…それ以上言うならばもう口は聞かんぞ蛙吹とやら」
完璧主義な総司も、活力を吸われてる影響もあるのか、美や完璧主張を通す余裕はないし、先陣切って正面突破は難し過ぎる。そんな余力もなければ、無茶を通せば体が動かせなくなってしまう。
このままねじれに任せ、リューキュウに守られながら、少しずつ活力を戻す方が、安全性を保ちながら、何とか鎮圧することは出来るが、これ以上の時間ロスは望ましくない。
かと言って考えなしの連携体制でも、逆転狙いが水の泡になる事もある。
今彼女らは、慎重に事の選択を選ばなくてはならない天秤に掛けられてるのだ。
「麗日さんに皆んな!!」
ふと、自分達を呼ぶ聞き慣れた声が、三人の耳に届く。いや、麗日達だけじゃない、リューキュウやねじれにもその声は聞こえた。
「あれ…っ!?デクくんなんで…!!」
「応援を呼びに来たんだ!あっちの十字路の真下に目的がいる、プロが戦って足止め中だ!!直ぐに加勢を!!」
其処にはあるはずがないであろう緑谷出久。
だが本人の説明と意図も分かり、状況が読めたリューキュウは、僅かに残った体力を振り絞り、活瓶目掛けて突進する。
「皆!彼の指示通りに!!」
「イテッ」
突進し体をぶつけるリューキュウ、そのまま活瓶の腕に噛み付き、活瓶はリューキュウの翼を鷲掴み引き離そうと試みる。
「ウラビティ!!」
「りょ…了解です!!」
「ム…?」
引き続きお茶子は、僅かながらに回復しつつあるだろう活力を常に消費しながら、活瓶の体に触れて、無重力化状態にする。
「フロッピー!!」
「ケロッ…!」
「オ…?」
長い舌で活瓶の両腕を拘束するように素早く巻きつける。活力が抜けながらも繊細に舌を使うポテンシャルの高さは賞賛するものがある。
「総司!」
「…っ!言われ…なくとも…!!」
「おぉ…!?」
リューキュウの命令に、悔し混じりに歯を食い縛りながらも、鎖鎌を扱い活瓶の首に巻きつける。
不覚──完璧超人を貫き通し、圧倒的な技術と実力で鉄砲玉やその他の構成員を一掃するつもりだったのに…鉄砲玉とはいえ幹部。幹部とは言え鉄砲玉──だが総司にとって完璧であるのなら、相手が誰であろうとも叩き潰す。
それが悪忍らしくとも彼女なりのプライドもあるのだろう…だからこそ、自分の思い通りにならなければ苛立ちや悔やみも含まれ、時には折れる事もあるだろう。
嘗て爆豪が戦闘訓練で心が折れたかのように──自分の思ったことを常に当たり前のように出来る、なんてのは実戦してみようとすれば相当に難しいのだ。
怒りの感情を上乗せするよう、思いっきり十字路の真ん中目掛け、地面に叩き落とそうと勢いをつける。
「ネジレ!!私ごとありったけを!!!」
「うん!」
「おいおいオイオイまてまて待て待て!!」
あれ程猛威を奮ってた活瓶も、形成逆転と言わざるを得ないように、手も足も出ずに翻弄されてしまう。
青空を背景に見えるねじれは最大出力の波動をリューキュウの背中に直撃し、のし掛かる勢いと重さが増す。
「何で動けるんだよ女共おぉぉ!!?」
活力を吸った人間は立ち上がる事すら困難。
気力だって抜け落ちるのに、何故…況してや女達だ。どうして女相手に自分がこうもやられなければならないのか。
『毎日言われてるから──』
全員がこう口にする。
「
「命懸けで取りに行けとな──」
そして地面は崩壊し、地下に広がる修羅場のような戦場へと落下していく。
それはまるで奈落のような、地獄の入り口とも呼ぶべきか、針山地獄のようだ。治崎が分解修復した跡が残っており、幸い落下する場所に障害物はない。
そして大きな勢いと共に、鎖鎌で地面に叩きつけ、ボディプレスで活瓶に勢いを活かして地面にぶつける。
「ッッッ───!!!??!」
声にならない悶絶な勢いに、失神する活瓶力也。
そのままぐたりと大の字に倒れ伏せ、戦意を無くして気絶する。幸い命に別状はないようで、呼吸は安定している。
「デクくんどうして此処に…?」
「ケロッ…じゃあさっきのは…」
地下に来てみれば、何故か先ほどまで十字路に居たであろう緑谷出久の姿が見える。
暗疑を晴らすべく上を見ようとするも束の間──
ドゴオォォォン──!!!
