復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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ゴステロ「約束ってのはな!守るよりな、破る方が刺激的でおもしれぇんだぜぇ!?」

と、言うことでZbv勢の参戦は無かったんや・・・

まずは反ナチスなヴォルヘルム・フォン・レープ陸軍元帥から・・・


何処にある?

 所変わり、マリが今居る要塞に攻める北ロシア某市の市役所をドイツ国防軍陸軍北方軍集団の司令本部とした司令室にて、軍集団司令官である丸刈りが特徴なドイツ陸軍の元帥であるヴィルヘルム・フォン・レープは頭を悩ませていた。

 

「う~む」

 

 椅子に腰掛け、机に膝を置き、目の前の地図と睨めっこをしながら頭を悩ませている。地図の隣には幾つもの報告書が山積みにされており、そのどれもが被害報告と占領報告、補給問題に関しての報告であった。

 

「レニングラードまで後一歩・・・ソ連軍の北部戦線の要塞を堕とせれば直ぐだな・・・」

 

 地図の今マリが潜入している要塞を鉛筆で突きながら呟くレープ。しかし、進行方向の後方に書かれた罰印を見て、再び頭を抱える。

 

「パルチザンの所為で補給がままならんな・・・前大戦で兵站部長をしていたとは言え、悩みどころだな」

 

 所属部隊の補給不足の報告書を見て、灰皿に置いた煙草を吸い、煙を吐いた。

 現在バルト三国は北ロシアの辺りを自軍の制圧下に置いているが、まだ目標であるレニングラードには近付けてはいない。悪天候と悪路。ソビエト赤軍の戦車の御陰で当初予定が、他の軍集団と同じく狂ってしまっている。

 

「そして前線に出て来るT-34やKV-1という斜面装甲の中戦車や装甲の厚い重戦車だ。Ⅲ号の60㎜でぎりぎりな程度・・・特にKV-2と言う砲塔が馬鹿でかい重戦車には88㎜を撃っても動いて来るときた。こんな戦車に空軍の奴らの急降下爆撃機が必要だが、借りるのに余り時間が掛かる。今回は貸してくれるが、あの堅い戦車が出て来たら不味いな・・・」

 

 ソ連軍の戦車に関する資料を見ながら呟いた。次に、この要塞を陥落させた後の事を考える。

 

「仮に要塞を陥落させ、レニングラードの攻略戦に第4装甲軍は、包囲の後ろをついてくるソ連赤軍の排除に当たらせようか・・・」

 

 自軍部隊傘下の第4装甲軍の扱いについて考えていると、置いてあった電話が鳴り始めた。

 

「もしもし?」

 

 電話に出たレープは、掛けてきた人物からの問いに答える。

 

「あぁそうだ。で、準備は出来たのか?」

 

 相手はドイツ空軍の第1航空艦隊の報告係の将校だ。

 

「なに?爆撃機と急降下爆撃は一個中隊くらいしか貸し出し出来ない?私は二個中隊を要求したのだぞ。なに、それで足りると貴官の上官は申している?くそ、仕方があるまい。随伴の戦闘機部隊を引き連れて出撃せよ。ただし、出来る限りの地上部隊の脅威の排除をせよ。対空砲も高射砲も邪魔なら潰しておけ。用がそれだけなら切るぞ」

 

 空軍の支援の悪さに機嫌を悪くして電話を切ったレープは、外にいる番兵に飲み物を持ってくるよう命じた。

 

「誰か水を持ってこい!たくっ、ゲーリングの豚め・・・!」

 

 空軍司令官であるヘルマン・ゲーリングの悪口を言った後、レープは部下が運んでくる飲み物を待った。

 

 

 

 場所は変わり、要塞へと見事潜入に成功したマリであったが、青い帽子を被った大柄の男達がPPsh41短機関銃を持ちながら目を光らせていた。

 着ている衣服は周りにいるソ連赤軍の将兵達と一緒であるが、帽子は先程言ったとおりに違い、彼等は内務人民委員部、通称MKVDと呼ばれたソビエト連邦の国家機関から派遣された督戦隊だ。

