光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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クリスマスイブだー!以上。





206話「分かち合えないのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、やっぱり貴女達はこの選択肢を…闘うことを選ぶのね」

 

 暗闇が濃くなる迷宮の廃墟と化した妖魔の巣の最奥部、大きな広い部屋には本棚やテーブル、ソファなどほかの部屋と比べ、比較的に安全な場所に、美怜とベルゼ兄さんは立ち尽くしていた。

 

「ミレイ、皆ンナガ来タヨ――僕達ノ家ヲ荒ラシニ来テル泥棒ガ」

 

「ええそうね、態々見逃してあげてるにも関わらず…自ら争いを選ぶだなんて…本当に、忍は妖魔を殺すのが好きなのね。

 二度の忠告も無視して三度目に及んで足を踏み入れるだなんて………本当、仕事に忠実なのね貴女達」

 

 そして自分たち妖魔の兄妹の前に現れたのが、紅蓮隊の5人の少女達。筆頭焔を中心に、詠、日影、未来、春花も既に忍転身を終えている。より危険な罠を掻い潜りながらも、ほぼ無傷でここまで到達した焔達には、ある意味驚嘆される。

 

「もう仕事とは違う……忍務に関してはもう諦めるよ」

 

「……だとしたら、貴女達は死を選ぶ為に忠告を破ったとでも?いいえ、焔。貴女には貴女なりの考えがあってこの選択肢を委ねたのね。なら、どの道闘いは避けられない…という事かしら」

 

「まずお前達に話したいことがある、なぁ?詠」

 

 焔は軽く一瞥すると、詠は軽くこくりと首を縦にして頷く。そんな彼女に美怜は目を丸くする。

 

「あら、貴女が?一体何の用かしら?」

 

「美怜さんにベルゼさん、私達は確かに貴女達の家を土足で踏み込んで、勝手に荒らし、機嫌を損ねてしまったことは深く謝罪致しますわ…。

 ですが、もうこれ以上美怜さんもベルゼさんも…争わない為に私達と一緒にここを出るというのはどうでしょう…?」

 

 詠から放たれた言葉に、未来や春花は勿論、美怜でさえも目を丸くする。侵入者とはいえ、今の立場は敵対関係…望みが叶うとは思えない発想だ。

 

「詠お姉ちゃん!?何を言って…」

 

「私たちが何を言ってるのか、だなんて恥を承知な上での事です。私たちは上層部に依頼されて此処を訪ねてきました。たしかに美怜さんのいう通り、引き下がって争いをしないという手も考えました…然し、それではまた他の忍達がまた此処を荒らしに来る可能性も少ない訳ではありません。

 それは、美怜さんやベルゼさんにとっても、好ましくないことではないでしょうか?」

 

 これは、焔達が話し合った内容のことだ。

 幾ら自分達が此処から引き下がり忍務失敗という形になったとしても、自分達の代わりの忍など沢山いる。

 正直、このままでは争いは絶えないまま…更には美怜にとってもベルゼにとっても、悪印象ばかり目立ってしまうというのは此方も良い気分ではない。

 

「ですから…もし貴女達でさえ良ければ…」

 

「詠お姉ちゃん!確かにそうだけど、幾ら何でもお人好しじゃ…」

 

「詠ちゃん…流石にそれは無様としか…」

 

「うっふふ…面白いことを言うのね貴女」

 

『!?』

 

 詠の発言に驚愕する未来を他所に、春花は呆れるも、それを黙って聞いてた美怜は面白おかしく冷笑を浮かべる。

 

「確かに無様ね、お人好しにも程があるわ。足を踏み入れたとはいえ私たちに殺されかけながらも、何度も忠告を無視して殺される事を分かっていながら、敢えて私達を説得をしようだなんて…お人好しにしては無様で、でも他の忍達とは違う。

 こんな人は産まれて初めてみたわ、しかも…妖魔を殺す事を生業としてる忍が、ベルゼ兄さんさえも引き入れようだなんて……本当に面白いわ貴女。ねぇ、兄さん?」

 

「ウン、ソウダネミレイ――デモ、僕達兄妹ハコノ家ニ住ム事ヲ決メタンダ。僕達ノ大事ナ家ハ、誰ニモ渡サナイ」

 

 冷笑を浮かべ、言葉交じりに笑いを出す美怜の隣に、ベルゼは無感情で無機質な声で淡々と告げる。

 ベルゼ兄さん自身、別に感情がないというわけではない。どちらかと言うと美怜よりも感情的になることが多いだろう。然し感情はあってもそれを表現することが難しいのがベルゼという妖魔であって、銀製の鉄マスクを顔に覆ってるのではあれば尚更だ。

