光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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久しぶりの更新です!そして遅れて本当に申し訳ありません!!忙しさと文を書くのが難しかったので、遅れてしまいました!ってそんなので理由にはならん!(ぐはっ!
と言いつつも、始まります。もし文で何処か変なところがあったら指摘して下さい。あまりやってなかったので、落ちてるかもしれません…ちょいちょい何処か何処だか忘れちゃってるな…(汗


29話「共闘、立ち向かえ」

天守閣の中は敵連合と蛇女、半蔵、雄英の戦いで滅茶苦茶になっている。騒音が絶えない戦乱の中、飛鳥と焔二人は忍結界のなかで道元が呼び出した怨櫓血と戦っている。

 

「でりゃあ!」

 

ザシュッ!!

 

「はあぁっ!」

 

ザグシュッ!

 

二人は怨櫓血の首に斬りかかる。斬られた傷は、真っ赤な血に染まり、傷口が開く。だが…

 

「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーンンン!!!」

 

怨櫓血の煩い叫び声は、大きく空間に響き渡り、先ほど傷つけた傷がもう元に戻ってきてる。

 

「これは…」

 

「超再生!?」

 

攻撃が効かないことを知った焔は、内心焦り、飛鳥はつい思わず叫んでしまった。

怨櫓血の能力、襲撃してきた脳無と同じ能力なのだから…それなら当然刃物も効かない…

 

「ハーーーーーーーーッハッハッハ!!」

 

そんな二人を嘲り笑う道元の耳障りな笑い声が、忍結界の中に響き渡った。

 

「無駄だよ、貴様らのような未熟者の忍学生が、怨櫓血に敵うわけなかろう?まあ、貴様らを始末したら、あとはヒーローの卵共に忍学生も血祭りにしてやるがな」

 

道元はそう言うと、再び笑い出す。そんな外道の道元に、今まで自分の欲望に良いよう利用されてた焔は怒りが頂点に達した。

 

「よくも…よくもこの私を……利用したなああぁぁぁぁぁ!?」

 

数々に思い浮かぶ道元の命令、そして…かつて恋心を抱き、一番に信頼してた…

 

小路を…

 

 

「ハハハハハ!!笑止千万!焔よ、貴様が利用されたのは己が未熟だったからだ!!」

 

「っっ!!」

 

道元の言葉に、焔は絶句する。それでもまだまだと言わんばかりか、忍結界から見える天守閣の最上階に指をさす。

 

「それに…『敵連合』もよくやってくれた…殺しきれてはない者も居るが、構わん。大分戦力を減らすことは出来たうえに、焔。お前の仲間はボロボロだぞ?」

 

「…っ」

 

「えっ?」

 

焔は言葉を失い、飛鳥は後ろを見やる。確かに二体の脳無の姿はそこには無かったが、それでも仲間たちが傷ついてる姿は確かにあった。

 

「そ、そんな…!」

 

「ハーーーーーーハッハッハ!!これで勝負あったな!」

 

「だから…なんだ?」

 

「っ!?」

 

道元の言葉に焔は不敵な笑みを浮かべた。

 

「これが悪…利用するもされるも感情次第…これが悪の定めと言うのなら…私は…悪の定めに舞い殉じよう!!」

 

「っ!?」

 

焔のとてつもない殺気に怨櫓血と道元は焔に震える。そして紅い炎を全身に身を纏い、怨櫓血に近付いてくる。

 

「道元!!貴様も道づれだああぁぁ!!」

 

焔は三本の刀を怨櫓血に向けて斬り掛かろうとすると…

 

ガシッ!

 

「駄目だよ!簡単に命を捨てちゃ駄目だよ!!」

 

「あ、飛鳥!?」

 

飛鳥は焔の腕を掴み、命そのものを引き換えに道元を殺そうとする焔を止める。そんな焔は飛鳥を睨みつける。

 

「元より悪忍に命を拾われた身だ!命なんて惜しくない!それに、仲間なんて私には必要ない!」

 

「っ!」

 

その言葉は、飛鳥の心を引っ掛ける言葉であった。

 

「一人で生き、一人で死んでいく…それだけだ!!仲間は感情次第で裏切る者だ!仲間などという存在はハナっから信じてはいない!」

 

「そんなことない!!!!」

 

「なに…?」

 

飛鳥は怒りと悲しみが混ざった声で、焔にそう言う。

 

「かな…しいよ……そんな、仲間は要らないなんて…信じてない…なんて!」

 

「お前に…お前に何が分かるんだ?…どけ!」

 

「嫌だ!!」

 

飛鳥は焔を必死に止める、焔がどれだけ何を言おうと…飛鳥は焔を止めることをやめない。

 

「…っ!いい加減に…」

 

「仲間を信じようよ!!!!」

 

「っ!?」

 

飛鳥の言葉に、焔は少し驚く様子を見せる。

 

「ねえ、焔ちゃん…焔ちゃんが蛇女に入る前は、大切な人に裏切られて…そのせいで自分の人生が狂わされたことがあるのは聞いたよ…だから焔ちゃんが人を信じないって思うのも仕方ないと思う。でも…今はどうなの?」

 

「っ…!」

 

