光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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滅茶苦茶遅くなりました許して…!!
実はネプテューヌのPS5にモンハンライズやりまくってました…ネプテューヌさん、ついにカグラとコラボするんスよね…シリアスキラーのネプ子がここまで…作者嬉しいよ!!




212話「紅蓮隊日常2」

 

 

 

 

 

 

 

 焔紅蓮隊一同、タルタロスの面会を終え森林地帯に着いてから、鈴音は焔達にもう一度感謝を伝えると、別れを告げた。

 少々名残惜しい部分もあったものの、抜忍としての自分達の立場的には甘えてる猶予もなければ、先生の時間も考えて余り長居は出来ないのだろう。教師としては忙しそうだなという思いが伝わってくる。

 

「然し、忍商会の面々も大分顔が割れたな。とりあえず名が上がった奴らをマークすれば良いわけか」

 

「そうねぇ、でも問題は何処にいるかって話よねぇ…取り敢えず挙げられる点とすれば、京都と千葉、神奈川くらいだけれど…」

 

 道中、六人は一塊になりながら歩行を進めながら今後の忍商会に対する対策を考えていた。

 忍商会業績no.1『魔門』

 忍商会裏サポートアイテム売買製作会社社長『亜門』

 忍商会闇金融機関違法商売『佐門』

 今のところハッキリしてるのは此の位で、それ以外は壊滅したと聞いている。

 

「ねぇ、貴女達はその『忍商会』っていう大きな組織を随分と敵視してるけれど…直接的な関わりはあったのかしら?」

 

「いや、そう言う訳ではないんだが…伊佐奈のような輩も含め、そういった組織があるせいで大勢の腐った人間が、妖魔を通して国の兵器として使われてるのなら、阻止する他ないだろ。悪事として働くのであれば、それもまた止めるのが私達だ」

 

「ふぅん…前に未来に借りたヒーロー殺し・ステインとやらの書物やいんたーねっと、とやらで挙げられてた記事に似てるわね」

 

 ヒーロー殺し・ステイン

 別名、忍殺しとも謳われ敵という犯罪者にして、贋物と見なされた英雄気取りを惨殺。

 内再起不能に陥れた数も多く、一部からシンパシーを産まれたことから、彼のような非人道的でありながらも己の信念を貫くその姿勢に、熱を当てられた者は少なくない。事実、赤黒血染もまたタルタロスに収監されていたのだから。

 道理や心理は何であれど、抜忍として社会の枠から抜けてしまった者としては、打つべき者を把握してる事に何処か通じてるものを感じる。

 

「保須市…そういえば、アイツも敵連合に関わってたんだったな。私達が居た時は遭遇さえしなかったが…」

 

「私達は脳無と戦ってたし仕方ないよ。それにその頃まで関係性とか分かんなかったしね」

 

「のうむ…とやらも随分と面白そうな感じがするけれど、貴女達の経験って本当に修羅場ね。行き着く過程がほぼ戦いばかり……私ももっと早く貴女達と出逢っていれば、面白い体験が出来たかもしれないのに」

 

「いや、今の話を聞いて何処に面白味感じてんのよアンタは…」

 

 他愛ない会話を交えながらも、やはり何処か楽しそうだ。

 未来と美怜は妖魔の巣でも述べていたが、相性としてはそこまで良い訳ではないが、其れはあくまで性格上。美怜本人は楽しんでるので、ただ戯れてるように見えるし、未来自身は美怜の悪ふざけや冗談を本気で受け止めてるのもあるため、こうして少しの事柄でも掌突し合うのだろう。

 

「そう言えば…京都と言えばそろそろですわね」

 

 と、此処で詠が思い出したかのようにパンと掌を叩く。

 

「詠さん?そろそろって…」

 

「あぁ…後四日だっけ。京都の旅行か、詠が商店街のクジで運良く一等を当ててだな。

 商品が京都旅行チケット6枚分という事だったんだ、五人で一人余ってたから誰かを誘おうか悩んでいたんだが…美怜もいるし丁度数が揃った訳だから心置きなく行けるな」

 

