ドラクエ11発売おめでとうございます。
今モーレツにハマっています、めっちゃ面白いです。自分はPS4でプレイしてますがこれがなんの、画質が良いわ大きいわでなんのって…
おおっと、カグラの話でしたね。
明日はどうやら閃乱カグラ シノビリフレの情報だそうですね、私はswitch持ってないので何とも言えませんが、恋愛好きな貴方達にとっては待ってました!なのでは?
この人は強い。
今まで見て来た忍よりも、ずっと強い――
焔ちゃん、雪泉ちゃん、雅緋ちゃんよりも…勢揃いになっても歯が立つかどうかでさえ、曖昧だ。
その名も大道寺先輩。
伝説の先輩という異名は伊達では無く、実力に見合った相応しい風格だ。
大道寺先輩は忍転身を既に終えていたのか、黒い学ランの制服を羽織り、背中には天上天下唯我独尊の文字が記されており、長かった茶髪は、ファサファサの黒い長髪…野生で生きて来た人間みたいだ。
腹に見える腹部の筋肉は逞しく、腹筋が割れており、そこらのプロレスラーを軽く殴っただけで相手を瀕死に追い込みそうな位だ。
先ほど、視界を埋め尽くすほどの数多い石柱を一気に崩壊させた大道寺の秘伝忍法は【天地閃乱猛虎拳】――
虎の覇気を纏った気合玉。
虎のような顔をした闘気は、獲物を狩るかの如く、牙を剥き出し、飛鳥達の方面へと真っ直ぐ向かい、周囲の障害物を破壊していったのだ。
この秘伝忍法をまともに食らっていたらどうなってたことか…タダでさえ相手はそこらのプロの忍やヒーローを凌ぐ強さを備えている。
そんなヤツとまともにやり合っても、勝算は薄い…
ハッキリ言ってこの状況、詰んだと言っても過言ではない。
「さぁ、行くぞ!!」
大道寺は覇気を孕んだ声で叫び、足で地面を蹴ると、地面はヒビの入った亀裂を生じさせ、地面が割れる。
そして凄まじい跳躍力…大道寺は三人に一気に追いついた――
「ふぇ!来たよコレどうするの!?」
雲雀が涙目で萎縮してビクビクと震えている。
目には薄っすらと涙がたまっており、先ほどまでの威勢が今では台無し。
「雲雀!俺の後ろに隠れろ!」
柳生も若干震えてはいるが、それでも雲雀だけは…と言わんばかりに、傘を開き盾に構えて雲雀を自分の後ろに避難させる。
「来る…!」
飛鳥も二人と同じだ。
大道寺先輩という強敵に挑むのは怖いし、勝ち目が薄いのは眼に見えている。
しかし、ハンデがあってあのスピード、あの秘伝忍法の高威力…
忍には効果がないのか?いや…そんな筈がない……
しかし、向かってくるのであれば、此方も返り討ちにするのみ…
「秘伝忍法――【二刀繚斬】!!」
闘気を宿した刀を、前方目掛けてやって来る大道寺に合わせ、斬撃を飛ばす。
自分から突っ込んだら腹を持ってかれ跡形もなく吹き飛ばされKOされるだろうと判断したから、秘伝忍法を応用して斬撃を飛ばしたのだ。
下手に動くよりかは、適切な判断といえよう…しかし――
「ふん!」
大道寺はニヤリといやらしく口角を吊り上げる。
大道寺は避ける素ぶりもなく、秘伝忍法をもろに食らう。
しかしそれは、突進して飛鳥の突然たる秘伝忍法に避けきれなかったのではなく、ワザと食らったのだ。
服が僅かながらに切れ目が入っただけであり、これといったダメージは与えれていない。
「う、嘘ッ!!?」
「これで我を倒せるとでも?甘いわッ――!!」
そして大道寺は飛鳥の腹部に掌を思いっきり押し付け、飛鳥は難なく吹き飛ばされる。
「キャアぁぁあああぁぁぁあ!!」
「飛鳥ちゃん!」「飛鳥!」
ドスン…と遠くで音が聞こえた。
飛鳥が吹き飛ばされた場所だ…遠いため姿を確認出来ない。
「ハッ!あの程度で我に勝とうなどと…笑止千万なり!
