復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
※反社会的表現有り
見えない汚れ
歌舞伎町。それは日本国の首都、東京都新宿区の町名。
だが、歌舞伎町という名前は付けられたのは、戦後からだ。
大戦中に東京が焼け野原にされた後、戦後の復興と共に芸能施設を集め、新東京で最も健全な家庭センターを建設すると言う復興案が纏められ、この都市計画から新しい町は、歌舞伎町と名付けられた。
だが、財政の問題で、結局実現できなかった。
年が明ける度に町は賑わっていき、飲食店や映画、ボウリング場、サウナ、バッティングセンター等の施設が目立ち、いつしか健全とは思えないラブホテルや風俗店などの施設が目立つようになり、東洋一の歓楽街がいつしか欲望の迷宮都市と呼ばれるようになった。
そんな町を、異世界からやって来たワガママな復讐者が、復讐のために訪れる。
「東京って言ったって、銀座と秋葉原にしか行った事無いし」
歌舞伎町前で止まったマリは、目の前のネオンサイドに光る町を見ながら呟いた。
彼女が初めに歌舞伎町に入ったのは靖国通りだ。話は逸れるが、マリは新宿歌舞伎町に入る前に、靖国神社に寄っている。
「ここがこの世界における前大戦の戦死者を弔ってる・・・」
見える参道と鳥居を見て、呟くマリであるが、生憎と彼女は参拝などしている暇はない。
そのまま歌舞伎町へ向かい、今に至る。
「この辺かな・・・?」
自分にしか見えない自身の能力探知機である心臓を、左手の甲に紋章が入った手で取り出し、鼓動が早くなっているのを見て、近くにあると確信する。
暫く暗闇でもネオンサインの御陰で明るすぎる歩道を歩いていくと、以下にもチンピラな男二人が、マリに左腕を態とぶつかった。
「イテっ!イタタ!う、腕がぁ~!」
「おぅ!パツキンの姉ちゃん!俺の連れが左腕を骨折しちまったじゃねぇか!どうしてくれるんだ?オオン!?」
端からどう見ても、態とであり、誰にも分かるような演技である。
だが、柄の悪そうな丸刈りの男は英語でマリに治療費を請求しようとしており、しかも金額はやや現実的に見せようとしている。
「治療費として・・・この分だと50万だな・・・おぉ、そんなら75万じゃ。今から出せや」
周りにいる者達は、関わりたくないと言うことで避け始める。
この胡散臭い男二人に、マリは周りの通行人と同じく無視しようとするが、丸刈りの男は彼女の前に立って、行く道を塞いだ。
「こらぁ!無視すんな!早く直さんと、腕の骨がくっつかないじゃねぇか!!」
「うぁぁぁ!肩が、早くしないと肩が!」
余りにもしつこい二人であるが、マリは態とぼけた。
「〔英語(エングリッシュ)、分かりません〕」
相手を怒らせるような表情で、しかもドイツ語で告げた為、丸刈りの男は怒りの余り、本音を漏らしてしまった。
「このアマ!大人しく金を出せば良いんだ!!とっとと出しやが・・・」
怒りに我を任せた丸刈りの男はマリの胸倉を掴もうとしたが、当の本人が、気が付かぬ内に消えていた。
「あれ・・・何処・・・?何処・・・?」
「ギヤァァァァァ!!」
突如聞こえた仲間の声に、丸刈りの男は怪我人役の方へ振り向いた。怪我人役は本当にぶつかった左肩を折られており、余りの痛さに叫び声を上げる。
「イテェ!ホントにイテぇ!!本当に折られたぁ~!!」
「あな、あぁ・・・ほ、ホントにぃ・・・!?」
本当に折られてしまったことに、丸刈りの男は尻餅をついて、鼻水を垂れ流し、失禁している。
もちろん怪我人役の男の腕を折ったのはマリであるが、彼女はその場を離れて能力探しを再開する。
