光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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明けましておめでとうございます!!皆さま、お待たせいたしました!久しぶりの投稿です!
年末までには投稿したいと思ってたのですが、事情が事情で忙しく中々執筆活動を行うことが出来ませんでした。


44話「なりたい自分」

幼い頃から俺はよくクソ親父の訓練を受けられてた。

クソ親父曰く、俺はオールマイトを超えるための最高傑作らしい。

 

ふざんけじゃねえ、誰がお前の道具になんかなるか。お前を見てるだけで、声を聞くだけで腹立たしい。

 

俺は母の個性と父の個性を引き継ぎ手に入れたことにより、俺は最高傑作となり兄と姉は訓練しなくても良いそうだ。

訓練といえばヒーローと忍の訓練であり、今はもう慣れっこでなんとか付いてけれる。だが幼い頃では次元が違う。

例えば何十体もの傀儡を相手にし少しでも架すれば親への暴力が振るわれたり、目に包帯を巻いて気配や音だけでクナイや手裏剣などを避けたりと…アレは流石に死にかけた。最悪心臓付近の場所にクナイが当たり本気で死にかけたのだから。だが不幸中の幸いなのか、刺さったところもそこまで深くはなく、治療を受けてなんとか回復した。

他にも忍とヒーローが受ける基礎トレや、対人戦闘など、様々なものだ。

 

毎日が辛く、何度心が折れそうになったことか……生きてて幸せや希望を感じなかった苦しい生活だった。

でもそんな家族の中でも、俺に優しくしてくれる人がいた。俺の心と体の傷を癒すかのように…傷がついたところはシップやバンソウコなどを貼ったりしてくれた。寂しい時はいつも側に居てくれた。溢れ出る涙を拭い、微笑みかけてくれた。

 

それが、俺のお母さんだ。

 

 

『いいのよ…焦凍。お前は………』

 

 

その温かい優しさが俺の心を支え、包んでくれた。

そしていつしか、親父を否定し続けることだけを考えてたせいか…

 

 

この先をいつの間にか忘れてしまった

 

 

 

 

 

 

舞台には冷気で白い靄が舞台の周りを包み込んでいる。まるで二人の勝負を守り包めるかのように…周りの声を遮るような…緊迫とした空気が流れている。

 

「………飛鳥といい、お前といい……二人揃って何のつもりだ………」

 

気付くといつの間にか顔にまで所々氷が覆われている。

 

「全力だと……?クソ親父に金か弱みでも握らされたか……?」

 

何を言おうと緑谷はただ真剣な眼差しで睨みつけてるだけで返事はない。

先ほど飛鳥に本気でかかってきてと言われ、そして今緑谷にも言われた。

事情を知ってないのならまだしも、二人は家の事情を知っている。にも関わらず、この二人は本気で掛かって来いと挑戦する。

 

そういうところが……

 

「イラつくな………!!」

 

歯ぎしりし、表情を歪ませ怒りのオーラを出しながら、走り掛ける。

 

(近距離ならお前は対応出来ねえだろ……!直ぐに終わらせてやる…!)

 

しかし緑谷はそれが狙いだったのか、走り出した途端に緑谷も走り出した。そして間合いを詰め、低い体勢に入り拳を握り締めると思いっきり腹を殴り飛ばした。

それと同時に轟は緑谷の左腕を氷で凍らせた。

 

『生々しいの入ったあァァァァァーーーーー!!轟の僅かな隙を緑谷は見逃さなかったあぁ!!!』

 

「ぐうっっ!!」

 

緑谷は先ほどの攻撃で無理をしてしまった所為か、手が更に真っ赤な血に染まり、出血の量も以前より増した。

 

轟の動きは先ほどよりも鈍くなってきている。それは轟の氷の個性によるデメリットみたいなものだ。それに直ぐに終わらせるといっていたが、瀬呂に見せた氷結攻撃が今までに見た最高の高火力の威力。つまり爆豪と同じく限界があるということだ。

 

「はっ……くぅっっ……!!」

 

轟は叩きつけられたかのように数回地面にバウンドし、何とか体制を取り戻す。咳をしながら腹に手を当てて立ち上がる。

 

 

「まさか…ここで攻勢に出るとはな…」

 

「ああ、どう見ても緑谷の方がボロボロなのにな…!」

 

 

観客の声も上がっている。しかし今の二人にはもう外の声なんて聞こえてない。まるで舞台は防音でも貼られてるかのような空気だ。

 

