久々に京都以外のパートになります。京都編なのに京都じゃない!?けど、時間系列を考えてこの時間軸で物語を進めた方が良いかなと思いまして…それではどうぞ!
「いやぁ、悪いねェ!常闇くんに芦屋ちゃん。そっちの方手伝って貰っちゃって!四日目とは言えど、芦屋ちゃんは大分仕事に馴染んできたんじゃない?」
京都で不穏が蔓延る一方、九州付近でインターン活動に参加している常闇踏陰、芦屋の二人組。密売ルートによる敵退治の要請に、早くもデビューを果たした二人組に労いの声を投げるヒーロー。
「俺達は雄英、常にプラスウルトラを心掛けてる…とは言ったものの、貴方のご指導のお陰でもある『ホークス』。大いに景色を見渡し、状況を把握する。二日目の宵闇にて…俺たちに教授してくれたのは他でもない貴方だ」
「ふはは!666番目の使徒じゃぞ?これくらいこなして当然じゃ!!」
芦屋に関しては訳の分からない事を宣ってはいるが、これが平常運転なのでスルーしても良いだろう。というかホークスにとっては一種のこせいだと悟り特別気にも留めてない。
だが初日の芦屋は平静こそ装ってはいたものの、心臓が破裂するほどに内心穏やかでは無かったご様子だ。現に今も心の中で「No.3に褒められた!?やったー!!!」など、普通の女子高生のように喜んでる。
彼女は大層さも当たり前の様に豪語しているが、初日はホークスについて行くのが精一杯、精々ホークスの背を追う常闇に追いつくので息を切らす程の体力勝負。
現場にたどり着いた時は事件解決で、メンタルがズタボロだった。『自分、何のために呼ばれたの?』なんて本音が出てしまうほどに。
No.3ヒーロー『ホークス』
学生時代の頃から事務所を立ち上げ、20代という年齢で有りながら、トップ5にまで上り詰めた若手実力者。
神野区にて参加不在なのは少々理由があったようで――
因みにインターン活動が始まり、最初に二人が訪れた時の反応はと言うと…
『俺は職場体験で経験があるが故に、ホークスとは久方振りの再会は良しとして…仮免試験で面識があるとは言え、蛇女補欠の者と手を組むとは…』
『わっはっは!流石はNo.3とやらじゃ!見る目がある。神のご加護を持つこの我を選ぶとは…今なら特別に信仰としての御札をだな――……』
常闇は久しぶりなので良いとして、書類通りこの子はかなり特殊なケースの子だった。まあ、それが却って自分としては得をするものでも有り、好都合なのだが…。
などと常闇踏陰は兎も角として、芦屋は特殊な性格と圧倒的にヒーローが多い中、其れに加えて同期の忍が誰もいないと言う肩身狭い中、一生懸命動いてくれてたのは本当によく頑張ってる方だと思う。然もホークスは速すぎる男という異名を持ち、スピード解決に関してはトップクラス。常闇が付いてるとはいえ、初日は芦屋でさえも付いていくのがやっとの始末。それでも四日目には何とか喰らいつく勢いで、粘り上げがむしゃらになって追いついた。選抜補欠という立場ではあるが、実力は目を張るモノがあるのだろう。
「常闇くんと芦屋ちゃんは仮免試験で面識があったってのは、昨日も言った様に調べてはあるから良いとして…本格的にヒーローの仕事に触れるのが初めて、尚且つ同期の忍が居ない中、きちんと仕事出来るのは賞賛できるよ。ひょっとして仮免試験だと連携プレーとかバリバリやってた方?」
「連携と呼べるかは判断を下すのに適するかは分からんが…ギャングオルカと抜忍役の子供、仮装敵の撃退に関しては芦屋や他の者達と共に向かい協力した」
「え?お主あの時いたかの?」
「………」
「あっはっはっは!!君ら良いねやっぱ!俺が見込んだだけの事はあるよ!」
芦屋のトンデモ発言に常闇が芦屋の顔を凝視している。とはいえ連携と呼ぶには程遠いが、協力体制として手を組んで目的の為に行動したと言う意味では、十分価値がある。
笑いながら腹を抱えるホークスに、不満そうに苦虫を噛み潰した苦渋の顔を見せる常闇は口を開く。
「然し以外な事だ…職場体験で経験を積んだ俺ならまだしも、悪忍…それもホークス、貴方は全く接点が無かったのだろう?其れに加えて芦屋一人というのに改めて驚きだ」
「何をいう常闇、我は666番目の神の使い…善悪云々より我に興味を示し抱くのは当然のことじゃ!と言ってみたは良いものの…善忍と悪忍が少しずつ協力していく姿勢、矢張り我等と対なる存在がいれば、いざこざ…というか、トラブルが起きるんじゃかいかの?」
「いーや、その心配はもう時期なくなるよ。何せそろそろ平和条約が結ばれる頃合いだからね」
「平和…?」
「条約?」