「さぁーて、何処かな・・・?」
マリは何事もなかったかのように続けるが、周りの者達にとっては驚くべき光景であり、丸刈りと怪我人役の回りに人集りが出来ていた。
人気はなくなり、マリは一番賑わう一丁目に入り、町の奥へと向かう。
「あれ・・・こんな所にあるの・・・?やだ・・・」
心臓の鼓動が強い方へ向かう内に、知らぬ間に風俗店やアダルトショップが密集している裏通りへと来てしまった。
辺りを見たマリは、少し不機嫌になる。そんな裏通りを鼓動が強くなる方を向きながら進むと、彼女の身体に目を付け、よからぬ事をしようと考える者達が、先の騙し取ろうとした二人と同じく行く先を封じる。
「ウッヒョー、外人の姉ちゃんデケェ~!」
ポケットに両手を突っ込んだ柄の悪い男達が、マリを絡んできた。
「ねぇねぇ、金髪の姉ちゃん。今夜暇ぁ?」
黒い髪を金髪に染め、耳にピアスを填めた若い男が、自分より背丈の高いマリに近付き、無表情な彼女を誘おうとする。
これを断れば、彼等は気分を概して「自分達が悪かった」とは微塵も思わないだろう。普段はこの場で男達こと不良達を再起不能まで叩きのめすところだが、彼女はあっさりと誘いに乗った。
「良いわよ。路地裏で
「おっ、マジで?ヤらせてくれるの?じゃぁ、お前等。路地裏行くぞ」
「うっひゃぁ~、こんな美人で巨乳でビッチとか最高じゃねぇ?」
「最高最高!」
不良達はマリと共に路地裏へと向かう。もちろんこれが不良達の最期とは、マリ以外には思わなかった。
「じゃあ、全部脱げ。ここでヤるぞ」
マリよりやや背丈の高いニット帽の不良が、手をポケットに突っ込んだまま、彼女に全ての衣服を脱ぐよう指示する。
「うん、
この指示を、自分達を殺して良いと受け取ったマリは子供のような笑みを浮かべ、心臓を仕舞った。
「おぉ、すげぇ可愛いじゃねぇの・・・」
「やべぇ・・・!」
未だに不良達は、マリに殺されるとは知らず、彼女と性行為が出来ると思っている。
一向に脱がない彼女に苛立ちを覚えたのか、ニット帽の不良はマリに掴み掛かろうとした。
「おいコラ。早く脱げや!」
掴もうとした不良に、マリは隠し持っていたナイフで、首をニット帽に感覚も与える間もなく素早く斬った。
「おい!テメェなにやって・・・アボボ!?」
言い終える前に苦しくなり、ニット帽は首を押さえ始めた。他の不良達は何が起こったのかまるで理解できないでおり、固まったままだ。
首を斬られたニット帽は、マリを睨み付けるが、等の彼女は妖艶な笑みを浮かべ、ニット帽に答えた。
「だって、
ニット帽が力尽き、死んだことに快感を覚えると、周りにいる不良達に向けて、殺気だった表情で言った。
不良達は、「あの女を殺さねば自分達が殺される」と思い、メリケンサックを持つ者達は即座に取り出し、各々の近くにある角材や鉄パイプ、廃材などでマリに襲い掛かる。
「この野郎死ねぇ!!」
「わぁぁぁぁぁ!!」
「殺してやるぅ!!」
一人の金髪碧眼の長身美女に襲い掛かる不良達の表情は、恐怖一色に染まっており、「やらなければやられる」と、顔を見れば直ぐに分かるほどだ。
死の恐怖に怯えながら襲ってくる不良達を、マリは何の躊躇いもなく反撃を食らわせる。
「食らえぇぇぇ!!」
まず初めに襲ってきたジャンバーの男に強力な蹴りを食らわせた。首をあらぬ方向に曲がり、身体は硬いアスファルトの上に落ちる。
「わぁぁぁぁ!くたばれぇ!!」
次の角材を持った男が殴りかかったが、あっさりと受け取られてしまう。隙を見た鉄パイプを持つ男と割れたガラス瓶を持った男がマリに強力な一撃を加えようとする。
