復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
今回はまだ出てないレギュラーキャラの初参戦。それとグロ中尉。
それと今回で、緋アリ編最終回です。
マリが組織の刺客が放った槍に突き刺され、倒れた事を知らない理子は、ずっと待ち合わせの場所である横浜ランドパワーの屋上で待っていた。
「遅いな・・・お姉ちゃん・・・」
空は当に雨雲から月の光が照らす中、理子は腕時計を見ながら、マリが来ないことを心配する。
「あっ、お姉ちゃん抜きでも出来るから。折角オルメスを撃ち倒して、褒めて貰いたかったのにな・・・まぁ、良いか」
待ち合わせの時間となってしまい、キンジとアリアも来てしまったので、理子は二人の前に姿を現した。
「キーくぅ~~ん!」
何か短機関銃が収められるほどのケースを持参しているアリアの前に出ているキンジに抱き付き、彼等二人を褒め称えた言葉を送る。
「やっぱり理子の見込んだ通り、キー君とアリアは名コンビだよ!理子に出来ないことを平然とやっちゃうんだから!」
キンジに抱き付く上機嫌な理子を見て、アリアは不機嫌になる。
「キンジ・・・さっさと十字架渡しちゃって。ソイツが上機嫌だと、ムカつくから」
「おーおー、アリアんや。キー君を取られてのジェラシーですな?分かります」
「違うわよ!」
不機嫌なアリアが放った言葉に、理子は煽るような事を告げると、案の定。短気なアリアは理子に向かって怒鳴り付けた。彼女の体格や声からして、余りにも迫力がない。
「理子、お望みの物は渡してやるから離れろ」
また言い争いになるかと思い、キンジは理子にロザリオを手渡す。それを受け取った理子は、いつもとは違う笑みを浮かべる。
「それで理子、アリアとの約束は守るんだろうな?」
「くっふふふ。キー君ってば、まだ理子のことを疑っているの?心配しなくても、理子は約束を守る子なのですよ~それよりもキー君。はい、君にプレゼントのリボンを解いてください」
十字架を手渡したキンジからの問いに、これから悪戯をする子供のように小さく笑い、理子は後頭部に増設しているリボンを指差し、キンジに向かって頭を下げる。
少し息を呑んだキンジは、理子のリボンを掴み、少し力を入れて解いた。一瞬、場の空気が凍り付いた。それはキンジがリボンを解くと、理子が自分の唇をキンジの唇に押し付けたのだ。
この光景を見たアリアは、顔を真っ赤にして怒号を放つ。
「り、りりりりり理子ぉ!?な、なな何やってるのよ!!」
撃たれると悟ったのか、理子はバク転を行い、キンジとの距離を取る。
「ゴメンねぇ、二人とも。キー君がさっき言ったとおり、理子は悪い子なの。この
いつも浮かべている笑顔とは違って今の理子の笑顔は、まるで悪魔のような表情だった。二丁の拳銃を引き抜いた理子は、ケースから取り出す素振りを見せているアリアに語り掛ける。
「アリア・・・腐った肉と泥水しか与えられない檻の中で暮らしたことある?理子はね、お母様が亡くなってから、親戚を名乗る人に引き取られて、ブラドに捕まって、そんな暮らしをさせられてたんだ。まるで犬の優良種を増やすための
大仰な身振り手振りを交え、理子は笑いながら自分の過去を語る。その直後、理子は笑うのを止め、感情的になり、暗い虚空に向けて言葉を吐き始める。
「ふざけんなっ!あたしはただの遺伝子かよ!?優秀な5世を生むための機械かよ!?違う、違う、違うぅ!!私は理子だ!峰・理子・リュパン4世だ!!」
悲痛な言葉を虚空に吐き続け、スッキリしたのか、身構えるキンジとアリアの方へ視線を戻す。先のキスで性的興奮が高まり、ヒステリアモードと呼ばれる一種のサヴァン症候群を発症し、性格が少し変わったキンジは理子に告げる。
「可哀想に・・・だが、もう一度言おう、理子は悪い子だ。しかし、女性の犯した罪は罪にならないが、俺のご主人様はそうじゃないみたいでね」
そう理子に告げると、キンジは固まっているアリアの眼前で指を鳴らし、アリアを硬直から解放した。
治ったアリアは早速、ケースからTDIクリス・スーパーVと言う短機関銃を出す。口径は45口径、弾倉は三十発箱形弾倉。またの名をベクターという愛称で呼ばれるスイスとアメリカで共同開発された短機関銃を取り出し、銃口を理子に向けた。
「こうなる事を予想してたわ・・・キンジ、合わせなさい!」
最新型の
「この十字架はね、ただの十字架じゃないんだ。理子が大好きだったお母様が、これはリュパン家の秘宝って、ご生前に下さった一族の秘宝なんだよ・・・だから理子は、檻の中で捕まっている間も、これだけは絶対に取られないよう、ずっと口の中で隠し続けていた」
