光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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唐突ですが、閃乱カグラのLINEスタンプがあったの最近知りました。直ぐに買いましたけどね☆
そして最近喉?が痛くて、鼻も詰まってて…こりゃ風かな?ううん、風邪だ。でもダイジョーブ!どうぞ!


41話「怒りと不安」

中学の頃、学校の友達に自分の個性を教えてみた。

 

「えっ!?心操の個性って洗脳なの!?ちょっ、ヤベェ…!」

 

「悪いことし放題じゃん!」

 

「心操くん、私たち操って悪いことしないでね〜?」

 

するとどうだ?皆んなそればっかりだ…まあでもこんなの正直もう慣れっこだ。皆からそう言われるのは…聞く前は大抵予想できる。何をどう言われるのか…どんな反応するのか…

 

「ははっ…皆んなよく言うよ………」

 

俺だってそうだ…昔小さい頃や皆んなから言われて、悪いことに使おうと思った。いや、俺に限った話じゃない…洗脳だなんて個性、誰もが手にしたら悪いことに使おうと思う。

 

「けど…さ…」

 

敵向きだね。そういう世の中仕方のないこと。

分かってる…そんなの……俺の力でヒーローになれないって……でも仕方ないんだよ……

 

だって…俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーナメント、緑谷と戦った心操は見事にやられた。その結果、心操は敗退し、緑谷出久は進出決定だ。

 

 

「緑谷くん、戦闘訓練みたいな動きだ!達人みたい…!」

 

「ね!私もそれ思ったよ〜…!」

 

飛鳥とお茶子は、緑谷の背負い投げに感激している。まあ、動きがプロみたいだし、あの流れから背負い投げが来るとは思わなかっのだろう…

 

「まあ、あの場合はそうするのが妥当だな」

 

「なんか、一瞬で勝負決まったね〜」

 

柳生はスルメイカを食べながら、そう言い、雲雀はアイスクリームを食べながら呟いた。というか柳生…スルメイカ結構食べてるが、後どれくらいあるんだ…?てかどのくらい食べてるんだ…

 

「背負い投げと言いやあ爆豪も投げられてたよな!な!あーいう感じに!」

 

「黙れアホ面喋んなやクソが」

 

「」

 

肩を落として見たことのない暗い表情を浮かべる上鳴。

 

 

体力テストで活かした部分と、戦闘訓練での投げ技の使用、自分が何をどうやるかの前に、自分に今できることを成し遂げた…みたいな感じだ。

 

 

『イヤァ、緒戦にしちゃまあ、地味っちゃ地味だったけど両者の健闘に称えて拍手を!!!』

 

パチパチと会場の観客たちは、二人の健闘に大きな拍手を送る。

緑谷に敗けたことで、心操の顔はとても暗い表情でいた。先ほど言ってた言葉に、疑問を持った緑谷は、心操に尋ねてみる。

 

「…あのさっ!戦った後で言うのもなんだけど……心操くんは何でヒーロー科に?」

 

「………仕方ねえだろ……だって、憧れちまったんだから………」

 

質問に答えた心操は、悔し混じりの声で低くそう言うと、直ぐに緑谷に背を向けて戻ろうとした。

それを聞いた緑谷は、分かってたことだ…聞かなくたってなんとなく。だが、聞かずにはいられなかった……

だって、個性を手に入れる前の緑谷とそっくりで、自分を重ねてるようだったからだ……

出来れば救ってあげたかった。君の力でもヒーローになれるってことを…しかし、今の緑谷が言っても解決できることはない。

 

そう思った時だ。

 

「心操!お前スゲェな!」

 

応援席に振り向くと、そこには普通科の生徒達が、心操に手を振っていた。

 

「障害物競走一位のヤツといい勝負してよ、俺ら普通科の期待の星じゃん!周り見てみろよ!」

 

一人の男性がそういい、周りを見てみると…スカウト目的でやって来たヒーロー達が、心操の個性について話題になっている。

 

 

「これ対敵にしちゃあものスゲェ有効だぜ!?何でヒーロー科に入れなかったんだ!?」

 