「甘い」
この一言が発せられた直後、強力な蹴りが鉄パイプの男とガラス瓶の男の腹に炸裂した。
強力な蹴りを受けた男達は、腹の中にある物を吐き出し、地面に膝をつく。角材の男は直ぐに引き離そうとするが、マリの腕力が女性とは思えない程強く、全く引き離せない。
「な、何だよ・・・!は、離せよ・・・!」
必死に引き離そうとするが、まるで柱を引き離しているようで微動しなかった。
そんな男に右手で角材を握るマリは、メリケンサックで殴りかかってくる不良達を片手と足で倒しつつ、簡単なことを告げる。
「簡単じゃん。引き離せなかったら、離せば良いんじゃないの?」
「えっ・・・!?」
男は「なんでそんな簡単なことを思い付かないだろう」と思ってしまう。戦闘に浅い者でも見逃さない隙を見せた男は角材を奪われ、口に角材を入れ込まれた。
「ブガッ!?」
「ほら、簡単でしょ?」
男の口に角材を突っ込みながら、マリは笑みを浮かべながら聞く。吐いていた男二人が立ち直り、再び襲い掛かって来たが、角材を手放したマリが、落ちていた鉄パイプを拾い上げ、二人の男を同時に払った。
『ゴベェ!?』
顎が外れた二人はコンクリートの壁に頭部を打ち付けて即死する。メリケンサックの三人の男達は再び殴りかかったが、あえなく流されて全員倒された。
「ふぅ~何人か殺してないけど・・・」
自分を誘った不良達を全滅させたマリは、両手を払い除け、まだ生きている者達の手足を踏み付け、しばらくは動けないようにする。
「まぁ、これくらいで済ませてあげますか」
死んでいる者達と気付かぬ内に重傷を負わした不良達を見て、マリは能力探しを再開した。
だが、彼女はこの先自分の堪忍袋の緒が切れるような事が起こるとは知るよしもなく、ひたすら鼓動が強くなる方向へと進む。
強くなる方へ進んでいく内、客引きの声が、彼女の耳に入ってきた。
流石にこの場を歩くマリの容姿は目立ち、見られてしまうが、彼女が妙な威圧感を放っている所為か、誰も近付かず、一目見てから家に帰るなり仕事に戻るなりする。
ずっと心臓の鼓動を見ながら歩いていると、客引きの声が多くなったが、その声の中にとてもこの町には合わない十代にも満たない少女の声が聞こえた。
「今・・・女の子の声が・・・?」
直ぐにマリは能力ダークビジョンを発動し、少女を探す。こう人が多くては探すのは困難そうだが、その場を歩く人間と居る人間の大半は152~180㎝程だ。
声からして少女は128か140㎝程なので、他のとは違って視界の低さを見れば直ぐに分かるだろう。案の定、あっさりと背丈130㎝程の少女は見付かった。
鼓動する心臓を左手に仕舞い、少女に声を掛けようとするが、後ろからホストに声を掛けられる。
「ねぇ、お姉さん。今夜暇?」
ホストは金髪に染めた髪で、仕事なのか、洒落たスーツを着ている。
これは所謂ナンパであり、マリの容姿と体型、この町を歩いていることから誘い待ちと思ったのだろう。
だが、これが彼女の逆鱗に触れたのか、マリは思い切りホストの股間を、背を向けたまま蹴り付けた。
「ヴア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!?」
余りの痛さにホストは声にもならない叫び声を上げ、股間を押さえ、道路に膝をついた。
その声は通りを歩く通行人が振り向いて足を止めるほどであり、声を掛けようとした少女が無表情で自分に迫るマリの姿を見て、持っていた看板を落とす。
落とした看板には、ガールズバーの宣伝と場所が記されている。これを目にしたマリは、怯える少女に声を掛けた。