「氷の勢いも…だいぶ弱ってきてる!!」

 

緑谷は轟の氷結攻撃を見極め、破壊するのではなく避けた。無敵に思えた轟も、大分落ちてきてる。

 

 

 

「……ミッドナイト、これ止めますか?」

 

審判のセメントスは無表情ではあるが、内心は心配してるようでミッドナイトに止めかけるかどうか相談している。

 

「あれ大分無茶ですよ?どうせ治してもらえると思ってるかもしれませんが……聞いた話だと何度もリカバリーして貰ってるそうですし、それにアレでも十分な負傷を負ってます。一度の回復では全回復することは出来ないし、体力的な問題もある。あのまま続けば……治せれるものも治せれませんし…例え彼がこの戦いで相手に勝ったとしても次の試合は無理かもしれませんよ!?」

 

「…………」

 

セメントスは無線で連絡するが、ミッドナイトからは返事はない。見届けたいのか、それとも止めさせるか…それで悩んでる。本来なら止めるべきだが……

 

 

 

応援席では、轟と緑谷の激しい戦いに皆沈黙している。

 

「緑谷のヤツも…相当だな……」

 

ふとここで瀬呂が小声で呟くと、聞こえてた皆は僅かに頷く。

お茶子は作戦とはいえ自分のこともあったため頷きはしてないが…しかし今の緑谷は無茶をし過ぎている。

 

「…………緑谷くん……」

 

飛鳥は冷や汗を垂らし、彼を見つめている。その言葉はこんなにも傷を負ってしまって大丈夫かな?という心配の言葉ではなく…

 

「轟くんに……本気を出させるために……?それとも……救けるために…?」

 

緑谷が轟に対する想いであった。轟の家事情のことは本人含めて3人の秘密だ。だから当然皆んなは轟について、そしてエンデヴァーがどれ程親として、人として酷いことをしたのか知る由も無い。ある一人を除いてなのだが…

だから家の事情で苦しめられた轟の気持ちに二人は動揺し信じられなかった。だがそれを聞いて思ったことがあった。

 

 

こっちも負けられない。そして…

 

 

救けてあげたいと…

 

 

親に、過去に苦しめられてるなら、救けてあげよう。

 

 

飛鳥はそう思ったのだ。

 

 

もし自分も緑谷くんと同じ立場なら、私だって……

 

 

そうする。飛鳥はこれを見てそう思ったのであった。

 

 

個性の制御は少しずつ出来始めているが、その分、威力は落ちている。調整だけでなく、傷を負ってるからというのもあるが……勝つ為に自ら激痛に飛び込み耐えるのは、より相応な勇気と覚悟が必要だ。

その勇姿は無謀に近いが、僅かな勇気を感じ取れる。

 

問題なのはその起点。どうしてそこまでして緑谷は轟に食いつくのか?飛鳥と同じく轟がエンデヴァーに囚われ苦しんでるから、だから救けてあげたいからというのも理由に当てはまる。しかし緑谷から感じ取れるのはそこだけじゃなかった。

 

では一体何が彼を、緑谷出久を動かすのか?

 

 

 

「ぐっぅぅ……!!」

 

緑谷は握れなくなった指を、口に咥えて無理やり動かし、個性を撃つ。

 

(彼のようになりたい、その為には1番になるくらい強くならなくちゃ…)

 

 

君に比べたら、些細な動機かもしれない。

 

 

「お前……なんで、どうしてそこまで……」

 

「応えたいんだよ!!」

 

「!?」

 

「なりたいんだ……笑って、笑顔で、人を救ける憧れのカッコいい人に…僕も()()()()んだ!!」

 

 

緑谷の威迫に、轟は言葉を失っては、たじろぎ、幼い頃の自分が脳裏に浮かんだ。

緑谷は先ほど手の指を口に咥えて無理やり動かしたせいか、口元には血がべっとりと付いている。

 

「だから全力で皆んなやってるんだ!!」

 

ゴンッ!!

