復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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前回のあらすじ「マリマリ完全勝利UC」

今回は、タイトル通りのことは少ないだに。


メイドになりきるための訓練。

 アリアのメイド訓練を承る事になって数日後、マリは特に用もないのにビルの屋上で、目の前に広がる光景を眺めていた。ちゃんと護身用の装備である小型自動拳銃のP232は目立たない脇のホルスターに治まっている。落下防止の策の先にある崖ぶちに腰掛け、足を下げたり上げたりして、時間を潰す。

 暫く眺めていると、日本の都会では聞くことがない狼の鳴き声が耳に入ってきた。

 

「っ?」

 

 鳴き声がした方向を見ると、一匹の大型犬としては大きすぎる犬のような動物が東京武偵校へ向かっていくのが分かる。ポケットから小型の双眼鏡を取り出し、学校へ向かう大型犬のような動物を確認する。

 

「わぁ・・・狼じゃん。どうしてこんな所に・・・?」

 

 双眼鏡で拡大して、映ったのは日本ではテレビや本ではないとお目にかかれない狼であった。追っていく内に校舎で見えなくなると、ガラスを割れる音が耳に入ってきた。 どうやら飼い主に校舎にいる人間を襲うために学園島に解き放たれたようだ。そう察したマリは、転落防止の柵を乗り越え、ビルを急いで降りる。

 降りる最中に拳銃を出しておき、いつでも撃てるよう安全装置を外して追跡に向かう。ビルを降りると、バイクの走行音が耳に入ってきた。

 ダーク・ビジョンを発動し、走行音がする方向を見てみると、大型バイクに乗った二人の男女に乗って、狼を追跡しようとしているのが目に入る。

 

「あの狼、なにかありそうね」

 

 そう呟やいた瞬間、狼が横から襲ってきた。

 

「いつの間に!?」

 

 驚きの声を上げ、覆い被さって噛み付こうとする狼を引き離す。引き離された狼は呻声を上げ、マリに向けて構えるが、バイクの走行音を耳にするなり逃げていった。

 

「無視って・・・!?待ちなさいよ!」

 

 狼はマリを「眼中に無い」と判断して逃げたと悟り、マリは少し馬鹿にされた感覚を覚え、瞬間移動で狼を追う。

 しかし、四足歩行動物の脚力に追い付くはずもなく、例え間近で移動できたとしても、訓練でも受けているのか、避けてマリから遠のいていく。一向に捕まらないため、拳銃を狼に向けて撃ったが、狼はジグザグに動いて弾丸を避ける。

 

「あのワンコ・・・調教されてる・・・!」

 

 狼が飼い主から相当な調教を受けていることが分かったマリは、ダーク・ビジョンで痕跡を追った。追っていく内に、工事現場へとたどり着いた。

 犬と同様聴覚が優れているので、靴を脱ぎ、靴下も脱いで裸足となり、幼少期の死に直結するほどの訓練で培った足音を立てぬ歩き方をする。ダーク・ビジョンも再び発動し、狼の位置を確認し、後ろから接近しようと試みる。

 柱に隠れて自分を待ち伏せしようとする狼の背中を取ろうとした途端、大きく目立つバイクの走行音が聞こえてきた。その所為で、音を耳に入れた狼は動いてしまう。

 

「あの馬鹿・・・!」

 

 動いた狼は後ろから接近するマリに気付き、体当たりを仕掛けた。瞬間移動で回避し、拳銃で狼を仕留めようとするが、彼女の背中から発砲音が聞こえ、狼は上階へと逃げた。発砲した張本人は、マリの姿を見て驚く。

 

「あんた!?」

 

「なにすんのよ!あんた等!!」

 

 撃った銃はイタリアのベレッタ社のM92F自動拳銃で、それを持つのは遠山キンジだ。後ろのシートに座る背中にSVDドグラノフ狙撃銃を掛け、頭にヘッドフォンを付けた下着姿の少女は、マリからすれば初対面の人物だ。

