光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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今回、スペシャルゲストが登場するよ!お楽しみにね♪



期末試験編
86話「燃え上がれ期末テスト」


 

 

 

 

 

 

 

 

HRの時間、先生の報告として担任の相澤は、教卓の上に置かれてる書類に目を通しながら、気怠そうな声で生徒たちに連絡を伝える。

 

「えー…お前ら、そろそろ夏休みも近いが、雄英高校は勿論、君らが30日間一ヶ月休める道理は一切ありません…とは言え、授業がある訳でもないんだがな」

 

「えっ…と言うことは…?」

 

「――夏休み林間合宿やるぞ」

 

「学校ポイのキターーーー!!!」

 

 

やったー!林間合宿と聞いた途端、教室中は喜びで騒がしくなる。

 

雄英高校は常に授業がハードなだけで無く、三年間丸々…つまり、夏休みすらくれないのだ。

前々から分かってはいたが、他の科目や学校と比べると、他の人達は恵まれてるなぁ…ってつい思ってしまう。

でも実際そうだと思う、何せここは最高峰と呼ばれてる天下の雄英高校だ。

世界最大難問とも呼ばれるだけのことはあり、それなりのスケジュールは他の学校と比べて当然厳しい。

 

「当然。忍学科のお前達も、このクラスに在籍している以上、林間合宿をやって貰う…異論は認めない、それと担任の霧夜先生からは許可を得ている。

其れ等に関しての心配は要らない――」

 

「ヤッタァ!私たちも行けるんだ!ワーイ!」

 

「雲雀ね!お菓子いっぱい持っていくんだ!一ヶ月分!」

 

「いや、それは多過ぎだろ…」

 

相澤に対する異論は無く、寧ろこの状況を安易的に受け入れ、ガヤガヤと騒ぎ歓喜の声を上げている。

クラスに在籍してる…と言うことは、このクラスにいる忍学科のみ、林間合宿をやる訳であり、三年生は関係ない。

よってA組もB組も、決まったことなのだ。

 

「やったぁ!飛鳥達も来るのか!良かったぜ!」

 

「肝試ししよーよ!」

 

「馬鹿野郎オメェら!風呂だろ!」

 

「花火」

 

「温泉!」

 

「合宿と言えばカレーだな!」

 

「行水!」

 

「枕投げしたーい!」

 

「湯浴み!!」

 

始まって早々、数分も経たない内に皆んなの意見が飛び交う。

あっ、分かってると思うけど、風呂だの温泉だの言ってるの、峰田ね。

 

「オイお前ら、誰が喋って良いっつった?あ?」

 

「すいませんでした――」

 

と同時に相澤の鋭い視線が放たれ、皆んなは一瞬にして恐縮し、嵐のように騒いでいた教室が静まり返る。

 

「それに、まだ話は終わってねえしな……

 

林間合宿行く前に、期末テストがある…合格点に満たなかった場合…

学校で補習地獄だ、覚悟しろよ――」

 

しかし、林間合宿の前に、最大難問を突破しなければならない。

それは世界中の誰もがこの試練を通り、乗り越えなければならない壁…その名も期末テスト――

赤点の者は当然、林間合宿行けず、補習地獄を受けなければならない。

思い出を一つたりとも作れず、補習地獄で嘆きながら哀れな時間を過ごすのは心細いものだ。

 

「マジかよ!皆んな頑張れよ!!」

 

「そうだ!特に女子全員落ちるなよ!あっ、飛鳥達は本当にな!」

 

「人の心配する前にお前が落ちろ」

 

「や、柳生さん…お気持ちは分かりますが…」

 

「ハァン!柳生、オイラはもうオメーの罵声なんざ効かねえんだよ!

オイラはMt.レディん所行ってメンタル鍛えたんだよ!!」

 

「煩悩は解けなかったんだな…哀れな…」

 

「オイ、良い加減静かにしねえとお前ら補習地獄以上の厳しいもん付けるぞ」

 

 

――補習地獄以上の厳しいもんって何?

相澤の厳しめな言葉と共に、一同は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、六月最終週――

期末テストまで残すところ、一週間を切っていた。

 

 

「オイ!どーすんだよコレ!全然勉強してねーよ!」

 

「アッハッハ〜!上鳴ドンマイ!