「ヒーロー科ってホラ、受験者多いし…それでじゃね?」

 

「けど彼の個性物凄く強力だよな…その気になれば敵との戦闘でも被害出すことなく有益に事が進むぜ!」

 

「敗けちゃったけど、もし戦闘経験の差が互角だったら分かんなかったかもな!」

 

 

色んな言葉が飛び交う。

 

「なあ、分かるか?心操、お前スゲェよ」

 

多くのヒーローや、同じクラスの生徒達は、自分の個性を認めてくれた。改めて言われて、褒められて…今まで言われて来た言葉と、今言われた言葉がこうも違う。心操は表情には出してないが、内心は嬉しかった。

 

「……緑谷」

 

「!?」

 

突然声をかけられ、思わず体をビクッと震わせた。振り向いてはないが、話を続ける。

 

「結果によっちゃあヒーロー科編入も検討してくれるんだと…覚えとけよ?俺は今回はダメだった…けど、駄目だとしても俺は絶対諦めない……ヒーロー科入って資格取得して…絶対お前らより立派なヒーローになってやる…!!」

 

「うん!」

 

心操がそう言って緑谷は頷くものの、洗脳されてしまった。

 

「俺と話すヤツって、大体警戒するんだけどさ……お前は違うんだな…そんなんじゃ足元すくわれるぞ?」

 

心操はニヤリと笑みを浮かべて、緑谷の洗脳を解く。

 

「え?あっ、うん!」

 

これが最善の手なのか分からない、だが取り敢えず分かったことは、此処からが彼の始まりなのだと言うことだ。彼も戦闘経験を積めば、より優秀なヒーローになれるだろう……

 

 

 

緑谷は洗脳を解く際に指を壊してしまったため、リカバリーガールの所へ行き治療を受ける。リカバリーガール自身も、今回は本人の意思じゃなかったため、大目に見て怒らないそうだ。それに怪我をした緑谷が心配で駆けつけたオールマイトもいる。

 

 

「ありがとうございます……」

 

「まあ、今回ばかりは仕方ないね…寧ろ良くやった方だよ緑谷少年…なんせ個性を使って体を壊すことなく、こうして最終科目にまで来たんだ、私は騎馬戦あたりから使って壊してしまうかと思ったが…」

 

「僕は轟くんのところで使いましたけどね…」

 

ホッと安堵の息をつくオールマイト。治療を終えた緑谷は、ドッと疲れが出てきた。やはりあの後にリカバリーガールの治療を受けるとなると体力がキツイ…

 

「あ、そうだオールマイト…僕心操くんに洗脳をかけられた際に…幻覚が見えたんですけど…」

 

「んん?幻覚?」

 

緑谷の言葉に、オールマイトは首を傾げる。

 

「8…9人くらいかな…?分かんないですけど、洗脳で頭にモヤがかかったような感じになった時、幻覚が浮かんで…瞬間的に辛うじて指先だけ動いたんです……そのなかにオールマイトらしき人もいました……ワンフォーオールを紡いできた人の意思、みたいなものなのでしょうか?」

 

「え…?なにそれ…怖!」

 

「えっ!?ご存知かと…」

 

緑谷は洗脳されてた時に、幻覚を見たことを詳しく説明すると、知ってなかったのか、オールマイトは驚愕する。

 

「なーんてね!知ってるよ、アメリカンジョークだよ!ハハハ!」

 

「わ、笑えませんよ…結構真剣なんですよ…?」

 

少し調子に乗って悪ふざけするオールマイトに、緑谷はムスッとした様子をとる。そんな緑谷にオールマイトは悪い悪いと謝り、椅子に腰をかける。

 

「んー、それはきっと個性を掴んできたっていう分かりやすい展歩なんじゃないかな…?だって昔若い頃に私も同じ経験があってね。きっとそれかもしれない……ワンフォーオールは努力の結晶…その努力が染み着き、面影となったんだと思うよ…君の強い想いが面影を見るに至り、心操少年の個性(洗脳)に対して、指先だけでも!って打ち勝ったんじゃないかな?」

 

