復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
そしてデスノのシブタク登場~
変わった世界
2010年代5月 東京湾付近。
月が顔を見せる時間帯に、余りに人が少ない町中を一際目立つ容姿の金髪の美女であるマリが居た。ショルダーホルスターには拳銃が仕込んでおり、それが見えないように上手く上着を羽織っている。
街灯が唯一の暗い町を照らす中、彼女に襲い掛かる者が現れた。
「お姉さぁ~ん!」
スクーターに乗った長髪を茶髪に染め、ゴーグルを付けたヘルメットを被った柄の悪い出っ歯とケツアゴの男がマリを見るなりスクーターを走らせながら声を掛けてきた。
声を掛けられた彼女は立ち止まり、近くでスクーターを止めた男を睨み付ける。だが、男はニヤニヤした表情を浮かべながら口を開く。
「そんなに睨み付けなさんなって。俺、渋井丸拓男。略してシブタク。お姉さん一人ぃ?俺と遊ばなぁい?」
女性が避けそうな表情で良からぬ事を考える男であるが、その考えは既にマリは分かっていたのか、睨み付けたまま黙っている。全く男は気にせず、表情を変えずに続けた。
「なんかさぁ、俺の雇い主ってか、ボスがさぁ。金髪で碧い目の白人女連れて来いって煩くてさぁ。ゴメンだけど、代わりに来てくんなぁい?」
再び誘おうとする男であったが、彼女は無視して自分の目的地へ歩いていった。
「待ってよぉ、お姉さん!」
男はマリの上着に手を掴んだ。これが、男が取ったこの世での最期の行動だった。
上着を掴んだ右手を彼女に引っ張られ、スクーターから無理矢理降ろされた後、道路に叩き付けられる。勢いよく叩き付けたのか、ゴーグルが割れる音が聞こえ、血が流れ始めた。立ち上がろうとする男であったが、頭を蹴られ、被っていたヘルメットが飛んでいく。
「や、やめ・・・」
命乞いをする男であったが、倒れたスクーターを起こしたマリに前輪を顔面に付けられた。彼女はアクセルを踏み、前輪を男の顔面で走行させた。エンジン音と共に声にならない悲鳴と肉を抉る音が鳴り響く。
その一部始終を、近くのビルの屋上から見ていた人影が舌打ちをした後に口を開く。
「チッ、使えん奴目。どうしてこんな奴が蘇ったんだ?」
どうやら今マリがスクーターで殺している男は、アガムストに蘇らされた生前に悪行をなしてきた者の一人らしい。
彼女を監視している人影は、その今死んだ男の余りの弱さに苛立ちを隠せないでいた。
一方のマリは、スクーターの前輪で殺した男の死体を見て、唾を吐きかけた後、自分の目的地へと向かった。男の死体はまるでゲームの死体のように跡形もなく消える。
数十分ほど経つと、彼女は目的地へと辿り着いた。
「ここがムガルの連中が・・・」
目的地は港の貨物を仕舞う倉庫群であった。数ある倉庫群を見たマリは、能力探知機である心臓を取り出してみたが、何の反応も無い。
彼女は目の前に広がる大型倉庫の一つに、自分の失われた能力の手掛かりを持つ、組織ことムガルの者達が潜んでいる情報がある為、ここへ足を運んだ次第だ。
「何にも反応しない・・・」
心臓を仕舞った彼女は、ホルスターから引き抜いた消音器付きCZ75を持ちながらフェンスを上って港の倉庫群へと侵入した。
普段は警備員も居ない倉庫であるが、この時ばかりは暴力団等の非合法組織を始めとした取引が行われているのか、スーツ姿の男達が巡回していた。ダークビジョンを発動し、正確な人数を確認する。