私も勉強してない!終わったあぁ〜!」

 

 

さり気無い日々の日常があっと言う間に過ぎていき、気付けばテストが僅かに迫り来ている。

その中で嘆いてるのが、上鳴と芦戸の二名。

実際クラス順位にて、上鳴と芦戸は最下位に値する。

因みに順位は…上鳴は23位、芦戸は22位。

飛鳥達もこのクラスに在籍してる且つ、平等に扱うため順位はあの三人にも付けられるそうだ。

 

「体育祭やら職場体験やらでここん所勉強できなかったぁ!!」

 

「それを言うならオレ達もだぞ…学炎祭やら強化パトロールやらで、オレ達も勉強はしてない…

しかも忍学科のオレ達は、ヒーローの勉学には半歩劣る…それなのに、オレより順位が下ってどう言うことだ…」

 

「煩えぞ柳生!この天才がぁ!!お前が言うと余計ハートにヒビが入るんだよ!言葉遣いに気を付けろよ!!」

 

柳生の棘のある言葉に心を痛めてるのか、大袈裟なリアクションを取りながら上鳴は叫んでいる。

実際正論を言われ、言い返す言葉もないのだが、悔し過ぎて何も言い返せない。

因みに柳生の順位は6位、普通に頭の良い尾白やお茶子も、柳生には何も言い返せれない。

 

「だって柳生ちゃん天才だもんね〜♪」

 

因みに雲雀の順位は21位、お前も二人と変わらないぞ。

しかし、上鳴が言うことも正論である。

言い訳とはいえ、勉強できる時間がほぼ無かった事は本当である。

それは上鳴や芦戸だけでなく、条件は皆んなそうだ。

体育祭では、鍛えるのに必死で勉強してる場合では無かったし、職場体験なんて一週間その事務所で寝泊まりするのだから、勉強する暇すらない。

それどころか、自分の自由時間すらほぼ取れなかったと言っても良い。

それらを学び、身を通して思ったことが、ヒーローになるのは大変だなぁ…としか言いようがない。

しかし、中間は入学したてで範囲が狭く、学校の行事が無かったので特に苦労するところは無く、有意義に過ごせたのだが…ここの所、急激に忙しくなってるので中間と違って範囲が広く、また先生からテストの詳細を聞かれてない為、期末テストは非常に辛い…それともう一つ…

 

「演習試験あるところ辛えよなー」

 

峰田実、成績順位は9位。

馬鹿そうに見えるが10位圏内の上位に着き、王者の余裕なのか、憎たらしいドヤ顔で自分より下の順位の人間を見下している。

 

「アンタが最下位なら良いのに!!」

 

「そーだ!順位違うだろ場所代われ!お前みたいな馬鹿には初めてここで愛嬌出るんだろうが!」

 

「あーあー、愚民の嘆く声は哀れよのぉ〜」

 

う、ウゼェ…

世界一の変態と自称しても過言ではない、このエロQ250を持ち備えるエロの天才児が、まさか本当の天才児なんて、この時誰もが予想付かなかっただろうに…

他の人たちが頭良いのは何かと許せるが、峰田だけは何故か許せない。

あ、後エロQと言うのはエロさを表す指数である。

リカバリーガールのような老婆など、脳内で50年前の姿にコンバート出来るほどであり、相手が女であればウェルカム、揺りかごから墓場までという只者ではない変態葡萄少年、本当に蛇女にいる何処ぞのドMQ250の金髪とは会わせてはいけないヤツだ。

あ、ドMQはドMを表す指数であり、何処ぞのドMは全てがドMとエロに繋がるので、峰田と関わりを持てば、必ずR規制されるのに間違いない。

 

「ま、まあまあ…私も頭悪い方だし…ね?」

 

「そういう奴が大体頭良い事は知ってるんだよ…俺は知ってるんだよ飛鳥…お前の順位が15位だって事くらい!」

 

「う…うぅ…」

 

飛鳥は…まあ、少し下だが、そこまで悪いともいえない。

しかし上鳴にとって20番内の人間は仲間であり、それ以外は全て敵と見なしている。

つまり、自分より順位が上位の位置に達している人間の慰めは、彼を傷つけるだけであって、効果は真逆なのだ。

 

「おお…神よ!我らに救済を!!何でもしますから!

