復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
時は、マリが新宿に足を踏み入れる前に遡る。
「良いですか、
「分かってるわよ。RPGゲームに例えるなら経験値がゴミみたいな奴ばっかだって事でしょ」
豊島区の何処かにある屋敷に扮したワルキューレの基地にて、ノエルが前の君主であるマリに注意していた。
それに対し、マリはゲームに例えて答える。その巫山戯たような受け答えに、ノエルは頬を膨らませるが、これがマリの思う壺であった。
「あら、ちょっと可愛い」
「もう!」
可愛らしい怒り方をするノエルに、マリはからかいながら玄関まで向かった。
ちなみに、このワルキューレの基地こと日本支部として使われている洋館の防御用設備は内部だけであり、外の防御設備は一切無い。ただ警戒赤外センサーを置いているだけである。それに警備兵は置いて居らず、ただ監視カメラを設置しているだけだ。
その御陰か、周辺の人々には、この屋敷もとい基地はただの金持ちが建てた洋館だと思われている。
中庭もただ数本ほど木々があり、庭も綺麗に清掃されていることから、誰も屋敷に異世界から来た軍隊組織が居るとは気付かない。
徹底的なカモフラージュがされているので、日本政府や情報機関も、お膝元に異世界の軍隊組織が居るとは思わないだろう。
「ホントに可愛い・・・」
ノエルの情報将校としての後輩である京香も、先輩の愛らしい怒りプリに感激し、声を出す。
「じゃあ、情報通り新宿にムガルの使いパシリと私能力はあるのね?」
「はい。能力に関しては、少し信憑性が薄いですが、標的に関しては確実であります」
マリからの質問に、ノエルは取り直して答える。そう確認したマリは、ドアを開けて出て行こうとする。
「あっ」
「なに?」
「絶対に大暴れしないでくださいよ?」
「分かってるわよ。しつこいな・・・」
何度も釘を刺すノエルに対し、マリは答えて聞こえないように呟いた後、玄関を出て外に出た。屋敷の門から出ると、未だに聞こえてくる車の走行音が耳に入ってくる。
「さて、どっちから向かいましょうかね」
東京都の地図を見て一人で呟きながら、マリは新宿へと向かった。
『おい・・・起きろ・・・』
加工でもされているかのような声を聞き、マリは目を開けた。
まるで悪魔のような声だが、今のマリにそう聞こえるだけで、目の前にいる警官の声は、普通の男性の低い声である。徐々に視界のぼやけがはっきりとしていく中、彼女は机に手を乗せ、体勢を立て直した。
「ようやく起きたか・・・」
目の前に座る紺青色の制服を着た警官の声がちゃんと聞こえてくると、体勢を立て直したマリに頭痛が襲った。
「いたっ・・・!」
「まだ頭痛が残っているらしいな。それもそのはずだ、頭から血を流したまま日本酒を飲んでいたからな」
警官は両肘を机に置き、包帯を巻いている部分を抑えるマリに告げる。どうやら取調室に運び込まれたようだ。
「あぁ、出血が止まりそうもないから治療しておいた。幸い、署でも治療が可能レベルでな」
付け加えた警官は同じく机に置かれている書類に目線を合わせ、ペンを取り、身元確認と事情聴取を始める。
「早速目覚めて悪いが・・・これから事情聴取を兼ねた身元確認を行う。君の姿はどうから見ても、白人女性だな・・・何処の国の出身だ?」
「何処でもない」
英語で訪ねてくる警官に対し、マリはウクライナ語で答えた。警官は表情を変え、少し間を開けて、ロシア語で問う。
「何処の国の出身かと聞いている」
「私は何処の出身でもない」
少し声色を変えた警官の質問に対し、マリは付け加えただけの同じ答えを返す。流石に苛ついたのか、警官のマリの見る目が睨み付けるような目線に変わっていた。
警官がまた質問に取り掛かろうとした瞬間、取調室のドアから別の警官が入ってきた。
「おい、その金髪女の身元引き取り人が来たぞ」
「ちっ。まだ何も特定できてないのに・・・でっ、身元の受取人は?」
舌打ちした取り調べの警官は、マリの身元の引き取り人の事を聞く。
