復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
ネタバレ 「南斗人間砲弾!」
出掛ける仕度を済ませたマリとルリはシューベリアに一切声を掛けず、数名の護衛を連れて屋敷を出た。
その数名の護衛は腰に剣を差し、銃器の類など持ち合わせておらず、服装も古くて髪も長い。それはマリの直属の護衛騎士団である。
この直属の騎士団の数は10、全てがユリの花の名前に由来し、構成員は全て女性に限定されている。騎士団創設は百合帝国創設と同じであり、古くからある伝統ある騎士団だ。
主君であるマリを守る為に創設され、彼女が自ら戦場へ視察に向かった際には、その護衛に付いた。百合帝国が神聖百合帝国と改名すると、騎士団の数も増え、国軍と親衛隊の近代化の際には、直属の護衛部隊と共に戦車や戦闘機などの最新式の装備も支給され始めた。
当初、前線には投入されず、ずっとマリの警護任務だけであったが、本土に敵が侵攻した際にはこの女騎士団も前線へ投入され始め、その多くが戦場で無惨に散った。
神聖百合帝国解体の際には全ての騎士団が解散されたが、マリがルリと共に隠居生活を始めれば、人員を補充して再建され、同じく再建された護衛部隊や近衛兵と共に再び主君の護衛に就いた。
無論、伝統に則って入隊条件は設立当初のままである。
「さぁ、行くわよ」
「うん」
マリがルリの手を掴んだ後に問うと、彼女よりも背丈が20㎝程下の少女は笑顔で答えた。
その忠実なる女騎士達を連れ、二人は門の前で待っている乗用車に乗り、フォールド王国行きの”便”が待つ空港へと赴いた。
丁度その時、別世界では世界規模とは比べ物にならない程の事が起こった。一言で表すなら宇宙規模、否、超次元規模だろう。
とある岩と砂だけの惑星の衛星軌道上にて、30隻以上の宇宙戦闘艦や輸送船が浮かび。輸送船や駆逐艦、巡洋艦、戦艦に搭載された無数の揚陸艦や上陸用舟艇、輸送機がその惑星へと降下していく。
雪のように降り注ぐ無数の輸送機や上陸艇に無数のアラクニドバグズと呼ばれる巨大昆虫生物が眺めていた。
ただ眺めている訳ではなくバグの中でも尤も大型なプラズマ・バグと呼ばれる体色が暗い青のバグが腹部からプラズマを放ち、長距離対空射撃を行うが、衛生軌道上にいる侵攻艦隊からミサイルの雨のお返しを受け、他のバグと共に吹き飛ばされる。
この砂と岩の星に降り立った侵攻部隊は積んでいた未来的な装備の歩兵や未来的戦闘車両、重火器の等の荷を降ろし、迎撃に来た多数のグンタイアリのようなウォリアー・バグや飛行型のホッパー・バグと呼ばれるバグに攻撃を開始する。
輸送機や上陸艇、揚陸艦が運んできたのは我々が良く知る通常兵器だけではない。二足歩行の人型ロボット兵器もこの戦場に投入されており、両手に握られた人間サイズなら機関砲レベルの小火器を、押し寄せてきたバグに向け、発砲する。
『AT隊並び
全長4
「了解!第1中隊ならび第2中隊は俺に続け!他は左右を確保しろ!!」
『了解!!』
無線からの部下達の返答を聞いた後、両手に握った左右のスティックと両足に踏んだ左右のペダルを動かし、指示された場所へと向かう。
コクピット内には頭部のカメラを通じて映し出されるモニターは無く、ヘルメットに付いた専用ゴーグルが彼等の目であり、故に横や後ろからの攻撃に弱い。何故このような構造になったのかは、生存性を捨て、生産性を重視したからである。
ちなみに侵攻軍が装備しているATはスコープドッグ、型式番号はATM-09-ST、カラーリングは緑、ポリマーリンゲル液と呼ばれる液体燃料で稼働する。