するとは言ってないけど…」

 

「自分の力でやれタコ」

 

上鳴の言葉に口鋭く言い放つ耳郎。

彼女は何やら数学のノートを手に持ち八百万の方へ向かっていく。

 

「ねーねーヤオモモ〜、二次関数についてちょっと分からない所あるんだけど…今度の日曜教えてくんないかな?」

 

「ええ、座学なら私にお任せを!力添えが出来るなら喜んで!」

 

八百万百。

個性の関連性からして元々頭は良いのだが…座学ならばこのクラスでは群を抜いている。

成績順位は番狂わせなし、No. 1である。

流石は推薦入学者一位にして、座学の方は完璧。

ただ、彼女に自信がないのは演習試験の方だ…

演習試験の内容は詳しくは聞かされてないが、体育祭での常闇戦からか、何処か調子が悪いのだ。

お互い本気で精々堂々としたバトルなので、常闇が悪い訳じゃないが、何も出来ず、手も足も出ずにアッサリとやられた…その落胆により自分への自信が崩れてしまい、調子が悪いのだ。

彼女に足りないのは臨機応変。

その場で瞬時に判断し、対応出来る術がないのだ…つまり、彼女がその場で瞬時に判断し、対応さえ出来れば、トップヒーローを凌ぐ一流のヒーローになれる可能性は高いのだ。

 

 

「や、ヤオモモだと…?」

 

ここで、上鳴と芦戸は気付いた。

自分たちよりも成績が上の人間は嫌味でしかないが…八百万のように、筆記試験に余裕がある且つ、クラストップの成績を誇る彼女なら、分からない所を教えてもらえることが出来るかもしれない…そうすれば、筆記の補習は免れるのではないか?と。

 

「ヤオモモー!頼れるのはお前しかいねぇ!!」

 

「お願いしますヤオモモ!いえ、女神!我々にもどうか〜!!」

 

二人は泣きじゃくりながら八百万に迫り来る。

上鳴は額を地面に擦り付け、俗でいう土下座をしてまで頼み込み、芦戸は座り込んで拝んでいる。

 

「お、お二人とも!安心して下さい…貴方達にも勿論、協力致しますわ!」

 

そして八百万たること、ヤオモモはニコリと、それこそ本当に女神と思えてしまう美しき笑顔に、二人は涙を飲む。

嗚呼…居たよ、ここに…女神が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あはは…とりあえずは良かったね?」

 

遠くで見てる飛鳥は、八百万と上鳴、芦戸のやり取りに苦笑していた。

 

「そ、そうだね?飛鳥さんは大丈夫かな?」

 

「私はね〜、まあ…難しい所もあるし、分かんないことだらけだけど……でも、柳生ちゃんが出来たんだから大丈夫だよきっと!」

 

「な、なら…良いんだけど……」

 

多分、飛鳥はああは言って実は徹夜まで勉強っていう感じだ。

飛鳥は生真面目だから、きっと修行をこなした後に勉強に励むに違いない。

まあ逆のケースもあり得るが…

 

「……ねーね、緑谷くん……」

 

「…うん?」

 

そんな考え事をしてたのか、急に袖口をチョンと摘まれた事に気付いた緑谷は、頬を少し赤らめる。

え?何この掴み方可愛いんだけど!みたいなノリで、緑谷はぎこちなく飛鳥の顔を見つめる。

 

「あの時の話のこと……なんだけどさ――

緑谷くんの秘密…絶対に守るからね?私も…緑谷くんに負けないくらい…強くなって……それで…一緒に、倒そうね…!敵連合と、神威!」

 

秘密を守るからね?

というセリフを切り残せば、ある意味意味深な発言に聞こえるので、ドキッとしてしまうし、他人が聞けば勘違いしてしまう言葉だ。

 

しかし、そんな青春ラブコメのような展開はならず、突然の告白も、キスも、待ち受けてるわけがなく、飛鳥はあの時の話を引きずってるのか、元気付けている。

多分、あの時の話のことは誰にも話さないから気にしなくても良いよ!という飛鳥なりのケジメなのかもしれない…

自分が状況を読み込めなかったのに、自分よりも緑谷の不安を和らげようとする飛鳥の心の利いた気遣いは、とても嬉しく思い、そんな飛鳥が八百万に負けを取らない女神に感じる。