「さぁ、そこにいる金髪女よりは劣るが、美人だ。兎に角、早く受付まで運んでおけ」
「分かった。良し、案内するからついてこい」
答えた警官はそのままドアに陣取り、取り調べ係の警官はマリについてくるよう指で指示する。それに応じて、マリは警官達についていくことにした。
案内する警官達の背中を見て「何かおかしな事をするのでは無いか?」と思ったが、思い違いであったのか、ちゃんと受付まで案内してくれた。
受付の待合い席に、赤み混じった茶髪の女性が座っていた。顔は整っており、美人の領域に入るくらいの容姿だった。
「ノエルじゃないわね・・・」
女性を見たマリは、一瞬自分の忠犬寸前になっている情報士官のノエルかと思ったが、顔を見て違うと判断した。マリを見付けた女性は、彼女に近付いてくる。
「あの・・・ヴァセレート様でしょうか?」
少し不安げな表情を浮かべる童顔の女性は、マリ本人であるかどうかを問う。
当然の如くマリは自分だと答えた後、目の前にいる二十代にも満たしそうにない若い女性に何者かを聞いた。
「そうだけど。それにあんた誰よ?」
「あぁ、私ですか?私はアップルピー情報中佐から貴方を引き取るように命ぜられた新宿区でスカウトガールを担当している
「スカウトガール・・・?」
「はい、スカウトガールとは・・・あっ、ここじゃ駄目だったんだ。あの、一緒に外に出てください。ここじゃ何かとやばそうなんで」
スカウトガールと言う単語に疑問を覚え、顔をやや斜めに傾けたマリ。理解されていないと麻奈美は、ここで詳しく話すのは不味いと思ったのか、警察署から一緒に出るように伝える。
少しマリを連れ回した後、ここなら安心して喋れると思い、彼女の手を離した麻奈美はスカウトガールについての説明を始めた。
「ここなら良いか・・・誰も見てないし。スカウトガールは、別にエッチな店に案内する女性の意味じゃないですよ。この世界の人間を我々軍事結社ワルキューレの兵士として勧誘するスカウトする人のことであります。スカウトは我々の意味では偵察と斥候でありますが、ガールを付けて区別しました。これがスカウトガールです」
「へぇ・・・そうなんだ」
聞いても無い事まで説明に、マリは理解した。彼女の表情を見て、麻奈美は「理解してくれた」と思い、安心する。
次の問題に移るため、彼女は目の前で安心しきっている麻奈美に問う。
「それで、何処に連れて行くの?」
「あぁ、そうでした!」
問われた麻奈美は少し慌て、行き場所を告げる。
「これから基地に帰りますので・・・まだ何かやり残したことは?」
「あるわ」
この世界におけるワルキューレの拠点である屋敷に帰ると麻奈美は告げるが、マリは拒否するかのように口を開いた。直ぐに「それが何か」と彼女は弱々しく聞く。
「それはどんな・・・?」
「私の能力。大分離されちゃったから、直ぐにあそこへ戻らないと」
「怪我をしておられるのですよ。直ぐに戻らないと・・・」
「この程度の傷、問題ないから。あんたは仕事でもしてなさい」
手を伸ばしてくる麻奈美の手を払い除けたマリは、直ぐに能力探知機である心臓の鼓動が強い歌舞伎町裏通りへと戻ろうとする。
「待ってください!」
「何よ」
行こうとするが、呼び止められた為、マリは振り向いて麻奈美に問う。
「それなら私も連れて行ってください。拳銃・・・持ってますから」
麻奈美は、上着から見えるショルダーホルスターに差し込んである小型自動拳銃コルトポケットを見せた。これを見たマリは麻奈美の頭を撫でて、自分より背丈が17㎝も低い彼女を褒める。
「へぇ~用意が良いじゃない。偉い偉い」
「え、は、恥ずかしいですよ・・・」
まるで子供を褒めるかのような物であった為、麻奈美は恥ずかしくなり、赤面する。
「しかし、私のはどうすれば良いかしら?基地に戻っても、ノエルちゃんが煩いし・・・」
顎に人差し指を当てて、自分の銃はどうすれば良いか迷うマリ。戻ってもノエルが銃の所持の許可を出すとは思えず、近くの警察署に忍び込み、銃を盗むのもありだが、それでは琴が大きくなりすぎて、上官のような人物である彼女にどやされるかもしれない。