「人数は二十人ほど・・・まぁ、こいつ等雑魚だからやれるわね。それに・・・誰よ、こいつ?」
不審な行動を取るスーツの男達とは違って不審な行動を取る同じく白く光る人間をマリは見逃さなかった。拳銃をホルスターに戻し、右に吊してある鞘からM1917銃剣を抜くと、一番近い距離にいるサングラスを掛けたスーツの男に近付く。敢えて自分の姿を晒すように近付いた為、スーツの男に声を掛けられた。
「あっ?誰だ、お前は?」
懐中電灯をこちらに向けてくるスーツの男は、銃剣を持った右手を背中に隠すマリに近付いてくる。十分な距離にまで相手が来ると、彼女は瞬間移動で一気に距離を詰め、顎を銃剣で切断した。
「がぁ・・・ガガ・・・!?」
顎を切り落とされてしまったのか、大きな声が出せず、赤い血が勢いよく流れ落ちる根本を押さえながら立ち尽くす。上着から拳銃に手を伸ばそうとした所を、額を一突きされ、男は絶命した。
死体をそのままにして、不審な行動を取る人物が居る場所へと向かう。
「おっ?」
向かう最中に缶を蹴ってしまい、巡回の男が確認の為に向かってくる。直ぐに隠れられるドラム缶に隠れ、やり過ごそうとする。
「風か・・・?」
周囲を懐中電灯で照らしながら探すスーツの男であったが、空き缶が風で倒れただけと思って、その場を去ってゆく。
気付かない距離まで離れると、ドラム缶から出て、不審な人物の元へ急ぐ。その人影が居る倉庫に入り、ダークビジョンを使わずとも見える距離まで近付くと、血塗れの銃剣を仕舞い、拳銃を取り出す。
「制服?」
学生服の上から防弾ベストを羽織った少年が両手に一挺の拳銃を抱え、腰の辺りに肩からMP5の最小化モデルMP5k短機関銃を吊しながら何かブツブツと呟いていた。瞬間移動で一気に距離を詰め、消音器の銃口を少年の頭に向ける。
「動くな」
「っ!?何処から来た・・・?」
拳銃を握ったまま動かなくなった少年は、銃を向けるマリを見ながら質問した。
「聞くのはこっちだから。なんで拳銃とマシンガン持ってここで取引を覗き込んでる訳?」
「あ、あんた・・・武偵を知らないのか・・・?」
「武偵?」
聞かない言葉にマリは少し頭の中を整理して、この世界に来る前に読んだ資料にあった単語を思い出した。
「あっ、武装探偵・・・」
「そう、それよそれ!」
外には聞こえない声量で答えた後、マリに何者かを問う。
「あの・・・所で貴方は・・・?」
「今は関係ない。あそこに私の目標が居るから」
「目標・・・?あの用心棒ポイのか・・・」
マリの答えに、少年は電柱に凭れて腕組みをしている丸刈りでサングラスを掛けた長身のスーツの男を見て、あれが後ろで銃口を向けている女の標的と分かった。頭上に向けていた銃口を下げた彼女は、少年の前に出た。
「白人?あんた・・・そんな装備で・・・?」
「じゃあ、その機関銃貸してよ」
少年からの問いに、マリは短機関銃を見ながら問う。自分の得物を渡すわけにはいかないのか、少年は拳銃を持ちながらMP5kを隠す。
「駄目だよ・・・これ買うのにどれだけ苦労したか・・・」
「そっ、私一人でやるわ」
断られたので、マリは単独であの中を突っ込もうとした。出入り口のドアから出ようとする彼女であったが、少年に声を掛けられて立ち止まる。
「ちょっと」
「なに?」
「あんたの名前は?」
少年から名前を聞かれたので、彼女はそれに答えた。
「マリ」
「俺、
充からの自己紹介に、ジェスチャーだけで答えたマリはドアから外に出て、取引をするマフィアやヤクザの目には入らないように移動する。
