光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

62 / 253
え〜、投稿遅くなり申し訳ありません。本当なら昨日投稿しようと思ってたのですが、寝落ちしちゃいました。
それはそうと、今思ったのが、蛇女の話でヒーロー科の生徒…あれ思ったけど全員は流石に行き過ぎだかぁ〜…って今思っています。まあ合わせたのは爆豪と焔が似てるっていうのと、合わせてこれからの話を…みたいな風に思ってたんですけど…まあ、此処からは面白くなると思うんで…!!あっ、ただし焔ちゃんファンは少しお気をつけて下さい。って、私焔ちゃん大好きファンですけどね!


61話「伊佐奈という支配者」

「お前ら全員、俺の部下になれ」

 

伊佐奈はなんの表情も変えず、さも当たり前のようにそう言った。

 

「ぶ、部下って…何よそれ!」

 

「私たちがお前の部下だと…?本気で言ってるのか…?」

 

焔の目つきが更に鋭くなる。焔のこの声を聞いてるだけで四人は分かった、怒りを抑え込んでいると…

 

「当然だ、お前たちは元・蛇女であり、お前は雅緋がいない間に筆頭を務めてたからな……お前らに嘘をついてどうする」

 

「私たちが何でここにやって来たか…知ってるか?お前を倒すためだ…!!」

 

「なら話し合おう、俺はお前らを部下に入れたいだけなんだ。危害を加える気は無い。同じ日陰者として生きて来たお前らなら話し合えばわかる筈さ」

 

伊佐奈は優しげな笑みで焔たちに語り出す…だが、焔は話す気はさらさらないのか、地面を蹴り、既に伊佐奈に飛び掛かっていた。

 

 

「寝言は寝ていえ!!!」

 

「女の癖に、随分と口が荒いんだな」

 

 

焔は六つの刀を伊佐奈に向け、片方の手で、三つの刀で斬りかかる。伊佐奈の表情は先ほどの笑みから一変、呆れた顔で斬りに掛かってくる焔を見つめる。

 

「まず話そう」

 

「ッ!?!」

 

伊佐奈は焔を見つめ、焔は何故か身体に力が入らず、動けなくなった。そして焔の斬撃は伊佐奈に避けられ空振りに終わる。そして、糸が切れた人形のように、その場に倒れこむ。

 

(体が…動かない!?なぜ…?これはもしや、伊佐奈の術か…?!)

 

意識はある、ダメージもない、なんともない…なのに身体が言うこと聞かず、自由に動けない。この現象は一体…術なのか?

 

「焔さん!!」

 

「焔ぁ!」

 

焔が倒れたことで、詠と未来が心配して駆けつけてくる。そんな二人を御構い無しに伊佐奈は少女たちを見つめ再び話を続ける。

 

「会話しよう。言った筈だ、俺はお前らに対し危害を加える気はないと…お互い不毛な争いは避けたいだろ?」

 

「不毛な争い…ねぇ」

 

今まで黙ってた春花は口を開く。それに対し日影は表情こそ表に出してないが、日影のその目には怒りが籠っている。

 

「アンタの野望は知ってるんやで」

 

「妖魔を売るなんて、そんなことが許される訳ないでしょ?それなのによく不毛な争い…だなんて言えるわね」

 

妖魔は忍の血によって生まれた膿のような存在。妖魔はそこらの忍やヴィランのようなレベルではない、即ち脳無のような危険的な存在なのだ。また、妖魔を倒すのが忍の役目…それを、売る。という行為は、忍の道に大きく反していた。例えそれが悪忍でも当然許されるはずが無い。

 

「別にお前たちは忍ではない、なら、忍の掟や存在に縛られなくてもいいわけだ。何もただ単にお前らを部下にしてやるつもりはない、ちゃんと上とは交渉する、それに金もある。お前らの働き次第、金をやろう。そうすればお前たちは忍の存在に追われることなく、金をもらい、自由に過ごせる。どうだ?簡単な話だろ?争う理由もないはずだ」

 

「お金で私たちを……」

 

動けなくなってる焔を心配してた詠は、激しい怒りを燃やした目で、伊佐奈を睨みつけた。詠は知っての通り貧民街育ち、斑鳩のことで金持ちを大きく嫌い、憎んでいた。いや、嫌いなんて生易しいものではない、世界中のお金持ちを根絶やしにするくらい、彼女はお金持ちを憎んでいる。斑鳩が養女だということを知り、考えを改めた詠であったが、ここで初めて、性根の腐った金持ちを目の前にしたのだ。

 

「妖魔を売ってどうするんや?」

 

ここで口を開いたのは、日影だ。妖魔を売って何がしたいのだろうか?戦争か?どっちにしろ止めなければならないが、せめて理由くらいは聞いておこうと日影は質問した。そこに、伊佐奈の野望があることなど知らずに…

 

 

「……改革を作るのさ」

 

 

「改革…だと?」

 

ここで、まだ身動きが取れなくて地べたに倒れてる焔は、眉をひそめて伊佐奈を睨みつける。そういえば、旋風が言っていたな…伊佐奈は新たな改革が必要だと…

 

