復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
白燐弾使用
厳重な警備網を見ながら、侵入ルートを探すマリ。丁度視線に入った地下通路に目を付けた。
「あそこなら行けそう・・・」
ボソボソと呟いたマリは、直ぐに地下通路まで向かう。やはりここも兵士や民兵に溢れており、軍用犬連れの兵士が巡回している。
消音器付きのUSPを両手で握り、侵入ルートに邪魔な者がいれば排除する構えを見せ、警備兵や軍用犬に気付かれぬよう屋敷への侵入路へ進む。
「あっ、なんだ?」
進んでいる最中、マリの通り過ぎる姿を見た兵士が居たようだ。確認のために手に握るM16A1をいつでも撃てるような姿勢で持ち、マリが隠れている場所まで向かってくる。
声を出される前に彼女はナイフを抜いて、いつでも始末できるよう準備をする。近付いてくる足音に耳を傾けながら、他にも来ないか確認し、額に汗を浮かばせる。
敵兵が自分の隠れている場所を除いた瞬間、マリはナイフをこちらに視線を向けようとした敵兵の首に突き刺した。首を突き刺された敵兵は口から大量の血を吐き、声を上げようとするが、口を塞がれ、喉に溢れた自分の血で窒息死する。
引き金に掛けていた指が引きそうになっていた為、直ぐに指を退け、動かない敵兵が持っていたM16を取り払い、人目が付きそうもない場所へと直ぐに死体を隠した。その後に死体から何か回収できる物は無いかと調べる。
自分が持っているM16A3しか互角性のある弾倉しか持っていなかった為、敵からの情報が分かる無線機を回収しておく。これで敵の情報や先の行動はある程度分かる。
徐に無線機のスイッチを入れてみると、周りに聞こえるような音量で音声が聞こえた。空かさず音量を下げ、耳に近づけて聞いてみる。
『こちらパトロール、B-266の一番高い建物の屋上に解放戦線の民兵の死体を見付けた。こいつ、さぼってたな。首元に刃物を刺されて死んでる。この傷、この辺に居るレジスタンスじゃなぇな。おそらく逃げ遅れた残党の仕業だ。B-266に増援部隊を』
『こちら
『不満?相手は訓練を受けている。それなりの戦力が必要だ、空きを出来る限り送ってくれ』
『了解、分隊規模をその地区に派遣する。アウト』
無線からの遣り取りを耳に入れたマリは直ぐさま移動を再開する。道を巡回する歩哨の目を盗んで、移動していくと、地下の出入り口まで着いたが、警備兵がドアに凭れて掛かって陣取っている。
幸い周囲に他の歩哨は居ない。
距離からして、消音器から発せられる僅かな銃声も聞こえずに済む。陣取っている兵士に近付こうとした瞬間、煙草を吸いながらこちらに来る兵士に目撃された。
「し、侵入・・・」
口にくわえた煙草を落とし、肩に掛けてある突撃銃を向けようとしながら兵士が声を上げようとした瞬間、マリはUSPを男の額に向けて引き金を引いた。額を撃たれた兵士はそのまま即死し、僅かな銃声を聞きつけた陣取ってる兵士がマリの存在に気付き、手に持つ銃の安全装置を外して声を上げようとしたが、先の撃たれた兵士同様、額を撃たれて絶命する。
ドアに凭れ掛かって死んでいる兵士を退けると、地下通路へと進んだ。地下にも警備兵が巡回しているが、数は少なく、強行突破も可能であった。
だが、銃声は地上にいる兵士達が気付き、今不死身ではないマリは大多数の銃弾の前に倒れることだろう。なるべく銃を使わずに進める為、警備兵の視界に入らないよう移動した。
「こんな汚い場所で警備とは、運が悪いぜ・・・」
散弾銃を持った警備兵が悪態付きながらマリの視界に入ってきた。彼女の存在には気付いていないようであり、そのまま通り過ぎていく。足音を聞かれない程度の距離まで警備兵が行くと、直ぐに別の隠れる場所へと向かう。
