光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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はい!今回もいいペースで投稿できた!
思ったことがあるんですけど、雪泉の祖父って黒影じゃん?常闇の個性の名前、黒影じゃん?まあ黒影と書いてダークシャドウと読むんだけど…被ってる。
あと言い忘れてましたが50話突破しました!いやぁまさか此処まで来れるとは!嬉しいものです!ジャンプみたいにセンターカラーみたいなものとか出しましょうかね?勿論自分で書いた絵ですが…


51話「恥じるな頑張れ叢!」

場所は変わり…

 

「てやぁっ!」

 

「ふんっ!」

 

飛燕を扱う斑鳩、それと対峙するは般若の面を付けてる叢。雪泉と同じく月閃の3年生だ。

斑鳩の飛燕と叢の鉈と槍の二刀流がぶつかり合い、目にも止まらぬ斬撃の速さで閃光が走りだす。一閃が無数に描かれ、少しでも近くにいるだけで小刻みにされそうなその領域は、入ることを許されない。

 

「中々やるな…」

 

「貴方もです…!」

 

一瞬も気が抜けない。少しでも気を赦せば首を持ってかれる。隙を見せれば其処で終わりだ。それ程までにこの叢という女性は強い。

 

冷や汗が滴る…

 

防戦一方、だが叢も斑鳩と同じくダメージを与えれない。斑鳩と叢の実力は同じだということだ。流石は同じ三年というだけがある。しかし、斑鳩は思った。この一瞬の気の引けない状況のなか、何故彼女は面をつけたままなのだろう…と。

面を付けていれば多少、視界が狭まり邪魔で見えなくなる。なら面を取って戦った方が良いに決まってる。せめて戦いの時こそ面を取れば良いのに…

 

(ん…?いえ…この人……何処かで?)

 

斑鳩は一つの疑問が心に引っ掛かっていた。叢と呼ばれるこの彼女は、何処かで会ったような気がしたのだ。最初初めて見たときは少しの違和感はあったが、刀を交わすにつれて次第に心に引っかかっていたのだ。

一方、叢は…

 

(我は二刀流使いとはいえ……一つの刀で此処までやるとは……)

 

叢は心の何処かに相手へ底知れぬ強さを感じた。もし自分が一つの武器だけで戦っていたら間違いなくやられていただろう…そう思ったのだ。それに、このままでは埒が明かない…不毛な消耗をするだけだ…そう判断した叢は一旦距離を取った。

 

(一瞬の隙を突けば我の勝利…!)

 

「秘伝忍法!」

 

「しまっ!?」

 

距離を置いた意味を理解した斑鳩、しかしその時にはもう既に遅かった…

 

「行け…【小太郎】!」

 

片手を上げて名前を呼ぶと、白い狼が何処からか現れ、牙を剥き出しジグザグに前方へと疾走していく。斑鳩は避けようとするもなす術も無く、叢の秘伝忍法、小太郎の攻撃を食らった。

 

「クッ!」

 

多少身体に傷が見受けられるが、それでも怯むことなく冷静に対処するべく隙を見せない斑鳩は距離を詰めて飛燕を向ける。

 

「小太郎の攻撃を受けてなお、隙を見せることなく立ち向かうとは…やるな斑鳩…だが、()()()()な」

 

「え?」

 

「秘伝忍法…!【影郎】!」

 

此処で又しても秘伝忍法を二回連続で繰り出す。小太郎の横に、白とは正反対の黒色の狼が現れ、二匹の狼は叢の合図で襲いかかる。斑鳩は又してもなすすべも無く暴れ回る二匹の狼の攻撃を受けてしまう。

流石の斑鳩も先ほどの秘伝忍法の攻撃を食らってしまった為か、今のでかなりの深傷を負ってしまった。

 

「つあッッ!?!」

 

忍装束がボロボロになり、膝をつく。飛燕を杖代わりとして立ち上がろうとするも、体の節々が悲鳴をあげる。ろくに立ち上がることが出来ない。

 

「まさか…ここで……」

 

ジャキ…

 