 キンジに怒鳴り付けたマリは、狼の追跡に移る。上階に上がると、狼は10m程ある幅を飛び越え、向こう側に飛び移り、立ち止まったマリを見据えた。

 

「これで出し抜いたつもり?」

 

 自分を見る狼に余裕の笑みを見せながら告げ、向こう側に向けて走る。マリの行動を見た狼は、距離を離すべく、後ろへ下がる。それと同時に、キンジと狙撃銃を持つ少女が乗るバイクが上階に辿り着く。

 瞬間移動で向こう側に辿り着いたマリは、残り一発の拳銃で狼を仕留めようとする。

 だが、キンジは近場の足場用木材を撃ち、即席ジャンプ台を作り上げた。

 

「(あいつ・・・何をするつもり?)」

 

 バイクのエンジン音が聞こえる後方に目をやり、キンジの奇行を見て、心の中で呟く。そのままキンジはバイクをジャンプ台に向けて進ませ、こちら側に渡ってきた。

 

「嘘でしょ!?」

 

 拳銃を構えていたマリは、バイクがこっちに渡ってきたことに驚き、その場から横へ転がった。

 後ろへ座る少女はなんとシートの上に立ち、狙撃銃を構え、スコープを覗いた。狙撃銃を構える少女は落下しつつバイクの上で、クセのようなことを口ずさみ始める。

 

「私は一発の銃弾・・・銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない」

 

 落ち着いた姿勢で安全装置を素早く外し、引き金に指を掛けた。

 

「ただ目的に向かって飛ぶだけ」

 

 言い終えた途端に引き金を引き、この場に銃声が響き渡った。銃口から放たれた7.62㎜×54R弾は狼に向かって飛んでいく。だが、現代にまで根強く残るライフル弾は頭部には飛ばず、背中を掠めるだけだった。

 バイクがこちら渡り終えると、狼は屋上へと逃げて行く。横たわっていたマリは、シートから降りた少女に声を掛けた。

 

「貴方、トンデモない事するくせに、結構甘いのね」

 

「彼女の言うとおり。レキもやっぱり人間なんだな」

 

 マリの言ったことにキンジは同意し、レキと呼ばれる少女に告げたが、彼女は寡黙を貫く。そして三人は、屋上へ逃げた狼を追い、屋上まで来た。そこには足を震わせ、未だに立ち向かおうとする狼の姿があった。

 暫くすると、狼はコンクリートの上に横たわる。

 

「そうなるね・・・」

 

「そうなるって・・・そうか。脊椎と胸椎を掠めるように狙撃することで、瞬間的に圧迫したのか。だから首から下は動けない状態に・・・」

 

 狼の状態を見たマリがそう呟くと、キンジは即座に思い付き、それを口にした。

 

「その通りです。ですが、五分もすればまた動けるようになるでしょう。逃げたければ逃げなさい。ただし、次は2㎞、四方に、何処へ逃げても私の矢が貴方を射抜く」

 

 SVDを構え、狼に言い聞かせるようにレキはゆっくりとした口調で狼に語りかける。五分が経過したのか、狼は立ち上がって、少し震える足取りでレキに近付いた。

 万一に備えたキンジが拳銃を構えたが、それは全くの無意味であり、狼はレキに服従しており、レキの太腿に頬ずりをしている。レキは狼の身長に合わせて屈み、背中を撫でた。

 

「で、その狼はどうするんだ?」

 

「手当てして飼います」

 

「はっ?飼う?」

 

「そのつもりで追いましたから」

 

 キンジからの問いに、レキは即座に返答した。その答えにキンジは少し戸惑う。彼女は「狼を飼う」と言っているのだ。

 この日本で狼を飼っているのは、よほどの物好きな金持ちだけだ。これを聞いたマリは、小さく笑った。

 

「でも・・・女子寮はペット禁止だぞ・・・」

 

「では、武偵犬ということにします」

 

「犬にしちゃうんだ・・・」

 