飛鳥の言葉に、焔は反論できなかった。今は…そう、今は誰も裏切ってなどいない。前に一度未来は蛇女を出ようとした、最初は『裏切った』と思っていたが…だがそれは自分が足を引っ張ってる存在だと思い、皆に迷惑を掛けないためという事だった。

それを知った私は、「そんなことない」と言うと、少しだけ安心した顔を見せたことを覚えている。

雲雀は前々からなんとなく超秘伝忍法書の奪還のために来たこと、そして春花の手によって蛇女へやって来たことは勘付いていた。だから警戒はしてたし、裏切るのもなんとなく分かっていた。

だが、今まで付き合ってた仲間は、誰も裏切ってはいない。

そう、皆んな焔を信じていた。裏切るような目ではない、皆んなみんな、焔を信用する目で接していた。

 

「ね?だから信じようよ!!焔ちゃん!!」

 

飛鳥のその言葉に、焔は黙り込み、怒りと殺意を混ぜた炎は静まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

天守閣の最上階。先ほど有利だった敵連合は今や不利な状況に変わっていた。そんな漆月は皆んなを見て睨みつける。

 

「っ!緑脳無が…ぶっ飛ばして貴方たちを殺したと思ったんだけど……生きてた上に私の邪魔しちゃって…何してくれてんのよ…!」

 

「ハッ!んなもん知ったことかボケ!!それにさっきのあの変な黒い靄みてーなヤツ…俺に喰らわせやがって…!さっきまで気分はクッソ悪くなってたが、今は体調スッキリだぜ」

 

爆豪は馬鹿にするよう漆月を睨みつけると、柳生も頷く。

 

「ああ、あの特殊な闇とやらは初めて食らったが…だがアレには効果に制限時間みたいなものがついてるんだろ?」

 

「……っ」

 

柳生の言葉に漆月は黙り込む。

 

「死んでも死に切れない程の激痛…確かに死よりもある意味恐怖があるだろうな…だが、その痛みを長時間耐えれば、元に戻る。そうだろ?」

 

「……ちっ、『闇の量』が甘すぎたか…」

 

漆月は舌打ちをして横目で皆の視線を逸らす。逸らした目の先には、緑谷の姿を見つけた。

 

(…? っ!?アレって…緑谷って子?確か死柄木の写真にあった……

っ!死柄木が言ってた殺せって言ってたヤツ!)

 

漆月は、やっと見つけた。みたいな目で緑谷を睨むのであった。

 

「ま、まさか…先ほどの状況を覆すなんて…」

 

詠は今の状況が信じられないのか、目をパチパチとさせて、赤脳無と漆月、そして周りの皆んなを見つめる。

 

「それが…ヒーローだろ……取り敢えず脳無とやらの化け物は凍らせといた…もう一体の化け物は緑谷と雲雀がぶっ飛ばしたし、残るはあの抜忍の漆月とやらだ…柳生曰く、先日襲撃してきた主犯の死柄木弔と似てるって言うからな…もしかしたらアイツも同じ主犯かもしれねえな…アンタは見た限り戦えそうにねえな…」

 

轟は赤脳無と、緑谷と雲雀の力で緑脳無を吹き飛ばした際に、壁に穴が空いた方を見つめた後、詠の傷を見てそう言った。

 

「なっ!わ、私はまだ戦えますわ!ば、馬鹿にしないでくださいまし!」

 

「してねえが…って今はんなこと言ってる場合じゃねえな…」

 

轟は反論する詠から漆月の方に目をやる。それだけではなかった。

 

「みなさん!」

 

「すまん、待たせた!」

 

「ちょりーっす!思ったより『救助が遅れた』!」

 

皆が振り返ると、壁に複数穴が空いてる方からやってくる人影が三人と、二人…計5人現れた。

そこには、斑鳩、常闇、上鳴の3人ではあるが…

 

「すまねえ皆んな!」

 

「悪い!瓦礫だの木の柱とかが埋まっちまってて!」

 

そこには峰田と瀬呂の姿もあった。二人の姿は少し酷い怪我を負っており、緑脳無の衝撃波の影響で、吹き飛ばされた所が偶々衝撃により建物が崩れ、下敷きになってたそうだ。そこのところを3人が見かけて救助に当たったそうだ。機動力のある緑谷、爆豪、轟、柳生、雲雀は敵連合の戦闘に向かったそうだ。

 

 

「それにしても、さっきの化け物二体、もう倒しちまったのか!?スゲェよ!」

 

峰田は「ひょおおぉーー!!」と叫びながら関心し、上鳴は自分たちが有利になったことを知ると「よっしゃああぁぁ!!バッチ来い!」とバチバチと体に電気を纏わせ戦闘態勢に入る。

 

「ですが…油断も出来ません!処罰の前に、敵を倒して拘束し、全てを聞き出しましょう!」

 

「同意」

 

斑鳩の冷静な判断に、静かに賛成する常闇。

 

 

「何がなんだか知らねえが…取り敢えず、覚悟しろよ抜忍!」

 

葛城も気合を込めて漆月を睨みつける。

 

「………」

 

そんななか、未来はただずっと立っている。そう、自分は後少しで敵連合の仲間になる所だったのだ。それは勿論皆んな見てるし知っている。今更戦う気にすらなれない、何故なら仲間たちを裏切るところだったのだから。幾ら自分たちの立場が最悪な状況だったとはいえ、本当なら危険を冒してまでも、戦うべきだったのに…

 

「私は…もう……」

 

その時だった。

 

 

「はぁー…仕方ない…未来!一緒に戦おうよ!」

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

漆月の言葉に、その場の全員は驚く。未来自身も、何を言ってるのか分からない様子だ。そんな皆んなの驚く様子を御構い無しに漆月は刀を抜く。

 

 

「脳無」

 

 

次の瞬間。

 

「ホホウホーーウ!」

 

「っ!?」

 

赤脳無は口から炎を出した。

 

ボオオオォォォォォーーーーーー!!

