光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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特別編「傍観者だったお姉ちゃんの二度目の人生に、新しい妹が出来ちゃいました♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、本当に生き返るだなんて、夢にも思ってなかったわ…!」

 

 今まで傍観者だった両姫はあの世からこの世へと舞い戻り、姿形も生前の頃と変わらず、こうして二度目の人生を手にした彼女は、驚きよりも歓喜の方が勝っていた。

 対する杏奈と呼んでた自称存在感の薄い陰キャは、やはり死人を復活できたんだなと考えは間違いではなかったが、正直墓に眠ってた死人が超絶美人でしかも麗しい上にスタイルも抜群で文句なしこの上ない美少女に、困惑が混じっていた。

 

(うっそだろこんなに美人だったのか!?いや、悪い気はしねーけども…!!)

 

 気まぐれの縁とは言え、今まで彼女が旅をしてきた中でもこんなにも超絶美人な上に胸も大きくスタイルも良い女性は人生今まで一度たりとも見たことがない。

 というか正直な話、ドストライクな好みだ。

 

「有難う…!!」

 

 などと相手の容姿に見惚れてたのも束の間、両姫は彼女に飛びつき思いっきり強く抱きしめる。

 

「ふぐぉっ!?な、ななななっ!!」

 

 人生生まれて初めて、妄想ではなく現実として超美少女に抱きつかれた彼女は、驚きつつも内心心臓がバクバクと鼓動が早まっている。

 体に豊満で重量感溢れる胸やら、女性特有の良い香りやらが彼女を包み込むようで、興奮の方が勝りそうな気もしなくはない。

 

「貴女が誰だか知らないけれど…私に二度の人生を送ってくれるんですね…ああ、貴女のお陰で、また両備ちゃんや両奈ちゃんに会う事が出来るわ…」

 

 対する両姫は彼女の心境など何のその、背中を撫でながら今この瞬間と、彼女が自分を生き返らせてくれた事にただひたすら感謝しかなかった。

 然も、無数ある忍の遺体が存在する中、自分だけが復活しても良いものなのかという若干の想いもあるものの、彼女がくれた二度目の人生に、兎に角嬉しくて仕方がなかった。

 

「貴女、杏奈ちゃんって言うのね。両姫を生き返らせてくれて、本当に有難う♪」

 

「あ、へっと…い、いえいえ……その、正直…何処ぞの誰かは存じませんが…あ、はい……こ、こんなクソ雑魚ナメクジがこ、こんな美しい女性の役に立てて光栄というかですね……自分も半信半疑だったんですけども……」

 

「そんなに謙遜しなくても良いですよ♪」

 

 杏奈はやはりコミュ障とやらで上手く話せず、テンパりながらも言葉を紡ぐのがやっとで、根暗で被虐混じりな言葉を返す彼女に、両姫は一度の人生で杏奈のような人間と会話したことがないので、珍しい事も含み、愉快そうに笑みを零す。

 因みに常に孤独だった少女、杏奈がなぜ自分の名前を知っていたのかと言うのも其れ程大きく語られる物ではないが、物心付いた時から既に自分の名前を知っていたそうだ。

 

「でも…どうして両姫の事を知らないのに、私を蘇らせようだなんてしたのかしら…?」

 

「ふぇっ!?あーえっとですね、はい……それにはマグリナ海溝よりも深そうで実は浅瀬のようにそんなに大それた理由でもないような、当たらずとも遠からずに近い理由がございましてですね…」

 

 この陰キャは一体何を頓珍漢なことを言ってるのだろうか。

 そんなコミュニケーションが絶望的に、それこそお面を取られた叢や、女性と会話する緑谷少年に並ぶテンパり具合で杏奈は事の経緯を説明した。

 

「んーっとですね、つまり自分の寝床を確保しようと旅して、偶々山で探索していたら私の墓を見つけて、物思いに耽りながら、慈悲を込めてこの世界に呼び込んだと…」

 

「あ、は、ははははい…お、お気に召さなければすみません…つい……そ、その…後押しで言うのも悪いですけど…こんなお美しい上に若い貴女様がですね、人生を台無しにされたことも、正直私としては許され難い事実というか………そ、その……決してなんたら戦争の英霊を召喚したいとか、そういうのじゃないんですよ…」

 

 若干漫画の世界の話が出てきてるものの、何とか話の詳細を伝えた杏奈は、相手が優秀で性格的にも優しいお陰で、通常の相手なら会話することでさえ難航するものの、両姫だからなのか、話が上手くスムーズに進んでいる。

 

「そもそも、復活の儀式や死者の蘇生だなんて…巫神楽三姉妹や小百合様の力が無ければ出来ないのを…一体どうやって…?」

 

「す、すみません!!こんなクソ雑魚ナメクジがやったって言っても信じてもらえないですよねすみませんすみません…!!」

 

「ううん!疑ってるわけじゃないの!ただ…普通に考えて死んだ人間を生き返らせるのって、相当な術とか、優れた能力を持つ者じゃないと出来ないのよ…だから、杏奈ちゃん一人でそれを成し遂げたと言うことは、相当な手練れな術者か才能のある者か……だから疑問に思ったのよ」

