最近のヒロアカはメチャクチャ面白いし、最新話に触れていくと此方の作品も考えたり新キャラが〜ってなってるので、手が止まってた理由は忙しいのもあるのですがまた先のストーリーのことを考えておりました。
焔紅蓮隊と再会を果たす少し前、空腹をすかした半蔵学院のメンバーと補欠は違う部屋に分かれて夕食を済ませてから、各々は旅と共に忍商会と遭遇した傷と疲れを癒すべく、温泉へと赴く訳だが…
「おっ!飛鳥お前まーた胸が大きくなったんじゃねえのか!?見ないうちに成長したなんて、久々のおっぱいだー!!」
「ちょっと葛姉!?絶対に服脱ぐ時とか着替える時に胸を揉むんだからぁ!!」
流石は日常茶飯事とも呼ぶべきか、葛城のセクハラ行為は通常運転。豊満な胸をまさぐられ揉まれたりといやらしい手つきで飛鳥の胸を堪能するその姿、男子ならば悩殺されるだろう光景が更衣室で繰り広げられていた。
「葛姉様!!それなら今度は菖蒲の胸を是が非でも揉んでください!あっ、勿論揉むだけじゃなくてセクハラなら何でもオーケーですけどね!」
「いや、アタイは久しぶりに飛鳥の胸を堪能したいだけだから…遠慮するよ…」
久しい飛鳥へのセクハラに熱が上がる葛城の暴走を冷却するように、羨ましそうな眼差しを向けながら葛城にセクハラをしてほしいと懇願する菖蒲。
葛城はセクハラするのは大好きだが、して欲しいと願ったり厭らしい声を上げない女性に対してはてんでセクハラはしないのだ。
女性の嫌がる矯正を聞いて始めてセクハラ心に火が付くというもの…セクハラをしても無反応だったり喜ばれたりするのは葛城の性分ではないと同時に、マネキンやら人形やらを相手にセクハラする虚しさが残る…彼女はそれが大の嫌なのだ。
だから飛鳥や斑鳩といったセクハラして良さそうな女性には目がないのである。
そして斑鳩と飛鳥は思ったのだ。そんなもん知るか、と。
「んー…ん?あれ、誰か、先客がいる……」
「そりゃ京都なんだし温泉に何人か人がいても可笑しくないんじゃない?」
眠たげに目を擦りながら衣服を脱ぐ清明に、ケラケラと笑う風魔。普通はそうなのだが、発言自体に何処か意味深があることに土方は多少の違和感を覚えた。
清明は怠そうな格好と眠たげな表情からして害意のない芭蕉に似た小動物らしさを漂わせているが、実際は重火器を使用した狙撃手だったりもする上に、予知夢なども使えるため金の卵としてはかなり有能ではある。…本人にやる気の意思がないのがたまに傷だが…
全員とも裸体から温泉用のバスタオルを身体に巻き、いざ湯船へと行かんと扉を開ければ、ムワッとした湯気が立ち昇る。
見れば六人ほどの人影が温泉ではしゃいでる光景がうっすらとシルエットとして映し出されていた。
露天風呂の温泉に束の間の休息を取っていた焔紅蓮隊の前には、学炎祭や林間合宿の病院の見舞いを終えてから短い月日を経た半蔵学院のメンバー達が、裸体をバスタオルで隠しながら自分達の前に姿を現した。…若干、見たことのないメンバーもいるが、勘が当たるとすれば半蔵の選抜補欠メンバーだろう。
尤も超秘伝忍法書争奪戦で忍学科の半蔵学院に奇襲をした際は姿などなかった為、そもそもの話選抜補欠メンバーの存在自体があった事に多少の驚きもあったりはしなくもない。
蛇女にも補欠メンバーがいるのだから、成り行きで考えれば当然といえば当然なのかもしれないが…
「焔ちゃん達も京都に来てたんだー!!学炎祭の時といい、本当に縁があるよね私達!」
「ま、まぁ…詠が一等賞の京都の旅行チケットを京都の福引で当ててだな…それにしても、以前観に行った時は病室のベッド上で満身創痍のボロボロだったのに、今じゃ間違えるほどに平和面してるんだもんな」
「ムカッ、ふーんだ!これでも一応仮免取得出来るくらいにはなったんだからね!」
「寧ろ取れてなかったら鼻で笑うところだ、超秘伝忍法書の争奪戦や学炎祭の件もあったんだ。それに、私以外にやられるなとも言ったしな」
然し其れも昔の話、今は半蔵学院と焔紅蓮隊の因縁など等に無く、今となっては昔殺し合った仲でも今は最強の友達同士なのである。現に温泉という憩い場で言い争いなどなく、殺伐どころかほんわかとした雰囲気で旧知の友のように談笑を交わすその光景は、とても嘗ては殺し合ってたなど幻想にも思えるものだろう。
「それにしても詠さんは凄い幸運なのですね…一等なんて、普通狙おうとしても早々、当たりませんし…」
「私なんて全然…私だけひもじい思いをしても良い、他の仲間達だけでも恵まれたらと思ってのことでしたし…」
「あら、謙虚なんてしなくても良いのに。運も実力の内というでしょう?そのお陰で私達紅蓮隊は京都に行けてるのだものね」
斑鳩と詠の対話に挟むように、横から何ともなさそうに公言する美怜は、無表情ながらも詠にくっつくように口を開く。
そして見たこともない少女に、斑鳩も目を丸くする。
「あれ…?えっと、その方は…詠さん達のお知り合いなのでしょうか…?」
「知り合いというより、新しい家族と言うのが正しいのかしらね」
美怜の発言に、半蔵学院のメンバーは驚嘆の声を上げ、焔はニヤリと口角を釣り上げる。
「えぇっ!?焔ちゃんに新しい仲間が増えたの!?!わぁ、何だか可愛い子だね!」
「ふっふっふ!そうだ飛鳥!お前たちが平々凡々な日常を繰り広げてる間に、紅蓮隊は新しい仲間が増えたんだ!