「ねぇ、なんでこんな汚い町に居るの?」
「そ、それは・・・」
それもその筈、突然白人女性が余りにも日本人の発音に近い日本語で話し掛けて来た為、少女は困惑した。
どう答えて良いか分からず、少女はマリから視線を逸らす。マリは困惑する少女の身長に合わせて屈め、頬に右手を沿え、問う。
「怖がらないで、何処にも連れて行かないから・・・」
優しげな表情と言葉に安心感を抱いたのか、少女は素直に答える。
「分かった・・・おじさんが、ここに居て、看板持ってれば、お金くれるって・・・」
その答えにマリは舌打ちをしそうになったが、「これ以上怖がらせてはなら無い」と思い、なんとか抑えた。丁度、少女が言っていた”おじさん”がマリの目の前に現れた。
「全く。なんで俺が餓鬼の面倒を・・・」
嫌々ながらこちらに向かってくる若い男に、少女は指差してマリに告げた。
「あっ、あの人・・・」
「へぇ・・・あいつが・・・」
「あっ、なんで外人の女に声かけれてんだ?」
男は自分の方へ視線を向けるマリに近付いていく。
「(やべ、俺英語話せねぇーや)」
彼女を完全に日本語が話せないと決め付けた男は、マリに声を掛けた。
「あの・・・」
「酷いじゃないかお姉さん・・・よくも俺の股間を・・・オオオッ!?」
マリの後ろから、先程股間に強烈な一撃を食らったホストが近付いてくるのが見えたが、今度は強力な肘打ちを顔面に食らい、鼻の骨が完全に砕け、整った顔立ちが美しい金髪碧眼の美女に潰された。
衝撃で抜けた複数の歯を落としながら道路に倒れ、気絶する。これを目撃した男は失禁どころか脱糞し、まるで金縛りにあったかのように動けず、ただマリを見ているしか無かった。
少女はまたも震え上がるが、彼女の優しげな表情でなんとか落ち着く。
「案内してよ」
「はい!案内させていただきます!!」
男はこの頼みは即座に受け入れ、直ちにマリを自分の職場に案内する。
しかし、彼女としてはこの場に少女を置いていくわけにはいかず、たまたま目に入った花柄の服を着たえらく古風な角刈りグラサンチンピラを捕まえ、少女誘拐犯に仕立てた。
「お巡りさ~ん!このロリコンが、女子小学生を誘拐しようとしてま~す!」
「え、えっ、俺ぇ~?」
人が変わった事を言うマリに、古風チンピラは戸惑い、周りを見るが、彼を見る周りの目は冷たい物だった。少女もこれは言っておくべきなのか、助けを呼ぶ。
「助けて!このダサイ服の男が連れて行こうとしてます!!」
「アイエェェェ!?」
もはや男には逃げ場はなかった。マリをナンパしようと気絶しているホストとは違う別のホストが、警察に通報する。
その間に彼女は少女に別れを告げた後、恐怖で付き従う男に案内するよう言う。
「じゃあ、ちゃんとお家に帰るのよ」
「うん、お姉ちゃん!」
「ほら、あんたは私を案内しなさい」
「ぅわ、分かりました!お嬢様ァ!!」
男は凄まじい悪臭を周囲に撒き散らしながら、マリを自分の職場に案内を再開した。
当然の如く悪臭が酷いので、マリは男から距離を離してついていく。無論、周りの通行人も避けるほどであり、客引きやポン引きすらその場を離れるほどであった。
「あんた、漏らしすぎ」
「そ、そんなこと言ったって怖かったんですよ!」
額に汗を滝のように流しつつ噛んでから答えた。男から距離を置いて進んでいくと、目標のガールズバーに辿り着いた。
「ここね・・・」
「もう案内したんですから・・・解放してくださいよ・・・!」
案内を終えた男は、マリに解放してもらおうと頼むが、拒否される。
「駄目よ。あんたにはまだ使い道があるの」
「そんな・・・お母ちゃん、助けて!!」