 

「えっと…それはですね…えっと、ですね…わ、私のマッチ棒に…原因が御座いまして…」

 

 すると彼女はマッチ棒を一つ取り出し、炎を付ける。

 焔や轟のように赤でもなく、蒼志や荼毘のように蒼くもなく、雅緋のように黒くもない、紅桜色をしたピンクに近い色をした炎が、悠々と炎を揺らがしている。

 

「こ、このマッチ棒で…貴女様を復活しました…はい……」

 

「え、え…?そ、それだけで??」

 

 流石にあの優秀な両姫も困惑せざるを得ない形となる。

 たかがマッチ棒だけで人を蘇生させるなど、それともそれ自体に効力があるのか、将又彼女の能力なのか…死者の蘇生という能力は相当希少価値があり、デメリットなしではあり得ないものとなっている。

 

「に、20本使いました…!!」

 

「数が…関係あるのかしら?」

 

「えっと…多分年齢的な問題か、実力的なものか…普通なら一本だけである程度のことはか、か、可能なんですけど…いや、物事を叶えるのに一度に20本も使ったのは人生で初めてですけどね…へ、へへ」

 

 そう言いながら、彼女は付けたマッチ棒を持って周囲を見渡す。

 

「し、死者の蘇生だけじゃなくて…こ、こういうことでも使えるんです…えっと…それ!」

 

 すると何処ともなく草原にマッチ棒を投げつけ、彼女は目を瞑って何かを願う。

 確かここはイザナギや憑黄泉と死闘を繰り広げた場所…であれば、妖魔との血痕が残り、血の溜まり場ともなっている。

 

「取り敢えず、俺の僕よ出て来い!!」

 

 すると投げつけたマッチは激しく燃え上がり、その場になかった筈の血が、蒸発するように燃え上がる。

 両姫は目を疑った。

 彼女は月閃の中でも優等生であり雪不帰と肩を並べ、更には陽花の弟子入りさえもしてた彼女は、初めて目を疑う光景を目にする。

 炎がやがて縮まるように消えゆくと同時に、炎の中から見たことのない形をした化け物が二匹、現れる。

 

 一つは小さな体をした鳥のような妖魔。然しその妖魔という名とは程遠く、まん丸な白い目に、ちっこくて可愛らしいアヒルのような小柄な妖魔が、ぴょんぴょんと跳ねながら此方へと近づいてくる。

 対してもう一匹は驚きのあまり声が詰まった。

 白く二足歩行な上に、既視感のあるシルエット…これは、憑黄泉だ。

 然しながらなんと、禍々しい気配は何処にもなく、綺麗で純白な体色に、甲殻と瞳のない竜は、不思議そうに辺りを見渡す。

 

「あれ、一匹だけだと思ったけど…なんかヤベーのが出てきた」

 

「杏奈ちゃん!?妖魔を召喚することもできるの!?」

 

「妖魔?なんだそれ?」

 

 何とこの馬鹿、妖魔という存在すら知らなかったようだ。

 妖魔を生み出すというのは、忍商会などが主に活動してる事、そして忍同士の血によって生まれることはあるが、能力で生命を作り出すというのは、それはもう流石に神の領域に踏み込んでいる。

 

「いや…何というかですね……その、偶に変な化け物は見たことありますよ?けど…襲って来なかった辺り……というか召喚というか、性格的には誰かの強い思念を材料にして生まれ…うん、生まれたんですよね……だからその…はい……」

 

 強き思念は死して原型を保てなくとも、周囲を漂い続けることがある。例えば両姫のように未練があれば死者を復活できるし、先ほどのように妖魔との血や争いによってその思念を炎で具現化する。そしてマッチは薪としての役割を、彼女の血の炎で創造を働かせる。

 それが杏奈――強欲の罪を課せられた能力だ。

 

「んでコイツは前に化け物と遭遇した際に身を呈して守ってくれたからなー、折角の機会だしと思ったんだけど…っていつのまにかタメ語に!?すいません!け、けどこれで信じてもらえたでしょうか…?」

 

 信じるも何も目の辺りをすれば納得せざるを得ない。

 此処では憑黄泉とイザナギとの戦いで妖魔の血痕が残っていた…その血を材料にして妖魔を創造したのだろう。

 確かにこの二匹から害意も敵意もない…なんだろう、まるで陽花さんと一緒にいた華楽のような人間の味方となる妖魔と同じだ。

 

「てかお手伝いを増やしたのにいつのまにか二匹…これが一石二鳥ってやつか」

 

 見ると不思議な光景だ。

 小柄なアヒルは彼女の足元にトタトタと近寄り、足元に抱きついている。対する憑黄泉に似た白い竜は、彼女の側に近寄り、順従な感じで低い喉声を鳴らしながら、側に近寄り体に頬を擦り付けている。

 どうやら、彼女の能力…相当強力なようだ。こんな能力、両姫も陽花も見たことがない。

 

「グル…」

 

「あら?」

 