元は侵攻軍の世界ではない別世界のギルガメス軍の主力ATなのだが、これについての理由は後程。
大多数の様々な兵装を施したAT部隊はそれぞれ指示された位置へ移動し、地上で一直線に襲い掛かったり、飛びながら襲うバグにGAT-22ヘビィマシンガンと呼ばれる人間なら機関砲クラスの機関銃を向け、連発で撃つ。機関砲クラスの攻撃を受けたバグは次々とバラバラになっていく。
惑星に降り立った人型ロボット兵器はATだけではない。モビルスーツと呼ばれる16mや18mの人型ロボット兵器がこの星に踏み入れ、バグを掃討していた。
このMSが持つビームライフルやバズーカはかなり強力であり、複数のバグが纏めて吹き飛ばされる。背中にバックパックと呼ばれるジェットパックを基準的に装備されており、一定時間の間飛び回ることが出来る。
16mのドートレス、特徴的な三つ目の頭部以外特に特徴はない量産型MS、手に持つビームライフルはかなり強力、主な稼働エネルギーは原子力。名前の由来は第二次世界大戦時の米海軍の急降下爆撃機ドートレスから取っている。これも元は別世界の新連邦と呼ばれる主力機である。
18mはストライクダガー、頭部左側に75㎜対空自動バルカンを武装し、右の直接機体背部にビームサーベルと呼ばれる筒を一本設置し、対ビームシールドを左手に持ち、右手には57㎜ビームライフルを持っている。この機体は地球連合軍の主力機であり、ドートレスとは別世界のMSであり、電力稼働で動いている。
強力な巨人兵器達は、その圧倒的な火力でバグを駆逐する。時には足で踏み潰す物も居たが、これは後程整備兵達に文句を言われるだろう。
だが、ATやMSばかりではない。
ゾイドと呼ばれる動物型兵器もこの戦場に投入されていた。元は惑星
地球から漂着した移民船によって文明はさらに発達し、ミサイル等の近代な武装が施されるようになり、ビーム砲まで武装に入り始める。やはり惑星Ziの人間も互いに戦う本能もあり、その際にはヘリック共和国とゼネバス帝国に別れ、互いに争った。
戦争が長引くにつれて、双方とも新ゾイドの開発が乱立し、その度に古いゾイドが後方に追いやられたり退役して行く。
復活させられたゾイドもあったが、戦略的価値がないと判断すると、復活計画も容赦なく斬り捨てられた。ゾイドの主なエネルギーは、レッゲルと呼ばれるゲル状の液体燃料だが、厳密なエネルギーは一切不明。侵攻軍が投入しているゾイドは全て共和国製の物で、以下の種類の共和国ゾイドが投入されている。
サソリ型小型ゾイドガイザック、クワガタ型小型ゾイドダブルソーダ、翼竜型小型ゾイドプテラス(ボマー仕様やレドーム仕様)、ヘビ型小型ゾイドステルスバイパー、オオカミ型中型ゾイドコマンドウルフ(火力と速度が強化されたアタックカスタム仕様)、アロサウルス型中型ゾイドアロザウラー、ステゴサウルス型中型ゾイドゴルヘックス、同じステゴザウルス型で巨大ゾイドのゴルドス(ロングレンジバスターキャノン仕様)。
これらの強力な兵器を投入したことにより、侵攻軍は着々とバグをこの惑星から駆逐していく。そんな機動兵器や生体兵器の活躍を新兵らしい歩兵は、その圧倒的な強さにあ然していた。
「こ、これなら。俺達歩兵が居なくても大丈夫じゃないのか・・・?」
「馬鹿野郎、そんな訳ねぇだろう。デカイのが入れねぇ所は俺達が担当するんだよ」
近くにいた下士官がその新兵の肩を叩き、そう告げてから部隊員に活を入れていく。新兵はその光景を見ながら、自分らに与えられた命令遂行の為、自分の隊に加わった。
上空には多数の攻撃機や爆撃機が飛び、バグを見付け次第掃討に当たっている。侵攻から一日経過すると、この惑星には殆どバグは残ってはおらず、ただ侵攻軍が設置されたと思われる前哨基地や補給拠点があるだけだ。