常闇踏陰と芦屋は全く知らんと言わんばかりに小首を傾げる。ホークスはけらけらとした表情で語り継げる。
「これ見なよ、yapuuニュース。各国からの賛否両論はあれど、これは全国に轟くビッグニュース――より平等に円滑に事を進める為、忍の歴史の大きな改革、更にはヒーローとの協力体制を見越した善悪イリニ条約――善忍と悪忍が手を取り合い、世に大きな貢献、平和を守る栄光の歴史的な瞬間さ。それを機に善忍と悪忍の戦争がなくなる、犠牲を無くす決定的な公表ってわけ」
長きに渡った善忍と悪忍の戦争は終止符を迎え、増え続けた抜忍達の制裁、敵退治や人命救助に於ける活動をより活性化させる条約である。オールマイト、半蔵が引退した真中、一時期は混乱を招いたものの、其れを収集させる為にカグラ達が動きだし、上層部達も批判と賛同を招きながらも、漸く平和に向けた政策に動き出したのである。
「これは秘密裏だけど、ゾディアック星導会と、三年前に創立された善忍のユースティア女学園が正式に参加するみたい。カグラ会議でも段々と進めてるみたいだしね」
カグラ会議――No.1の称号を持つ黒月
カグラ四天王、リュウを代理するユースティア女学園の聖従――ミカエル
ユースティアの聖従は善忍カグラの忍学校であり、陽花が亡くなった跡、かなりの活躍を担ったと聞く。
ミカエルは目立った活躍は不明だが、聞いた話によると全国指名手配犯の抜忍『ノヴァ』『ピサロ・ナイト』『燕獄』を単騎でタナトスに連行させ、歩く化け物と称されていた。なのに彼女がカグラの中で目立たなかったのは、気分屋であり極端にホークスと同じメディアに興味がないからだ。
因みに忍名が英名なのも、元々はユースティア女学園という高貴な者達の集まりであり、名前も其れに殉じた相応しい女神であれ、との祈りだそうだ。海外でも英名の名前もあるし、世界を見渡すホークスからすれば疑問にも思わない。
「おぉ!凄いのぉ…そんな条約があったとは!!いや、忙し過ぎて全然テレビとかニュースとか観れてなかったわ…あの鬼畜教官めェ、メニューが厳しすぎて帰って直ぐに爆睡してしまうんじゃ…」
「ふむ、ならば俺たちも芦屋を始めた悪忍達に対して、警戒ではなく…こう、胸を張って堂々と手を握る関係になりたいものだな。軽蔑的な目や、敵意な目線を向けていたわけではなかったが…それでも余り、馴染もうとしなくてすまないな芦屋。改めて俺たちも平和条約に向けて、より友好な関係を築こうではないか」
「な、ななな何!?こ、これは一種の友達関係というやつなのか!!?な、なな、ならば…その、先ずは我の信者から始めるがよい!!!」
「やっぱり信者は欠かせんのか」
常闇踏陰は決して心や表情を面に出す事はない。一匹狼的な雰囲気はあるものの、実技試験では蛙吹梅雨と協力しエクトプラズムを打破したり、協力面は有る。然し蛇女子学園の一件があり、少し心の距離があった。それも今回の条約のニュース、後々多くの人達が平和に向け、争う関係ではなくなるのなら、自分たちヒーローと何ら変わらなくなるのだと理解した。ある意味、雄英生の中で自分から進んで友好関係を築こうとしたのは彼が初めて…いや、切島鋭児郎もまたその一人だ。少しずつ、隔ててた心が解けていき、条約へと向かっていく。
芦屋は赤面しながら、矢張り素直じゃないからか、何故かカルト的な勧誘を勧める一方で、常闇は冷静にツッコミを入れる。
「…してホークス、そのユースティア女学園というのはどういった学校で?飛鳥達やB組の夜桜達とは違うのか?」
「創立も三年前…然も聞いたことがないの…善忍で有名なのと、忍スクールパンフレットでも、名のある善忍高校は見受けたが…」
「ユースティア女学園は何せ空中に存在する学園だからねェ。アメリカの天才女学者『メリッサ』が、凡ゆる脅威から退ける為、生徒の楽園を創り上げるために開発された空中都市――『エデン』。高貴な血族呑みしか入学は許可されてない学校…それに経験も満たされてないし、お嬢様クラスが沢山いるし、生徒もめっちゃ少ないから雄英としても向こうとしても協力の条件は満たさなかったみたいよー?まっ、要するに学校のスカウトでもない限りは無理ですよーって話!半蔵や月閃は昔から存在する伝統と風習、規則を重んじたエリートマンモス高校だけど、ユースティアは全国の正義を主張とし、平和を結ぶ為、密かに創立された新たなエリートお嬢様学園。独自の正義か全国を代表とする正義か、その違い。忍は騙し、壊し、殺すっていうダークな設定に対して、向こうは忍ってよりも執行者って言葉の方が正しいかな。各国の救済要請を受けては、紛争地帯や災害に赴き救いの手を差し伸べ、忍が存在しない国や地帯では武力行使として役割を担う……天使そのものだよ」