「どうしようか・・・?」
そう考え込んでいる内に、あの男の事を思い出した。
「あいつなら銃を持ってるかもしれないわね・・・」
「あいつって?」
聞いてきた麻奈美に、マリは即答する。
「なんか私にまとわりついてくるガングロのおっさん」
「ストーカーですか?」
「まぁ、そんなところ。頼めば出してくれるかしら?でも居場所なんて分からないし・・・」
続いて聞いてくる質問に答えた後、ガイドルフがこの世界の何処かに居るかどうかを悩み始める。だが、運が良いことに探す手間もなく、そのガイドルフ自身がマリと麻奈美の元にわざわざやって来た。
「よぉ、まさかあんたがサツにとっ捕まるなんて思いもしなかったから、見に来てやったぜ」
「あっ、カモが葱しょってやってきた」
「あの人ですか?」
「えぇ、そうよ」
また聞いてくる麻奈美にマリが答えるのを見ていたガイドルフは、二人が何を考えているか察しを付ける。
「そこのお嬢さんが
自分の考えていたことをある程度当てたガイドルフにマリは警戒心を抱いたが、銃を手に入れるには彼が必要なため、強気で銃を渡すよう伝える。
「えぇ、もちろんそのつもりよ。だって、ムガルとか言う頭のイカれた集団が先回りしてるかもしれないじゃない。ほら、銃出してよ」
隣にいた麻奈美は少し不安げになったが、ガイドルフは後頭部を少し掻いた後、煙草を取り出して、それを吸って煙を吐いた後、マリに答える。
「あぁ、良いぞ」
「えぇ!良いんですか!?」
麻奈美があっさりと銃を渡すガイドルフに驚き、マリも意外な答えに少し驚いた。
「良いんだよ。それにそこの女神のようなお嬢さんに能力を取り戻して貰わんと困るんでな」
「へぇー、その銃であんたを殺すかもしれないけど。それで良いってわけ?」
腕組みをしながら強気で問うマリに、ガイドルフは煙草を離してから答えた。
「それだけは勘弁願いたいな。まぁ、そんな話は置いておき。サツの署の目の前で銃なんて出したらお縄だ。案内するから俺の車まで来てくれ」
煙草を咥えながら、ガイドルフがマリと麻奈美についてくるよう言った後、自分の車まで向かった。その後を二人は警戒しながらついていく。
「そんなに警戒しなさんな。別に盗って喰いやしない」
疑いの目を向ける二人に、ガイドルフは振り返り伝える。それでも二人は、未だにガイドルフを警戒しながらついていくのだった。
「よし、着いたぞ。あのフォードエイスプローラーの4代目リア型がこの世界における俺の愛車だ」
自分の
「おいおい!そんなに慌てなさんな。今開けるからよ」
ピッキングで開けようとするマリを遠ざけた後、自分で鍵を使ってトランクを開けた。
「車内でチェックを済ませてくれ。通報される」
近くの歩道を歩く通行人を見ながらガイドルフが告げると、マリは車内で銃の確認を行った。
銃は全部で八挺入っており、突撃銃が二挺、狙撃銃が一挺、短機関銃が一挺、散弾銃が一挺、自動拳銃が三挺入っていた。
突撃銃はAKS74の銃身を限界まで切り詰めたAKS74U、FN社のブルパップライフルF2000。
狙撃銃はロシア軍では今での使われているSVDドグラノフ、短機関銃は最初から消音器付きのMP5SD6、散弾銃はモスバーグ社のM500。
自動拳銃はFNハイパワー、APSスチェキン、グロック17だ。
それぞれがケースに入れられており、弾倉が一緒に入れられている。ケースに仕舞えば、周囲の人間にばれずに済む。
「結構揃ってるじゃん。取り敢えずこれとこれ貰っておくわ」
マリはMP5SD6とAPSスチェキンを十分な弾倉分と共に手に取った。MP5SDはケースに仕舞って持ち、スチェキンはショルダーホルスターに差し込み、その上から上着を羽織って隠すようにする。
「あれ、持てるだけ持って行かないのですか?」
「お嬢さん。そんなに持ってたら重い上に目立つだろ?」
「あぁ、そうなんだ」