 すると白い竜は両姫に気付いたのか、此方へ側に寄り添って来る。するとそして…彼女の手を掴み、頬を摺り寄せる。

 

「あらあら…私にまで懐いちゃったの…?」

 

 本当に不思議なことだ。

 憑黄泉とは存在そのものが禁忌であり、彼女自身も何度も憑黄泉と死闘を繰り広げたことがある。然し色が白に変わってるだけで、この憑黄泉に似た妖魔は、両姫には好意的な意思を強く感じる。

 恐らく味方…この子は、悪い妖魔ではない。

 

「両姫はスタイルも良いし優しいしおっぱいもデケーからな!エロ可愛で悩殺されちゃったんだろ〜?」

 

「ふふ、杏奈ちゃん聞こえてますよ?」

 

「はひっ!?じ、地獄耳かよ…」

 

 彼女に聞こえない声量で独り言を呟いたのだろうか、両姫には筒抜けなようで、彼女は思わず手を口に当てる。

 

「す、すみませんごめんなさい…!!そ、その率直な感想とは言えど…」

 

「怒ってないから良いですよ?それに…杏奈ちゃんって物凄く凄い能力を持ってるのね〜。個性かしら?それとも忍術?」

 

「お、怒らないんですか?いや、お、俺…いや、わ…私の能力は上手く分からなくて…

 取り敢えず、ま、マッチで燃やして自分の想像してたのを作り出す、または召喚する能力でして…」

 

(杏奈ちゃん、それ下手したら世界中の誰よりも相当凄い能力じゃ…)

 

 両姫の知る中では、陽花を入れても相当な実力者であることが想像できるし、今まで出会った中でもそれほど高度な能力者など見たことがない。

 

「でも…マッチ棒が必要なんですよね?それだけで死者を復活させたり生命を創造するにしては余りにも…」

 

 

 強すぎる。

 例えるなら、ゲーム等で平等を期すための能力値やデメリットを全部無視したチート的な仕様。

 当然そんな物などこの世には存在しない…彼女なりにデメリットがあれば、実はこの蘇生自体も制限時間等が課せられてる場合もある。

 

「………」

 

 真剣な表情で彼女の考察をする両姫を前に、杏奈は

 

(…何だろ、この両姫ってやつ…俺みたいなこんな陰キャを前にしても、全然不気味がらないし…寧ろ笑顔で優しく接してくれるし、怒らないし…俺のこと信じてくれるし…こんなに話したことも初めてだし…ひょっとして、滅茶苦茶良い奴なんじゃ…?)

 

 生まれて初めて人に心を開き始めてきたのである。

 今まで他人不信な上に、メンタルも弱く現実逃避が日常だった彼女は、両姫という心安らぐ女性に、少しずつ心を許してきている。

 

「ねぇ杏奈ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

 

「な、何だよ…?」

 

 心を許した杏奈は、普段の口調に戻りつつ両姫の質問に反応をする。

 

「そのマッチ…使い続けるとどうなるの?もし、デメリットや不利益な事がないとなれば…それこそ…」

 

 本当に神の所業だ。

 しかもそれこそ可能であれば、陽花さんや今まで無念に朽ち果てた忍達も復活する事が出来るかもしれない。

 然し両姫が考えたデメリットは、杏奈の答えによって背筋を凍らすことになる。

 

「ん?使い続けると死ぬぞ俺」

 

 其れは余りにも唐突で、何の緊張感もない死の宣告。

 マッチに幻想、死期の訪れ…正にマッチ売りの少女と名付けられるだろう…

 自分が死ぬと分かっているのかとさえ逆に疑わしくなる程に、杏奈の言葉は本当に唐突だった。

 

「えっ!?し、死ぬ…?!其れは本当なの杏奈ちゃん!?」

 

「ああ、だから普段は1日に一本は必ず幻想を見ることにしてるんだよ。大きすぎる願いや莫大な理想を実現するには、それなりに命の対価が必要なわけで、出来ないこともないけど俺の命が幾つあっても叶えるかどうかも分かんない望みだってあるから、使いようによっちゃ難しいけどなー」

 

 本当にそれこそ、自分の死に無関心で、死ぬと分かっていながらそんな欲を満たすために幻想など見るなど幾ら何でも馬鹿げてる。

 其れはつまり、彼女は日が経つにつれ、欲望の火を消費するに連れ生命を削ってるわけである。

 そして…見ず知らずの両姫のために、20本ものマッチという名の杏奈の生命を犠牲にしたのだ。

 一本でさえも大事で重要なことなのに、それを彼女のために、自分の命を生贄に捧げたのだ。

 

「杏奈ちゃん!!!!」

 

「は、はひっ?!!」

 

 両姫の珍しくとも怒気の孕んだ声色に、流石の杏奈も身体が浮くほど驚きのリアクションを取る。

 

「もう二度と必要不可欠な時以外はマッチを使っちゃダメ!!!助けられた私がいうのも何だけど…いいえ、だからこそ!杏奈ちゃんが私たちのせいで死ぬだなんて…そんなのダメよ!!」

 