黒い笑顔で告げるマリに、男は泣き叫び、また失禁して脱糞までし、ズボンの裾から排泄物が落ちる。排泄物を目にしたマリは汚物を見るような目で見て、背中に蹴りを入れた。
男は痛がるが、彼女にとっては関係のないことである。
周囲を見ると、若い女性を連れた禿げた年配の男が、自分の高級車に連れ込もうとしていた。それを見たマリはにやりと唇を曲げ、男の利用方法を思い付く。
「あっ、ここで良いわ」
「良かった・・・ハナッ!?」
助かったと思っていた男であるが、突如足払いされ、年配の男の高級車へと蹴り飛ばされた。
男は高級車の運転席の窓に尻から激突し、車内を悪臭で充満させた。車内にいた若い女は即座に飛び出して、走りながら何処かに去っていった。
一方の禿げた男は激怒し、窓に突っ込んだ男を引き摺り落とし、蹴りまくっている。
憂さ晴らしが出来たマリは、ガールズバーの出入り口から堂々と入店した。
「いらっしゃい・・・ませ・・・?」
いつものように男性客ではなく、女性、しかも金髪で白い肌、碧い目を持つ外国人女性が入店してきた為、店員は少し対応に焦る。
カウンターに居る店長は追い払うよう顎で用心棒に命じるが、当人であるマリは堂々とカウンターに近付いてくる。これを見た接客係達はざわつき始める。
「あの・・・女性の方でも・・・?」
「ここはガールズバーだぞ。女が女に張り付いて接客なんて、レズバーだけだ。とっとと出てって貰うしか無いだろう」
話し掛けてきた接客係の女性に、答えた店長はカウンターに立つマリに視線を戻す。
「すみません、お客様。当店は女性客のサービスはしておりません。お帰りお願いします」
向かってきて自分の肩を叩く用心棒であるが、彼女は無視する。
「おい、無視するな!ここは・・・ギャッ!」
マリに取っては余りにも煩かったのか、彼女は用心棒の右腕をへし折った。それを見た店長の顔は驚き、後ろへ下がる。
隣の席に座る酔った客は驚いて声を上げようとしたが、肘打ちを頭に食らって地面に倒れる。
女性店員は悲鳴を上げ、床に尻餅をつく。騒ぎはこれだけでは収まらず、マリはカウンターに置かれたウィスキーの瓶を手にし、それをグラスに注ぐ。
「このアマぁ~!」
肘打ちされた客が起き上がり、殴り掛かろうとするが、片手で片付けられる。マリはカウンターに腰掛け、他の客に向けて手の甲を向けて中指を立て、グラスに入ったウィスキーを飲む。
この挑発的なジェスチャーであるファックサインの意味を知る外国人を含めた客達は席を立ち、マリを睨み付け、近付いてくる。
「外国のお姉さん。それはどういう意味かな・・・?」
腕を鳴らしながら近付いてくる柄の悪い男に、マリは態と顔に向けて嚔をした。
「ヘックシュ!あっ、ごめん」
「このアマぁ・・・!」
人に向けて嚔と言う余りにも無礼極まりない表情で謝ってきた為、柄の悪い男はキレ、殴り掛かってきた。
だが、顎を蹴り上げられ、テーブルまで吹き飛ばされる。ファックサインの意味の分からなかった他の客達も立ち上がり、酔いに任せて一斉にマリに襲い掛かる。
「おらっ!何するんじゃ!ワレェ!!」
中には暴力団員も居たらしく、得物のナイフを抜いて襲ってくる。一方の店長は武器を取りに行く為か、カウンターには居なかった。
周囲にいる女性店員が悲鳴を上げる中、マリは襲い掛かる酔っぱらい達十六人に対し、空になったグラスを投げ付け、一人目を倒した。
「ドバッ!?」
「食らえぇ!」
次にナイフで斬り掛かる暴力団員が来るが、あっさりと避けられた挙げ句に髪を掴まれ、カウンターのバックバーに投げ込まれて、自分の頭で多数の酒瓶を割る。酒瓶を持った客が殴り掛かってくるも、これも避けられて逆に酒瓶で殴られた。
