光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

239 / 253

新作ではヒロアカのとは関係なくシノビマスターの話として、クロスではない閃乱カグラ独自の話をするつもりですが、具体的にどう言うストーリーにするのか、主人公はどうするのかという曖昧な問題で執筆が上手く進まないこの日々。
あっ、因みに忙しい日々はようやくをもって終わりました。
なのでこれからは投稿ペースが早くなる、かも????


3話「囚人と拷問」

 

 

 

 

 

 首と手足を鎖で繋げられ、縛られる少女達は、まるで処刑の執行でも受けるかのような眺めだ。

 ある少女は涙を流しながら吊るされ、ある女性は心が壊れた人形のような無表情を浮かべ、ある少女は毎日受ける拷問に精神を追い詰められ、それはそれはもう女性からすれば悪夢だ。

 

「よし、全員いるな。こっちも問題なしッと…」

 

 人数を数え終え、問題が無いと知るや否やで仲間と連絡を取る従業員。私はそれを横目で睨みながら、奥歯を噛み締め、覚悟を決める。

 昼に受ける拷問は、ある意味男子や大人よりも楽で、ある意味一番辛い。

 少なくとも、健全で正気を保ってる勇希からすれば、最大の悪夢と呼んでも過言では無いだろう。

 

 数分後になると、拷問を行う大広間のシャッターが不意に開き、その音を感知し敏感に反応する数人の少女が部屋に響く。

 暗闇に染まる奥の部屋から、ノロノロと現れるのは、明らかにこの世のモノとは思えぬ異形の姿をした化物。

 

 これが、妖魔と呼ばれるバケモノ達だ。

 

 妖魔の姿を確認した少女達は、悲鳴を上げる。

 泣きながら、体を動かそうにも手足と首が縛られてるから出来ないし、逃げることも抵抗することさえ許されない。

 私もかれこれ何年もこの拷問を受けてはいるが、いつまで経ってもこの意味不明な拷問は慣れない。妖魔の悍ましい姿には時折、恐怖心を煽られるが、「せめてこんなバケモノ達に負けてたまるか」と、心の中で喝を入れて毎日耐えているのだ。

 でなければ、本当に頭が可笑しくなってしまうし、逆にこれに慣れろと言われた方がずっと無理がある。

 

「ンジョル、ギギニィニ、ンベロォ……」

「ギ、チチ、アッアア…ァァアァァアア!!」

「シャ〜……キチキチ、グビャァ…」

 

 ピラルクーの魚の形をしたり妖魔は、全身から人間の手足を生やし、吊るされた女性たちを見定めるする。

 巨大な昆虫蝿は、唾液をダラダラと垂らしながら、歓喜の声を上げる妖魔。

 6つの目を持つ蛇は、まるで巨大アナコンダのようだ。カッターのように尖ったトサカが生えており、口の中には老婆の顔が溶けてるように剥き出され映された、悍ましい妖魔。

 

 次々と姿を現わす妖魔は、手当たり次第に女性達を見定めては、貪るように塗れた血を舐める。

 滑り気のある舌が、体のあちこちを探るように舐め回し、奇声を上げ喜びひ浸る。まるで化物と言うよりも得体の知れない変態だ。

 この拷問は他のと比べて基本的にダメージは無いが、それはあくまで物理的な問題。女性にとってコレは、精神的な疲労とダメージが残り、鑢で削られるような不快感が蓄積するだけだ。

 

「ひゃぁッ…んくっ、くすぐ…ったい」

 

 数匹の妖魔が私を囲み、舌を肌に這わせて舐めていく。

 これが可愛い猫や犬なら話は別だが、誰が好きでこんな奇形の姿をした妖魔にこんな事をされなければならないのか。

 だが、この拷問では何も人を取って食おうとする訳ではないので、命に関わらなければ、他の囚人の男子たちでは「あの拷問を受けたい」なんて密かに言ってる人間も少なくはないが、私にとっては良いものではないと、無い胸を張って言える。

 

(ダメ…正気を保た……なきゃ、こんなの、どうってこと……!)