「……お前ら忍学生なら当然知ってるだろうが…あの平和の象徴オールマイトと半蔵は繋がってるって、知ってるよな?」

 

オールマイトと半蔵は、超人社会の象徴だ。一般人にヒーロー学生や、並みのヒーローは知るはずがない…だが、上級ヒーローや、忍学生は知っている。

 

「ヒーローと忍は同じ…俺もそう思うよ。だからこそ、時に善忍だけでなく悪忍も、ヒーローと手を組むことがある…まあ、悪忍なんてのはヒーローからすりゃあ批判されてる所があるがな……

 

そこでだ、ヴィランと悪忍はどうだ?同じだろ?奪い、騙し、壊し、殺す…正に俺たちじゃないか。そうさ、法を犯して悪事を働く…ヴィランと悪忍もなんら変わらないんだよ…だからこそ…悪忍とヴィランが手を取り合う改革を作るのさ」

 

「「「「なっ…!?」」」」

 

伊佐奈はなんと、ヴィランと忍も手を取り合うという、新たな改革を作ろうとしているのだ。本来悪忍とヴィランは関わることは許されない。また、悪という行事が同じとはいえ、悪忍がヴィランと手を組むことなど、許されるはずがないのだ。例えば、市民や弱気を助け、守るヒーローが、人を殺し、騙し、不幸にするヴィランと手を組むことと同じこと。何故なら…ヴィランの犯罪がより危険的に上昇するからだ。忍という自分たちとは違う存在と手を組めば、『自分たちは強くなれるんじゃないか?』『忍に頼んで人殺しの手伝いをして貰おう』などの、より犯罪的なことを犯すためだ。では忍はなぜ、悪忍という悪の存在が許されるのか…

もちろん悪忍は悪というだけあって、非道な行為をする。しかしそれは、全てが悪い方向ではなかった。例えば、世間には公表されてないヴィランへの始末や、ヴィランに紛れて情報集めをするなどといった、時にヒーローや善忍の為にもなる仕事をこなすことだってある。いわば、悪には悪でしか裁けないものがある、ということだろう。

 

だからこそ、伊佐奈のやり方は、忍の道に反しており、また忍の世界に新たな改革が生まれようとしているのだ。今まで守り続けてきた忍の歴史を、世界を、秩序を、壊していいはずがない。

 

「その為に、まず何が必要だと思う?ヴィランへの交渉…闇市場…そして()()()…つまり…

 

()()()()()のさ…殺戮破壊兵器、ヴィランにとってこれ以上望ましいことはないだろうな…」

 

伊佐奈は考えたのだ。ヴィランへの関わりがダメでも、闇市場なら良いと…闇市場は本来、薬物や密猟された動物、素材など、様々なものが仕入れている。勿論…闇アイテムや、その気になれば悪忍が流通する物など……

 

伊佐奈は思ったのだ。そこに妖魔を売ればどうだ?と…そうすれば妖魔を使って市民や忍を殺し、自ら手を汚さずとも大金が手に入る。こちら側がやったという証拠もなければ、また責められることはないと…正に悪の権化そのものだ。

 

「そ、そんなこと…許されるはずが…」

 

「許す?誰がだ?神か?俺たちは悪だ。悪は罪が許されないからこそ、自由に動くものだろ?違うか?何事にも縛られず、自由にあることこそが悪だ。だが今はどうだ?どうして悪忍が良くて、ヴィランは良くない?なぁ、安息の地を無くし抜忍になったお前らもそう思うだろ?だからこの社会を壊し、革命を作るのさ……」

 

これが伊佐奈の目的だった。妖魔を売る、ヴィランが買う、使う、戦争を起こす、忍の社会の崩壊、新たな改革。焔は旋風の言ってたことが何なのか、ようやく理解した。

これが、伊佐奈の本当の目的であり、今の蛇女が腐敗した原因だということを…

 

「そして、雅緋の言ってた『蛇女の誇りを取り戻す』。それについては俺も大きく賛成だ。そうすりゃあ名が膨れ上がり、蛇女のスポンサーや大企業の関係者も観に来る。そして俺の評価も大きくうなぎのぼり…上層部の人間は俺を中心に褒め称え、新たな忍の統治者となる。そこからだ…改革を作るのは…ありとあらゆる名のあるヴィランに妖魔を売り、戦争を起こし、忍の世界を崩壊に導く。そして…ここ秘立蛇女子学園にヴィランを入れる。ヴィランと悪忍の住処、拠点とする。こんな素晴らしいことはない、分かるよな?金の力で戦力なんざ幾らでも増やせるんだよ。働き次第、報酬もより良くし、金も出す。此方には莫大な金があるんでね、そして新たな改革を作り出す…つまり…

 

 

 

 

 

俺は悪の頂天に立ち、支配者として君臨する。それが、俺の計画だ」

 

伊佐奈は手を広げ、焔紅蓮隊を見つめる。そんな彼女たちは、もはや言葉が出ない。憤怒、殺意、憎悪、様々な感情が心の底から込み上げてくる。

 

「悪は善よりも寛大だ。どんなことがあっても拒まないんだろ?だったら俺のやってることは悪側(こっち)からすりゃあ何ら問題ないはずだ。何か問題でもあるか?何が不満だ?お前らはただ俺の命令さえ聞いてればいいんだ、そうすりゃ好きなように生きることができる。まあ、反逆しようなら迷わず殺すがな。だがまた、俺の命令さえ聞いてれば安心だ……

 

 

 

 

 

 

で、だ…こうして話したうえでお前たちに改めてもう一度言おう、焔紅蓮隊よ、俺の部下になれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が言おうとする前に、誰よりも、まず先に言い出したのは焔だった。地べたに這いずりながらも、伊佐奈を睨み、吐き捨てるように、キッパリと断ると…

 

 

 

「そうか」

 

 

 

ドッ!!