 狼を犬とするレキに対し、キンジは適切な言葉を掛けた。

 

「そいつは犬じゃないだろう」

 

 何の反応もしないレキと、キンジの中をマリが割ってはいる。

 

「まぁ、狼も犬も差ほど変わらないし。良いんじゃないの。貴方の好きにしちゃえば?」

 

「あ、あぁ・・・そうだな・・・レキ、そろそろ服を着てくれないか?」

 

 そうレキに告げて、キンジは自分の上着をレキに羽織らせた。だが、そんな三人と一匹に襲い掛かる者達が現れる。

 

「ありがとうございます。ですが、まだ帰れそうもありません・・・」

 

 レキがキンジにお礼を言った後、周囲から旧ソ連の半自動小銃シモノフSKSや中国製AK47、56式自動歩槍、チェコの小型短機関銃Vz61を持った男達が現れた。

 狼とレキ、マリはとっくに気付いており、キンジも彼等が自分等を隠れ見た瞬間から気付いていた。

 

「死ねぇ!政府の犬共!!」

 

 突撃銃を持つ男の叫びと共に、一斉に銃が放たれようとした。だが、キンジは撃つ前に彼等が持つ小火器を早撃ちし、銃を手から放す。レキは腰だめで器用に武器を持つ手だけを撃った。

 狼は近場にいる男に覆い被さって喉を噛み千切り、マリは自分を撃とうとする男の額を撃ち抜いた後、瞬間移動で近場に居る男に接近する。

 

「わぁぁぁぁ!?」

 

 一瞬で自分の目の前に立った金髪の女を目にした男は驚き、彼女は足に闘気を溜めて放つ蹴り、炎の蹴り(フォイアー・キック)を食らって身体に火を纏いながら吹き飛び、シモノフSKSを奪われる。

 半自動小銃を奪ったマリは、早速その銃で、目の前に見える敵を全て撃つ。十数秒後には、八発の発砲で八人の男が天に召された。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 シモノフSKSにバレル下部に折り畳み式に備えられている銃剣を開き、それを持つ男がマリを突き刺そうとして突っ込んできた。だが、彼女は即座に銃剣を開き、逆に男を突き刺して息の根を止めた。僅か一分余りで、襲撃してきた武装集団は戦闘不能に陥る。

 素人が大勢相手なら武偵に勝てる物だが、なんせ相手は超人的な行動をする青年と恐ろしい狙撃をやってのける少女。高度に調教された狼。超能力的な能力を持ち、戦闘力は一個旅団相当に匹敵する女だ。

 彼等に攻撃した時点で、武装した男達に勝ち目など無い。

 

「こいつ等は・・・あの・・・」

 

「遠山さん、まだ終わってません。次が来ます」

 

 キンジが武装した男達を見て呟くと、レキは次の攻撃に感付き、狙撃銃を構えた。レキが構えた先を見ると、紛争地域でよく見掛ける旧ソ連の対戦車ロケットランチャーRPG7を持った男が居た。SVDを構えるレキは、いつものクセは言わず、黙々と引き金を引き、男の手を撃ち、RPG7を引き離した。

 

「これで全滅か・・・こいつ等は、公安からマークされていた極左の団体だな」

 

 全員の無力化を確認したキンジは、肩を撃たれて痛がる男を見て、口にする。のたうち回る男はキンジやレキを見るなり、強気な発言をした。

 

()るならさっさと()れ!政府の犬目!!」

 

「残念だが、俺達は武偵だ。殺しのライセンスは持ってない。差し詰め目的は東京武偵校の襲撃だろう。不穏分子として逮捕させて貰うぞ」

 

「クソっ!何も喋らんぞ!!」

 

 ポケットから手錠を取り出し、叫ぶ極左テロリストの両腕に付けた。だが、容疑者の数が多く、今持っている手錠だけでは足りるはずもない。

 逃げようとした者達が居たが、マリが容赦なく銃剣付きの半自動小銃を投げて串刺しにし、再装填を終えたP232で、一人残らず射殺する。これを見たキンジは不愉快な顔付きになったが、レキは顔色一つ変えず、リーダーらしき男に狼のことを聞いた。

