光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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えー皆さん超絶お久しぶりです。
閃乱カグラとネプテューヌのコラボ作品購入してから3日でクリアしました。虎ソティスです。
プレイした感想と言えば、個人的に一つの作品として大いに楽しめました。と言うのも、レビュー踏まえて不評が中以上あったとのことで、それも否定し難いものなので何ともと。

先ず、自分でもこれはなぁ…と思ったのが、閃乱カグラのキャラがたったの四人であり、オマケ扱いであること。オマケ扱い…は、少々語弊ではありますし、ストーリーとしてもキャラ同士としての掛け合いも良く楽しめはしたのですが、何というか…四人だけだと味気がないなと。まだミニキャラ的な感じでセリフなど付いてれば良かったのですが、その見せ場さえもなかったので、個人的にやるせないというか、納得がいかないという結果に。
どちらかといえばネプテューヌ寄りの作品であったものの、もう少し何とかならなかったのかなと思いました。実際にニンジャスレイヤーのミニキャラはあったのに…。
ただ飛鳥達の台詞から閃乱カグラのキャラの匂わせがあったので、そこは少し感心しました。実際に雅緋も記憶喪失経験があると言ってたので、一つの世界線ではなく原作にもちゃんとあった設定を活かしてたので。
次にストーリーの章…というよりも、ストーリー自体が短いのも欠点なのかなと。せめてもう少しだけ伸ばしても良かったかもしれません。
自分が思ったのはこんなところかなぁ…それと、ステマックスと飛鳥の絡みが凄く面白かったのと、掛け合いが見れて幸せでした。



224話「かぐらとは」

 

 

「成る程ね…貴女達が遭遇した忍商会は三人…どれも手練れな忍と対峙できる幹部と言ったところかしら」

 

女子会と言わんばかりに、補欠を含めた半蔵学院メンバーと焔紅蓮隊は、一部屋に集まり、其々が体育座り、半安座、割座をして寛ぎ、その中でも知能策略家とも呼べる美怜は、顎に指を当てながら考察を深める。

 

「私と葛城さんは邪淫乱闘と両舌部露と呼ばれる抜忍と闘い、柳生さんと雲雀さんは邪見心傷と呼ばれる方々と戦ったものの、まるで歯が立たなかったのは何とも歯痒い結果ですわね…」

 

「し、仕方ないよ…だって向こうは今の今まで誰にも悟られず、色んな忍からの目を掻い潜った指名手配犯でしょ?そう気を落とすことなんて…」

 

「何言ってんだい!アタイらは全く手を抜いてなかったんだ、それなのに向こうは闘った感じ小手調べだったし、その上逃がされちまった…せめて情報だけでも手に入れたら…!!」

 

「俺も…雲雀を守ると誓ったのに、あんな体たらくではな……何も言えない…」

 

「もう柳生ちゃん!!気にしなくて良いって言ってるのに!!」

 

「…ねぇ、反省会なら後にしてくれる?今更過去の事を愚痴って今何か出来る事ってある??」

 

外の世界に通用しなかった――その事実が余程堪えたのだろう。

斑鳩は勿論、バトルジャンキーとも呼ぶに等しい、強さを求める姉御肌の葛城や、邪見に酷く心を滅多打ちにされた柳生も、悔恨の念が口から溢れる。

無理もない、彼らがそんな簡単に倒れて仕舞えば、今まで彼らを相手にした忍は今頃生きていた。

それ程に奴らは修羅場を掻い潜り、暗躍しているのがその証拠。

故に、美怜は眉をひそめながら後にしろと根強く答える。

 

「然し、名前だけで分かるのでしょうか…?其方も忍商会のことは殆ど無知なのですよね?」

 

「そうね…ただ、面白いことに私の推測が正しければ…ある程度の忍の事は予想できそうね」

 

「今ので分かるの!?」

 

