復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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ここ最近の呟き 
「鼻水が止まらねぇーよ!!」

それとノエルはアングロ系なので、英語は喋れる。


二日後はアドシアード

 民間軍事企業に扮したワルキューレの基地へと戻ったマリだが、着ている衣服をボロ同然とされながらも、相手の不殺の精神に助けられ、無傷で帰ってこられた。違反であった武偵と一戦交えたことで、直属の上官であるノエルのオフィスに呼び出され、そこでこっぴどく叱られた。

 

「もう、皇帝(カイザー)ったら、あれ程問題を起こさないよう言いましたよね!どうして貴女はそう・・・」

 

「へぇ・・・元百合帝国軍で私を叱ったのは貴女で7人目よ」

 

「はっ・・・?一体何を言ってるのですか・・・!?はぁ・・・まさか憧れの皇帝陛下がこんな御方だなんて・・・」

 

 ノエルに取っては、前の祖国である百合帝国にとって神の存在であった皇帝が、これ程まで自分勝手だとは思いもしなかった。後輩である京香も、頭を抱えるノエルと、無邪気な笑みを浮かべるマリを苦笑いしながら見ている。だが、一緒に入ってきた迎えの男が、この空気を打ち壊す言葉を吐いた。

 

「ケッ。天下の皇帝がこんなんじゃぁ、百合帝国が滅びたのも納得だな」

 

『ッ!?』

 

 元百合帝国皇帝であるマリ・ヴァセレートと、元百合帝国陸軍情報部所属のノエル・アップルピーは、スマホを弄りながら言った男を睨み付けた。

 この男の名はドン・アシェル。余り不甲斐なさそうな容姿をしているが、これでもノエルより上の階級に当たる人物である。睨み付けられたことにドンは逆に怒ったのか、マリとノエルに向けてドスの効いた声で問う。

 それを見ていた京香はあたふたしていた。

 

「おい、なに睨み付けてんだぁ?俺はお前より上、軍隊じゃ中佐の階級に当たるんだよ。それに俺は元特別機動兵だ。分かるな?あのワルキューレ最強に分類する兵科だぞぉ。情報士官のお前じゃとっくに知ってるけどな。まぁ、そこの馬鹿な元皇帝様は全く知らないけどよ」

 

 最後のドンの言葉がマリの感に障ったのか、凄い速さで近付かれ、胸倉を掴まれる。

 

「な、なんだぁ?この俺を殴ろうってのか。上官殴ったらどうなるか分かってんだろ?皇帝様よぉ」

 

 少し戸惑ったドンであったが、直ぐに平常心を取り戻して、強気で自分の胸倉を掴むマリに告げる。

 

「へぇ・・・これが元特別機動兵・・・三年の全くの訓練は無駄かな・・・?」

 

「なんだと・・・!?」

 

 マリの挑発に乗ったドンは彼女を引き離し、ホルスターから銃を抜こうとした。

 だが、愛銃であるIMIデザートイーグル大口径自動拳銃は、既に相手に抜かれており、逆に自分に銃口が向けられていた。

 

「こんなデカイ拳銃ぶら下げておいて、元特別機動兵の実力ってそんな(もん)って訳?」

 

「チッ・・・」

 

 悔しがるドンを見ながら、再び挑発を行うマリだが京香の一声で止まる。

 

「あの・・・憲兵さんが見てるのですが・・・」

 

「あっ・・・」

 

 良く周りを見ると、ミリタリーポリスの略称である「MP」と書かれたヘルメットを被り、ワッペンを腕に付けた複数の男女が拳銃や騎兵銃を構えていた。これを見たマリは大型拳銃をドンに投げ返し、無表情で憲兵達に告げる。

 

「ただのお遊びよ・・・」

 

 何気なく答えたマリに、憲兵達は少し戸惑うが、ドンは許すはずも無さそうだ。

 

「これがただのお遊びに見えんのかぁ?直ちにそこの女を・・・」

 

「あの・・・その人・・・幹部からこれを・・・」

 

「幹部って・・・火焔丸様の・・・!」

 

 オドオドしていた京香が書類を出して声を上げた事で、視線が彼女に集中し、ノエルはマリを昇進させた人物である幹部の名を口にした。

 

「か、火焔丸ってあの・・・」

 

 奪い取るように書類を取り、ドンは両手で齧り付きながら読み始めた。物の数秒で読み終えると、書類を床に投げ付ける。

 

「クソッ!あの女は何やっても良いのかよ!!全員下がれ!畜生!!」

 