「あーそういえばそうやったね」と思い出したかのように呟く日影。これは以前、時間系列で言えば神野区崩壊事件が起きてから一週間が過ぎた頃合いで、復興作業のアルバイトの帰りに商店街で買い物した際クジ引きがあり、詠が運良く見事に一等を引き当てたという何とも幸運なエピソードがあったのだ。

(*詳しくは特別編の『巡り巡って誰かのために』を参照)

 

「ふぅん…そんな事が。詠、お手柄ね。貴女にそんな豪運が備わっていたなんて…一等を引き当てる確率ってくじ引きの場所にもよるけれど、大勢の人が当たる中よくそんな…」

 

 これには流石の美怜も賞賛を称えてるそうだ。尤も、自分が京都に行けるという感謝の労いもあるのだろうが、確かに一等を引き当てるだなんてのは早々滅多にないことだ。

 ソシャゲのガチャや祭りの店舗にもあるクジ引きというのは、大体確率は大きく低く、その中で当たるというのは事実自慢しても良いレベル。…祭りのクジ引きなどではよく悪質としてわざと一等賞が入ってなかったり裏で組との繋がりがあると言った犯罪絡みもあるのだが、それでも充分に褒められるべき点だろう。そこもまた詠が贅沢をしない、高望みをしないというガチャではよくある欲を出さないという言葉が使われてるのだろうが、そう考えると詠は贅沢をしない分、幸運に恵まれてるのかもしれない。

 

「えへへ、美怜ちゃんに褒められると謎の安心感がありますわね…」

 

「然し京都…京都ね。紫式部の源氏物語や清少納言の枕草子と言った数ある有名な文学作品のある国風文化の結晶の土地…。ふふ、とても素晴らしい土地へとご紹介してくれるのね。やはり貴女達に付いて行って良かったわ…こうして外の世界へ出て、沢山の文化や知識を吸収していけるもの。書物で読んだ頃と今とでは内容や文化も進んでるだろうし…良い機会ね」

 

 美怜は前に居た家…妖魔の巣では腐るほど本があり、当然歴史に関わる本は勿論、こう言った地域の歴史も目を通していたので、外の常識は分からなくとも、昔ながらの情報は頭に入っているので、そこら辺は心配無用だそうだ。

 

「京都といえば八つ橋もあるわよね、私食べたーい!」

 

「やつ…はし?」

 

「アンタ知らないの?そう言えば外の世界のことあんま知らないものね…ふふん、八つ橋ってのはね、甘いお菓子の事よ!餡と生地が合わさってとっても美味しいんだけど…」

 

「甘いお菓子…ですって…?!」

 

 其処で珍しく美怜が目を大きく見開き食い付いてきた。未来は勿論のこと、他の四人も珍しそうに驚いてる様子が一目見ただけで見解できる。

 

「そう、八つ橋……前に本で読んだことはあるわ。元禄二年に誕生した江戸時代中期の干菓子として聖護院の喫茶で販売を始めた茶菓子として…甘いお菓子だったのね。読んだだけで実物もどのような菓子かも不明だったけど…」

 

 何やらブツブツと独り言を呟いてる様子で、今までに見せたことのない態度に少々面を食らう。

 

「もしかして美怜ってお菓子、好きなの?」

 

「寧ろ好きになれない理由が考えられない位は」

 

 それって滅茶苦茶好きって事じゃん!

 そう、美怜は大のお菓子好きなのだ。口にしたことも滅多にないのだが、以前家に侵入してきた忍から菓子を取って食べたことがある。

 こうして聞くと略奪搾取の鬼畜少女と思われるだろうが、このサイコガールにそんな言葉の意味など通じるはずもなく。

 

「そもそも頭を使うのにも糖分摂取は必要不可欠、そして日々研究をする上で思考を重ねるのも必然。

 私ほどお菓子に対して適応してると思わないかしら?」

 

「おかし食べ過ぎて糖尿病にならなきゃいいけどねっ」

 

「大丈夫よそれくらい…ふふ」

 

 美怜にとって糖分など力の源でしかない。

 此処でふと思い付いたのが、美怜が甘いお菓子が好きなのであればそれを機に上手く彼女に言うことを聞かせれば良いのでは?