 

「何だと…!」

 

轟は何が何だか訳が分からず、赤脳無をただただ呆然と見つめることしかできなかった。何故なら赤脳無はその口から出す炎で氷を溶かしてるのだから。

 

「炎を吐く…んだこれ、聞いたことねえな…」

 

「ま、まるで『お父さん』見てるみたいだな…」

 

轟は動揺しながらも、なんとか冷静さを保ち、落ち着きながら戦闘態勢に入り、緑谷は何かを思い出したのか、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。

 

「この赤脳無の個性は『火炎放射』ね。そのゾウみたいな鼻の口で大量に息を吸って炎を吐き出す、燃焼系の個性だよ」

 

そして赤脳無を凍らしてた氷は全て溶き、先ほどまで何とも無かった様子でいる。その場の全員は驚くが、まだ緑脳無が居るよりかはましだ。そう、緑脳無が居るよりかはだ…

 

「脳無!!」

 

漆月が大きく叫ぶと…違う部屋から、何やらピョーンピョーーンと音が鳴り響き…そして…

 

 

ドガアアアアァァァァァァァァァァァァン!!!

 

「ネエエェェーーーーエエ!!」

 

「!?」

 

「オイオイ!嘘だろ!?」

 

「チッ!」

 

吹き飛ばされた筈の緑脳無が、壁を殴り壊してやってきた。緑脳無の傷は、まず緑谷のデコピンにより額が赤く腫れており、腹は雲雀の秘伝忍法により、大分傷が付いて晴れてはいるが、緑脳無は何の表情も変えずにその場に立つ。

そう、まだこの二体はやられてなどいなかったのだ。

 

「あ〜〜っはっはっは!!ねえ、どんな気持ち?倒したと思った強敵が何の表情も変えず、再び貴方たちを殺すために立ち向かってくるこの二体の脳無を見て、どんな気持ち?ねえねえ!あははははははははは!!!」

 

「……っっ!!」

 

流石の皆んな(日影以外)はこのことに悔しい表情を浮かべる。そもそも忍の力を持つ四人がいるにも関わらず、この二体の脳無を倒すことが出来ないのだから。何より驚いてるのは緑谷だ。

 

(そんな……そんな!!いくら威力が他のより少し弱いデラウェアスマッシュを撃ったとはいえ、アレを食らってもまだ動けるなんて…!)

 

緑谷はそんな緑脳無を見て驚愕するのであった。確かにデラウェアスマッシュは他の技と比べて、衝撃を飛ばす遠距離攻撃とはいえ、力は確かに充分だ。

 

何よりオールマイトの力。

 

見たところ傷があるということはダメージは効いている、回復系個性や無効系個性があるようには見受けられない。それなのに、緑脳無は、何の表情も変えず、傷を負いながらもこうしてその場に立っているのだ。

 

 

「さて、と…手始めに脳無、まず私を傷つけた口煩いガキを殺って」

 

そういった途端。赤脳無は爆豪目掛けて、手を刀に変えて斬りに掛かる。

 

「ホホウホウホーウ!!」

 

「っ!」

 

余りにも早すぎるスピードに付いてこれず、思わず尻餅をつき、なんとか赤脳無の斬撃を躱す。だが脳無はもう一度爆豪に斬り掛かろうとすると…

 

「てやあっ!!」

 

ガギイィィン!!

 

突然、爆豪と赤脳無の間合いに斑鳩が入り、飛燕で刀を受け止める。刀と飛燕のつばぜり合う金属音が響き渡るが、赤脳無の刀は切れ味を増してるのか、艶もよくなり飛燕に僅かなヒビが入る。

 

「なっ…!飛燕が…!」

 

「この個性は『手刀』 手を刀に変える対人戦闘用個性だね、しかも個性を強く伸ばせば伸ばすほど切れ味が良くなる、人殺しとしては結構優れてる個性だよね」

 

漆月は、斑鳩が押されてるのを見て思わず悪い笑顔を浮かべながら解説していく。元より詠との戦いで大分無理をしてしまったため、こうなるのも無理はない。

 

 

「だったらテメェをぶっ飛ばせばクソどうでもいいだろうガァ!!」

 

 

黙って居られなかった爆豪は、漆月に飛び掛かるように爆破攻撃をお見舞いしようとするが…

 

「いったでしょ?アンタは命を狙われてるの、ね?脳無」

 

爆豪を覆うほどの影が迫り、後ろを振り向くとそこには…

 

「ネエエェェーーーーエエアァァァァ!!」

 

待ってましたと言わんばかりか、緑脳無は思いっきり爆豪目掛けて掌を向けて、衝撃波を撃とうとする。

 

 

黒影(ダークシャドウ)!」

 

「アイよ!」

 

「おりゃあ!!」

 

だが爆豪と緑脳無の前に、黒い影が遮り、衝撃波が当たることはなかった。

 

ボオオオォォォォォーーーーーーン!!!