顔を上げてみると、叢が既に目の前にいた。それも、血塗られた巨大包丁を片手に持ち、斑鳩に向けている。

 

「これで、我の勝ちだ」

 

「うッ…」

 

安堵の息をつく叢はそう言うと、斑鳩はガタっと肩を落とした。勝負が終わった時の開放感が全身に伝わり、緊張してた身体の筋肉が解きほぐされる。

 

終わった、勝った。これで黒影様も喜んで貰えるはず…

 

そう思った時だ。

 

「なあアンタ」

 

「?」

 

声を掛けられたので振り向くと、一人の少年が歩み寄ってきた。その少年の名は轟焦凍。雄英体育祭で名を上げたあのNo.2ヒーロー、エンデヴァーの息子だ。この戦いが終わったのを見計らって声を掛けてきたのだろう。しかし声を掛けられたからには無視するわけにもいかない…

 

「なんだ…?」

 

サッ…

 

「「!?」」

 

突然、唐突すぎる彼の行動に、斑鳩と叢は大きく動揺した。何故って?轟は無言で叢の面を取ったからだ。

見てみると、その素顔は般若の面とは全くの正反対、とても可愛らしい女の子と思わせるものであった。その素顔を見た二人は「あっ」と声を漏らすと、叢は性格までも変わったのか、恥ずかしくてみるみると顔を赤く染め、目から涙を浮かべ、やがて手で顔を覆う。

 

「み、み、見ないで下さああああぁぁぁぁいいいい!!!」

 

羞恥心が激しい叢は先ほどの声とは別人のような、可愛らしい声を上げる。恥じらう乙女とは正にこのことだ。インパクトが強すぎて、斑鳩はともかく、面を取った轟本人も動揺している。

 

「お、おい…アンタやっぱり…」

 

「見ないで見ないで見ないで!我の汚い顔を見ないで下さい!目を汚してしまってすみませんすみません!!」

 

「なあ…アン「穴はどこ?穴はどこにあるの?!穴があったら入りたい!!」なあ…「見ないでええぇぇ!!恥ずかしさの余り死んでしまいます!!面を、面を返して下さい!!」……」

 

(まず会話が出来ねえ…)

 

轟が質問しようとするも、叢の言葉に全てが無に掻き消されてしまう。埒が明かないと思った轟は、面を差し出す。それを手で覆い隠してる指と指の間の隙間から面をみると、奪うかのように乱暴に面を取り戻し、再び面をつける。

 

「…ふぅ」

 

これでようやく一安心。と叢は息をつくと、轟を睨みつける。しかし面をつけている為轟自身、睨まれてるとは思ってもいないし分からない。

 

「貴様、よくも我の面を…」

 

「ああ、スマンな…まさかあんなに動揺するなんて思ってなかったよ」

 

面を取るだけで此処まで豹変するとは、轟も予想外だった。そしてその後の豹変も普通に変わりすぎて若干驚いている。

 

「……まあ良い、で?我に何の用だ?」

 

「ああ、アンタに聞きたいことがあるんだけどさ……

 

アンタってもしかして、()()()()の忍だよな?」

 

「「!?」」

 

轟の唐突な発言に、二人は驚きを見せる。斑鳩はともかく、お面を被ってる叢でさえ分かるほどに…

斑鳩は「本当ですか?」と尋ねて見た。

斑鳩の家は鳳凰財閥。そして大狼財閥は斑鳩の住む財閥とはライバル関係なのだ。何でも忍が派遣されたという噂は聞いていた。

ここで斑鳩は全て理解した。叢が大狼財閥が派遣した忍だと言うことを……忍を派遣するのは上層部だけでなく、その気になれば大狼財閥と言った金持ちや、裏の社会の極道と呼ばれるヤクザ者にだって派遣されることもある。遣われる忍は場合や立場によっては善忍と悪忍とで分けられるが…