 然しそれ位になると相当なる金が必要となるので、その考えは見事に儚く散ることとなるのは言うまでもなく。

 

「………ねぇ、八つ橋以外にもどの甘いお菓子があるのかしら?とても興味があるのだけど」

 

「それなら京あめとかあのんとか…京都名物とか調べたらもっと沢山あるんじゃない?」

 

「本当に美怜ちゃんは甘いお菓子に目がないのですね、何だか子供らしくて微笑ましいですわね」

 

「子供だからお菓子を貰えるのなら大人である拘りは必要ないし、寧ろ大人であるにも関わらず精神的な面から子供である事なんて、そう珍しいものでもないんじゃないかしら?」

 

 美怜の言う通り、社会全体としても世の中には子供大人と呼ばれる類の人間は存在する。

 成人を迎えたにも関わらず子供のような一面があれば、子供のような幼さを曝け出す者も、社会に出て通用しない人間も、基本的にそう言った者は少なからず存在はしている。

 勿論、雄英高校襲撃者の主犯にして初期プロフィールの頃の死柄木弔なども挙げられる。

 

「ふむ…私で言う肉、と言ったところか」

 

「貴女は正に見たまんまね。イメージ通りというか、貴女が野菜やお菓子が好きという発想は思いつかないもの」

 

「やっぱりお前喧嘩売ってるだろ?それともこの流れで訓練でもするか?」

 

「取り敢えず貴女は頭に登った熱を冷ます為に滝打ちしなさい。修行しながら頭を冷やす、合理的で一石二鳥よ?」

 

「夏が過ぎた涼しい季節の滝打ち修行舐めるなよ?」

 

 などと歪み合い、軽口を叩き合うほど、今となってはそんな違和感さえも感じないほどに親しくなった焔と美怜。

 焔も強者と認めなければここまで対等として見る事など滅多にないこと…肌身で感じ取れてるのだろうか、それほどに焔自身も美怜を認めてると解釈しても良いだろう。

 

「あ、伊佐奈との件で忘れてたけどウチらこれから仕事とかしなきゃだからアジトに戻ってから準備したりとかして出てくけど…美怜は留守番できる?」

 

「ベルゼ兄さんと一緒に過ごしてたあの家でいつも本を読んでたし大丈夫よ。それに今日は『人間の心理と肌荒れ』を一冊丸々読むつもりでいたし」

 

「なにその絶妙なニュアンスの本…笑えるのだから笑えないのだか…そんなに本を読んでて飽きたりしないのなら別にまぁ」

 

 その本は一体どこの誰が購入したのかは追求しないとして、美怜が大人しくしてくれるのなら此方としては安心出来るだろう。下手に動き回り、抜忍狩の追跡者に居場所がバレたり命を狙われるよりかは…と、此処で一つ心配事が…。

 

「もし私たちのアジトに襲撃者とか来たらアンタ対抗できる?」

 

 未来の言葉に、他の四人もハッと我に帰る。

 たしかに美怜は家族の一員であり、守と誓った…しかし、自分が不在の時に、もし手が届かない場所で何かあれば、美怜は果たして一人で何とか出来るだろうか?

 詠、日影、未来、春花の四人は言わずとも、美怜の事は深く知らないことも含めて謎も多いミステリアスガール。ましてや彼女が戦う姿など想像付きにくいし、護身用に忍としての武器があるにしても扱えるかどうかと聞かれてもハッキリとは答えにくい。

 そんな心配ごとも吹き飛ばすかのように美怜は

 

「ああ、その事に関しては心配しないで。一応、殺しの術は学んでるから」

 

 などとさも当然のように答える。

 

「美怜ちゃんって…人を殺したことあるの?」

 

「ないわよ?前にも言ったけどそういうのはベルゼ兄さんが全部やってくれたし」

 

「戦場は思い通りに行くとは限らないんだぞー…?」

 

「ふふ…ねぇ、なんでベルゼ兄さんと一緒にいて、侵入者たちに命を狙われながら平然と生きていられるか知ってる?