 

 

「キャア!!!」

 

なんと、衝撃波は常闇の個性、黒影(ダークシャドウ)に直撃した。そのため衝撃波は黒影(ダークシャドウ)以外誰も食らわず、庇う形となって爆豪は助かった。

 

「ちっ…!」

 

「くっ!やはり強いな…」

 

「痛いヨ常闇ぃ〜!」

 

強力な衝撃波をもろに食らった黒影(ダークシャドウ)は泣きじゃくりながら緑脳無と対立する。

 

「くっ!我慢しろ!爆豪や他のものがあの抜忍とやらを倒すまで、俺たちが持ちこたえるんだ!」

 

「っ!アイよゥ!」

 

常闇の言葉に覚悟を決めた黒影は、緑脳無に殴りかかる、が…

 

ピョーーーーーン!

 

「なっ…!?」

 

突如緑脳無は、上に蹴るように跳ね飛ぶ。そう、これのせいで数々の攻撃が避けられてしまうのだ。それに続き、瀬呂はテープを巻こうとする。

 

「よっしゃあ!取ったりぃ!」

 

だが…

 

ブワッ!ベリベリ!

 

「なっ…」

 

体に張り付き、巻かれたテープは散り散りになってしまった。緑脳無の体が、ハリセンボンみたいに外側が鋭い無数の棘が出てきて覆っているのだ。常闇の攻撃を避けられ、瀬呂のテープは散り散りになる。まだまだ得体の知れない化け物だ。そんな化け物は、爆豪を狙っている。

 

「クソが!なんだコイツ…」

 

「回避に優れてる個性、『ホッパー』に、自身の身を守りかつ、相手にダメージを与えることも出来る個性『ニードル』を持ってる脳無だよ〜♪」

 

 

後ろから、刀を爆豪に向けて斬りかかる漆月。そのことを察知した爆豪は

 

「二度も食らわねえよクソが!」

 

なんとか避け、爆破を食らわそうとするものの、またもや闇が爆豪に襲いかかる。

 

「っっ!!ウッゼェなそれ!」

 

爆豪はその闇の気に触れないように、距離を取る。

 

「あっははは!怖いんだ?私のこれに触れるのがそんなにも怖いんだ??口だけは達者で結局は腰抜けの三下ってところかしら?」

 

ピキッ…!

 

漆月の煽りに、爆豪のプライドにヒビが入った。

 

 

「……上等だ……ぶっ殺す!!!!」

 

キレた爆豪は前に出て漆月をブン殴ろうとする。今の爆豪は完全にキレてる状態だ。もちろん三下などと言う言葉は漆月の煽りではあるが、それでも黙ってはいられなかった。

 

「落ち着け爆豪!」

 

だがそれを制したのは切島であった。

 

「止めんなクソ髪がぁ!!テメェから爆殺すっぞ!」

 

「あの変な靄みテーなのに触れたらヤベェんだろ!?だったら触れねえほうが良いって!それにアイツが挑発してるってお前でも分かるだろ!」

 

「〜〜っっ!!」

 

爆豪は切島の正論にガルルと犬の唸り声をあげて睨んでいる。だがそのお陰でなんとか無闇に突っ込まずに済んだ。

 

「チッ…やっぱ上手くいかないか……ん?」

 

漆月が小声でブツブツと呟いてると、自分がどうすれば良いのかわからず、呆然と立ち尽くしてる未来を見つめた。

 

(……ははあぁん♪そう言うことか…!)

 

漆月は全てを理解したように、心の中で何度も何度もなるほどと言って納得している。何故未来が戦わないのか…それは。

 

(自分が敵連合に入ろうとし、皆んなから裏切り者扱いされてると思ってること。罪悪感からくるものが、彼女を苦しめてると……自分は本当はどっちの味方になれば良いのだろうか?とか…ね)

 

漆月は、未来をまじまじと見つめてそう考えた。

 

 

 

二体の脳無は蛇女を無視して半蔵と雄英の生徒たちと戦っている。

 

「ネエネエネーーーエ!!」

 

ボオオオォォォーーン!!

 

「ホーーウホウホウホーウ!!」

 

ボオオオォォォーー!!

 

 

緑と赤の脳無は、衝撃波と火炎放射の二つの攻撃で辺り一面を焼き払い、吹き飛ばしてる。

 

「クッ…そがぁ!!相当厄介な相手だぜ!!」

 

「葛城落ち着け!ここは俺がやる…!秘伝忍法!」

 

荒ぶる葛城を制する柳生は、秘伝忍法の力を使う。

 

「『薙ぎ払う足』」

 

巨大イカの足が、炎を払いのける。氷の力で炎が消えていき、赤脳無は火炎放射を止める。だが…

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

 

 

今度は両肩から角質の硬い火薬性の球を高速で放出し、柳生と葛城に襲いかかる。

 

「だったら今度はアタイだ!秘伝忍ぽ…」

 

「ネエエエーーーーーーエアア!!!」

 

「なにっ!?」

 

葛城が秘伝忍法を使おうとした瞬間、緑脳無が襲いかかってきた。しかもニードルを覆い、ホッパーを使って葛城との距離を詰める。

 

「うぉっ!」

 

ビュン!!