身を隠せる場所へと移動していくと、良い武器を持った男が、丁度良い場所へ突っ立てる。スーツを着た男が持っている銃は、元が冷戦期である1961年にソ連で設計され、採用されて以降、改良されたモデルである今もロシア軍で現役なPKM軽機関銃だ。持っている男諸共身を隠す場所に連れ込み、心臓を一突きにして殺害すると、銃と弾薬諸共PKMを手に入れる。
「少し重いけど、これならあの人数を・・・!」
持っている機関銃の安全装置を外したマリは、今隠れている場所から飛び出した。
突然現れた一人の白人女性に、取引を行っていたヤクザとマフィア達は彼女に視線を集中させる。彼女の姿を見た丸刈りの男は、懐に仕舞っている拳銃を抜こうとする。
「な、なんだぁ、これは、あんさんの・・・?」
「知らん。こんな女を用心棒にした覚えはない・・・」
ヤクザの組長が取引相手であるラテンアメリカ系のマフィアのボスに問うが、当然ながらマリの事は全く覚えもない。ただ知っているのは、拳銃を引き抜いた組織の関係者である丸刈りでサングラスと言う風貌の男だけだ。
仲間の一人が、今マリが持っているPKMに見覚えがあったのか、AKM突撃銃を持ったマフィアがスペイン語で叫ぶ。
「〔あいつ!ロペの銃を持ってやがるぞ!!〕」
これを聞いた仲間のマフィア達が持っている銃をマリに向け、ヤクザ達もスペイン語は理解できないが、マフィア達に続いて銃を彼女に向け始める。安全装置を解除する音が連続して聞こえる中、多数の銃口を向けられているマリは、殺意の波動を発動した。
波動を受けたヤクザとマフィア達は吹き飛び、地面に叩き付けられれば、怯んでしばらくは起き上がれないようになる。大多数の者達は波動を受けて倒れたが、何人かは波動の範囲から離れていた為、銃を持ちながら叫ぶ。
「な、なんだ!?」
「兎に角撃て!撃てェー!!」
各々が持っている銃を撃ってきたが、マリは機関銃を撃ち始め、その弾幕に飲まれたヤクザとマフィア達は次々と倒れていく。立っている敵を全て倒した彼女は、起き上がろうとする者達を撃ち始めた。
起き上がれずに次々と堅いコンクリートの上で死んでいくヤクザとマフィア達であるが、倒れながらも拳銃を抜いて反撃をしてくる者も居た。その者達も呆気なく撃ち殺されていき、やがて全員が呻き声を待ちながら死を待つこととなる。
「あの女、サツの回し者か!」
銃声を聞きつけた巡回の者達が駆け付けて来たが、再装填を終えたマリからの掃射で全滅した。運が良かったのか、ヤクザの組長とマフィアのボスだけは生き延びていた。残る動く敵は組織の関係者だけである。
「お前、マザイの連中を全滅させた女だな?」
先程銃弾を受けて倒れていたようだが、まるで何とも無かったかのように立ち上がる男に、マリは銃口から硝煙が出るPKMを担ぎながら男を見て口を開く。
「あんた、能力者?」
「質問を質問で返すとは礼儀のなってない女だ」
自分が着ているスーツを思いっ切り破いて脱いだ。男の身体は鉄そのものであり、銃弾を弾いた跡があった。さらに男は自分の顔を掴み、それを剥がして全身が鉄であることをアピールすると、不気味な笑みを浮かべながらマリに告げる。
「この俺が教育してやる!」
意気揚々と告げると、マリに向けて突っ込んできた。今持っている機関銃を撃つが、弾かれるばかりで全く効いていないようだ。体当たりをされる前に瞬間移動して回避し、対抗策を考えた。
「こいつには徹甲弾が必要ね・・・」