 私だって何も逃げてばかりではないのよ?そりゃ、ベルゼ兄さんがいつも庇ってくれたり、手を出さないようにと守ってくれたのも事実だけど…何も兄さんは常に側にいた訳でもなく、離れた具合を見計らって隙を突こうなんて輩もいたものよ。それでも私は生きている。私の腕くらいは信じてくれないと、この先お荷物という訳にも行かないでしょう?」

 

 そこまで言われると妙に説得力というか、信頼性というものを感じる。

 

「それならまぁ、頼んだぞ?」

 

「安心なさい。せいぜい洗い物や家事くらいはしておくから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、皆んなも居なくなった事だし…」

 

 あれかれ一時間後、アジトに戻るなら支度を終えてバイトに向かった紅蓮隊を見送り終わった美怜は、息吐きながらと図書館でもありそうな分厚い本に目を通しながらページをパラリとめくって行く。

 本は大好きだ。

 頭の中でイメージがついたり、知らない情報を知識を吸収したり、それが真か嘘か、なによりも静かな空間で読書に嗜むのは居心地が良い。鳥のさえずりに、木々の揺れる葉音、そして暖かな陽射しは、心も頭もリラックスできる故に、自然に囲まれた状態でのソレは、家にいた時よりも何倍も読書という趣味を最大限に楽しませてくれる。

 …実はこれ、美怜としては焔達のトレーニングに匹敵するほどの価値がある。例えばとか、そういう意味合いではなく現実味として。

 イメージトレーニングに、脳を整理し活発するように働くという行為こそ、美怜を強くしている。

 

(やはりこの時こそ一番リラックスできるわね…陽射しを浴びる事で精神的にも衛生面でも良いと聞くし…)

 

 家にいた頃はずっと引きこもりという訳ではなく、体を清潔に洗うために家の外の側にある川で水浴びをした事がある。

 その頃は外の景色を眺めながら水に浸かり小鳥や空を見上げては心地いいと感じたこともあった。

 流石に冬の季節は拷問と呼ぶくらい厳しかったので、最悪だったしドラム缶くらいあれば部屋に持っていき火を点けて(古典的なやり方だが、摩擦で火をつけて)沸騰させた状態で浸かるという方法も考えたのだが、そんなもの家にあるわけがなく、心臓麻痺を起こしてしまうのではないかというくらい憂鬱だった。

 

「…そういえば、焔達は普段お風呂とかどうしてるのかしら」

 

 昨日は入らなかったにせよ、此処の近くには川があったし恐らく何らかの方法はあるだろうと楽観的になりながら、再び読書に集中を戻す。

 …まぁ、尤も二、三日とも風呂に入らなくとも問題はないのだが流石に衛生面や不潔になるのは喜ばしくないので上手くやれるだろう。

 

 

 

「思ったより面白かったわねコレ。次は春花の新しい薬の調合本でも読んでみようかしら」

 

 などと読書を終えた美怜はパタンと分厚い本を置き戻し、一息吐く。心理学は好きだ。

 人間の心や想いという事に関して配慮が欠けてたり、理解に悩む美怜にとって、参考書にでもなったのだろう。

 実際に書かれてる事が違ったとしても、知らないよりかは知る方が良いし、真実と異なる場合であればその真実を知れるだけ有難いもの。

 

「…気づけばもう昼なのね。小腹も空いたし…そういえば昼食について何も話してなかったわね」

 

 単に忘れてただけだろうし、バイト中の焔達も多分心配してるのだと思う。特に詠に関しては間違いなくそうだろうし、変なところも含めてお人好しな部分が多いあの連中からしてその推測は間違いではないのは確かだ。

 

「まぁ、何もなければそれでも我慢するだけで良いのだけど、流石に心配された挙句何も食べてないってなれば余計に気負いするのも宜しくないから…仕方ないわね」

 

 先程焔にも言った通り、お荷物になる気はないと断言したのだ。子供にしろ何にしろ手助けされなければ何時迄も状況打破出来ないひ弱なヒロインという訳にもいかない。

 美怜は護身用の大鎌を軽々しく振り回しながら、肩に担いで外へと歩み出る。

 

 

 

 外に出れば生い茂った草木や葉がありながら、美怜は細心の注意を払いながら奥へ奥へと森林の奥地へと足を運び出る。

 念のため、道印となるように塗色の薬品を零しながら足元を矢印にして散策を続ける。

 勿論迷い込まない為のも含めて、時間経過で色は消えたり抜忍狩に情報を盛られることもないので危険性は低い。

 本当なら忍が扱う色米を使えば良いのだが、流石にアジトにはなかったので仕方なく春花から借りた薬の調合を行ない実権も兼ねて使う事に。

 