「???」
「芦屋、お前半分もついて来てないだろう」
ユースティア女学園は全国に派遣する為の育成機関であり、紛争により手酷く荒らされた国、海外でも協力申請が不可能な忍を派遣させ救済者を担う生徒達。例えば、他国に忍が存在せず、ヒーローの弱体化および減少化、争いが激しくなり血を流す救われない者達。そう言った救われない者達に慈悲を込め、救いの手を差し伸べる正義を冠する救いの象徴。当然それだけ厳しければ、入学自体の審査、入学後の規則も厳しく、学力だけで特定の点数を取らなければ即忍の資格を失われる。少しでも忍務に違反を受ければ退学処分となる。相澤消太の厳しさや、蛇女、月閃や半蔵が如何にぬるま湯だと感じるほど、厳しすぎる洗礼を受けなくてはならない。だが悪に対してとことん厳しく、敵対視する程の学園が条約を結ぶということは、其れほどに忍の界隈に対して大きな説得力を担ってるに他ならない。それもオールマイトが引退したからにより、考えが変わったからであり、それほどの実力行使を行う権限が学園にはあるのだろう。陽花のような強力な人材を育成させ、世界中に救いの手を出す為の、理想と楽園を主張する存在。
メリッサ・シールドとは、アメリカに住んでいる天才科学者であり、緑谷出久と同じく無個性の者。父に尊敬の念を抱き、日々努力を重ね続ける発明家。
ヒーローのサポートアイテムやコスチューム、他にも凡ゆる作品を生み出して来た彼女の功績は、栄光を浴びていた。
(ただ…不可解なのが、ミカエルちゃんって極度の悪忍嫌いな筈…それはユースティア女学園も理解してるはず……。いや、カグラ四天王のリュウが不在故に、実力の穴埋めとして入籍したからか。だとしても…胸騒ぎがする)
これは世に知らされてはいなければ、当然上層部もホークスに話してはいない。それも速すぎる漢だからこそ見抜けるモノ。
(ちょっとの間、アポ無し速攻であの子に会ってみるか――気が乗らないけれど…其れに、何かあるにしろ無いにしろ、トラブルが起きそうだな…)
考えても無駄。
そう判断したホークスはインターンとは言えど、スケジュールを確認、調整する。ミカエルは忍務『ヨーロッパ海で出現した大妖魔』討伐に赴き、任務終了後は会議に出張するだろう。
日本での妖魔討伐は世界各国の中でも屈指の指折りクラスだが、ミカエルに関しては海外出張が多い。
「どうしたホークス…何やら浮かない顔をしているが……任務のコトで気になった点でも?」
「いや、何…何でもないよ常闇くん!お兄さんもNo.3だからさ、考えるコト、やること多過ぎるから偶に物事に耽ることあるんだよねぇ。っと、じゃあ後俺はあっちのルート見て回るから、そこで休んでて」
そいじゃ――と、軽く挨拶を交わす様に『剛翼』を使って空を飛ぶ。ホークスもヒーロー業界では名を馳せ、若い年齢とは言えど、正真正銘のヒーローだ。自分達には明かせない業務や、大人なりの仕事があるのだろう。
休んでて、と言われながら軽く缶ジュースを渡された。常闇はアップルジュース、芦屋はメロンジュースだ。
流石は好みまで用意周到…因みに芦屋の好みに関しては、生ハムから連想したらしい。
何故かと問うのであれば、胡瓜と蜂蜜を合わせた生ハムの試食をオススメする。
「善悪イリニ条約か……俺は兎も角、全然気にも留めなかったな…」
「ふむ…じゃが、悪忍と善忍とやらの違いはどうなるんじゃ?これで我々が問題なくヒーロー業界と手を組むにしろ、次々と忍学生がヒーロー学校と手を組むことになる…とかかの?」
「……俺は忍の在り方や、古の風習…掟だのは知らない…だが、この条約を結ぶ…平和を望んでいるのだろう?それも両方が。その気持ちをカタチに、国さえも変えるほどの変革…本当に普通の心じゃ不可能だと思う。其れを条約として結び、平和の為に進むということは、オールマイトが報われるのは勿論…もう悪忍が敵と同視するのは冒涜なのだとさえ感じる」
前までの常闇踏陰では絶対にあり得ない台詞だった。
彼がヒーローを目指す上で大事なのは心の在り方だと、幼少期から信じてやまなかった。
雄英高校に入学してから、一年とは思えないほどに濃厚に時間は絡んできた。初めて邂逅した敵、黒影の制御が難しく自身の闇に呑まれる感覚、そして悪忍としての何たるか。
様々な闇を味わい、知って、邂逅した常闇だからこそ言える言葉の本音。本当の悪者は、平和を望まない。誰かのために行動しようとは思わない。其れが立場上悪者的な主観だったとしても、それが本当に全て悪いコトだとは思わない。