ワンフォーオールは努力の結晶…何人もの受け継がれた努力が、一つとなっている。そう言いたいのだろう…

となるとあのなかには確実にオールマイトがいたってことになる……緑谷は釈然としてない様子で悩んでいる。

 

「まあなに、今は細かいことは気にしなくても大丈夫さ!それにホラ、次の対戦相手みといた方が良いだろう?」

 

「あっ!そうでした!」

 

満面な笑みで言うオールマイトに、緑谷は忘れてた!みたいなノリで直ぐに座ってた椅子に立ち上がり、礼をしてからその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、にしても前よりかは成長した感じですかね…ははっ!あっ、成長と言えば半蔵くんの孫、飛鳥くんもどのくらい成長したかな?超秘伝忍法書を引き継いだそうじゃないか!今度半蔵くんに話を聞こうかな…いや、飛鳥くん直々に聞こうかな?」

 

オールマイトは緑谷が去ってから、ハハハと豪快に笑いながらリカバリーガールに話しかける。

 

「さあねえ……………ねえ、アンタは平和の象徴でありながら、半蔵と同じ社会を支える立場の人間だろ?」

 

「…?はい?」

 

リカバリーガールの言ってることが分からず、オールマイトは首をかしげる。

 

「アンタの後継者は緑谷出久…半蔵の後継者…孫は飛鳥……あの子も緑谷と同じ、名を恥じぬよう…自分の師の為と言わんばかりに努力してる…そりゃ良いことさね……」

 

「リカバリーガール…なにを…?」

 

「あたしゃの言ってること、もう分かってるだろ…?緑谷に半蔵の事話したんだろ?だったら…飛鳥(彼女)だけにも、()()()()()を教えときな……」

 

「……!」

 

その言葉に、オールマイトは後遺症が出来た傷に、手を当てる。

まるで弱い部分を杖で突かれたような…そして冷や汗を垂らして…

 

「全員に言えとは言ってない……けど、半蔵のこと、あの子のことを大切に思ってるなら、せめて半蔵の孫にも教えなきゃいけないんじゃないかい?ヒーローと忍、同じ後継者として……これからこの先の世代として…!

半蔵もそのことは承知してる……覚悟決めんのはアンタもだよオールマイト…彼女も他人に言い渡すような子じゃないって、アンタも知ってるはずさね…」

 

「……それは勿論、承知しております…!!」

 

オールマイトは、その目に信念を宿して…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いては、轟VS瀬呂の戦いだ。緑谷と心操の戦いが終わり、轟は会場へと向かい、控え室を出る。会場に出る前に…

 

「……テメェか…邪魔だ退け」

 

轟焦凍の父、轟炎司たること、エンデヴァーが立っていた。

 

「相変わらず醜態ばかりだな焦凍」

 

エンデヴァーも轟と同じく不機嫌な表情を見せ、睨みつける。しかし焦凍のほうは目を合わせず、見ようともしない。

 

 

「左の力さえ使えば、障害物競走も騎馬戦も圧倒できた筈だろう…」

 

「………」

 

「良い加減子供じみた反抗はやめろ。わざわざ他の忍達をかき集め、貴様をより強くするべくあらゆる強さの秘訣を聞いたのだ…お前は、忍の存在を超え、更にはオールマイトを超える義務があるんだぞ」

 

「……!」

 

進むたびに、エンデヴァーの言葉を聞くたびに、表情が曇っていく。

 

 

「分かってるのか?兄さんらとは違う…お前は、最高傑作なんだぞ!!」

 

 

「黙ってろ!!!!」

 

 

とうとう我慢の限界が来てしまい、怒りを染めた大声で怒鳴る。轟の威圧、しかしエンデヴァーは一切表情を曇らせず、また微動だにせず轟を睨みつけている。

 

「……さっきから黙って聞いてりゃ、それしか言えねえのかテメェは……」

 

轟は冷静さを取り戻し、乱れた呼吸を整え、進んでいく。

 

「お母さんの力だけで勝ち上がる…戦いで、そしてこれからこの先テメェの力は一切使わねえ……忍を超越?馬鹿げたこと言ってんじゃねえ……寝言は寝て言いやがれ……所詮、忍のことなんざ興味ない癖に……」