 そんなことを聞いたら断固として彼女に欲望や妄想を具現化させる能力は使わせたくない。

 然も本人は勿論、両姫も、彼女が今の経緯に至るまでどれ程のマッチを使ったか把握出来ないし、其れに彼女がいつマッチを消費して死ぬかも分からない…死は遠くとも近い状態にあるであろう杏奈を前に「陽花さんや今まで無念に倒された忍を復活させて」だの云々は言ってられない。

 両姫は善忍であり、人優しい人柄だ。そんな非人道的な行為などするはずも無く。

 

「な、なななんで…そんなに怒ってるんだよ……そ、そんなこと、言わなくたって良いだろ…!!お、俺だってこう見えて結構…我慢してるんだぜ…?何も持ってないから…一応最低限なことを望んでるだけだし……両姫のことだって!見ず知らずで気まぐれの縁でこうしたけど……それだって本当に可哀想だなって思っちゃったから…つい……な、何もない俺だって…俺なりに頑張ってるんだよ……」

 

「何も、ない?」

 

 よく見れば彼女は確かに服こそ個性的で、ブラックコートに少し厨二的なデザインが仕上がってるが…その割にはボロボロで埃やら土で汚れたりなど、洗ってない辺り本当に手入れなどしてないのだろう。

 彼女には何もないのだ。

 

 雨水凌ぐ家も無い

 裕福に暮らす金も無い

 碌に食事さえも有り付けない

 

 そんなことでマッチを消費し続ければあっという間に安楽死する。

 最初は抵抗心もあった。

 使い続ければ死ぬのなら、なるべく妄想さえもしずに可能な限りと…然し偶に思うのが「生きてて何が良いのだろう」ということ。

 オマケに存在感が余りにも薄すぎて、それこそ幽霊のように気づいてもらえない彼女は、孤独になりたくなくても孤独にならざるを得ない程なのだ。

 プラス性格的に陰キャで他人に話しかけるのでさえ悩むとなれば、もう積んだも同然。

 死ぬのは怖い…けれど、死ぬのならせめて自分がやりたい事に注ぎ込んで死ぬのが良いのでは無いかと思った。

 自然死も他殺も事故死も怖い…だけど、苦しむ事なく幸せに死ねるのなら、それが一番な望みなのかもしれないと。

 

「杏奈ちゃん…そう、そんなに追い詰められてたのね…」

 

 事の事情を理解把握した両姫は、杏奈を抱きしめたまま胸に顔を押し当てる。

 

「ふごっ!?りょ、両姫…?!」

 

「もう大丈夫よ杏奈ちゃん…もう一人じゃないから…貴女に助けられた両姫お姉ちゃんは、杏奈ちゃんを見捨てたりしない…!!

 これからは一緒に側で支えるから、辛い時や苦しい時は両姫がちゃんと、慰めてあげるから…悩みがあるなら相談して?二度の人生を送らせてくれたんだもの…貴女の力になりたいの…」

 

 慰めるように、背中をポンポンと優しく叩きながら豊満な胸で顔を包み、全てを抱擁する母性的な両姫を前に杏奈は

 

(す、すげぇ…!!胸がデカイし可愛いし綺麗だし良い香りするしナイスバディで超絶レアなお姉さん系の女性にこんなことしてもらえるなんて…!!こ、これはこれでアリだな……へ、ふへへ…)

 

 心の中で欲望丸出し発言な上に、両姫の涙堪える心配をよそに涎が垂れそうなほどのゲスい顔で胸の中の香りを嗅ぐ杏奈。クズである。

 もしこれを妹の両備が目撃してれば、今頃額に青筋浮かべてスナイパーライフルでヘッドショットを決めていただろう。

 そのまま「わ、分かったよ…」と返事をしながら胸の感触を堪能する辺り、葛城や峰谷に似たセクハラ魔を感じさせる。

 彼女の場合、しようとするよりされる側の、モテる系主人公のような感覚なので非がないのも憎き感が拭えない。

 

「そうだ、杏奈ちゃん!それなら両姫お姉ちゃんと一緒に暮らさない?」

 

「ふぇっ!?い、いいいんですか!?」

 

「ええ勿論♪もし杏奈ちゃんが迷惑でなければだけど…」

 

「いえいえそんな迷惑だなんて滅相な…!!ぎゃ、逆にこんな、赤の他人にそこまでして貰って良いんですかね…?」

 

「あら、さっきも言ったじゃない。お姉ちゃんは杏奈ちゃんの力になるって。其れにその事を言うなら私は杏奈ちゃんに蘇らせて貰っちゃったし…もう赤の他人じゃないわ。それに、緊張すると敬語でテンパっちゃうのね、可愛いわ♪」

 

 可愛い?生まれて初めて言われた褒め言葉に赤面する杏奈も、何やかんやと乙女なのだと実感が伝わるだろう。

 

「そ、それはまぁ…今まで拠点にしてたのがネカフェくらいだったし…お金集めるのに必死だったから…」

 