マリが余り銃を持てるだけ持って行かないのを聞いた麻奈美であるが、ガイドルフからの答えに納得し、自分も銃を持って行くことにした。麻奈美はAKS74Uが入ったケースを手に取り、それを両手に握る。
「準備は出来たようだな。そこまで送っていくか?」
「いえ、あの人が言うように、そんなに離れてないようなので」
ガイドルフは送っていこうと思ったが、麻奈美が即答で答えた為、トランクを仕舞う。
「それじゃ幸運を祈るよ」
SUVに体重を掛けながらガイドルフは開いている右手で幸運のジェスチャーを送った。それを見た麻奈美はお辞儀をしてから行くが、マリは何の礼も無しに麻奈美と共に向かった。
麻奈美は礼をしないマリに注意しようかと思ったが、とても声をかけられそうもない表情を浮かべていた為、断念した。
空いている手で心臓を取り出し、鼓動が強くなる方向へと向かう。何度も言うが、この心臓はマリと一部の人間以外見えていない。暫く歩いていると、裏通り近くまで来ていた。
「あの・・・?」
「なに?」
「取り敢えず連絡だけはしておきますね」
スマートフォンを取り出して、聞いてくる麻奈美にマリは無言で答え、彼女は拠点に連絡を入れた。その間にマリは、鼓動が強い方向に視線を向ける。
「連絡終わりました。では、行きましょう」
「そう。じゃあ、私が案内するからついてきて」
麻奈美からの知らせに、マリは彼女と共に裏通りへと入る。裏通りは日が出ている時間帯には人通りが少なく、夜とは違ってかなり活気がなかった。
ここの地区のスカウトを担当する麻奈美であるが、彼女は初めて入る場所なのか、えらくケースの握る両手が強くなっている。
このまま心臓の鼓動が強くなる方へ向かうと、鼓動が着々と増していき、何処にあるのかが分かってくる。40分以上鼓動が強くなる方向へと歩いていると、自分の能力がある場所へと辿り着くこと着いた。
能力がある場所は、周りにある建物と同じ三階建ての鉄筋コンクリート構造の建築物だ。
「ここね・・・何か食べれる物出して」
立ち止まって目標を見付けたマリは心臓を仕舞い、麻奈美に何か食べられる物を渡すよう指示する。応じた麻奈美は、鞄から栄養調節食品を取り出し、マリに渡す。
「ありがとう」
礼を言った後、封を開けて栄養調節食を食べ始める。全て食べ終えると、置いていた短機関銃が入っているケースを持ち上げ、建築物の正面出入り口から堂々と入るが、麻奈美に止められる。
「えっ、裏から回らないんですか?」
「そうに限って、裏に何か仕込んでるかもしれないじゃない。だから、面から堂々と」
問いに答えたマリは周囲に通行人が居ないことを確認し、ケースからMP5SD6を予備弾倉と共に取り出し、銃を構えながら出入り口のドアを開けた。
その後に続くように、麻奈美もケースから短機関銃に近い突撃銃と入っている弾倉を慌てて取り出して、建物に入った。
ちなみに弾倉は、入る限りポケットに入れている。室内は薄暗く、数ヶ月ほど余り掃除をしていなかったのか、床を踏み付けると、埃が舞う。
麻奈美がご丁寧にも銃身に着いていたフラッシュライトを点けて、辺りを照らした。
何も置かれて居らず、この建物に張られていた取り壊しお知らせのポスターが貼られていた事から無人と分かるが、奥の部屋から何か物音が聞こえてきた。
「何でしょうか・・・?」
「行ってみるしか無いでしょ」
咄嗟に銃を向ける麻奈美はマリに聞くが、等の彼女は物音が鳴った方へと向かう。
奥の部屋を覗いてみると、良く紛争地域で見られる中国製AK47の56式自動歩槍を所持した男が、床下収納庫から出て来るのが見えた。中国製のコピー突撃銃を持った男は窓を開けて、外を見た。
男が気付かない内に、マリは肩にスリリングを掛けてMP5SDを吊し、スチェキンを取り出して、足音を立てないように近付く。
「はぁ~、ボスはきついな・・・」
呑気に溜め息をつく男であるが、後ろから近付いてくる彼女には気付かず、あっさりと捉えられた。
「動かないで」
「ヒッ・・・!な、何者だ・・・!?」
後頭部に銃を突き付けられながら、銃を吊しながら男は手を挙げ、マリに何者かを聞く。だが、彼女は答えず、壁に頭をぶつけて尋問を開始する。