 

「っ!!」

 

渾身の頭突きを食らった轟は更に後ろにたじろぎよろめく。

緑谷も頭突きをして頭にダメージがあったため、よろめきながらも体制を整える。

 

「境遇も、決心も、何から何まで僕には計り知れたものじゃないし……とてもじゃないけど背負えるものじゃない……!!でも…」

 

顔を上げて冷え切った轟を見てこういった。

 

 

「皆んな本気で戦ってるのに、君だけ本気出さずに半分の力で勝って、完全否定なんてフザけるなって今は思ってるよ!!」

 

その言葉を聞いた轟は、忘れてた記憶が少しずつ頭の中に蘇るように浮かんできた。

 

 

『立て焦凍。こんなものではトップヒーローは愚か、忍の力を持つ敵や雑魚なチンピラにすら勝てんぞ』

 

異常とも思える父親の、余りにも厳しい訓練を受け、腹を抑えながらゲロを吐く轟。そこへ…

 

『もう…!やめて下さいあなた!まだこの子は、焦凍は五つですよ!?』

 

母親が庇うように前に出て、轟の背中を優しく撫でエンデヴァーにそう言った。しかし…

 

『もう五つだ!!お前は邪魔をするなぁ!!』

 

バチン!!と拳を握りしめ母親を殴る父親。轟は泣きじゃくりながらその光景を見てるしかなかった…

 

 

『良いか?焦凍よ……お前は兄さん達とは違う、これまでにない最高傑作なんだ。お前の力でオールマイトを越え、トップヒーローになれ。その為にお前をつくったんだ』

 

『忍の世界には半蔵と言う伝説の忍が今も存在する。ソイツには娘がいて、孫もいる。お前と同じ近い年頃だよソイツ()は……半蔵の力を引き継いだ孫らしいが、まるでお前みたいだな。何せお前は俺の力を引き継いだ息子だからなぁ…』

 

 

 

「うるせえ!!!!」

 

頭の中に繊細に蘇った記憶を無理やり消すように振り、氷を出す。身体が氷に蝕られ、パキパキという音と共に身体が痛く感じる。個性の影響だ。

炎を出して調整すれば問題ないが、轟は炎を一切使わない。そう決めたから、だから氷を出せば出すほど痛くなり、記憶が蘇ってくる。

 

 

『嫌だ…僕嫌だよお母さん……お父さんみたいになりたくない……別に、良いよ……忍なんて超えなくたって…ただの御伽噺じゃん…あんなの……』

 

幼い頃の自分がシクシクと寂しくそう呟き、母親を抱きしめる光景。

 

『お母さんをいじめる人になんてなりたくない……そんなの絶対に嫌だ……』

 

『……でもヒーローにはなりたいんでしょ?いいのよお前は……』

 

ソッと優しく轟の頭に手を置く母は、優しく撫でた。

 

 

 

 

 

轟は動きたくとも動けれない。過去のことを少しずつ思い出し、思うように動けれないのだ。まるで轟自身の過去の記憶が邪魔するかのように…

 

「だから僕が勝つ!!君を越えて…!!勝つんだ!!!!」

 

喝を入れるかのように、緑谷は渾身の一撃を叩き込む。そのことにより後方に吹き飛ばされた轟は、またもよ頭の中に記憶が蘇ってきた。

 

それは…

 

ある日の夜、轟は偶々起きてしまい、トイレに向かっていた。その時に見たのは、台所にて母親が電話で誰かと話してたのだ。

『お母さん、私もう……ダメ…耐えられない……変なの………子供達が日に日に………あの人に似てくる……特に焦凍の…あの子の左側が……時折とても醜く思えてしまう…!!』

 

(え?)

 

それを聞いた轟は思わず扉を開けた。

 

『私もう…育てられない……ううん、違う。育てちゃダメなの!!!もう私が私じゃ無くなっちゃうの!!!』

 

轟は恐るおそる声を振り絞った。

 

『お母さん……?』

 

『!!』

 

お母さんが振り向くとそこには、悲しげで心配している焦凍の顔。それは、父親に似ている左側の顔だけをみつめ、エンデヴァーを思い出し…

母は目の前にあった沸騰した湯を思わず左側の目にぶっかけた……

 

悲劇を産んだ。

 

 

俺は……

 

包帯を巻いた轟は、無表情で、でも何処か悲しげな顔で父親に尋ねた。

 

『……お母さんは?』

 

『お前に危害を加えたので病院に入れた。全く、これからが忙しい時だというのに…何をやらかしてるんだあの()()()め……』

 

『…………』

 

目を大きく開きワナワナと体を震わせ、信じられないという顔で父親の背中を見つめていた。

 

バカ女?だと?優しくて、いつも気にかけ庇い、守ってくれたお母さんがバカ女だと??許さない…許さない……コイツだけは絶対に……そうだ。

 

俺は親父(コイツ)を…

 

