光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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226話「憑黄泉とは、私とは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 温泉の宿泊亭で一夜を過ごし、たわい無い女子会に近い会話を交えながら、一段落着いた後は各々のグループは部屋へと戻っていった。

 最近の生活はどうだったか、焔達のバイトはどうしてるのか、貧民街でのヒーローショーは何にしようか、雄英高校の生徒達は相変わらずだ、そんな笑いに交えた談笑は、日々の疲れと共に積もったお話を嗜んでいた。

 可笑しな話だ…焔紅蓮隊の皆んなは抜忍であり、元は蛇女の悪忍…嘗ては半蔵学院と超秘伝忍法書に渡る死闘を繰り広げていた自分達が、今となっては旧知の友人の様に、それこそ歪み合い、時に憎悪や罵詈雑言を吐いていた自分達は、今となってこんな風に楽しく会話を弾ませれるのは、飛鳥を始めた半蔵達が、和解と手を取り合うのをキッカケに始まった。そう考えると何だかほのぼのとした感じがする。

 

「それじゃあ、そろそろ夜が来たし…寝よっか」

 

「ええ、然し…霧夜先生の帰りが心配ですね…本部に赴いたとなれば帰りは早くて明日の早朝…若しくは…」

 

「そいや、ガイドの光山さんもおらんなぁ……もう部屋で休んどるんかな」

 

「563号室だったわね。一応部屋に入っても良いけれど、後から私達が怪しまれるのを考慮すれば、迂闊に忍び混むのは危険ね。入った痕跡が残ってしまうとマズイもの」

 

「危険て…でも、確かに勝手に侵入しちゃうのは失礼というか、場合によっては不法侵入で怪しまれるし…って、侵入する事前提なの!?」

 

「な、なんか余計に悪忍っぽいよ美怜ちゃん……」

 

 半蔵学院には霧夜先生と、焔紅蓮隊には案内人の光山優が不在の今、何方とも今後の予定を組み立てる人間がいない以上はどうする事も出来やしない。

 こうなれば、一先ずは部屋に戻って休むのが良好…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「原罪の…魔女…?」

 

 処は変わり、場面は漆月達へと移り変わる。

 

「嗚呼…これは、一種のコードーネームみたいなもの…妖魔を使役、と言うより、妖魔、又は神魔の能力を操る者、所持してる者に対して、人はそれを魔人と呼ぶの。

 古くから伝わるコレは禁忌として扱われ、新たな自分を名乗る者……古代ヨーロッパより悪魔と契約した者をキリスト教社会の破壊を企む背教者という、新種の魔女という概念が生まれ出ずり、大迫害を受ける者の存在として忌み嫌われる者さ……ってまぁ、海外では妖魔のことを悪魔と呼ばれてる事が多いから、一部妖魔を倒す存在を退魔師やエクソシストなんて呼ばれてるのもいるけれど、現代日本に沿って忍と呼ぶのが妥当よねぇ」

 

 妖魔、又は神魔を使役、或いは扱う者の別称を魔人と呼ぶ。男性は魔人、女性は魔女と分かれており、忍の社会に沿って魔人名を持つ者は限りなく重罪として指名手配犯へと認知される。

 魔女狩りとは必ずしも過去の出来事ではなく、現代でもアジアやアフリカを中心に行われている事があり、多くの女性が「魔女」として暴行や追放を受けているという記録が残されている。

 古代以来、何らかの超自然的な手段で他者を害することのできる者は異端者として気味悪がられており、ヨーロッパにおいてこの信仰はラテン語でマレフィキウムと呼ばれる害悪魔術として認知され、全国において妖魔(悪魔)の扱う魔術と似てることから、妖魔術として繋がっていた。

 

 漆月のバックグラウンドに、生まれた時から憑黄泉神威によって取り憑かれた彼女の生き様は、正に魔女と呼ぶに相応しいだろう。

 一部、魔人名を名乗るのは一種の礼儀作法とも呼べる者で、同じ魔人同士で名を語る事が流儀にもなっている。

 

「それに、この子達は少なくとも他の妖魔とは一線を画す存在…そこいらの妖魔と一緒にされちゃあ困るわ。

 こう見えてもかなり頭脳は高い方だし…力よりも知恵が優ってる部分があるもの」

 

「…妖魔自体、私個人として遭遇した事は無いので、区別が付くかは、不明な点が幾つも存在しますが…其れにしては、どの個体も青紫色の外色、という部分は共通してるように見えますね……?」

 