「あんた等ここで何やってるの?」
「あ、あぁ・・・俺はただ雇われているだけで、見張りをしているだけなんだ!この建物の地下には変な男達が何かを計画している。それしか分からない・・・!」
「それと上階には何が?」
次の質問をすると、これも教えてくれた。
「上の階は何もない。ただ夜になると、この辺の馬鹿な若者がたむろするだけだ!なぁ、言ったから解放してくれよな?」
「そう、ありがと」
あっさりと口を割った男に、マリは礼を言うと、叫ばれたら困る為、壁に思いっ切り男の頭を叩き付け、気絶させた。
壁に男の血痕が二つ残ったが、そんな事は彼女には関係のないことである。遅れてやって来た麻奈美は、マリに何が起こったのかを問うが、彼女に残れと指示される。
「あの、一体何が?」
「あんたは残っておきなさい」
「え、でも・・・」
食い下がらずに問うが、マリが表情を変えて言ってきた為、少し怯えて断念する。
「良いから!」
「は、はい・・・」
泣く泣く指示に従った麻奈美はこの部屋に残ることにし、マリは地下へと入っていった。
梯子を降りた先は、明かりの付いた地下通路だった。部屋は見える限りで七部屋であり、複数の足音が聞こえてくる。
確認のために心臓を取り出して見ると、鼓動がより一層強くなっていた。
「ここね」
小さく呟いた彼女は、ここに能力があると踏んだ。ダークビジョンを発動し、部屋に居る人数を確認する。
銃を構えながら進むと、近くの部屋から白いタンクトップを着た男が出て来た。
直ぐに自分の存在を隠すため、安全装置を解除して男の頭を撃ち抜く。頭部を撃たれた男は堅い床に倒れ込み、物音を立ててしまう。
「おい、どうした?」
偶然にも男が出て来た部屋には他の男が居た為、直ぐにその部屋へ入り、中にいた男を排除した。部屋の中は二段ベットが4つあり、それぞれが隅に配置されている。
近くにベットの数だけの中国製突撃銃が置かれていることから、ここは日本の過激派の基地かもしれない。
引き出しの上に置かれてあった手鏡を取り、それで他の部屋の人数を確認することにする。部屋を出ると、辺りを見渡し、虱潰しに隅から調べる事にした。
まず近くの部屋のドアの隙間から鏡を覗かせて見ると、八人くらいが自分の銃を解体して清掃をしており、面倒臭そうにする声が聞こえてくる。
「面倒臭いぜ。なんで銃の清掃なんか」
「全部雇い主からの指示だぜ。いつでも撃てるようにしろとよ」
「はぁ、本当に面倒臭いよな」
清掃を面倒臭がる男達であるが、清掃を終える前に、ドアを開けて入ってくる女に殺されようとは思いもしないだろう。
「おっ!誰だお前は!?」
ドアを開けて思いっ切り開けて入ってきたマリはドイツ製の短機関銃を単発にし、驚きの声を上げる一人一人の頭を素早く撃ち抜き、この部屋にいた男達は全員あの世行きとなった。
部屋を出たマリは次の部屋の人数を確認した後、突入して他の者達には気付かれぬよう全員始末する。
これを繰り返すことによって、左の部屋群は全て片付いた。物音に気付いた男が出て来るが、口を開く前に射殺される。
そろそろ弾切れだと思った彼女は弾倉を引き抜き、中身を確認する。
「これなら大丈夫かな?」
弾倉の重さで確認を終えると、右の部屋に取り掛かった。まず始めに制圧した部屋を除き、一つ一つの部屋を、ドアの隙間から手鏡で確認し、誰も居ないか確認する。
隣の部屋には誰も居なかった為、次の部屋を覗くと、大人数で集まってギャンブルで盛り上がっているのが見えた。
今余っている弾数では排除できない程居るため、後回しにして次の部屋をダークビジョンで調べる。その部屋には壁に一人の女性が五人の男に追い詰められ、襲われそうになっていた。
幸いにも銃弾は全て倒せるほど残っており、ドアを開け、直ぐに突入した。
「おぉ、誰だ?」
リーダー格の男が振り返った瞬間、額に穴が開き、床に倒れ込んだ。
気付いた残りの男達も微かに聞こえた銃声に気付いて、ホルスターに入ってある拳銃を抜こうとするが、抜く前に全員が頭部を撃たれ、地面にドミノ倒しの如く倒れていく。