 

「この子の飼い主はあなた方ですか?」

 

「知らん、そんな犬など!」

 

 男の答えに口元が血で汚れた狼は噛み付こうとするが、レキに止められる。

 

「そうですか。詳しく調べます」

 

 狼を撫でつつ、答えを聞いてその場を去ろうとした。マリも少しは良い暇潰しになったと思い、レキと同じく去ろうとしたが、倒れている男がある一言を耳に入れ、足を止めた。

 

「フッ、つくづく貴様等は政府の育成機関は低俗な女ばかりだな。自分等がヒーローなどと思っているのか?」

 

 それを耳にしたキンジは顔色を変えたが、レキはまた顔色一つ変えない。

 

「間違っているのは貴様等だ。我々こそ正義であり、武器を持たぬ事で平和と発展をもたらすのだ。なのに周りは我らのすばらしき思想を理解せん・・・そればかりか邪魔をする。貴様等餓鬼共にも銃を持たせ、弾圧を強化した・・・つくづくと間違ったことの多い。人殺しの集団である自衛隊のみならず、学生にまで武装させるなど、これでは我らの願う完全平和国家・・・バフッ!?」

 

 極左テロリストが言い終える前に、マリの気に障る言葉を吐いた所為か、その男の口を左足で踏み付けた。

 

「うざ。だから理解されないんだよ。後、完全平和なんて人間が絶滅しない限り無いから」

 

 マリはまだ動く手で払い除けようとする男に対し、踏んでいる左足に闘気を溜め込み、フォイアー・キックを発動した。男は忽ち丸焼けとなり、マリが瞬時に距離を離すと、周囲をのたうち回りながら声にならない叫び声を上げる。

 

「おい、何もそこまで・・・!」

 

 惨たらしい殺し方をするマリの肩を掴むキンジであるが、彼女の一睨みで肩から手を離す。キンジが少し怯んで手を離すのを確認したマリは、何処かへ立ち去っていった。

 数分後、通報を受けた警備部隊と護送班が到着し、生きている極左テロリスト全員を拘束する。彼等が持っていた武器の他に、マリや狼が殺した死体も回収して、現場の後処理を始めた。

 

 

 

 極左テロリストの学園島襲撃事件から翌日、マリの姿はとあるメイド服専門店にあった。

 試着室にはアリアや理子の影もあり、あの事件で共闘していたキンジも居た。昨日のことを気にしているのか、キンジはマリに対して警戒している。

 だが、試着室から聞こえるメイド服を嫌がるアリアに、理子が無理矢理着せようと着付けをしようとしているのを聞いて、気が散ったようだ。

 

「へ、変態!変態二号だわ!アンタ!!」

 

「変態理子さんが本気になれば、アリアなんてとっくに裸エプロンなのだ~」

 

 理子の言葉を最後に、アリアが試着室から出て来た。制服にフリル付きのエプロンは、アリアの体格からしてより一層可愛さを増しており、マリの視線が小さなメイドに集中していた。理子は早速アリアのレッスンに入る。

 

「はい!それじゃぁ本格的なレッスンにいってみよー!!」

 

「っ?なにをやらせる気?」

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ~まずは、【ご主人様、ご用件はなんですか】って笑顔で聞くの。キーくんがご主人様役ね」

 

 理子からの説明にアリアは驚きの声を上げ、キンジは鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする。

 

「えぇ!?」

 

「何を驚いているのかな?アリアんは。潜入調査(スリップ)のロールプレイは基本中の基本だぞぉ?武偵ならそれくらい知ってるよねぇ?」

 

 かなり挑発的な口調で、理子はアリアに向けて問う。アリアは顔を真っ赤にして、今にも拳銃を抜きそうな勢いであるが、我慢してなんとか言おうとする。

 