「良いところに気がつくじゃない♪有象無象な下級妖魔とは違い、独自に進化と共に統一された憑黄泉は、他との区別を付ける為にあるものなのよん♪」

 

 例えば、蟻という昆虫が触角を持ち合わせ、群れた仲間との信号を送る、数多くの種類が存在するように。犬という哺乳類の動物に複数の犬としての種類が多く存在するように。憑黄泉とは体色が共通されており、姿形と言った容姿は無限に存在する。

 

「憑黄泉の特徴はなんたって竜人と青紫色の体色が特徴でねぇ…DNAでも刻まれてるのかっていう位、雰囲気や外見に何かしらの特徴が共通してるのがポイントなのよ。

 そして…この子達は人間の悪意、絶望、悲鳴を激しく好むの。通常の妖魔には、そう言った好みは存在しない」

 

 漆月と同じく、悪意や絶望、悲鳴を好むという共通点からして、彼女が生み出した子供と呼ばれるのは強ち間違いではないのだろう。にしては、人間が妖魔を直接的な意味で産めるというのは、実感が湧かないというか、想像が付きにくい。

 

「通常の妖魔は、ただただ造られた思想や概念によってそれに準じ、忍同士の血によって集まった膿の存在……忍が妖魔を倒すというのが昔も今も変わらない構造…だけど、憑黄泉は別、忍同士によって集まった血では決して生まれやしない。それがまず通常の妖魔と憑黄泉と呼ばれる妖魔の違い…」

 

「つまり、通常の妖魔は今の常識と何ら変わらず、憑黄泉という妖魔はマスターが仰った悪意の感情によって産まれたって訳?」

 

「そう!!けど…昔は本当に妖魔の構造と変わらない、全く小さな妖魔だったけど…ふふ、憑黄泉とは常に進化して成長を遂げる存在。だからこそ彼らが強いのも、妖魔と別格なのも通常とは違い、知能が高いから。

 通常の妖魔は赤…奴隷を意味表し、憑黄泉は青…貴族を意味表すの。つまり、完全なる上位互換なわけ」

 

 妖魔の血が赤い事、赤珠が有り、赤い忍同士の血が集まり生まれたことから赤を主張し、熱く燃える様な闘争心と殺伐が溢れてる事、憑黄泉より酷使され扱われてたことから奴隷という意味が込められた。レッドネックという貧相な意味も含まれるのだろう。

 憑黄泉の血が青い事、身体の内部に青の血晶が有り、人間の悪意や憎悪、絶望が集まり主となる母体より産まれる事から青を主張し、静脈の如く青い血が通ってる事から、貴族という意味が込められた。ブルーブラッドによる貴族一門の習慣の事、妖魔を労働力や道具など奴隷として扱う有様、青き竜より別名ブルーブラッドラゴンと呼ばれている。

 一部、忍よりも先に憑黄泉が忍術や妖魔術と言った特殊能力の奇術を生み出した、所謂忍術の祖先と言う説もある…が、ティオ・ディアボリクスも確信が無かった為、有耶無耶とされていた。

 然し憑黄泉神威が生み出した憑黄泉の個体には必ず能力が秘められているので、関係性は高いとも言えれば、憑黄泉と忍は何かしら妖魔とは異なり重要な鍵を担っているとも言えるのは、確かであろう。

 

 憑黄泉とは、それ程までに、比較にならない程に、忍や人間と大きく関わりを持つ、謎の生命体なのだ。

 

「…中には天竜衆という、大昔…憑黄泉が野に放たれてから、親元を離れて独自で成長を促した個体が集まった組織図も存在するけれど…流石の私でもセンサーには引っかからないわ。見事に掻い潜ってる…」

 

 一方で、天竜衆とは憑黄泉神威が大昔に生み出した何の変哲もない憑黄泉が、何百年という年月を経て、過酷な環境及び忍に駆逐される事なく、親元を離れて独自に大きく成長を遂げた個体が同胞を集めて組織化した衆団である。その知性応用さと実力から、雲隠れならぬ神隠しの如く、消息を完全に隠しながらこの地球上…或いは何処かに隠居しているとのこと。密かに忍の全滅へと策略を動かしているらしいが、それはまた先のお話。

 

「其れにコイツらは、なるべくしてなった…いいえ、正確に言えば人間のせいでこうなってしまったの。

 平和を願う想いが、争いを無くそうとする正義感が、人々の悪意のない幸せが、コイツらを…そして、憑黄泉神威を生み出してしまった。

 それさえ否定してしまうのなら、忍が滅ぼされるのも致し方ないこと…いえ、現象なのよ」

 