土方が神妙な声で尋ねると、美怜は目を瞑り考え込みながら、自信という概念こそ満ち溢れてはないものの、ある程度はと軽く答える。

勿論、全てが全て分かるはずもなく、三人と闘い神楽を狙ってることを除いて情報量は足りなさすぎるものの、それでも予想がつくと言う時点で驚きものだ。

 

「あくまで推測よ?そうね、先ず貴女達が口に出した三名の幹部の名前がそうであるとすれば…敵の数は少なくとも10人はいる…態々部下やら従業員を連れてこない辺り、幹部が直々に動かなければならない目的があるとすれば、神楽という存在自体を狙う理由は私たちの考える想像を範疇に越える事を想定して動かなければならない…」

 

「どうして10人って分かるんですか?」

 

「『邪淫』乱闘、『両舌』部露、『邪見』心傷…この三つの言葉は十悪業という仏教の戒めを意味表してるの。

淫乱、二枚舌、邪な見方、不正な心として意味成してるのだけど…あの三人と言葉の意味、何か思い当たる節はあるかしら?」

 

他にも『妄語』『偸盗』『瞋恚』『悪口』『綺語』『殺生』といった悪業があり、10つの悪を十悪業戒と呼ぶ。

 

「そういえば…私と闘ってた際も、卑猥な言葉責めをしていましたわ…多少意味がわからない言葉もありましたが…」

 

多少意味が分からないと発言する辺り、まだ救いがあると言うか純粋と言うか、穢れてない方だろう。

もし淫乱な言葉を彼女が理解していたとしたら、風紀委員の名折れというものだろう。

 

「二枚舌って…そいやアタイんところも、舌が二枚ともあったな!」

 

「邪で不正な見方…そうか、俺の事をよく知ってたのは恐らく…」

 

葛城も柳生も、何処か思い当たる節があるのか険しそうな顔立ちを浮かべる。どうやら美怜の推測は間違いないだろう。

 

「貴女達の反応を見た限り可能性は高いわね…。その幹部達が公で暴れ、世間に公表される危険性や素性がバレる情報漏洩もあり得るのにも関わらず、杜撰だ行動に目立つような動き……見返りがないのか、将又敵のブレーンが阿保なのか、それすらも計画に支障のない見え透いた行動なのか……」

 

「計画と言えば、かぐらちゃんが関係してるとかどうとか…」

 

「かぐら…カグラ?カグラってあの忍の最高称号のか?」

 

「うん…何でもかぐらちゃんって呼ばれる子を執拗につけ狙ってたり、かぐらちゃんを守ってる奈楽ちゃんが邪魔だとか…

私達にも何も教えてくれなくて」

 

「かぐら?忍商会は確かにかぐらと呼んでたのね?」

 

「う、うん…」と相槌を打つように軽く頷く飛鳥に、美怜の表情は一層と険しくなる。何やら心当たりでもあるのか、不思議そうに焔は顔を覗かせる。

 

「美怜、何か心当たりでもあるのか?」

 

「………もし、彼らの狙いと貴女達の言葉が誠なら…いいえ、だけど神楽を狙って何をしようとしてるのかしら……確かに、世を揺るがす事実は変わらないけれど…」

 

何やら一人でブツブツ呟きながら考察を始める美怜に、端から見てた飛鳥は何処か緑谷出久を連想させてしまう。

彼女の場合は知略家というイメージが強いので性に合うのだが…

 

「美怜ちゃん?」

 

「情報がまだ不安定過ぎるし明確な理論や根拠も見当たらない…他に何か情報はあるかしら?かぐらというワード自体が大き過ぎるもの。流石に今のだけじゃ現段階で推測するのは難し過ぎるわ」

 

「…確か幹部の邪淫と呼ばれる方が『私達がかぐらを知れば、喉から手を出したくなるほど』みたいなことを…」

 

「それだけ?」

 

美怜が確認するように尋ねると、斑鳩を始め他の連中も首を縦に頷く。流石の美怜も今のだけでは推測できないようだ。

 

「ねぇ、美怜ちゃんはかぐらちゃんの事を知ってるの?口振りと様子からして何か知ってるみたいだけど…」

 