 

緑脳無は思いっきり横殴りするが、葛城はそれをなんとか躱した。そこから…

 

 

パキイィン!!

 

氷の壁が葛城と緑脳無の間に現れる。

 

「お、お前…」

 

「取り敢えずコイツを止めましょう!それに、俺の氷はあの赤いやつには無理だが…氷の力ならコイツをなんとか…」

 

凍らせれる。それは甘い考えだった…

 

ボオオオォォォォォォォンンン!!!

 

ズバコオオオォォォォォォンン!!

 

 

「しまった…衝撃波で氷をぶっ壊すか…!」

 

轟は悔し混じりな顔で脳無を睨み、後ろに下がる。

 

「ネエエエーーーーーー!!」

 

だが緑脳無はやめない、攻撃を。衝撃波を撃ち、轟は横に避けるがその先には…

 

「なっ!」

 

日影の姿があった。

 

 

「しまった…動けへん…」

 

「ひ、日影さん!」

 

「日影!」

 

「日影ちゃん!」

 

棒立ちだった蛇女の二人、流石の未来も、日影の危機に思わず叫ぶ。それは無理もない。敵連合は雄英と半蔵と戦ってたのに、まさか巻き添えとして蛇女に攻撃が来るだなんて…しかし恐れるなかれ、ここは戦場だ。そんな甘い考えは許されない。

 

「あかん…!間に合わん!」

 

動くにせよ、もう強力な衝撃波が迫ってきてる。終わりか…

 

 

ドガアアアアアァァァァァァァァァァンンン!!!

 

 

衝撃波が貫き、壁にぽっかりとした穴が空いた。そこに日影の姿は見えない。

 

 

「ひ…か…げ?」

 

未来はおそる恐る声を震わせながら名前を呼ぶ。

 

「うそ…」

 

詠も、もはや何をどうすれば良いのか、何が起こったか分からない様子でいる。

 

「まさか…」

 

あの冷静な春花も冷や汗を垂らし、衝撃波により土埃が発生し、壁に穴が空いてる光景と、なんの表情も変えず、生きてるのかすら疑わしく思えてしまう、張本人の脳無を見つめてる。

 

 

「ケホ…!ケホ!」

 

「!」

 

土埃から、声が聞こえた。その声は…衝撃波で飛ばされたかと思っていた、無傷の日影であった。

 

「「「日影(さん)(ちゃん)!!」」」

 

三人は一斉に叫んだ。それは喜びから来るものか、安心から来るものか…両方だろうか…しかし土埃が晴れ、何故日影が無事か明かされる。それは…

 

「ケホ…ケホ!大丈夫か日影?」

 

「なっ…葛城?」

 

それは、身を挺してまで日影を助けるべく押し倒して助けた葛城であった。

 

「なっ、んで葛城が…」

 

「はぁ…なんとか間に合って良かったぜ……物凄いスピードでお前んところに駆けつけて助けたんだからな…ったた…」

 

「違う…」

 

「ん?」

 

「なんで…ワシを助けるんや?」

 

なぜ葛城を殺そうとした人間を助けようとするのかが分からず、日影は目を細めて葛城に問う。葛城は数秒黙り込み、髪をくしゃくしゃと搔きながら、ジッと見つめる。

 

「……お前、この状況みてまだ分かんねえのか?見てみろよ」

 

「あっ…」

 

そこには…

 

「ネエネエ」

 

ただ呆然と人形のような目で、ジーっと二人を近距離で見つめてる、もはや日影ですら恐怖を覚えてしまう、感情の無い、心すら無い…最恐とも呼べる緑脳無が、目の前に立っていた。緑脳無は葛城と日影、何方を攻撃すれば良いのか分からないのか、あるいは二人を攻撃して良いのか分からず、襲って来ない。

 

「分かるか日影…感情がねえってのはこう言う事だ…心もない、考える力すら無い…なあ、日影…お前には『感情はある』んだよ…!だって、コイツとは違って心はあるだろ!?」

 

「……」

 

自分のように必死に話す葛城に、流石の日影も黙ってしまう。そんな葛城は日影から脳無に視線を変えると、睨み付き腰を低く構える。攻撃しようとした時だった。

 

「可笑しなことね…善忍が悪忍を庇うなんて…ましてやソイツらアンタ等殺そうとした奴らよ?なんで助けるのよ?」

 

「なっ…テメェは!」

 

葛城が日影を助けた行動を嘲笑うかのような目で見下しながら、ゆっくりと歩いて来る漆月がそう言った。

 

「本当にバッカみたい。まあ、ソイツ殺しちゃったら未来が敵連合に来なくなるし〜…逆に殺しちゃったりするかもだから別にこっちが損する訳じゃないけど…」

 

「黙れ…」

 

「あ?」

 

漆月が哀れな目で見下しながら喋ってるなか、葛城は小さな声で、低い声で、怒りを込めながらそう言った。まるで感情を抑えてるかのように…そんな漆月は、理解不能みたいな顔で、首を傾げる。

 

「黙れっつってんだよ!!!テメェがバカにして良いような奴らじゃねえんだよコイツらは!!!」

 

今まで抑えてた怒りを爆発するように言い放った葛城。まるで仲間を、大事な友を馬鹿にされたことが許せないような感じで…葛城は漆月に更に怒鳴る。

 