 彼等の任務は自軍部隊の監視で、命令無しに勝手に戦闘から退却・逃亡或いは降伏などする自軍兵士に攻撃を加えることである。そんな戦闘を強制的に続行させる督戦部隊の将兵達を見たマリは感付かれると思い、彼等の目線に入らないように進む。

 

「(なんかやばそうなのが居る。避けた方が良さそうね)」

 

 そう判断して、マリはなるべく見えない場所を進むことにした。

 鼓動が強くなる方向へと進み、着々と鼓動は強くなっていくが、進行方向にMKVDの将校や兵士が居るため、迂回させおえなくなる。

 始末しようにも、周りに他の兵士が居るので出来ない。人気がない場所に向かうと、そこにもドラムマガジンの短機関銃を持ったMKVD兵が居た。幸いここには他の将兵達の目もない為、何事もないように近付き、声を掛けた。

 

「あの・・・通って良いですか?」

 

「おい、見ない顔だな?それに何で一等兵の階級章を・・・」

 

 直ぐに感付いたので、マリはMKVD兵の腹にモシンナガンM1891/30小銃の銃座で強打し、怯ませた。

 

「ファシストのスパイ・・・」

 

 叫ぶ前に顔面を一発強打し、気絶させた。近くの人気のつかない場所にMKVD兵を隠すと、先へと進んだ。

 短機関銃も回収しようかと思ったが、他の将兵達からも怪しまれるので断念する。小銃を担ぎ、心臓の鼓動が強くなる方向へと進んでいき、地下1階に出ると、またもMKVD兵達が、行く手を遮るように立っていた。

 

「(あぁ~、もう面倒な奴らね!)」

 

 心の中で怒りを露わにしながらも、それを表に出さないように努力し、平然を装って他に将兵は居ないか確認した。

 

「(これなら殲滅できそう)」

 

 この場にいるMKVD兵を含めた七人をマークしたマリは、右手で消音付きナガンM1895回転式拳銃を素早く抜いた。

 

「ファシストのスパイだ!!」

 

 抜くところを見た兵士が肩に掛けてあるSVT-10自動小銃を構えようとするが、眉間を撃たれた。他の兵士達も気付いて今持っている銃の安全装置を外して銃を撃とうとするも、早撃ちで撃つ間もなく全滅する。全員が動かないことを確認した彼女は、拳銃の再装填を終えて先に進む。

 

「(あんまりやらない方が良いわね)」

 

 次に進んだ場所でも、持っている拳銃の残弾数で片付けられる人数だが、無駄に繰り返せば、この要塞の全兵力を相手にすることになる。

 彼女は避けられるだけ避け、致し方ない時は排除することに決めた。順調に鼓動が強くなる方向へと近付くと、空襲警報が要塞内に鳴り響いた。

 警報が鳴ったと同時に要塞内にいる将兵達が走り始める。

 

「ドイツ軍の爆撃機だ!!」

 

「配置に着け!」

 

「対空戦闘だ!防衛ラインが陥落したぞ!!」

 

 あちらこちらで怒号が聞こえ、将兵達が階段に向けて走っていく。目の前から来る兵士を避けつつ、鼓動が強くなる方向へと足を速める。対空砲や高射砲の砲声がここまで聞こえて来る。

 

「先には進めないか・・・」

 

 マリは壁を見ながらそう呟いた。

 この先に能力があるのは確かなのだが、行き止まりであり、またも迂回するしかなかった。

 辺りが落ちた爆弾が着弾して揺れ、小さな破片が床に落ちていく中、彼女は階段を目指す。1階に上がる階段を見付けて上がろうとすると、複数のMKVDの将兵達に止められた。

 

「おい、貴様。一体何処の中隊の所属だ?」

 

「出入り口で死体が発見されたんだ。この要塞にファシストのスパイが紛れ込んでいることが分かっている。さぁ、教えるんだ」

 