「う、ううぅぅ・・・!ご、ご・・・ゴホッ!」

 

 プライドの高いアリアにとっては、余りにも酷すぎて恥ずかしかったのか、言い切ることが出来ずにむせてしまう。

 

「なんでそいつはやらないのよ!」

 

「言ったじゃない。お姉ちゃんは駄目だって」

 

 この理子からの返答に、アリアは口籠もった。そんなアリアに対し、理子は声色を変えてレッスンを続行する。

 

「さっ、続きだよ、続き。出来るまでやってみよう!何度も繰り返せば、アリアだって出来るぞぉ?」

 

 ブートキャンプのような口調で理子はアリアに語りかけた。これにアリアは応じ、何度も出された台詞を口にしようとしたが、全く言うことが出来ない。暫くすると、言えるようにはなったが、表情が暗く、目から生気が消え失せていた。

 

「ご主人様、ご用件はなんですか。ご主人様、ご用件はなんですか・・・」

 

 その表情でアリアは機械のように同じ言葉を延々と繰り返す。

 

「重傷・・・だな・・・」

 

 今のアリアの状態を見たキンジは、若干苦笑いしながら口を開く。流石の理子も、頭に手を当てて少し悩む。肝心のアリアがこのような有様なので、今日はここで終了することとなった。

 数日後、訓練の甲斐あってか、アリアは完全に言えるようになり、メイドになりきることが出来た。東京武偵校のカフェテラスにて、あのメイド服を着たアリアがキンジに接客する。

 

「ご主人様、ご用件は何ですか?」

 

「紅茶で」

 

「はい、暫くお待ち下さい」

 

 暫くして、アリアがトレイにティーカップを乗せてキンジの座るテーブルへと戻ってきた。

 

「お待たせしました。紅茶でございます」

 

「ありがと・・・」

 

「よし、アリア合格ぅ~!これで潜入調査も万事OKだよ~!」

 

 見事にアリアはメイドの訓練を終えることが出来た。理子は大喜びし、アリアにグッドサインのジェスチャーを送った。他の武偵の姿もある中で、マリの姿もあり、課題をこなしたアリアを褒めるべく、小さな握手を送る。

 それから更に二日後、横浜の空が雨雲に染まり、雨が降りしきる中、街中にマリの姿があった。

 特にすることもないので、理子に「特にすることがないからウロウロしててね~」と言われたので、マリは言われたとおり、傘を差して街中を彷徨き、時間を潰そうとする。暫く歩いて、近くの建物に入り、雨宿りをしていると、少女に声を掛けられた。

 

「貴方が”マリ・ヴァセレート”か?」

 

 知っているはずもない自分の名を口にした途端、マリは振り返り、護身用のP232小型自動拳銃を少女に銃口を向けた。銃口を向けている少女の容姿は美少女と言うべき程美しく、長い銀髪と美しい紺碧の瞳だ。それに銃口を向けられても動揺してない。

 武偵校の制服を身に纏っており、学生の姿が街中で見えるからして、学校を出た辺りだろう。いきなり相手の名で聞いたのが無礼だと思ったのか、少女はマリに向けて謝罪する。

 

「失礼した。いきなり名を口にしてしまうとは・・・済まない。それに私は貴方と戦う気など無い。近くの飲食店で詳しい話を」

 

 この言葉に応じ、マリは拳銃を仕舞い、少女と共に近くのファミレスに入った。個室の席へ座り、メニューボードをマリが取って、メニューを見る。

 

「さて、詳しい話を・・・」

 

「お嬢ちゃん、なに飲む?」

 

「はっ?」

 

 マリがメニューを見ながら自分の言葉を遮った為、少し呆気に取られる。仕方なく「珈琲(コーヒー)」と言って、話を進めようとする。

 

「私はデザート、アイスクリームにでもしようかしら?後、紅茶もセットで。所で、何の話し?」

 

「あ、あぁ・・・少し申し遅れた。ジャンヌと言えば分かるか?」

 