侵攻から二日目、完全にバグの掃討に成功し、ここに本格的な基地を作り上げ、やって来た交代の部隊に明け渡して侵攻部隊は帰還ポイントに向かった。
この侵攻軍の正体は地球統合連邦、別々の歴史を歩んできた並行世界が大時空震動で融合し、出来てしまった多元世界に創られた地球連邦政府。科学力が進歩した世界や宇宙規模の世界も融合しており、技術力もさらに高まっており、戦力や物資、兵員等も比べ物にならないくらいの物となっている。
統合連邦の対抗勢力は惑星同盟。この勢力もそれぞれの歴史を歩んできた並行世界が大時空震動で融合し、多元世界となってしまった。
惑星同盟の傘下には各統合連邦の参加勢力の対抗勢力も入っており、その戦力差は的である連邦と少しは埋まりつつある。構成人員は人間ばかりではなく、宇宙人、異星人、昆虫も含まれる。装備や兵站分ではやや下回っているが、異星人や昆虫の資源、科学面では勝っている。
こうした二つの巨大勢力の戦争が別世界や別の銀河系まで戦火を広げており、これに抵抗して立ち上がる抵抗組織も居たが、双方の強大な軍事力の前では蚊が刺した程度であり、いとも簡単に捻り潰された。
この二つの巨大勢力に対抗できるのは連邦と同盟とそれ以上の戦力を持つ戦乙女の名を持つワルキューレ。
200以上の管理世界を持ち、豊富な資源を持つが、時空管理局。
戦火を悪戯に広げる二つの巨大勢力を止める為、数々の並行世界や多元世界のバランスを保つ秩序神に創られ、ギリシャ神話の全知全能の存在である主神であるゼウスの名を取った戦士達の集まりZEUS。
そのZEUSの戦士達は、生前英雄と呼ばれた者や影なる
そして、その勢力図に神聖百合帝国によって滅ぼされた古(いにしえ)の大帝国が加わる。
数時間後、マリとルリの一行を乗せたV-22オスプレイは、フォールド王国の空軍基地に降り立った。
彼女達を出迎えるのは先にこの地へ来ていた近衛兵師団や護衛17番隊、直属の騎士団。それぞれの兵科で並び、二人のフォールドへの入国を歓迎した。
「ヴァセレート嬢にカポディストリアス嬢、フォールド王国にようこそ」
マリ直属の騎士団の総長である赤橙色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ白色のマントを羽織った女性ディートリント・フォン・バウマイスター総長が近付き、二人を歓迎の言葉を贈る。
マリはその歓迎を無言で頷いて受け取った後、待合室がある空港本館に向かう。向かう最中にディートリントはある程度のことをマリに報告する。
「大方フォールド国内及び周辺の反政府勢力は片付けておきました。それと手当たり次第中央大陸に居る反政府組織や反体制派は残らず始末しましたが、離反軍は見当たりませんでした。おそらくは中央大陸を離れて南大陸にて大規模な反乱に備えていることでしょう」
「へぇ、そう。取り敢えずは汚れないわね」
ディートリントからの報告を聞いていたマリはそう返事をし、先に本館の中へ入った。
本館の警備も騎士や護衛隊の兵士で固められており、フォールド国防軍の兵士、空港の警備員、乗客一人すら居ない状況だ。空港内に入った後も、ディートリントは報告を続けた。
「フォウドヴィッスにも幾つか部隊や騎士団も駐屯させており、国軍も総動員させて警備は万端です。さらにワルキューレから30個師団程借りましたので、大規模な敵部隊が攻めてきても問題ないかと」
「じゃあ、汚れずに済むってわけね?」
「そうなります」
「良かった。このお洋服買ったばかりだから、汚れちゃったらまた買いに行かないと」
「貴女の着ているお洋服が汚れなくて私もホッとしております」