 

轟は吐き捨てるようにそう言った。轟の言葉に、今まで黙ってたエンデヴァーも口を開く。

 

「フン…全くもってその通りだ。忍のことなんざ知ったことではない……

それに、学生のうち(いま)は通用したとしても…直ぐに限界が来るぞ…」

 

轟の表情は、より一層ドス黒い怒り、憎悪を染まらせて…

 

 

 

『お待たしました!続きましては〜コイツらだ!!』

 

会場に出てきたのは二人は、舞台の上に立つ。

 

『優秀!優秀なのになんだその地味さは!緑谷に負けないくらいだぞしょうゆ顔のお前!ヒーロー科 瀬呂範太!!』

 

「ひでぇなオイ…」

 

瀬呂は一歩前に出る。

 

『対! 2位・1位と強すぎるよ君!本当どーなっちまってんの!?同じくヒーロー科 轟焦凍!!』

 

轟は、その場から動かず先ほどの表情と変わらずにいる。

 

 

 

 

 

「瀬呂終わったんじゃねこれ!?」

 

「終わったな…」

 

上鳴と柳生は、対戦相手の轟と見比べて瀬呂が敗北するといち早く察してそう言った。

 

「ひどいよ柳生ちゃんに上鳴くん!確かに轟くんは強いけど…でも瀬呂くんだって強いよ?」

 

「うむ!同じ仲間を、生徒を信じずしてどうするんだ!」

 

飛鳥と飯田はそんな二人に叱るように言う。

 

「……轟くん?」

 

そんななか、緑谷は轟の異変に気付いた。そう、轟の表情に…

 

 

 

瀬呂はA組の観客席を見つめ、舌打ちをする。

 

「チッ…あいつら絶対に俺が負けるとか言ってるだろ……くそ、見とけよ…つってもまあ、勝てる気はしねーけどさ…」

 

そして次の瞬間。直ぐにテープを発射させて、轟の体を一瞬で巻きつける。

 

「つって負ける気もしねーーけどなァ!!!」

 

轟を思いっきり場外の方へとやる。テープに巻かれた轟は、なすすべも無く場外へ出てしまいそうになる。

 

『場外狙いか!この選択は最善じゃねえか!?正直やっちまえ瀬呂ーーー!!』

 

観客もマイクも盛り上がり、歓声が響くその時だった。

 

 

パキイィィィィン!!

 

 

会場を、天そのものを貫くような超巨大な氷が瀬呂を襲い、緑谷たちの目にまで出来ている。幸いなことに観客たち皆に被害はないようだ…

冷気とともに観客たちの歓声は途絶え、皆は呆気なく、呆然としている。あのマイクでさえサングラスが傾き言葉を失ってるくらいだ…

 

忍学生の飛鳥たちもそうだ。

 

飛鳥も目の前に巨大な氷が出来たことに驚きゾッとし顔を青ざめる。

 

斑鳩は思わず飲んでた日本茶を吹き出してしまった。

 

葛城は驚きのあまり姿勢を崩して倒れてしまった。

 

柳生も突然のことに驚きを隠せないのか、目を大きく開き、手に持ってたスルメイカを落としてしまう。

 

雲雀に至っては緑谷が心操に洗脳された時みたいに硬直した。まるで今何が起きたか分からない様子で…取り敢えずおそる恐る轟に視線を移す。

 

 

「………」

 

轟を巻いてたテープは、氷によってパキパキになり、氷が砕けるように、簡単に破けてしまった。轟は体についてる氷の破片を払うと、瀬呂を見つめる。

 

「や…やり過ぎだろ…………」

 

瀬呂はあの轟の攻撃をもろに食らって、氷漬けにされて、動くことすら出来ない状態だ。ミッドナイトは右側半分が氷で覆われ、棒立ちで瀬呂の安否を確認する。

 

「瀬呂くん…動ける?」

 

「動けるわけないでしょ……痛えぇぇ……やべぇよ幾らなんでも……俺が何したってんだよ轟ぃ……」

 