 寧ろ盗みも働かずに道端に落ちてるお金をかき集め、それを消費してネカフェに通うなど悪い人でもないことを知れば、本当は根は良い方なのかもしれない。

 ドスケベ心を除けば。

 

「じゃあ決まりね、お姉ちゃんの家に行きましょう♪」

 

「ちょ、ちょちょ…!わわ!」

 

 そのまま腕を引っ張られ、付いていく杏奈に、後ろから二匹の優しい妖魔が跡を付いてくる。

 

「というかコイツらは!?!」

 

「勿論、家族として歓迎するわ♪人に害を仇さない妖魔なら…私達の味方よ♪」

 

 一匹は戦闘にすらならないものの、家事のお手伝いさんだと思えば可愛いマスコット的だろうし、もう一匹の憑黄泉に似た白い妖魔は此方の為に戦ってくれるのなら心強い。

 下手すれば杏奈の護衛としても戦えるし、周辺の警備隊としての役割を担えれば暫くは安全が確保できる。

 

「キュー!キュー!」

 

「グルル…ギャァ!!」

 

 人語は上手く話せないようだが、二匹の声を聞いた限りだと喜んでるようだ。そのまま二匹はご主人の後ろに付いて来る。

 こうして、両姫と杏奈の二人の共同生活が始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、両姫…?両姫……さん?」

 

「うん?何かしら?」

 

「そのさ……さっき言ったじゃんか?俺と両姫は…その、赤の他人じゃないって……」

 

「ええ、それはまぁ…杏奈ちゃんが成り行きの縁で今はこんな形になってるけれど…此処まで来て他人って訳にはならないでしょう?それともやっぱり迷惑だったかしら…?」

 

「そ、そうじゃないんだけどよ……その…」

 

 何やらモジモジとハッキリしない様子に、首を傾げる両姫。何かと問おうとするも、彼女の口が早く開きだす。

 

「こういう…両姫と俺みたいなのって…なんて言う関係になるんだ?」

 

 彼女の言葉に両姫は「あぁ…」と相槌を打つように掌を叩く。

 つまり他人でなければ自分達はどういう関係なのか、どういう仲なのか…と言うのが分からないと言うことだろう。

 確かに助けられ、杏奈に居場所がないから家に連れて一緒に暮らすとはいえ、事情を把握して早々にこういう展開になるというのは、杏奈で無くても動揺を隠せないだろう。

 それに杏奈からしても他人でなければ自分と両姫の様な仲を何と呼べば良いのか、純粋な気持ちで分からないのだ。

 何も持たなかったからこそ、知らないのだ。

 

「う〜ん…そうですね、確かに杏奈ちゃんとは他人ではないけれど…友達、というのは少し違う気もするし…仲間に近い部分…う〜ん……あ、そうだわ!良いこと思い付いちゃった♪」

 

 何かを閃いた両姫は、ニッコリとした母性を感じる緩やかな笑顔で

 

 

「杏奈ちゃんは両姫お姉ちゃんの、新しい妹って事はどう?」

 

 

 

 

 

「はひっ??」

 

 発言する両姫の言葉に、杏奈はぽかんと口を開いて暫く目をまん丸にしたまま立ち尽くす。

 仲間に近いのであれば親友か、さては命の恩人か…その程度の予想をしていたのだが、斜め上を過ぎ去った。

 

「ちょ待てよ!?俺はお前とは血の繋がりもなければ今日初めて出逢ったんだぜ!?それなのにそんなポンポン姉妹とか設定作っちゃって良いのか?!」

 

「ううん、それは違うわ杏奈ちゃん。血の繋がりが有ろうとも無かろうと、お互いが何かしら通じるものがあれば、其れは家族とも言えるのよ」

 

 血の繋がりこそ全てではない。

 其れはこの世界の何処かでも、そう言った血や家族としての絡みに逢う者も多いだろう。

 然しながら、どれだけ否定しようと血の繋がりは拒めないし、其れに姿や形が違えど何か通じ合えるものがあれば、それはもう家族とも呼んで良い者なのだと、両姫は自負している。

 

「うぐ、それはまぁ確かに…け、けどよ…俺が言えた口じゃないけどさ…妹達が居るんだろ?どう説明するんだよ…?」

 

 だが杏奈が言うのも尤もだ。

 両姫が納得しても、両備や両奈が納得するとは思わない。まぁ…両奈の場合は姉の両姫としては、特に気にしてないのだが、反抗期が強い両備からすれば大きな反感は間違いなく買うだろう。

 それでも姉が何とかするし、そもそも命の恩人に対して少なくとも無礼な働きをする程、両備は子供ではない。……杏奈がゲスい顔さえしなければ、の話だが。

 

「それくらいお姉ちゃんなら大丈夫よ、だって…お姉ちゃんは世界一のお姉ちゃんだもの!」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるかよく分からない」

 

 さて、そうこう他愛ない話をしてる間に、いつの間にか両姫の家に到着した。

 これ程の麗しい美人だ、一体どんな高級マンションやら住宅地に住んでるのだろうかと少しだけ胸を弾ませたものの、杏奈の眼前に広がる光景は、ごく普通の一軒家だった。

 良くも悪くもなく、至って平々凡々…

 