もう今までの紅蓮隊とは一味違うんだからな!!」
「ねぇ、紹介するのはさておき人を出汁に使わないでくれるかしら?」
目を爛々と輝かせる飛鳥に、さぞ気持ちが有頂天に昂ぶったのだろう。焔はふはははと高笑いしながら、美怜の身体の両肩を掴んでヒョイっと詠から剥がすように飛鳥の前に持ってくる。
不服ではないものの、焔の自由奔放な性格に困り果ててるようにも見えなくはない。
「もぅ焔ちゃんまるで我儘な子供みたいなんだから…あっ、私は飛鳥って言うの!これからって訳じゃないけど、覚えててくれたら嬉しいなぁ♪」
「飛鳥…ふぅん、まさか新幹線の中に乗客してた貴女達が焔達との知り合いだったなんて、想定外なこともあるものね。
私は美怜、どうぞ宜しく」
新幹線の中で飛鳥達を見かけてはいたのだが、まさか彼女達が焔達と知り合ってたという事実自体が初耳なので、正直なところ美怜も多少なりとも驚きはあったのだ。
「そっかぁ、美怜ちゃんって言うんだ…ってあれ?新幹線の中で会ったっけ?」
「気にしないで、一方的に貴女達を見たって理由だし」
飛鳥達は美怜のことを気にして無かったので、彼女のいう通り一方通行で知っていたことになる。
美怜は記憶力が著しく高い上に、人間観察を行う習性がある。印象の低い人間を覚えてるのいうのであればさておき、飛鳥達は印象が強かったので割と覚えられた。…尤も、忍ぶ側の人間が印象強いというのも可笑しな話だが。
「美怜さんと仰るのですか…私は斑鳩と申します。其方の変態行為を行う野蛮な方が葛城さんで…」
「うぉい!?紹介雑すぎるだろ!?」
「雲雀は雲雀だよ!それでこっちが柳生ちゃん!!」
「ふぅん…焔達の知り合いということは…旧友の仲なのかしら?それとも蛇女の知り合い?」
「まぁその辺は話すと長くなるからまた後で話すとして…それにしても飛鳥達にも選抜補欠のメンバーがいたんだな。前に学校に侵入した時は姿や気配さえも感じなかったが…」
「あの時菖蒲達は遠いところで強化合宿してたんですよぉ〜!それに蛇女の生徒は両備さん達しかお会いしたこと無かったので、抜忍となった元蛇女の選抜メンバーとこういう形で逢えるのはなんだか新鮮な気もしますね」
菖蒲達半蔵選抜補欠は、雄英高校B組だけでなく現役してる蛇女の選抜メンバーと対峙したことがある。
内容は飛鳥達や緑谷達と受けたのとは多少異なるが、一筋縄ではいかなかったのは確かで、半蔵補欠の皆んながこうして無事に仮免取得に成功したのも奇跡的なものだろう。
「でも凄いよねぇ、焔ちゃんは昔は仲間なんて不要だ!とか言ってたのにさ、今じゃ仲間が増えちゃうくらいなんだもん。
そういう意味では焔ちゃんって、最初の頃と比べて変わったよね」
「ふ、ふん…!私だって成長くらいはするさ!それに…」
美怜のことに関しては伏せておこう。
此処で話せば長くなるあまり温泉の湯船で逆上せてしまう事も考慮していたのだが、単純に妖魔と人間の兄妹というエピソードはかなり大きいものであれば、誰が聞いてるかも分からないのに公の場で世間話のように軽々しく口にするものでもないからという気持ちもある。