白い息をはき、目に涙を浮かべて、悲痛な表情で轟を見つめる。

 

「すまねぇ…やり過ぎた……色々あってイラついてた……」

 

轟の八つ当たりを食らった瀬呂に近づくと、左の熱で氷を溶かしていく。会場中は、瀬呂にドンマイコールを起こす。

だがその時緑谷だけが思った…

 

自身が凍らせたのを左手で溶かしていく轟の姿が何故か、緑谷にはとても酷く、悲しく見えたのだ。

 

 

轟焦凍、二回戦進出。

 

よって二回戦は、緑谷と轟が戦うことが決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ステージは乾き、上鳴とB組の生徒、塩崎の戦いが始まった。上鳴の個性はとても強力…なのだが、相性が悪かったのか、B組の生徒に為すすべもなく瞬殺され、結果は敗退。よって塩崎は進出決定だ。因みに今の状況は…

 

「うぇぇえエ〜いぃ!」

 

上鳴は体に茨のようなツルに縛られ、完全なアホ面になっていた。その茨のようなツルは、塩崎の個性によるものらしい。

 

「ああ…与えられたチャンス……無駄にせずに済みました…」

 

塩崎は何かを祈るような態勢でブツブツと呟いている。

 

塩崎茨 個性 『ツル』頭髪のツルは伸縮自在で切り離すことが可能。水と日光をしっかり摂っていれば、直ぐに生えてくる。

 

 

切り離しが厄介だったらしく、直ぐにやられてしまったそうだ。彼女の個性、その気になれば上手く使って地面や壁にはっつけてトラップにしたりすることが出来そうだ。

 

 

「へ〜…!結構すごいね!」

 

「轟の後だとインパクト薄いけどな…」

 

塩崎の個性に感心する飛鳥に、障子は横でボソリと呟いた。いやまあ気持ちはわかるが…

 

「知ってるんなもん…言うなや…」

 

近くに瀬呂がいるから…瀬呂も勝てる気は無かったが、あんな酷い目に遭うとは思ってもいなく、大分落ち込んでいる。

 

そんなやりとりに苦笑する飛鳥。すると近くで緑谷がブツブツ呟いてるので、見てみると…

 

「緑谷く…わあっ!?何やってるの!?」

 

「うわあああぁぁぁぁ?!どどどどうしましたか飛鳥さん!?」

 

相手の個性をノートにメモる緑谷が、物凄くブツブツと呟いてるのを見て、思わず驚いてしまった飛鳥に、緑谷も驚く。

 

「ご、ごめん…な、何してるのかな〜って…思って…」

 

飛鳥は大声で驚いたことに謝りつつ、緑谷は大丈夫といった顔で首を横に振る。

 

「み、皆んなの個性をメモってるんだ…!」

 

「皆んなの個性…?」

 

「うん、そう…対策っていう意味でもあるんだけど……ほぼ僕の趣味でやっちゃって…それに折角他のクラスの個性も観れるチャンスだしさ…!」

 

緑谷は恥ずかしいのか、頬を赤く染めて、恥じらいながらも早口で喋る。

 

「へぇ〜…そっか、そう言うのも有りか……」

 

飛鳥はなるほど…と納得した様子で緑谷のノートを見つめて何度も頷く。恐らく飛鳥は緑谷の個性対策を聞いて、参考になってるんだろう。

 

「ちょいちょい飛鳥さん達やA組の皆んなのも書いてあるよ!えーっとそだね…例えば…麗日さんのとか…」

 

緑谷はノートを開き、お茶子に振り向くと…

 

「って、どうしたの麗日さん!?」

 

「ん?あ、あ〜…ちょっとね…力んじゃって…つい…」

 

お茶子は緊張してる所為か、顔の表情がいつもと違い、険しく体を力んでいた。

 

「どうしたの?悩みとか?」

 

「うん…実は…」

 

 

 