「蜂や毛虫等はいないようね…取り敢えず蛇はなんとか捕まえたけど」

 

 片手に絞め殺した蛇を手に持ちながら美怜は食料調達を行なっていた。

 詠と話してた時に「お金がない」と言ってたり、焔達も「肉が食べたい!」とも言ってたりと苦しんでいたのもあり、食費も掛らず尚且つ肉も食べれるという両立した意見を求めた結果としてサバイバル形式で食材を探す事にした。

 此処ら辺の土地に詳しくないのもあるが、これを期に知るのも良い機会だと前向きに考えた結果として外へ出て狩を行なっている。

 焔達にも留守番はしておけと言われたし、外に出る事で万が一抜忍狩に遭う可能性もあるが、美怜は実際に狙われる危険性は低いと感じている。

 焔達は抜忍で、命を狙われてるという話は既に耳を通してる…然し、伊佐奈の件で知ってるだろうが美怜自身上層部や抜忍狩は彼女を知ってるとは限らない。

 それもそうだ、つい最近仲間に入ったばかりのメンバー、況してや戸籍記録もない上に顔や写真、情報すら無に等しいほどの人間は裏社会の人間と同じく謎が多いのだ。

 一眼見ただけで彼女が焔紅蓮隊の仲間だと知る術は持ち合わせてないし、鈴音とやらが情報を渡したにせよそうでないにせよ顔そのものまでは分からない上に、上層部に派遣された忍も流石に無闇矢鱈に一般市民に手を出すことは殆どないだろう。

 あったとしても返り討ちにするなりアジトへ連れて拷問なりすれば良い。

 そして対抗術や打開も既に頭の中では分かっているので、後は実践あるのみ。

 

「このキノコ良いわね、食用として使えるわ。カエンダケは危険だから手袋で毒の調合にも使って……薬草も大量。思った以上の収穫ね」

 

 高望みせずとも「食料さえ取れればラッキー」程度の美怜としてはかなりの収穫だ。

 毒キノコは抗体や研究、迎撃や殺しとして使えるし、薬草は応急処置などにも適応し、蛇やリスは食料に向いている。

 

「あら、丁度良いお目当てなものが見つかったわ」

 

 と、此処で草むらを掻い潜ると、お目当ての獲物が見つかった。正直、いない可能性も考慮していたが予感は的中。

 美怜は舌なめずりをしながら大鎌の柄を握りしめる。

 此方には気付いてない、今こそ好機。美怜は集中力を極限に高めて、足音を立てずに狙いを定めて獲物の首を刈る。

 

 

 

 

 空がオレンジ色に焼き焦げた夕焼け頃、焔紅蓮隊のアジトへと最初に帰ってきたのは春花だった。

 

「はぁ〜…今日もバイトクビになっちゃったし…流石にこうも7回も連続でやられるとキツイわよねぇ…」

 

 コンビニのバイトとして雇われていたのだが、接客の際に中学生にちょっとしたサービスを提供(客観的に見ればセクハラとしか見えない)していた為、それを店長に見つかり即刻叱られクビにされてしまったという話だ。

 バイトと言えば、家庭教師やファーストフード飲食店の店員、交通道路の誘導係など、それぞれのバイトを始めてみるもどれも全てクビにされてしまった。

 家庭教師の仕事の時は少し暑かっただけで胸元のボタンを開けたら中学生のウブな男子が鼻血を出したり、交通誘導の際にサービスとしてお尻を向けたら何故か車が勝手に一直線に走り事故を起こしたり(運転手が釘付けになり余所見運転をしてしまった為)、ハンバーガーショップに至っても今回と同じように女子の免疫に弱い子を揶揄ったら店長に首を掴まれなど、今思い返せば黒歴史ばかりだ。

 

「あ、そう言えばバイトで忘れてたけど美怜ちゃん…食事はどうしたかしら…」

 

 ふとここで我に返った春花は疑問を浮かばせる。

 此方は食事に関してはバイトで出してくれるので食事に関しては思い浮かばなかったが、流石の彼女も空腹で機嫌を悪くしてるのかもしれない。

 此処は帰ったら慰めるなり何なりしようかと思いながら、アジトへ戻ると

 