因みに斑鳩は叢と初めてあったと言うのは、交流パーティーの時だった…斑鳩は思い出したのだ。財閥の交流パーティーで、彼女は綺麗なドレスなのにその般若のお面を被ってて、どんな事であろうとも肌身放さずお面を外さない伝説のご令嬢……今や都市伝説だとも言われていた彼女は、面を付けたままダンスをし、周囲の者のつま先というつま先を潰し、終いにはシャンパンタワーに突っ込みお尻が丸見えになり醜態を晒した大狼財閥のご令嬢、それが叢だ。

 

「まさか、頭隠して尻隠さずの叢さんが…忍だったなんて…」

 

「斑鳩、その呼び方はやめろ…昔のことなど思い出したくもない…」

 

斑鳩が驚くのも無理はない…そして勿論、叢は突っ込みを忘れない。それに叢にとってその時の事件は黒歴史だ…思い出したくもないのも当然だろう…

 

「しかし…何故分かった?見向きもしなかったお前が…」

 

叢の言葉に轟は思った。見向きもしなかった…というと、それは昔の自分のことだと…当時その時の自分は父親への憎しみに囚われ、完全否定することだけを考えていた。だからその時は誰かを見ようとなんて思ってもいなかったし、正直言って誰とも関わりたくなかった。

大狼財閥に対しても轟は関わりを持っていた。何故なら鳳凰財閥と同じく、No.2ヒーロー、エンデヴァーが社交パーティーとして招待したからだ。叢が月閃の試験をパスで通り、更に選抜メンバーとして入る事が出来た為、祝福として呼んだというが、焦凍には分かっていた。それも父親の私利私欲、オールマイトを超えるという欲望がの為に、忍の訓練を聞き出す為だったということを……

その時だったからなのか轟はつい顔に出ていたらしく、叢は偶々『見てない』轟を見たのだろう。

 

「あの時は…色々アレだったんだよ……アンタは一目見て印象強かったから、頭の中の何処かに、ほんの僅かに覚えてた……んだと思う」

 

自分の家事情など、簡単に言えるものではない…緑谷と飛鳥にはこのことを言ったが、アレは時間と立場の問題だった、話さざるを得なかったし、納得してもらう為にワザワザ呼んで話したのだ。

 

「だろうな……だが、今は随分と変わったな…」

 

叢の言葉に轟は「やっぱりか…」と心の中で呟いた。緑谷と飛鳥に続き、叢にまで言われるとその言葉が出るのも仕方がない。しかし、あの日以来全然会ってないと言うのによく分かったな…と轟は思った。

 

「昔のお前は……何故だか知らんが、何かを憎んでたように見えた。我々と同じ…」

 

「ん?我々と同じ…?」

 

引っかかる言葉に、轟は目を丸くする。

 

「……なんでもない」

 

叢はそう言うと直ぐに首を横に振った。

 

(……轟焦凍、お前は…父親への憎しみを超えたと言うのか…?)

 

叢は知っている。轟が父親を憎んでいたことを…彼に何があったかまでは知らない、お互い面を向き合って話し合ったこともない、だが轟が父親を否定していたことは知っていた。

それは何故か?簡単だ、自分も、自分たちもそうだから…特に大狼財閥なんかもその一つだ。

叢は、大狼財閥の所為で()()を奪われたのだ。それは、雪泉の祖父にして選抜メンバー五人を育ててくれた人物、黒影との時間を…大狼財閥はライバルである鳳凰財閥を真似たのである。

鳳凰財閥は忍を雇っていた、しかし大狼財閥には忍が居なかった…だからこそ、()()()で両親を亡くした叢を忍として引き取ったのだ。

そんな大狼財閥に叢は怒りを覚えたし、許す事が出来なかった。しかし逆らうことも出来なかった…何故なら黒影と四人の仲間たちの命運を握られていたから…黒影は人には言えぬ事情を抱えており、ある事から忍の存在から逃げているのだ…だから逆らう事が出来なかった…もしそうなれば、黒影どころか、四人とバラバラになってしまう、それが嫌で仕方なかった。