そんな話をしてる間、次の戦いが始まった。次はヒーロー科 飯田天哉VSサポート科 発目明だ。

飯田はサポートアイテムをフル装備しているが、これは発目の提案であり、真面目である飯田は彼女の熱意ある頼みに断れずアイテムを着用したようだ。

彼女は「ここまで来た以上 対等だと思うし対等に戦いたい」という理由でアイテムを渡して来たそうだ。

それを聞いたミッドナイトは許可したようだ。何やら個人的に青くさい話が好きだからとかなんとか…まあ双方合意の上なら許可しても良いだろう…

 

緑谷は内心疑問に思ったのは、発目がそんなこと言うかどうかだということだ。確かに発目はアイテムについては凄い執着心があるが、他人や戦闘には興味がない。

そんな彼女がそんなこと言うのか?と…

だが結果、発目は個性を使ってサポート会社を見つけては、アイテムを使いまくり解説していく。飯田は訳が分からず彼女の思うがままに利用されてしまう。あのマイクも轟と同じく言葉を失っている。

 

アイテム解説付きの鬼ごっこはその後、10分もの間繰り広げられた。

 

そして…

 

「ふう!全て余すことなく見て頂けました……もう思い残すことはありません!飯田さんありがとう御座います!」

 

「騙したな!?!」

 

発目は汗を拭い、飯田にぺこりと頭を下げるが、自分が彼女の思うがままに利用されていたこと、騙されてたことに気付いた飯田は、怒りを見せる。因みに発目は自分からわざと場外した。その結果、飯田は二回戦進出決定だ。

 

「すみません、あの有名な名のあるヒーロー インゲニウムの弟さんである貴方を、利用させていただきました!」

 

「嫌いだ君!!」

 

飯田はプンスカした様子で戻っていく。応援席で観てた兄は今、苦笑している。

 

「あちゃ〜…まあ結果としては勝てたわけだし…良いんじゃねえか?」

 

と、冷や汗を垂らしそう呟いた。

 

「……ホォ…!あの彼女の発明品…なかなかどして、面白いですね!ますます興味が湧きましたよ……貴方たちのような()には…ね」

 

謎の男は、緑谷の次に発目に目をつけ、微笑んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く…!何なんだ彼女は一体…もう!醜態を晒してしまったじゃないか!ましてや兄の目の前で!」

 

飯田は一人、発目に対してブツブツと独り言を呟きながら控え室に戻ると…

 

「飯田くん…お疲れ」

 

「お、うらら……

 

かじゃないな!シワシワだぞ眉間が!」

 

「眉間が?」

 

いつも元気盛んで天真爛漫とした笑顔を浮かべるお茶子ではなく、いつもとは様子が違う様子だ。

 

「あー、ホラ…緊張でね、眉間に来てたね…」

 

「緊張…?ああ、麗日くんの相手、爆豪くんだもんな!」

 

飯田は、なぜお茶子がいつになく緊張してるのかを察し、納得した。確かに相手が爆豪となると訳が違う。

 

「うん…正直超怖い……でも、負けられないんだ…個人的にも…そして家族のためにも…」

 

「家族のため?」

 

お茶子の言葉に飯田は首を傾げる。その時だった。

 

「麗日さん!」

 

「お茶子ちゃん、悩み…相談するよ?」

 

控え室の扉が開き、ノートを手に持ってる緑谷とお茶子を心配する飛鳥がやって来た。

 

「え?会場は?他のみんなの、観てがなくても良いの?」

 

「うん!芦戸さんと青山くんの戦い、一瞬で勝負決まっちゃったから…あと八百万さんと常闇くんの戦いも一瞬で…」

 

「青山くん、顎大丈夫かなぁ?アレ凄いの入ったよね?」

 

お茶子は心配するが、緑谷は大丈夫と首を縦に頷く。飛鳥が言うには、芦戸は青山のレーザービームを見切り、上手く間合いに詰めて、近接戦に持ち込みお腹に巻いているベルトを壊してから、アッパーで青山をダウンさせたそうだ。

一方、八百万と常闇との戦いでは、創造が厄介と判断した常闇は、八百万が戦う前に個性を使って勝負を決めたそうだ。攻撃した時に八百万の服が破けて一時問題になったが、自分の上着を八百万に着せ、黒影の闇で八百万を隠し、失神してる彼女を運んでったらしいが…紳士な彼のお陰で、何とか最悪な醜態を晒さずに済んだらしい。