美怜も敢えて自分から語らない辺り、そういう事なのだろうと直感で理解する。
「おいお前、雲雀に対してあんまりベタベタするなよ」
「ベタベタ?こうかしら?」
「きゃあっ!?ちょっ、美怜ちゃん!」
ニコニコと笑顔を差し向ける雲雀と、面白そうに瞳を見つめる美怜に嫌気が刺したのか、柳生が輪に入って口を挟むものの、美怜は首を傾げながら胸や尻、体をベタベタと手で触れていく。
「そ、そういう事じゃ…!あ、いやそういう事でもあるが…ええい!雲雀から離れろ!」
「あら、何も強引に引き剥がす事ないのに…それに貴女の表情からして何がそんなに気に入らないのかしら?」
「いきなり雲雀の胸や体を触る事ないだろう…!ひ、雲雀の体は、お、俺が守る…!」
「柳生ちゃん!鼻血を出しながら言っても説得力がないよ!?」
「……ああ、そういう事ね。貴女…雲雀が誰かと仲良くすることに嫉妬を覚えては、彼女に対して束縛と独占を強いてる訳ね」
ふぅぅん…とニヤケながら指を唇に当てながら全てお見通しした美怜に、柳生は図星を突かれたようにピクリと身体が反応する。
「彼女の瞳が気になったから調べてただけだけど…そう…。私は同性愛に関して口を挟むわけでも咎める訳でもないけれど、余りにも激しいとかえって嫌われてしまうわよ?」
「うぐっ…!そ、そんなことある訳が…」
「ひょっとして、これが雲雀のボディーガードなのかしら?華眼の持ち主の大体は側近とかがいたりして仲間からも重宝されるものなのだけど…」
「うん…?ぼでぃーがーど…?」
心中突かれたことに眉をひそめる柳生など御構い無しに、美怜は興味津々に雲雀に接近する。
「…貴女、華眼の子でしょう?瞳を見れば分かるわ。歴史の古文でしか見たことないけど…一部によれば、憑黄泉神威という驚異的な神魔をも窮地に追い込ませたと言われる900年以上も昔に存在した古の瞳術…
余りにも希少価値が高すぎるから、忍でありながら大名の如く重なる影の従者が山ほどいると聞いたのだけど…」
「え、えっと雲雀は…」
「華の様に美しく、その瞳に魅入られたものはどれほど屈強な人間だろうと妖魔であっても簡単に屈服、或いは蹂躙できるんですって。同時に多くの人間が喉から手が出るほど欲するんだもの。
ねぇ、貴女は何を持って忍になりたいと決めたの?その華眼を駆使してどれ程の戦法を身に付けたの?何なら、その術で誰かに試してくれるかしら?私、貴女の忍術を見てみたいんだけど…」
美怜は爛々としながら雲雀に質問攻めをする。
光山に対してもそうなのだが、初対面の焔達でさえも興味こそあれど然程執着はなかった美怜が、あそこまで熱心に雲雀に執着するのは初めてだ。
流石の雲雀と美怜には答え難いのか、それとも単に迷惑なのか、反応に困っている。
「おい、いい加減にしろよ貴様…!雲雀が困っているだろう?!」
「困ってるから…何?貴女とは無縁でしょう?」
「何だと!?」
「私は純粋に雲雀に聞きたいことがあるから聞いてるだけ…雲雀自身が言うのならさておき、貴女は雲雀の所有物ではないし、貴女の客観的な価値観による感情論でしょう?