そんなやり取りの中、悩んでいた時に、轟の存在を知ったのだ。

次に、憎しみについて…

雪泉の言葉から察するように、叢含めて月閃の選抜メンバーの皆は悪を心底憎んでいる。いや、悪という存在を許さない…それが今の彼女たちだ。それは勿論黒影も…

叢は悪を憎んでいるせいか、それとも大狼財閥によって時間を奪われたせいか、自然と憎しみで動いてる人が分かってしまうのだ。だからなのか、轟が父親を憎んでいることが分かったのだ。それがどう言った経緯か知らない…確信はないが、少なくとも自分と同じく何かに苦しめられた…と言うことだけは何となく分かった。

 

「あの、叢さん…」

 

考え事をしてると、此処で声をかけられた…それは先ほど負傷を負い動けなくなってた斑鳩だった。斑鳩は体はボロボロだが、既に立ち上がる位には回復していた。しかし敵意を感じられない、恐らくもう戦う気はないのだろう…

 

「貴方が大狼財閥であることは分かりました…いえ、寧ろ()()()です…」

 

「なに…?」

 

その言葉に心当たりのない叢は、首を傾げる。一体何が好都合なのだろう?

 

「…大狼財閥である貴方にお聞きしたいことがあります、貧民街の都市再開発計画はご存知ですか?」

 

「ああ、勿論知っている」

 

「でしたらお願いします!あの計画は中止にして下さい!!」

 

貧民街都市再開発を止めさせるために、斑鳩は叢に頭を下げる。あの斑鳩が頭を下げるとは…と、叢は内心少しだけ驚いた。

 

「あそこに住む人たちは他に行く場所がないのです!」

 

「お前が何故、貧民街の者を心配する?今まで近くにいたにも関わらず、お前たち鳳凰財閥は見て見ぬ振りをしていたではないか?それを今更…関係ないはずだ」

 

「……わたくしの()()の生まれ故郷が、貧民街なのです…その友人は恐らくまだ、開発計画のことは知りませんが……」

 

「………なるほど、おいそれと事情は分かった…」

 

叢は思い当たる節があるのか、小さく頷いた。そのことに安堵の息をつく斑鳩。しかし…

 

「だが、敗者が強者に要求するのは道理に反する…我に何かを要求したければ、まず我に勝つことだ…」

 

「…っ、仰る通りですね、返す言葉もありません……」

 

斑鳩は叢に返す言葉もなく、歯を食いしばり現状を打開出来ないままその場に佇むしかなかった。

 

「では、さらばだ…」

 

「……」

 

叢はそう言うと、席を向けたまま去っていった。その後ろ姿を、近くにいた轟はジッと見つめて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

叢は歩く中、斑鳩の言ってた貧民街について心に引っかかっていたことがあった。それは自分も同じ貧民街出身だと言うことだ…大狼財閥は都市再開発計画を実行しようとしている。つまり、それは自分の故郷を消そうとしているのだ。斑鳩の言ってた友人とは一体誰なのか知らない…だが、これは大狼財閥の指令…いわば忍でいう忍務…忍は与えられた忍務には忠実に従わなければならない…

非情だと言われても仕方がない…何故なら、それが忍なのだから。

 

「貧民街か…懐かしい……昔はよく我の友人と遊んだことがあったな…」

 

今思えば懐かしい…ドブまみれになってその子と一緒に帰って来たことを…あの時の我は幸せに満ちていた…そう、あの事件までは……

我が小学五年の頃、両親は亡くなってしまった…父親の知り合いからは交通事故と言っていたが、子供の我でも嘘だと察しがついた。我の両親は交通事故ではなく、忍の忍務によって死んでしまったのだ…それも悪忍の抗争により…

我はショックのあまり、心を閉ざしたのだ…小さなゴミ袋を顔に被り…

それを見たある友人は、我のことを思って気遣ったのか、小さなビニールの袋をつなげて顔を覆い被れる大きさに作ったのだ。しかしその友人も今はどうしてるか分からない、もしかしたらまだ貧民街にいるのかもしれない…そう思うと少々心が苦しくなる。

 