 

「そっか……」

 

お茶子はまだ不安が拭いきれないのか、ぽつりと小声で呟いた。

 

「次の相手はかっちゃん…」

 

「そういえばそうだったね…爆豪くんが相手だとまた感じ方も違うよね…」

 

緑谷も緊張し、飛鳥はしゅんと顔を伏せてしまう。

 

「しかし幾ら爆豪くんでも女の子相手に其処までは…」

 

「ううん!かっちゃんなら絶対手を引かない。蛇女子学園ってところでもかっちゃん、相手が女だろうと一切躊躇はしなかったし…だから今回も…」

 

飯田はそう言うものの、緑谷は首を横に振る。そう、ここでは皆んな夢を追い、全力で戦っている。例え相手が爆豪でなくとも手加減はまずない。勿論飯田も自分の立場だったら手加減しないだろう…

お茶子はますます不安な表情を曇らせる。

 

「だからさ…麗日さんの助けになれば良いなって思ってさ、今まで助けられたから…だから……かっちゃん対策としてノートまとめてみた!付け焼き刃だけど…」

 

そんな彼女に緑谷はノートを開き、渡そうとする。

 

「おお!それは良いな…!良かったじゃないか麗日くん!」

 

「あ、あの短時間でよく書けれたね?」

 

飯田は良かったと感心し、飛鳥は緑谷のビッシリとまとめたノートを見て思わず苦笑する。しかし麗日は…

 

 

「ありがとう…デクくん。気持ちは、物凄く嬉しい…!でも…いい」

 

「え?」

 

お茶子の言葉に、皆は目を見開き、静寂な空気に包まれる。相手に勝てるかもしれないというのに、お茶子は首を横に振った。

 

「気持ちは嬉しいんだよ?勝ちたいよ?でも、皆んな必死になって、全力で夢に向かってる…!私だけ緑谷くんにこんなことされたら…逆に申し訳ないよ…私だって緑谷くんに助けられてばかりだもん……それに飯田くんも、『挑戦する!』って言われた時、自分が物凄く恥ずかしくなった…!」

 

「麗日…さん」

 

「麗日くん…」

 

緑谷は脳裏にあるものが浮かんできた。それは、初めてお茶子と会った時。入試の時、お茶子が動けなくて巨大ロボに潰されそうになった時。騎馬戦の時に緑谷が手を組ませてくれたこと。飯田は騎馬戦を決める時に、緑谷に宣戦布告したことを思い出す。そう、友だからこそ、全力で相手にぶつかる覚悟。その覚悟がお茶子にはなかった…だから恥ずかしくなった…本当にヒーロー目指したいのに、そんな腹づもりでやってて良いのか…と。そう自覚されたことで、お茶子はより自分のことを深く考えた。

 

「…それにさ、私がヒーローになったのには、理由があるんだ…」

 

「「え?」」

 

飛鳥と緑谷は首をかしげる。飯田はお茶子が言ってた家族のためにも、という言葉が頭に浮かんだため、驚いてはいない。お茶子がヒーローになりたい理由。それは…

 

 

 

「お金欲しいからヒーローに!?」

 

「う、うん…なんかゴメンね?こんな時に……皆んな純粋に前に進んでるのに、私だけ…なんかこー、不純で…」

 

緑谷は思わず声を張り上げ、お茶子は半分照れ臭そうに、半分申し訳なさそうな様子を見せる。

 

「しかしそれは先ほど言ってた家族の為なのだろ?それも立派な一つの夢さ!恥じることはない、何故謝るんだい!?」

 

「そ、そうだよ!自分は自分なんだし、別に悪いことじゃないよ…」

 

飛鳥は大丈夫だよと言い、飯田は手の動きが物凄いことになっており、突っ込みを入れたくてもどう入れればいいのか分からず、取り敢えずスルーした。

 

「ウチは実家で働きたくて…ホラ、実家の仕事建設で、でもって仕事なくてスカンピンなの……」

 