 TT-33トカレフ自動拳銃を向けながら聞いてくる政治将校に、マリは全員を始末する事にした。

 殺意の波動を発動し、目の前にいるMKVDの将兵達を怯ませる。肩に掛けてある小銃を構え、一人一人の急所を撃ち抜き、確実に殺していく。最後の一人を撃ち殺すとしたが、合計五発を撃ちきったので、ボルトを押し込んで引き金を引いても弾は出なかった。

 

「な、何が起きて・・・!?」

 

 立ち上がろうとする兵士であったが、マリが取り出した拳銃で眉間を撃たれて絶命した。

 

「まぁ、上は煩いから大丈夫か・・・」

 

 そう呟いてその場を後にし、階段を上がって1階に上がる。

 砲声と怒号を辺りに響き、将兵達が慌ただしく動き回っている為、マリもそれに合わせて走り始めた。途中、図面を見て行き方の手順を分かった後、地響きがする要塞の中を急いで移動した。走っている最中に、砲声や怒号に混じって彼女には良くないことを聞こえてきた。

 

「同志大尉殿!大変です!ファシストのスパイが紛れ込んでいます!!」

 

「なにぃ!?こんな時にファシストのスパイが紛れ込んでいるだと!?」

 

「はい!金髪の女です!我が赤軍の軍服を着て要塞内に入りました!!服の持ち主の同志が来たので始めは民間人だと思いましたが、その同志の上官を訪ねたところ、全くその報告は受けてないと言ったんです!!」

 

「そうか!じゃあ空襲が始まってるならスパイはもう居ない!奴はとっくに逃げている頃だ!お前は配置に着け!!」

 

了解(ダー)!同志大尉殿!!」

 

 先程検問の下士官が上官に報告したが、上官はもう逃げていると判断し、部下に配置に着くよう命じた。そのやり取りを最後まで聞いていたマリは、直ぐにこの場から離れ、別の地下への階段を見付け、能力がある地下へと向かった。

 

「(地下二階に私の能力がある。要塞が吹き飛ぶ前に行かないと!)」

 

 自分の能力がある場所を心の中で言ったマリは、直ぐに階段を下がりながら目的の場所へと走る。

 一方の上空では、ドイツ空軍の爆撃機一個中隊が要塞を爆撃した後、Ju87シュツーカ急降下爆撃機の中隊が撃ち落とそうと狙ってくる高射砲を急降下爆撃で潰していく。

 上空での戦闘が激しさを増す中、地上のドイツ陸軍の戦車部隊が見える距離まで迫ってきた。要塞の防衛砲が火を噴いた頃、マリは誰も居なくなった地下2階に来ていた。ここでも外の戦闘音が彼女の耳に入ってくる。

 

「大丈夫かしら?」

 

 小銃を持ちながらマリは自走砲からの砲撃で小さく地響く地下2階を移動しながら呟く。この階にいるのは彼女一人であり、将兵もMKVDも居ない。

 今耳に入ってくるのは地響きと銃声や爆発音、それに自分の足音だけであり、蛍光灯が揺れる中、心臓の鼓動が強くなる方向へと足を進める。鼓動が強い場所まで辿り着いたが、ここも行き止まりであった。

 

「なにかある・・・?」

 

 何かあると踏んだマリは、近くに置かれている銅像を調べ始める。その銅像はロシア帝国の皇帝ピョートル一世の騎馬像である。

 実際の騎馬像は現サンクトペテルブルクことレニングラードにある銅像であるが、この要塞にあるのは同じ材質で造られた複製品であり、室内に入れるため、本体よりかなり小さい。

 

「この銅像、何か仕掛けが・・・?」

 

 騎馬像を調べ回していると、何かに触れたのか、目の前を塞いでいた壁が音を立てて開き始め、通路が現れた。

 

正解(パパダーチ)

 