「……そう、ね」

 

一瞬、美怜は時計をチラリと軽く横目で見ながら、襖を見たり気配を探るように周りを見渡す。

 

「……ねぇ、貴女達の他に関係者はいない?今のところ此方を探る探知系統の忍はいないかしら?」

 

「?どうしたの、急に?」

 

「かぐらの情報は、本来禁忌なの。と言っても、情報自体が珍しくもあれば、それを付け狙う賊…情報屋やかぐらの存在を追う者も少なくないの。

話を聞くのであれば、貴女達にもそれ相応の覚悟と警戒は必要になってくるわ」

 

あの美怜がそう言うのだから、恐らくを以ってして間違いないだろう。それにあの忍商会が動き出すほどだ、先ず敵もかぐらを知ってる者と見なして間違いないだろう。

一同はお互いを見つめ合い、何かを察するようにして悟り、頷いた。

 

「…本来、かぐらとは…日ノ神カグラという、太陽に纏わる神の名を表してるの。一部の地域では、日の神を讃えるための儀式や祭典などが開かれてるわ。

 

その発生源となるのが、護神の民という名前の村の集落から始まったの。恐らく、かぐらが生まれた場所になるわね」

 

「護神の民…そう言えば奈楽ちゃんも前に言ってたね。護神の民だって」

 

慌ただしかった記憶を辿りながら、奈楽が自分達に説明してたのを思い出す。斑鳩に葛城は知らなかったので、ある意味初耳である。

 

「そう、恐らく奈楽はかぐらを守る転生の玉の守護者の役に選ばれたのでしょうね。神を守る民だもの。村による采配やお守り役などがあるのも不思議ではないわ」

 

「それでもまだかぐらちゃんと忍商会の関係性が見えないですね…」

 

「ただ、かぐらは転生の玉から復活した際、幼い子供として姿を表すの。そこから先、彼女が成長を遂げるのは赤珠を摂取する必要があるの…赤珠には妖魔が体内によって蓄積される結晶…所謂エネルギーの塊と想像してくれて良いわ」

 

「うへぇ、妖魔の体内にある塊を食べちゃうんですかっ!?ちょっと気持ち悪いですね…」

 

「あら、人間だって尿路結石や石、歯や髪などが生成されるという稀に奇妙な現象だってあるのよ?そう驚くものでもないわ。

っと、話を戻すわね。そうしてかぐらは成長を迎え、覚醒し、凡ゆる妖魔を殲滅させていくの。所謂、妖魔を倒すために生まれたようなものね。

全ての妖魔を倒すのが役目…何度か、憑黄泉神威に敗れて転生を繰り広げたみたいだけど」

 

「…よく知ってるなお前?」

 

「家に本があったのよ。神楽の本は、他の参考書よりも珍しいものだったし、ティオ・ディアボリクスと同等に貴重で価値のある情報だったから、何度か読んで記憶にあるの」

 

焔紅蓮隊から見れば「何となく納得できる」とした顔をするのだが、その貴重な参考資料やら神楽の情報を保管してあると聞く半蔵側からは美怜が得体の知れない忍として見られてるのは言うまでもないだろう。

 

「私やベルゼ兄さん達の天敵という大きな印象も受けたし、マークはしてたのだけど…そう、そもそもかぐら自体がこの世に姿を現したのね。

であれば、かぐらを狙うのは自分達の戦力拡大か、或いは妖魔を滅する力を利用したテロ行為による悪事か…将又商売目的か……もう少し明確な理由もない限りは、流石に警戒態勢を整えて強化すること以外、今のところ成す術は限られてるわね」

 

「流石に伊佐奈の奴もかぐらの事を知ってれば悪事に手を染めようとするだろうし…タルタロスでもアイツ自身口から語られてない以上は知らない可能性もありえるか…」

 