敵との戦闘を避けつつ、身を隠しながら屋敷へと続く階段を見付けた。周囲に敵兵が居ないと確認したマリは、階段へと足を踏み入れようとしたが、階段から誰かが降りてくる二人分の足音がして、慌てて身を隠す。
遂、音を立て過ぎた為、存在を気付かれてしまった。
「ん、誰だ?」
「確認する必要があるな」
銃の安全装置を外す音が微かに聞こえ、二人の兵士が自分を殺しに来る。そう思ったマリは何処隠れる場所を探した。
天井を見上げれば、微かな出っ張りがある場所を見付ける。
「行けるかな・・・?」
望みに掛け、出っ張りを掴んで天井に張り付く。二人の兵士が、マリが天井に張り付いている場所へと足を踏み入れた。
「気のせいか・・・?」
「おかしい、さっき音が聞こえたんだが・・・?」
上以外を見渡しても、侵入者の姿は発見できなかった為か、二人の兵士は過ぎ去っていった。一息ついてマリは天井からなるべく音を立てないように降り、地面に足を付けた。
完全に足音が聞こえない距離に兵士が行ったのを確認すると、直ぐに階段を上がった。屋敷に内部から入ったマリは周りに敵兵が居ないか周囲を見渡し、心臓を取り出し、何処に自分の能力があるか確認する。
東に向けると、鼓動が早くなった為、そこへと進む。屋敷内にも警備兵が巡回していたが、屋外戦闘を想定したか、持っているのは短機関銃か散弾銃、それか銃身を切り詰めた自動小銃や突撃銃だ。
ここで戦闘すれば、確実に数の差で負けるだろうと悟った彼女は外と同じく見付からないように進んだ。幸い外に比べて敵兵の数が少なく、少し楽に移動することが出来た。
「(鼓動が早くなった・・・近い・・・)」
何処かに仕舞った心臓の鼓動が早くなる内に自分の能力がある場所が近いと察するマリ。希に視界に入ってくる警備兵を避けながら、徐々に距離を詰める。
そして、自分の能力が近い部屋を見付けた。周りに敵兵が居ないか確認し、部屋にも敵が居ないか、鍵穴から部屋を覗く。
「よし、居ない」
小さく声を出して、マリは部屋の中へと入る。心臓を左手に持って、部屋を見渡すと、机の上に反応の元である水晶玉が置かれていた。
それを手に取り、床に叩き付けて割った。虚無の世界と同様、マリの身体を藤色の煙が包み込み、身体が光る。どの能力を取り戻したか確認し、力を使ってみると、自分の視界が白黒に変わる。
「見えない場所からでも敵が見える能力・・・ダークビジョン・・・」
そう口にしたマリは、屋内や屋外に居る敵兵のシルエットを確認できるようになった。ダークビジョンをオフにした彼女は早速、脱出する為のルートを探す。
敵兵のシルエットだけでは数は把握できても、正確な位置までは把握できない為、上階まで向かう。先程手に入れたダークビジョンで警備兵の数を容易に把握できるので、難楽屋根裏部屋まで辿り着くことが出来た。
屋根裏部屋に入ると、単なる物置にされていたが、床に血の跡を見付ける。
「血・・・?」
それに目を付けたマリはそれを辿っていくと、埃を被った本棚に辿り着いた。血の跡はここで途切れている。
「この裏に何か・・・?」
そう悟った彼女は本棚を調べ始める。棚に入っている本を一冊一冊と取っていくと、本棚が右に移動した。
「正解・・・」
現れた入口を見て呟いたマリは入っていった。そこには血塗れの迷彩服を着た女性狙撃手が凭れ掛かっており、横にはフィンランド製の狙撃銃であるサコー TRG-22が床に落ちている。
死んでいるという事は顔を見れば分かる。どうやら死んでからまだ一日しか経っていないようだ。
止血剤を使ったようだが、応急処置でも助からないような傷を負っており、所属を表す軍隊手帳を見れば、ワルキューレ所属と分かる。狙撃兵で女性なので、出るにも出られず、捕まればどんなことをされるのかは、マリは即座に理解した。