そして平和条約――ヒーローと一緒に、善忍と悪忍が和解して平和を守ろうと望む夢の結合。なれば、これ以上悪忍に対して変な目線…と言うよりも、悪忍だからどうこう、なんて考えなど失礼だと思えてきたのだ。
それが歴史的に彼ら彼女らが人を殺めたとしても、罪を背負ったとしても、同じ目的を持つ同志に、軽蔑的な眼差しなど、自分の理想像にあるヒーローが廃るものだ。
「オレ、友達!」
「わ!?な、なんじゃ!?」
「オレ、芦屋モ友達!悪イ奴、平和望マナイ――芦屋、悪イ奴チガウ。忍モ俺達モ平和築ク!ソシテ、コレカラモイッパイ頑張ル!!」
唯一、あまり人の会話に介入しない黒影が、友好的に絡んでくる。黒影は暗闇な部分では性格は荒々しくなるが、心の持ち主が清らかであれば牙を向けることはなく、怒り、絶望、憎悪といった感情であれば、見境なく破壊衝動に貪られる。
現在は昼間なので荒々しい態度ではなく、大人しめなのはそうなのだが、飛鳥達でさえも余り会話に入らないのにも関わらず、芦屋に対してはかなり懐いてる様だ。
「黒影、嬉しい気持ちは分かるが芦屋が戸惑ってるぞ」
「オレ、シンコー…ヨク分カンナイ。デモ、友達ハ友達!大事ナノハ、心!!」
ドヤァ!と謎に決める顔。常闇もついため息を吐いてしまうが…そんな一連のやり取りを見ていた芦屋の口角が上に吊り上がり、声を漏らしてしまう。
「ぷっ――あっははは!なんじゃこのモンスターは、随分と面白いコトを言うではないか!何だか気に入ったぞ!」
「我――ダークシャドウ!神ニ牙ヲ向ケ、時ニ仲良クナル深淵タル邪神ノ使イナリ!!」
「何!?常闇、このダークシャドウとやら…信仰が分からないと言っておきながら邪神の使いと申しておるぞ!?というか、邪神の使いってなんじゃ?」
「辞めてくれ黒影、その言葉は俺に効く」
羞恥心が勝る余り、顔を背けたくなる黒歴史に身体が震えてしまう。中学時代、雄英に入学した後密かにヒーローネーム等を考えていた際に、『邪神の使い』だの、『深淵の邪神』など考えていた。流石に高校に入学し、梅雨時…職場体験前にミッドナイトの授業で受けたヒーローネームでツクヨミという名前に決定したのだが、このネームドを付けるためにも幾重もの積み上げられた黒歴史の名前が残っていたのだ。そして常に黒影が此方を見つめてるのだから、ネームドを隠そうにも常に全開的に見られてしまうのだ。芦屋も厨二チックさは感じるものの、何と言うかオカルト的な宗教要素が強いので、厨二要素と似て非なる者ではあるが…。
「まあ、その…なんだ――芦屋、お前はホークスが選んだ程の人材なんだ。共に夢に向かって、切磋琢磨する仲とも呼べれば、俺たちは同胞であり仲間…ならば俺たちが手を取り合うことで、和解の架け橋ににもなれば、他の者達にも示しが付くもの…明日からも宜しく頼むぞ」
「ぬ、ぬぐぐぅ゙… お、お主は直ぐにそういうコトを言うのじゃ…!!じゃ、じゃがまぁ…我も別にお主達に特別、敵視もしてなければ…我が信仰に…じゃなくて!きょ、協力はしてやらんでも……」
「…ン?」
素直な性格ではないのが損するが故か、口を尖らせながら赤面する芦屋を他所に、黒影が違う方向に視線を送る。
「む?どうした黒影よ…」
「アノ暗イ路地裏…二人組、俺達監視シテタ?何カ、変ダ――血ノ、悪イ奴ラノ闇感ジル!!」
「「何だと(じゃと)!?」」
ホークスが不在になって直ぐ、事件発生。
現場を発見した訳ではない上に、黒影の直感や触感、意思や気配で感じ取れるモノ。事件後なのか、事件前なのかは、結局のところ現場に行かなければ不明である。
人気のある廃墟の裏路地――武装をした迷彩服の戦闘員二名は、ガスマスクを着用しており、素顔は不明。肩の紋章には『D』という文字が刺繍されており、双方の髑髏と真ん中の狼の絵文字が特徴的なシンボルマーク。
何か調査か下調べでもしていたのだろう、お互い頷き合い、次の目的地へ向かおうと足を運ぼうとするが――
「何処へ行く――」
廃墟の屋上から飛び降りながら、頭上から奇襲を仕掛ける常闇踏陰は、深淵闇躯の状態…黒影を武装として纏わせながら、穿つ腕を伸ばし、頭部目掛けて振り下ろす。
「ッ――!!」
刹那、反射的に声主に振り向くと共に、抱えていたアサルトライフル――『ベレッタ――ARX160』を連射。銃口を常闇の頭部に目掛けて狙い討つ。
( っ…!!?コイツ…この者――躊躇いなしに反応した瞬間に銃口を…!間違いない、殺し慣れてる者!!)