 

 

「がッ!!?」

 

「「「「ッ!?!」」」」

 

なんと、伊佐奈は倒れてる焔の顔面を思いっきり足で蹴ったのだ。焔は動けないため、伊佐奈の蹴りを食らってしまう形になり、それを見た四人は焔が傷ついたことに驚く声を上げる。

 

「俺が折角、態々こうして出向いてお前らを部下に入れてやるっつってんのに、答えはそれか……部下にする前から使えねえとは、不良品だなこりゃ」

 

「ぅッ!ぐっ!!あっ…がぁっっ!!あっ…!」

 

焔の顔を何度も、何度も、虫を潰すかのように踏みにじり、蹴り続ける。焔の顔は蹴られる毎にボロボロになり、鼻の骨が折れて鼻血が出る。

 

「焔さん!!」

 

「ちょっと!アンタやめなさいよ!!」

 

詠は動けなくなった焔を抱きかかえ、伊佐奈から離れさせ、未来は大切な、家族とも言える仲間を、焔を傷つけられ、怒気を孕んだ声で伊佐奈にそう言う。

 

 

「あ?」

 

 

しかし、未来の怒りに癪に障ったのか、或いは詠が焔を助けたからなのか、伊佐奈はドスの効いた黒い声を出す。

伊佐奈の黒い影が顔を包み込むかのように、殺気と怒りのオーラが放たれる。そんな伊佐奈に未来は「ひッ!?」と弱気になるも、傘を手に持ち、伊佐奈に向ける。

 

「貴方は……貴方だけは絶対に許しません!!!」

 

詠も未来と同じ気持ちなのだろう…詠の武器、轟剣ラグナロクという大剣を軽々と手に持ち、刃先を向ける。

金で人を不幸にさせる伊佐奈。今まで金持ちを恨んでた詠にとって、伊佐奈という存在は、許されるはずのない存在だ。

 

「何やこれ、焔さん傷つけられた時、思わず頭ん中がカーッと熱くなったな…これが感情っちゅーもんなんやな…」

 

日影は愛用のナイフを舌なめずりし、蛇のように鋭い目つきで伊佐奈を睨みつける。

 

「焔ちゃんは私たちの大切なリーダー…それを貶され、傷つけられるのは、黙って見ていられないわね…」

 

春花は声こそ冷たく冷静でいるが、実際はかなり怒っている。それも今まで見せたことのない春花の怒りを燃やした目つきがそれを物語っている。

蛇女子学園を自分の野望のために利用し、焔を傷つけられた四人の怒りは底知れない。だが…伊佐奈はそれを凌駕するように、黒いオーラを解き放つ。

 

 

 

 

 

 

(道具)が俺に刃向かうなおこがましい…」

 

 

 

 

 

 

ズズズ…

 

 

 

 

(っ!?なんだ、これ…?!)

 

 

その圧倒的な存在感、そしてこの異常な威圧感。倒れてた焔は伊佐奈の放ったオーラに軽く身震いした。

そして、伊佐奈の灰色のコートの丈がゆらりと動き、浮き出す。まるでコートそのものが体の一部として『生きてる』かのように……どんどん膨れ上がってくるように、少しずつ大きくなっていく。

 

「ちょっ!何よあれ!?」

 

「何でしょう…どんどん大きくなっていくかのような…」

 

未来は伊佐奈の異変に気付き、詠は膨れ上がっていくコートを見つめる。これは一体何なのだろうか?伊佐奈の術…にしては見たことのない忍術だ。

 

「なんやアレ」

 

「なんかヤバそうね…」

 

日影は感情がない、そのため伊佐奈の異変に気付いたとしても、それが一体なんの意味を表すのか、日影は分からない。しかし、伊佐奈の異変に身の危険を察した春花は、額に冷や汗を垂らす。

 

 

──何か起きる前に、先に止めないと。

 

 

その考えは、四人全員が同時に一致していた。つまり、四人とも伊佐奈を止めようと前に動いたのだ。だが伊佐奈はそんなの関係ないと言わんばかりの顔立ちだ。

 

「そうだな…ちょいと痛めつけてやろうか」

 

伊佐奈の言葉を聞いた焔は、思わず頭の中が熱くなった。いつも戦ってる時は、戦いが己を熱くし、闘争心を満たしてくれる。だが、今のその熱さとは、同じであって、違った。

 

「オイ…お前、何する気だ……」

 