 ロシア語で言った後、現れた通路へと進んだ。通路には灯りなど一切無い暗闇であり、ダークビジョンを発動しながら進む。通路は何十年も清掃はされては居なかったのか、埃まみれであり、隅っこにはネズミが数匹ほど灯りに向けて走っていくのが目に入る。

 

「造ってから何年経つんだろう?」

 

 何十年も掃除が為されていない辺りを見渡しながらマリは呟く。道行きを進んでいくと、微かに光る物体を確認した。

 

「あれね」

 

 心臓を取り出し、鼓動がかなり強くなっているので、あれが自分の能力と再確認を取る。紫に光る水晶玉を手に取り、それを地面に叩き付けて割った。

 割れた水晶玉に入っていた薄紫の煙がマリの身体を包んでいき、それが消えれば彼女は能力を取り戻すことに成功した。

 取り返した能力はアウトサイダーが予言していた吹雪を起こせる能力、シュネー・トライベンだ。試しに取り戻したばかりの能力を使ってみると、周りに吹雪が起きた。

 

「涼しいけど・・・寒いかも」

 

 マリは使った能力を思い出し、少し使えないと判断して元来た方向へと帰ろうとした。この場所をMKVDに見付かったのか、遠くの方から声が聞こえてくる。

 

『この通路の奥にスパイが逃げ込んだかもしれん。全員警戒しながら進むんだ!』

 

 遠くの方から懐中電灯を持ち、手に銃を持った集団がマリの居る元へと近付いてくる事が分かった。弾の入っていない小銃に弾を入れ込んだ後、向かってくる人の形をした白い光に照準を合わせる。撃てる距離まで敵兵が近付くと、引き金を引いて敵兵を射殺した。

 

「スパイだ!スパイが居るぞ!!」

 

 味方が倒れたので、闇雲に短機関銃を乱射し始めたが、全くマリには当たってない。

 暗闇の中で次々とMKVDの将兵達は倒れていき、最後の一人が逃げだそうとするも、拳銃を二発食らって絶命する。敵を全滅させた彼女は戦利品のPPsh41と弾薬を回収し、元来た道へと急いだ。

 

「確実にバレてる」

 

 増援として出て来たMKVDの兵士達を見て、そう呟き、短機関銃を出て来る敵兵に向けて撃ち始める。

 通路の入り口にいた兵士達は全滅し、階段から下りてくる兵士達も一人の女に呆気なく倒されていく。1階まで上がっていくと、先程上官に報告していた下士官がマリを見るなり叫び、周りの兵士達にスパイだと告げる。

 

「あの女だ!殺せ!!」

 

 下士官は叫んでから持っている半自動小銃を構え、他の兵士達と共にマリを撃ち始めた。急いで彼女は邪魔になる兵士を撃ち殺しながら遮蔽物になる壁に隠れ、銃撃から身を隠す。反対方向からも敵は来るが、PPsh41の連射で一気に撃ち殺され、遮蔽物へと逃げて行く。

 弾が切れたので、回収した袋に入っているドラムマガジンを取り出し、空の弾倉を外して再装填を行った。右側のコッキングレバーを引いて初弾を薬室に送り込み、逃走の邪魔になる集団に銃口だけ出し、乱射して牽制すると、反対方向へと走る。

 次々と小銃を持った赤軍兵士が出て来るが、出て来た途端に連射で撃たれて床に倒れていくだけだ。外での戦闘はドイツ軍の侵入を許したのか、戦車の走行音が銃声に混じって聞こえてきた。

 

「早いところ逃げ出さないと」

 

 前にいた敵兵の喉を銃剣で掻き斬った後、迎撃に向かうT-34/76中戦車とT-26軽戦車、その後へと続いていく歩兵部隊を見ながら呟いた。銃声や爆破音も着々と聞こえ始め、ソ連軍の兵士達はマリには構っている暇はなく、ドイツ軍からの砲撃に身を隠すために塹壕へと逃げていく。