言ったはずだ、全力でかかって来い…と。
アレがヤツの全力なら、合格は不可能…一流の忍になるなど夢のまた夢の話だ」
「…!」
大道寺の軽んだ挑発に、雲雀はキッと睨みつける。
先ほど見せていた弱虫の自分はどこにもなく、拳を握りしめ思わず手を出しそうになった。
仲間を傷つけられるのも嫌だが、仲間の悪口を言うのももっと嫌だ。
純粋で優しい雲雀だからこそ怒れる…しかし、雲雀は目こそ睨みつけてるものの、怒りを露わにしなかった。
つまり、怒りを抑え込んだのだ。
「ほぉ、こりゃ良いねえ…やるねあの子…」
モニター室で生徒達の行方を…行動や様子を観察してたリカバリーガールが、雲雀を見て感心した。
大道寺の挑発に乗らなかった。
それはとても良い判断だ…相手は敵であるのなら、挑発を行う敵もいる…
自分の感情をコントロールし、どう上手く使うかもまた、この先社会では大きく役立つ。
また挑発に乗ってしまえば、それこそ相手の思う壺だ。
雲雀…あの子は子どもっぽいと言う噂は耳にしていたが…強化パトロールか、或いは学炎祭を通してなのか、成長している。
「それに比べて…あの子達と来たら…最悪なコンビだねぇ…」
リカバリーガールがため息をつく。
その視線先にあるモニターの映像は、緑谷と爆豪チームだ。
オールマイトの距離を離れるべく、緑谷が後退したところ、後ろにいた爆豪がオールマイトに突っ込もうとした矢先に、緑谷とぶつかり、二人はオールマイトの前で色々とやらかしていた。
連携は取れない、相性は最悪、言い争い勝手に自滅…
正に最悪なコンビだ…
あの二人はきっと…緑谷がワン・フォー・オールを持って成長したとしても、爆豪が最初っから恵まれた才能を持っていたとしても、連携として役に立たなきゃ意味がない。
「他の子達は、良いんだけどねぇ…」
葉隠・障子ペアはスムーズに進めている。
相手はスナイプ…ホーミングの個性を持つ彼ならば、超圧縮おもりがあったとしても、銃弾でなら意味成さない…
葉隠は姿が見えないため、今どこにいるのかは不明だが、障子がついてるので問題は無さそう…
飯田と尾白ペアも良い感じだ。
パワーローダーの独壇場とも言えるステージを難なく突破してってる。
互いを信じ合える連携、判断力、適正力、行動力、どれも素晴らしいものだ。
特に飯田天哉――彼の成長は凄まじいものだ、保須市の事件後に何か進展があったようだ、感心する。
「轟・八百万ペアは、良いっちゃあ良いが…何処か違和感があるねぇ…」
轟はそうでもないのだが、問題は八百万にある。
表情が何処か崩れて調子が悪そうに見える。
恐らく不安によるものだろうか…演習試験という立場で自分が如何にどう動くか…
彼女の個性なら何でも物は創り出せるし、役に立つのも幅広い…筆記試験も学年一位を取る彼女…一体何が不安だというのか?
「まあ…ボチボチって感じかねぇ…あっ、柳生が動き出したね」
「秘伝忍法――【氷の足】!!」
柳生の頭上から巨大な烏賊が出現する。
その烏賊は大道寺をなぎ倒すかのように、氷を纏った無数の足で、鞭のように頑丈な触手が大道寺に襲い掛かる。
誤解を招くようだけど、これは戦闘だ。
決していやらしい意味ではない。
「甘い!――喝ッ!!」
「何ィ!?」
大道寺は軽く喝を入れた覇気を放つと、烏賊の触手全てが吹き飛ばされ、柳生も軽く吹っ飛ぶ。
まるで巨躯の獣が大きな雄叫びを上げたかの咆哮に似た気迫。
「次は…」
「忍兎ン!お願い、救けて!」
雲雀が相棒の兎を呼ぶと、何処からともなく金斗雲に乗った兎が駆けつけてくる。
大道寺は「来たか…」と小声で呟くと、忍兎に視線を戻す。
忍兎がこちらに頭突きをかましに来る、大道寺はその頭に拳を入れる。
ギュムッ!とした柔らかい感触が拳に伝わり、痛くはない。
そして案の定、忍兎は跡形もなく吹き飛ばされる。
「ふっ…獅子は兎を狩る…とはこの事よ…」
大道寺はフッと鼻で笑い、雲雀に視線を戻すが…
「む?居ない…だと?」
先ほどまでそこに居たはず…
まさか…
「囮のために呼んだのか…!!」
なるほど、これは一手やられた。
危機的状況になった雲雀は、ただ単に忍兎を呼んだ訳ではない…
忍兎を敢えて囮にしたのだ。
そうだ、闘うだけではない…時には知恵を使わなければ勝てない敵もいる。
不覚。
まあ良いだろう…しかし、雲雀は何処にいるのだろうか?
周りを見渡しても見つかる気配もない…だが気配は確かに存在する…
この近くにいないとすれば…一体?