「そ、そうだったんだ…アレ?でも麗日さんの個性なら…コストかからないよね?」

 

「でしょ!?それ昔父ちゃんに言ったんだけど…」

 

お茶子は緑谷の意見と同じだったらしく、それな!みたいなノリで緑谷にそう言う。お茶子は昔、父と母の仕事を手伝うために父が働いてる建設会社に就職しようとした。だから大人になったら就職するのが夢だった。父は気持ちが嬉しかった…しかし、ウチに就職するより自分の夢を叶えてくれた方がもっと嬉しいと言ってくれた。自分の夢、それは…

 

ヒーローになることだった。

 

だから…

 

 

「私は絶対ヒーローなって、父ちゃん母ちゃん楽させるんだ」

 

 

いつもの麗日じゃない、その言葉は覚悟を決めた声だ。澄んだ瞳で三人を見てそう言った。

 

 

「……お茶子ちゃん…」

 

「麗日くん…!ブラボー…!」

 

「麗日さん…」

 

その気迫に、三人は思わず息を飲んでいた。ここに立つ者は皆、それぞれの夢があって追い求めてる。全力でぶつかって……そして麗日お茶子もまた……そのうちの…

 

「その為には絶対に爆豪くんには負けられない!本当にヒーロー目指すなら…!皆んなライバルだから!飯田くんも、緑谷くんも…だから!

 

 

決勝で会おうぜ…!」

 

お茶子は無理やり震える笑みを浮かべて、緑谷に親指を立ててそう言った。

 

お茶子は自分の夢だけじゃない、家族のためにも……

 

 

会場に向かい、控え室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

切島と鉄哲との戦いでは、ほぼタイマン勝負。殴り合いで勝負が決まった。

結果は両者ダウン、引き分けといった形となった。その場合は両者回復後、簡単な勝負…腕相撲で勝敗を決めるらしい。実力も個性もほぼ同じ、似た者同士だ。

 

 

 

 

 

そして最後の組の戦いが始まろうとする。特にA組の皆んなは騒めいている。その応援席には、戻ってきた飛鳥、緑谷、飯田も見ている。

 

「次、ある意味最も不穏な組ね」

 

滅多に表情を変えない蛙吹は、不安で表情を曇らせている。

 

「雲雀…怖いよぉ…」

 

「安心しろ雲雀、俺が付いている」

 

雲雀と柳生の二人は、まるでホラー映画観てるみたいだ。

 

「ウチ、なんか見たくないなー…」

 

「爆豪の場合、必ずブツだろ…女の子の暴力は、見たくねえな…」

 

耳郎は手で顔を覆い、その指の間の僅かな隙間から目を通して見つめている。その近くにいた上鳴は、冷や汗を垂らしてる。

 

 

「頑張れ!!お茶子ちゃん!!」

 

飛鳥は緑谷以上に大声で応援する。

 

「麗日くん!リラックスが大事だ!」

 

自分にとっては精神真面目、アドバイスしてるつもりなのだろうが、飯田はまたもや変なポーズを取ってるため、参考にはならない。

 

 

(麗日さん……頑張れ!!)

 

 

緑谷は目を瞑って祈るように、心の中で叫んだ。

 

 

『さて!一回戦最後の組はぁ〜…

中学からちょっとした有名人!ヘドロ事件を思い出せ!堅気の顔じゃねえ!ヒーロー科 爆豪勝己!!』

 

恐る強者とも呼べる爆豪が会場に現れ、舞台に立ち一歩前に出る。

 

『対!俺こっち応援したい!!ヒーロー科 麗日お茶子!!』

 

恐怖に屈することなく、立ち向かおうとするお茶子もまた、会場に現れ、舞台に立ち一歩前に出る。

 

 

この戦い、まさしく…獅子と兎の戦いだ。




不穏な戦いの始まり…これが終われば次は……次は…!切島くんと鉄哲くんのガチガチ腕相撲!!
じゃなくて!ww アレですね、緑谷と轟の戦いになります。長かったようで、短かったようで…なんとも複雑な気分です…
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