 脱出ルートへ向けて走っていると、M193245㎜対戦車砲を引っ張る一団と鉢合わせになりそうになったが、直ぐに身を隠して通り過ぎていくのを待った。

 

「急げ!早く配置するんだ!!」

 

 士官が拳銃を持ちながら、引っ張る兵士達に怒号を飛ばしているあの対戦車砲では当時ドイツ軍の主力のⅢ号やⅣ号の装甲など打ち抜けない。

 通り過ぎた後、次の建物で身を隠して様子を探っていると、シモノフPTRS1941対戦車銃を担いだ二人組を見たので、対戦車銃を手に入れるべく、後をつける。

 

「何をしている!?お前!」

 

 途中、八人ほどの敵兵がマリの姿を見て声を掛けてきたが、今はあの対戦車銃を持った二人を最優先にしているので、全員を短機関銃で手早く撃ち殺す。八人は反撃も出来ぬまま道路に倒れ込み、まだ息のある者は呻き声を上げるだけだった。

 直ぐに大きなライフルを背負った者と今持っている短機関銃とはやや形が違う短機関銃を持った二人組は、建物へと入った。

 またも敵兵に遭遇したが、彼女は直ぐに銃口を皿形弾倉が特徴なDP28軽機関銃を持った兵士に向けて引き金を引き、小銃を持っていた兵士も撃ち殺した。先程の二人組が入った建物に入ると、凄い銃声が2階から聞こえてきた。

 窓を見てみると、鉄十字マークを付けた38t軽戦車が燃え上がっているのが目に入った。随伴の歩兵がドイツ語を叫びながら2階に向けて小銃や機関銃、短機関銃を撃っているのが分かる。

 

「2階にいる」

 

 直ぐにマリは2階に上がったが、あの二人組と鉢合わせしてしまう。

 

「な、なんだお前は!?」

 

 対戦車銃を担いだ兵士が拳銃を引き抜き、もう一人の兵士がPPD-40短機関銃を向けながら問うが、彼女は直ぐに短機関銃を乱射して二人を殺害した。空になった弾倉を外し、新しい弾倉を袋から取り出して差し込んだ後、射撃手の兵士が持っていたPTRS1941対戦車銃と弾薬係から奪った袋を奪った。

 

「重い・・・」

 

 流石に重量21㎏の大型小銃は重いため、腰に巻き付けてある弾帯と小銃を捨て、ドイツ軍からの銃撃を受ける建物から出た。要塞付近での戦闘が増す中、マリは大きな対戦車銃を抱えながら脱出拠点を目指して移動していた。その間に何名かのドイツ兵とソ連兵と遭遇したが、今持っている短機関銃で一掃した。

 数が多い場所を避けながら進んでいると、ドイツ兵達を下がらせるソ連軍のT-34が見えた。

 

戦車(パンツァー)だ!収束手榴弾を持ってこい!」

 

 MP40短機関銃を持った下士官が、kar98k小銃、MG34軽機関銃を持った兵士達と共に逃げながら指示を出す。幸いソ連軍の戦車はマリの存在には全く気付いてないようである為、目の前で逃げるドイツ兵達に向けて前面機銃や砲塔機銃を撃ちながら前進したままだった。

 直ぐに対戦車銃を側面部に合わせて撃つと、凄い反動で蹌踉めいた後、薄い側面部に弾丸が貫通した音が鳴り、T-34の動きが止まった。砲塔がマリの方を向くが、もう一発砲塔に撃たれたので旋回が止まる。

 仕舞いには拳銃を持った装填手が戦車から飛び出してくるが、先程追っていたドイツ兵達に撃ち殺され、断末魔を上げて砲塔から滑り落ちる。

 

「何が起きた・・・?」

 

 逃げていたドイツ兵達が調べに来たので、F1手榴弾を投げ、その場から逃走する。機関銃を持ったドイツ兵と遭遇するも、短機関銃で乱射して蹴散らした。

 2階建ての民家に入ると、進行方向にⅢ号突撃砲が砲弾を撃ちながら止まっているが、マリは突撃砲を踏み台にして渡ろうと考えた。早速2階から飛び降りて、Ⅲ号突撃砲の上に着地し、そこから一気に次の民家に向かう。踏み台にされた突撃砲の乗員達は排出される大きな空薬莢でマリには気付かず、標的に砲撃を続けるだけであった。