「悪忍だから?んなもん関係ねえだろ!!蛇女のテメェらも、相手が嫌だからって誰かを助けねえのか!?ソイツが嫌いだからって助けない理由にはならねえんだよ!!!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

葛城の言葉に、四人はハッと黙り込んでしまう。

 

「そもそもアンタ…抜忍なんだろ…なんでこんなことすんだよ…」

 

「……は?何よ急に…今の言葉と私の事情とは関係性が全く見えないんだけど?」

 

「いいから言えや…言えねえならそれで良い…」

 

「………」

 

突然の言葉に漆月は反論すると、葛城は黙り込み、無駄な詮索はしない事にした。その事が気に入らなかったのか、漆月も珍しく黙り込む。言えれないと判断したのか、葛城は口を開く。

 

「実はな…アタイの両親も『抜忍』なんだ」

 

「!」「!?」

 

葛城の衝撃なる事実に、二人は思わず黙ってしまう。日影も目を丸くして葛城の後ろ姿を見つめている。

 

「もちろん忍の掟として、見つかったら殺されちまう。だから今も何処にいるか分からねえし、アタイは幼い頃から親とは会えずにずっと一人でいた…」

 

葛城は真実を話すと、辛い表情を浮かべて、グッと懸命に涙を堪えながら話し出す。

 

「当然抜忍は許されねえ…けど、それには何か事情があるんじゃねえかってアタイは思う。何の理由もなしに抜忍になるなんてねえからな…アタイに何も言わずに出でったのは、アタイを巻き込まないよう、庇うためだと分かったんだ…」

 

拳を握りしめ、下を見つめてそう言った。先ほどまでの怒り荒ぶる葛城ではない、セクハラの葛城でもない。ただ真っ直ぐ、純粋で、真剣な顔で話す、本気の葛城だ。

 

「だからアタイは強くならなきゃならねえと思った。強くなって忍の社会で認められたら、もしかしたら両親を救えるかもしれねえってな…だからアタイは誰にも負けたくない、誰にも負けねえ忍になるって誓ったんだよ!」

 

それが葛城の原点だから。そう言うと、漆月は数秒黙り込んだ後…葛城は話し終わったのか、攻撃態勢に入る。

 

「だから、負けねえ…絶対に…!!」

 

覚悟を決めた。

 

「………葛城…」

 

日影はポツリとそう呟いた。感情のない、ただの戦闘マシーンと恐れられ生きてきた自分を、まるで自分のように大切に思う葛城の言葉に、惹かれていた。覚悟を決めた葛城に、漆月はこう言った。

 

「…はぁ〜……両親が抜忍でありながら善の道を選ぶ…と?まあいいや面倒くさい…脳無、や…」

 

漆月が命令した時だった…

 

DELAWARE(デラウェア)SMASH(スマッシュ)!!」

 

「えっ!?」

 

命令しようとした途端、突如現れたのは緑谷だった。緑谷は漆月目掛けて飛びかかり、残ってる指で強烈な一撃をブチかまし、衝撃波を食らわせる。

 

ズドオオォォォォォォォンン!!

 

「うぉっ!」

 

「…っ!」

 

近くにいた葛城、日影はその衝撃波になんとか態勢を耐えている。土埃が巻き起こり、漆月は思いっきり吹き飛ばされた。

 

「っっっづっっ!大丈夫ですか!?二人とも!」

 

緑谷はその後地面に転がるように落ち、顔を地面に強打する。

 

「いっつつ…」

 

「おい、お前こそ大丈夫か!?指腫れ上がってんじゃねーか!?」

 

心配する緑谷の言葉など忘れ、葛城は緑谷を心配する。緑谷は「ぼ、僕は…大丈夫…です!」と無理やり笑みを浮かべた。漆月の命令が途中だったため、緑脳無は微動だにせず、先ほどと同じくジーっと見つめている。

 

「ったく…無理するところって飛鳥に似てんなお前は…」

 

葛城はそう言うと、緑谷は「あはは…」と冷や汗を垂らした。するとハッ!とした顔で二人を見つめて話し出す。

 

「そ、そうだ…!あの赤い脳無は柳生さんが吹き飛ばしたんですけど…あの二体の脳無…気を付けてください!最悪の場合、皆んなアイツらに殺されてしまいます!」

 

「柳生がアイツ吹き飛ばしたのか…」

 

葛城は柳生を見つめてそう言った。柳生は体もボロボロであり、赤脳無と戦った痕跡が見える。いつの間にか倒していたらしい。

 

「けど…全員ってわけじゃねーが、アタイらの力で互角に戦えるなんて…アイツら何者なんだ?殺されるって…」

 

「なんでアンタも助けるん?」

 

「「っ!?」」

 

葛城が考えてると、日影は呆れた目で緑谷を見つめてそう言った。

 

「ワシらだってアンタら殺そうとしたんやで?なんでそんな、真っ直ぐ突き進むように助けるんや?」

 

日影の言葉に、緑谷は数秒黙り込んだ。

 

「……ヒーローだから…」

 

「え?」

 

「ヒーローだから!!」

 

その言葉を聞き、日影は目を丸くすると…

 

「お前の言う通りだぜ緑谷ぁ!」

 