「動き出したのが今日で初めてというのであれば、伊佐奈は間違いなく知らされてない……彼が多くを語らなければという路線も考えたけど、今まで闇に潜んでた組織がかぐらを理由に動き出したのなら、忍商会自体がその情報を元から隠していたというのが正しい見方かもしれないわね。

全国指名手配犯が公でいきなり暴れ出すなんて、普通じゃないもの」

 

「だぁぁぁ!!もう菖蒲は何が何やらさっぱりですぅ!!今考えたってやっぱり難しいんじゃないですかね?!」

 

「でも考察は必要よ。私たちが忍商会を追ってるという私怨交じりな理由もそうだけど、妖魔を簡単に滅するほどの神に、それを死守する護神の民、そして神楽を狙う忍商会が動き出したという流れであれば、間違いなく何かある」

 

そしてその間違いなく何かある以上、無視できない。

だからこそ可能な限り考察はするべきなのだ。

それでも菖蒲の言う通り、現段階では考察したところで何も出てこないのであれば、解らず仕舞いなのだ。

 

「…そう言えば、かぐらは何処なの?」

 

話や考察で熱中していたのだが、その肝心のかぐらや奈楽が何処なのか、気になり出した美怜は半蔵のメンバーに問う。

 

「かぐらちゃんと奈楽ちゃんは…奈楽ちゃんにも同行を希望したんだけど、周りの忍達とは付き添うつもりは無いって…」

 

「あれ本当に何なんですかね、折角飛鳥さんの寛容な心を込めて聞いてるのに!!」

 

「そう…でも無理ないわ。貴女達も奈楽やかぐらと出逢ったのも今日で初めてでしょう?

そんな誰かも知らない見ず知らずな人間に付いていこうだなんて考えは、余程の考え無しの馬鹿でしかない限りあり得ないわ」

 

葛城も言ってたが、忍商会にほぼ一日中毎日付けられて、追われてた身だ。そんな彼女が他者を信用するなど余程の場面や経緯がなければ説明が付かないし、周りが敵だと見える奈楽の心境的に同行は厳しいだろう。

 

「けどそれなら逆に危ういんちゃう?奈楽とかぐらっちゅー子達が狙われてるなら、今も商会側に付けられてるのとちゃう?」

 

「いえ、そうでもないわ。悪いことばかりではないのもまた事実…これを見て」

 

日影の至極真っ当な意見は尤もだ。

忍商会がかぐらを狙ってる以上、いつ何処で襲われるか不明だし、また街中でも暴動を繰り広げるのを見た限り、今も奈楽の身が危険なのと、かぐらを奪取されてる可能性は極めて高いほうだ。

だがそんなマイナスばかりではないと美怜はチャンネルを変える。

 

『えー、現在。京都の棚簿故に謎の敵、または忍と思わしき輩が公共の場で暴動を繰り広げてた模様。

上層部より警察はより警戒態勢を高め、ヒーローを派遣するとのこと。また善忍を始めた忍達もヒーローと協力体制に慎み励むと述べられております。

 

犯人は未だに不明、目撃者によると現段階では二名が行方を絡ませてるとの事であり、捜査を行っております。続きまして――』

 

旅館に設置してあるテレビのモニターには、ニュースキャスターが淡々と今日起きた京都の騒動事件を告げている。

写真や場面を鑑みて、間違いなく斑鳩と葛城が忍商会を食い止めてた場所で間違いないだろう。

 

「これは…私達がいた場所!」

 

「このニュースと何が関係あるってんだい?」

 

「私たちがいた場所とそう遠くないの。未来も覚えてるでしょ?あの場面を――」

 

話を振られた未来は一瞬だけ目を大きく見開き、あの時のことを思い出す。

過去に自分を虐めてた連中から遠ざかるように避難(美怜が一方的に連れて行った)した場所で、街が爆発した光景を思い出した。あの時は結局、光山優に心配され、駆けつけに行く事が出来なかったのだが。

 

「アレって、忍商会達の仕業だったのね…!」

 