すると、焔は地べたに這いずりながらも、片方の手で伊佐奈の足を鷲掴みにする。

 

「はあ?」

 

自分の足を掴まれた焔に、伊佐奈は思わず声を漏らし、鋭い目つきで睨みつける。しかし、内心は疑問を抱いていた。

 

(こいつ、何で動ける?俺の()()()()()で動きは止めたはずだ…雅緋でさえも動けなかったんだぞ?それをこいつは一体……)

 

クリック音とは、エコーロケーションと呼ばれる音波の一種のことである。

動けない筈の焔に伊佐奈は眉をひそめる。焔の手から、熱が伝わる。それは闘争心によるものなのか、或いは仲間を傷つけようとした怒りから来るものなのか…

 

 

「仲間に何する気だって言ってんだよ……!!」

 

 

ズスズ…

 

 

「ッ!?」

 

(なっ!?こいつ……この気……!)

 

 

 

伊佐奈は感じた、焔の尋常なさなる気配を、怒りを、焔の強さを。伊佐奈は此処で初めて、困惑色の表情に染まった。

先ほどまで焔の顔を蹴り、頭を踏みつけてた余裕など毛頭ない。顔からは僅かならがに冷や汗を垂らし、あの時伊佐奈が放った気力に、身震いした焔と同じく、こちらも軽く身震いし、思わず足を一歩後ろに退がってしまう。何より動きを封じ、動けない筈の焔が動いてること自体、おかしいのだ。

 

 

焔は一気に起き上がり、怒りを燃やした瞳を激しく揺らがせ、三本の刀で再び伊佐奈に斬りかかる。それと同時に伊佐奈は……

 

 

ズオン!!

 

 

「なっ!?」

 

「これは一体…?」

 

「なんや?」

 

「なっ、ちょっ!!」

 

未来、詠、日影、春花も目の前の光景に驚く。しかしそれは、動けなかった焔が立ち上がり、伊佐奈を斬った光景ではなく…

 

 

灰色のコートの丈が、急に大きく膨張し、巨大な尻尾へと姿を変えたのだ。その巨大な尻尾は、人を軽々と吹き飛ばしそうな…

尻尾の先端部分は脊椎動物が持つと言われる魚類系の尾ビレになっている。しかし、その大きさは異常なまでのデカさ故、今目の前に起きてるのは錯覚か、或いは幻なのかと、大きな疑問を抱くくらいの大きさなのだ。

焔も伊佐奈の尻尾とも言えるものを目の前にしても、怯まず、畏れることなく、まっすぐ、標的を狩るかのように、三つの刃を振るう。だが、伊佐奈の攻撃が早かった。巨大な尻尾を軽々と動かし、焔だけでなく、詠、日影、未来、春花、この五人は避ける暇も隙もなく、尻尾によって大きく吹き飛ばされる。

 

「ちょおぉっ!?」

 

「なっ!?」

 

「くっ!」

 

「あかんこれ…!」

 

「チィッ!!クソッ!」

 

五人は跡形もなく、まるでホームランを打ったのかのように、成す術もなく大きく吹き飛ばされる。

それぞれがバラバラに吹き飛ばされる中、焔は詠、未来、日影、春花の順に、それぞれしっかりと見てからこう言った。

 

 

「標的は伊佐奈だ!!直ぐに蛇女に乗り込め!!」

 

 

バラバラになったなか、焔が取った行動は、集合ではなく、 蛇女に乗り込むこと。焔の考え方は間違ってるだろう…ここは集合し戦力を集めてから敵の拠点に乗り込む。一般的な常識だ……

 

だがしかし、焔の行動は実は正しかったと言える。何故なら、標的は伊佐奈であって、他の連中とは戦う気はない、無駄な消耗は避けたい。皆が集合するまで向こうは戦力を束に重ねて来るだろう…そうすればどうなるか分からない、最悪の場合全滅する。なら、散り散りになり、行動すれば、戦力こそは減るが、全滅の危機は免れる。

蛇女に在籍している忍学生など、何千人もいる。そして更には選抜メンバーもいる。それなら、仲間たちの集合を待つよりも、先に行動し、伊佐奈を倒す。それが焔たちが今できる最善の行動だった。

戦国時代の戦争だってそうだ。敵の大将の首さえ落とせば勝負は決まるのだから。

 

何よりも焔は、仲間たちを信頼している。だから、託せるのだ……自分について来てくれた、大切な仲間たちを。何より焔は仲間たちを信頼してるためか、全滅なんていうことは彼女からすればあり得ない、そう信じているのだ。

 

 

(待ってろ伊佐奈……蛇女を己の野望の為に利用したお前は、絶対に許さん……!!!)

 

 

吹き飛ばされながらも、焔は伊佐奈が見えなくなる最後まで、睨みつけ、しかと目に焼き付けた。それは逆もまた然り…

 

 

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

伊佐奈は顔を真っ青にし、息遣いを荒くしながら、飛ばされた焔を睨みつける。

 

(何だアイツ……この俺が…気圧された?あんなガキに俺が……?)