「あら春花、お帰りなさい。バイトって結構時間がかかるのね」

 

 アジトの出口で焚き火を起こし、猪や鹿を焼きながら薬草を潰して調合してる美怜が優雅に焼かれた肉を齧りながら研究に没頭していた。

 

「思ったより全然大丈夫だったじゃない…!」

 

 お詫びに何をしようか考えながら、香ばしい肉の匂いに空腹感を刺激される春花を他所に、美怜は美味しそうに肉を頬張る。

 

「空腹を空かせて野垂れてた方が貴女的には良かったかしら?」

 

「いやそういうわけじゃないけど…心配して損したというより…」

 

「煮え切らないわね、まぁ良いわ。折角だし貴女も疲れて空腹にやられてるだろうし…肉でも食べて腹を満たしなさいな」

 

 ほら、とサバイバルナイフで肉を切りながら火で肉面を炙り、じゅうじゅうと肉汁が火に注がれては呼応するように燃える焚き火の光景に、口の中が自然と唾液で溢れていく。

 

「こ、これ…美怜ちゃんが…??」

 

「ええ、それに昼は蛇を焼いて食べたわ。中々にどうして、見た目と違ってとても美味しかったわ。毒を抜いて毒薬として血は保管してあるし調合素材も問題なく調達できたわ。今度抗体の作り方とか教えてね」

 

 はいこれ、と焼き上がった肉の塊をフォークで刺して春花に差し向ける。絵面的には食べ物を差し出されて食らいつくような程精神が保てない訳ではないのだが、いざこうして出されると野草生活が続いてた分、目前の欲望に目が絡む。

 

「じゃ、じゃあ遠慮なく…♪」

 

「ああそれと、バイトで稼いだお金で甘いお菓子一つ頂戴な。これは交渉ね」

 

 …どうやら美怜は本当に交渉術が上手いようで、食べてから約束されたことで肉の味はしたが、バイトでクビ連発した春花は何処か罪悪感に浸ってしまったせいで、美味しさが半減したような気分に陥った。

 

 

 

 

 

 

「これ、美怜ちゃんが…?」

 

 そしてそうこうしてるのも束の間、詠、未来、日影、焔の四人が帰ってきてから、目前の異様な光景に思わず固唾を飲み込んでしまう。

 

「私も最初はびっくりしちゃったわぁ…家事は終わってるし食用も用意してるし、オマケに私が書いた調合のレシピも全部レポートで纏めてるんだもの。幾ら時間が多いとは言え、ここまで来ると生活的にも楽になれるし」

 

「私は生憎バイトとやらは受けれないし資金も稼げないから、私自身出来ることをやったまでよ。ああそれと春花、こっちの薬品Aは出来上がったから15分程でBの方も見てくれる?レポート通りに出来てるはずだから」

 

 春花と美怜は薬の実験研究に没頭で、二人して早くも共同作業に励んでいた。

 この山から採れた多様な植物を薬として調合する事により、マッドサイエンティスト以前に科学者としての本性が疼いたのだろう、美怜は淡々とこなしながら集中を高めている。

 

「奪ったとかじゃないよね…?」

 

「あら、素敵な考えね。奪い殺すのは実に生物的らしい…今度そうしてみようかしら?」

 

「ちょっ!?悪忍並みに性質悪いじゃない!!」

 

「冗談よ、外に出て下手に問題を起こすのは私としても喜ばしくないもの…常識がないとはいえ、貴女達の最低限のルールとやらには従うし安心なさい」

 

「サラっと非常識的なことを発言しちゃってない?」

 

「常識だなんて他人が当たり前だと言わせるように作った唯の価値観でしょう?本音を言えば盗みを働くのも悪くないと思ったのよ。まぁ、盗むことでそれなりに問題が発生するのなら、穏便に済ませば良いだけのことだし、そして山で採れた彼等はお金もかから無いから…良い貢献をしたと思ってるわ」

 

 独自の倫理観を持つ彼女に少し慄けを感じてしまう未来に、日影と焔は興味津々そうに収穫した食材やらとに目を付ける。

 