「……ッ!まさかヤツ――!!」
石柱の障害物が無くなったこの場所で、隠れながら行くのはまず不可能だろう…
しかし、大道寺が強すぎる余り、彼の動き一つ一つに土煙が立ち上がる。
幸い地面に砂が混ざっている、そのお陰で視界が悪くなるのは好都合だ。
「早く!早く!」
雲雀は柳生を背中に背負いながら走ってゲートまで近づいて行く。
大道寺が本腰入れてこちらに向かって来たのは、作戦がどうであれ願ったり叶ったりだ、成功した。
後は、如何にどう大道寺から振り切れるのかが重要だ。
超圧縮おもりのハンデがあるとは言え、相手は化け物クラス…敵なんて生易しい存在な訳がなく、妖魔と呼んでも過言ではない相手だ。
「すまん、雲雀…俺としたことが…」
「ううん、謝ることじゃないし全然……
モタモタしてると、倒されちゃう…」
「案ずるな、我もう此処に来たり――」
「へっ!?」
「なぁッ――?!」
後ろから声が…振り返れば、当然そこには大道寺の姿が――
「やるな…だがこれしきの程度、我には通用せんぞ!」
大道寺は雲雀の正面へ回り込むと、腹部目掛けて拳を入れる。
飛鳥の時も同じだが、秘伝忍法を使わずしてのこの威力、恐れ入る。
「アァッ!」
「雲雀!」
雲雀は大道寺の攻撃を受けたことにより、簡単に吹き飛ばされ、背負ってた柳生を手放してしまう。
そのためか、柳生も同じく吹き飛ばされる形となった。
「半蔵の忍学生よ、貴様らの実力はそんなものか!?
甘い、温い、浅い!もっと、命を燃やせ、命を削れ、我の魂にぶつけてみせろ、我は死の美を求める――!!」
地面に打ち付けになった、負傷した仔兎のような雲雀。
雲雀が傷を負ったことに、怒りを燃やした目を宿す柳生。
だが、私怨で大道寺に、勝てるものなら誰だって苦労はしないだろう…柳生も高ぶる怒りをなんとか抑え込み、大道寺を睨みつける。
(雲雀を…!!いや…俺が大道寺先輩とまともに戦っても、勝ち目はない……
『コレ』を使うのも気が引ける…何よりコントロールが出来ない分、雲雀が近くにいる…アレを使えば大道寺先輩に攻撃が通じるとしても…雲雀を巻き込むことは出来ない――!)
柳生は悔しそうな表情で、眼帯に触れる。
禁術を解放しても良いが、周りを巻き込むことは論外…
例え雲雀の相手が飛鳥だったとしても、最も嫌悪する爆豪だとしても、セクハラをして来る葛城だったとしても、仲間を巻き込むことは出来ない。
こんな状況で冷静な分析をするのも…いや、こう言う状況だからこそ冷静でいなければならない。
相手が強いのは分かる…だからこそ、冷静になり他に勝つ方法を…目的を達する方法を考えなければならない。
「さて…どうした…ものか」
大道寺相手に、並みの秘伝忍法は使えない。
忍のスキル、小細工も通じない。
囮は雲雀で検証済みの為、二度は掛からない。
そもそも、大道寺を相手にしなければ先は進めないのでは?
パワー、スピード、耐久性も群を抜けている。
自分たちより格が上…忍の世界にはこんな猛者がいるのか…
あらゆる思想が連鎖するように自然に浮かび上がり、気が遠くなる。
どうしよう、勝てる気がしない――
「だが…このままそう簡単にやられる訳にはいかない…」
勝てない相手だからといって、やられる訳にはいかない。
自分が忍の社会に貢献し、世界に羽ばたくなら、きっとこういった理不尽な出来事が山ほど出て来るだろう…
妖魔討伐なんて一番に挙げられてる例だ、此処で躓いたままでは一流の忍になれる訳がなく、亡くなった妹に会わせる顔もない。
だから、これしかない…
「雲雀…大丈夫か…?」
「柳生…ちゃん…うん、雲雀は…大丈夫……」
柳生の気配りに、雲雀は大丈夫と頷いた。
柳生の決意を宿した目を見つめた雲雀は、柳生が何をやるのか…華眼を持つ彼女には、柳生の考えてることが何となく理解した。
その上で、雲雀はコクリと頷く。
柳生は番傘を杖代わりにして起き上がり体制を治し、雲雀はジャージについた汚れを払い、立ち上がる。
――ほう、良い眼だ…悪くない。
大道寺は不敵な笑みを浮かべる。
それは、二人が立ち上がったからか、それもあるが…一番の理由は決意を固めた二人の眼つきだ。
自分たちが危機的状況に陥りながらも、負ける気など微塵もなく、抗い続けようと、武器を手に取る。
