光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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あれ?前書きで書きたいことあったんだけど、何だっけ?どうしよう忘れちったんだけど…
そう言えばそろそろこの小説も100話に突入ですね。
一年も経ってないのに100話って…なんか自分でも凄いって思ってしまいますねww
まあ僕以外にもいるかもしれませんけど…


90話「嵐の前触れ」

 

 

 

 

「ねえねえ、この寝巻き可愛いよね!ハート柄の!」

 

「う、うん…!飛鳥さんとても似合うよ…!」

 

店の中は私服やら寝巻きやら、オシャレな服やお淑やかな服、小さい子供用の服、可愛いデザインがプリントされた服など、絶え間なくズラリと並べてある。

見渡す限り数えきれないほど服が売ってることから考えて本当に商売繁盛、賑やかなんだな…それもそのはず、ここは県内でも誇るべき木椰区ショッピングモールなのだから…

しかし一店だけでここまで服が売ってるとは…他の店もいっぱいあるのに…1日で終わるのだろうか?

 

それは置いといて…

服が似合うかどうか…か。

飛鳥は美少女なのでどんな服を着ても似合うし可愛いものだ。

恋愛ものとかだとよく口にする物なのだが、これが本当に可愛いのだ。

だって美少女が普通の服を着るだけで際立つし、その人の服だけでもうレア物だ。別に変な意味ではないけど…

犬だってそうだ。

犬は元々可愛らしい生き物だが、服を着せるとどうだ?

新鮮さ故に可愛さが増し、愛着が強くなる。

犬には服など無粋だし、着せるのは単なる人間のエゴに過ぎないが、それは個人の自由…

つまり、服というのは人が着ることによって、違う意識を感じさせるのだ。

服というものはとても重要であり、大切なものだと改めて理解できる。

実際に服を着るのは当たり前かもしれないが、貧民街や貧しい国では、服などあるはずがなく、新聞紙で作った服や、ボロ布でできた服を着て耐え凌いでる人間も居る訳で、どうか服を大切にして欲しいと願う。

 

「緑谷くんは…?」

 

「あっ、えっと僕はね…これ!」

 

――ジャジャーン!

皆んなも笑顔になれる、オールマイトTシャツ!

値段は安く、オールマイトファンには人気でよく売れている。

 

「う、うん…ここに来てまでオールマイトのグッズを選ぶと…ある意味凄いなって感心するよ…」

 

別に良い意味ではないが。

飛鳥もあんまり知らなかったのだが、緑谷は重度のオールマイトオタクで、四歳の頃…ネット動画でよくオールマイトの動画を見ていた。

緑谷だけで再生回数1万を増やすほどだ、子供の頃からオタクなので、彼にオールマイトオタクと言っても、寧ろ褒め言葉でしかなく、逆に彼にとっては喜ばしき勲章だ。

 

「他のは…こういう文字の入ったTシャツとか…」

 

「あー、緑谷くんの服装スタイルって、なんか焔ちゃんと似てるね」

 

「えっ、そうなの!?」

 

実際焔の服のセンスは緑谷と同類だ。

緑谷のTシャツには、Tシャツという文字があり、シンプル過ぎて少し笑ってしまう所がある。

焔も緑谷と同じTシャツで、踊り子号と書いてあったり、弱肉強食とか、そういうスポ根が来てそうな軽いTシャツを着てる。

焔自身も気に入ってるし、緑谷自身も悪くはないと思ってるし焔と同じく自分も似合ってると思って居る。

まあ服なんてのは自分が良ければそれでいい訳で、パーティーや大事な時には服装はきちんとしておかないといけないし相手に失礼だが…

別に私服に着る分は問題ない…と思う。

 

「他にも草食男子…とか、英雄とか…」

 

うわぁ、ドンドン焔ちゃんみたいになってるなぁ…

なんて言えない。

まあ緑谷も別に焔紅蓮隊の事はもう気にしてない。

今の蛇女子学園…達のことはあまり良く思ってないが…

 