銃の発射音と共に放たれる硝酸の香りと、火花散る弾丸。深淵闇躯による防御を纏っていなかったら即死していただろう。マスタードのようなチャチで未経験な中学生とは、完全に次元が違う。常闇の穿つ腕を掻い潜る様に、アクロバティックな身動きで、俊敏に回避していく。
「クッ…!」
「ッ…!!」
着地し、直ぐ様追い討ちを掛けるように伸縮自在の闇を動かし追撃を仕掛けるも、真正面から此方へ突進し、相手から頭突きを喰らってしまう。虚を突かれたように、後へ下がってしまう刹那、武装した敵は常闇の腹を蹴り、袖から仕込みナイフで心臓目掛けて振おうと試みるも…
「ツクヨミィ!無事か!!くっ…こやつ、動きが上忍か!?玄人じゃ!」
大車輪の纏う凶刃の風を吹かせ、背後で死角となっていた敵に痛手を浴びせ、吹き飛ばす。
一方で背後から奇襲を仕掛けた芦屋も、気配を隠していたにも関わらずもう一人の武装の敵は手練れだったようで、掠めることもなく迎撃されてしまった。辛うじて上手く起点を利かし、ツクヨミを助け出したものの、芦屋と対峙した敵は、片方の腕が巨大化し、強引に壁を破壊しながら殺しに掛かる。
壁を破壊することにより、破片が飛び散り、それを薙ぎ払うだけで鋭利な刃物を飛ばす様に、襲わせる。
「このッ――!秘伝忍法――『兇嵐陰絶輪』!!」
禍々しい嵐が、巻き溢れる刃物のように武装した巨腕の敵の繰り出したコンクリートの破片を打ち砕かせ相殺させるも、捨身覚悟で秘伝忍法を浴びながら突進してくる。
「な、何じゃこやづっ!!」
「芦屋!!クソッ…!黒影!!」
そしてタックルを受け、体勢が崩れた刹那、なんと敵は足払いで芦屋を転ばせ、身体を踏みつけ、巨腕で首を締めようと魔の手を差し伸べてくる。ツクヨミが意識を向け、注意を逸らした隙に、もう一人…吹き飛ばされた武装の敵は、アサルトライフルをツクヨミの後頭部を狙っている。恐らくヘッドショットで獲物を的確に、確実に仕留めるつもりでいるのだろう。一秒にも満たない隙が生まれれば、それは免れることのない致命的な死を招いてしまうことに――。
「ツクヨミィ!!」
「ッ…!!?」
だが、銃が放たれることはなく、常闇のダークシャドウは深淵闇躯を解除した状態で、建物の影を利用して相手を縛り付けていた。纏わりつき、身動きできず必死に抗う敵は、もがいており、ダークシャドウも引き剥がされない様に必死になって抑えている。
「くぅッ…!!芦屋ぁ!!」
「こんの…っ!ぬ゙あ゙あ゙ぁ゙!!」
重圧に抑えられてる芦屋は、幸い両手に持ってた大車輪で、巨腕を切り裂くように斬り込みを入れる。
ザクッ!ザシュッ――!車輪の刃が腕に斬り込まれ、鮮血が飛び散る様に溢れ出る。然し怯む様子もなく、緩む様子も伺えない。ガスマスクで表情を隠してるからか、相手が効いてるかさえ不明だ。確認のしようがない。
「おのれェ……ダークシャドウ――!!!」
「オォ…!オオォォォ――!!!」
己の内に湧き上がる怒りと共に、黒影は応えようとする。衝動により爆発する悪意、殺意、間違った闇の感情を抑え込み、一部力を解放する。ツクヨミの脳裏に蘇るのは、林間合宿の際に己の不甲斐なさと、未熟さにより、自身の個性である黒影を暴走させ、結果として障子や他の者達に多大なる迷惑をかけてしまった。
(もう…あの時のようには…ならんぞ!!!)
黒影は心身に操作され、感情を根源とする闇の具現化は、一歩間違えれば大きく主従関係が狂い、覆してしまう。あの時は宵闇の夜とはいえど、黒影が暴走するのには充分すぎる程に、状況が適していたのだ。
それと同様に、障子目蔵を殺める危険性も、黒影にはそれを可能にするほどのポテンシャルがあった。
「グオオォオオォォォーーーーーッッッ!!!!」
片腕で敵を一体拘束している間に、ビルの影による暗闇を利用して、闇を増幅。黒影にとって陰や暗闇、そういった光のない場所は、状況さえ整っていれば問題ない。もう片方の腕を巨大化させ、敵を吹き飛ばす勢いで殴り付ける。
邪悪で凶暴な一撃が、重圧な拳による暴力に、芦屋の首を締め殺そうとした敵を、跡形もなく殴り飛ばす。
まるでトラックにでも跳ね飛ばされたかのように、ズバコオオォン――!!と、破壊音と衝撃の音が反響し、芦屋は無事に何とか解放された。
「か、感謝するツクヨミ…!げほっ、ごほッ…!」
「嗚呼、礼には及ばな…ッ!クッ!此奴、まだ足掻き続けるというのか…!!」
無事に解放された芦屋は咳き込みながらも、何とかツクヨミの側に駆け寄り、助けてもらった御礼を交えるも、常闇は肝心の拘束されていたもう一人の敵に視線を送る。
ギチギチ…!鈍くて千切るような音。其れは黒影の腕から逃れようと、無理矢理にでも身体を動かす兵隊。
(通常――黒影に呑まれた者は、どう足掻いても無駄なだけ。オールマイト程や緑谷程のパワーによる怪力や、爆豪や轟のように光を根源とした個性、そして先輩であるミリオのような特殊な個性でなければ…いや!芦屋と対峙した奴は発動型の個性――ならコイツは身体能力を向上とさせる個性か?)