……貧民街といえば昔小さい頃、まだ小学生ですらなかった頃…貧民街で一人ぼっちの子供がいたな…

詳しくは覚えていないが、その小さな子供はよく泣いていた…一緒に遊ぼうと友人と一緒に手を差し伸べ誘おうとしたが、何故か両親に止められたことがあった。その子の姿はあまりにも可哀想だったから印象があるものの、もう既に昔の話、それに長い付き合いでもない、ほんの少ししか見たことがない為、うろ覚えであるが…今思えばあの子のような小さい子供はどうなるのか?と、時折思ってしまう。

貧民街がなくなってしまえば、そこに住んでた人たちは間違いなく居場所がなくなってしまう…

しかしこれは忍務でもある…忍は忍務を全うするもの…

だから叢は思うのだ、これは正義なのか?と…悪を滅ぼすことも正義だが、忍務をこなすこともまた正義の一つだ、この世の悲しみをなくすことが黒影様の願いであり、我らの悲願。

どうすれば良いのだ…?

 

「………」

 

悩む面のお嬢様は、深く考え込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、雲雀と爆豪に泣かされた美野里は、既に勝負は終わっていたらしく、今は何をしてるのかというと…

 

「待て待て待て〜〜!はいタッチ!」

 

「ふぇっ!?美野里ちゃん速いね〜!」

 

「うん!鬼ごっこは得意なんだよ♪」

 

鬼ごっこで遊んでいた。因みに一応彼女たちは高校一年生です。小学生ではありません、ちゃんとした立派なJKであります。

勝負は何方が勝ったというと雲雀が何とか勝つことが出来たらしい。だがもしあと少しで気を抜いていたら完全にやられていたらしい。しかも美野里自身はまだそれ程本気を出していないらしく、何方かと言えば早く勝負を終わらせたかったらしい。遊べれば勝負などどうでもよかったのだ。

美野里は他の四人とは違い、ただ単に皆んなと一緒に幸せに遊べればそれで良いと、一番平和的な考えを持っている。

 

「それにしても、本当にこのまま遊んでて良いの?」

 

「うん!美野里はいつも修行が終わったら遊んでるもん!それに、美野里負けたけど、他のみんなは強いから、だから大丈夫だもん」

 

美野里からは勝負に負けた悔しさなど感じられない。

 

「そ、そうなんだ…なら…良いんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、雪泉との戦いでは…

 

「きゃあっ!?」

 

「てやぁ!」

 

飛鳥は雪泉に押されていた。無数の氷の刃が貫くかのように飛鳥に襲いかかる。飛鳥はなんとか回避することに成功したものの、避けきれないものは刀で斬り壊した。キラキラとした美しい氷は破片として砕き輝いている。

雪泉の遁術は氷属性。そして氷結といったものを操れる。即ち轟に似た能力だ。個性でもないのに個性のように使える雪泉は、超人社会としても普通に溶け込めれるだろう…

 

「す、凄いや…あの子の雪泉さんって人、轟くんと同じ能力だ…!忍は個性がない代わりに秘伝忍法が主体となってるけど…雪泉さんのような個性的なのは見たことないぞ…!いや、蛇女の焔さんっていうかっちゃん並みに怖い人だって轟くんの炎のように操ってたし…となると個性的な忍もいるんだ…でも雪泉さんの場合よく見たら氷と風を操っている……吹雪って感じかな?雪じゃなくて氷だけど…でも本当に凄いぞ、雪泉さんは忍として活動してる訳だから、もしかしたらヒーローに装って活動することだって出来るんじゃ……となるとなると、表の社会にも通用するって感じかな?しかも氷と風の二つって個性で例えると轟くんと同じで反対にもなる…てか使い道が物凄くあるぞ…対人のみならず、氷で熱を冷やすこともできるし…火災などの災害も簡単に…!つまり救助にも向いてる…!凄いスゴイこれは大発見だ!!やばいどうしよう…ブツブツブツブツ」

 

緑谷は体育祭ぶりにブツブツと呟く独り言をつぶやいていた。呟きながらヒーローノートを手に取り一心不乱にかぶりつくように書いている。緑谷は相手への推測、観察、情報集めなどを得意とする。にしても物凄い呟きだ…

 

「おいクソデク何ブツブツと呟いたんだ死ねやカス!!」

 