 

「……チッ!クソが……道具の癖して俺に刃向かいやがって……気に入らねえ……」

 

伊佐奈にとって忍とはただの道具。忍は大名や主の為に尽くし、命を懸けることが当たり前なのだが、伊佐奈にとって忍とは自分の利益の為に過ぎないただの道具であり、それが伊佐奈にとっての常識である。

だから、今まで命令が聞けない忍や、使えない忍は全て、伊佐奈が殺していたのだ。

 

それが伊佐奈という男だ。

 

非道で残虐な彼、しかし…忍の社会として忍の生き様は当然だ。使えなければ死ぬ、任務の失敗は死を表す。

 

 

忍の世界とは、ヒーロー世界とは違い、非常識で残酷な世界だ。

 

 

そう考えるとそんな非常識で残酷な世界に伊佐奈がいるのは、当然なのかもしれない…

 

(とにかく…()()()()()()()()終わりだったな……)

 

伊佐奈は頭に手を置き、自分の頭を撫でる。伊佐奈は頭が弱点なのかしらないが、心の中で呟き、安堵の息をつく。

 

「おい雅緋、俺だ。出てこい」

 

伊佐奈は蛇女の選抜メンバー筆頭である彼女の名を呼ぶと、数秒後、姿を現した。

 

「ハッ、何の御用でしょうか?」

 

「抜忍の焔紅蓮隊がやって来た……アイツら、俺に刃向かいやがって……」

 

「焔たち…」

 

焔紅蓮隊がやって来た事実を知った雅緋。伊佐奈の荒ぶる表情も、落ち着いて来たのか次第に冷静な顔へと変わっていく。

 

伊佐奈の言動は、何処か死柄木弔に似ているが、雅緋たちにとってそんなこと知ったことではない。

 

「本当は部下にしてやりたかったが……よし、こうなりゃもう一度チャンスをやるか……部下に引き入れそうなヤツは捕まえろ。ただし抵抗するようなら迷わず殺せ、俺の慈悲を無下に扱うヤツなんざこの世には要らん」

 

まるで自分を中心に世界が回ってるんだと言わんばかりの発言…

 

雅緋は本当は知っている。コイツがどれ程外道であり、そして…妖魔を戦争の兵器に使おうとしていることも……

雅緋にとって妖魔は天敵であり、親の仇でもある。それを戦争に使おうというのだ。

 

 

伊佐奈の目的を知ったのは、一週間前だった。何時ものように、忍の訓練についてけれなかった忍学生を、部屋に連れ行った雅緋は、ふとあることを思ったのだ。

 

(……そういえば、伊佐奈様は普段から何をしてるのだろうか?)

 

今まで他人に興味を持つことのなかった雅緋だったが、忍学生を連れて、一体何をする気なのだろうと、不自然な伊佐奈に雅緋は疑問を抱いたのだ。今までは忍専門の病院へ送っていたのかと思っていたが…

雅緋は気になって扉越しから見て見たのだ。そこで彼女は初めて驚愕な事実を目の当たりにしたのだ。

 

なんと、忍学生を殺してるのだ。それも、物言い表せないような残酷な光景……部屋が血の海となり、死体は壊れた人形のように倒れ、伊佐奈は何事もないかのように、その血を集めたり…

 

「っ!?」

 

目の前の光景に、雅緋は思わず()()()のことを思い出す。そして、拳を強く握りしめた。

まさかこんなことをするが為に、伊佐奈は訓練についてけれなかった忍学生を殺して来たのかと思うと、怒りのあまり意識が吹き飛びそうになる。

そして…こう言ったのだ…

 

 

「これで、妖魔を作ることができるかな」

 

 

「!!??」

 

 

雅緋は思わず声に出そうになるのを必死に堪えて、手で口を抑えつける。

──妖魔。その名を聞くだけで全身の血が滾り、騒めく。頭の中に浮かぶは、母さんの死…妖魔は本来、忍が倒す存在であり、忍が存在してる理由の一つでも上げられてる。そして妖魔が生まれるのは忍の血から生まれる膿のような存在。そこで、雅緋は分かったのだ。全て伊佐奈の目論見が…

 

伊佐奈が何故、訓練をより強化させたのか?それは、悪の誇りを取り戻すことではない……使えなくなった忍学生を殺して、血を集め、妖魔を作る為なのであった。前々から可笑しいとは思っていたが、この為だったとは…そして、伊佐奈はヤケに忍学生を編入したがっていた…蛇女に入りたいと願う学生は何万といる。伊佐奈は金を使って蛇女の生徒を買っているのだ。それは、数を減らさない為……蛇女の学校が数を減らし過ぎると、周りの人間からも不自然に思われてしまう。

 

使えなくなった忍を妖魔へ……

 

そう考えただけで、殺意が湧いてくる。雅緋は洗脳されてはいない、洗脳されたふりをしていたのだ。雅緋はそれについても可笑しいと思っていた。蛇女の生徒は実力云々関係なく、大名や主への忠誠心はある。だから、洗脳なんて意味がないのだ。雅緋はかけられたフリをしていたが、他はどうだか…他の者たちなど興味はない。

しかし、しかしだ……今こうしてやっと真実を目の当たりにして思ったことがある…

 

このままでは、今の蛇女が崩壊するだけでなく、皆の命が…!!