「飛鳥さんはもうそれで良いの?」

 

「うん、私も一通り寝巻きと私服とか買ったし…後は大きなショルダーバッグが欲しいなぁ…」

 

一週間となると相当な荷物になるし、買ったとしてもバッグが入りきれませんでしたじゃ意味がない。

今日は大変な日になりそうだ、他にも買わなきゃいけない物があるって想像すると、気が遠くなる…

だがその反面、楽しみながら見て回るって考えると案外そうでもない訳で…結局どっちなんだよ…

 

「飛鳥さんって、買い物とか好きなの?」

 

「え?う〜ん…どうだろ?あんまり買い物とかしないしな〜…なんで?」

 

「いやぁだって飛鳥さん結構楽しそうだし…べ、別に変な意味で言った訳じゃないんだけど…!!

 

そ、それに…女性って大抵こう言う買い物とか好きそうだな〜って」

 

確かに多くの女性が買い物好きだというのは分かる。

女性は子どもだろうと大人だろうと、服装には欠かさない。

友達に「この服買ったんだ〜♪」とか「綺麗でしょ!」とか言い合ったり自慢する子もいれば、オシャレを楽しみ満喫する人もいれば、デートの為に新しい服を買ったり、セレブの人が「これ良いね」って思っただけで、何十着も服を買ったりとする人も居るし…

つまり、服は女性に愛されてるのだ。

まあ服だけの話では無いが…

 

「あ〜分かる!私も一度は思いっきり買い物したい!って何度か思ったことあるよ〜…

でも一人前の忍になる為に日々精進しなくちゃいけなかったし、修行するのにいっぱいだったり、学校の勉強とか色々あって…ね?」

 

「ああそっか…飛鳥さんその頃からもう忍に向けて…

 

でも飛鳥さん忍なら忍転身で服は変えられないの?」

 

「あ〜…忍転身は元々戦う為にあるから、本来は私欲私怨で使っちゃいけないんだよね…」

 

それは尤もな意見だ。

神聖な忍転身を自分の服を変えたいなんて欲望だけで行うのは、本来いけないことだ。

別に禁止にされてる訳では無いし、諜報活動やスパイによっては服を変えなければいけないので、そう言った点ではありなのだが…

何も忍転身をする必要がない場合は、体力温存を考えて残しておきたいし、戦闘以外では使いたくない気持ちもある。

まあ、葛城は思いっきり私欲私怨で忍転身を使っているが…

葛城は何を注意しても治らないので論外。

 

「なるほど…確かにそれもそうだ…

ようは個性を使って便利にしてるみたいなもんだし、忍転身とは言え精神力が必要故に体力だって消費するんだ…

いざとなった時には立ち向かえないし、立ち回るのも難しいし、何より公共の場でやったら目立つからな……

一見便利な能力にしても実は複雑であって…」

 

「み、緑谷くん次早く行こうよ!!」

 

いつものザ・アナリシス。

話が長くなるのはたまったものでは無いし、ここで立ち話してたらあっという間に時間が無くなってしまうしキリが無い。

何とかして無理やり話を終わらすべく、腕を引っ張り違う店へと足を踏み入れる。

それと同時に緑谷の長い解析こそ終わったが奇声を上げた。

 

 

 

「いやあ、大きめなバックはこれくらいが良いよね!」

 

店を出て行く飛鳥は、嬉しそうにバックを見つめながら歩き回っていた。

バックは特に問題なく、予定より早く決まったので、後は昼飯をどうするかとか、他に行きたい所はあるか?とか、そう言うので言い合っていた。

 

「う〜ん…昼にはまだ一時間もあるし…どうしよっか?」

 