ルリが自分の着ている洋服を見ながら言った後、ディートリントは笑顔で答えた。空港内を出たマリとルリは外で待機していた乗用車に乗り込み、フォールド王国の首都フォウドヴィッスへ向かった。
この一部始終を空港の近くにある森で見ていた男は何かの契機を見てから、近くに置いてあった通信機に向かい、そのアンテナを伸ばし、前に座って通信相手に報告を行った。
「こちらヴァーモット2、こちらヴァーモット2。スカイア1へ、聖女が古の地へ降り立った。繰り返す、聖女が古の地へ降り立った!」
暫くして雑音が混じった通信が返ってくる。
『こちらはスカイア1,それは真か?それと傍受されていないだろうな?』
「はい。ちゃんと確認してから報告しました。この森にも
『そうか。では、我が主に報告する。ヴァーモット2は急いでゴボット1へ報告するのだ』
「分かりました!直ちに掛かります」
ヴァーモット2というコールサインを持つ男は通信機を直した後、それを背負って報告に向かった。
一方、マリ達が居る世界の宇宙にて、組織の作戦移動本部とされる巨大な宇宙戦艦にて、その報告を受けた通信兵は近場にいた情報士官に報告した。
「なに?早くそれをよこせ!」
通信兵から契機から出て来た報告書を受け取った後、急いで作戦本部にいる指揮官の下へ急いだ。
「閣下!閣下!!」
参謀達と机に映し出された立体映像を見ていた鮮やかな紫色の長髪を持つ男リガンの前に立ち、情報士官は報告書を見せた。
「なんだ?」
「いよいよ待ちに待った時が来ました!これを!」
それを手に取ったリガンは勝ち誇った笑みを浮かべ、指示を飛ばした。
「フハハハ、遂に来たぞ。憎き女帝、打倒の時なり!現地部隊に待機命令!全攻撃部隊転移装置へ移動し、待機!衛生軌道上攻撃部隊は全隊発進準備!合図を待て!私も攻撃部隊に加わる!」
指示を飛ばし終えたリガンは再び笑みを浮かべ、遠くにあるマリ達が居る地球に似た惑星を掴み取った後、口を開いた。
「覚悟せよ、遂に貴様の最期の時が来たのだ。貴様等に敗れ去った我が古の帝国が貴様等を倒す!」
こうしてマリはとうの昔に滅ぼしたムガル帝国に襲われるとは夢に思わず、自分にとって最悪の惨事でなるフォールド王国首都フォウドヴィッスに知らずに向かったのだった。
丁度その時、フォウドヴィッスに到着。首都に住む人々は軍の異常とも呼べる警備に震え、マリ達が乗る乗用車の前に歩兵戦闘車を殿にして走る車列を見ようと集まる。
車線に入れないよう柵を配置し、そこに警官や兵士まで配置して更なる警戒を行う。
「うぉ!すっげー美人が乗ってるじゃねぇか!しかも金髪巨乳の!」
「隣座ってるブロンドの髪の
周りでこの車列を見ている観衆からマリとルリの容姿は格好の的になり、騒がれた。
それを静めようと警官が静止の声を上げるが、観衆は全く聞かず、よりいっそう騒がしくなるだけだった。その光景をマリとルリは見ていたが、彼女等の移動中の退屈凌ぎ程度にはなった。
車列は外からでも十分に見える城へ到着し、戦闘車両だけは城の外で待機して、マリとルリが乗る乗用車と騎士団だけが城の中へ入っていく。この城は神聖百合帝国の占領軍が駐留していた頃に建てられた城であり、この中央大陸、否、世界を完全に百合帝国の支配下とした象徴であった。
ここで総統であるクレメンティーネが女帝であるマリの許可を取らずして、ワルキューレと接触し、直属の部隊ごと軍門に入った場所である。
今ではフォールド王国の行政と象徴として使われているが、突然の裏切りを受けてワルキューレから様々な屈辱を受けたマリに取っては余り良い気分ではないが、今の彼女は対したことはない。