 

ここで初めて、雅緋は他の者たちの事を考えるようになり、胸を痛め憂慮した。

ふと頭の中に、ある人物たちが浮かび上がってくる。それは父さんや母さんだけでなく…

 

両備、両奈、紫、そして…今まで自分を支えてくれた、幼馴染の忌夢。もしかしたら、アイツのせいで皆んな死んでしまうかもしれない。そう思うと心が裂けそうになってならない…

 

雅緋は黒刀を抜いた。

 

 

──蛇女や皆んなのためにも、私がアイツを斬る。

 

 

そう思った矢先だった…伊佐奈の声が扉越しから聞こえたのは。それは雅緋のことを気付いてではなく、独り言だった。しかし、その言葉が雅緋の決意を鈍らせた。

 

 

「そういえば……抜忍の焔紅蓮隊はどうしてるんだろうかな?」

 

「っ!?」

 

雅緋はその言葉を聞いて立ち止まった。焔紅蓮隊…今私たちが追っている抜忍のことだ。蛇女を貶め、守ることが出来なかった愚かな連中……だった。

 

「確か道元っていうクソジジイを斬ったんだっけか?アイツらには感謝しなくちゃなぁ…そのお陰で俺は出資者として計画を進めることに成功したんだからな…」

 

斬った?どういうことだろうか…後々から鈴音先生から知ったことなのだが、何でも道元のせいで、蛇女は崩壊してしまったらしい。妖魔を復活させた。そのため焔は抜忍になる覚悟を決めて、出資者を斬ったそうだ。因みにこれは、雅緋にしか知らない事実だった。その時は何ら分からなかったため、雅緋は関係ないと再び刀を強く握りしめたのだ。そこでふとあることを思ったのだ。

 

もし私が伊佐奈を斬ったらどうなる?忍は善であろうと悪であろうと、大名や主のために死力を尽くす。だが、反乱を起こせばどうなるか?……言うまでもない、焔と同じく抜忍になるだろう…それだけじゃない、お父さんはどうなる?学園長であるお父さんも、何をされるか分からない…最悪、私のせいで抜忍になることだってある。

ここでやっと分かったのだ──

 

 

──伊佐奈には絶対に逆らえない。

 

 

力こそが忍の全てだと、雅緋はそう学んできた。雪泉が悪を殲滅することが正義だと学んできたように、雅緋は忍は力こそが全てだとそう育ってきたのだ。そのキッカケは、妖魔によって殺された死んだ母だった。

 

それは私のせいで…母さんを死なせてしまったのだ。私がもっと強ければ、しっかりしていれば…

 

 

 

 

『雅緋、親子丼、出来たわよ…♪』

 

母さんは……

 

『雅緋、忌夢ちゃんと遊ぶ時は気をつけるのよ♪』

 

母さんは……!!

 

『雅緋!危ない!!』

 

 

ドグシャッ……!!

 

 

 

母さんは………!!!!!

 

 

 

 

だから誓ったのだ。妖魔を滅ぼす、それが雅緋の信念であり、力を付けるべく、強くなることを…

 

だが、どれだけ強くなろうとも…決して逆らうことが許されないものがある。それが今、扉越し…目の前に…

 

 

 

これが、伊佐奈という支配者。

 

 

 

「………」

 

雅緋は次第に目から大量の涙を流し、力なくその場に腰を低く落とし、座り込む。

 

誇りをと戻すどころか…

 

 

(私は……救うことも出来ないのか…!!)

 

 

焔が旋風に言った通り、上の人間が一人でも腐ってる人間がいるならば、組織は崩れる。そう、正しく今の蛇女はそうである。真実というものは時に残酷だ。伊佐奈の目論見を、真実を知った雅緋は、どうすることも出来なかったのだ。

 

例え自分が抜忍になったとし、父さんも抜忍になったとしても、蛇女が変わることは、恐らく皆無に等しいだろう……雅緋は心の底で思った。

 

 

 

誰か、伊佐奈を止めれるやつはいないのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、雅緋、どうした?」

 

「っ!?」

 

伊佐奈の声に雅緋は我に返った。いつの間にか考えごとをしていて、どうやらボーっとしてたらしい。「な、何でもありません…」というと、伊佐奈は「そうか、 返事くらいしろ…」と吐き捨てるようなセリフを言い放つ。

 

「そんでだ、焔紅蓮隊の目的は俺だ。だから、お前らがなんとかしろ……俺を守ってみせろ」

 

「……」

 

雅緋は苦しい表情を浮かべながらも、「はい」と頷くことしか出来なかった。逆らえば、死ぬか抜忍になるか…どちらにせよ救済という文字はない。

それに、正直困っているのだ。アレだけ焔たちを憎んでいたのに、今はそれほどでも無い……焔たちが道元を斬った理由を知り、そして目の前には伊佐奈という人の道を外した外道が目の前にいる…

 

しかし、そんなものは忍の世界では許されない。上層部の命令に聞けない忍など、伊佐奈だけでなく、他の者たちに処分されてしまう。

 

 

「雅緋、俺は良い道具()を持って嬉しいよ、それじゃあ後は頼んだぞ」

 