小腹こそ空いてきたが、今食べると言う空気でも無いし、早く食べるにしても30分前位だろう…

つまり、暇なのだ…他の店に回るのも良いが、疲れる…

こんなに人がいると、体も精神の方も両方ともキツいし疲労がたまる。

飛鳥は別にそうでも無いのだが、緑谷の場合、飛鳥と一緒にいるだけで心臓がバックんバックんと鳴るのだ、心臓保つかな…

 

「ん〜…他には…」

 

「あ〜、ならアイスクリームとか食べる?」

 

飛鳥が指指す所には、サービスエリア。

その近くでアイスクリームを販売してる所が目に付く。

なるほど…昼飯前に食べるのもアレだけど、今は暑いし休憩を取るには丁度良いかもしれない。

しかし一つ疑問に思ったのが、アイスクリームを販売してる店員さんだ…

 

どっかで見た覚えがある…

短い金髪に左右の目の色が分かれてるオッドアイ。

お客がやれ怒ってると店員が犬のような鳴き声で叫び、その悲鳴を聞いたお客が、怒りから顔を冷や汗でいっぱいにし逃げて行く(ソフトクリーム放り投げて)。

服は店員さんとは変わりないんだけど…

 

「ね、ねえアレって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜ご主人様〜♪……あら?」

 

「あ、やっぱり…」

 

飛鳥はため息をし緑谷は驚愕色に染まる。

いやいや、嘘でしょ?

何でこの人がこんな所で働いてるの?おかしくない?

 

「アレ?飛鳥ちゃん?どうしてここに?」

 

「それはこっちのセリフだよ両奈ちゃん…」

 

誰もが認め、誰もが驚愕する超が付くほどのド変態、Mの鏡と呼ばれる少女、両奈ちゃん。

 

「あ、あの飛鳥さん…この人って……」

 

「あ、大丈夫だよ緑谷くん!蛇女は大丈夫だから!ね?」

 

「そうだよそうだよ!両奈ちゃんを虐めてくれないとダメだよ、ワンワン!」

 

「両奈ちゃん、全然話が通じないね?」

 

緑谷が敵意に近い警戒心を持つのは無理もない。

相手が決して変態だから…という理由も一つ当て嵌まるが、緑谷が彼女に警戒心を抱くのは、この前の蛇女の件だ。

学炎祭で蛇女子学園が攻めに来た時、自分たちは彼女たちに殺されそうになったのだ。

当然、伊佐奈の事件を知らない緑谷には彼女が敵という認識しかないわけであり、彼女のことをあまり良く思ってはいない。

 

「う〜ん…まあもう学炎祭も終わったんだし、危害はもう加えないらしいから、安心しても良いよ」

 

「え、で、でも…」

 

それでも曖昧だ…

だって相手は蛇女子学園なのだ、どんな非道な仕事も平気でやり過ごし、一般人にまで手を出す悪忍…

最近は漆月とヒーロー殺しを捕らえるべく、規制が掛かり一般人に危害を加えるのは禁止と化す…となったので、多分どの道大丈夫なんだろうが…不安でならない。

例えるなら、重罪犯がようやく外に出られて、家に帰った時に近所の人が「や〜ね!殺人犯じゃないの嫌よ〜!」みたいな感じだ。

考えがアレだけどそこは許して?それとセリフの例えが近所のおばさんで御免なさい、し◯ちゃんに出てくる近所のおばさんレベルなんだけど。

 

「じゃあ両奈ちゃんのおっぱい揉む?」

 

「ブハッ!?!」

 

「ちょっと両奈ちゃんやめてよ!!緑谷くんタダでさえ女子恐怖症なんだから!」

 

「……え?」

 

――ボクのことそんな風に思ってたの?