死体から弾薬を回収し、狙撃銃を手に取り、屋根裏部屋に戻って窓から銃身を出して、標的になりそうな人物を探す。弾薬が入っているのを確認した後、安全装置を外して、ボルトを引いて薬室に弾を送り込む。広場を確認すると、処刑所で自分を監視していた下士官を見付けた。
「あいつをやろう・・・」
また小さく呟いたマリは呼吸を止め、狙う標的を仕留めるのに集中する。風の強さと標的までの距離を脳内で計算し、照準器をのぞき込む。
周りの時間がゆっくりと過ぎ去っていく感覚に襲われるが、照準器に捉えた標的、獲物を仕留める事だけを考える。
引き金に指を掛け、撃とうとしたが、何か銃声を掻き消すような音が聞こえる事をマリは期待した。
「(早く来なさいよ・・・!)」
もうすぐ息切れを起こす寸前なマリであったが、そんな彼女の願いを叶えるかのように、夜空にV-22に似たジェット型のテイルローター機の大多数の編隊が、この屋敷の上を通り過ぎて行く。好機が訪れたと判断したマリは引き金を引いた。
銃声は上空を飛ぶ大多数の編隊に掻き消され、標的にされた下士官は頭を撃たれ、地面に倒れ込んだ。標的が倒れたのを確認したマリは呼吸を再開し、息を整える。
息を整え終えれば、騒音が途切れない間に次の標的を探す。広場の北側にキャンプを見付け、そこに司令官専用の天幕を発見した。
居るか居ないかは別として、周囲に一度に吹き飛ばせるような爆発物を探していくと、まだ片付けられていない爆薬類を見付けた。どうやら、この街にいたとされるワルキューレの残党が置いていった物とされるが、余りにもバレバレであり、今まで気付かれなかったのが奇跡だ。
また距離と風速を確認した後、爆薬に気付いた一人の民兵がそれを片付けようとしたが、片付けられる前にマリは爆薬に目を付け、引き金を引いて撃つ。
「ビンゴ」
マリが呟いた瞬間、民兵が持っていた爆薬が爆発し、一緒に司令官用の天幕も吹き飛んだ。司令官は居なかったが、わざわざ標的にした司令官がこちらに見える所に出て来てくれた為、探す手間が省けた。
口の動きからの怒鳴りようからして、何故爆発したのかを、向かってきた部下らしき士官に聞いている。そこが司令官の最後だった。
死ぬなら何処でも当たっても良かった為、マリは司令官のやや上に狙いを付けて、引き金を引いた。銃声は編隊が掻き消している為に、屋敷を警備する兵士達は気付くことは無い。
銃口から飛ばされた7.62㎜NATO弾は空気抵抗を受け、ゆっくりと落ちながら標的に向かって行く。標的の首に命中し、司令官は自分の血で苦しみ藻掻いてから死んだ。
当然ながら、爆発した上に司令官が狙撃されたので、流石にマリの存在に気付いた。彼女を発見した民兵が慌てて機関銃で屋敷に攻撃を始める。
空を飛んでいた編隊はもう居なかった。突然屋敷を攻撃してきたので、警備していた者達は慌てる。
『て、敵襲か!?』
敵が体勢を立て直す前に屋根裏部屋から出て、脱出先である北側まで向かう。
『クソ、誤射だ!』
『クソったれ!適当に撃ちやがって、ド素人共が!!』
味方からの攻撃を受けた屋敷を警備していた兵士達が悪態付いていた。攻撃が終わったらしく、体制を多直しつつあった。
その間をマリは抜けていったが、等々気付かれてしまう。
「な、なんだ、この女は!?」
手に持っている突撃銃の安全装置を外してマリを撃とうとしたが、彼女が持っているM16A3で撃ち殺される。単発で仕留めたが、鳴り響いた銃声で他の敵兵達に気付かれる。
『敵だ!敵が居るぞ!!』
『いつの間に!?直ぐに三階へ向かえ!』
『屋敷の出入り口を封鎖しろ!』
下の階から聞こえる声から、屋敷全部の出入り口が封鎖される危険性が出て来た。封鎖される前に、急いで階を降りる。
階段を降りている最中に、下階から上がって来た数名ほどの敵兵と鉢合わせしてしまった。