『お前の…お前の所為だ!!!!』

 

泣きじゃくりながらそう叫んだ。

 

 

 

久しぶりにこの記憶を見た。そうだ、俺はあの日から父親を完全否定するとそう決意したんだ。

父親を完全否定すること。その事だけを考えてた為なのか、何でヒーローになりたいのか、俺自身忘れちまって、いつしか分からなくなっていた。

俺の心の中にある父親への憎悪は永遠に消えないものだろう。けどそれでも良い、俺はコイツを延々と完全否定する。何せコイツはヒーローなのに、大切な存在を、母を苦しめたんだから…こんなのヒーローじゃないし俺は認めない。こんなのがNo.2なのかって思ってしまうくらい。

アイツはオールマイトを超えるが為に俺を作った。んで俺は受け継いだ親父の力と母さんの力でオールマイトを越える。それがクソ親父の狙い…だから俺はそんなのにはなりたくないしアイツの思い通りにはなりはしない。緑谷や飛鳥には言ったし分かってると思うが、俺はまず炎の力を封じてオールマイトと何ら関わりのある緑谷を倒す。そのことで俺は親父を完全否定できる。

飛鳥は半蔵の孫でありながら、伝説の忍の力を引き継いだ。まるで俺と似ていて同じだ。けどそんな飛鳥も緑谷と同じく半分の力だけで勝てば、確実に父親を否定できると思ったのだ。二人相手に半分の力で勝てば問題ない……奴へ反逆することが出来る。

だからあの二人を呼んで全て話したのだ…なのに…なのに……

 

(なのに…なのに…!!どうして!!!)

 

いつしか、怒りの表情に染まっていた。

 

どうして飛鳥に続き緑谷も、そこまで俺を本気にさせるんだ?炎を使わせようとする?

最初あの時飛鳥の言葉には少し怒りを覚えたが、アイツはあんな性格だ。まあこんなヤツだから余り気にしなくても良いかと思い、対して気に掛けてはなかった…だが、緑谷も飛鳥に続き同じことを言った。

 

 

『全力でかかって来い!!』

 

 

意味がわからない…どうしてそこまでして俺に突っかかる?お前ら二人に俺は何か変なことでもしたか?気に障るような事でもしたか?俺の家事情も分かるはずだ、これ以上俺の事情に、俺の問題にズケズケと他人が割入らないでくれ……

 

「分からねえな……」

 

地面に転がり倒れた轟は、なんとか立ち上がろうとする。

 

「お前らもう知ってるだろ……?俺の問題を…事情を………それなのに、クソ親父を完全否定することをなんで止めようとする……?」

 

よろめき、フラフラと立ち上がる。

 

「俺は…アイツを…」

 

その時だった。

 

 

 

 

「君の力じゃないか!!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

この先のことをいつの間にか忘れてしまっていた。どうして俺がヒーローになりたかったのか…ふと脳裏に浮かんできた。

 

『個性というものは親から子へと受け継がれていきます。しかし…本当に大事なのはその繋がりではなく、自分の血肉…自分である!と認識すること。そういう意味もあって私はこう言うのさ!』

 

母と一緒にあるテレビを見てた。それは…

 

 

『私が来た!ってね!』

 

 

平和の象徴オールマイト。

轟の目は今までに誰にも見せたことのない、笑顔。キラキラと目を輝かせていた。

 

 

ヒーローにはなりたいんでしょ?良いのよ、お前は…血に囚われることなんかない。

忍の力を持たなくても良い、お前はお前の力を持てばいいんだよ。

 

母の優しい言葉が、鮮明になり思い出して来た。

 

 

 

『なりたい自分になっていいんだよ』

 

 

お母さん、俺は……いつの間にか忘れてしまっていた。よりによってこんな、大切な想いを…大事なことを……

血に囚われていて、忘れてしまってた……

 

 

俺は…

 

 

 

ゴオッ!!!