ツクヨミは冷静に分析し、頭を回し働かせ、迅速に最善の対応を鑑みるも、敵は脱出しようと試みる。
「なれば我がトドメを刺そう!ダークシャドウは闇、なれば我の秘伝忍法は寧ろ増幅に加えて無効な筈じゃ!」
芦屋は武器を構えて脱出しようと必死に足掻く武装した兵隊の敵に、邪気の念を込めて敵を一掃しようとする。先ほど敵を倒したことにより、二体一の良好な環境が整えたことにより、先ほどのピンチよりかは充分に良い状況になっただろう。
だが…
「ッ…!!」
ドンッ――!ドンッ――!ドンッ――!!
地震にも似た音が反響し、背後に目を遣る。それは先ほど、黒影の重い一撃を以てして、吹き飛ばされた敵が、首から血を流しながら追いかけて来た。
マスク越しにより、口から血を流しているのだろう。それでも尚、此方に目を付けた標的を死ぬまで仕留めようとする、巨腕の敵。もう片方の手も怪物の様な腕をしており、両腕で地面を殴り飛ばしながら、迅速に此方へと進んで来る。
「なん――ッだと!!?」
ツクヨミは絶句を押し殺し、声を張る。
USJ襲撃を始め、蛇女の生徒、職場体験、インターンでの数日間は敵との交戦も有り、入学の頃とは比にならない速度で成長を遂げていた。経験、友情、其れらは必ず糧となり、体育祭でも三位に上り詰めるほどに常闇踏陰という少年は強く、実力者だ。
だが今まで敵と戦った常闇だからこそ感じる狂気――それは死柄木弔のような、曇りなき純粋な殺意でもなく、漆月のような歪んだ悪意でもない。ムーンフィッシュの様な得体の知れない快楽的な殺意衝動でもない、
自分が死んでも相手を殺そうとする、絶望的な殺意――。
現に血反吐を撒き散らし、吹き飛んだ衝撃に加えて廃車にぶつかり、背中は大打撲した。激痛で立ってられるのもままならず、足も少々折れているにも関わらず、足掻きながら標的を仕留めるまで、激痛にも耐えて殺そうとする、異常すぎる執念。三流のチンピラは論外として、然もコイツらは喋ることさえしない。
生きてはいるし、芦屋の言う傀儡といったモノでもない…生きている人間であり、操られてもいない。
つまり、素でこれだということ――
双眸の敵が、二人を仕留めようと、苦しみに足掻いているのだ。
「だが――どんな状況下でも、諦めず、信頼する者が勝利を掴む」
だからこそ、そんな時でもお互い背中を預け合う者同士、芦屋は常闇と対峙した敵を、常闇は芦屋と戦った敵と、まるでバトンタッチで交代する様に、流れる連携で抗う敵を更に追い討ちを掛ける。
油断は一切しておらず、ホークスの言う『迅速で最善な行動を尽くす』ことを心掛け、一旦不利だと感じれば、交代して有利な方向へと運び出す。
芦屋の両輪から放たれる、紫刃の嵐――ツクヨミの二度目の、増幅したダークシャドウ。
紫刃の嵐を浴びた敵は、なす術なく斬撃を浴びて意識を失い、闇を浴びた黒影は、押し潰すかのように床へと叩きつける。
ズドオォオォン――!!!
黒影の腕の重圧による地震と戦闘音、双方の敵は意識を途絶えて撃沈してしまう。
土煙が晴れた頃には、既に身動きなく気絶していた。
「よし――制圧完了だ」
「はああぁぁ〜〜……いやぁ、疲れたぁ…。ツクヨミ、ナイスファインプレーじゃ!!」
「芦屋も、非常に助かった。流石はホークスに認められた666番目の使徒だ」
「あっはっは!そうじゃろそうじゃろ!もし信者になれば特別に、信者特典のクリアファイルにポストカードも付いてくるんじゃぞ♪特にツクヨミと我の仲じゃ、従信の中でも特別優遇してやらんでもないぞ!」
「仮免試験と同じ事を言ってるな芦屋よ…俺は覚えてるぞ。後そういうのはマルチ商法と誤解を招きかねん…」
ひと段落ついてホッとしたのか、「さて…どうしたものか…」と、常闇は倒れてる二人を建物の壁に並べて一瞥する。武装した二人の敵は起き上がる気配はなく、敵一体は携帯していた対敵用捕縛テープで簀巻きにしてある。もう一人の異形発動系の敵は黒影が常に監視をするかの様に身体ごと巻きついている。
「一応、連絡はしておいたが…然し、此奴ら一体どんな訓練を受けて来たんじゃ?蛇女の生徒達もある程度鍛えられておるし、模擬試験でも生徒達と戦ったことはあるが…洗練された身動きに、迷いのない的確な責め――此奴ら、プロじゃった」
「いや…プロにも匹敵する武力ある者…見た目的に軍隊のようだが…幾ら俺らが奇襲を仕掛けたとはいえ、明らかに他の敵とは空気も違ってた…。抑も、コイツらは一体何のために?」
此処へ来たのだろう――そう言葉が口にする前に、対敵用捕縛テープが一瞬で千切れた。
呆然と、芦屋と常闇が意識を向ける瞬間――短剣の凶刃が、常闇の首を刈り取ろうと迫り、首筋に触れる寸前。