もう一人は顔面に強烈な蹴りを食らって窓を突き破り、外に放り出される。カウンターの近くにいた客も殴り掛かろうとするが、避けられて頭を掴まれ、カウンターに打ち付けられる。
武器である長い棒を持ってきた店長はマリを殴ろうとしたが、逆に彼女に武器を渡すようになってしまい、右頭部を棒で強打され、脳震盪を起こし、白目を剥いて口から泡を吹いて失神する。
残る酔いに酔った客達は次々と店長から奪った棒で倒されていき、店内は大いに荒れる。
「あっ、そうだ」
「グベッ!?」
メリケンサックで殴り掛かってくる男の頭部に一発叩き込んだマリは、後ろで固まって怯える接客係達を見て、何か思い付いた。
「あんた等の中に未成年混じってるでしょ。こんな所で働かず、もうちょっとマシな所で働きなさいよ」
『は、はい・・・』
襲ってきた腹を思いっ切り棒で突きながら言うマリに、どうして良いか分からない接客係達であるが、未成年の接客係達は取り敢えず素直に答えた。
酔った勢いで襲ってきた客達は全滅し、襲ってこなかった客はただ震え上がっているだけだった。
「これで全滅ね・・・あっ、ほら。金庫の鍵」
棒で失神している店長から奪った金庫の鍵を、接客係達に向けて投げた。一番の年長者がそれを慣れない手付きで受け取り、マリに視線を向ける。
「あの・・・これ・・・」
「だって、未成年働かすなんて違法じゃない。客も同然だから、警察が来るまでに盗ってしまいなさいよ」
この言葉に接客係達は、外に飛ばされた男以外の伸びている客から財布を抜き取り始め、金庫とレジの鍵を開けて現金を取り始めた。
棒を捨ててまだ無事で入っている酒瓶を盗り、店から立ち去ろうとするマリであるが、彼女にとっては思わぬ不意打ちを食らった。
「やった・・・!」
先程震えていた男が、マリを酒瓶で殴ったのだ。ガラスが割れ、容器の中身が彼女の綺麗な金髪を濡らし、頭部を傷付け、額から血を流させる。
床に血が混じったアルコールが水滴のように落ちて広がる中、男は一人で歓喜する。
「やったぞーッ!暴力女を片付けたぞ!!」
接客係達からの白い目を気にせず、男は一人で勝手に歓喜するが、マリに首を掴まれ、直ぐに黙る。
「な、なんだ・・・こ、この、犯罪者め・・・!」
睨み付け来る男だが、マリがそれよりも遙かに殺気立った瞳で睨み付けてきた為、男は泣き出し、失禁までした。
マリはこの男には全く害は無いと察し、床に投げた。男は反撃することなくただ震えてばかりだ。
店を後にする前に、マリは固まっている接客係達に告げる。
「あぁ、取り敢えずこの惨状は、そいつの所為にしときなさいよ。お金も奪ったのもそいつで」
あ然する接客係達に告げ終えたマリは何の応急処置もせず、店を出た。酒を飲みながら店から離れる中、以下にもヤクザなグラサンを掛けた男に呼び止められた。
「おい、お前さん。か弱く見えて強いじゃねぇーか。俺達の組に・・・」
言い終える前に、マリはヤクザの横顔に強烈な蹴りを入れ、道路に伸びさせた。そのまま通りを出て行くと、突然目前がし始めた。
「頭が・・・痛い・・・」
そう口にしながら再び酒を飲むと、足がフラフラし、蹌踉ける。また口にすると、今度は視界がぼやけ始めた。
「あれ・・・?私、お酒に弱かったっけ・・・?」
視界がぼやけて足も蹌踉めく中、点滅する赤いランプを見たのを境に、歩道に倒れた。倒れた後に、歩道に広がる自分の血と紺青色のズボンの裾に黒い靴を見たのを最後にマリは眠りについた。
こんなの書いて、大丈夫かな・・・?