 

 眼をキュッと瞑りながら、私は妖魔に受ける羞恥と屈辱を味わっては見事に耐え抜く。弱気を見せず、自分は大丈夫なんだと言い聞かせ、耐えていく。

 妖魔の唾液が体のあちこちに滑るように付着し、ベトベトの不快な感触が脳に刺激を与えていく。本当に、この組織の人間は何がしたくてこんなことをさせるのだろうか。少なくとも、何かしらの理由があるのは確かだ。こんな悪趣味なことをする為…とも考え難い。

 

「ああッ、ダメ…そこ、舐め…ちゃ!」

 

 尻と足を貪るように舐める蛇形の妖魔。擽ぐるような、でもって痴漢よりもタチの悪い仕打ちに、もし拘束されてなければ抵抗しているのだろうが、縛られているので動きたくとも自由が効かない。

 妖魔はニヘェと薄気味悪い笑顔を浮かべ、満足したらまた別の方向へ女性を選んでは舐めていく。

 やはり、いつまで経っても慣れないものだ。いや、本能的が〝慣れるな〟と拒絶反応を引き起こしてるのかもしれないが、この際はどうでも良い。

 

「はぁ…はぁ……早く、終わらない、かしら……」

 

 まだ始まってから数十分しか経っていないのに、もうやめて欲しいと切実に願う彼女は、息を荒げながら表情を曇らせる。

 けど、コレを受けるのは女子だけで良かったかもしれない。

 もしもこの拷問で守が居たのなら、顔を合わせ辛いし、そもそも見せたく無いのが本音だ。

 

(うぅ、気持ち悪い…!!どうして、毎日こんな仕打ちに……)

 

 心の中でどれだけ愚痴を零しても、決して助けてとは言わない。この世界で救けてくれたのは、守だけ。他は誰も信用できない。

 空や冷奈、光里も友達と面識が高いと言うだけで、救けて欲しいと思ったことはないし、先ずあの子達は自分よりも年下なのだから、守るのは自分の方だろう。

 しかしこの拷問ばかりはどうにもならない。

 

 ただただ、どうすることも叶わず、静かに終焉の刻が来るまで待つしかない。

 

 

 

 

 

 

 

「拷問の方は順調、穢れた血も随分と溜まりましたし、次の妖魔が大量生産出来ますね。

 武器の生産も特に問題点はありません。どうですかね?デー門さん」

 

 資料に目を通しながら、モニター室で一通りの事務作業の報告をする一人の従業員。相手は【忍商会】〝4支部〟筆頭――デー門。この組織とアジト、工場等の管理を担う忍の実力を持つ曲者だ。

 

「……売り上げはどうだ?」

 

「戦姫衆を始めた常連のお客様が買い取って下さって、お陰で売り上げはうなぎ上り!いやぁしかし人身売買、臓器売買と言った商売はしなくても宜しいのですか?この位ですと、新しい商法を出しても可笑しくありませんし、魔門様に亜門様も褒めてましたよ?」

 

「………そうか」

 

 デー門と呼ばれた男は、まるで何の興味もなく言葉を返し、黒く分厚い書物を読む。

 サタンやオカルト宗教のような容姿は、一言で言えば不気味、例えるなら魔術師。顔は隠されてるため、目が蒼く見えるだけ。

 

「コイツらを強制労働させてるのは、別に気まぐれじゃない。簡単に言えば、社会に出ても使えない役立たず――〝ゴミ〟だからだ」

 

 デー門は深い溜息を吐き、本を栞で閉じると、テーブルの上に置かれてる資料を手に持ち目を通す。

 

「風立空――年齢9歳、元々父親は大きな会社でそつなく働いていたものの、会社が倒産し金の無い人生を歩むことになる。

 金の無い事から家を売る羽目になり、惨めな人生を送るコイツは、将来見ても使えんだろう?ゴミ」

 

「は、はぁ…」

 

「息吹冷奈――年齢9歳、父と母が多大な借金を背負い、毎日が絶えない家庭内の喧嘩、度が過ぎた暴力、次々と壊れゆく家庭関係に、2億の借金を抱え込んでる。碌な両親じゃない娘が将来役立つ訳がない、コイツもゴミ。

 

 荒田刀気――年齢15歳、元々マトモな家庭を送ってはいたものの、一年前に両親が交通事故を起こし、親は他界。

 金もろくにない、勉学や運動の成績は並以下、社会でも使えなさそうなゴミ。

 