 

「…うん!!一緒に、頑張ろ!」

 

なら、その言葉に自分も応えるまでだ。

嬉しくも思い、照れ恥ずかしがりながらも、笑顔を作る。

二人は確かにどこか似ている。

ヒーローと忍で、真逆なようで近い存在で…不思議な関係を持っている。

だからこそ、惹かれ合って成長していくのかもしれない。

お互い共通点が多く存在し、互いに影響を与え強くなっていく。

 

特に、その中で緑谷と飛鳥は特別な関係だ。

恋人とか、恋愛とか、そう言った類じゃない…

オールマイトの後継者の弟子であり、半蔵の孫の弟子である。

双方はトップクラスの愛弟子だ。

だからこそ、時々思ってしまう…

ヒーロー学生と忍学生が出会ったのは、ただの気まぐれでも無く、偶然ではない…

もしかしたら、二人が出会うのは必然だったのではないか?

そう、時々思えてしまうのだ――

 

だから、二人には…真実を知る必要があったのかもしれない、それもまた…運命なのか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂はより喧騒に満ちており、人混みが激しく何処もかしこも見渡せば、人がいっぱいだ。

その分、カレーだのラーメンだの、美味しそうな匂いが充満しており、嗅ぐだけで腹の虫が鳴りそうになる。

 

「なんか学食久しぶりだな〜…」

 

席についてる飛鳥は、緑谷、飯田、麗日と…いつものグループで学食を食べていた。

緑谷は好物のカツ丼。

飯田はカレー。

麗日は素うどん(家から持って来た乾燥わかめを掛けたり、そこら辺にある調味料を使って、麗日特性わかめうどん)。

飛鳥は野菜炒め定食だ。

 

「それね!なんか学食食べてると、「嗚呼…帰って来たんだ!」って、故郷に帰った気分になるよ〜!」

 

「故郷?ああ、そう言えば麗日くん、実家と離れて生活してるんだったな!」

 

「麗日さん、大変じゃない?」

 

「ううん、全然平気だよ!そりゃ大変な事はあるけど…ヒーローになるのに贅沢してられへんもん!」

 

健気だなぁ麗日さんは…

贅沢をしたくないとか、私欲を優先せずに、ヒーローになるための努力をするって言うのは、大切な事だもんね。

 

「そう言えば、飛鳥くんの実家は?離れてるのかい?」

 

「うん!私もね、じっちゃんの実家と離れて寮で生活してるから」

 

「えっ、寮生活してるの!?」

 

今更だが初耳だ。

プライベートな事はあんまり尋ねないから無理ないが、寮生活と言うのは初めて知った。

皆んなは離れてたとしてもてっきりアパート借りて住んでるのかと思っていたので、寮生活をしてるとは想像もしてなかった。

 

「……いや、でも待てよ?飛鳥さん所の学校は半蔵学院の忍学科だから……もしかしたら忍専用の寮があっても可笑しくは無いし……

そもそも素性を知られるのを防ぐために、寮生活を送ってるのかも…

となると、柳生さんとか雲雀さんとか…他の皆んなも?

でも寮生活なんて僕経験した事ないなぁ…一体中はどんな風になってるんだろ?

和風かな?敢えて洋風だったり?いやしかし忍学科が所属する寮なんだから普通は和風と考えても良いよな…

カラクリ屋敷だったりして?そもそも寮のシステムは一体どんな…ブツブツ」

 

「あの〜…緑谷くん、ソレ個性の観察以外の時にも…出るんだね?」

 

これぞ緑谷のスキル、ザ・アナリシス――

気になることや(基本、ヒーローの活動や個性に関して)の場合により頻繁的に発動する緑谷特有のスキルだ。

ブツブツと小声で呟くのは小学生の時からの癖で、これで周りからよく気味が悪いと軽蔑されていた。

それが中学まで続いたからなのか、自分が無個性という意味もあってか、友達が出来なかった…

つまり、ボッチだったのだ。

何処ぞのガガガ文庫に出てくるキャラと同じボッチという訳なのだ…

誰だよヒキタニくん。

 

――ガァン!

 

「ッた!」

 

不意に後頭部に鈍い痛みが走る。

何かにぶったのだろうか?と後ろに振り向くと――

 

「あれあれ〜?こんな所にA組居たんだ気付かなかったゴメンね〜??