 

「やはり…解ってもらえないですか……」

 

「ええ、そうね。貴女達は忍であり、私達は妖魔である以上…立場が違うのであれば分かち会えない…いいえ、分かち合うことは出来ないのよ。それが可能であれば、今頃ベルゼ兄さんは忍を殺したりはしない」

 

 そんな事が可能であれば、今頃妖魔によって殺された忍は救われている。いや、死ぬことさえなかった。

 それは逆もまた然り――美怜とベルゼ兄さんも忍達が分かち合おうとすれば、もっと早ければ、迫害もしずに済めば、争わなくても済んだのだろう。

 

「でも…そうね、詠…と言ったかしら。それでも貴女の言ってることは一理あるわ。

 貴女達が退けても、また別の忍が襲いかかってくる可能性はあるし、静かな平穏を望むのであれば、詠の言う通り此処を出るのが得策なのかもしれない」

 

「…ッ!でしたら…!!」

 

「だけど、私もベルゼ兄さんも此処から離れるわけにはいかないの。それに、コソ泥さんがそう言って外に出しては何があるか解ったものじゃないわ。誘き寄せて私達兄妹を惨殺…なんて事にはなりかねないし。

 私の身の危険をベルゼ兄さんは望まないし、ベルゼ兄さん自身も誰かに受け入れられるとは考え難いわ。

 

 何よりも…たった一つの兄妹――私はベルゼ兄さんと一緒に暮らして生きてきた。だから、家から離れる訳にはいかないの」

 

 何よりも、美怜には忍への信頼は欠けており、疑心暗鬼が満ち溢れてる。信頼に値しない…と言ったところか、詠の言葉には一理あったとしても、それを機に家を出るつもりは毛頭ないと言う。

 兄妹の語らいも、ここまで来ると何処かお互いを縛りあってるようで、でも…其処に愛を感じてしまうのは、純粋だからだろう。疑いも嘘も、何処にも感じられない。

 

 

 嗚呼成る程――確かに、立場の違いだ。

 

 

「でも、アンタは自分を忍って言ってたじゃない…?」

 

「例え私の正体が忍だとしても、妖魔である事を選び生きる事にしたの――兄妹である事を、変わろうとは思わない。それは宣告したはずよ」

 

 ダメだ、全く引き下がらない。

 それどころか、反論の余地もない。

 自身が忍と分かっていながら、妖魔の敵であると知っていながら、兄に育てられた妖魔と一緒に、共生を選ぶ。

 それは、今この発言をしながら全く反応しないベルゼ兄さんも見た限り、分かっていたらしい。

 妹の美怜が、自分とは違う存在である事を。

 

 それでも、妹も兄もお互い一緒に生きる事を選ぶと言うのは――それ程に強固たる絆で結ばれているのだと。

 

「わ、私は…!焔達がこう言ってるけど、焔を落とし穴に入れた事とか、その他色々…許してるわけじゃないからね!」

 

 此処で居ても立っても居られないのか、未来は一歩足を踏み入れて吠えるように叫ぶ。

 でも、その表情は憤慨も混じってるようで、どこか悲痛な顔も浮かべる。

 確かに焔を罠に嵌めたのは許せない、言ってはなんだが未来は焔のことを尊敬しているし、入学して間もない頃からよくお世話になったりもした。自分に自信がない時だって、喝を入れてくれたら慰めたりもしてくれた。

 そんな焔に危険を陥れるような行為は許せない…でも、こんな兄妹の二人を目前にしてしまえば、殺したいとも思ってない。

 だけど、ベルゼ兄さんを殺して美怜に恨まれ、焔達に危険が及ぶと考えると其れも許せない。

 彼女の心境は、戸惑いつつ苛立ち、闇雲の如く彷徨ってるのだ。

 

「……貴女達がしてきた事に比べれば、随分とマシ…いいえ、解剖せずに無事に見逃してあげてるだけ優しいと思ってほしいわ。ここまで批判されるなんてね、貴女達のしてきた事を考えれば、より私達の方が遥かに筋が通ってると思うけれど」

 

「それでも…」

 

「…まぁ良いわ。貴女には貴女なりに気に入らない事や譲れないもの、拘りがあるのかしらね。

 どっちにしろ、二度の忠告も無視して殺されることを覚悟してまで此処に来てるのだから、今更その話を出すのは愚かだと思うけれど」

 