 

「もう少しかな?」

 

 地図を取り出して、自分の現在地を確認した後、迫り来るドイツ兵と戦車を避けながら進んだ。進路上邪魔になるT-26軽戦車が居たが、目の前の敵に精一杯で気付かなかったので、エンジン部を狙ったら一発で破壊できた。

 

「わっ、わぁぁぁぁぁ!!」

 

 燃え盛る戦車から戦車兵が火達磨になりながら出て来たが、彼女には一切関係なく、直ぐ隣を通り過ぎて脱出地点へと走る。少ない人数で居るドイツ兵とソ連兵を排除しつつ脱出地点の距離を詰める。

 進行方向の邪魔になる戦車は通り過ぎるのを待ち、一両だけ居ればエンジン部を狙って破壊した。マリを見付けて砲身を向けるⅢ号戦車のエンジン部を狙って破壊すると、戦闘区域外が見えてきた。

 戦闘区のエリア外の近くまでに辿り着くまでに殺害した人数は両軍揃って百四十名ほどで、戦車はⅡ号戦車二両、Ⅲ号戦車一両、Ⅳ号戦車一両、38t軽戦車一両、Sd kfz251一両、T-26軽戦車二両、T-34中戦車四両、BA-10装甲車一両、合計13両もの戦闘車両を破壊した。

 だが、もう二両とその乗員の十一人を追加することになる。

 

「結構堅い戦車ね」

 

 ドイツ戦車の砲撃とドアノッカーとすら表されたPak36よりもT-34に対抗できるマシなPak38対戦車砲すらも弾くKV-1重戦車を見て呟いた。側面でも砲弾は突き刺さったままであり、ドイツ軍の徹甲弾がまるで的に刺さったダーツのようだった。

 対戦車銃でも余り効果が無さそうな為、マリはKV-1がドイツ軍を追い払うまで待つことにする。砲撃を無意味と判断したドイツ軍がKV-1を放って別ルートから迂回すると、調子に乗った戦車長がキューボラから出て、引いていくドイツ軍に向けて叫んだ。

 

「この戦車を吹飛ばしたいなら88㎜かシューツカでも持ってこい!!」

 

 そう叫んだ戦車長は車内に戻ろうとした。だが、マリに対戦車銃で砲塔を撃たれ、破片で負傷する。開けっ放しのキューボラから負傷した戦車長の声が彼女の耳にも聞こえてきた。

 

「対戦車銃を撃った奴を吹き飛ばせ!」

 

 砲身がマリに隠れている場所に向いたので、マリは急いでその場から離れた。隠れていた一帯が砲撃で破壊や機銃掃射で滅茶苦茶になる中、彼女はドイツ兵の死体から火炎瓶を回収し、先程居た場所に突っ込んでくるKV-1を待った。

 案の定、KV-1は周りの建物を破壊しながら突っ込んできた。双方の兵士から回収した収束手榴弾を投げて、さらに挑発する。

 

クソ(チィリモー)!あの女、巫山戯やがって!」

 

 爆発で揺れる車内で、頭から血を流している戦車長はさらに冷静さを失っていく。やがてマリを追い詰めたと戦車長は、砲塔後部の機銃に付いて、後ろを見張った。

 

「さぁ、出てこい・・・!この機関銃で綺麗な顔諸共ズタズタにしてやる!!」

 

 照準手に前方を見張らせ、自分は後方を見張る興奮状態の戦車長は、砲塔後面機関銃を構えながら叫んだ。

 だが、彼女は後ろから来るのではなく、側面から火炎瓶に火を付け、エンジン部に向けて投げ込んだのだ。エンジン部に当たった火炎瓶は割れ、忽ち中の可燃性の高い溶液に灯が灯り、エンジンが燃え始める。