そこには、つんつんした赤い髪の男…いや漢、切島であった。

 

「ヒーローってのは誰かが困ってたら、どんな時でも助け出す…それがヒーローだ!善忍だろうと悪忍だろうと、そもそも忍だろうと関係ねーよ!!」

 

「切島くん…」

 

「……」

 

「それは俺も同意だ…」

 

「っ!常闇くん!?」

 

駆けつけに来た切島に続いたのか、常闇も駆けつけ、話し出す。

 

「俺たちは忍の社会については知らない…だから俺たちがお前たち悪忍を裁く権利などない…それはコイツら善忍である仲間たちに任せる…」

 

常闇はそう言うと、日影はまたもや下を向いて目を細める。それは負の感情ではなく、何処か嬉しくて、何処か罪悪感を感じるような、そんな目だった。

 

「なあ日影…これがコイツらだ」

 

今まで黙ってた葛城は、日影に向いて話し出す。葛城は、緑谷、切島、常闇を見渡した後、日影に視線を移して話しを続ける。

 

「お前が今まで何を経験して、何があったか知らねえ…けどな、アタイらだってそれぞれ色んな悩みや事情抱えてんだよ…お前や、お前らだけじゃねえんだ」

 

葛城のその目は、日影にとって暖かい優しさを感じた。今までただ冷静に、物事を成し遂げてた自分を、葛城は優しい言葉を掛けてくれた。しかし、そんな優しさを絶望が許すわけがなかった…

 

「散々私をぶっ飛ばした挙句、敵である悪忍に優しい言葉を掛けるとか…訳わかんない…本当にバカみたいで呆れちゃう…呆れを通り越して…なんだか本気でブチのめすくらい殺したくなっちゃった…」

 

「!?」

 

緑脳無の後ろには、なんとか後ろに下がって直撃は免れたものの、衝撃波の威力によって吹き飛ばされ、頭から血が流れてる漆月と、柳生に吹き飛ばされ、漆月の命令によりここまでやって来た多少傷ついた赤脳無が立っていた。漆月のその声には、先ほどの余裕や人を馬鹿にするような声ではなく、本気で、冷静で、その目に悪意ある殺意の信念が宿っていた。

 

「赤脳無…まずガキどもを血祭りにしろ、斬って斬って斬りまくって殺せ…殺せ!」

 

漆月の憎悪混ざった声に、赤脳無は僅かに体を震わせ、緑谷達目掛けてやって来る。

 

「緑脳無!お前は忍学生とその緑谷ってヤツを殺して!死柄木が殺せって言ってるくらいだ…今ここでアイツを亡き者にしてやる!!」

 

緑脳無も、赤脳無同様に僅かに体を震わし、低く態勢を構えてから、二体とも一気に前に飛び出て、日影を庇うように葛城、緑谷、切島、常闇が前に出る。そのことに日影は驚きを隠せないでいた。初めて、人の心配をするかのように…

 

「っ!何して…」

 

「行くぞお前ら!!」

 

日影の言葉は、葛城の声掛けに遮ってしまう。四人も戦う姿勢ではあるが、明らかにどっちが勝つか分からない。最悪の場合…死んでしまうケースもある。でも、戦わなくてはならないのだ。

 

「来るっ!」

 

迫り来る二体の脳無に、常闇がそう呟いた時だった。

 

 

「オラァアアァァァァァァァ!!」

 

ボオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォンン!!

 

「せいっ!」

 

ドッッッ!!!

 

またしても、二体の目の前に立ち塞がっては葛城たちの前に現れたのは…低く唸り声を上げる爆豪と、クールで冷静に現れた柳生であった。二体の脳無は爆豪と柳生の攻撃をくらい、後ろに下がってしまう。

 

「お、お前ら…」

 

葛城と切島は面食らった顔で二人を見つめてると…

 

「ケッ!何ボサッとしてんだテメェらぁ!!いい加減立ちやがれやゴラァ!!」

 

爆豪はここに居る皆んなにそう叫んだ。それは当然蛇女の皆んなにも言って居る。

 

「爆豪の言う通りだ…」

 

柳生も爆豪の意見に賛成し、頷いている。

 

「はっ…なによ…またお邪魔虫の登場ですかぁ〜?」

 

漆月は爆豪と柳生に呆れて小馬鹿にする声を出す。緑と赤の脳無は微動だにせず、動きは止まっている。そんな漆月を御構い無しに爆豪は怒鳴り続ける。

 

「大体テメェらいつまでも眺めてんじゃねえよ!爆殺すっぞオラァ!特にそこのチビ眼帯!」

 

「!」

 

爆豪がそう言うと、未来は自分のことだと分かり反応する。

 

「テメェ…いつまでもシケた面してんじゃねえ!!」

 

「な、なによ!……仕方ないじゃん、私は、皆んなを裏切り掛けて…」

 

「それがどした?」

 

「え?」

 

爆豪の言葉に未来はポカンとする。自分は仲間を裏切り掛けたのに、爆豪は「だから?」という反応をしてしまうことで、逆にこっちの反応が困る。

 

「たった一つのことでグチグチ悩んでんじゃねえ!!そういうヤツとか見てるだけでクッソムカつくんだよ!!!!だったら二度とそうならないようにすりゃあ良いだけだろうが!そんだけだろ!」