 これだ、未来はこういう反論さえも出来させないのが気にくわないのだ。虐めてきた連中とは違い、こう…悔しさ。

 

「そ、それでも…私にだって守りたいものがあるのよ!!!その守りたい焔をあんな風にされたら、気にしたくもなるでしょ!!!」

 

「貴女、少し煩いわね。耳障りだわ、声を抑えなさいな」

 

「アンタにだけは言われたくないわよ!!!!」

 

 そんな激情する未来の声に不愉快そうに眉をひそめる美怜。相性は最悪のようだ。というより端から見れば美怜が煽ってるようにしか見えなくもない。

 

「じゃあ…美怜ちゃんはこれから、私たちが闘うとして…お兄ちゃんが殺されても、同じことを言えるの?」

 

「あら、勝負の予測はさておき…既に勝っている気でいるのね。ベルゼ兄さんに手も足も出ずに逃げ惑う事で精一杯なのによく言うわ」

 

 売り言葉に買い言葉――春花の説得さえ冷笑を浮かばせて言葉を叩き潰す。

 

「待て、その話に関しては…恨むなら私を恨めよ。話し合いをし出したのは、私だ」

 

「貴女も勝つ気でいるのね…しかも恨むだなんて、それこそ人間的な感情を押し付けるなんて、聞いてて笑ってしまうわ」

 

 

「……言っておくが美怜、お前も今までの忍と見くびらない方が良い。私たちは他の善忍や悪忍とは違う、追放された抜忍――上層部や忍の常識にも縛られない、紅蓮隊の誇りを、悪の定めを、しかとその目に焼き付けてやるよ!!!」

 

 

「…!」

 

 六刀を引き抜き、早くも戦闘態勢に入る焔。

 彼女の威圧に、少し驚いたように目を丸くする美怜を他所に、ベルゼ兄さんは一歩前に出る。

 

「下ガッテテ危ナイカラ……美怜ハ、戦ワナクテ良イカラネ」

 

「…………有難う、ベルゼ兄さん」

 

 それも束の間の一瞬――美怜は直ぐに気を取り直し、一歩下がり安全…とは呼び難いが、争いに参加しないようにそっと、身を呈する兄の背中を、妹は優しく見守る。

 

 

 

「お前達!気を抜くな、これまでの敵とも半蔵の連中とも一味違う…!相手は一匹といえど、全力で行くぞ!!」

 

 一瞬の油断は命取り。

 其れは妖魔との戦いや忍との死闘とも限らず、野生や自然界ではよくある話、日常茶飯事。

 久方ぶりの強敵とはいえ、格が違うベルゼは、まだまだ底が知れていない。

 知れない上に負けられない以上は、ただひたすら全力で対処するだけ。

 

 

 

 

 

「グオオオォォオーーーーッッッッッ!!!!」

 

 大地を轟かすベルゼの咆哮が、獣のような雄叫びを叫び心臓を震え立たせる。

 全身の身の毛が取り立つような錯覚を感じながら、臆することなく五人は武器を構える。

 この咆哮が刀を抜く合図となるならば、もう後戻りも説得も不可能。

 

「行くぞ!!」

 

 焔の掛け声の合図とともに、他の四人は散るようにベルゼの方角へ前進へと向かって行く。

 先程力の差を見せつけられたにも関わらず、動じずに掛け走ってくるのは、何か策が有るのだろうと、観察者で有る美怜は考えた。

 

(何方も遠方攻撃を有する忍がいるのに…距離を詰めるなんて、一体何をする気なのかしら?)

 

「未来、詠は右翼!日影は背後!春花は左翼!」

 

 軽く短く事を伝え、四人は指示通りにして動き出す。

 それだけで、後は各々の得意な戦術でベルゼを相手にすれば良いだけ。何、少し力を借りるだけ――無理をして勝ちに行かなくても、体力を削るだけで、錯乱するだけでそれで良い。

 

 一塊から散り行く忍が己の方向へと近づいてくる事に、ベルゼは直感で思うがままに、拳を未来と詠の方角へと振るう。

 単に数が多い方が倒しやすいのと、殺す数が増えると言う思惑だったのだろう、然しそれは大きな間違いだと言う事に気付かされる。

 

 放たれた拳は虚空から放たれる衝撃波によって、直撃は免れてもダメージは免れないだろう。だが、未来はそれを傘にして盾代わりにする。

 