君頭デカすぎるし、地味だし、当たっちゃったよ」

 

「あれ君は確か…!」

 

隣のB組、物間寧人。

体育祭で爆豪勝己に喧嘩を売り(正しく言えば、爆豪の挑発を買って喧嘩を売った)、返り討ちにされ酷い目にあった人物だ。

A組に対する抵抗心と、心がアレなので、関わりを持つと、こう言った揉め事を犯したくなるのだ。

 

「物間くん…よくも!」

 

「酷いよ!ワザとでしょ今の!

当たったらちゃんと謝りなよ!えっと…物…間くん?」

 

「何で疑問系なんだよ…

 

――ああそっか、君がA組に所属してる忍学科の生徒かぁ…ふぅん、そりゃ僕とは初対面だし名前は知らないよねぇ?まあ無理もないか…そもそも君らのようなA組に名前を言ったって、どうせ僕らを見下し名前なんて直ぐに忘れるに決まってるさ…

 

それと言い掛かりはよしてくれないかなぁ?僕がワザとやったなんて証拠はあるのかい?

そもそも君らは仲良しこよし、談笑してただろう?

見てもいないのに言い掛かりはよして欲しいなぁ!ああ怖い!A組は自分の都合が悪いと直ぐに他人のせいにする、あああ怖いなぁ!!実に怖い!」

 

――何だコイツ。

注意しただけでこの対応、本当に心がアレだ、仕方ないとは思ってたけどここまで晴れ晴れしく返されると少し複雑な気分だ。

 

「それはそうとさ、君らヒーロー殺しに会ったんだってね?」

 

「――ッ」

 

突然、彼の口からヒーロー殺しの話題が出てきたことに、皆んなは止まる。

 

「体育祭に続いて注目を浴びる要素ばっかりだよねA組。

なんで?ねえ何で?君らの何処に需要があるんだよ、僕らも少しは目立っても良いってんのに、君らは何かあると直ぐに注目浴びて僕らの存在を遠く突き放す…

 

しかもその注目って期待値とかじゃなくてトラブル的な意味だよね?

あーあ、怖いなぁ…君らのような野蛮な輩達がいるから狙われるんだよ!その所為で常に清く正しく日々精進してる僕らにまで被害が及ぶんだろうねぇいつか!ああ怖いなぁ!

君らの所為で僕らに被害が出たらどう責任とってくれるんだよ!ああ、これだからA組は――」

 

「物間いい加減にせんかぁ!」

 

「ブハァッ!?」

 

早口で捲し立てる物間の首筋に、怒鳴り声と共に手刀が入る。

後ろに人がいる気配など、感知できるはずが無く、手刀をくらい力無く倒れてしまう。

 

その後ろに居た人物は、拳藤…では無く、月閃女学館の二年生、夜桜だ。

 

「あー!夜桜ちゃん!」

 

「おや飛鳥さんですか、学炎祭以来ですかねお久し振りです。

他の皆さんも…ウチの物間が迷惑を掛けました」

 

夜桜は物間の首を掴むと、皆んなに謝罪するようペコリと一礼する。

夜桜、アンタは物間の保護者か――

 

それとは別として、飛鳥を含め四人は意外そうな顔で見つめていた。

そりゃそうだ、月閃が隣のB組に在籍することは相澤先生から聞いてはいたが、雄英高校の立場では、此処で会うのは初めてなのだ。

何かしらと気不味い…というより、こんな所で会えるのは意外だったので、何て反応を取ればいいのか戸惑っている。

本当ならもっと早く会いたかったのだが、学生は職場体験で忍は強化パトロールでと忙しく、会うことは出来なかったので、仕方ないと言えばしょうがない。

 

「あー!いた物間!サンキューな夜桜」

 

又も後ろから声が…

人混みの中から出てきたのは拳藤一佳。

クラス委員長にしてクラスの姉御的存在だ、そして見た目が可愛いかつカッコいいという…

様子を見た限りだと、どうやら拳藤は物間を探していたそうだ…

 

「ったく、お前急にいなくなるから何処行ったんだって探してたんだよ…子どもか全く――…

 

悪いな夜桜も、アンタらA組も…多分こいつの事だと、気分悪くしちゃったかもしれないけど…気にしないでくれ、何時もの事だからさ」

 

「いえ、別に拳藤さんが気にすることはありませんよ」

 

「う、うん…夜桜ちゃんの言う通り、私たちは特に気にしてないからね?」

 

拳藤の言葉に、夜桜も飛鳥も三人も、特に気にしないと言った様子で首を横に振る。

なんか物間が問題児に見えてきた、優秀でイケメンなのに…心がアレだから勿体無い。

 

「あー、その…なんだ…お詫びと言っちゃなんだけどさ…

 

期末の演習試験は不透明とか言ってたよね?