それなら、私が雲雀と仲良くしようと話そうといいじゃない。そう言う言葉は、彼女の身に危険が生じた時に使いなさい」
気に食わないが正論である。
美怜は柳生と雲雀の関係性をそこまで理解していないし、そもそも仲良しの所を見る機会など滅多にないだろう。
「それにこれは単純に私自身の問題でもないし、下手すれば貴女達の身に起こる危険性も考慮しての話よ。
華眼は余りにも特徴的だから、彼女の一族を狙うもの、怨む者、妬む者もいて可笑しくないのよ。
それ程に、彼女の力は絶大…一部、文章には200年前にティオ・ディアボリクスの研究のために誘拐され人体実験を受けたと言う経歴が残ってるわ。
ほかにも、忍ニュースの歴史で聞いたけど…40年前に華眼の一族の暗殺を図っていた抜忍がタナトスに送られたそうよ」
華眼は妖魔の巣…もとい、美怜の家にあった書籍でもその歴史と功績は記されていた。
戦国時代でも大いに活躍し、百妖夜行をたった一人で犠牲者を出さずに制した程の者。それを味方に欲する者は後絶えず、敵連合の死柄木に華眼の存在を唆し、手に入れる様に隠密に裏で操作していたオール・フォー・ワンも気に入っていた程のもの。
強すぎる力は、同時に誰かに狙われる証拠にもなりうる。
因みにタナトスとは世界各国の中で最高峰とも呼べるほどの超厳重セキュリティによって管理されてる極悪忍死刑処置特殊拘束監視場のこと、監獄である。
死すら生緩く、生きることでさえ罪があり、存在さえも否定される最悪な忍の集い場。タルタロスが個性を管理する監獄であれば、タナトスは忍を管理する監獄であり、敵連合の抜忍も捕まれば其処へ行く設定となっている。現に連行されるのは犯罪の重さに加えた懸賞金の高さである。
黒佐波、戦姫衆の神姫、呪王、忍商会第五支部長の僧絽門、他にも名を馳せ悪徳を積んだ鬼畜の抜忍が老若男女問わずごろごろと収監されてる阿鼻叫喚の地獄が存在する都市伝説がある。
更に面会はなく、国による死刑や科学者による忍術の考察、効果や性能、罪状の調べやらで存在そのものが国にとって忙しいものだ。
それそのものが都市伝説だと大して気にも止めない者も数多く存在するほどに、情報が一切ないのである。
なのでタナトスに収監された囚人は、既に死亡報告として上がっており、存在を匂わせず、誰にも知られずに処刑…或いは衰弱死する。
「つまり、雲雀のせいで沢山の人が傷ついちゃうってこと…?」
「その可能性もなくはない…だからこそ、貴女がその華の瞳をしてるのでさえ私も思わず息を呑んだのだし」
「み、美怜ちゃん…幾ら何でも考えすぎじゃ…」
「でも考察と予測はするべきよ。
考えずただ漠然と対策もなく馬鹿の一つ覚えみたいに迎え撃つより、しっかり可能性や考察をした上で行動し、策を取るのは鉄則…
それに判明されてないことも多々あるみたいだし」
「そういえば…雲雀さんって基本的に戦う時は秘伝動物や肉弾戦でしかしてませんもんね…」
雲雀の忍術、華眼は未知なる術として存在しており、太古の時代から受け継がれてきた忍術でも、未だに解明されてない謎も多く存在している。
知的好奇心の美怜に調べるなという話の方が酷である。
然し華眼の術を扱えるのは愚か、この瞳術のせいで無意識に皆んなを洗脳してるのではないかという疑惑もあった。
現に雲雀の華眼のせいで、敵連合からも爆豪と同じく捕獲対象にされてたのだから。
「まあまあ…!折角の温泉なんだしさ、考えるよりも今は満喫しようよ!」
「う、うん!そうだよね!」
「…まぁ、一理あるわね。私も嫌がられても困るし…」
此処で場の雰囲気を良くしようと話をふっかけた飛鳥に、雲雀の顔色が元に戻り、美怜も潔く話を引っ込ませる。
個性豊かなA組と一緒くたになっていると、こうして場の空気を読んでは方向転換を変えたりしたものだ。
…尤も、爆豪相手には通じるわけもなく。
「でも温泉と言えば林間合宿のことを思い出すなぁーっ!あの時は夜景より洸汰くんが峰田くんの覗きを止めてたところが印象強かったけど」
「懐かしいねー!もっと合宿楽しみたかったもん」
「楽しむ事より過酷な訓練が7割だったがな」