命を削り、燃やし、死の美を極めんばかりに歯を剝きだす。
懐かしい…昔、竜型の妖魔と戦った時以来だ…
例え自分たちより上の人間がいたとしても、それでも立ち向かう…
コイツらはよく分かっている。
忍には当然、自分たちより上の人間など数多く存在する。
当然、大道寺より上の忍など、半蔵や小百合を除いてもゴロゴロ…それこそ数が数えきれない程に存在する。
世界は広い…だから、その中で忍は輝いていく。
まるで夜空に輝く無数の星のように、銀河に輝く星のように、忍は存在する。
自分たちよりも実力が上な忍がいるからこそ、時に任務で強敵と鉢合わせになることもある…
この試験は、その体験版と言っても過言ではない。
だから、大道寺は彼女たち三人と相手するには丁度良い適材する人物なのだ。
この世は自分たちが思ってるほど、そう甘くはない…
だから強く生きなければならない…弱肉強食の世界で生きてきた大道寺だからこそ、強くなることが、強く生きることが出来たのだ。
(勝てないと分かっておりながらも、あくまで勝負を選ぶか…嫌いじゃない)
さぁ、かかって来い…
その全てを潰す、真正面から貴様らの攻撃を全て受け止めてみせよう。
「大道寺先輩、一つ…忠告しておきます…」
「ん?何だ?」
「俺たちの実力では、先輩には勝てません」
そりゃそうだ。
何を今更…なんて、周りにいる忍達なら嘲笑っていただろう…
大道寺の表情は変わらない…何が言いたいのだ?
「けど…だからこそです…」
柳生の隣にいる雲雀が口を開く。
突然喋り出した雲雀に反応する大道寺。
「俺たちは、負けるつもりもありません…」
「ほぉ…!」
面白い。
なるほど、そう来たか…
この状況でまだ、それを言い切れるか。
勝てなくても、負けるつもりもない…至って極シンプルな言葉だが、嫌いじゃない。
此奴らの目はまだ死んでいない…
いつ振りだろうか?
ここまで自分の血が騒ぐのは…
凛先輩の時以来か…久しい…あの人のことを思うと、今までの記憶や思い出が昨日のように鮮明に蘇る。
しかし今は試験中だ…今は思い出に浸ってる場合ではないと、軽く首を振る。
何にせよ、ここまで自信満々にそう言われたら、此方もそれ相応な応えを返すしかない。
「答えは答えで返す…それが世の中の礼儀だ…
良いだろう、受けて立とう…!来い!!」
二人まとめて相手にしてやろう。
本来ならば三人な筈だが、肝心なリーダーである飛鳥は今はいない…気配も感じない…恐らく気絶してると見なして良いだろう。
大道寺の強者の笑み…しかし、その笑みも時には崩れることもある。
「行くぞ雲雀…」
「うん、柳生ちゃん!」
二人は一気に気力を高める…
ふむ、気力の上昇…ん?
「因みに…普通の連携とかじゃありません…」
「こういうの…あまりやったことがないから、成功できるかどうかも分からないけどね…!」
「何…?貴様ら…」
――まさか。
「はぁああぁ!秘伝忍法――【薙ぎ払う足】!!」
「秘伝忍法――【忍兎でゴロローン!】」
柳生の頭上に又しても巨大な烏賊が出現。
雲雀は倒されたはずの忍兎を召喚させる。
どこからどうやって来た…なんてツッコミは控えめに…
巨大な烏賊は、触手を上手く使いして殴りかかり、忍兎は雷を操り、大道寺ではなく、烏賊の触手に電撃を与える。
烏賊は氷ではなく、雷を纏い、電撃を纏った強靭な触手で、一気に追い立てる。
「合体秘伝忍法――【烏賊の蒼雷】!!」
巨大な烏賊に巨大な雷を纏う合体技。
これは流石の大道寺も驚きを隠せず、そのまま顔に出してしまう。
まさか、合体秘伝忍法を使って来るとは…
凛が居ない間、今まで孤独で一人で生きて来た大道寺からは考えられなかった発想だった。
――合体秘伝忍法。
秘伝忍法同士が合わさった忍術。
相性が良かれ悪かれ関係あらず、秘伝忍法であれば、通常の忍術を上回る強さをを解放し、比べ物にならない威力を発揮することが出来る。
しかし、秘伝忍法同士の合体を行うには相応なる体力と気力が必要なのだ。
成功できるかどうかも、未熟ならば成すことは不可能。
「フッ…初かもな…合体秘伝忍法を使う忍を目の前にするのは…」
何度も言うが、大道寺は強いゆえに年齢的にはもう大人だ。