知り合いの先輩から偶々聞いたんだけどさ、入試ん時みたいな、対ロボットの実戦演習らしいよ」

 

「えっ!そうなの!?」

 

ちょっとズルだが、これはかなりの有利な情報だ。

まさかこんな所で期末テストの内容を知ることが出来るなんて夢にも思っていなかった。

 

「入試?ロボット?」

 

「あー…そっか、飛鳥さん知らないんだったね」

 

飛鳥が首を傾げるのを見て、緑谷はそう言えば…と思い出すようにポカンと口を開く。

入試試験で通ったわけでは無く、転入といった形で雄英高校に入った訳なので、当然入試の内容は推薦入学者と同じく知ってる筈が無く、入試の時と同じ…と言われても想像がつかない。

 

入試試験。

仮想敵のロボットを倒し、ポイントを手に入れるというルールを前提とした試験。

何点以上合格…という目標がなく、より多くのロボットを倒せば良いという試験だった。

緑谷は0ポイントだったが、巨大仮想敵を倒した経験はある。

レスキューポイントで救けられ、何とか合格することに成功した緑谷は、あの時の感動を今でも忘れない。

 

「ってことは、仮想敵なら思いっきりやっても良いよね!傀儡と変わらない感じ…というか、霧夜先生の訓練でいつも受けてるから、私たちの見せ所だねコレ」

 

一方、飛鳥たち忍学生は、ヒーローの仮想敵とは違い傀儡を相手に戦うことが多い。

実際傀儡の性能は、伊達に戦闘力だけでなく、使い所によっては人間に偽装し、スパイや囮になる事だって出来るのだ。

仮想敵に傀儡も似てるって、本当にこの世界は共通点が多すぎる。

 

しかも卒業試験の内容は、大群の傀儡相手に傷一つ付けられずに殲滅すると言った、過激で最大難関の壁がこの先に待ち構えてるのだ…

卒業試験の内容は、時に変わることはあるが…基本はそんな感じだ。

 

「グフッ…何故だい拳藤……君はバカなのか…

折角の情報アドバンテージを無駄にして……今度こそ憎きA組を出し抜くつもりだったのに!」

 

ここで気絶してたと思われてた物間が、謎のオーラを解き放ち、忌々しい目線でA組と拳藤を睨みつける。

 

「いやだから憎くはないってーの」

 

ベシッとここでもう一発拳藤の手刀が入る。

今度こそ完全に堕ちた、気絶している。

夜桜は「ではまたのぅ」と言葉を残すと、物間を引きずる拳藤の背中に付いていく。

何だったんだ物間くん…しかし、演習試験の内容を知れたのは大きい、良かった…ロボは大丈夫…あの時とは違ってコントロールも少しずつ上達している。

堕ちない自信が彼にはある――

 

 

 

 

 

 

 

 

かれこれ、一週間が過ぎて――

雄英高校、期末テストが始まったこの日、最初に行われたのは筆記試験…

試験が終わった後、上鳴と芦戸は泣いて喜んでいた。

「ここテストに出たー!」「やばい分かっちゃった!何これヤオモモ、凄〜い!」と子供のようにハッチャケて喜んでいた。

他の皆んなもそんな感じで、クラスの半分がヤオモモのお陰と言って良いだろう…

一方切島は爆豪に勉強を教えて貰おうと、日曜日に会ったそうだが、中々捗らなかったらしい。

何でも図書館で二人の声が騒がしく摘み出されたり、ファミレスで気分爽快しながら勉強に励もうとしたら、元中学の友達と会い揉め事になって摘み出されたりと、色々大変で勉強どころじゃ無かったそうだ。