林間合宿の時も露天風呂が設置されており、自然の恵みに囲まれながら疲労困憊の日々が永遠のように続いていたものだ。
入浴時間では性欲の権化である峰田実がよく覗き行為をしようと図ったり、木椰区ショッピングモールで購入したドリルなどで女子の裸体を覗こうと血涙共に励んでいたが、それも杞憂に終わったのは何ともまぁ傍迷惑な思い出もあったものだと心中思う。
「そいやアタイらは三年扱いなのと半蔵学院としての生徒だったから行けなかったんだよな。聞きそびれたけどどんな内容だったんだよ?」
「話せば長くなるよー?」
初日からピクシーボブの土流によって作られた魔獣の森を掻い潜ったり、朝早くから夕方までびっしりと強化訓練を受けたりの分刻みのスケジュール。
そして予期せぬ敵連合の襲撃事件。
襲撃してから林間合宿は中止としての結果となり、一週間を満喫することは出来なかったが、それでも学生が相手にして良いレベルじゃない程に個々人が強敵だった。
「そうだ、飛鳥!学炎祭が終わって再開してから宣言しようとしたんだが…今度こそ決着を付けようじゃないか!!」
「もー…焔ちゃんって会ったら直ぐにそれなんだから…」
「…とはいえ、私たちが京都に来たのはあくまで憩いの休息として、旅行を満喫し羽根を伸ばすのが目的。
況してや此処で争うというのは野暮というもの…また何れ、だ」
然し脳筋と猪突猛進などの蔑称を言われてる焔も無作為に闘いを挑むほど戦闘狂ではない。
況してや風呂などという休戦する憩いの場で争うなど論外な上に、自身の流儀に反する。
休むべき時に休み、戦う時に戦うのが焔の流儀だ。
「焔ちゃん…」
「それに、お前が病院で床に伏せてた姿は私は一度たりとも忘れてはいない…私との決着も付けずに他の誰かにやられた、なんて私は許さんからな」
「あれはやられたんじゃなくて気を失ったというか…アレでも敵の幹部は倒したんだけどね…」
「あ、でも忍ニュースでもやってたよ!元々蛇女でも話題になってた抜忍狩りの狩人がやっと捕まったんだって!その記事が載ってたの時系列的に考えたら見舞いに行った時と同じだから…」
「ひょっとしてそれ黒佐波のこと?確かに今まで戦った敵より一番強かったけど…」
一方、世間ではマスキュラーやムーンフィッシュ、マスタードの逮捕が報道されたものの、黒佐波は世間の裏では大物として扱われ、殆どの忍に知れ渡っている。
忍記事などでは黒佐波の抜忍狩りの行方不明、死亡事件の他にも無差別失血死事件や、器物破損多数件、失踪事件など数多くの抜忍がこういった犯罪歴を遺している。
未来はこう見えても情報収集及び、インターネットを経由して利用した忍の情報を掻き集めている。
「何!?じゃあ飛鳥はソイツと戦って負けたのか…?」
「いや勝ったんだよ!?アレでも腕に後遺症が残らなかっただけ奇跡なんて医者に言われたけどね…あはは…」
蛇女の卒業生の何人かが黒佐波に挑んだ者達がいたが、全員帰らぬ者となり、悪徳を積み重ねた危険人物を飛鳥がたった一人で終止符を打ったというのは大きな功績だ。
因みに余談だが、その功績を闇から聞かされたマグネは、マスキュラーを単独で撃破した緑谷と同じ超危険人物と見なされ、殺そうとしたところをスピナーに止められたのはまた別の話。
最強の友であり、ライバル関係に当たる焔の闘心は益々紅蓮の炎のように高く燃え上がる。
「まっ、こうして今もピンピンしてんだ!さっすがは自慢の後輩だ!」
「そうですね…上層部でさえも頭を悩ませてた抜忍を…こうして改めて聞かされると我々三年生も精進せねばなりません」
「ほーん…わしはあんま情報とか新聞とか読まんけど、そういうことがあったんやな」
「寧ろ日影さんが教科書以外の何かを読んだところを見たことがありませんわ…」
「そんなに功績が良いの?ふぅん…流石は焔が認めるお相手なのね。それ程の評価が値されたにも関わらず、飛鳥の名が上がらないのは些か疑問が湧くわね…」
まさか此処に来て過去の戦績が今に評価されるとは夢にも思わなかったものの、昇格試験で全て合格ラインギリギリに到達してた彼女が今じゃ上忍が相手にする手練れを倒したのだから、こうして褒められると素直に照れてしまう。