留年をし続けてる為、当然忍社会に出ている筈が無く、凛以外の忍と闘ったことなど数人しか居ない…
相手にしてるのであれば、せめて野生に生きてる猛獣くらいだ…
「だが、敢えてこれを受けよう…
合体秘伝忍法…それを真正面からぶつかるのもまた一興だな…!!」
馬鹿げてる。
そう言われてもおかしくはないかもしれない…
秘伝忍法さえ使えば相殺だって出来るだろうに…直接受けに行くとは気が狂ってる…
そう思われても仕方がない。
しかし、皆んなは知らない…これが、大道寺の強さだと言うことを。
どんな圧倒的な力を前にしても、心が折れぬ限り人は負けることはない、何度でも闘うことが出来る。
半蔵学院に入学した時、初めてそう教えてくれたのが凛先輩だ…
あの人がいたからこそ、今の自分がいるわけで、自分が強くなれたのだ。
合体秘伝忍法と言う驚異的な力を前にして、自分が立っていられるか…
もし自分がこれを前にして受け止めれば、自分はそれよりも上…強いことが証明される。
これは強者の余裕でもあり、大道寺にとっての…自分への挑戦でもある。
此処は試験だ、飛鳥たち三人を試験する立場だ。
だが自分も留年生である立場…自分も半蔵学院の学生だ、少しくらいの我が儘、目を瞑ってくれないだろうか…
電撃が体全身に伝わる。
烏賊の強靭な触手は、大道寺に殴りつけるかのように、何度も何度も触手で全身を打ち付けて行く。
強靭な触手+強力な電撃…この2コンボはとても相性が良いと言える…
秘伝忍法同士であれば合体秘伝忍法は使えるが、相性によっては更に上に行くことも出来る。
流石の大道寺もこれはキツイのか、効いている。
辛い表情を立てており、激痛を堪えている。
合体秘伝忍法…脅威的な力だとは認識していたが、まさかこれ程とは…下級生…ましてや一年生にしてこの威力、賞賛に値する。
だが――
「時間は…切れたようだな」
巨大な烏賊は消え失せ、忍兎も消えた。
今この場にいるのは、柳生と雲雀二人組のみ…
二人の合体秘伝忍法をまともに食らった大道寺は、息が荒く、ボロボロではあるが、体勢を崩すことなく、一歩も下がることなく、立っている。
普通の人間ならあれを喰らえばあの世行きは確実だろう…
プロヒーローや忍でも、最悪死んでしまうケースの高い高威力を秘めた忍術…それを、大道寺は…
「まさか…アレを食らってまだ…」
「あれ?もう…立てないや……」
柳生と雲雀、二人は全ての体力を秘伝忍法に注げたのか、それとも合体秘伝忍法による疲労感か、どちらにせよ二人は意識が無くなり、目を瞑り倒れてしまう。
気絶。
息もあるし乱れていない…至って正常だ。
命に別状はない。
大道寺は医療の知識に関しては、一般人と比べて半歩劣るが、常識な範囲は身につけてるので問題ない。
大道寺はゆっくりと二人に歩み寄る。
――惜しかったな…
二人とも合格に値する位、素晴らしかった。
しかしこれはルール、ルールもまた勝負の一つ…
二人が如何に勇敢だったとしても、全員気絶した以上、タイムリミットが来るまで待つしかない。
本当なら気絶していれば敵に簡単に殺されるので負けなのだが、ルールの中に「気絶したチームは負け」なんてものは一切書かれてなかったので、待つしかない。
時間…そう言えばどのくらい時間が経ったのだろう?
『報告だよ、条件達成最初のチームは轟・八百万チーム!』
ふと疑問の念を抱いてるとアナウンスが流れる。
最初に条件達成したのは、推薦組の二人だ。
条件達成すれば、ああ言った放送が流れるのか…
まあ別に問題はない、こちらは三人とも片付いた…後は時間を待つだけだ。
残り時間を見てみると20分もある。
暇だな…どうするか…気絶してる三人をロープやら何やら捕縛出来そうな物を探して拘束するか…
しかしそれらしき物はこの場所にある筈がなく、残念ながら三人を捕縛するのは無理そうだ…
なら気絶から回復したところまた再戦すれば問題ない…
大道寺はゲートの方に視線を戻す。
ゲート付近には当然誰もいない…再びゲートの方へ向かうか…と、足を出したその途端、少し引っかかることがあった。
(本当にこれで良いのか……?)
足を止める。
根拠のない疑問に、彼女は後ろを振り向く。
その視線の先は飛鳥の方向だ。
(……アイツ、あんなに弱かったか?)