中庭に入った後、マリとルリは乗用車から降り、複数の騎士と共に城内へと入っていった。
「中は視察当時のまんまか・・・ちょっと改装してる場所もあるけど、エレベーターもエスカレーターもないのね」
マリが城内を見回せて、口を開いた。それなりに近代化はされているが、エレベーターやエスカレーターなど設置されていない。
玉座の間に行くには階段を上らなくてはいけないようだ。これを見たルリは少し溜め息を付いたが、我慢して上ることにする。
数十分掛けて階段で上がり、ようやく玉座の間へ到着した。そこへ一人の年輩の女性が二人を出迎える。
「ようこそ、ヴァセレート嬢にカポディストリアス嬢。階段はさぞや辛かったことでしょう。少し遠いですが、バルコニーの席へ・・・」
その女性の名はモルコッチ・ローカスト、貧困層からフォールド王国の女王まで上り詰めた才女である。二人が席に着くと、近場にいた執事に飲み物を持ってくるよう指示を出した。
「何か飲み物を。ルリちゃん、大丈夫だった?何か飲む物を持ってこさせるから、少し我慢してね」
「うん」
そう聞くモルコッチにルリは頷いた。隣に座るマリは足を組み、外の景色を眺めた。
2分すると執事がトレイに載せた水が入った容器を持って来て、机の上に置き、置かれていたコップを持ち上げ、水を注いだ。先に疲れた顔をしているルリのコップに水を注ぎ、それを丁寧に彼女の前に置き、マリのコップにも水を注ぎ始める。
何故かモルコッチは席に座らず、ずっと立ったままだ。
「座らないの?」
「いえ。貴女に階段を上らせたから・・・それにまだまだ現役よ。いつまでも若いままの貴女達には負けないわ」
マリの問いにそう答えた後、モルコッチは執事に紅茶を持ってくるよう指示を出す。執事が紅茶の入ったティーカップを持って、それをマリとルリの前に置いた。
「ご苦労。下がって良いわ」
「御意に」
モルコッチが下がるように指示した後、執事は部屋から去った。玉座の間から出て来た執事にある青年が訪ねた。
「どうだ、あの二人は警戒している様子だったか?」
「これはガロン様。お二方は全く警戒しておりません」
ガロンと呼ばれた青年は、小さく笑った。
「どうかされましたか?」
「いや、何でもない。戦闘が起きた時は地下へ急げ」
「かしこまりました。有事の際は地下へ急ぎます」
執事がそう答えて去った後、ガロンは玉座の間を見ながら口を開いた。
「”スーリア・ガロン”としての人生は今日で終わりか・・・明日からは”サベーヌ・ジギム・ペン・ムガル”として、元の生活に戻れる。もう戦闘準備がされている頃かな?義父殿に合図でも出してくるか。さようなら、モルコッチ・ローカスト初代国王・・・」
サベーヌは笑みを浮かべながら、モルコッチに別れを告げ、玉座の間から去っていった。このことはマリ達には聞こえていない。マリは紅茶を一口飲んだ後、モルコッチに何故自分を呼んだのかを聞いた。
「手紙で読んである程度分かってるけど、そこまで相談することって何?」
「それね。今から話すわ・・・私から玉座を奪い取ろうとする輩や軍によるクーデターの話は手紙で分かるでしょう?ちゃんと軍の再就職場所は決めてるんだけど、その職場が断るのよ。人殺しは内の職場には入れさせないとか言って。クーデターの方は完全平和国家実現の反対派だわ。この国の軍備を大幅増強させ、100年以上前に存在していたムガル帝国の意志を継ぎ、中央大陸を統一し、行く行くは世界制覇を果たそうと考えてるわ。中央大陸周辺ではその古来のムガル帝国の偉業に影響されて、一部の軍の高官達が反乱軍を結成して、平和維持に来たクールラント連邦軍を襲ってるの」
「あんな帝国の何処が良いのか・・・」