「ええ、半蔵の言う情報が正しければ、辻褄が合うわ。それに問題なのは公の場で姿を現した以上、警戒警備が強化される上に彼等の行動も下手すれば抑えられる可能性がある。

更に付け加えれば、彼等の行動パターンも推測の域に達せれるとしたら、未然に防ぐ手もあるわ」

 

つまり美怜が言いたいのはこうだろう。

公共の場で姿を現した以上、下手な騒動は余計に忍商会自らの首を絞める事に繋がる。そうなれば奈楽の襲撃もかぐらの争奪も安易ではなくなると。

 

「うーん…じゃあ今は大丈夫、なのかな?」

 

「公の場に出た以上、隠す必要がないならって事で騒動を起こす可能性は捨てきれないけれど、態々警備を強くするって警報が流れてるのに、それでも学習能力がないように無闇矢鱈に暴れる馬鹿は居ないでしょう?可能性がある時は、無茶をしなければかぐらを奪えないと思った時」

 

「結局振り出しに戻るんじゃないですか!」

 

「かぐらと奈楽の身の危険が低下しただけで、誰も絶対に安心できるなんて一言たりとも言った覚えはないわ。

どの時点でも狙われてる以上、危険が孕んでるのは確か…それで?奈楽もかぐらも何処にいるのか全く分からない挙げ句、手掛かりもない以上私達に何をどうしろと言うの?

 

だから現状尤もベストなのは…様子を見る。これに限るわ」

 

そもそもの話、奈楽やかぐらという人物が何処のいるのか分からない以上、下手に動くのは返って危険を招く。

既に飛鳥達は商売敵…早い話障壁として見られてる。闇に生きる住人が、その商売を邪魔され恨みを買ってしまえば、自身の身がどれだけ危険な状況に晒されてるのか安易に想像がつくもの。

焔紅蓮隊も例外ではなく、少なくとも伊佐奈という交易商売、客を潰した以上、厄介な目で見られてるに違いないし、そうでなくても警戒しない事に越したことはない。

ならば一先ずは状況を把握する為にも、事態の変化を観測する為にも、待機して様子を見るのがベストだろう。

現に半蔵学院のメンバー達も、霧夜先生からの指示がない以上、下手に動くのも不味い。

 

「さて、この話はこれで終わりね。お疲れ様、お開きと行こうかしら」

 

「ええ!?今のでもう終わり!?」

 

あっけない、と言わんばかりの雰囲気を作り出すように、美怜はパタンと掌同士を合わせると、未来は目を丸くしながら驚嘆の声を叫ぶ。

実際に未来だけでなくその場の数人は彼女の言葉で同じだろう。

 

「あら、これ以上考察することなんてある?寧ろ此方としてはかなり収穫があったじゃない。

忍商会が京都に潜んでいた、かぐらを狙っている、それが分かっただけ重畳……そして、姑息や汚い手、手段を選ばない残虐非道な連中が、かぐらのみ敢えて生かして奪おうとする以上、逆にかぐらを傷付けられないことを裏付けてるのも分かったし。

 

それに、仮に何か分かったとして、忍商会という組織を潰すのだって今の所現実味がないわ」

 

「おいおい待て待て、私達は相手が敵うとか敵わないとかの問題なく、忍商会を打破すると決めてるんだ。今更弱腰になんかなれるかっ」

 

「そう思うのなら貴女はそうで良いわ。私は勝ち目のない馬に金を賭けようとは思わないし……ただ、情報や相手の素性を少しでも知るだけでも、戦況は大きく変わるわ。

焔のように、常に勝たなければならないプライドさえ捨てれば、だけどね」

 

忍商会相手に自分達が勝てる保証は不明だ。

何しろ相手は幾多の修羅場を潜り抜け、死の美を交え、生き残った闇の住人達。そんな犯罪者達を相手に、まだ学生という子供な自分達と渡り合えるかといえば、勝てない確率も捨てきれない。