いや、全然違うから。

女子との関わりが一般人よりも半歩劣るだけあって、実際は女子恐怖症なんかではありません。

そりゃ確かに奇声とか上げてたりするけど…それは唐突というか…何というか…慣れてないというか…

 

「え?そうなの?両奈ちゃんはてっきり、飛鳥ちゃんとデートしてると思ってたんだけど」

 

「なっ、なあああぁぁあああ!?!!」

 

「ふぁあああおおおええああっはぁらあ!?」

 

「飛鳥ちゃんと緑谷ちゃん、二人とも奇声凄いんだけど…」

 

流石の両奈も驚いたのか、二人同時の奇声に目を丸くして軽く引いている。

飛鳥はここで初めて顔を真っ赤にして、緑谷は凄いことに、燃えて灰になりかけている。

人間、ああやって燃えたらこうやって死ぬんだってことが痛いほどよく分かる。

それは置いといて…

まさかデートとして見られてるのか…

流石の二人もこれには少し衝撃を受けた。いや、緑谷は少し前々から思っていたのだが、流石に他人に言われるとどうも慣れない…と言うよりも恥ずかしい。

すっごく恥ずかしい。デートなんて言われると…どうしても。

 

――ああ、飛鳥さんに「両奈ちゃん冗談にしては悪い趣味だよ?何でこんな地味な人と?」とか、「いや辞めて私こんな人と一緒になんて思われてる!やってけれないよサヨナラ!」とか罵声を叩かれるんだろうな…

実際中学生の頃、友達がいなくて一人でヒーロー解析ノートを作ってる時に、自分でも気づかずブツブツ呟いてたのを女子に気付かれて「ねえ、あの緑谷ってキモくない?」

「何言ってんだろうね?」

「ちょっと、何あれ怖い…」

「今後とも近付かないで離れてよっか…」

 

辛い過去は経験済みだ、何もしてない…ただ呟いただけで女子からのこの仕打ち、それから学校ではヒーロー分析ノートに手を取ることはなく、自宅で夜遅くまで書いてたなぁ…懐かしい。

 

「わ、私よりも…緑谷くんにならもっと素晴らしい人がいるし…私なんか全然…」

 

――え?

 

「そっか〜、違うんだ〜…飛鳥ちゃんなんか優しいね〜」

 

―――あれれ?

 

飛鳥は頬を赤らめ視線を逸らす。

乙女らしい一面に、優しく暖かな…温もりのある感覚…そんな彼女に緑谷は見惚れていながらも、自分の予想を遥かに裏切られた。

しかしそれは決して悪い意味ではなく、寧ろ嬉しかった。

こんなモテもしない、冴えない自分に、飛鳥は自分以上に相応しい人がいるよ。

なんて言ってくれるのか、どれだけ優しいんだよ…

それが飛鳥の長所であり、彼女の魅力なのかもしれない…

緑谷も恋愛経験には疎いし、考えてもいないし、人を好きになったことはないが、飛鳥の魅力には見惚れていた。

 

そんなことを嬉しく思いつつも「あ、はいアイスクリームね〜、お釣りは無しだから」と言って差し出してきた。

ちょっと待って、アイスクリーム二つで300円、一つにつき150円で千円出したのにお釣り無しってドユコト?

 

「あの〜両奈ちゃん…お釣りの700円…」

 

「ブチますか?ぶっ叩きますか?ご主人様、殴りますか?両奈ちゃんを気持ちよくしてくれますか?」

 

両奈は頬を赤らめ、興奮しながら飛鳥に迫り寄ってくる。

その勢いに思わず一歩下がってしまう。

ああ、成る程…それでお客があんな過激な反応してたのか…

 

お客が怒ってたのも、店員から逃げ出したのも…両奈のコレが原因なのだろう…

相手を怒らせ、自分を殴らせる…ドMも戦闘以外にここまで来ると、もう取り返しのつかない、どうしようもない変人にしか見えなくなってしまう。

そのウチ、木椰区ショッピングモールの危険人物リストに載ってしまうのではないか?