 内容がマリの拘束を一切禁じる事だったのか、集まってきた憲兵に向けて解散するよう怒鳴り付ける。余りにもドンにとっては苛つくような結果に終わったのか、ノエルのオフィスから落ちた自分のスマホを拾い、機嫌を悪くして出て行った。オフィスが三人だけになったのを確認したマリは、デュランダルについての情報を探るようノエルに伝える。

 

「さぁ、ノエルちゃん。”デュランダル”って奴の情報探してくれる?」

 

Yes(イエス)His(ヒス) Imperial Majesty(インペリアル・マジェスティ)

 

 英語で返答し、ノエルは机の上に置かれたパソコンの前に座って起動させ、マリの命じたとおりデュランダルについての情報を探し始めた。調べている間、後輩である京香に応援を頼むよう指示する。

 

「連崎ちゃん、応援呼んできて!」

 

「は、はい!」

 

 調べながら指示するノエルに、京香は敬礼してからオフィスを出て、応援を呼びに行った。残されたマリは、取り敢えず手伝う。

 ストーカー扱いしているガイドルフに頼めば一発で情報は出て来るのだが、ここは敢えてノエルと京香の情報士官としての顔を立てることにする。応援が来て”デュランダル”についての情報が着々と明らかになる中、数十秒で些細なことが分かった。

 

「デュランダルと言うのは誘拐犯の名前で、誘拐する前に脅迫電話を相手に送るそうです」

 

「脅迫に屈せず、相手が警察に電話されたらどうするのかしら?」

 

 先に見付けた京香がそれを同じくパソコンで調べていたマリに報告すると、彼女はデュランダルがもしもの時を考えていないタイプだと推測する。

 

「まぁ、気の弱い人は脅しに屈しますから・・・」

 

「そう言えば大抵は屈指ますもんね」

 

 ノエルも的確なことを言って、京香はその事に納得し、二回ほど頷く。さらに情報を探ってみたが、これ以上は閲覧不能となっており、調べることが出来ない。

 

「どうにか出来ないの、これ?ハッキングとか・・・」

 

 マリは画面に映る「閲覧不能」と言う文章を指差しながらノエルと京香に問うが、二人とも首を横に振って出来ないとアピールする。応援の情報員達にも問うも、その者達ですらハッキングは出来ないと断った。だが、一人の情報士官が「この基地内にハッキングが出来る者が居る」とマリに伝えた。

 

「そう、じゃあそいつを直ぐに連れてきなさい」

 

「あっ、でも・・・この時間帯は・・・」

 

 伝えた士官は、壁に掛けられた時計の針を見て、気まずい表情を浮かべて返答に困る。マリはハッカーがこの基地に居ないことを悟った。

 これ以上は時間の無駄と判断して、デュランダルの情報収集は明日に持ち越すことにした。時計の針は既に2時を指しており、一同は後片付けをし、移住区に行って睡眠を取った。

 

 

 

 東京都某所。

 何処かの倉庫にて、サングラスを掛けた身長180㎝程の寡黙そうな男と、青と黒のツートンカラーのマスクをした忍者のような男二人が、積み上げられたコンテナの上で向かい合っていた。その忍者のような二人のマスクの排気口から冷気が出ている。

 

「集まったのはお前達だけか・・・?」

 

 第一声に寡黙そうな男が放つと、忍者のような二人が頷き、マスクの下で口を開く。

 

「あぁ、どうやら僕ら兄弟二人だけのようだ」

 

「他の者達は各世界で行われている組織の破壊活動や連邦と同盟、合衆国、社会主義連邦による侵攻を食い止める為に奮闘している」

 

 一人が言えば、もう一人がそれに続いて寡黙そうな男に告げる。

 

「スモークの力も借りたいところだが、奴も出払ってる。俺達だけでやるしかない」

 

「どうやらそのようだ・・・スコーピオンが来ないことを祈ろう・・・」

 

「スコーピオンか・・・あいつは厄介だ・・・」

 

 スコーピオンと言う人物の名を青と黒の忍者が口にすると、寡黙そうな男が頭を抱える。

 

「確かに。私達兄弟を恨んでおり、何処の陣営にも属してない。集団で掛かれば撃退できるが、生憎とこの人数では・・・」

 

「他の敵と戦っている最中に襲われたら一溜まりもないな・・・」

 

 三人は何処にも属さないスコーピオンと言う人物に悩む中、これ以上は時間の無駄と判断する。寡黙そうな男が左手の腕時計の針を見ると、目の前の二人に告げる。

 