と、轟く破壊音によって意識は其方へと傾いてしまう。土煙の中からは人影が二人、地面に倒れ伏せてるのは一人。
「よっしゃあぁぁあぁ!!開通突破だ、やるじゃねえかサンイーター…!!」
「ハァ…ハァ……ファットから貰ったカジキ…食べておいて正解だったよ…」
多少切傷が荒く血が滴り落ちてる夕焼と、右腕をカジキマグロに変化しビチビチと跳ねるように動かすサンイーター。殴られた跡や、目には殴られたかのような腫れた跡…恐らく戦闘の際に負った傷だろう。倒れはしてるのは、カジキマグロと夕焼の助けもあった為か、吹き飛ばされた護武皮。戦意は失ってる為か、立ち上がる気力もなく気絶している。
「アレは…夕焼とサンイーター!!」
リューキュウ事務所のメンバーと同時に、夕焼とサンイーターの二人組も息ぴったりで合流した様だ。
「もう一人のガキは壊した壁辿ってきゃ居る!!大人しく眠ってるから誰か拘束頼んだ!!」
ガキというのは崎子の事だろう。現に今彼女はぐったりと壁にもたれかかり、刀はへし折られていた。
「それよか今…どーなってんだ!?ありゃ治崎か…?写真と随分違ぇし禍々しくなってんじゃねえか!!」
壁を壊してやって来てみれば、変貌を遂げた治崎と言い、ナイトアイの悲惨な重症といい、活瓶やリューキュウ達が居るといい、破茶滅茶な展開に頭の整理が追いつかない夕焼は叫ぶ。
「……ねぇ、あの混沌としてる死地の穴に俺も入れって事?鬼畜かな??」
一方で、十路地に大きな穴から覗き込むは敵連合。
黒柴との会話を終えてから、トガの思惑通りに行った現状…Mr.コンプレスは大困惑していた。
「そそ、んで核ってのがアレよ」
「アレッて…子供か。まさかだとは思うけどその核を取るためにあんな地獄みたいなところへ行って帰ってこいとかじゃないよね?おじさん仲間想いだって信じてるよ?」
「大丈夫だ!その為に強力な奴も増やしといた!」
「おいトゥワイス、トガ。状況どーなってんだ、ア?俺ァコンプレスと闇と一緒に集合場所に行ってガキども殺して爆豪と雲雀を攫うんじゃねえのかよ」
「ちょ待って!?そういう問題!?!てか黒佐波増やしたのは心強くて良いんだけど…いや良くないよ!じゃなくて!!俺の片腕の復讐でもあるよね!?俺増やしてあんな場所行けってんの!?無理無理無理!おじさん戦闘要員じゃねえのよ?!なのに何で如何にも秒殺しそうなメンバーがゴチャゴチャいんのよ!てか黒佐波めっちゃ久し振りだけどそれ随分前というか終わってる事じゃん!」
「安心しろ!お前も黒佐波もコピーだ!コンプレスだけじゃ勝ち目もねぇし難しいだろうし酷だろうから強力な助っ人増やしたんだろ!早くしてくれ人が来ちまう」
「んで?俺は何すりゃ良い?小せえガキ殺せば良いのか?死柄木の指令とちげぇんだが…?」
「まず下にいる小さな子供以外全員ぶっ殺してくれ!!後で説明するから!しねぇさお前は死ぬんだよ!」
「出久くんは殺しちゃメッだからね」
「此処も既にプルスケイオスしてた!?!!」
コピーで増やしたMr.コンプレスと黒佐波に口論するトゥワイスとトガ。因みに黒佐波が何故林間合宿の時のままなのかというと、それはトゥワイスが最後に計ったデータがその時だからであり、イメージ通りに作った黒佐波が、その時のままだからである。
「乱波も良いんだけど雪泉先輩に瞬殺されたからねー…アンタの腕に期待するよ黒佐波。帰ったら私と漆月と殺し合いして良いから」
「本当か龍姫!?よっしゃあ!俄然殺る気出たぁ!!オイ行くぞコンプレス!!アイツらも全部俺の獲物だ、一人残らず殺しといてやるよ!!」
「マジで!?ねぇーもう本当に怖いって無理無理無理!!お前もアイツらもイカレてるよサイコパスすぎるでしょ!!少しでも優しさ感じちゃってた俺が馬鹿だったよ!!」
大混乱の如く修羅場と化した戦場に足を踏み入れる敵連合が乱入。黒いマスク越しでもヒシヒシと伝わる強者の笑みを浮かべる黒佐波に、嫌々と首を横に振りながら叫び声を出すコンプレス。
「敵連合…!?」
「オメェらリストに見ねえ奴らだな!!それも良しまた一興!!歯ァ食いしばれ、久し振りに血沸き肉踊る壮絶な戦いをしようじゃねえか!!!」
「もう何が何やら…!」
「お茶子ちゃんあれ!!」
活力の限界と共に冷や汗流すリューキュウに、拳を握りしめて満面な笑みを浮かべ殴りかかる黒佐波。コンプレスはいち早く此処を脱出したいが為に壊理を狙う。
破茶滅茶な展開が続くばかりの現状に、蛙吹が指をさして意識を其方へ傾ける。
「ッ…?!!サー・ナイトアイ…!!」
悲惨な目に迎えたサーナイトアイに、悲痛な声で叫ぶお茶子。
「どいつもこいつも…鬱陶しい…ふざけんなゴミ共が──」