「うわぁっ!?聞こえてたの!?」

 

「それとデカ乳女!!何押されてやがる!ぶっ飛ばすぞ!!」

 

爆豪は大人数の忍学生と対峙しながらも二人に怒りをぶつける。爆豪の動きも相変わらずクレイジーで隙のない動き方だ。次々と技を繰り出していく。特に一番驚いたのは胸倉を掴んで顔に何度も爆撃した後向かってくる相手に爆破して投げて一点集中爆破したのは驚いたけど…

爆豪は戦うたびにセンスの光る男だ、敵にしたらと考えるだけで恐ろしい。しかし爆豪も大人数と相手してるせいか、息が切れてきてる。きっと体力的な問題なのだろう。一瞬の気も引けず、最新の注意を払いながら個性を使って駆使している訳だし、精神的な体力も削れているのだろう。

 

「大分減ってきたなぁ…USJの雑魚敵と同じ感じか?」

 

爆豪については問題ないだろう…

問題なのは飛鳥の方だ…

 

「秘伝忍法!【半蔵流乱れ咲き】!」

 

「秘伝忍法!【樹氷扇】!」

 

飛鳥は二つの刀を手にして斬撃を繰り出し、高速で回転する。雪泉は二つの扇を広げ、舞うように回転する。回転すると氷と風、氷風が中心に渦巻く。氷の破片が飛鳥に襲いかかるも斬撃を繰り出し相殺する。そして飛鳥の回転と雪泉の渦巻く竜巻、二つの力が衝突する。激しい力が衝突し合い、その場の皆も衝撃で吹き飛ばされそうになる。まるで体育祭での緑谷と轟の戦いを思い出させる光景だ。

 

そして二つの衝突する力の衝撃により、空気が爆発するかのように、大きな爆発を生みだした。冷たい空気の爆発が、皆を包み込む。白い靄が晴れると…そこには、飛鳥がボロボロの状態で倒れていたのと、雪泉が立っている姿であった。

 

「飛鳥さん!?」

「デカ乳女!起きろや!」

 

二人は同時に声を掛ける。飛鳥はなんとか意識こそあるものの、体が動かない様子だった。

 

「うぅ…」

 

「どうやらこの勝負、私の勝ちで宜しいですね?」

 

雪泉は氷の剣を作り出し、飛鳥に向ける。氷の剣…こんな使い方もあるのか…

 

「これも、お爺様と、そしてこの世からの悲しみを消すためです…」

 

「お、お爺様?」

 

「…」

 

お爺様、飛鳥がその言葉を口にした途端、雪泉の表情が一変する。

 

「もういいです…トドメを刺します…お覚悟!」

 

氷の剣が振り下ろされようとする。

 

「このっ…!!」

 

緑谷は飛鳥を助けるべく駆けつけようとする。しかし距離があるせいか間に合わない。このままでは飛鳥は死んでしまう。

その時、

 

パキイィィン!

 

「「「「!?」」」」

 

飛鳥、雪泉、緑谷、爆豪の四人は突然氷が現れたことに驚く。なの氷は地面に這うように凍りつき、氷結が飛鳥を助けるかのように転がしていく。

 

「もう、そこまでで良いだろ?」

 

氷を出す。この場には雪泉しか存在しなかった…しかしこの氷は決して雪泉のものではない、この氷は、先ほど大狼財閥のご令嬢である叢と話してた、轟焦凍のものだった。

 

「「轟くん!?」」

 

飛鳥と緑谷は轟の名を叫ぶ。「舐めプが…!」と爆豪は轟の出現に嫌気が刺したことをは放っておこう。

 

「なんですか貴方は?邪魔しないでください」

 

「悪いな、目の前に困ってる奴がいた」

 

雪泉は邪魔されたことに怒りを覚え、轟を睨むが、轟は自分のやったことが間違ってると思ってない、むしろ正しいことだと思った為悪気がない真顔だ。

 

「別にこの勝負、もうアンタの勝ちで良いだろ?アンタらは学炎祭を申し込みに来た、なら殺さなくたって勝ちは勝ちだ…もうそれで良いんじゃないか?」

 