伊佐奈は、ニコッと今まで見せなかった笑顔をこちらに向けてきた。その笑顔も今のとなっては腹立たしい…しかし、そんな伊佐奈の命令を、私は聞かなければならない…

私は選抜メンバーの仲間たち皆に伝えた。直ちに抜忍を処分しろと…

 

 

 

「焔…」

 

 

雅緋は、もうどうすることも出来なかった…ただ焔を殺すことしか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛ばされてしまいましたね…」

 

「そうね…私たちと偶々合流できたのも、運が良かったのかもしれないわ」

 

飛ばされた詠と春花は、蛇女に向かってる中、偶々合流出来たらしい。これは良かった、と二人は心の中で安堵の息をついた。

 

「それにしても…伊佐奈と呼ばれるあの方、私絶対に許しませんわ!!」

 

焔を傷つけられ、自分たちを見下すような彼は、詠にとって一番嫌悪する存在だった。ましてや金持ちに見下され生きてきた彼女にとってはなおさら…

 

「そうなんだけど…私少し思ったことがあるのよね〜…」

 

「へ?何でしょうか?」

 

「改革のことよ…」

 

春花のその疑問を抱いた表情は、険しい顔立ちであった。

 

「ヴィランと悪忍と手を取り合う……普通なら考えられないことじゃない?あの道元だって、考えもしなかったんだもの……けど、伊佐奈は確かにああ言ってた…だからこそ思うのよ……

 

どうしてヴィランに固執するのかって…」

 

「あっ、そういえば…」

 

春花の言葉に、詠は納得した。伊佐奈の言葉からして、確かにヴィランの存在に固執していた。それは一体どうしてなのだろうか?ヴィランに固執する、何か理由があるのではないか…?だが考えれば考えるほどに謎は深まり、答えは出ない。

 

「わ、分かりませんわ…」

 

「そうね、考えただけ無駄だわ……考えれば少しは分かるかと思ってたんだけど…ここは焔ちゃんの言ってた通り、早く伊佐奈を倒した方が良さそうね」

 

 

バキュン!

 

「ッ!?」

 

詠の頬に、弾丸が僅かに掠れた。落ち葉には穴が空き、詠はその弾丸を躱したつもりだったのだが、僅かに当たってしまったのだった。詠と春花は立ち止まる。銃弾の鳴った音へ方向を向け、見てみるとそこには一人の影が…

 

「……折角、雅緋を()()()って、決心したのに……なんで…アンタたちが、なんで…なんでよ……」

 

「貴方は…?」

 

そこには、目に涙を浮かべながらも、スナイパーライフルを構え、詠を撃ったと言って良いだろう。ドSの両備が立っていた。

 

「はぁっ!」

 

「ッ!?」

 

春花の後ろには一つの気配が…避けることに成功した春花はその人物を見つめる。そこには…

 

「良かれ悪かれ……もう動き出した復讐の歯車は止められないんだね…」

 

いつものドMで変態両奈ではなく、いつになく真面目で、険しい顔立ちをした、両奈であった。

 

「これは…厄介そうね…」

 

「ええ……二人に目をつけられたとは…」

 

詠と春花はお互い背中を合わせる。両備と両奈…二人の姉妹、この戦いは何があっても避けられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ何処よ〜…」

 

「ほな、飛ばされた方向こっちやから、思いっきし真っ直ぐ突っ走ればええんやないか?」

 

「そんな単純な話じゃなさそう…」

 

未来と日影は一緒になって飛ばされた。此方も後は蛇女に向かうだけだ。

 

「にしてもあの伊佐奈ってやつ、アレどんな忍術なんやろうな?」

 

「日影、アレ多分忍術じゃないと思うよ…」

 

日影の言葉に、未来は抗議する。アレは明らかに忍術によるものじゃない。ヒーロー学生と戦ってきたから分かる。アレは間違いない…

 

「伊佐奈のあの攻撃…忍術じゃなくて……個性だ…!」

 

未来の言葉は正しいと言っても良い。本来忍術といっても召喚やあるいは式神、傀儡などを操るといったことであって、自ら変身することは出来ない。

ではアレは何なのだろうか?決まってる、個性だ。しかし…だ。伊佐奈のそれが一体何の個性かまでは不明だ。尻尾を使ったのだから、恐らく雄英高校の生徒、尾白猿夫の個性「尻尾」だろう…しかし伊佐奈のそれは軽く凌駕していた。そう考えると尾白の上位互換と考えた方が良いだろう。

 

「個性かぁ〜、ワシも個性なんて持ってないし、よう分からんわ〜…」

 

「それアタシもだけどね……まあ、ある医療学者によると、何でも私たち忍みたいに特殊能力出せるのは、個性の影響?らしいよ?」

 

焔は炎、詠は風、日影は毒、未来は呪い、春花は傀儡の操作。春花は傀儡だけでなく、薬を使って戦うこともあるが…春花は僅かならがに他人を洗脳することができるため、雄英高校普通科の心操のような感覚と考えて良いだろう。

 

「って!そんなこと話してる場合じゃないって!早く敵地に乗り込まないと!忍学生たちとか、選抜メンバーとかが来る前に…」

 