「もう時間だ。では、”サブゼロ”。現場で」

 

「あぁ、”フリッツ”」

 

「御意」

 

 次の瞬間、三人の姿は倉庫から消えた。フリッツと呼ばれる男は一瞬で姿を消し、サブゼロと呼ばれる忍者のような二人は、自分の姿を冷気で包み、それが晴れる頃には二人の姿は消えていた。

 

 

 

 翌日、寝台で目を覚ましたマリは、目を擦りながら辺りを見渡した。いつもの自分に朝に必要な事を済ませる為、寝台を降りて、洗面台に向かう。

 顔を洗ってからシャワーを浴び、髪を整えると、珈琲を飲むために食堂へ行った。寝間着のまま廊下に出れば、時間帯が朝なのか、余り職員や将兵は歩いてはいない。

 

「呑気な物ね・・・」

 

 欠伸をしながら食堂へと向かうカーキ色の作業服を着た男を見て、マリは呟いた。

 食堂に入り、カウンターに置いてあるコーヒーメーカーに取ったカップを置いてスイッチを押し、十分な量になるまで待つ。十分な量になればカップを取り、入れ立ての珈琲を口に含む。

 トレイを手にして、出される朝食を受け取りに行く。朝食が全て置かれるまで待ち、全部置かれたら空いている席に座って、朝食を食べ始める。食べ終えれば、珈琲を全部飲んで、歯を磨きに洗面台へと再び向かった。

 洗面台へ行って、歯を磨き終えたら今の時代に見合った外出着に着替え、ノエルのオフィスへ足を運んだ。

 

「おはよう。なんか見付かった?」

 

 机に置かれたパソコンと睨めっこしているノエルに挨拶して、デュランダルについて何か分かったことは無いのかと彼女に聞いた。

 

「いえ。ハッキングを仕掛けてみましたが、跳ねとばされちゃいました」

 

 結果はマリが瞬時に考えた良いと悪い答えの後者に当てはまった為、彼女はノエルに出掛けると告げる。

 

「えっ、出掛けるのですか?何処へ?」

 

「武偵校の周りでも行こうかしら」

 

「そうなのですか。では、行ってらっしゃいませ」

 

「何か買ってくるかも。じゃあ」

 

 マリはノエルに告げてからオフィスを出た。受付に向かい、そこで外出の許可書を書いて、護身用の武器と鞄を受け取った後、出入り口へ向かう。外に出れば、朝日で眩しい空を見上げて背伸びをし、それを終えれば横浜の街へと掛けだした。

 この時間帯では出勤ラッシュは終わっている頃だが、それなり人が多かった。大半は遠くの方から東京にやって来た観光客か、休暇を取った人々で溢れている。

 

「結構休んでる人とか観光客が多いのね・・・」

 

 辺りを見渡しながらそう呟き、マリは街中を歩いた。やはりマリの容姿は一際目立っており、歩道を歩く数々の人が彼女を見る。カメラで撮る者も居り、暗殺を狙う者達にとっては格好の的だが、彼女は全く気にせずに興味の沸いた場所へと向かう。

 目的地であるカフェテラスに辿り着くと、店内に入る。

 

「いらっしゃいませ・・・」

 

 入店してきたマリを見た店員は、その容姿を見て少し呆然とした。時間が時間なので、客の数は少なかったが、それでも全員が彼女の姿を見て、一時的に視線を集中させてしまう。

 店内を見渡したマリはテラスの空いている席を見て、テラスの方へ向かった。接客の店員が自分の元に来て、水や手拭き用タオルを置き、緊張しながら告げる。

 

「ご、ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい・・・し、失礼します・・・!」

 

 いつもと違う客が来た所為か、店員は偉く震えていた。もちろんマリはいつも通りに接しているつもりであり、相手にそれなりのサービスを求めているわけではない。メニューボードを手にとって、即座にカフェオレに決め、手を挙げて店員を呼んだ。

 

「お決まりでしょうか・・・?」

 

 さっきの店員とは違う男性店員が、マリを海外の何処かの令嬢か女優と勘違いしているような雰囲気だった。無言でメニューボートにあるカフェオレを指差し、注文する。

 

「カフェオレですね・・・か、畏まりました・・・!暫く・・・お待ち下さい・・・!」

 