 蝶々瑠璃――年齢16歳、クラス内ではそこそこ人気の誇る女子高生、ただひょんな事柄で彼氏と別れ、自暴自棄に走り、クラス内では虐めを受ける始末となった哀れな女もゴミ。

 

 竹林月見町――年齢32歳、昔はヒーロー科の生徒として将来はヒーローの役職に就く夢を見るも、無様なことにヒーロー資格の取得に落ち、留年するも合格ならずの使えん奴よ。就職先もほぼ決まらないままノコノコと息を吸うゴミ。

 

 どうだ?コイツらはこの社会で使えるか?使えん役立たずなゴミがこの世に居なくなろうと、誰も悲しまん。だから、厳選して攫ったのだ。 そんな我が悪魔に見えるか?」

 

 ここで常人ならば「お前は魔王だ!」と叫んでいるのだろう。この組織の人間も彼が非常には見えるものの、反論は出来ない。

 

「どいつもこいつも、使えんゴミ供バッカさ。人殺しや拉致ってのは、被害者にとっては悲しむだろうよ。だが、何の繋がりも人間として誰も悲しんで貰えない人間は、ソイツは死んでるようなもんさ。

 居ても居なくても変わらんのなら、ゴミと同価値よ。

 

 良いか?お前も組織の人間としてなら誇りに思え――俺たちが外道と罵られようと、人間としての価値を持ち、生きてることにな」

 

 この組織で強制労働を強いられてる人間は、何も偶然ではない。

 デー門自らがデータを通し、攫っても問題のない人間を厳選し奴隷として扱っているのだ。

 この拷問を受けてる者は皆、現実に絶望し、未来の無い、生きる意味を失った者達が集まる、社会不適合者の溜まり場なのである。

 志久万が何かしら不変だと察したのは、コレに近いだろう。

 何よりも、魔門を含めた三人の筆頭とは違い、人身売買で引き取る際の金を支払わずに済むので、この方法が効率が良いのだ。

 

 

「そんなゴミが、都合の良いように上手く行くと問われるとそうでもねぇ。だから、長持ちして壊れるまで使うのさ。

 在庫は幾らでもいる、今日もしっかり働いてこい」

 

 そういうと、従業員はハッ!と敬礼をして踵を返す。

 誰も居なくなった部屋で、優雅にグラスに入ったワインを飲みながら、拷問を受けてる少女達を、さぞ愉快そうに眺めている。

 

「肉体を痛ぶることで、負の感情と供に流れる血は穢れとなり、凶暴な妖魔を産む。そしてその妖魔を懐柔する為には女性の体で性欲を発散させる。

 そうすることで妖魔は大人しくなり、後は我々が教育指導を怠らなければ主人の命令を聞ける殺戮兵器の完成だ」

 

 これらの拷問は全て妖魔の生産に関わっていたものだ。

 妖魔の生産方法は簡単。禍々しく負に染まった血を〝穢れた血〟と呼び、それを流し一定量の血を混ぜ合わせることで、妖魔は完成する。

 デー門にとっては特に珍しいことでもない。人造人間やクローンだって今じゃ最新型の技術が有ってこそ生産が可能となっている。

 構造は妖魔も同じで、特別な研究施設があることで人工妖魔の生産が可能となっている。

 材料は穢れの血さえ、一定量で注ぐだけ。

 次に問題なのは妖魔を使役する為の教育だ。

 先ほど述べたように、穢れの血で産まれた妖魔は凶暴且つ残酷だ。そんな妖魔を指導するには、組織の従業員の力は欠かせない。

 妖魔の興奮作用を和らげ、鎮ませるには、女性の肉体が適用している。妖魔には習性があるのか、無抵抗で大人しい女性を見つけると、襲わず肉体を舐めると言った、卑猥な行動を起こす。

 かの〝妖魔研究学者〟――ティオ・ディアボリクスが初めて発見した実験だ。

 性欲発散によりフラストレーションを解決することで、妖魔は大人しくなり、後は静寂状態の妖魔に従業員の教育を施すことで、懐柔し殺戮兵器として産まれ変わらせる。

 これこそ、妖魔の生産方法なのだ。

 

「ただ、ゴミはゴミでも…使えるヤツはいるがな…例えば、アイツ」

 