つまり、分からない箇所が半分以上もあってテストがヤバかった…という訳だ。

 

 

 

不安だった期末テストも無事終了し、演習試験が控えていた。

皆んなはコスチュームに着替え、雄英教師達が待機してる運動場に集まる。

運動場には数台のバスがある、きっと演習試験は各自バラバラになってやるのだろう…

まあ、不正を防ぐ為なのかも知れない、個性さえ使えばその気になれば不正行為など幾らでも使えるんだから…

 

しかし、何処も見たことのある教師たちばかりだ…

しかもオールマイトもいるし…何だか嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか…

 

「よし、集まったか?これより演習試験を始める。

一応言っとくが、演習試験でも赤点はあるからな?補習にされたくなきゃ、みっともねえヘマはしねえことだな」

 

筆記試験が終わり、後は個性を使ったテストと聞けば、期末テストで散々嘆いてた上鳴は今や上機嫌、他の皆んなもウキウキだ。

演習試験の事はあの後緑谷達から既に聞いている。

ズルかもしれないが、何も先生は「他の先輩方には聞くなよ」とは言っていない…つまり、法的な感じでセーフなのだ。

なので演習試験はロボをぶっ飛ばせば良いだけ…簡単だ。

 

「先生パパッとやっちゃいましょう!合理的に早く演習試験やりたいっす!ロボなんざ楽勝!」

 

「カレー、温泉、花火、肝試そーよ!!」

 

…芦戸と上鳴は調子に乗り過ぎて、相澤先生に何か言われそう…と思ったがそうでもなく、表情は変わってない。

しかし変わりに、相澤先生のマフラー?(正しくは捕縛用)の中から、ネズミの外見をした校長根津が現れる。

 

「ところが残念!ちょいと訳あり事情があって今回から内容は変更させて貰うよ!その為入試の時と同じような仮想敵ロボットでは無いよ!」

 

 

――――え?

 

 

「君らは当然ヒーロー殺しの件は知ってると思う…

ヒーロー殺しのようなヴィランが、もし他の街に出没し、出くわした場合、君らはどうする?

それを未然に防ぐ為として、我々教師陣は対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視する――!」

 

期末テスト。

演習試験の内容変更による衝撃な事実に、皆んなは戸惑いながら口を開くも、根津はそんな皆んなを無視して説明をする。

 

「よって二人一組になって、ここにいる教師一人と戦って貰うよ」

 

は?

 

「はぁああああぁぁぁぁぁああぁ!!?」

 

なんじゃそりゃあ!そう皆んなは心の中で叫んだ。

ロボットだと思ってたのに、試験内容がロボットから教師なんて、幾ら何でもハードルが高すぎる。

高過ぎて通過できない…潜り抜きたい。

因みに戦闘訓練の時みたいに、クジでペア決めをするのではなく、先生の手配で既に決定済み。

動きの傾向や成績、親密度…

諸々を踏まえて独断で組ませたそうだ。

 

 

 

轟焦凍と八百万百がペアとなり、担任の相澤先生と対決。

上鳴電気と芦戸三奈がペアとなり、校長・根津と対決。

麗日お茶子と青山優雅がペアとなり、13号と対決。

飯田天哉と尾白猿夫がペアとなり、パワーローダーと対決。

葉隠透と障子目蔵がペアとなり、スナイプと対決。

口田甲司と耳郎響香がペアとなり、プレゼント・マイクと対決。

切島鋭児郎と砂糖力道がペアとなり、セメントスと対決。

峰田実と瀬呂範太がペアとなり、ミッドナイトと対決。

蛙吹梅雨と常闇踏影がペアとなり、エクトプラズムと対決。

 

残るは五人、緑谷・爆豪・飛鳥・柳生・雲雀…

 

「そして緑谷と…爆豪がチームだ」

 

 

「「!?」」

 

緑谷と爆豪の二人は目を丸くし見つめ合う。

 

何で?かっちゃんと──?

何で?デクと───?