自分達の想いがどれだけ強かろうと、それを台無しにするように、理不尽というものは襲う。

ただ、現実味がないと言っただけで絶対に勝てないと言わない、勝機が薄いとも口にしない美怜は、どこか飛鳥達や今の仲間達に想うところがあるのだろう。現に焔と軽口を叩き合う程度に心に余裕があるように見える。

 

「うん…でも、美怜ちゃんの言う通りだよね…私達が今それを知って、どうにかにしなくちゃってもどかしい気持ちがあっても、無闇に探して結局分からず仕舞いでしたって言うのも、効率が悪いし……待つのも大事ってなると、精神的な修行になるのかなぁ?」

 

「あら、飛鳥は随分と物事を良く見て捉えてるのね。良い心掛けだわ。序でに私達のリーダーにも「視野を広めろ」って言ってくれるかしら?」

 

「何を言ってるんだ美怜!私はいつでも視野が広いだろ?お前達もそう想うよな?」

 

「「「「………」」」」

 

然し返ってくる言葉が見つからず、ただただ鉛のように重たい沈黙が続くのは、その場の空気から察せれるだろう。

 

「焔ちゃん、もう少し視野を広めた方が良いんじゃない?」

 

「やめろー!お前にだけは言われたくないんだよ飛鳥ぁ!!」

 

「まっ、ウチのリーダーはこんなものだしねぇ…所で雲雀、久し振りの懐かしき再開も含めて、一緒に夜のお遊びしましょう?♡」

 

「待て!雲雀は貴様みたいな不埒な輩に渡さん!!」

 

「柳生ちゃんも春花さんも落ち着いて!?ねぇ、美怜ちゃんからもお願い!!」

 

「あ、丁度良いわ雲雀、私も貴女の事について気になる事があったのよ。お互いの交流を深めるためにもコミュニケーションを取りましょう?」

 

「あっはは!雲雀さんはやっぱり大人気ですねぇ〜…それじゃ菖蒲は葛ねえ様と熱い夜を…♡」

 

「うわっ!?お前は風魔達と一緒の部屋で寝るんだろうが!!夜這いなんかするんじゃねえ!!」

 

「葛城が逆セクハラされて嫌がっとるわ。セクハラするのは好きなのに…何なんやろ。明日は槍でも降りそうだな」

 

「日影も美怜も相変わらずねぇ〜…それにしても、半蔵の補欠メンバーと言ったら総司達もいたけど、今頃あの子達元気にしてるかしら」

 

「個人的には千歳さんが気になりますわね…同じ貧民街育ちでも、私達の故郷も良く思ってませんでしたし……それに、私達が居た頃もかなり心を塞ぎ込んでましたから」

 

「全く…皆さん直ぐに騒ぎ出して…」

 

「あっはは、まぁまぁ良いじゃない斑鳩さん。今日は無礼講ってことで、折角焔ちゃん達とも会えたんだし、もっと募る話はいっぱいあるんだしさ」

 

不穏な空気から一変、解放されたかのように楽しげに、それこそ女子会のパーティーのように、明るく活気な空気に、傍観者である飛鳥はそんな幸せな光景につい微笑んでしまう。

これから、もっとこう言うのが増えれば良いな。

これから、ずっとこんな幸せな時間が続けたら。

誰よりも人一倍に他者の幸せや思い遣りのある飛鳥にとって、一番幸せなのは誰かの笑顔を見ること、守ること。

そんな彼女達と、まさか決別する時が刻一刻と迫り来るだなんて予想だにしないだろう。

 

 

 

 

 

 





忍商会の元ネタ。
佐門(さもん)=式神、サモン
十悪業会=十悪業戒

嘘月『妄語』=妄言、嘘を語る。
白水『瞋恚』=激しく憤る。〇〇に燃える。
『両舌』部露=二枚舌、陰口を語る。仲違いさせる。
『邪見』心傷=邪な見方や思考、不正な心。
銃中『悪口』=人を悪し様に言う事。
『綺語』道楽=美しく飾った言葉、真実とは反して言葉を飾る。
『邪淫』乱闘=邪な、してはならない性行為。

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