 

瞬間、舞台が一瞬にして炎に包み込まれた。

 

『戦闘に於いて、これからこの先炎は絶対に使わねえ…』

 

その炎の熱は観客たちにまで…

 

「うおっ!?熱!?」

 

「アレは…」

 

葛城は突然のことに驚き腕で熱から守るように防ぎ、斑鳩はその炎を見て固唾を呑む。

 

「アツアツ!?」

 

「くっ…!?アレが……轟の?」

 

雲雀と柳生も葛城と同じく。

 

「……轟くん、炎を使った………」

 

飛鳥は冷や汗を垂らし、信じられないと言う感じではあるが、何処か嬉しくなり…

 

 

そして…その炎をみた轟の父親エンデヴァーは…

 

「っっ!!やっと…やっと!!やっとか!ようやく使ったな!」

 

激しく炎を出しては揺らいで……

 

 

 

舞台では。

 

「あつつ!!」

 

炎に1番近く居た緑谷は、その炎の熱から逃れることなく暑さをその身で実感する。そんな炎の中から…

 

「勝ちてえくせに畜生……敵に塩なんざ送りやがって……どっちがふざけてるかって話だよ………そうだ、やっと思い出した……」

 

その炎はやがて少しずつ止み、顔が見えてきた。身体に炎を纏い…

 

 

「俺だって…ヒーローに!!」

 

 

轟の今のその顔は、涙を流して、幼い頃オールマイトのテレビを観てる時に見せた笑顔と重なり、自分がなぜヒーローになりたいのかを思い出した。

 

「………すご……い!!」

 

凍てつく冷たい轟の氷を、炎が優しく溶かして…

 

 

 

「やっと己を受け入れたか焦凍おおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

瞬間。エンデヴァーは席に立ち上がる。

 

「そうだ良いぞ!此処からがお前の始まりだ!!やっと俺の力を使ったなぁ!!」

 

その声は会場全体に大きく響いた。

 

「お前は俺の血で俺を超えていき!お前は俺の野望を果たせ!!!」

 

「あの…人……!」

 

興奮する余り自我を忘れてるエンデヴァーの言葉に、それを聞いた飛鳥は睨みつける。

 

 

だが焦凍は振り向かず、むしろお前など視界に入ってないと言わんばかりに…緑谷をジッと見つめている。

 

『…エンデヴァーさん……来てたんだ。あの〜……一度に突然のことが多すぎて実況もクソもないんだけど〜〜…とりあえずこれだけ言わせて?親バカなのね?親バカ……エンデヴァーさんと付き合い短いからあの人があんなキャラだとは思わなかったぜ………よく喋るのね…』

 

『……』

 

流石に今のこの状況では実況もクソもないのか、あのマイクですら引いている。相澤はほぼ無口だ。

 

「………なに、笑ってんだよ……」

 

轟は腕で涙を拭きながら、笑顔を見せる緑谷にそう言う。

 

「お前……イカれてるよ……こんな状況で、怪我も大分酷いのに…笑ってるなんてさ………可笑しいよお前……

 

 

もうどうなっても知らねえぞ…」

 

 

その瞬間、二人は本気を出した。特に轟は初めて…

緑谷は身体全身にワンフォーオールの力を全て溜め、轟は炎と氷を全力で出す。

舞台はほぼ氷で覆われ、緑谷は真っ直ぐ突っ込みワンフォーオールの全ての力を叩き込む。

 

(この一撃で!全てを決める!!!)

 

たとえ己の身が持たなかったとしても、この戦いだけは負けられない。お互いの威迫がぶつかり合う。

 

「まずい!ミッドナイト!」

 

「これは…!」

 

これ以上やるのは危険だと察した二人。セメントスは個性で舞台のコンクリートを操り壁を作り、ミッドナイトは極薄タイツを腕の部分だけ破り香?らしきものを出す。

 

 

緑谷の拳が、轟の炎がコンクリの壁にぶつかり合う前に、轟はふとあることを思い出した。

 

 

『全力でかかって来い!!』

 

 

飛鳥と緑谷の二人の言葉が積み重なる。

 

「緑谷…」

 

思い出す前までは、腹立たしく、ムカついてしょうがなかった。だけど今は違う…

今の轟の心は…

 

「ありがとな」

 

感謝で満ち溢れていた。

 

 

二人の力がぶつかり合い…今。

 

 

ドガアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァンン!!!