 部屋には一人しかいないのに独り言を呟くデー門は、モニター室に映り、妖魔に舐めまわされてるか弱い少女に視線を移す。

 

「光里優良――年齢16歳。ここに収監されたのは6歳、既に10年間この地獄の生活を送らせてはいるが…

 アイツは個性登録の診断を受けて無いとはいえ、能力的には治癒効果を発動させるのは間違いない。

 ふふ、回復系のポジションを持つ人間は滅多にいないからな。雄英にはそう言うヤツが一人、ババアがいるが…コイツはデメリット故に、他人に負荷を掛けることなく怪我を治癒させることが出来る。コイツは重宝だ」

 

 光里優里、名前のみが明かされており他は詳細不明。

 両親の名前や血統すらも謎に包まれており、本人も知らないと言う。最初は大人に対して隠し事をしてるのかと思っていたのだが、こんな幼気な子が我々に嘘を吐く道理もなければ、調べたところ個性登録すら無いと聞く。

 捨て子かは不明だが、何かしらと使えそうなので檻にぶち込んでやっといた。

 

「志久万も使えるな、いや…コイツには多少の同調はあるさ。なんたってワイルドヴィランズは中々名の上がった敵組織の一員。

 上手く使えば我々の利益も上がる…クク、ここじゃあ法律や敵対関係なんて関係ない。犯罪起こす人間は、法やルールに縛られないからこそ、強者は常に自由の身を保つことが出来る」

 

 薄く笑いながらワインを飲み干すと、「ただ…」と声を零す。

 

 

「絶恵 勇希――コイツは何者だ?」

 

 

 絶恵勇希――年齢16歳。光里優良と同じく家柄の詳細は不明。

 何の変哲も無い女性、でもって社会に役立ちそうには無い、凡人だ。

 容姿は普通、顔も悪くはなくどちらかと言えば美人には近い。黒いボブカットの髪型に、赤いリボンを付けてるのが特徴的だ。

 一見何とも無いようには見えるし、もうかれこれ3年は経つが…

 

「コイツ、個性診断の資料では個性因子が無いと聞く…」

 

 個性因子。

 個性を持つ人間なら誰もが持つ細胞の様な存在だ。肉眼では視認出来ない血肉の細胞を持つことで、人間は個性という能力を発動させる。

 また個性因子が無い人間は無個性、と呼ばれてる。これが超人社会が成り立っている大いたる原因だ。

 個性因子が在っても、どんな個性を備えてるかは医者ですら解明不能とさえ言われている。

 デー門の台詞を切り取れば、無個性の人間という範疇だけで大した害も無いので問題はないのだが…

 

「守と言うガキの話、本人の話を照らし合わせると…無個性という人間でもないようだが…」

 

 何でも自身の流れる血を利用することが可能だとか。雄英高校に住まう教師に『血操』いう個性を持つ人間がいると聞くが、雰囲気ではそうとも言い難い…

 況してや個性因子の無い人間が能力を使えるのだ。

 

「となると、忍の家系…と考えるのが妥当なのか?」

 

 個性因子の無い人間が能力を使うのならば、忍と考えるのが自然の成り行きだろう。

 だがアイツの話を聞くには両親は碌な人間では無かった人間と聞くし…ヤツの名前を照らして見るからには父母供に忍家系では無いそうだ。

 流石のデー門も、こんな例外な事実に到達して困惑したそうで、調べてみる価値がある為、特別にヤツだけは殺さない加減で様子見だそうだ。調べたところ、個性因子の無い人間が能力を扱う痕跡は無いそうで、更には忍家系で無い人間が忍術らしい能力を発動したという話も聞いたことがない。

 個性診断を再び受けてみれば、突然個性が発現したと断言できるのだが…

 

「俺のような人間がアイツを病院に連れて個性診断を願うなんて出来るわけがないしな」

 

 そもそも、この組織で奴隷にしてる人間全ては、もうこの世に存在していないようなもの。戸籍は消され、名前は役立たない。どの道無理な話だ。

 

 

「今日も何もなければ…良いのだが…」

 

 

 そう言った後、大事なやり取りを思い出したデー門はこの部屋を後に去っていった。

 

 

 

 

 

 





今回も短かったですが、まーまだ本腰じゃないんでね?
本格的な戦闘や話が進めば変わるんじゃないでしょうか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。