「まぁ?飛鳥先輩に比べれば蛇女の生徒なんてモブですからねモブ!よもや次元が違うんですよ!」
「はぁ!?何こいつ、感じ悪!」
飛鳥の戦績に鼻が長くなり、小馬鹿にするような物言いをする風魔に、まんまとひっかかる未来。
「ちょっと風魔さん…」
「大体ほら、肩書きなんて関係なく飛鳥先輩って真が強い真面目で善忍の鑑だと思うんですよ。
だって雄英にも認められ、忍殺しステインと遭遇したにもかかわらず生き残り、試験ではあの大道寺先輩すら退け、終いには敵連合との襲撃を乗り越えたんですよ?それに比べて元とはいえ蛇女相手に遅れを取らないって話です!」
飛鳥に危害を加えた者は勿論、悪印象が強ければ敵対的な目線を向けてしまう。
それは憧れの人間が他人に虐げられるものだからなのか、飛鳥に過大なる好意があるからこそだ。
そんな風魔に良からぬことを悟った土方は心配そうにして止めに入っている。
「あら、随分と生意気な子がいるじゃない?それなら…「ふふ、ふふふ…貴女、随分と面白いことを言うのね?」って、美怜ちゃん?」
こういう生意気な子供には灸を据えたくなる性分なのだろうか、春花の加虐心が疼いてしまう。先程温泉では争わないという話し合いが出たにも関わらず…そんな話の間に美怜が薄ら笑いを浮かびだす。
「はい?何が面白いんです?元とはいえ蛇女の生徒が飛鳥先輩達を襲って、今となっては何ともなさそうな現状が面白いとでも?」
「ねぇ貴女。蛇女がどうとか、飛鳥達をどうこう言ってるけど、まず貴女のその自慢げな話し方自体がナンセンスなのよ。
蛇女との抗争がよほど気に食わなかったのかしら、それでも私たちに棘のある言い方は妙に説得力に欠けるけど」
「そりゃそうですよ!あと少しで廃校にされて、飛鳥先輩達とサヨナラするところだったんですよ?フツーに考えて仲良くなれるはずが…っ」
「それで?自分は一体何をやれたというの?」
「………は?」
「思ったことを言うだけなら誰だって出来るわよ。私はつい最近焔紅蓮隊に加入したばかりだから具体的な過程や貴女達の事柄は知らないけれど、味方を過大評価して他者を貶めてるだけで、第三者からして見れば何とも滑稽なことこの上ないわね。
そんなに嫌いなら、対立時にでも貴女が止めれば良いだけのこと…違う?」
「あ、アンタねぇ……!!」
「それが出来なかったから、ただ悔しがって鳴き吠えるのは伊佐奈と同等よ。まぁなんでも良いわ。今のではっきり分かったから、私…貴女のこと興味ないみたい。
好きな人、尊敬や憧れの人物が酷い目に遭ったことで邪見扱いするのはさておき、態々他者にまで言いぶるような頭の悪いやり方は好きではないもの。
其れに飛鳥が話したように、此処での言い争いは野暮というもの…はい、今回この話はそれで終わり。仲間同士ならまだしも、貴女達と私達とでは他人関係だしね」
美怜にとっても風魔にとっても、お互いの関係は相性も含めてかなり最悪とも言えるだろう。
だが風魔もわかっている、今回ばかりは美怜の言ってることは何一つ間違いではないのだと。
奈楽のように他人を見下ろし罵声を浴びせるのとは違い、彼女は様々な視野と自分の立場を踏まえた上で口論した。
だから美怜にとって他人同士でありながら自分達に危害を加えた連中と仲良くしろという精神構造がないのは承知してるし、無理強いもしていない。
何より美怜にとって、自分の家族に棘…というよりも、変な言い方をされては黙って見過ごせるほど冷たい女でもない。
「もぉー…喧嘩はダメだよ!?風魔ちゃんもそんなこと言わない!過去のことはほら!お風呂と一緒に水に流そうよ!」
「流石は爆豪の喧嘩仲裁役だな」
「むむっ!柳生ちゃんそれ一体どういう意味ぃ〜?」
常に喧嘩トラブルメーカーを引き起こす爆豪を鎮める役は飛鳥と切島が大きい。いや、殆ど切島なのだが、飛鳥が入学してしたばかりの頃、斑鳩と葛城のまだ心の開いた距離感に対しても、喧嘩はダメだと言い張る程なのである。
「ふん、まあ良いさ。私達に今更過去のことをどうこう言われようが、私達が目指すべきものは変わらない…
飛鳥、この京都旅行が終わればまた決着を付けようじゃないか!!