確かあの時、我は飛鳥の腹に思いっきり拳を入れた。
超圧縮おもりで攻撃は半減されているため、食らって気絶したとしても、そこまでか?
いや、違う…何か可笑しい…
あっ、そう言えば――
雲雀にも同じく力を入れた筈だ…しかし、ヤツは耐え凌いだ。
可笑しいぞ?
雲雀が耐えれたのであれば、飛鳥も…
人によって変わるかもしれないが、飛鳥も雲雀も変わらない筈…ましてや雲雀は一年生、飛鳥は二年生だ…
大道寺の一撃を食らった雲雀が立てれたのに、飛鳥だけが気絶したままというのも可笑しい…
しかし現にヤツはこちらを攻めてこない…
あの時から一度も姿を現していない…
気配は…感じない。
いや、待てよ?
気配が感じないのは、気絶してるからであり…
ん?
「飛鳥…お前まさか…」
目を細めて飛鳥の吹き飛ばされた方を見る。
しかし、飛鳥の姿はどこにも見当たらない。
障害物が一切ないこの場所に隠れるものは何処にもない、仮にあったとしても気配で簡単に探ることが出来る。
周りには何もないのに…飛鳥の姿が一つたりとも見当たらない。
一応再確認としてゲートの方に振り向く。
しかし、やはり当然というべきか…飛鳥の姿が見当たらない。
と言う事は…
「待て、ではヤツは今…何処にいるのだ?」
ゲート付近にいなければ、見渡す景色にも、何処にもいない。
おかしい…ステージ以外の場所は柵で覆われてるし、仮に出ようにしてもリカバリーガールが報告を入れる筈…しかし、リカバリーガールから不正行為による宣告もないし、あの老婆は目が鋭い、見落とす筈がない。
飛鳥は生真面目な性格だから、不正行為は元々考えられない事だが…
じゃあ何処にいる?
待て待て…そもそも気配すら感じないとは、どういう――?
考え事をしていると、地面から何か気配を感じる。
気力…忍による独特な気配…これはまさか…
「地昇竜!!」
ドパァアァン!
「――ッ?!」
突然、地面から…大道寺の足元から現れた少女は、刀を剥き出しにして大道寺に攻めに来た。
大道寺は躱すことが出来たものの、僅かながらに反応が遅れた為、飛鳥の刀が頬に掠る。
地面から突然…これは…コイツは――
「柳生ちゃん、雲雀ちゃん…ごめんね、そしてありがとう…もう大丈夫だよ、私が来たから!!」
飛鳥、ここにて再登場。
脇差しに納めてた刀を手に持ち、地面から飛び出るように出て来た…
飛鳥が突然やって来たことに驚いたが、一番驚いてるのは…飛鳥が地面から現れたことに驚いた。
地面から現れたという事は土遁の術?
違う、もしそうであれば気配は感知出来る。
昔サバイバルで生きて来た自分は、野生的な勘を身に染み付いてるので、簡単に見破る事が出来る。
地面から何か来る…そこは分かってはいたが、反応が遅れた。
そもそも、土遁の術であれば直ぐに気付けるので、土遁の術ではない…
いや、これは遁術――
「私の術は土属性ですから…」
土属性による攻撃…それならばあの攻撃に納得がいく。
土に紛れるのみならず、気配を完全に消す事が出来る忍術…
大道寺の察知能力からは完全に隠しきれることは出来ないが、それでも効果は充分に値する。
戦闘では気配を消せば違和感を生じるので直ぐに見破れるが、離れた場所から気配を消すのはとてもいい名案だ。
一度標的を見失えば、相手が何処にいるのか…分からなくなってしまうからだ。
「不覚…又しても一手やられてしまったか…」
頬に流れる血を、親指で拭う。
飛鳥から放つ気はやけに高く、先ほどとは違う…
緑色のオーラが視可出来る程なのだから…
「面白い、来い飛鳥!」
「……大道寺先輩、さっきは簡単にやられたけど…次は…そうは行かないからね?」
「何?――ッ?!」
飛鳥の意味深な発言に眉をひそめる大道寺。
しかし、飛鳥が息をついた途端、その気は最大骨頂にまで達し、緑色のオーラが彼女を包み込む。
「秘伝忍法を使用するには、体力が必要なんだ……だから、私はずっと溜めてた…この時のために……」
ポニーテールを止めてた白い紐は解かれ、髪がストレートに下される。
緑色の闘気は疾風の如く風を纏っている。
刀にも闘気が纏っており、空気を切り裂くかのように思わせるその気は、流石の大道寺も冷や汗を垂らす。
「……真影…か」
これぞ、真影の飛鳥。