「侵入者だ!!」
手に持つ自動小銃を撃とうとするが、あっさりとマリに殺される。次の兵士達がそれぞれ持つ銃で、先程殺された仲間の仇討ちを試みたが、マリがM16A3をフルオートに切り替えた為に、全員が屍になった。
階段を下っている最中にまた敵兵達と交戦し、その全てを一掃する。一階に着けば、待ち伏せていた警備兵達が機関銃類などでマリを攻撃した。
「撃ち殺せ!」
指揮官が叫んで、物陰に隠れているマリは打開策を考えた。このままここで隠れていると、上階からやって来た警備兵達に殺されてしまう。
策を即座に思い付いた彼女は、階段で死んでいる警備兵達の死体から手榴弾がないか調べる。懐を探ってみると、ドイツのDE DM51手榴弾があった。
この手榴弾は弾殻を付けて破片を飛ばす防御用として使え、弾殻を外して爆発用として使える手榴弾だ。もちろん、彼女は火力を求めている為、回収した分全ての弾殻を外して、爆発用として使う。
安全栓を外して機関銃を撃っている兵士達目掛けて壁越しから投げた。
「わっ、手榴弾!」
機関銃を撃っていた兵士が手榴弾に驚いて射撃を中止し、物陰に隠れようとする。マリはもう一つを反対側に投げ、最初に投げたのが爆発した瞬間、物陰から出た。
投げた一方も爆発し、後ろからの銃撃が止む。その間にマリは北側の裏口に向けて、再装填を終えた突撃銃で突き進む。
「来たぞ!撃ち殺せ!!」
指揮官が自動拳銃を出してマリを撃ち殺そうとしたが、逆に撃ち殺された。機関銃を再び撃とうとする兵士も撃たれ、突破を許した。
屋敷に釘付けにしようと、多数の警備兵が裏口に集まって来た。
『屋敷から出すな!肉壁になっても防げ!!』
外から怒号がマリの耳に入ってくる。裏口には大多数の民兵で肉の壁が作られており、雨のような銃弾がマリに襲い掛かる。
遮蔽物に隠れることなくただ銃を撃っているだけなので、余分に取っておいた手榴弾が役に立った。遮蔽物になるような場所に隠れて、持っている手榴弾を全部こちらに向けて銃を撃ち続ける民兵に投げた。
投げられた手榴弾に全く気付かず、全員が手榴弾の爆発で吹き飛んだ。破片を飛ばさず、そのまま爆発するタイプであった為、手足を吹き飛ばされた民兵の死体が転がる。まだ息のあり、悶え苦しむ者も居たが、トドメを刺すことなく、裏口を突破した。
外へ出れば、大多数の敵兵が裏口から出て来たマリに容赦なく銃撃を加えてきた。凄まじい弾幕であった為に、銃弾が一発マリの肩に掠った。
「あぁ・・・!」
掠った左肩の上部の箇所から血が滲み出た。服が若干赤く染まっていき、そこを少し抑えて、傷の具合を手で確かめる。
出血量からして、これなら大丈夫と判断した彼女は、顔を出してこちらに銃を撃っている敵兵に反撃する。マリが適当に狙いを付けた兵士が顔面に5.56㎜NATO弾を食らって、地面に倒れ込んだ。
次は自分がやられると判断した彼女に銃撃を加える兵士達が遮蔽物に身を隠す。その隙にマリは身を隠している場所から飛び出して、邪魔になる兵士を殺害しながら脱出地点まで走る。走っている最中にも、次々と敵兵達が現れ、マリに銃を向け、撃ってくるが、返り討ちにされる。
激しく動いた所為なのか、左肩の血の染みが広がってきた。途中、迫撃砲を見付けたが、今の彼女に使う暇など一切無い。だが、砲弾は信管を叩いて投げれば使えるので、箱から持てるだけ拝借していく。
「死ねぇ!!」
ジープに搭載されたDShk重機関銃でマリを挽肉にしようと、一人の兵士が撃ってくる。銃数発撃ったところで、マリから迫撃砲弾のお返しを食らい、重機関銃を撃っていた兵士は空中高く飛び上がる。
兵士が落ちるのと同時に次の場所へと銃撃を交わしながら突き進む。また道中に墜落した多目的ヘリUH-1から何かを見付けた。銃撃は少し無理をすれば、回収できるほどの時間はあった為、残骸から奇跡的に燃えてない箱を開ける。