「ッッ!!!??」
理解に至る――然し其れは既に遅し。
気絶した敵は、気絶を装い、呼吸を止めて、反逆の機会を狙っていた。気配も、呼吸も、完全に気絶したフリをして、欺き、疑問と戦闘を終え、緊張が解いた絶好のチャンスを見逃さず。
芦屋が何か叫ぼうと口を開けるも、もう遅いのだ――。
「ツクヨミくん、芦屋ちゃん――これ以上はもう踏み入らない方がいい」
ザンッ――!!!その凶刃は常闇の首を、頸動脈を刈り取る事は叶わず、手放した短剣――対捕縛用に対処されたナイフは、一つの羽によって弾かれ、明後日の方向へ、壁に突き刺さりめり込んだ。
気絶の機会を伺い、騙し撃ちを試みた敵は、背中を刃物に近い一太刀で袈裟斬りにされる。
「「ホークスぅ!!」」
「ごめん、ちゃんと最後まで事務所に行かせて休ませるべきだった。これは俺の失態だ――今回ばかりは本当に申し訳ないね」
今度こそバタリと気絶し倒れ込んだ敵は、気を失い息をする。背中は武装した軍隊服ごと破られており、出血する。
ホークスは自身の剛翼の羽を積み重ね、太刀として、武器として用いることが出来る。
ホークスが赴く前に、直感と戦闘音を忍び込ませてた羽で、二人組の戦闘を察して駆け付けに来てくれたとのこと。
ホークスの羽は武器として扱えるだけでなく、音や振動、感覚の共有、其れらを通して自身に伝わるようになっている。だからこそ、常闇達の危険にも自慢のスピードでいつでも駆け付けることが可能なのだ。
「助かった…いや、済まない。パトロール巡回中、怪しい者たちを発見し――」
「うん、別に責めてる訳じゃない。ただ、君たち二人にはコレは過酷すぎる…見たところ、使い捨ての三流兵隊だしね」
「三りゅ…」
三流、然も使い捨て。
武力を駆使し、標的を仕留める為に命を削り、騙し討ちをする程の残虐な武装の敵が、使い捨ての駒。
だから平気で自分の命を蔑ろにし、激痛に走っても命令のために仕留める、殺戮の兵隊。
「君たちは先に戻ってて――ツクヨミ、特に君はヒーロー学生…コイツらと関わったら、君はヒーローとしての価値観も、感情も、主観も、全部血に染まるようになる。もう、戻れなくなる」
「何を言って…」
「芦屋ちゃんも、コレと関わって仕舞えば悪忍が如何にどんな存在なのか…格差で理解してしまう。君も平気で人を殺めることに躊躇いをなくし、間違った戦いを学んでしまう…」
「ホークス……その口振じゃと、お主…何か知っておるのじゃな?」
あれだけヘラヘラしてたあのホークスが、感情を殺し、冷徹で残酷な眼差しを兵隊達に向ける。ホークスはNo.3であると同時に、謎が深い。本名は公表するかしないかは、個人のプライバシーも考慮してある為、明かされてないのは勿論だとして、インタビューで取材を受けても多くを語っていない。トーク力が少ない、またはメディアを嫌うという意味ではなく、あしらわれてるような感じだ。
「ホークス、もし許可が有れば話して欲しい。情報共有、敵との備えに脅威を打破する為の予防と最善策、このような輩が集団組織で行動してるのなら、危険が孕んでるのは確かだ。俺たちの防衛のためにも、市民の為にも、どうか教えてくれないか?」
常闇の言ってる言葉は尤もだ。
危険な敵や噂になってる地区は、チームで情報を共有するのがベストである。
其れは正しい…だが。
「ツクヨミ君の言ってるのは理解できるし正解だね、けど…今回ばかりコイツらだけはダメだ。もし最悪、コイツらと関わることがあるのなら、即インターンは中止にする」
「なっ…」
「仮に知ったとするとして…君たちはこの二人組を倒したとして、それでも下っ端の構成員……それ以上の戦闘員がウジャウジャといる。君たちは学生であって、知らないことも沢山ある――それは仕方ない。でもね、知らないことが良いこともあるんだよ」
ホークスは淡々と言葉を紡ぐ。
「もし事実を知った時、ツクヨミくんに芦屋ちゃん――これは、胸糞が悪くなる。ただただ後味が悪く、吐き気を催し、救いなんて結末さえ存在せず、生きてる世界観が狂い、目を閉ざし耳を塞ぎ、立ち止まりたくなる…そんな、残酷な光景を目にしてしまう。ツクヨミくんはきっと永遠にヒーローになれず、其れどころか自主退学し、芦屋ちゃんはもう平和な学園生活さえ送れなくなる…大好きな信仰とか、それさえ自分から破り捨ててしまう…そんな、在ってはならない犯罪の歴史と事実が、コイツらにはある…」
ホークスが初めて見せる、怒りに近い言葉に、二人は固唾を飲む。それを、あのホークスがそれを言ってしまう程なのだ。踏み入れてないけない禁忌の前に立っているかのように、怒りに触れる手前の神様が、最後に忠告をしているかのように。