「あ、あぁ・・・」
先程自分を襲おうとしていた男達が一瞬にして地面に倒れ込み、血を流し始めた為、声を上げようとしたが、素早く近付いてきたマリに口を塞がれた。
「静かに・・・」
空いている手で口を塞ぎながら、自分の唇の前に人差し指を立て、静かにするようジェスチャーする。
応じた女性は頷き、マリがここで待つよう手で指示した事も受け入れる。空になった弾倉を外し、満タンの弾倉を差し込んで初弾を薬室に送り込むと、ギャンブルで盛り上がる部屋に向かった。
ドアを蹴破って、中にいる男達を次々と射殺していく。
「ぎゃ!?」
「だ、誰だ!?」
声を上げる者も居たが、直ぐに射殺されて黙らされた。物の数秒で部屋にいた男達はたった一人を残して全滅し、床は血で赤く染まる。
生き残った男は警報装置に手を伸ばしたが、傷口を踏まれて声を上げる。
「グアァァ!」
「ねぇ、ここ何なの?」
傷口を踏みながら問うマリに、男は痛みに耐えながら答える。
「ここは、豊島区の洋館を襲撃する為の三つある拠点の一つだ!」
傷口を踏む足の強さを強め、続いて問う。
「洋館って何処の洋館?」
「人気の感じられない洋館だ!それ以上は分からん!頼むから踏まないでくれ!」
「そう。じゃあ、楽になれ」
片手で短機関銃の引き金を引き、男にトドメを刺したマリは先程の部屋に戻り、女性に自分が降りてきた梯子から出るよう指示する。
「ほら、出てって良いよ」
「は、はい!」
直ぐに女性はこの地下から出て行った。出て行ったのを確認したマリは、一番奥のドアに向かい、隙間から手鏡で確認する。
「まだ部屋が続いてるみたい」
通路を歩く男を見たマリはそう呟いて、ドアを開けて奥に入った。
男はマリの存在には気付いておらず、後ろから来られてナイフを奪われた挙げ句、そのコンバットナイフで喉を掻き斬られ、喉にたまった自分の血に溺れながら死んだ。
彼女は死んだ男から鞘を抜き取り、コンバットナイフを自分の物にする。一番奥の部屋から話し声が聞こえてきたので、直ぐにそこへ向かい、中で何をしているのかを、手鏡で調べる。
「こいつ等・・・!」
部屋には大きめの机が配置し、その上には地図が広げられており、定規やペンが置かれている。
人数は七名ほどであり、全員が自分から何もかも奪った組織のマークを付けた物だと分かった。その証拠に壁の上中央には、ムガル帝国の国旗が張られている。
『この世界における奴らの拠点は近くの区にあるこの洋館と孤児院だけだ。孤児院は別の隊が担当するとして、我々は洋館に集中するぞ。上層部が用意してくれた金で二個中隊分の人員と武器は確保できた。幸いにもあの洋館の規模は、二百人足らずで制圧できるほどだ。駐屯している敵戦力も歩兵二個小隊だけ。十分だろう』
『しかし、金で釣った奴らは信用できるのか?この国の人間だろう。我々を警察に売るのでは?』
『そう心配するな。この国の連中は殆ど売国奴ばかりだ。金さえ払えばなんでもする。例え子供でもな。金に意地汚い資本主義者ばかりだ』
『だったな、心配した俺が馬鹿だったよ。この国の奴らは愛国心も毛党もない売国奴と奴隷の集まりだ。自分達で何もしようとしない』
『平和、平和なんぞ叫ぶアホの集まりだからな。とても戦史で見たアジア最強の戦闘民族とは思えん』
話している話題では日本を貶すような事で盛り上がっているようだが、最初の襲撃のことを話している事を察すると、作戦会議を行う会議室のようだ。空の弾倉を取り出し、突入の準備をする。
『よし、決行は今夜10時だ。それまでに部下と連中に作戦の内容を知らせて・・・なんだ?』
中にいる士官が言い終える前に、弾倉が滑る音が鳴って、弾倉に注意を取られる。その隙を逃さず、マリは会議室に突入し、部屋にいた兵士達の排除を始めた。
「何者だ!?」
持っている自動小銃を向ける組織の兵士であるが、直ぐにマリに排除され、壁にもたれ掛かる形で死亡する。先程机に集まっていた士官と下士官達は全員射殺された。