私は悪の中の悪を討つ…お前の忍道も含めて、私達が勝つ!」
「勿論!私は、影になってでも皆んなを守る…それが私にとっての忍の道だもん!!次こそ絶対に焔ちゃんに負けないんだから!!」
そして、そんな彼女の正義を認め、心の底から賞賛し、ヒーロー殺しが認めたのもまたこの上ない事実。
「悪の中の悪を討つだとか、皆んなを守る為の正義だとか…本当に何を言っちゃってるのかしらあの子達…」
湯気が濃くて全く視界が見え辛いが、盆の上に酒を啜りながら飛鳥達の会話を耳にする女性は、そのまま小瓶をコップに注ぐ。
「殺した者が正義、騙した者が成功者…どんな世の中だってそれに勝る心理はない…ふふ、久方振りに見てみたけど相も変わらず平和ボケした彼女達、寧ろ変わってなくて安心するわぁ…♡」
一人、邪悪な笑みをこぼしながら酒を愉しむ彼女は口角を釣り上げる。
青い髪は髪止めでポニーテールにし、透き通った水色の髪は温泉に浸かり、誰にも気付かれずに優雅なひと時を過ごす漆月は、夜空に輝く星と満月を見やる。
「そして、敗北した者が悪…ふふ、そりゃそうでしょう♪理屈や真偽がどうあれど…勝ったものが正しい。
佐門ちゃん達の監視がてら丁度良い旅館を見つけて住んでたのにあら不思議!まさか飛鳥ちゃん達に焔ちゃん達に会えるなんて、運命…因縁めいたものが巡り合ってるわね」
過去に行き過ぎた正義を貫いた雪泉と似た理論ではあるが、彼女の言う正義と悪は少々意味が違う。
例え敵であろうと犯罪者であろうと悪忍であろうと、間違った理論や思想を振りかざす者、間違いだと謳われる者でも、勝者になれば簡単にそれが正しいと証明されることになる。
敗者が悪とは、積み重ねた努力や結果…そしてその過程や正しい証明や賞賛が一瞬にして瓦解し、踏み台にされてしまう者のこと。
漆月にとって彼女らの正義だの悪だのの語らいは、心の底からどうでも良いと思っている。だって大したことないから、今の彼女にとってそんな言い争いは幼稚な言葉遊びでしかないから、どうせ忍になった殆どの連中なんてショボい理由だから。
取引が決裂してから悠に5時間後。京都棚窯区域ビジネス支部56、秘匿特別会議室から無事戻ることが出来た漆月。
『…理由をお聞きしても宜しいでしょうか?』
『私は誰かの指図を受ける気はない――お願いはされても、他人の命令を受ける位なら、私は傲慢に生きてなんてないわよ。どうやらアンタは私のことを知ってる風に言ってた様だけど、ちょっと期待外れねェ……』
『其れは大きな誤解です。私は貴女を支配する気も主従関係を築き上げるつもりは毛頭無い――其れは今の契約内容を聞いた上で理解してるハズです』
『知ってるよ。憑黄泉神威はきっと、コイツは…顔を出せば私の意識も何もかも無常理に無関係に、全てを死へと追いやると…。ええ、その通りね。そのせいで仲間も、弔も死ぬかもね――だから?』
だから何だ?
死んだら其れで終わりで、唯の肉の塊となり、言葉を発せなくなるだけだ。マグネも八斎會の組長も、肉片となって死んだだけだ。
『死んだら其れで終わり、これで良いじゃん。まさか、私が本気で仲間の死を恐れてるって言うの〜? あのね、私はそこまで仲間に情が湧いて臆してるだとか、そんな希望は持ち合わせて無いんだって。だって私達は全てに絶望してんだもん。私たちはさ、きっと本来産まれちゃいけなかった存在なんだよ。いつ死んでも良くて、いっそ死にたいと願って、死ぬことがどれだけ幸せなのかさえ、其れほどに歪みまくった生き地獄を浴びてるんだよね』
『だから仲間が殺されても、望んでいたこと…仕方のないこと、だと?天咲魅影――其れは貴女の感想に過ぎません。主観と結論を結びつくのは、何れ大きな致命点を招き兼ねません』
『それはそれで絶望的ィ〜♪ 後さ、感想に過ぎないって言うか、予測論で言うならアンタも同じじゃん。私は確かにまだコイツをコントロール…使役は難しいよ。だけど、私がこれから使える様になれば問題ない。それに憑黄泉ちゃんだっているしね〜♪』
『……天咲魅影、其れは確かに貴女の脅威的な強さの一つです。我々が幼かった頃の、憑黄泉を増殖させ、簡単に使役可能。他者から見れば厄災そのもの…ですが、貴女もご存知のはず。憑黄泉を産むのは体力だけではない…貴女の命も削っているのだと。いずれその生命は、神魔を宿す器によって回復するにしろ、何度も使い続けることは不可能。言うなれば、適合もしてない人間が、無理矢理移植された複数の個性を使用してる様なものです。知ってますか?大人が赤ん坊一人を産むのにどれだけの苦痛とカロリーを消費し、時間を掛けて疲弊するのか。それを貴女は時間という過程を吹き飛ばし大の大人分の大きさを誇る憑黄泉を生み出すコトで、麻酔なしでトラックに跳ね飛ばされるような激痛、急激な体調変化による酔い、他にも症状はetc…一匹生み出すだけでもやっと、そして成熟期段階に至った憑黄泉も、蛇女子学園の雅緋率いる忍学生達に討伐された…況してや古い時代とは違い、時代を重ねるに連れて産まれてくる忍は、濃厚な忍の血筋を継ぐことで強力な次世代が産まれております。その憑黄泉も絶対に倒されないという保証はない――つまり、自身の能力に酔ってる場合でも御座いませんし、貴女の未来が約束された勝利も、偉大なる母君を自分自身で使役するよう等の努力も、取り返しが付かなくなっては、死んでしまえば、全く持って無意味に等しくなるのですよ?』