 どういう意味なのだろう。

 何処か漆月の言葉も、いつになくこれだけは真剣で、まるで人間の善意によって必然的に彼等が生まれたと言わんばかりに。憑黄泉という妖魔が生まれる事も、存在してることも、それさえも何の罪も悪意もないと言わんばかりに。

 

「憑黄泉の存在は、人間の罪を現す……大昔、そのせいで()()()()()()()()()()()()()()()()()()訳だしねぇ…それもまた、罪滅ぼしや、無かったことにしたかったんだろうけど。ふふふ、人が背負う罪なんて、消えるはずがないのにね。

 それこそ、墓場にまで持っていく事になるのに…」

 

全てを思い出した彼女だからこそ、今にして言える言葉。記憶とは人間其の物を、人格と共に著してると聞くが…。確かにその通りだ。もし記憶さえあれば蛇女戦でも二体の脳無に頼らず憑黄泉を出現させて全滅を目論む事だって出来た。あの時、そう…あの時すべて全て思い出していれば…。

 

 だから、せめて…独断行動を取る黒霧にも連れて行きたかったのだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

『漆月…記憶が戻った、とは?』

 

『言葉のまんまよ黒霧、全部思い出したわ…アンタのことも、先生やドクター…殼木のこと、姉の事…獄獅狼のこと…何かも全部』

 

 記憶と共に、時は遡り…神野区の一件後、オール・フォー・ワンの活躍により全員が何とか逃げ果せたあの日の出来事。

 一人で廃墟となった…現時点で敵連合がアジトとして使用してるあの場所で、漆月は黒霧を呼び話し合っていた。

 死柄木より、力を欲する為に動き出すと言い出した黒霧は、独断行動でとある野人の噂を駆けつけ仲間集めに慎んでいた。そんな黒霧を漆月は呼び止め現在に至ると言う。

 

『まさか、弔の側にずっとお守りしてたアンタが、あの『マスターピース』の手掛かりだったなんて……灯台下暗ね』

 

『……?』

 

 黒霧でさえ知らないマスターピースという言葉に、何処かしら自分の知らない何かを知ってるというのは、些か不思議な何かを感じる。

 

『黒霧、アンタ私と一緒に行動しなさい。弔が集めた戦力を此方が貸し出すというのは多少なりとも抵抗があるけれど、アンタの場合はあくまで先生の言いつけによって動かされたいわばボディーガード…そんなアンタの個性がワープゲートという貴重且つ移動手段が安楽な今、効率的に事が進むわ』

 

 敵連合の情報は既に警察やヒーロー、忍達には大きく知れ渡っており、貴重な個性であるワープゲートは神野区にてエッジショットより対策されてる。

 何より厄介だと扱いされてる彼が狙われてるのを知りながら、独断行動させるのは余りにも無謀故に危険すぎる。

 

『せめて私が産み出す妖魔も側に付けておきなさいな…アンタの個性の応用で人を殺めたりできる…けど、其れはあくまで身を守る為の手段に過ぎない。

 元々戦闘向けの個性じゃないアンタを野放しには出来ないわ』

 

 思い当たる節があるのか、それとも漆月の企みの中で黒霧の協力が欲しかったのか、彼女は片目をつむりながら提案を出す。

 後にこれが処刑執行者達の迎えと言いたかったのだろうが、その前に黒霧が口を開く。

 

『気遣い感謝致します…然しながら私とて敵連合の一人以前に、死柄木弔の命ずるままの傀儡。

 今無きオール・フォー・ワンの組織、私達は弱い。余りにも弱すぎる…戦力拡大と同時に警察を始めたプロヒーロー、忍達から逃げるには、今まで以上に困難を極めるでしょう』

 

『私だったら平気でそれが可能だって言ってるのよ。アンタは元々、私と一緒の監視下にいなかったから詳しく知らないだろうけど…』

 

『ええ、だからこそ私の為に漆月の足は引っ張りたくない。せめて私一人でも、戦力を増やすことも出来なければ、個として何の意味や役割を果たせない……ですから、私をどうか、信じて下さい漆月。

 貴女がもし、支配者として新たに君臨するのであれば、他者を信頼するのもまた役目かと』

 

 黒い靄を揺らしながら、眼球とはかけ離れた表情が察せれない眼は、確かに真がある。

 …正直、此処で反対してさっさと私の側で手足として働いて欲しいってのが本音なんだけど。弔に何を言われるか…まぁ、それはそれで有りと言えば有りだけど。

 