 

二人はお互い後ろめたい所や、素直になれない所や、嫌う所だってある。

幼馴染で、小さい頃からよく一緒に遊んでた友達だったが、今は違う。

子供の時と、あの時とは全然違う…

緑谷にとって、爆豪は憧れの部類に入っているし、全てが嫌いなわけでは無い。

でも個性が発現し、日々成長して行くと共に悪い方向へ加速し、いつしか二人は話すこともなくなっていた。

 

しかも、タダでさえ爆豪は職場体験で何も学べず、何も自分の成長に繋がることもままならず、無駄な一週間を過ごしてしまった…

周りの皆んなは見間違えるほどに成長し、緑谷なんかは、爆豪の動き方がそっくりな戦闘スタイルで、皆んなからはチヤホヤされていたことも(チヤホヤされてることに嫉妬を持っている訳では無い)…

溜まりに溜まったストレスが、爆豪の限界を迎えている。

そんな状況の中で、緑谷出久と試験をやれと?

 

冗談じゃない…

しかしそれは、爆豪だけでなく、緑谷だけで無い…両方そうだ。

 

「そして気になる相手は…私だ!!」

 

二人の前に一歩出たのは、尤も他でも無い…

平和の象徴・オールマイトだ。

No. 1の座に着く彼は、不敵な笑みを浮かべる。

 

二人はこの状況に何とも言えない。

タダでさえ一番組みたく無いペアと組んでしまったのに、相手は最強の称号を持つオールマイト…

誰もが認める実力を備え持つ彼…こんなヤツ相手にどうしろと?

最悪な組み合わせだ、穴があったら入りたいとはこのことだ。

しかし、これを決めたのは尤も他でも無い…担任の相澤先生だ。

嫌味に思えるかもしれないが、これには訳ありがあるので、出来れば責めないで欲しい…

 

「へぇ〜…緑谷くんは爆豪くんと組んでオールマイトとかぁ……

 

ん?アレ?それじゃ私たちは?」

 

見渡す限り、教師陣たちは全員生徒たちとペアを組んだ。

では、自分たちはどうすれば良いのだ?また、誰と組めば?二人一組と言っていたが残る人数は三人だ。

一人必ず余ってしまう…

 

そんなことも考えてたのか、相澤先生は不敵な笑みを浮かべる。

 

「安心しろ飛鳥達、お前たちにはスペシャルゲストを呼んでおいた…

お前らだけ特別に三人だ…じゃねえと本気で無理だからな」

 

「え?」

 

特別に三人?と言うことは、三人一組で試験に挑めと言うことになる。

皆んなは二人一組なのに、自分たちは良いのだろうか?

 

しかしその優しさも、次に現れる人物を目の前にして、その疑問は直ぐに打ち砕かれる…

 

「飛鳥・柳生・雲雀…死ぬなよ?三人がペアとなり…相手は…」

 

 

ズドオオォオオオオォォォォン!!

 

 

突如上から降ってやって来た人物は、仁王立ちをしたまま着地する。

地面には大きな亀裂が生じ、地鳴りが響き揺れてしまう。

そして目の前にいる人物は、三人よりも身長が高く、筋骨隆々…に近い筋肉容姿を持っている。

その人物は、ニヤリと口角を吊り上げた。

 

 

「大道寺だ――」

 

 

半蔵学院の生徒にして、自らの意思で何年も留年し続けてる伝説の先輩だ――

 

 

「嘘!?大道寺先輩が?!」

 

「これは…成る程……三人一組の理由が分かったぞ…そう言うことか!」

 

「まさか…伝説の先輩まで呼んでくるなんて…!」

 

三人は震えながらも、それでも大道寺を見つめる。

 

 

「我が名は大道寺なり!我も仕り参戦だ!!

貴様らの熱きたるや闘志、我に見せてみろ。

 

我も全力で、貴様らを潰そう――!!」

 

伝説の先輩…大道寺は、指の骨を鳴らし、虎に似た眼差しを向ける。

 

貴公達よ、全力で我にぶつかって来い。

さもなくば、期末試験は不合格となりうるであろう、我は貴様らを全力で潰しに掛かる――来い、死ノ美を極めようぞ―――!!




今回の後半編くらいの所、少しガバガバだったかな?
そうです、スペシャルゲストたるは大道寺先輩でございます、お久し振りですね。
蛇女子学園襲撃以来だったかな?大道寺先輩、基本あまり出番ないので難しいですよね。
でもようやく出せたぁ!
それはそうと、大道寺先輩ってジョジョの空条承太郎に似てるって言われてますよね。
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