 少女こと”ジャンヌ・ダルク”は自分の名を口にし、マリに告げた。その言葉でマリは、サブ・ゼロと死闘を繰り広げた火薬庫前の事を思い出す。

 

「あぁ、あの時の・・・」

 

「顔を合わせるのはこれが最初だな・・・」

 

 ジャンヌが笑みを浮かべながら言った。それと同時に店員がやってきて、マリとジャンヌに水と手洗いの布巾を出した後、帰ろうとするが、マリに呼び止められる。

 

「私はデザートのアイスクリームのバニラ、ドリンクは紅茶で。そっちの()は珈琲」

 

「あ、はい・・・アイスクリームのバニラでドリンクは紅茶。そちらのお客様は珈琲・・・以上でございますか・・・?」

 

 店員からの問いに、マリは手を挙げて返答する。

 

「畏まりました。しばらくお待ち下さい」

 

 店員が去ったと同時に、マリはジャンヌに問う。

 

「所で、イ・ウーって何?理子ちゃんに聞きそびれちゃったんだけど」

 

「我々でも手が出し難い組織に属していながらとわな・・・得られる情報は少ないぞ」

 

 マリからの問いに、ジャンヌは腕を組んだ。

 

「そっ。話すとヤバイってわけ?」

 

「いや、貴方と話をする前に一人に喋った。それに私の戦闘能力はイ・ウーの中でも最も低い。リュパンもそれに値する」

 

「へぇー、今の“完全”じゃない私が戦ったら、100%こっちが負けじゃん」

 

 イ・ウーと呼ばれる組織の戦闘力の高さに、今の自分では勝てないとマリは意識する。ジャンヌは、イ・ウーについて詳しく話し始めた。

 

「前にも話した者にも言ったが・・・イ・ウーとは天賦の才を神から授かった者達が集い、技術を伝えあえ、どこまでも、いずれはあの者達と同じく神の領域にまで強くなれる。それがイ・ウーだ」

 

「ふーん。で、何が目的ってわけ?」

 

 膝をテーブルにつきながら問うマリに対し、鼻で笑ってから答えた。

 

「組織としての目的はない、目標は個々人が自由に持つのだ。イ・ウーのトップ、教授(プロファシオン)からの依頼ならばあるがな」

 

「あぁ、つまりみんなで協力し合って目標のためにみんなで頑張りましょう的な慈善団体って訳ね」

 

「まぁ、大体はそんなところだ。マリ・ヴァセレート」

 

 マリが言った適当な例えにジャンヌは頷く。丁度この時に、注文していた物が届いた。

 

「お待たせしました・・・デザートのバニラと紅茶、そちらのお客様の珈琲です・・・」

 

 美しい外見を持つ二人の白人女性と少女に、店員は緊張して注文した物を置いた後、一目散に持ち場へと帰った。店員の行動を見ていた二人は、どうして緊張しているかを理解できない。ジャンヌは少し珈琲を口に含むと、本題に入った。

 

「さて、本題に入ろう。教授によればマリ・ヴァセレートが理子との仕事が終わればこの世界を出て行くと推測はしたが、貴方がもし残っていたとすればと言うことを仮定して伝えろと伝言が送られてきた。また同じ事を話すのもなんだが・・・この情報はアリアと非常時のみ共有しろ」

 

「あぁ、あの子。真っ先に突っ込んじゃうからね」

 

「理解が早くて助かる。まず、ここに先日現れたコーカサスハクギンオオカミだが、あれはブラドの手下と見て間違いない」

 

「あのヨーロッパ狼、そのブラドって奴の手下なの?それと、私らを襲撃した頭が沸いた連中は?」

 

 狼と聞いて、自分等が極左テロリストの集団に襲撃された事も聞くが、ジャンヌは首を横に振った。

 