「んぐぐっ…!!幾らなんでも馬鹿力過ぎるでしょ…っ!!」

 

「ですが、そのお陰で隙が出来ましたわ…!」

 

 腕が千切れそうな程に押し寄せる衝撃波を、上手く横流しするように腕に力を入れる未来。盾として直接受け止めるのではなく、水のように横に流す動作…受け流しの構え。これは前に鈴音先生に教えてもらった作法だ。

 そして二度目の拳が放たれる前に、詠の大剣が大きくベルゼの左腕を深く突き刺し叩き落とす。

 

「なっ――」

 

 然しそれでも詠は驚愕してしまう。

 気品溢れるお嬢様のような詠…それでも紅蓮隊の中では焔に負けず劣らずのパワーファイター――故に重量感溢れる大剣を軽々扱える少女はメンバーの中では一、二を争う程の筋力を誇っている。大剣で叩き落とすつもりが、ベルゼの腕は一向に落ちることは無い。

 

「グバァッ――」

 

 ベルゼはその金属製のマスクの口元をガシャンと金属音を鳴らして口を開け、詠の大剣を粉砕しようと口を武器に近づける。

 

「グベッ」

 

 それを、春花の傀儡が阻止する。

 機械的な傀儡の重い一撃がベルゼの顔面に大きく直撃し、体制がズレる。バランスが崩れてしまうせいか、そのまま殴られた方向に押されるように身を傾けてしまい

 

「ほな覚悟しいな!!」

 

 春花はそのまま怪しい色をした液体の入った試験管を投げ、ベルゼに触れると液体が体に降り注ぐ。

 日影は背中に蛇の如く傷を刻み込み、そのまま頭を地面に叩きつけるように、日影は愛用のナイフをぶっ刺すように、ベルゼの脳に短剣を突き刺す。

 そのまま頭を打ったベルゼに、詠は気を取り直して腕の着いたボウガンでベルゼの顔面を狙う。

 だが決して深手を与える訳ではなく、新たな一手――爆薬ではなく、煙玉の役を担う視覚による妨害。

 

 視界を奪われたベルゼは直ぐに立ち上がり、腕を振るおうとするも、詠に抉られた傷から出血が噴く。だがそれも虚しく妖魔の再生機能により、傷は少しずつ修復を迎え――

 

「アレ、痛イママ――ナンデ?」

 

 ない。

 何やらジュウジュウと肌が溶けていくような錯覚に陥る。いや、実際に傷口は黒く変色し、軈て血は少しずつ固まっていく。

 これは手…酸性による消化、しかも強烈な酸性液は、妖魔の体さえも溶かすとは驚きだ。然し再生が働かないのは別の問題である。

 

「コレ――毒?」

 

 一体いつ何処で…?

 煙玉に毒ガス成分が含まれてる訳でもない、ならば一体どこで?先程の春花とやらが投げつけた試験管に毒でも混じっていたのだろうか?

 その正体が日影の短剣に塗られた毒ということも知らずに――

 

「そのまま蜂の巣になりなさい!!」

 

 煙で充満されてる状況下において、銃撃戦も忘れない。

 妖しく光る弾は、呪いの光弾。

 銃による弾は基本的に小さいのがお約束だが、忍術によって生まれたその光弾は、嵐の如く襲いかかる。

 大規模なスケールをした光弾は、頭、胸、腕、腰、足、様々な部位に的確に乱射される。未来は眼帯をつけてはいるが、これでもサバゲーや聖地巡礼宜しく、視力は割と言い。なので煙によって撒かれても、視界が悪くなろうが変わらない。

 

「ウガァァ!!」

 

 それをベルゼは拍手1回――【魔王の拍手】で辺り一面を吹き飛ばす。その放たれた衝撃波は、未来の【ヴァルキューレ】を意図も容易く相殺し、遠くながらも意識が吹き飛ばされそうな感覚は、きっと妖魔術による効果だろう。

 

 煙が一面、晴れると――

 

 

 

「秘伝忍法――【魁】!!」

 

 焔が六爪でベルゼを四方八方に熱の通った刀で肉を抉り廻る。火傷を負いそうな灼熱の刀に刻まれた体、思ったよりダメージが効いている。……が、倒せると言った確信にまでは迫らない。

 

「……………あのベルゼ兄さんをここまで」

 

 傍観していた美怜は、兄が追い詰められていながらも冷静に状況を分析する。コンビネーションや連携など悪い点はなく、無駄な動きがない上に磨き上げられてのは、今まで家を襲ってきた侵入者の中では中々いない。