ひたすら体当たりをしてくる男から距離を離しながら、マリは徹甲弾を探し始めた。この戦いを見ている充は何が起きているのか理解できないでいる。
「俺・・・夢でも見てんのかな・・・?」
自動開閉式のドアから様子を見ている充は夢を見ているのだと思い込む。その間にも徹甲弾は一向に見付からず、マリはひたすら鉄男から逃げるばかりであった。
「どうした!?反撃してこい!お前はその程度なのか?!」
挑発する男であるが、彼女にはそんな挑発など効くはずも無い。彼女ならもっと相手を怒らせる挑発の仕方をすることだろう。徹甲弾を探しながら逃げ回るマリに、男の方が煮え繰り返したのか、声が怒りに満ちてくる。
「逃げるな!大人しく俺に殺されろ!!」
怒りの余りに体当たりの速度を上げてきた男であるが、攻撃の単純であるので、容易に回避されるばかりであった。回避される度に動きが単調となっていき、瞬間移動を使わずとも回避できた。
海まで態と誘い込むと、そこで立ち止まり、鉄の男が来るのを待つ。
「ほぅ・・・俺に吹き飛ばされて魚の餌になりたいか!死ねぇ!!」
本来ならこの男は分かっているのだが、散々避けられてしまい、正常な判断も出来なくなっているので、迂闊に体当たりをしてしまった。もちろんあっさりと避けられ、勢いを付けすぎた為に止まれず、そのまま海へと落ちる。
落ちた衝撃で水飛沫が上がった後、鉄の男は藻掻き始める。
「た、助けてくれぇー!!」
先程の勢いは何処へ行ったのか、鉄の男は溺れ、敵であるマリに助けを求めた。海で溺れている男の前にマリは屈み、助けることを条件にして自分の能力の詳細を聞いた。
「ねぇ、私の能力知らない?教えたら助けるから」
「ほ、本当かぁ!?」
溺れている男は「助ける」の言葉に反応し、べらべらと喋り始めた。
「能力はブーゲルビルの奴が知ってる!市内で売春組織をやってる奴だ!!」
「その組織の人数は?」
教えても助けないマリに、少し男は不安になったが、続けて答えれば助けてくれると思い、引き続き答える。
「100人足らずだ!市内に手下が得物を探している!詳しい場所は手下に吐かせれば分かる!!」
「へぇ・・・そう・・・」
「これで全部だ!早く助けてくれ!!このままじゃ沈んじまう!!」
無論、マリにはさらさらこの男を助ける気は無く、笑顔をしながら嘘を付く。
「うん、今から助けるわ」
「嘘だろ!?そんな!止せ止せ止せぇ!!」
溺れながら嫌がる鉄の男に対し、マリは機関銃を構え、引き金を引いた。銃声と弾く音が鳴っても男は叫んでいたが、全く彼女には聞こえることも無く、冷たい東京湾の中へと沈んだ。完全に鉄の男が沈み、水面に浮いて出て来る酸素の泡が無くなったのを確認すると、倉庫から出て来た充にまだ息のある組長とボスを差し出す。
「ほら、あんたこいつ等狙ってたんでしょ?持って行きなさいよ」
「あっ、あぁぁ・・・はい」
あの戦いでまだ状況を呑み込みが出来ていないらしく、マリの声で少しは理解できた。直ぐに二つの手錠を何処からか取り出すと、充は組長とボスに定常を掛ける。
PKMを捨てた彼女は、懐からスマートフォンを取り出し、電源を起動すると、先程溺死した鉄の男が言っていた市内の地図を確認する。
「ここも前の世界とは変わりそうも無いわね・・・」
前の世界とは、東京都新宿区の事である。新宿区で戦闘を起こしたことを思い出しつつ、港を出たマリは市街地を目指した。
街灯が辺りを照らす道中を歩いていると、ノエルから連絡が入った。
『聞こえますか?