箱の中には迫撃砲用の白燐弾があった。これを見たマリはニヤリと笑い、白燐弾を手に取り、それをポケットに出来るだけ入れる。数名ほどの民兵が突撃銃を撃ちながらここへ向かってきた。
残骸に弾丸が当たったのと同時にマリは砲弾の信管を堅い場所に叩いて、複数の民兵に向けて投げ込んだ。見事、民兵達に命中し、赤い煙が上がった。
下半身を失い、腸を出しながら民兵がこの場から逃げようと這いずっていた。他にも足を失った者が泣き叫んだりしているが、マリに取っては関係ないことである。
残骸から出ると、また民兵か兵士の集団が出て来たが、砲弾で一網打尽にされる。その度に無惨な姿になる敵兵が続出し、マリが進む度に緑の芝生が赤い血で染まる。
街路の近くまで来た途端、出入り口は大多数のテクニカルに機関銃を搭載した車両、小火器類を持った兵士と民兵で塞がれており、凄まじい銃弾がマリを遮蔽物まで下がらせる。
「(あれだけの敵を片付けるのに砲弾が足りない)」
抱えてきた砲弾は投げて使ったか、途中で落としてしまったかで足りない。そこで白燐弾を使うことにした。
「(これ、空中で爆発する奴よね。使えるのかしら?)」
白燐弾を手にとって見ながらそう思って、信管を堅い場所に向けて叩き、空高く投げた。丁度、敵兵達の頭上までに白燐弾が飛んだのを確認したマリはUSPを素早く引き抜いて、白燐弾に狙いを付けて早撃ちした。
空中で撃たれた白燐弾は爆発し、内部に収納されていた白リンが撒き散らされる。自分にも飛んでくると思ったマリは相手から見て、完全に見えないくらい身体を小さくし、撒き散らされる白リンから身を守った。白リンに晒された敵兵達の身体は自然発火し、全身火達磨になった敵兵達が苦しむ地獄絵図と化す。
「うわっ、わっ、アァァァァァァ!!」
「熱い!熱い!!ワァァァァァァァ!!!」
「ウワァァァァァァァ!!誰か、誰かァ!火を、火を消してくれっ!!」
耳から聞こえる敵兵達の悶え苦しむ声に人の肉が焦げる悪臭がし、マリは自分を攻撃していた者達の姿を見て絶句する。
「ッ・・・!?」
これを自分でやったのか?と少し疑問に思うマリであったが、誰かに聞く暇もなく、この惨劇を引き起こした本人である彼女に怒り、手に握る銃を撃ってくる。
『殺せ!戦友達を焼き殺した女を殺せ!!』
怒号が聞こえた後、恐ろしいほどの銃撃を浴びるマリは、建物と屋根の上へと瞬間移動した。
「消えた!?」
「何処へ消えたんだ!?」
突然、標的が姿を消した為に敵兵達は混乱したが、上空を飛んでいた多目的ヘリが容易にマリを発見し、搭載された機銃で撃ち殺そうとする。
『屋根の上だ!現在北に向けて逃走中!先回りしろ!』
建物の屋根を伝って逃げるマリをしつこく追撃してくるヘリは、逃亡先を教え、先回るよう指示を出している。脱出の際には邪魔になる為、一度立ち止まり、M16A3からTRG-22に切り替え、メインローターに狙いを付けて引き金を引いた。メインローターを破壊されたヘリは街路の真ん中で墜落し、機体に詰んであった弾薬が誘爆して大爆発した。
瓦の上を全力で走っていく内に、ガイドルフが見えるくらいまでの距離に近付く。処刑所から脱出に使ったオープンカーではなく、後部にkord重機関銃が搭載されたジープだ。
FALを持って、応戦している所を見ると、どうやら見付かったらしい。建物の端まで来た途端、マリは建物から飛び降り、瞬間移動で地面に着地する。
ガイドルフを撃っている兵士達は当然ながら、後ろからマリがやって来たことなど気付きやしない。M16A3でガイドルフを撃っている兵士達を全員撃ち殺した後、ガイドルフと合流した。
「よぉ、遅かったな」