「あの連中に関しては、恐らくただの使い捨てだ。ブラドがあの様な過激派連中を使うとすれば、捨て駒にする以外見当は付かん。話を戻すが、遠山キンジとアリアの動きを見越した物か私には分からない。奴の下僕は世界中にいて、それぞれかなりの直感だよりで襲撃するようだからな」

 

 マリは数日前に襲ってきた極左テロリストが捨て駒と分かって納得した後、えらく詳しいことにジャンヌに問う。

 

「随分と詳しいのね・・・ブラドってのと訳ありな訳?」

 

「奴の話は一族の仇敵だ。私の三代前の双子が初代アルセーヌ・リュパンと組んで引き分けている」

 

「相手の祖先に?」

 

「違う、ブラド本人とだ。奴は不死身、俗に言う不老不死だ。あの化け物を強いて言えば日本語、いや、ドイツ語で言えば(トイフェル)だ」

 

 ジャンヌはマリをドイツ人と見て、ドイツ語に翻訳して言った。

 

「わざわざドイツ語でありがとう。日本語分かるんだけど。それで、弱点あるの?」

 

「あぁ、奴には魔贓と呼ばれる機関が四つある。それを同時に破壊できればいい。過去にバチカンの聖騎士が目玉状の模様を付けているが、三つだけだ」

 

 隣に置いてある鞄から、自分で描いた絵を取り出し、それをマリに見せた。だが、その絵は三歳児が書いたような絵であり、もはやどれが弱点なのか分かりづらかった。

 

「あんた・・・下手過ぎよ・・・」

 

「へ、下手だと・・・!?」

 

 この絵を見たマリは正直にジャンヌに告げ、彼女に紙と鉛筆を要求した。

 

「私がわかりやすく描いてあげるから、紙と鉛筆を出しなさい」

 

「わ、分かった・・・」

 

 ジャンヌは言われたとおり鞄から紙と鉛筆を取り出し、それをマリに渡した。受け取ったマリは、鉛筆を持って、ジャンヌの下手なブラドの絵を見ながら元の姿を思い出して、描き始める。途中でバニラを口にしながら描きつつ、バニラが無くなる頃には紙に巨体を持つ狼男が描かれていた。

 その絵を見たジャンヌは驚きの声を上げ、マリは何処か弱点なのかを問う。

 

「おぉ・・・」

 

「でっ、何処か弱点?」

 

 ジャンヌは分かり易くなったマリのブラドのイメージ図に、バチカンの聖騎士が付けた模様に指差す。指差した場所に、自分でイメージした目玉状の印を描いていく。

 

「これが弱点ね・・・後でキンジ辺りに渡しておくわ。貴方の絵じゃ分かりづらいだろうし」

 

「むっ、分かりづらいとは何だ・・・?」

 

 自分の絵を貶されたことに顔を真っ赤にして、ジャンヌはマリに聞いた。

 

「だって、貴方絵心無いじゃないの。剣の稽古だけじゃなくて、絵の稽古もするべきね」

 

 そう顔を赤らめて怒るジャンヌに対し、マリは答え、紅茶を啜った。




マダラ「極左テロリストは犠牲となったのだ・・・場を盛り上げるためにな」



~今週の中断メッセージ~
ファークライ3のDQN金持ち主人公ジェイソン君の次回予告?

ジェイソン「よし、やるぞ!次回はアリアとキンジがブラドとか言う奴の紅鳴館って所に潜入調査するらしい」

ジェイソン「それもメイドや執事になって潜入するってそうだ。俺ん()にもメイドや執事も居るしな」

ジェイソン「ただし、俺の所じゃあんなトリガーハッピーな小学生はお断りだがな」

ジェイソン「おっと、もうこんな時間だ。次回は「紅鳴館潜入!」次回も見ないと、ケツの穴二つ、いや、額に風穴あけるからな!」

BAM!BAM!(M16A1の単発射撃で近くにある的を撃つ。

ジェイソン「こんな風にな。絶対見ろよ~!」

※見なくても、貴方のご自宅にジェイソン君は襲撃してきません。
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