 

「嘘だよ〜♪はい、どうぞ〜♪」

 

まあ彼女も流石にそこまで目立つのも逆に悪いと思うのか、お釣りを出す。

五百円玉一枚に、百円玉が二枚…うん、ちゃんとある。

お釣りを確認してから飛鳥はふとある事に気付いた。

 

「あ、聞きそびれたんだけどさ…両奈ちゃん何でここでバイトしてるの?お金が足りないから?でも蛇女なら大抵のお金は貰ってるハズだよね?」

 

「う〜ん…」

 

すると両奈は珍しく、真剣な顔つきに戻った。ただ単にバイトしてるだけじゃないのか?となると、訳ありの理由だそうだが…

両奈は意を決すると、そこにはもうドMの変態の面影がなくなり、悪忍らしい目つきに変わった。

 

「飛鳥ちゃん…と忍に関わってる緑谷ちゃんがいるなら…言っても良いかな…

 

 

あのね、『忍商会』を追ってるの…知ってる?」

 

忍商会?

飛鳥と緑谷は首を傾げる。

なんだそりゃ、忍商会…という名前からして忍が関わってることは間違いないと見なして良いが…

 

「伊佐奈が捕まった後にね、校舎を確認するために、妖魔を取り扱ってた研究所らしきものが見つかったんだけど…

 

そこにね、妖魔が一匹もいなかったの…」

 

そう言えば…蛇女子学園が二度崩壊した後、上層部が派遣した忍達が調べてくれたのだが、一向にも妖魔が見つからなかったのだ。

しかし鈴音先生が妖魔の写真を撮ったりしてたので、証拠はあるため先ず伊佐奈が造ってたことに偽りはないし、事実なのだが、問題が大量の妖魔がどこに行ったのか…だ。

事件の騒動に逃げた…というケースも考えていたのだが、あの後妖魔を見たという痕跡も無ければ、被害は出ていないそうで、誰かが持ち帰った確率が高いと言われている。

焔達が倒した…という事実もなく、蛇女が崩壊しただけで妖魔が死ぬことも考えにくい…

そこで、伊佐奈の部屋を調べたところ、交渉連絡先が書かれており、そこには『忍商会』という、忍集団の闇組織と関わっていたことが判明したのだ。

何でも最近じゃ違法薬物『トリガー』を一般人に渡して、無理やり人を敵に変えさせたりとか、突破性敵が少しずつ増えているとのこと…

被害が出るのは大体人口密度が高い地域や、公共の場などが多い。

 

「そこで、人口密度も集客力の高い場所でなら、裏の闇組織もここに来るのではないか?って雅緋ちゃんが言っててね、だからこうして店員さんに紛れて、両奈ちゃんも探してるって訳!」

 

両奈だけでなく、他の蛇女もショッピングモールに来ているらしく、どうやら忍商会の痕跡を追ってるそうだ。

顔も気づかれてるかもしれないし、不穏な動きで怪しまれるよりは…と両奈は店員に紛れて調査してたそうだ。

まあ端から見れば巫山戯てるように見えたが、両奈は両奈なりで探してるんだろう…

 

 

「忍商会…かぁ、

分かった!ありがとう両奈ちゃん、もし私たちも何か分かったりしたら教えるし、手伝うよ!」

 

そう言って二人は手を振る両奈に背を向け人混みに消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと色々あったけど…大変そうだね…」

 

緑谷には忍の社会についての知識は全くないので、首を突っ込めないが、取り敢えずそんな闇組織が動いてるってことだけは理解した。

自分たちの知らない所でも、こう言った物騒な件があるのか…と考えてると少し変な感覚がする。

 

「うん、でも…妖魔ってさ…強いよね?幾ら忍商会って連中でも、流石に妖魔は捕まえられないんじゃないかな?実力があるにして、妖魔を倒す忍がいたとしても、流石に捕まえるなんてことは…」

 

討伐より捕獲の方が難問だ。

妖魔に罠など効くかどうか分からないし、そもそもどう言った状況なのかも分からなければ、妖魔を捕まえるなんてあまりパッとしない。

そもそも妖魔は人の言うことを聞くのだろうか?