「何だかこうして再び戻ってこれるなんて夢見たいだわ…♪ふふ、変わらないわね…この家も」

 

「…てかさ、俺が言うのも凄く烏滸がましいと思うんだけどさ…姉が死んだことになってるのに、いきなり妹達に逢うのって流石に不味くないか?」

 

 死んだ姉が突然「お姉ちゃん生き返っちゃいました〜♪」なんて説明しても、怪しまれるか気が動転するか、少なくとも信じてもらえる可能性は限りなくゼロに近い。

 両奈なら半信半疑だろうが、そもそも死人が蘇ったなんて事実をいきなり突き付けても、困惑するだけだろう。

 

「あ、確かにそうよねぇ…お姉ちゃんがいきなり復活しちゃいました〜…だなんて、妹達はビックリするわ」

 

「考えてなかったのかよ!?!」

 

 両姫は優秀で才能溢れる貴重な人材ではあるものの、生まれ付き天然な為、こう言ったボケが含まれてる所がある。

 純粋だからか、心が優しいからか、何方にしろ考えてなかった様子だ。

 

「サプライズ的な意味で登場したら喜ぶんじゃ…」

 

「いや喜びより驚きで最悪心臓発作起こしても俺は責任取らねーぞ…?」

 

 そんな天然な両姫に突っ込みを入れる阿呆な杏奈は、ある意味両姫とは息がピッタリ合うお似合いコンビである。

 

「それに妹達が家にいるなら、やっぱ今何も考えずに家に上がるのは混乱を招くんじゃ…」

 

「多分両備ちゃんと両奈ちゃんは蛇女の学校で寮生活してるから、お盆でもなければ帰省することはないんじゃないかしら…?」

 

「お盆ってなんだ?」

 

「杏奈ちゃん……」

 

 何も持たない杏奈は、同時に大きな世間知らずでもある。とは言うものの、一人で生きていくのでさえたかが知れてるのに、両姫と出逢うまで世間知らずでも何とか生き延びてる少女は割りかしら凄いのでは無いだろうか。

 

「し、知らねーんだよ!それにさ、妹達が居ないってなら、暫くは大丈夫そうだけど……ほ、本当に俺なんか家に上げても大丈夫…なんだよな…?知らない奴の家に上がるのってこう…抵抗感があるというか…」

 

 他にも、食事はどうするのか

 寝床のペースはあるのか

 プライベートに触れてしまわないか

 

 こういう時に慎重且つ丁寧な対応なのは流石であるべきだが、もうちょっと違う方向で慎重になって欲しいものだ。

 

「ああ、そうよね…知り合ったばかりの人の家に上がるのって緊張しちゃうわよね。大丈夫よ、お姉ちゃんと一緒にいれば何とかなるわ!」

 

「姉というワードはそこまで便利性が高いのか…?」

 

 今この瞬間に杏奈の思考回路には『両姫=お姉ちゃん=万能!』という式図が出来上がったのである。

 

 

 

 

 家の中は思ったより質素である。

 木材特有の床下や階段、何処にでもある玄関の靴入れのタンスに、奥は扉やら和室やら、リビングなどが見られる。

 何処にでも存在する平々凡々な家は、思ったよりも心が落ち着く。

 

「へぇ、良い香りするな」

 

 家に入ってから開始早々にセクハラ発言をするこの頓珍漢な阿呆はもう少し弁えた方が身のためである。

 そんな杏奈に両姫はクスッと微笑みながら「さぁ入って入って」と促していく。

 どう言う訳か、二体の妖魔は人街に下りた時は杏奈と同じように気配を消して隠れながら付いてきたらしい。

 特に小鳥のような可愛げのある妖魔は連れても問題はなさそうだが、人前に見せれば新種の生き物だの珍種だの宇宙からの鳥だの変な噂が立つので、隠れてたのは正解である。

 

「それにしても本当に懐かしいわ…本当に此処へ再び戻ってこれるなんて。両備ちゃんや両奈ちゃんも居ないって言うのは、少し寂しい気もするけれど…」

 

「何だよ、寂しいんじゃねーか。というか両備と両奈ってどんな奴なんだ?随分と自慢してる上に親しんでるみたいだけど…」

 

 杏奈は此処で想像を膨らます。

 きっと二人とも姉に似て性格も良くお淑やか、名前的に双子であり、仲良く姉のことを親しむ可愛げのある誇らしい妹なのだと。

 想像力が豊かな杏奈なら色んな妹キャラを想像できる。

 

 例えばお嬢様口調で気高くとも美しさを重視してたりとか、元気いっぱいで幼馴染に出てきそうな姉っ子の活発女子だったりとか、他にも熱血系統のスポ根だったり、クールな冷静キャラ…恋愛系統の漫画を読んでたら誰もが想像するだろう理想の妹キャラだが

 

「両備ちゃんと両奈ちゃんはねー、姉妹揃ってドSとドMと言った方が早いかしら〜?」

 

「はえ?」

 