この姿は、かつて蛇女子学園で道元が召喚した妖魔・怨楼血と戦った際に、超秘伝忍法の力を借りて、覚醒したもの。
紅蓮の焔、氷王の雪泉、そして…真影の飛鳥。
真なる影…それは彼女のことである。
飛鳥は、柳生と雲雀が戦ってた間…ずっと気力を高めていたのだ。
未熟な自分では覚醒することなどまず不可能…
しかし、気を高め、体力を温存すれば覚醒する可能性がゼロではなくなるのだ。
高めた気を一気に解放すれば、覚醒する事が出来る。
頭を使う彼女ではないが、戦闘になれば闘うたびにセンスが輝くのは、爆豪に負けず劣らずだ。
「行きますよ…大道寺先輩!!」
飛鳥が叫ぶと、大道寺はつかさず殴りかかる。
ハンデを背負ってる上での本気の大道寺。
殴りかかる速さも、先ほどより上昇している。
飛鳥は大道寺の拳を食らう。
だが…その途端飛鳥の姿は消えた――
「なッ!?」
残像。
あの大道寺でさえ目にも留まらぬスピードを解放する飛鳥。
周りに空気を切り裂く音が聞こえ、流れが読めない。
速すぎて、何処にどういるのか…気付けば飛鳥の残像が何体も見える。
まるで影分身を行なってるかのような忍術…
影分身とは違うが、しかし残像をこれ程までに出すのは見た事がない…
昔の凛よりも強い…そう断言しても良いだろう…
「たああああぁぁぁああああーーーーーーーーーーー!!!!」
大きな叫び声に、大道寺は後ろを振り向く。
そこには、二つの刀を振るい掛かる彼女の姿。
「…見事だ――」
「はぁ〜…やったああぁぁ…」
大道寺は腕にハンドカフスを装着されており、飛鳥はへろりと座り込み、解かれた紐を結んでいる。
『飛鳥・柳生・雲雀チーム条件達成だよ!!』
勝負はついた――
アレでもまだギリギリな方だ。
もし大道寺先輩が超圧縮おもりを装着していなければ、確実に避けられていたに違いない。
勝った…訳ではないが、隙が出来たところを突き、ハンドカフスを装着させたので、この場合完全に勝ったとは言い切れない。
しかしそれでも、ルールはルール。
条件に従うのが試験官の務め、飛鳥は気絶してる柳生と雲雀を見つめ、物申し訳ないような顔で見つめていた。
「二人に…酷いこと、させちゃったかな?」
これは作戦ではない。
それは分かってる…しかし、自分の為に胸を張り、命を削ってまで大道寺先輩を止め、時間稼ぎとして戦ってくれた二人には感謝しているが、二人が傷ついたことに変わりはない…
これが自分が建てた作戦ではないにしても、自分から大道寺先輩を引き剥がしてくれたことに変わりはない。
「案ずるな…貴様の所為では無い…」
今まで黙っていた大道寺が口を開く。
飛鳥は悪く無い、言われてみればそうだ。
これが飛鳥自身による作戦なら、戦場とは言え謝罪しなければならないだろうが、これは彼女達二人が、覚悟を決めての行動…
責められる要素も無ければ、責める理由もない。
むしろ、この時に出る口は…感謝でしかない。
飛鳥がいなければ、試験に合格出来なかった。
柳生と雲雀がいなければ、飛鳥はここまでの事は出来なかった。
信頼し、頼り、成長する。
仲間を思いやれるからこそ、ここまで持っていく事が出来た。
大道寺は、それ以来何も言わなくなった。
三人の戦いには天晴れだ。
合体秘伝忍法に、忍術による覚醒…伊達に雄英高校に在籍している訳ではない…つまり、飛鳥達の強さは此処にある。
半蔵学院こそが飛鳥達の居場所であり、半蔵学院もまた強さの秘訣だ…だが、飛鳥達にとって雄英高校はもう一つの居場所だ。
此処でしか学べない強さ…それを、彼女達は持っている。
大道寺は強い…飛鳥達よりもずっとずっと…
だが、飛鳥たちの持つ強さは、大道寺には無かった。
仲間を持たなかった自分には、自分にしかない強さを持っていた。
彼女たちも自分と同じく…
――良い仲間に出逢えたな…
大道寺は心の中でそう呟いた。
これ以上、もう何も言うことはない…ルールに従い、我は敗北した…
凛さんとの挑戦は…もう一足延びる事になるな…それも仕方ない事だ…
この世界は、勝敗が全てだ――
それから時間が経過し、演習試験は終了した。
一歩進んだ人がいれば、壁に阻まれた人、合格出来た人、不合格になった人、悲喜交々の中、期末実技試験が終了した。