『そうかもね、アンタの言う通りかも。それでも断る――真面目な話、私は楽しみたいんだよね。自分の未知ってやつに、自分の手で犠牲が生まれる悲鳴、死の声、断末魔、恐怖、憎悪、其れらを触れて、味わって、経験して、そこから私は支配者に登り詰める。努力なしの約束された未来なんて、つまんないしさ。其れに、仲間を裏切る位なら私が殺されるし、私の立場でも裏切り者は殺す。アンタは汚い大人のやり方だからさ、だからこうやって甘い言葉で私を釣るんでしょう?』
『…………理解できませんね、矢張り。何故?天咲魅影、貴女が私と契約を結べば全てが叶うと言うのに。効率よく支配者の玉座に就き、貴女の計画も都合よく効率良くコトが進むのに…』
『だから、其れ自体が意味ないんだって!アンタの言ってることは理解できても、これ以上他人に育てられたり、命令されたり、指図を受ける位なら、死んだ方が全然良いの!!アンタにとってはさ、私を仲間にしたいって思惑は、きっと他の連中よりマシなのかもしれないけど、仲間を手放す位なら自分の手で殺すっつってんだよ!!分かったかこの辛気臭ェ黒霧もどきがよぉ!!……すいません、ちょっと、感情が優ってしまって…」
『……誠に遺憾でありながら、残念で他ありません。私は貴女の事を個人としても大変気に入っておりましたし、貴女となら私の生を分かち合える存在だと確信しておりましたが……。了解です――交渉決裂、どうやら私は貴女のことを知ったつもりでいた様だ。本当に記憶を失って尚、良い意味でも悪い意味でも成長なされましたね、それに貴女の感情に右往左往する姿は、『ヴァニタスコロニー』とそっくりだ』
『……そいや、アンタの名前聞いてなかったわね。差出人が不明だったから、どんな輩かと思って来てみたら、憑黄泉だったんだもん。そりゃ驚くわよね』
『失礼――私の名は……』
(交渉は決裂したけれど、代わりに違う契約を結べたのは良いわねェ…。まあ、契約っつ〜か、ある種の協力関係?然しまぁ…、今回の取引の件は終わったから良いとして、そろそろ見せしめとして忍商会の誰かを潰そうかなーって考えてた所、あの子達が来るのは想定外ねぇ。ふっふふ、もし彼処でいち早く隠れるのが遅かったらそれはそれで絶望的な展開が見られたのかしら?
何にせよ、佐門ちゃんの狙いが神楽なのも、神楽を狙う理由も大方予想はつくけれど…問題は佐門ちゃんがそれで何をやらかすか、なのよねぇ…そこだけがどーしても分かんない)
漆月は黒柴と出逢ってから、その前からも既に忍商会の幹部達の動向を監視していた。
あの時の同盟を結ぶ形はあくまで相手の出方や情報収集を探る為の単なるハッタリに近い脅し…相手の疑心暗鬼な部分を見れただけでも収穫なのだが、彼の気を発する
(きっとあれよね、神楽を利用して先生…ううん、それ以上の力を手に入れる為よね?
だとして彼がその動向に至る目的と理由は何かしら、何か重要そうな気もするけれど……まっ、最悪私一人で真正面から行ってもいっか)
どうせ殺せないし、なんてさも絶対的な自信があるように、彼女は小瓶の酒を飲み干し、そのまま両手を広げて空に掲げる。
「待っててね、私の愛しい弔♡ 私の物語が始まるには、もう少しだけ時間が必要だけど…ふっふふ、沢山の花を摘み取って、踏み台にして、絶望の高台を見下ろして…私たち好みの世界に染め上げましょう♡」
其れは多重人格のようなリビドーとは違う…彼女の本当の素性。
誰よりも悪意を好み、絶望を愛し、闇に好かれ、そして軈て憎愛の元へ悪意は募らせていく。
今は誰も漆月を見てなくても、躍々は支配者として彼女の後について行く者達が自ずと現れる。
そう、彼女は既に支配者として歩み始めているのだから。
因みにタナトスに収監されてる囚人は500人以上です。その他にも名を連ねる監獄が存在しており、近年は世界ナンバー3と評価あるヘラの監獄にヒロアカの犯罪者が入ることもあるかもしれません。
それと黒佐波、思った以上に忍学生が相手にして良いレベルじゃなかった。
そして漆月さん、某海賊漫画に出てくる堕ちた天●人の、夜叉と同じ理論を話してる。若とは酒が合いそうです。