弾切れになったFALを素早く弾倉を取り替えて、コッキングレバーを引いたガイドルフは遅れてやって来たマリに気軽に話し掛けた。こんな状況でも気軽な男の声を、マリは無視して残りの敵兵の排除にあたった。
バタバタとマリに撃たれた敵兵が倒れていく中、ジープに乗る間が出来た。この機をガイドルフは逃すことなく、ジープへと向かう。
「乗りな、あんたの座席はロシアの重機関銃だがな!」
エンジンを掛けながら、ガイドルフはマリに重機関銃を親指で指しながら告げた。その指示に彼女は機関銃座に立ち、kordのコッキングレバーを引いて、初弾を薬室に送り込み、サイトを覗く。
ジープが走り出すと、徒歩の兵士達は追うために自動車に乗ろうと移動する。
「そいつの火力は折り紙付きだ!ヘリを
ハンドルを握りながらガイドルフはマリに知らせた。兵員を満載した数台のトラックや機関銃搭載の車両がジープに追い付いたが、マリの放った重機関銃の12.7㎜弾で、運転手や荷台に乗った兵士達が挽肉にされる。
もう一台銃撃を受けたトラックはエンジンに銃撃を受けて大破した。数台以上kordで潰すと、多目的ヘリが上空から現れた。
「ヘリだ!ミサイルポッドを狙え!!」
ガイドルフの指示に言われることもなくマリはミサイルポッド目掛けて引き金を引く。ミサイルポッドは爆発し、ヘリは空中爆発する。
その間に追撃部隊は来なかったので、kordの再装填を行う。開閉式の蓋を開けて弾帯を外し、弾薬箱を機関銃から外す。満載の弾薬箱を新しく付け、弾帯を置いて蓋を閉めると、コッキングレバーを引いて薬室に初弾を送り込む。作業を終えれば、次の追跡部隊が来る。
「次だ!ぶちかませ!!」
ハンドルを握るガイドルフからの指示に言われる間もなくマリは迎撃を行った。トラックがジープに近付く前に大破し、次の車両も次々と大破していく。痺れを切らしたのか、敵は装甲車を追跡に投入してきた。
「クソ、装甲車だ!あいつ等本気だな!」
追ってくる旧ユーゴスラヴィアのBOV装甲車をガイドルフは見ながら言った。流石に軽装甲車両でも無いあの装甲車には重機関銃は通じない。さらに川辺までに辿り着いた為に、機関銃を搭載した数隻の警備艇まで追ってくる。
「川にも追撃か!川の方を狙え!」
この指示にマリは直ぐに機関銃を警備艇に向けて撃ち始めた。警備艇に乗っていた兵士は挽肉になり、操艦手が居なくなった警備艇は何処かにぶつかって爆発するか、陸に乗り上げる。
何隻かは撃ち続けられていく内に大破し、川の藻屑となる。川に数隻ほど警備艇を沈めていく内に空港が見えてきたとガイドルフが知らせてきた。それと同時に日が昇り始め、川から遠のく事が出来た。
「おっ、空港が見えてきたぞ!RPGは取れるか?」
男の声に耳を貸すと、RPG-7が置かれていた。これでなら、追ってくる装甲車を破壊できるだろう。
早速それを手にとって、弾頭の安全栓を外し、追いながら機関銃を撃ってくるBOV装甲車に向けて発射した。装甲車は一撃で大破し、乗っていた乗員が飛んでくる。
今まで破壊した車両にボート、ヘリの数を知ったガイドルフは陽気に口を開く。
「俺達が軍隊に入ってたら、勲章物だな!」
笑いながら告げるガイドルフに対してマリは無視を決めた。離反軍に占領された空港まで近付くと、二人は相手から銃弾の歓迎を受けた。見張り台や土嚢に設置された様々な機関銃が火を噴く。
「うわっ!俺達は記念式典にでも呼ばれたのかな?!」
冗談交じりの言葉を笑いながら口にして、ガイドルフはマリに聞いていたが、銃座に座る彼女が放った重機関銃の銃声で掻き消された。易々と土嚢や木造で出来た見張り台を貫通し、銃座に付いていた者達は挽肉されるか、貫通して威力が減った12.7㎜弾を受けてマシな死に方をする者達が出た。
ジープはそのままゲートを突破し、滑走路に入る。
「滑走路に入られた!」