 

「か、火炎瓶がエンジンに当たった!みんな逃げるんだ!!」

 

 直ぐに煙の臭いを察した戦車長は全員に戦車から脱出するよう命ずるが、時は既に遅く、エンジンに引火して詰まれてあった弾薬に引火して爆発を起こした。乗員は出られる場所から車外に飛び出すも、間に合わずに爆発に呑まれて焼死する。

 燃え盛る死体とKV-1の残骸を見ながらマリはその場を後にし、脱出地点へと急ぐ。左耳に付いている超小型無線機に左手の指で触れ、ノエルに連絡を取った。

 

「今から脱出地点へ向かうわ。準備して!」

 

『はい!直ちに掛かります!!』

 

 直ぐにノエルは転送準備を始めた。しかし、脱出地点までもうすぐな所で茂みから飛び出すと、ドイツ軍の装甲部隊と遭遇してしまった。

 

止まれ(ハルト)!!」

 

 短機関銃を持つドイツ軍の兵士に止められたマリは、大人しく手を挙げて持っていた短機関銃を捨てる。周りから小銃を持った兵士達が集まる中、無線指揮車型のSd Kfz250に乗った耳が少し尖った将官クラスの男が装甲車に乗ったまま問う。

 

「ダミアン曹長、そのお嬢さん(フロイライン)はどうした?」

 

「ハッ、リヒター閣下。突然茂みからソ連軍の女兵士が飛び出したのであります!」

 

「よし、憲兵などに渡して後方に送ってもらって・・・」

 

 リヒターと呼ばれる将官が言い終える前に強烈な砲声が鳴り響き、目の前にいた兵員輸送車が吹き飛んだ。辺りから叫び声が聞こえ、対戦車砲を押して迎撃に向かう兵士達が見える。

 この間にマリはどさくさに紛れて逃げだそうとしたが、Ⅲ号戦車J型が行く手を遮る。戦車長がキューボラから出て、マリに退くように叫んだが、これが彼の最期の言葉だった。

 

「邪魔だ!退けぇ!!」

 

 砲撃された戦車は爆発し、ただの燃え盛る廃車となった。指揮車に乗ったリヒターも、この場にいる部下全員に後退命令を出す。

 

「総員後退だ!巨人(ギガント)だ!我が部隊の火力ではとても適わん!!」

 

 その後、指揮車も持てるだけの兵器を持って後退ドイツ兵達と撃ちながら下がる戦車と共にマリが見えない距離まで後退した。辺りは砲撃でやられたドイツ兵の死体や残骸で広がっていた。直ぐにマリは脱出地点まで向かったが、先程のソ連軍の戦車に砲撃され、近くの茂みに吹き飛ばされる。

 

「何なのよ・・・もう・・・!」

 

 泥だらけになったマリは立ち上がって辺りの様子を見ると、巨大な砲塔とKV-1の車体を持つ重戦車が目に入った。

 その戦車はKV-2と呼ばれる当時のソ連赤軍の重戦車だ。152㎜榴弾砲を持つこの戦車は、砲塔でもKV-1を上回る装甲を持ち、ドイツ軍でも倒すのに航空支援が必要とされているほどの戦車である。

 対戦車銃を取り出そうとしたが、帽子共々何処かに飛ばされており、さらには折れて使えなくなっていた。

 

「はぁ・・・こいつ倒さないといけない?」

 

 マリは無線機に手を当ててノエルに聞いた。

 

『はい、排除してください。あの戦車が居る限り、貴方の転送は許可されません』

 

「そうよね・・・」

 

 苦笑いしながらマリは十五両目を撃破するべく、強力な重戦車であるKV-2に立ち向かう事となった。




次回は読んで分かるとおり、カチューシャたん大好きなKV-2というバカでかい重戦車戦です。
スペックは何故か試作車よりも強化され、IS-3よりも鬼強くなっております。
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