 それでもまだベルゼを倒すには届いてないものの、以前力の差を示した時と比べて、大分改善したとも言えよう。

 

(銃火器、毒、銃、傀儡や試験管…成程、ね。あの子達も一人一人が有象無象のような連中ではなく、筆頭である焔に負けず劣らずと食いつくように実力がある。何よりベルゼ兄さんの知能が低いとはいえ…懸命な判断が下せるし、場数を踏んでるわね)

 

 それでも沈着冷静、動じず揺れる事なく、兄が翻弄されても考察を辞めない美怜の精神は、鋼の意思に似たものを感じる。

 

(だめだ…全然深いダメージを終えてない…!!もっとだ、もっと攻撃を加えなければ…っ!!)

 

 対する焔も既に察していたのだろう、ベルゼを見た感じパワーこそあってもスピード勝負ではてんでそこまでで、素早い動きに対応しきれない箇所がある。

 そこを突いて行くのは得策ではあるが、妖魔特有の再生能力と言った治癒が高ければ、焼け石に水――ジリ貧になるままだ。

 

(……まだだ、余力を残してる以上は、まだ炎月花は抜けない――)

 

 背中に滞納してる七本目の紅い刀、それは焔の最後の手段と呼ばせる我が忍家系に伝わる宝刀だ。決して無闇矢鱈に下らない勝負のために鞘を抜くものでもない。

 ベルゼが本気を出した時こそ、それを使う事で初めて価値が見出せる。

 

「………ウン、思ッタ以上ニヤルネ皆ンナ――ジャア、コレハドウカナ?

 

 ――妖魔術【暴食ノ時間ダヨ】」

 

 

 次の瞬間、兄の雄叫びに闇の波動が脈を打つ。

 鼓膜をつんざくような音量の叫び声、妹の美怜も思わず耳を閉じてしまう程の大音量――だが、兄が命懸けで妹を守ろうとするベルゼに比べれば、美怜にとって闘いとしての煩さは、不快ではなかった。

 ベルゼに取り巻く闇がより一層濃くなり、拳に闇が凝縮される。それはまるで、ボクサーグローブのように、拳を武器として扱う。

 

「なんだ…あれは?…っ!?」

 

 ふと、焔の纏った炎が闇に吸い込まれ消えて行く。まるで不形の闇に引力でも持つように。

 

「……あれ、毒消えたんか?」

 

 ベルゼの凝血してた毒も闇に吸収されることで、解毒的な役割を担い、日影の短剣に塗られた神経を狂わせる毒も、解毒されたかのように消去されてしまった。

 

「…ベルゼ兄さんに暴食の時間をさせるなんて、何年振りかしら」

 

 暴食の時間は、火、氷、雷、風、凡ゆる遁術を闇が吸収し、闇を肥大化させ威力を強める術だ。勿論、毒や光、閃などと言った遁属性などありと凡ゆるもの分け隔てなくだ。まるで其れ等の現象さえも捕食するかのように、正に暴食――。

 そのためこの妖魔術に食えない遁術は存在しない。逆に物理では無効化として意味を成さないが…ベルゼ兄さん相手に果たして何処まで持つか、またはベルゼ相手に小細工なしの実力勝負など仕掛けて生きて帰れるか、そこら辺の方面に疑問を傾けた方が良いのかもしれない。

 

「思ったより効いてないね…」

 

「でも、攻撃は通じてますわ」

 

「まだまだ先が思いやられるなぁ…」

 

「この先って、生きるか死ぬかの二択でしょう…!」

 

 闇濃くなるベルゼが放った一撃を、皆は回避して避ける。それがまた凄く、先ほどのパワーよりも一段と上がり、地面が抉れる程の重圧感は、オールマイト級の脳無よりも強化されてるのかもしれない。

 そう断言しても過言ではないほど、更にハードルが上がった。

 

 

 

「腕を切り落とすか、頭を狙うか…まだ万策尽きてはない…ここからもう一手間かけて叩きこむぞ…!!」

 

 

 どうやら、まだまだ終わりそうにないらしい――

 

 

 

 

 

 

 

 

 





無理矢理感あるかもしれないけど、終わり方が難しかった…ということで、良いところでもあったのでまた直ぐに近いうち投稿します。オリジナルバトルは難しすぎるよ…
しかもベルゼ兄さん、まだまだこんなもんじゃないのに…

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