――そして一方…奴らが三度、動き出そうとしてた。
「……」
「死柄木弔、また写真を…」
薄暗いバーの部屋、黒霧は死柄木の手に持ってる写真を見つめ、呆れながらもため息をつく。
その写真に映ってるのは緑谷…そして飛鳥だ。
死柄木にとってこの二人は相当憎いらしく、黒霧と漆月が見ればずっとこればっかである。
「煩え黙れ黒霧、俺が何をどうしようと俺の勝手だろ」
「相変わらず黒霧にはキツく当たるね〜…そう言えば、私が入る前から黒霧と一緒にいるけど…仲良いの?付き合い長そうだね?」
「テメェも黙ってろ、壊すぞ」
ケラケラ笑う漆月に、死柄木の殺意剥き出しの矛が彼女に向ける。
しかし彼女は何ともないのか、表情を変えずにまーまーと落ち着かせる。
しかしそれを鬱陶しがるように、死柄木は腕で彼女の手を払いのける。
「うわっ、今回ばかりは本当にキレてるね?」
「それにしても死柄木弔…緑谷出久はさておき…なぜ彼女の写真を?」
「あぁ?何故って…気に入らないからに決まってるだろ…」
黒霧の言葉に聞く耳を持とうとせず、二枚の写真を握りしめる。
くしゃくしゃと音を立て、死柄木は目を細める。
違う。
本当は違う、なぜ忍である彼女が気になるのか…
気に入らないのなら全部壊せと先生から教わった身だが、自分でも分からない…
ただ飛鳥が気に入らないとか、そういう単純的な問題じゃないんだと思う。
何か他にも…別な理由があるんだと思う…
忍そのものは気に入らない…不愉快だ、自分の計画の障壁になるし、邪魔な存在でしかない。
では、何故飛鳥だけ別なのだろうか?よく当たるのだろうか?
それが分からないのだ…無性に殺したくなってしまう、嫌がらせすら考えたくなってしまうほどに…
緑谷出久と何か似た物を感じる…それが何なのかすら、分からない…
分からないからこそ、怒っている。
二人のことも、オールマイトのことも、ステインのことも…
何でアイツが良くて俺は良くない?所詮気に入らないもの壊してきただけだろ?
なのに、この天と地の差はなんだ?
いや、今は二人のことも、ステインの事も考えたくはない…
――コンコン
ドアからノックの音が聞こえる。
三人ともドアの方へ視線を向ける、此方の返事を待つことなく、開く。
そこには、裏社会で名の知れたブローカーが立っていた。
「やあ、元気にやってるかい?連合諸共、久しぶりだな」
「あっ、ブローカーおじさん!久しぶり!」
「おっ、漆月ちゃんお久しぶりだなぁ」
漆月が手を振って来るにブローカーも思わず手を振る。
ブローカーも敵連合との関わりを持っているため、忍のことは知っている。
しかも、あの忍商会と良い縁があるそうで、魔門とは定期連絡をしていたり、同じ商売仲間、忍の案件についても手を出し協力してるとのこと。
「こっちじゃ連日、アンタらの話で噂になってるぜ?
何かデケェことがあるんじゃねえかってさ、そんで死柄木さん、アンタらに会いたいって輩が
「で?ソイツらは?」
死柄木は殺気を孕んだ声でブローカーを睨みつける。
写真は原型を保つことなく、粉々になる。
そして横一列になるよう扉から三人、…悪意を培う人物が薄暗い部屋に入ってくる。
「うわあ!此処が基地ですかぁ?手の人ステ様の人だよね?ね?!
水色の髪の子カァイイねぇ!」
右側に立つ少女は、学生服を羽織り、手をブンブン勢いよく振る。
「ねーねー!ここなら好き勝手暴れても良いんだよね?ボクの嫌いなヤツ、いっぱい殺しても…良いんだよね?!
任務以外に人殺しても、良いんだよね!?」
左側に立つボクっ娘少女は、紫色の和風を着用し、胸部には硬い鎧で固定され装着している。
背中に血に染まった大鎌を背負ってるのが特徴だ。
「やっぱ生で見ると気持ち悪いなお前は……」
真ん中には顔中つぎはぎになってる男性…
漆黒の色をした服とズボン、そして髪はボサボサ…
敵連合は敵と忍が集まり交わる事により、ヒーローと忍が絆を深めて行くように、敵と忍も絆を深めていく。
「ねー!あのさ、私も仲間に入れてよ!敵連合!」
――退ける度に、悪意を蓄え、力を増して、強くなる。
試験合格するの速スギィ!という訳で期末試験編はかなり短いですよ、まあ他の生徒達が描写されてないので当然ですかね。
そして最後、闇は蠢く――