 

「アンタが言うような単純な話じゃないのよ!!わたしは、仲間の命が大切だったから…皆んなが傷ついて、殺され掛けてるのに、唯一皆んなを救うには私がコイツらの仲間に入らなきゃならなかった…だから私は…」

 

「倒せば良いだけだろ…」

 

「え?」

 

「だぁかぁらぁ!!倒して助ければ良いだけだろっつってんだろうが!!」

 

「!」

 

爆豪の滅茶苦茶な言葉に、未来は軽く戦慄する。反論する気力すら失せてしまう。

 

「コイツらが自分より強いから、皆んなが死んじまうからテメェはそんだけで諦めて、コイツらクソカス連合の仲間になっちまうのか?アホか!!クソナード並みにムカつくんだよ!!だったら今ここでコイツらより強くなって越えれば良いだけだろ!!」

 

「!!」

 

爆豪の論破に、未来は黙ってしまうどころか、むしろその手があったのかと思えてしまった。爆豪は滅茶苦茶ではあるが、自分が考えもしなかったそのことに、賛同してしまう。それに気づいた柳生は、未来を見つめる。

 

「あの時言ったはずだ。爆豪の方が苦戦すると…な。コイツの言ってることは滅茶苦茶だ。だが、良くも悪くも、コイツのような単細胞は必要なんだ」

 

「柳生…」

 

柳生の言葉に未来は、あの時半蔵に攻めに言った時、柳生の言ってた言葉を思い出し、ようやく意味を理解した。しかし爆豪は何のことだか分からず、むしろ単細胞呼ばわりされたことで「ハァ!?なんだ単細胞って殺すぞ!」とキレている。

 

「……そうだよね…うん」

 

未来は先ほどの罪悪感の顔から、馬鹿らしいと、呆れる笑みを浮かべた。そうだ、難しいことなんて今は考えなくてもいい。今は…自分が一体なにをするべきなのかが大切だ。と、考えた。すると今度は爆豪は詠に視線を向ける。

 

「テメェは…後で話がある…ここで死んだら殺す…!!」

 

「なっ…!」

 

詠は相変わらず口の悪い爆豪に、殺意の目線を向ける。だが一つ気がかりなのが、話があると言うことだ。一体なにを?という疑問が頭の中に浮かんでくる。そんな爆豪は視線を再び漆月に変えた。

 

「そろそろお話は良いかな?死ぬ前に最後に言う言葉は言い切ったかしら?」

 

そんな漆月の無慈悲な言葉が部屋中に響き、皆んなは漆月と二体の脳無を睨みつける。

 

「さてと、未来ちゃん。こんなヤツらの言うことなんざ聞かないで、私たちと一緒に…」

 

バキュウン!

 

ドシュッ!

 

「っ!」

 

漆月がそう言うと、未来は傘を向けて銃を撃った。未来は決心したのか、覚悟を決めた目で漆月を見つめてる。漆月は肩を撃たれたためか傷口から、真っ赤な血の色が染まって流れている。そんな漆月は、ゆっくりと未来を見つめる。

 

「……なんの真似かな?」

 

「今やったことに真似もクソもないけど?」

 

「……あんたが反論しなきゃ他の奴らは殺さないんだけど?」

 

未来は漆月を見てそう言うと…

 

「だからなんや?」

 

「!」

 

突然、葛城たちの後ろから声が聞こえた。振り返ると、無感情ではあるが、さっきよりかは何処か変わって、マシになった日影が立ってナイフを手に持っていた。

 

「日影!」

 

「そうね、嫌いだからって助けない理由にはならないものね」

 

そこには、雲雀に担がれてる春花の姿であった。春花の目には闘志があるように感じる。

 

「そう…ですわね、一先ず休戦と言うことで…まずはこの不届き者から倒しましょう!」

 

詠もなんとか自力で立ち上がり、ヨロヨロになっても大剣を向ける。

 

そんな彼女たちに漆月は視線を下に向け、暫くすると…

 

「結局そうなっちゃうのかあ…あーあ…あーあ……まじで最悪…もういいや…

 

 

 

 

コイツら全員ぶっ殺す!!」

 

 

バッ!と顔を上げて二体の脳無にそう言うと、脳無はその言葉を聞き、唸るように体を低く構えてから勢いよく思いっきり、皆んなに向かって前に飛び出した。

 

「皆んな!」

 

「どうやらしばらくは休戦のようね」

 

「不本意ですが仕方ありませんわ…雄英と半蔵の共闘ですわね!」

 

「せやな、ほな行くで」

 

迫り来る脳無に未来、春花、詠、日影はそう言うと、他のみんなは明るい希望を見る目で嬉しい表情を浮かべる。

もうさっきまでのようにやられてばかりではない、死ぬかもしれないという危険から来る恐怖など、振り払える。皆んなと協力すれば、どんな化け物でも…

 

 

「「「「「絶対に勝つ!!」」」」」

 

 

皆んなはそう叫んだ。

 

この時ようやく初めて、善忍と悪忍、そしてヒーローが手を組み、敵連合という強力な敵に立ち向かう。

 

雄英、半蔵、蛇女の共闘が始まった。




はい!ようやくここで共闘ですね!これならどんな敵が来ようとも怖くない!…USJの脳無とオールマイトは除いてね?

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