「聞こえてるわよ」
スマホからの連絡に、マリは従来の携帯と同じく耳に当てて答えた。
『先程、衛星の映像で暴れ回ってましたが、余り暴れないでくださいよ?』
「分かってるわよ。それで、私が今向かってる方向にある市内の売春組織は?」
『あぁ、暫くお待ちください』
ノエルが資料を探っている最中に、市内の明かりが近付いてくる。市内にはいるところでノエルの声が聞こえてきた。
『出ました。リーダーに組織らしい人物が居ます。それと、その売春組織、武装探偵からマークされてます』
「へぇ・・・ムガルの奴が・・・武偵からマークされてるって?」
『はい、マークされてます。ムガルって、組織のことですか?』
「そうよ。自分から言ってるし」
『あぁ。では、次の情報が入れば連絡しますね』
連絡を終えたノエルに、マリはスマホをポケットに仕舞った後、市内に居るとされる売春組織の構成員を捜し始めた。
標的は女性をナンパしている男、捕まえたら直ぐに尋問を開始し、構成員かどうかを聞く。違わなければ解放、構成員であればアジトの正確な場所を聞き出す。手順を脳内で作成した彼女は、女性をナンパする男を捜した。
「おっ、お姉さん、今夜暇ぁ?」
目を凝らして周りを見渡してみると、派手な服装の男が女性をナンパしているのが目に入った。直ぐに男の元へ向かい、肩を掴む。
「あん、なにぃ?」
突然金髪の白人女性に掴まれた男は、振り返って問うが、そのまま路地裏まで連れて行かれる。
「うわっ!ちょ!?」
目の前でナンパしてきた男が連れて行かれた為、女性はただあ然しているだけであった。路地裏に男を連れ込んだマリは、ナンパ男の尋問を開始する。
「あんた、売春組織の構成員かなんか?」
「し、知らねぇよ!そんなの!」
彼女にはシラを切ったかのように見えたのか、男の身体を壁に強く叩き付けて問う。
「本当に売春組織の構成員?」
「誓う!マジだよ!!俺が知ってたらこれで言ってるって!!」
必死に否定するナンパ男に、マリは違うと判断して離す。
「この女、やべぇよ・・・!警察に・・・」
スマホを取り出して警察に連絡しようとした為、マリはナンパ男の頭を掴んで壁に思いっ切り叩き付けた。壁には血痕が残り、気を失った男が気絶して倒れる。そんな男を放置し、彼女は路地裏を出て次の標的を探した。
直ぐにナンパ現場を見付けることができたのだが、どれもこれも全く売春組織とは無関係の男であり、一々路地裏に連れ込んで尋問し、違ったら壁に頭をぶつけて気絶させる。途中、少女をナンパする男を見付けるも、その少女が武装探偵であった為、先を越された。
「貴方、売春目的で少女をナンパしてましたね?逮捕します」
直ぐ力尽くに抑え付けようとするが、武偵の少女は訓練を受けているのか、逆に抑え付けられ、両手に手錠を掛けられ、未成年を強制的に売春させた容疑でお縄となった。
奪い取る手もあったが、突然ノエルからの連絡が来る。
「なに?」
『今、奪い取ろうと考えてましたね?駄目ですよ、武装探偵と問題おこしちゃ』
「はいはい」
ノエルからの注意を受けてスマホを仕舞うと、やって来たパトカーに連行される男を見た後、次なる標的を探した。またもスカばかりではあったが、ようやく売春組織の構成員が見付かった。
直ぐさま路地裏に連れ込み、尋問を開始する。
「はぁ、俺が売春組織の関係者?犯すぞコラァ!」
強気で否定したので、股間を蹴り上げてみると、先程の威勢は何処へ行ったのか、股間から来る強烈な痛みに耐えながら吐いた。
「そ、そうだ・・・!グアァ!俺は関係者だ・・・アァ!」
余りにもあっさりと吐いた為、何か裏があると踏むマリではあったが、良く考えたら忠誠心も無く、裏切りそうな顔付きと性格だった。アジトの正確な位置を聞く。
「アジトの場所、分かる?」
「あぁ、それなら一樹の奴が知ってる・・・カラオケ店の前でナンパしている・・・」
「そっ、じゃあそいつに聞くわ」
全てを話した男は、その答えで安心しきる。
「なぁ、全部話したから俺を解放・・・」