机に肘を付きながら聞いていたマリはかつて滅ぼしたムガル帝国の酷さを思い出し、悪態付いた。
ルコッチは景色を眺めながら続ける。
「ムガル教まで現れてさらに大変よ。おまけに駐留軍や現政権に対して不満を持つ人々が武装勢力まで作って、中央大陸反体制派軍に荷担し始めたの。貴女の私兵の御陰でこの中央大陸は静かになったけど、その中には軍の反乱軍が一人も居なかったそうね?これは何かあるわ・・・」
「何かあるね・・・私は無い方が良いんだけど」
「私もー」
話を退屈そうに聞いていたマリがそう答えると、ルリはケーキを食べながら答えた。
「何もないことを祈るわ。このまま血が流れずに済めばいいけど・・・」
景色を眺めていたモルコッチが言った瞬間、砲声が連続して聞こえた。
「へぇ、なに?」
「おかしいわね・・・今日は演習なんて予定はないはず・・・」
紅茶を飲もうとしていたルリが砲声に驚いて声を出すと、モルコッチは少し動揺していた。マリはため息を付き、紅茶を飲み干すと、このバルコニーから見える場所から能力を使って”敵”を発見した。
「やっぱり誤射じゃなくて、敵だったようね・・・撃ってるのは砲弾じゃなくて、人間だけど」
「サーカス団ですか?」
「フフフ、違うわよ。雑魚キャラを打ち上げているのよ」
ルリの抜けた問いにマリは上品に笑ってから、彼女に双眼鏡を渡した。
「あっ、本当に人間を打ち上げてる!」
「そんな馬鹿な事・・・」
モルコッチは信じていないが、髪型がモヒカンで肩パットを着けた体格の良い男達がこちらへ向けて飛んでくる。また連続した砲声が響き渡り、再び人間が空高く打ち上げられ、城に向かって飛んできた。
砲撃陣地に視点を移してみると、刀剣を携えた屈強な男達が大砲につまれ、目標に向けて発射されている。
一見マヌケなように見えるが、正確な計算の元で発射を行う為、人間の死角である頭上からの攻撃を可能とする。
南斗聖拳一〇八派に属する拳法の一つなのだが、これは拳法とは言えない。ガレッキーとその配下の軍が勝手に呼んでいるだけである。
「南斗人間砲弾!ドンドンぶっ放せ!!先兵は俺達だ!先に手柄を挙げられるぞぉー!!」
青い髪を持つマスクを付けた男、この部隊の長であるガレッキーが、配下の兵達の士気を上げる為に、砲声に負けないぐらい叫ぶ。砲弾が発射される度に屈強な男達が空高く打ち上げられ、次々と城に向かってくる。
「ヒャッハー!俺達が一番乗りだぜー!!」
「に、人間が、空から飛んできてるぞー!?」
無数の屈強な男達が城に向かって飛んできた為、城を警備していた兵士達はどうして良いか分からず、ただ動揺しているだけだった。
一人が屈強な男達が持っていた刀剣で斬り殺されると、空かさず兵士達は手に持つM16A1やAKMの安全装置を外して迎撃を開始した。何人かが銃弾のまでで倒れたが、次々と敵はやって来て、城の兵士達は次々と斬り殺されていく。
攻撃は城だけでは無かった。
慌ただしい軍司令部内にて将官が受話器を取って、報告を聞いていた。
「なに、城が攻撃されているだと!?敵は何だ?言え!」
『大多数のモヒカンで肩パットを着けた屈強な男達が空から降ってきて、襲ってきております!至急増援を願います!』
「寝言を言うな!人間が空から降ってくるなど・・・」
将官が言い終える前に新たな報告が入った。
「大将!フォウドヴィッスを包囲する形で暴走族の大軍が出現!射撃許可を直ぐに求むこと!」
「一体何が起こっているというのだ・・・!?」
それを聞き終えた大将は呆然としていた。フォウドヴィッス郊外では改造車両の大群が軍の守備隊に向けて突っ込んできた。
『止まれぇー!!止まらんと撃つぞー!!』