 だが現実は小説より奇なり。

 杏奈のお花畑のような甘い想像も、両姫の口から出る真実に悉く打ち砕かれる事になる。

 

「まず両備ちゃんは…幼い頃はよく家事の手伝いをしたり私の為に絵を描いたり、勉強も優秀な子で文句はないんだけど…両奈ちゃんを虐めるのが好きだったり、罵声を浴びせたり鞭で両奈ちゃんを痛め付けたり…」

 

「最初めっちゃ良いのにいきなり変わりすぎて逆に何があったんだよその両備ってやつ…ヤベー奴になってるじゃねえか…」

 

 至極真っ当な意見である。

 

「両奈ちゃんは天然でよく両備ちゃんに虐められたり、犬の真似が上手だったり、皆んなから虐められる事に喜んだり、兎に角元気で明るくて、優しくて良い子なのよ♪」

 

「なんかもう聞いてるだけで滅茶苦茶過ぎんだろ…一体何がどう言う経緯でこんな美人でマトモな天然長女から妹達がR18に走るんだよ…」

 

「あ、後は小さい頃からよく天ぷらになりたいって言ってたわね〜、懐かしいわ〜」

 

「天ぷら?え、なに?転生したら何故か皆んなの天ぷらになってたって事?え、天ぷらになりたいってナンデスカ?」

 

 最早この姉妹の事柄など凡人などでは理解し難いものである。

 取り敢えず杏奈の頭の中では姉妹は危険人物として解釈され、なるべく会いたくないという気持ちが一層強くなった。

 然もそれをのほほんと物語る姉も大概である。

 

「そう言えば雅緋ちゃん達とは上手くやっていけてるかしら…?蛇女に雅緋あり、その影に忌夢ありなんて言われてるあの二人組…何処か両備ちゃんや両奈ちゃんに通じるものがあるのよね。誤解は解けたし大丈夫そうだけど…」

 

「もう良いよ!話聞いてるだけでも頭パンクしそうだよ!どんだけ登場人物出てきてんだよ!?え、なに?ONE PIECEか?ってくらいさり気なく登場人物増えてんじゃねーか!しかも全員なにかしら個性的そうだし!」

 

 更に付け加えて色々な話を聞いた。

 三姉妹で親戚に引き取られたこと、姉妹揃っての七五三、初めて学校に入学した時、親戚にバレないように密かに家に帰宅したこと、呪王という無差別殺人鬼との闘いに陽花と出会えた事、月閃で不雪帰と出逢えた事、沢山のエピソードを懐かしそうに語る両姫を前に早くも杏奈は「超絶リア充じゃねえか」と愚痴をこぼす始末だ。

 

「はぁー…やっぱり両姫は良い子ちゃんな上にマジで現実を疑うレベルの超絶リア充だなー。俺からすれば眩しすぎて目が焼けるくらいだ」

 

「蒸発するの間違いじゃなくて?」

 

「何でもいーわ、ようは俺とは真逆の人間なんだなって事。俺はどちらかと言うと一人が好きだったしな。まぁ…両姫のようなお人好し相手ならギリギリ暮らす事はできるし、本音を言い合える仲ってのは割と悪かねーけどさ」

 

 陰キャには陰キャなりの生き方があるとでも言わんばかりに、杏奈は自分と両姫との差に目が眩んでしまう。

 自分はどちらかというと他人に好かれる傾向はないし、お人好しというより楽な方向へ進んで面倒な事は全部投げ捨てる性格だ。

 オマケに彼女とは違って話す内容でさえも頭を悩ませば、仮に誰かの輪に入りたくても誰にも気付いてもらえない透明人間領域の影の薄さと空気な存在、何から何まで両姫とは正反対なのだ。

 

 もし両姫が天使であれば、杏奈は悪魔であり、

 もし両姫が光であれば、杏奈は影である。

 

「ふふ、杏奈ちゃんは色んな事を考えてるんですね」

 

「俺の妄想領域舐めんなよ。今日なんて狼の化け物を神魔炎獄陣で焼き払って皆んなからヒーローとしての一躍を買った位なんだぜ?」

 

 其れを堂々と言えるのであれば、もう人とのコミュニケーションは問題なのではないかとさえ疑わしく思えてしまう。

 家を上がり、リビングに入れば何とか電気代に水道やガスは使われていたので、取り敢えずお茶を沸かしながら両姫は気分良く料理に取り掛かる。

 杏奈はなにも無いと言っていたし、先程からお腹を空かせていたのを知っていたので、軽く炒飯でも作ろうと腕に賭けて作ろうとしていた。

 

「キュッ、キュッ」

 

「ん?」

 

 可愛らしい鳥の鳴き声に、両姫は声がする方向へ振り向くと、小鳥の二足歩行をした妖魔が沢山の服を抱えながら此方を見つめていた。

 

「あら、杏奈ちゃんの妖魔ちゃんじゃない…どうしたの?」

 

「キュー!キュッ、キュッ!」

 