妖魔は忍の血によって造られた化け物なんだぞ?それを捕まえたとして連中はどうする気なのだろう…嫌な予感しかしないが、今のところ事件が騒いでない内は、まだ大丈夫なんだろう…

 

「考えてたらキリないな…そもそも私は考えるのあまり好きじゃないし…」

 

飛鳥はコーンまでヒョイっと口に入れ、アイスクリームを完食した。

緑谷も後もう一口で食べ終えそうだ。

せっかく休憩するつもりが、頭を使ってしまった…

まあこれは両奈の所為では無いし、仕方ない。

 

「忍にも闇市場とか…商売とかあるんだね…」

 

「うん…まあうじうじしてても仕方ないし…次、どこ行く?」

 

気分転換に何処か行きたい。

緑谷は最後に一口食べ終えると、考える仕草を取る。

次はどこに行こうかな?なんて考えていると――

 

 

「アレってもしかして…おっ!雄英じゃん!おーい!」

 

後ろから声が聞こえ、二人は思わず反応し後ろを振り向く。

痩せ方の男性…恐らく20代かそれくらいだろうか?飛鳥や緑谷よりも少し身長が高めの男がやって来た。

ああ、また声掛けられた…今までそう言う経験をして来たことがないので、呼ばれるのは慣れたが、話してる時に急に呼びかけることは滅多にないので、少し驚いてしまう。

 

「なぁー、サインくれよ雄英生、体育祭凄かったぜ?迫力あんなお前!」

 

その男は礼儀もないのか、何の抵抗もなく飛鳥と緑谷の肩を組むようにのしかかって来た。

勢いで思わず転びそうになるのを何とか堪え、飛鳥は「何この人…失礼な人だなぁ」と心の中で呟いた。

飛鳥にまで手を出すなんて…とは誰も気にせず、サインを責められる緑谷は苦笑しか浮かばなかった。

 

「アレ?お前ってさ、保須市でヒーロー殺しが捕まった写真にそっくり…?

てか、お前か!あそこに写ってたの!」

 

「あ、え、ええ…よくご存知で…」

 

バレないとは思ってたし、その事に関して一度も声をかけられたことはないが、まさか此処で声をかけてくるなんて…まあ此処はよく人が集まるし、こう言う見抜く達人…と言っては何だが、観察眼が鋭い人もいるだろうな…

 

「いやあ本当に信じられないぜ、まさかこんな所で()()()()()()!」

 

「……は?」

 

――また?

 

()()、お前も学炎祭凄かったぜ!しかも()()()()()()()()んだってな!?俺にも話させてくれよぉ〜…」

 

はぁ?学炎祭?

何で…そのこと……知って――

 

「ここまで来ると何かあるんじゃないかって、疑わしく思えちゃうよなぁ?」

 

――不気味な存在だった。

ただ、気味が悪い程に…とても禍々しくて…

 

「運命…因縁めいたもんがあるんじゃないかって…さ」

 

瞬間、緑谷と飛鳥の首に指がゆっくりと迫って来て…

背筋が一瞬にして氷のように凍てつき、冷や汗が止まらない…そして声のトーンが段々と暗く、不気味に…あの時と同じ聞き覚えのある声が…耳元に囁く。

 

「まあでも…お前らにとっては…雄英襲撃以来になるか……」

 

そして顔を覆い隠してた黒いフードから、顔が見える…二人はその人物の顔を…見た時、ただならぬ殺意の恐怖に、心も体も支配されそうになった。

 

コイツは…この男は―――!!!

 

 

 

 

 

「――取り敢えず、お茶でもしようか?

 

緑谷出久・飛鳥――」

 

 

「「死柄木…弔!!」」

 

 

悪の司令塔にして、悪の象徴の卵――

死柄木弔。

その顔は掌のマスクで覆われた姿ではなく、二人に初めて見せる素顔。

そして、悪は微笑む…正義の弟子と悪の弟子が隣り合う。






この時、善と悪が寄り添い、隣り合った瞬間――
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