「すいません……もう…います」

 

「えっ!?」

 

根暗な声のする方向に視線を向けると、そこには二人の人物が…紫色の長い髪を垂らし、自分の大好きな人形、べべたんを抱きかかえてる紫。そしてその隣には、メガネをかけてるためなのか、真面目だという雰囲気が伝わって来る。雅緋の幼馴染、忌夢。しかも彼女はヤケに日影を物凄い目つきで睨みつけている。

 

「日影、日影だ…!ようやく僕の目の前に、あの日影が…!!ふふふ、やっと逢えた……これでお前を殺せる!!」

 

「なんやよう分からんけど、ごっつい睨まれてるわ、ワシなんかしたんか?」

 

日影は心当たりがないらしく、首をかしげることしかできなかった。

 

「私の相手は…根暗で、小さくて…煩そうな人……しかも、ゴミの匂いがする……」

 

「はぁっ!?!ね、根暗で……小さくて……煩い……ゴミの匂いって……それ全部私なの!?アタシのことなの!?ねぇ!敵とはいえ酷くない!?………後で春花様の香水でも……って、それどころじゃない!」

 

根暗、小さい、煩い、ゴミの匂いと、散々傷つくことを言われた未来は、戦う気満々だ。

 

「ああ…タダでさえ……『忍の家のラプンツェル』を読みたいのに……伊佐奈様に逆らったら、永遠に読めなくなっちゃう……」

 

「……は?今なんて……?」

 

この時に至るまで知らなかった……未来はネットの小説家であり、それをいつも愛読してくれてるファンが、紫だというのを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ…大分飛ばされたな…」

 

飛ばされた焔は、誰にも遭遇することなく、また誰とも一緒に飛ばされることなく、ただ一人飛ばれたのであった。焔が飛ばされた場所は、蛇女の庭であり、修行場。その場所は、使えなくなった忍者刀や手裏剣がゴミのように置かれ、地面には血が塗られてる…

 

「ここは…修行場か?」

 

蛇女は確かに完璧に再建されていた。だから、蛇女に乗り込む時も、そびえ立つ校舎を見つめ我が校に帰って来たんだな…と何処か安らぎを感じる部分もあった。だが、それは違った。

この修行場を見ただけで分かった。この場所は、いわば地獄だ。とてもじゃないが、忍学生が受けるような修行ではないと、一目見ただけで分かった。何より焔も此処に居た時はよく修行を積んでいた。だからこそ分かるのだ……

 

今の蛇女は、伊佐奈によって全て狂わされ、苦しめられてるのだと…

 

「これが今の蛇女だと思うと…胸が痛むな……とてもじゃないが、ここはもう、蛇女じゃないぞ……」

 

秘立蛇女子学園は、悪忍養成機関育成学校。それぞれの事情を胸に抱きかかえ、行き場の失くした悪が集う場所……

焔はその蛇女があったお陰で、生きることが出来た。それを…こんな風にされるのは幾ら何でも許すわけにはいかない。

 

「その通りだ…」

 

「ッ!?」

 

聞き覚えのある声に振り向くと、そこには…殺意と怒りに身を染めた、雅緋だった。この強い匂いは……雅緋のものだったのかと分かった。

 

「雅緋!見損なったぞ!これがお前の取り戻したかった蛇女なのか!?これがお前の望んだものか!?伊佐奈に利用され、妖魔の存在を許すなど……私は…「そんなことある訳ないだろ!!!」!?」

 

雅緋の激しい怒号に、焔は軽くキョトンとした。雅緋のその目からは僅かながらに涙を流し、怒りを燃やしていた。雅緋は黒刀を抜く。

 

「私だって…悔しいさ、伊佐奈によって全て利用され、蛇女の誇りを取り戻すどころか、狂わされ、苦しめられて……こんなことされて悔しいわけがないだろ!?」

 

激しい怒り、今まで冷静でクールであった彼女とは思えなかった。何よりこんな一面、他の仲間たちにすら見せていなかったのだから…

 

「だが、他にどうすることも出来ないんだ!!逆らえば、学園長である父さんは私のせいで立場を無くし、抜忍になる……私一人なら何とかなるさ…だが、それでも蛇女はどうなる!?」

 

雅緋の言ってることに、焔はようやく理解した。雅緋は雅緋で苦しんでいたのだと…洗脳を受けていた。と旋風から聞いていたが、どうやら雅緋はそうでもないらしい…

 

「何より、抜忍のお前らが、偉そうに蛇女を語るな…!!私は…お前を倒す…」

 

そして、黒刀の刃を焔に向ける。

 

「雅緋…」

 

戦いを避けることが出来ない。それを知った焔は、六つの刀を抜き取る。




伊佐奈…お前水族館以上にヤベェぞ…なんか道元が小物のように見える……そうだ、伊佐奈は道元を超えたんだ。
そしてヒロアカのスマッシュタップ…もうアレ無理……死柄木弔強すぎだろ…何なんだよアレ……ヤベェわ…黒霧さんに脳無も……てか黒霧戦えたのな。三対ニなんて卑怯極過ぎるだろww

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。