 復唱した後、早足で屋内に戻った男性店員は、店長らしい人物と相談していた。その様子をマリは一切見ることなく、ただ横浜の景色を眺めているだけであった。暫くすると、カフェオレが入ったカップを置いたトレイを持った男性店員が彼女の座るテラスの席へやって来た。

 トレイを持つ手は震えており、顔も緊張感丸出しであるが、当の注文した本人は机に肘を付けて横浜の景色を眺めているだけだ。

 

「お、お待たせしました・・・か、カフェオレであります・・・」

 

 声を掛けた店員は、震える手でカップと乗せた皿をマリの目の前に置き、緊張しながら他に注文はないか問う。

 

「ほ、他に注文は・・・?」

 

「無い」

 

「そ、それではごゆっくり!」

 

 店員は逃げるように自分の持ち場へ去っていった。そんな男を見ていたマリは、自分の存在がこの店で一番問題になったとは全く思ってはいない。砂糖を少量入れ、スプーンで解けるまで混ぜ合わせた後、それを口に含んだ。

 

「あっ、美味しい・・・」

 

 マリが飲んだカフェオレの感想を言うと、それを見ていた店長がガッツポーズを取った。暫く景色を眺めて、カフェオレを飲みながら時間を潰し、煙草を吸おうとした。

 ワルキューレの支給品である煙草とライターをポケットから取り出し、机の上に置いて屋内を見る。どうやらテラスなら吸って良いようであり、遠慮無く煙草を吸うことにする。

 煙草を口にくわえ、火を付けるためにライターを起こそうとするが、中々火が付かず、少し苛々し始める。何度も押していると、突然先に灯が灯り、フィルターから煙が口の中に入ってくる。火を付けた人物の正体を確かめようとその方向へ振り向いてみると、そこには見覚えのある男ガイドルフ・マッカサーが居た。

 

「お嬢さん、おはようさん」

 

 気軽に声を掛けてくる目の前の席に座った色黒の男に対し、マリは驚きを隠せず、うっかり煙を吸ってしまってむせてしまう。

 

「煙草を吸うときは、そう言う顔をしちゃいけない」

 

 目の前の席に座り、サンドイッチと珈琲の入ったカップを置いたトレイを机の上に置き、マリに告げてから、自分も煙草を吸い始める。むせ終えたマリは再びガイドルフを睨み付け、拳銃を抜こうとする素振りを見せた。

 

「おいおい、こんな所で拳銃(チャカ)を抜いちゃいけない。それに俺はここで銃撃戦をするつもりは無いよ」

 

 注意してから吸った煙草を灰皿に置き、珈琲を一口飲んだ。カップから口を離すと、ポケットから何かのパンフレットを出し、マリの目の前に出す。

 

「東京武偵校で行われるアドシアードの告知パンフレットだ。下見ついでに楽しんでこい。それと・・・」

 

出したパンフレットの説明をすると、もう一枚ポケットから出して、それもマリの目の前に置いた。

 

「まずは花火大会だ。英気を養え」

 

 笑みを浮かべながら告げたガイドルフは、サンドイッチを食べ始める。

 アドシアードの告知パンフレットと花火大会のパンフレットを取ったマリは、何か仕掛けられていないか確認する。花火大会のパンフレットの裏に、東京武偵校の地下地図があった。この地図を見付けた彼女は、ガイドルフに視線を向けた。

 

「用意してやった。忍び込むのはあんた次第だ・・・まぁ、その前に”デカイ”事が起きるがな・・・」

 

 よからぬ事を考えている表情をしたガイドルフを見て、マリはパンフレットを鞄の中に入れ、カフェオレを全て飲んで席を立つ。

 

「御代は奢ろうか?」

 

 代金を支払うかどうかを問うガイドルフを無視しながら、マリはカウンターの会計の方へ向かった。

 

「ここ最近態度が悪いな・・・」

 

 サンドイッチを食べながらガイドルフは、代金を支払うマリを見てそう呟いた。




~今週の中断メッセージ~

イグナシオ・アクシスによる次回予告みたいな物

イグナシオ「フン、どうやらここまで来たらしいな。ここまでは褒めてやろう。マリ・ヴァセレート」

イグナシオ「それよりもなんだこの世界は?探偵と表しながら学生が武装して街を彷徨いているぞ」

イグナシオ「おまけにアリアと言う小学生、こいつ・・・ことある事に拳銃を抜いて撃ってやがる。トリガーハッピーか・・・?」

イグナシオ「それにキンジという奴、どうしてこんなちっこい奴に発情してんだ?まさかロリr」

ガッシャン!
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