解放をせがむ男に、マリは無慈悲に凄い速さで抜いた銃剣で額を突き刺す。筋肉が伸縮する前に剣先を引き抜き、男の服で血を拭き取り、鞘に戻すと、死体を放置して路地裏を後にする。
一樹という男を捜しに、スマホの地図アプリを開いて近くのカラオケ店を探す。案の定、直ぐに見付かり、そこへ足を運んだ。
派手な服装の男が高校生ほどの少女をナンパしているのが目に入り、即座に「このナンパ男が一樹」だと分かった。直ぐさま一樹に近付き、肩を掴む。
「んぁ、なんだよ?イタタ!!」
ナンパの邪魔をされたのか、かなり機嫌を悪くしていた。しかし、マリに強引にも耳を掴まれ、路地裏へと連れて行かれる。
「なんだよ!急に耳を引っ張りやがって!!」
突然耳を掴まれて路地裏に連れ込まれたので、さらに機嫌を悪くして怒鳴り付けるが、彼女に一発殴られる。殴られた衝撃で壁にもたれ掛かり、反撃しようとするも、避けられて顔面に一発食らい、堅いアスファルトの上に倒れ込む。一樹の長く伸びた髪を掴み、無理矢理立たせる。
「あんた、売春組織の奴?案内してくんない?」
「一体何だってんだ・・・!俺はただナンパを・・・」
否定をするが、マリが消音器付きの拳銃を取り出し、自分の近くに撃って銃口を向けたので、直ぐに認める。
「わ、分かった!案内するから撃たないでくれ!」
案内されることになったマリは、いつでも一樹を殺せるように準備をしながら彼の後についていった。市内を一樹に案内されながら進んでいると、人集りの少ない通りに入っていき、やがて5~7階建てのビル群の一つである中央のビルに辿り着く。
罠の可能性を考慮して警戒していると、予測通り柄の悪い若者達が現れた。
「おい、一樹。誰だ、その女?」
「新しい商売道具か?」
場所は売春組織のアジトのようだ。構成員達はマリの事を新しい売春用の女だと思って答えを期待して一樹に問う。もう彼女にとっては目の前で案内した男がどうでも良くなったのか、首に向けて蹴りを入れ、首の骨を折ってあの世へと送った。
「ひ、一蹴りで・・・!」
「く、首を・・・!?」
驚きを隠せない男達であったが、直ぐにポケットからメリケンサックやポケットナイフを取り出し、マリに襲い掛かる。
「数はこっちの方が上だ!」
「抑え付けて
一斉に襲い掛かる男達に対し、彼女は一切の武器を使うことなく徒手格闘で倒していく。数が多いのは確なのだが、していないか何かの格闘技を齧っているかの者達は、地獄のような訓練を受けてきたマリに適うはずもなく、次々と喉や股間に強烈な打撃を加えられて伸びるか呼吸困難に陥って死ぬ。
不幸な者は首を折られて死ぬか、幸運な者は男性機能を不能にされるか全治三ヶ月の重傷を負わされるぐらいで済む。少し数が多すぎるので、シュネー・トライベンを発動し、屋内で吹雪を起こした。
「な、なんだぁ!?」
「吹雪だ!部屋の中で吹雪いてやがる!!」
部屋の中で突然吹雪が起きた為、敵は混乱し始めた。マリは吹雪かせる力を徐々に強さを増させ、敵を凍えさせる。
「さ、寒い・・・!」
「め、メリケンサックが・・・手にへばりついてやがる!!」
ある者は凍えて身体を丸くし、金属製のメリケンサックを持つ者はそれが低温の影響で肌にへばり付いて離れなくなる。金属バットや鉄パイプを持つ者達も金属部分を握っていた為に、肌にへばり付いて取れなくなった。
「(こっちまで凍死しそう)」
このまま自分も凍死しそうであったので、能力を解除して金属製の武器を持つ者達からそれを引き剥がす。無理矢理引き剥がされた所為か、皮ごと持って行かれ、そこから血が噴き出し、持っていた者達は傷口を抑え始める。
敵の大半が悶え苦しむ中、残った者達は蜘蛛の子を散らすようにこの建物から逃げ去る。逃げて行く売春組織の構成員達を見て、マリは「また懲りずに同じようなことをするだろう」と思っていたが、後程背丈142㎝の少女に全てお縄になるとは思いもしなかった。
周囲に敵影が居ないかを確認するべく、ダークビジョンを発動し、標的の人物を見付ける。だが、直ぐには向かわず売り上げのために集められた女性と少女達を解放する為、そこへ向かう。