「なんやこれ、芋?」

 

「猪の他にも干して吊るしてあるリスに…魚か?川で捕ったのか!後は蜂か?これは一体何に使うんだ?」

 

「油で揚げて食べるのも良いと思うのだけど、漢方薬として使うことにしたわ。ああそれと日影、そのキノコは間違っても触らないで、毒で皮膚感染して死に至るから」

 

「そんなもんまであるんやなぁ……じゃあこれは何の為に採ってきたんや?」

 

「研究の為よ、それとこれを上手く武器に塗りたくって戦闘を有利にさせるのもアリかもね」

 

「それほぼ死ぬんじゃ…」

 

「あら、私達が武器を振るう相手は殺されても問題ない相手ではなくって?生きる為に何かを殺すと言うのは、人間が当たり前のようにしてる事じゃない」

 

「そ、それとこれとは違うと言うか…」

 

「何がともあれこんだけ食材があれば暫くは食い凌げるし、野草やらもやしばかりにならなくても済むぞ!!

 あぁ、早く肉が食べたい!!私は我慢できん…美怜、此処の辺りで採れたんだよな?」

 

「リーダーに誉められれば私も上々かしら…ええ、ここの森林地帯を漁ってみたのだけど思ったより収穫出来たのは此方として思わぬめっけ物だわ」

 

「もやし以外にこんな…こんなご馳走を頂いて宜しいのでしょうか…?!今夜はもやし鍋にしようかと思ってたのですが…!」

 

「なら丁度良いじゃない、もやし鍋に肉を詰めて食べましょう。肉ばかりでは体にも良くないし、野菜を摂取するのも人体に必須な事だから」

 

 詠にとって贅沢は敵であり、豪華なものに目が絡むのだが、自然の恵みというのであれば許容範囲らしい。何せよ、以前蛇女の修学旅行にては豪華なご馳走の前でタッパーに詰め込んでいた程なのだから。

 六人飯を囲うように盛り上がり、暖かな篝火に照らされながら食卓を楽しむ。

 美怜が来てからというもの、こうして過ごす日々が楽しいとさえ思えていくのは紅蓮隊の生活に色が付き始めてきてるからなのだろう。

 

 こんな日がいつまでも楽しく続けていけば続けていけば――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 滋賀県・霊仙山にて、彼女達も微かな進歩を進んでいく。

 高い座標にして空気が冷たく、生い茂る筈の草木は枯れており、干ばつとしており絶好とも呼べる景色も今となっては台無しだ。

 霊仙山に今は誰一人としていない筈なのに、其処には確かに人影が二つ其処にある。

 

「まさか…此処に来て漸くと言うのに…ここまで歯が立たないとは…」

 

 一人は蒼い短髪に沈着冷静を装い、嘗ては蛇女子学園に在籍し、今となっては潰すために憑黄泉を送り込み、漆月の為にと仲間集めに励んでいた彼女は、思いもよらない障壁と出くわした。

 この地に潜む凶悪な敵に出くわした蒼志は、成す術なく地に伏せている。

 彼女の忍装束は既に半壊し、肌の露出やら下着やらが見受ける手負いの蒼志を前に、威圧を放つ大柄な獣人は苛立ちと悲しみに表情を染めている。

 

「『魅影』!!グルウゥゥ……!!何故だ…っ!なぜこんなにも弱すぎる抜忍を仲間と見るか…魅影殿!!

 処刑少女共とではなく、有象無象の破壊衝動の仔虫など…何故にだ…!!!」

 

 獅子と狼という混合した天災を齎す獣人は、蹂躙するかのように、蒼志の刀を踏みつける。

 獄獅狼の体は蒼志によって放たれた蒼炎を浴びながらも火傷一つすら負わず、無傷で佇むばかり。

 

「魅影…?一体何を……」

 

 初っ端から、幸先は雲行き怪しく混乱。

 蒼志を前に立つのは悪の象徴・オール・フォー・ワンが隠し通した友にして、漆月たること天咲魅影を守り育てた教育者、周辺防衛の一人。その名も『獄獅狼』。

 ギガントマキアと同じく、主の為に全てを捧げた、忍にとっての破壊者であり、最も忍の象徴・陽花の実力に近い者だ。

 

 

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