全員の排除を確認したマリは、直ぐに他の拠点など位置が記された重要な資料を近くにあったトランクに出来るだけ詰め込み、会議室を出ようとする。
「この死体は!あっ、誰だお前、アッ!?」
だが、先程死体が見られた為、無事には脱出できず、近場にいた男を脇から抜いたスチェキン等で射殺する。
無論、ロシア製の大型自動拳銃には消音器など付いてはおらず、響いた銃声が他の銃を持つ男達を集めてしまった。
『侵入者だ!』
まだ調べてもいない部屋から続々と突撃銃や自動小銃、散弾銃を持った男達が出て来るが、次々とマリに射殺されていく。
幸い、通信機を扱える人間は全て会議室に居たために、ここの拠点が落ちた事を知らされずに済んだ。襲ってきた敵を全滅させたマリは心臓を取り出し、何処にあるのか探し始める。
「あった・・・!」
そんなに時間も掛からず、机の上に大事に置かれてあった水晶玉を遂に見付けることに成功した。
早速水晶玉を割る。藤色の煙がマリを包み込み、暫くして身体が光ると、力が沸いたような気がした。
「この能力は・・・殺意の波動・・・?」
試しに取り返した能力を発動してみると、風も通らない地下で強風が巻き起こった。
自信が付いた彼女は、死体だらけのこの地下拠点から出て、麻奈美と女性が待つ建築物に戻った。
地下から頭を出したが、手を伸ばしてくる麻奈美が不安がっており、とても良くない状態であることは確かだ。
「お帰りなさい、ヴァセレートさん。あの戻って悪いのですが・・・」
「敵の増援かしら・・・?」
ケースを麻奈美に渡し、二階に上がって外を確かめてみると、釘バットやお手軽な凶器を持った多数の柄の悪い男達が待ち受けていた。
「どうします、警察呼びますか?」
「その必要はないわ」
「えっ?ちょっと!」
麻奈美からの問いに答えたマリは二階から飛び降り、男達の前に姿を現した。
「おぅ。お前が例の」
リーダー格の男が言い終える前に、マリは殺意の波動を発動した。忽ち全員が腰を抜かし、道路に倒れ込んで震え始めるか気絶する。
この殺意の波動は強い殺気を飛ばし、相手から戦意を奪うか気絶させることの出来る能力だ。失禁するリーダーの胸倉を掴み上げ、誰に雇われたのかを問う。
「あんた、誰の命令で来た?」
「分からねぇ・・・!突然あいつからやって来て、金を渡して仲間を集めてここで待ってろと・・・!」
「そう。じゃあ、お礼として死になさい」
「はぇ?」
マリは空いている手でスチェキンを取り、リーダーを射殺した後、連発に切り替えて、倒れ込んでいる男達を撃ち始めた。
弾倉の中身が切れたら素早く入れ替え、立ち上がれない男達を次々と射殺していく。
響き渡る銃声を聞きながら、麻奈美はそれをただ見ていた。
全員の射殺を終えたマリは建物に戻り、起きて震える女性を人質に取ろうとする先程の男を射殺する。
全ての脅威を排除した後、マリは震える女性に近付き、額にキスをして立ち去った。この後、女性は直ぐに裏通りから離れて、帰宅したという。
「麻奈美、帰るわよ!」
二階から見ていた麻奈美はマリの声で我に返り、手に持ったAKS74Uをトランクに仕舞い、同じくMP5SD6をケースに仕舞った彼女の後へと続いた。
ちなみに麻奈美は右手に資料を詰め込んだケースを持っている。
「ほら、持ってあげるから連絡」
資料の入ったケースをマリに取られた麻奈美は、彼女の指示通り、連絡を入れた。
「こちらティンカー・ベル7、敵拠点を保護対象制圧!同時に敵異世界軍の拠点の位置を記した資料を入手せり!」
『保護対象と共に敵拠点を制圧ぅ!?何を言っているのか分かりません!ティンカー・ベル7、事の詳細を報告してください!』
「ですから、敵の拠点をヴァセレート氏と共に制圧したんで、部隊を・・・」
スマートフォンを耳に当てて、相手と格闘する麻奈美を見ながら、マリは銃を返しにガイドルフの元へ戻った。
書いていと、能力を忘れちゃった。
それとマリが能力の大変を失っているのに強すぎる・・・一般人相手だからかな・・・?
こんな駄目作者ですいません。
ちなみに、中断メッセージは今回の編ではお休みです。