「なんだぁ?白人の女も・・・」
客の男がマリを見て言うが、言い終える前に頭を掴まれ壁に叩き付けられた。他の客も、入ってきた女から逃げようとするも、彼女は一人も残さず、客全員に暴力の制裁を行った。
行為中の客に対しては、無理矢理引き剥がして股間を蹴り潰し、機能不能にする。自分に敵意もない者達を殺さずとも重傷を負わせたマリは、集められた女性や少女にこの場から逃げるよう告げる。
「ほら、警察とか来たらなんかされるから。服着て逃げなさいよ」
親指で出口を示しながら告げると、女性と少女達は一目散にこの建物から逃げ去った。全員が逃げたのを確認するれば、急いで標的の居る部屋へと向かった。
階段で最上階まで上がり、標的の居る部屋のドアを開けようとすると、銃声が鳴り響き、木製のドアに無数の穴が開いた。消音器付きのCZ75を引き抜き、ダークビジョンを発動して正確な人数を図る。
「7人程度ね。突入しましょうか」
能力を解き、銃声が途切れたのを機に、穴だらけのドアを破って部屋へと突入した。
弾倉を取り替えている七人の敵は慌てて装填するが、間に合わず、中央にいるブーゲンビルと言うこの中で人種が違う男以外、全員は頭部を撃たれて即死する。ブーゲンビルは肩を撃たれて床に倒れ込んだ後、瞬間移動してきたマリに銃弾を撃ち込まれた肩を踏まれ、呻き声を上げた。
「グゥァ~!!」
「ねぇ、あんた。私の能力がある場所知らない?心臓取り出しても全然反応しないけど」
空いている手で懐から能力探知機である心臓を取り出したマリは、銃口を向けながらブーゲンビルに問う。
「し、知らん!何のことだかさっぱりだ!!それに心臓?グゥゥ!なんの、ことだかさっぱり分からんぞ!!」
「とぼけないでよ。あんた等のデカイ禿頭が私の能力を飛ばしたのよ。それくらいは知ってるでしょ。さぁ、この世界の私の能力がある場所、何処なの?」
「能力を失ったのは知ってるが、場所は分からないんだ!それだけはほんとだ!」
この返答に傷口を踏む力をさらに強め、再び問う。
「うわぁぁぁ!!ホントだ!本当に知らないんだ!頼む!殺さないでくれ!!」
痛がりながらも命乞いをするブーゲンビルであったが、マリは「全く無意味」と判断し、頭を撃たれた。物言わぬ死体から足を退けると、部屋を出て行く。
エレベーターに向かう最中、スマホが震動し、取り出してノエルかと思うと、知らない番号だった。
「誰よ」
そう思って着信を押して出てみると、前の世界で置き手紙を置いた人物の声が聞こえてきた。
『よぉ、久し振りだな。まぁ、一ヶ月程度だがな』
「お前・・・!」
スピーカーから聞こえてきたのはガイドルフの声だった。連絡を入れてきた男は陽気に続ける。
『酷いな・・・そいつは置いといてだ。あんたの能力は東京武装探偵高等学校の地下にある。場所はレインボーブリッチの南北に浮かぶ人工浮島だ。警備はもちろん厳重。地下に入るには、俺でも骨が折れるぜ』
「そっ。じゃあ、態と捕まって・・・」
『おいおい、下見もせずに地下を探すのか?何日か待って、地図が出来るのを待つんだな。それにあんたの標的の場所は依然不明だ。居場所が分かるまで待て。それじゃあ、場所が分かれば連絡する』
用件を伝えたガイドルフは電話を切った。
連絡が終わる頃には丁度エレベーターがこの階に来ており、ドアが開いた。スマホを仕舞ってエレベーターに乗ったマリは武器を仕舞い、1階につくまでの間に背伸びをする。1階に着くと、エレベーターから降りてビルの正面玄関まで向かう。
外へ出ようとした途端、制服を着た小学生か中学生くらいの髪のピンク色で髪型がツインテール、赤紫の瞳を持つ人形のような少女がマリを待ち受けていた。少女はスカートから大きすぎる自動拳銃コルト・ガバメントのクローンモデルを一挺ホルスターから抜き、それをマリに向け、大きく口を開いた。
「暴行罪及び器物破損、それと殺人罪であんたを逮捕するわ!」
次はアリア戦。
中断メッセージで緋弾のアリアにツッコミを入れるをするかもよ~