警備兵の指揮官が叫ぶ頃には、もうマリ達は滑走路の中央まで来ていた。スクランブル部隊のパイロット達が綺麗に並んである戦闘ヘリに乗り込もうとするが、マリが放つ重機関銃で次々と肉塊と化す。
同じ武装のジープがやって来るも、瞬時にマリに破壊された。
「ば、化け物だ・・・!」
一人の警備兵がマリの余りの強さを見て、口で表した。ジープは脱出用の航空機がある格納庫まで全力で走る。
「格納庫に近づけるな!撃ち殺せ!」
SVD狙撃銃やRPD軽機関銃を持った兵士達がマリ等を撃ち殺そうとするが、ガイドルフの運転テクニックであっさりと回避される。だが、一発はマリの左足に命中し、銃座から離すことが出来た。
「がっ・・・!」
「あっ、クソォ!」
丁度、格納庫まで着いた為、閉じていたドアを突き破り、そのまま中へ入る。
「頼むから燃料は入っていてくれよ・・・!」
速度の速い航空機を探しながら車を動かし、そのどれもが燃料が入っていることを願う。一番早そうな輸送機に決めたガイドルフはジープを止め、出来るだけ対戦車火器を持って機体に乗り込んだ。マリも撃たれた足を動かしながら乗り込む。
「ラッキーだ!燃料がある。しかも満タンだ。それと、あんたは出血が酷いな・・・早く飛び立つぞ」
操縦席に座り、エンジンを起動させて離陸の準備をするガイドルフ。彼女の左足の出血模様を見ながら操縦桿を握る。
銃弾で撃たれながらも二人が乗った輸送機は滑走路へと向かっていく。ガイドルフが通信機や無線機を弄っていると、敵の通信を傍受できた。
『輸送機を奪われました!』
『構わん!撃墜しろ!!』
「早いとこ飛び立とう」
通信を聞いたガイドルフは速度を速めた。凄まじい銃撃を受けているが、幸い乗ったのが軍用の輸送機であった為に重機関銃の銃撃には耐えられている。操縦桿を握りながら、ガイドルフはポケットからリモコンらしき物を取り出した。
「仕込みはしておく物だ」
呟いてスイッチを押していくと、格納庫や対空陣地、待機していた戦闘機が爆発し始めた。通信からは敵の混乱模様が分かる。
無事に滑走路に着いて速度を上げていき、脚注が滑走路から離れていくと、輸送機は空高く上がっていった。
「無事に上がったようだ・・・追撃機もさっき爆破したから大丈夫だが、あちらのお嬢さんは・・・」
無事に飛び立って一安心して自動操縦に切り替えたガイドルフは、左足を自分で治療するマリを見た。
「無茶苦茶な治療をするな・・・まぁ、俺が行ったら余計に悪化しそうだが、放っておくか」
痛みに耐えながら治療するマリを見ながらガイドルフは自分の銃の整備を始めた。
~中断メッセージ~
マリに対してのエル・エルフの評価
エル「ほぅ、中々やるな。能力を失ってただの女になったと思ったら未だに衰えぬ戦闘力を秘めているとは・・・少し酷評し過ぎたようだ」
ハルト「す、凄い・・・マリ・ヴァセレートはエル・エルフ以上だ・・・!」
エル「余り大いに評価し過ぎるな時縞ハルト、あの女は力を失う前まで自分に適う奴は居ないと思っていた女だ。力を取り戻していく内にミスが多くなる事だろう。それに男嫌いだ。その所為で信用できるとアピールする男を避けている。使える物は最大限に利用しないとな」
ハルト「そ、そうなのか・・・彼女は完璧では無いんだ・・・」
エル「忘れるな、この世に完璧の者など存在しない。例え完璧に見えるのは見せ掛けだ、何処かに弱点がある。あの女は能力を失っても凄まじい戦闘力を発揮しているようだが、あれは見せ掛けだ。弱点は良く探せ。戦闘の際にも敵の新型と交戦した場合、弱点を見付けろ。分かったな、時縞ハルト」
ハルト「それ・・・今の問題と関係ないんじゃ・・・」
その頃、ビッテンフェルト。
ビッテンフェルト「進め、進め!猪突猛進こそ、我らの本領よ!!」
黒色槍騎兵艦隊一同(オイゲンを除く)『オォー!!』