拡声器で警告するが、エンジン音とラッパを吹かせながら突撃してくるだけであり、全く軍の静止など聞いてない。それらの改造車両に乗っているのは空中から城に張り付いてきた屈強な男達と同じ者達だ。
「射撃許可が出ました!」
「よーし、全部隊、発砲開始!捕虜など気にするな!撃ちまくれ!!」
部下から発砲許可の知らせを聞いた指揮官は、配下の部隊全てに攻撃を命じた。指揮下の歩兵部隊が持つ小火器の一斉射撃が始まり、戦闘車両部隊や戦闘ヘリ部隊の強力な攻撃も始まる。
重火器などの攻撃も始まり、真っ直ぐ突っ込んでくる暴走族の大群は蹴散らされ始めた。全滅できるかと思ったが、戦闘ヘリが何かに破壊された。
「な、なんだ!?うわぁぁぁぁ!!」
指揮官は今起こっていることを知ることなく死んでしまった。上空にはライフルらしき物を持った10mの人型の戦闘兵器が飛んでおり、それが戦闘ヘリを破壊した正体だった。
その人型の戦闘兵器は複数上空に飛んでおり、迎撃に来た戦闘機を次々と破壊し、攻撃を圧倒的な機動で回避する。
この戦闘兵器の名はSPT。地球より遙かに優れた科学力を持つ惑星グラドスで開発された人型ロボット、頭部にコクピットがある外見が特徴的、有視界戦闘も可能である。
異星の調査や開発用に作られた装甲強化服がさらに発展した兵器で、その自由ゆえ用途を選ばない高い汎用性を持つ。単独で大気圏突入が可能であり、その後も何の支障も無しに戦闘が継続が可能であると言う強靱・推力・機動性を併せ持っている。
宇宙空間でのSPTの機動力は圧倒的で、強靱な装甲すら兼ね備えており、無敵とも呼べるが、それは乗り手次第である。
状況に応じてバックパックの換装で特定の性能を特化する装備の変換可能、動力源は燃料電池。操縦管制は統合型コンピューターによって行われ、高性能センサーと状況分析能力を有しており、音声での状況伝達から注意、戦術の提案まで行う。音声による操作も可能で、初心者でも完全にSPTを動かす事が出来る。
今飛んでいるのは型はSPT-BV-15Cブレイバー。
一般兵士用量産型SPTで特に対した性能はないが、安定性が高く、グラドスより科学力の低い兵器を圧倒できる性能を持つ、全高は9.61m。ちなみにSPTの略称はスーパー・パワード・トレーサーである。
他にも
この光景は中央大陸各地で行われており、同時に正規軍から離反していた反乱軍の大攻勢まで行われ、中央大陸各国家はさらなる混乱を極めていた。各地で銃声や悲鳴、爆破音が聞こえるこの状況に対してマリはこちらのバルコニーへ飛んできた多数の屈強な男達を霧払いでもするかのように手を振った。
「なにやってんだ?あの女!」
「知るか!いい女じゃねぇか!生かしとけよ!!」
何をされたのか分からない男達であったが、その数秒後、男達は人体がバラバラになり、城壁に男達の身体の一部がぶつかり、赤く染めた。返り血を浴びたマリは自分の着ていたドレスを見て、ため息をついた。
「はぁ・・・何処の馬鹿だか知らないけど、襲われた以上、全部片付けないとね」
「うん。また何か恨みでも買った?」
「知らないわよ。人間を大砲で飛ばしてくる奴なんて、さぁ、早く終わらせてティータイムにしましょう」
「うん、分かった」
モルコッチは驚きを隠せず、声を失っていたが、マリとルリは慣れているらしく、どこからとも無く銃や刀剣などの武器を取り出すと、次々と向かってくる男達の迎撃を開始した。
「久し振りの殺戮ショーね・・・!」
マリは子供のような無邪気な笑顔でそれを口にした後、左手で自動拳銃SIGP228を自分に目掛けて飛んできた斧で斬り掛かってきた男に向けて発砲した。
誤字脱字があれば、感想にて。