 

 

舞台が白い煙に包み込まれ、その煙は爆発するように広がり、観客席にまで届いては吹き飛ばされそうになる。強い衝撃波と散々冷やされた冷気が瞬間的に熱っし、張した事によってこの現象が起きてる。

 

「なにコレェ!?」

 

峰田は吹き飛ばされそうになるものの、障子に足を掴まれなんとか吹き飛ばされるのは免れた。

 

「ふえええぇぇ〜〜!!冷たいよ〜!はっ、ハッ…ハックション!!」

 

「雲雀!俺の上着を着ろ!風邪を引くぞ……な、なんなら…お互い抱き合って……」

 

「こんな時になに言ってんの!?てか本当に寒!風邪引くってのまじで!」

 

雲雀は突然の寒さのあまりくしゃみをし、それを見た柳生は顔を真っ赤にし自分の着てた上着を脱いで着させては、鼻血を出して抱きしめようとする。そんなやりとりを身近で見てた耳郎は思わずツッコミを入れる。

 

「おっと、紅茶が溢れてしまう……」

 

謎の男は優雅に紅茶を飲むのをやめて、白いマントを取り出し身につける。

 

 

「凄いな…何十層もの硬いコンクリを固めたのにああも簡単に壊れて……どれだけ威力が高いんだか……」

 

セメントスは冷や汗を流してそう呟いた。

 

『なんなんアレ?なにが起きたの?ヤバくね?俺さっきの爆発みたいなの起きて思わずひっくり返っちゃっては頭打って痛いんだけど……』

 

『それは知らねえ…』

 

ひっくり返って頭を打ったマイクがそう言うと、相澤は知らんがなと言わんばかりに呆れてため息をつく。

 

(しかしまあ、轟の炎は俺も初めて見たな…)

 

相澤は静かに心の中で呟いた。

 

 

 

「………」

 

白い煙がやがて消えていき、舞台が見えてきた。その光景は…

 

人影がただ一つ。もう一つの影が見えない…そして場外からは足が見えた。その足は…

 

「………」

 

とうとう気を失い、壁にもたり倒れた…緑谷出久の姿であった。

 

「「「緑谷(デク)くん!」」」

 

応援席の飛鳥、お茶子、飯田は彼のその姿を見て思わず叫び出す。

そして舞台がやがて晴れ、見えてきたのは言うまでもない。この勝負に勝ったのは誰なのか、この舞台に立っている人物が誰なのか。それは…

 

「ハァ……はぁ………」

 

『緑谷出久場外…よって、轟焦凍!第三回戦進出決定!!!』

 

 

轟焦凍の勝利。




はい、ということで轟が勝ちましたね!
そしてヒロアカの人気投票、爆豪勝己一位!!
そして閃乱カグラにて投票結果は、やはり…あの子がダントツ一位!!

爆豪「はっはぁーーー!俺が一位だ!完膚なきまでのなぁ!!」

飛鳥「ふわぁ〜…いいなぁ、爆豪くん一位なんだ羨ましいなぁ〜」

緑谷「ほ、本当に一位になるなんて凄いや…」

焔「わ、私は…私は………」

轟「あんたは圏外だったな、俺は三位に落ちてしまったけどな…」

焔「うるさい煩い!人気投票がなんだ!!強ければ問題ない!」

日影「せやで、焔さんのいう通り一理あるな」

焔「……日影、お前が言っても説得力が……」

日影「ん?何でや?というかどうしたんや焔さん?」

注意、日影二位。

未来「上がったり下がったりね!」

常闇「しかし俺たちんところには原作以外のキャラが投票されてるぞ」

柳生「ピカ◯ュウにロック◯ンとかな」

上鳴「しかも道具とかにもな、爆豪のコスチューム道具が多いよな」

詠「というより、私たち此処に出ても良いのですか?いくら順位が上だからと言っても、私たちは悪忍ですし……いえ、今は……」

斑鳩「まあまあ詠さん、年始ですし良いではありませんか」

お茶子「閃乱カグラのPBSに僕のヒーローアカデミアは二期が始まるし、なんか凄いよね!」

飯田「ああ!しかもPBSだと原作では出なく、ソシャゲのキャラが3人出てくるそうだ!」

詠「お金持ちは容赦いたしませんわ〜♪」

春花「ちょっと詠ちゃん落ち着きなさいよ……あれ?下僕の峰田ちゃんは?」

上鳴「峰田は…」

峰田「うおあああぁぁあああぁぁぁああああああ!!!ザケンなぁ!!!!!!畜生がああぁぁぁぁあああぁぁぁ!!」

峰田実 39位


裏では…

漆月「死柄木は順位上がったけど誰も触れてくれないね…」

死柄木「………」

黒霧「し、死柄木弔……年始ですし気持ちを切り替え落ち込まずに行きましょう…」(汗

漆月(物凄く便利で1番死柄木の側にいるのに誰にも順位に触れられない黒霧って……以前の順位って物凄く下だったんだね……)

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