『………良いでしょう。では、アンタの言うギガントマキアを連れて、そこから処刑執行者達を連れて、私のところに来なさい。それが最低限の約束…』

 

『畏まりました。必ずして、魔王と魔女の…貴女達の望むものを手に入れてきましょう』

 

 

 

 

 

「結局、今のところ音沙汰無しかぁ……」

 

 こうして脳裏に蘇る回想が過ぎ去り、今に至るわけなのだが。それでも処刑執行者の妹達の一人、ミストルティンが帰ってきたのは大きい。今は彼女にしか出来ない別件を果たして欲しいということで、彼女は現在不在の身ではあるが……

 

「?何のことでしょうか?」

 

「ああごめん、こっちの話…」

 

 黒柴が此方の考え事に首を傾げながら尋ねてきた。

 結局、黒霧は姿を現してない…となれば、恐らくまだギガントマキアを探してるのだろうが…それにしても、先生のボディーガードとして密かに隠してた上玉に、ギガントマキアがいたというのは初耳だった。

 先生は百年も存続してる言わば生きる都市伝説…魔王として恐れられた悪の象徴のコネクションは余りにも多い。海外にまで彼の友人が潜伏してるというのだから、それを全て掌握するのはかなり時間が掛かるし、情報屋も雇えば費用も馬鹿にならない。

 それでもオールマイトが現れ、平和の象徴として謳われる今、彼の手先は殲滅に近いと言って良いほどに大打撃を受けたのも確か。それでも、まだ密かに息を潜めた者がいるのは事実で、況してや日本に残党がいたというのは意外だった。

 

「一先ず黒柴は引き続き忍商会側の方を見張っててくれるかしら。アンタの軍人による実力なら、それなりに調べることもできるだろうし……あぁ、勿論タダとは言わない。この子を連れていきなさいな」

 

 漆月はパチン!と指を鳴らし一眼見る。

 すると、翼を広げながら二足歩行で黒柴の元に歩み寄る憑黄泉が一匹。

 

「憑黄泉のワイバーン君をアンタにプレゼントするわ。私の意思や采配一つ、自ら母の為に我が身を捧げる絶対なる忠誠心があるの。

 黒柴、好きなようにこの子を活かして見せなさい。きっと、アンタの役に立つわ」

 

 翼竜タイプの憑黄泉は、口を大きく開けながら漆月の言葉通りに動き出す。

 

「……マスター、私は個人としても申し分なく充分に闘えます。それ故に助力など私には…」

 

「能力『飛行』を特化させ、新しく『ブレス』『赤外線』『隠密』『ステルス』『毒鉤爪』の複数の能力が判明してるわ。たった一つや二つやら忍術しか持てない私達じゃあ、これ以上頼もしいのは居ないでしょう?」

 

「…ッ!?複数能力所持!?」

 

「言ったでしょ、他の妖魔とは違うって…つまりはそういうこと。元々、この子は飛行型の憑黄泉だった。だけど独自に成長を促し、自ら妖魔術を生み出した…謂わば、憑黄泉とは能力そのものであり、進化そのもの!人間は個性を複製することは出来ても、オリジナルで作り出すことは不可能!!だけど其れを可能にするのが憑黄泉!

 それに、忍の忍術もオリジナルで作り出すのはかなりの年月が必要…それを帳消しに、新たに開花させてくれるのも憑黄泉!」

 

 以前、蒼志に貸した憑黄泉の一匹、トガッちちゃんの能力は『忍法吸血』と呼ばれ、血を吸った者の忍法を扱えるというコピー型の魔術。他にも『ヴォイスパワー』という超咆哮に、憑黄泉という素の身体能力に加え『肉体強化』の身体能力を一時期向上させる魔術、更に『滑空』という魔術、『耐氷増強』と氷の遁術に長けた忍対策の魔術を兼ね備えていた。

 

「弔や仲間がせっせと動いてるんだもの。私達もそれなりに下準備はしておくべきでしょうし…。其れに、私を憎んで争ってくれるなら本望…♡より計画が順調に進めるわぁ…♪」

 

 こうして、私の軽いおさらいはこれにて終了。

 後は弔達との合流の際に、合わせてやれれば良いのだけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、各々の過程を通してから翌日。

 この日から、半蔵学院と焔紅蓮隊が対立するのは、霧夜先生が戻り、忍商会が根本的に動き出してから…。

 

 

 

 

 

 

 

 





風切ちゃんと雨音ちゃんいなくなるとめっちゃスカスカぁ…うおぉい…。

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