「何より――君たちは…自分たち自身を、許せなくなってしまう」
含みのある言葉は、理解できなかった。
これは、大人でも踏み入ってはいけない、未知と狂気、殺意と血みどろな景色しか広がっていない。
「っと、なんか辛気臭い話しちゃったね!取り敢えずツクヨミ君と芦屋ちゃんはサイドキック達呼んだから一緒に事務所まで戻ってくれるかな?それと事務所に戻ったら明日の調査とか色々あるからさ」
その後はニカッとしたヘラヘラしてるいつもの表情に戻っていた。常闇と芦屋はそれを確認すれば、納得してはいないものの頷く。機密事項が多く、下手すれば学生が相手するべきものじゃないと悟ったのだろう。
「コイツらは後で警察に突き出すからさ、後処理はお兄さんに任せて、二人は深い友情とか深めておいでよ。あっ、デートとか組み立てちゃう?」
「ぶほっ!」
「ブッ!!きゅ、急に何を戯けたコトを抜かすんじゃこの阿呆は!!!」
「ジョーダン♪今日は事務所で待機しといて。俺もやること終わったら戻るから」
恋愛やらデートとやらのジャンルに免疫が低い二人は赤面して吹き出してしまう。芦屋に至っては激怒しながら怒声を上げる始末だ。先ほど、重い空気にしてしまった負い目を感じていたのだろう。ホークスは冗談で二人の肩の荷を下ろすように濁す。
「…まあ、そこまで言うのなら一旦戻ろう芦屋。師の言葉に従うのも、俺たちの――」
「ま、まさか本当にで、でで、デートを組むのか!!?」
「違うそうじゃない――芦屋落ち着け、一旦深呼吸しろ」
完全に誤解を招いたコミュニケーション。黒影はケラケラ笑い、芦屋と常闇の会話のキャッチボールにブレが生じた。
常闇と芦屋がプロヒーローのサイドキックと一緒に事務所へ戻る後ろ姿を見届けるのを確認してから、ホークスは改めて気絶した二人組に向き直る。
「なぁ、アンタら――誰の指図で、何の目的で此処へ来た?」
気絶してるであろう二人組に、声を投げる。
「…いや、今度こそ気絶してる。二人共重症…治療を受けたとしても脱獄を図るだろな……それに、盗聴器でも忍び込ませてるんだろ?だから、ツクヨミと芦屋ちゃんとの戦闘でも、連携をとることなく……『喋る権利』さえないってことか…?」
マスク自体が盗聴器となっており、いつでも自爆が可能なように使い捨てとして情報収集を駆け出された、特攻隊――『D―スクワッド』。それぞれ分隊が隔たれており、全員が自爆型という訳ではないが、彼らは国をも覆すテロリストであり、目的は不明。
ただ言えることは、Dスクワッドは現実でも公表されておらず、知られてしまえば取り返しが付かず、存在ごと狙われてしまう。
だからツクヨミと芦屋をこれ以上、居座って欲しくなかった。
「多方、子供を誘拐して、戦争の兵隊に育てる為の誘拐と情報収集を備えた輩なんだろうが……間違いなくタルタロス行きだ。だが悪く思わないでくれ、運が悪かった…そう思ってくれ。そして金輪際此処に近づくな――これを聞いてるアンタに言ってるんだよ『現行犯』、俺達は、アンタに関わるつもりは毛頭ない。余計な火が大きく回らないように、手打ちにしよう」
盗聴器を敢えて利用した、ホークスなりのメッセージ。
盗聴器を通した主は、何を思うのだろう。もしこれに問題があれば自爆をされるが……時間が経っても作動しない。
「…作動しない、ってことは…了承したと受け取った。文字通りタルタロスに送る……」
本当に盗聴器がないのか、其れとも自爆機能なんてないものなのかは不明…あくまでホークス自体のもしもの可能性。
だがホークスがそんなことをするのは、エゲつない行為を意図も容易く行えるテロリスト集団なのだから。
この後は警察に連行され、タルタロスへと直行で送還される二人組。ガスマスクを外さなかったのも警察や付き添いのヒーローにも伝えてはいる。後の処理は専門家が行ってくれるだろう。
「Dースクワッド……今まで姿を隠してた国家テロリスト組織がなぜ此処に?……何だか、胸騒ぎがするな」
ホークスはポケットに入ってたブラックの缶コーヒーの蓋を開け、喉を潤していく。口の中に広がる苦い味が広がる。最悪、首を落として…なんて、殺す手段も考えてはいたが、それは辞めておいた。
殺してしまえば、宣戦布告と看做され、ホークスを始めた常闇踏陰、芦屋、サイドキックや事務所…いや、此処に住んでる地区の者達まで巻き添えを喰らってしまう。
何より噂でしか聞いたことがないのだが、Dースクワッドには手練れの選抜メンバーが存在しているらしい。数は四人…一人はタナトスに送られたと聞いた。
「……俺も、アイツらと変わらんのかね」
空を見上げ、苦い味を噛み締めながら、孤独にそう呟いた。