 言葉が喋れない辺り、何とも言えないが、この汚れた服は杏奈の衣類だ。どうやら洗濯を出すための服なのだろうが、この子の目の訴えでは恐らく洗濯をするのに何処に出せば良いのか分からず仕舞となり、家主である両姫なら知ってるのではないかという結論に至った結果、両姫に助けを求めてるようだ。

 

「ああ、洗濯なら彼処の籠に入れておいて下さいね。ふふ、それにしても立派なお手伝いさんで偉いですね♪」

 

 まるで家事のお手伝いをしてくれる妹達を見ているかのよう気分だった。

 

「そう言えば…名前がないと凄く不便ですね……」

 

 お手伝いさんというのも間違ってはないものの、どちらかと言えば名前で呼びたいのもあれば、折角こうして一緒に暮らす仲間なんだから、名前くらいはあっても良いと思う。

 

「そうね…キューちゃんなんてどう?」

 

 鳴き声やその可愛らしいキュートさに思わずペットみたいな名前を付けてはいるが、悪くはないだろう。

 キューちゃんは小首を傾げながら、名前を与えられたという実感が湧かず、そのまま洗濯物を籠に入れて主人の方へ行ってしまったようだ。

 対する杏奈とはいうと…

 

「へぇ〜…両姫の家でもゲームはやるんだな」

 

 テレビの下にある物入れを調べてみると、ゲームキューブやらPS2やらが入っていた。

 今の時代と比べれば大分レトロではあるが、それでも名作やら沢山あるこのゲーム、悪くはない。

 因みに姉は見てるか手伝う程度で、基本は両備と両奈が家で仲良くするのと息抜きのために購入した娯楽である。

 

「グルル…」

 

「お、そっちは何だ?へぇ〜…バイオにSIREN……こっちはホラゲーメインか、で?えっと…マリパーにピクミン…お、デジワー3じゃん。どれも中古のゲームショップで見たことあるから大方知ってるぜ。PS4とか5とかがないのが辛いけどな」

 

 放浪の旅をしていた頃は、よく電化製品という場所を見つけて探索していたものだ。

 最近はフロムゲーやら画質の良くダーク系統なゲームに魅了された杏奈は、ここいらでそれなりの妄想を働かせてる。何気に幻想を見る為の教科書的な役割としてよく通っていたものだ。

 

「キュー、キュー」

 

「お、何だ?もう終わったのか?」

 

 ラフなワイシャツ姿で娯楽器具を物色してた杏奈と、僕の白妖魔に、キューちゃんが帰ってきた。

 

「お、そうだ。折角だし二匹とも両姫の手伝いしてたらどうだ?というかその方が楽になると思うしよ、にひひ…俺ってば優しいな」

 

 自分は楽をしコキを使う辺りゲスである。いや、両姫の胸に顔を埋めて完全に厭らしい顔をしてた辺り元々ゲスではあったが。

 そして二匹とも杏奈の言葉に従うように、両姫の元へ行き手伝いをすることにした。

 

 

 

 

 

 

「も〜…杏奈ちゃんダメですよ?気遣いは嬉しいけれど、二人をパシリに使ったりしたら」

 

「良いじゃねえかよ、その為の僕なんだし。というか、この炒飯滅茶苦茶うめえな!やっぱ料理もできるなんて、天才というか才能マンだな」

 

「料理は作り方さえ覚えれば作れますよ、それに手伝ってくれて助かったわ。有難うね、キューちゃんにマコくんも」

 

「ん?キューちゃんにマコくん?」

 

 出来上がった炒飯を食卓で囲み二人仲良く食しながら、杏奈は知らない二匹の名前に眉をひそめる。

 

「私が名前を付けたんですよ、折角こうして一緒に暮らすんだもの。名前がないと不便でしょう?」

 

「そんなの一号二号って決めれば良いんじゃね?」

 

 この女、妖魔をエヴァか何かと勘違いしてるのだろうか。扱いが雑で酷い有様だ。

 

「杏奈ちゃん、この子達もちゃんと生きてるのよ?然も杏奈ちゃんの為にちゃんと動いて働いて、尽くしてくれてるのよ?愛情は注いであげても良いんじゃないかしら?」

 

「そ、そりゃまぁ…」

 

 因みにマコという名前は、昔近所の人が飼ってた三姉妹によく懐いて仲良くしてた犬の名前が由来だそうだ。

 今マコとキューちゃんはテレビのニュースを不思議そうに見つめながら、仲良く鑑賞している。

 

「勿論、杏奈ちゃんもこれからは新しい妹として迎え入れるつもりよ♪」

 

「結局、決定事項になったんだな…」

 

 そして妹になる事を拒まない彼女も満更ではなさそうだ。

 杏奈は孤独を好み、影に浸りながら誰にも悟られず生涯を過ごそうとしていた。

 だがそんな彼女を孤独という殻から手を差し伸べたのが両姫である。

 二人はいつしか実家で暮らす事となり、まったりとした時間を過ごしながらお互いを知り合って、生きてゆく。

 

 

 

 いつの日か、ゆっくりと心の整理が付いた時――両備ちゃんや両奈ちゃんに紹介しよう。

 

 

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