「いいえ、そういうわけにはいきません…」

 

「どうしてそこまでムキになるんだ?」

 

冷たい空気のなか、雪泉と轟はお互い抗議する。

 

「決まっています、悪を滅ぼす為です」

 

「悪?飛鳥たちは善忍だぞ?所謂俺たちでいうヒーロー側だ」

 

「悪に関わり、悪に染まった偽善者です…善忍ではありません」

 

雪泉の考え方には苦労する。まるで鋼の意思だ…爆豪は呆れ、緑谷と飛鳥はしゅんとするが、轟は真っ直ぐ向かいあって話し合う。

 

「……なあ、雪泉つったか?悪だのなんだの知らないが…何がそんなに気にくわない?何でアンタ達はそんなに悪を憎むんだ?何かされたのか?」

 

「ッ!」

 

轟の無神経さに苛立ったのか、雪泉は思わず声を張る。

 

「黙りなさい!無神経な所もいい加減にしなさい!貴方に知る必要などない、分かり合えるわけが無いのですから…」

 

雪泉のその言葉には怒気が含まれていた。そして彼女も彼と同じく怒りの導火線に火をつける。

 

「それに体育祭を観ていた際に叢さんから聞きました。貴方、エンデヴァーさんの息子だそうですね?なのに息子である貴方は…エンデヴァーという偉大なるヒーローが父親であるのに、恥ずかしくないのですか?あの敗北を…」

 

ピタッ…

 

轟の体が一瞬停止したかのように止まった。

 

「お前……何なんだよ……今この話とアイツは関係ねえだろ?」

 

轟にとっての逆鱗はエンデヴァーという父親そのものの存在だ。

あのクソ親父のせいで全ての人生が狂ったんだ。母さんも苦しんだ、アイツは、ヒーローなんかじゃねえ。

 

轟は体育祭で憎しみを乗り越えた。しかし雪泉の一言で再び憎しみに火が付く。

 

いいや、落ち着け…思い出せ…あの言葉を…あの時言ってもらった言葉を……これは、俺の力だ。アイツなんて関係ない、だから、血肉なんて関係ないんだ…

 

一呼吸して心を落ち着かせる。そもそもコイツは父親のことを知らない、だからこうして平気で言える。今その気になれば言えるものだが、この話はそう簡単に話していいものではない…

 

「お前なら、少しは話が出来ると思ってたんだがな」

 

「別に話し合いなど必要ありません、悪となった偽善者と関わってる貴方達も既に悪そのものです、雄英も随分と落ちたものです」

 

「学校まで侮辱するかおまえ、相当悪を憎んでるんだな」

 

「当然です、悪こそがこの世界に悲しみを生む元凶なのですから…」

 

「それは本当にそうか?」

 

「…どういう意味です?」

 

「悪だけが、本当にこの世界を悲しませてるのか?そう言い切れるか?」

 

「……何を、言ってるんです貴方は?」

 

「俺は悪以外によって悲しんだけどな…まあ良い、とにかくだ…悪がなくなったとしても、そこには正義もないぞ?」

 

「どういう意味です?」

 

「そのまんまの意味だ」

 

「………まあ、良いでしょう…貴方と議論する気はありません……今回は引かせてもらいます……決着は、後日また…」

 

 

どうやら雪泉はまた此処に来るそうだ…雪泉はそう吐き捨てるように言うと、背中を向け去って行った…

 

 

そして、雪泉と轟にはどこか見えない何かの亀裂が生じた。雪泉のその後ろ姿は、余りにも悲しいもので…




ちょっと表現しずらかったですが、雪泉と轟、かなり関係が悪くなりました。まあ、お互い冷静ですしこう、殴る部分とかないので表現し辛いのも無理はないですけど…
雪泉って、なんとなくイナサっぽいあれだな〜と思いました。こう、轟を怒らすのがね?
しかし喧嘩には必ず和解があるもの、しかしその和解をいつ出すのかがちょっとスランプ気味です!まあ、大体形はできてるんですけどね……

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