大混乱な戦場へと成り果てた事に更に悪態を吐く治崎は、地面に触れて大分解と修復を繰り出し、穴の空いた天井へ登っていく。勿論、壊理は忘れずに抱えている。
「あーっ!畜生!!後少しだってのに!」
悔し混じりな声を叫ぶコンプレスを他所に黒佐波はこんな時でも戦闘を楽しみ、多対一という不利な状況下で戦っている。
「これは…!ナイトアイを保護しないとマズイぞこの傷は…!」
「わーってるよサンイーター!お前が連れてくかにしろ!この野郎…マジで早えし強え…!!一撃一撃で体ごと吹き飛ばされそうだ!」
「むーっ!!早く吹き飛んじゃってよー!!!」
「二刀流に波動か…!!波動使いは俺と少し似てるなぁ…!面白ぇ!お前らもちゃんと味わって殺してやるからな!!!な!?」
此方も此方で手一杯で、ナイトアイを保護する事も難しそうだ。プルスケイオスとは、随分と皮肉が効いている。
そうこうしてる間に治崎はエリを抱え込み、天井へと登り逃げ果せようとしている。
「「治崎!!!」」
緑谷と雪泉の怒りの叫びが、交わりシンクロする。
割れた地面の更に下を分解・修復して上へ上へと登りつめる。それはさしずめ地獄から天へ舞い戻るように、放置していれば数秒後に確実に逃げられてしまう。
それだけは、何があっても起きてはならないこと。
「エリさんを返しなさい!!!」
「させるかぁぁ!!!」
雪泉は氷と風を巻き起こし、最大出力で距離を縮ませ、緑谷は手を伸ばし、ワンフォーオールを利用し大きく跳躍する。
「ッ…!」
ふと地上へと登りつめる瞬間、バサリと上から破けたボロ布のマントが、治崎の横へ落下するように舞っていく。
「これはルミリオンの…巻き上げられたのか…全く、気色悪い……」
「あっ…お兄さんの……」
これは治崎と戦ってたルミリオンが、エリに優しく包んでくれたマント。全身を覆うような布マントは何処か温もりがあって、心地よく感じる。
『ヒーローがマントを羽織ってるのはいつだって!痛くて辛くて苦しんでる人を、優しく包んであげる為だ!!決して飾りでも気取りでも何でもない!!!』
そのマントを、手を伸ばして掴み取った。
意識して掴んだわけではない。
ただ──私は…
ミシッ!!と嫌な音が、ミシミシと治崎の体に鳴り響く。
「なッッ?!!!」
ふと、体に異変が起きた治崎は、痛みもない不思議な体幹を覚えながら、記憶の片隅にあった組長との会話が蘇る。
『治崎、お前…俺の娘覚えてるよな?』
『ああ…結婚で揉めてウチと絶縁した…』
『あれはその娘の子だ…あのバカ、子供を捨ておった。旦那が死んだ、この子は呪われてるってよ…ある日、旦那があの子に触れようとしたら消えちまったらしい』
『消える…そういう類の個性…?娘の個性まではよく知らなくて…』
『どちらの家系にも全く類似しない個性が発現したんだ。突然変異つってな…呪いなんかじゃねえよ、ごく稀にそう言ったことはあると聞く。能力の詳細も使い方も分からねェし、本人にも自覚がないんだとよ。だが消滅したってケースに関しては、治崎…お前に似てる』
『俺と…?』
『世話ついでにあの子の個性調べあげてくれや。そういうの得意だろお前?』
組長と会話を終え、サンプル品として壊理の個性を使うよう、モルモットを検体として使ってみた。
『ッ!?俺と似てるなんてとんでもない、修復、治癒…直すとかじゃない、これは下手すれば…簡単に人を殺せる…こいつは、恐ろしいな』
壊理──個性『巻き戻し』
触れたものを巻き戻し、暴走すれば周辺のものを巻き戻し、或いは消滅させてしまう。戻す力が少なければ大した影響はなく、大きければ大きいほどに年齢を始めた全てが巻き戻され、最悪生まれる前へ…つまり消滅してしまう。
治崎に個性を使い巻き戻したことで、悍ましく歪んだ姿をした治崎は元の姿へ、音本と竜鱗は引き剥がされるように離れ、気絶してる二人は落下する。
初めて脱出を試みたあの日、ルミリオンやデクと出会ったあの日、この男から結局逃れられないのだと──彼女は諦めた。
自由もなくただただ身を切られ
意味もなく訳も分からず悲痛な思いをし
何度も叫んでも助けてはくれやしない
使い方すら分からない知らない恐ろしい個性、そんなものを生まれて持ってしまった自分が悪いのだ。『呪われている』──そういう宿命なのだと、受け入れる他無かった。
ルミリオンの行動が、ヒーローとしての叫びが、魂が、彼女の心を揺らしたのだ。
「もういいのに…」
自分を救わんと傷ついていく姿が、その人達の苦しむ顔が見たくなかった。何より辛かった…。
「死んで欲しくないのに…!!」
でも…この人たちは死んでも諦めない。
新たに芽生えた想いが──「救からなくては」という強い思いが、彼女を覚醒させる。