一度口を閉じると、理子のツーサイドアップの髪のテールが、神話の中の魔物、メデューサの如く動き始める。左右のテールが動きながら、理子は続ける。
「ある夜、理子は気付いた。この十字架、いいや、この金属は理子のこの力をくれる。それでこの檻から抜け出したんだよ!!」
語りの最後を叫ぶと、蠢いていた左右のテールが背中に隠していた大降りのナイフを取る。今の理子が持つ武器はドイツのワルサーP99自動拳銃が二挺、テールが持つ大降りのナイフが二本、それは
「今日!私はオルメス、お前を倒して証明する!曾おじい様を越えたことを!そして、自由のみになるんだ!」
そう理子が叫ぶと、アリアはベクターの折り畳みストックを開き、ストックを肩に付けると、照準器を覗き、確実に理子の右肩へ照準を合わせた。キンジは相手の左肩に照準を向け、アリアと同じく引き金に指を掛けた。だが、二人の戦闘態勢は、小さな落雷の音で無駄になる。
その音が鳴り終わった途端、理子が顔を強張らせ、身体のバランスを崩して倒れようとする。理子は背後から何者かに攻撃されたと察し、ゆっくりと振り返った。
「な、なんで・・・お前が・・・!?」
襲ってきた人物の正体を見て、驚愕した理子は前に倒れた。背後に立っていた人物の姿は、目の前で銃を構えていた二人が驚くべき人物だった。
「
アリアの驚いた声を上げた。背後に銀狼を従えた小夜鳴は、猛獣用の大型スタンガンを捨てた。
しかし、この現場に来たのは小夜鳴だけで無く、マリを槍で突き刺した身長198㎝の屈強な槍を持つ男と、キンジやアリアの脳内に記憶されている極左テロ集団の首領、同じく記憶にある暴力団の組長まで居た。
「それにこいつ等・・・!公安にマークされた・・・!?」
自分等の教師である
「ふふふっ、動かない方が良いですよ。お二人が少しでも余計なマネをすれば、襲うようにしつけてあります」
「コーカサスハクギンオオカミ。保健室のことは芝居だったのか。じゃあ、レキが従えたのも」
キンジは狼を見て、目の前にいる自分の学校の教師が、レキが従えることに成功した狼の飼い主であることに気付いた。
「えぇ、もとは私の
「何を躊躇っている?さっさと目の前にいるカスを殺せ。小夜鳴」
小夜鳴の背後にいた槍使いの男が、空気を読まずに割り込み、早くキンジとアリアを殺すよう急かす。
「落ち着いてください、
後ろを振り向き、レッドランサーと呼ばれる男に言った小夜鳴は、キンジとアリアに視線を向けながら告げる。
「あなた方もこれと組んだことが過ちでしたね・・・このリュパン4世とね」
「な、なんでアンタがそれを知ってるの!?まさか、アンタがブラド・・・!」
リュパン4世という単語を放った小夜鳴に、アリアは照準を肩へ向ける。
「彼は間もなくここに来ます。あぁ、そうだ、遠山君。君に一つ補講しましょう。君がこのリュパン4世と不純な曽比に耽って追試になったあのテストの補講・・・DNAについてです」
今、銃口を向けられているにも関わらず、小夜鳴はキンジに向けて
「DNA、つまり遺伝子とは、気紛れな物でして、父と母、その両方の優秀な遺伝子が受け継がれれば優秀な子が。受け継がなければ無能な子が、それぞれ生まれます。そして、これはその失敗のケースのサンプルと言えます」
仲間達に合わせ、講義を早めに終えた小夜鳴は、理子を見下しながら頭を軽く蹴る。
「お、お前か・・!あの時のブラドにあれを吹き込んだのは・・・!」
自分を蹴った小夜鳴を睨み付け、理子は思い出す。
「えぇ。そうだ・・・君達にも教えてあげましょう。リュパン家の血をひきながら、この子は・・・」
理子にとっては屈辱的なことなのか、彼女は必死で小夜鳴を止めようとする。
「や、やめろ!言うなぁぁ!!」
「優秀な能力が、全く遺伝してなかったのです。つまり、遺伝学的には、この子は全くの無能ということです!」
小夜鳴は、狂喜染みた笑みを浮かべながら告げ、理子は顔を背けるように地面に額を押し付ける。それと同時に、何処からともなく背丈178㎝はある武装したルーマニア人の男が瀕死状態のマリを抱えて現れ、乱暴にキンジとアリアが見える場所に、乱雑に置いた。
「あそこにいるお美しい金髪のお嬢さんは、容姿と才能も含めて全くの優等種なのですが、些か子宮に異常がありましてね・・・子供が産めない、つまりゴミです。それに彼女はあれだけ優秀にも関わらず同性愛者、女性で言えばレズビアン。私は何故、同性に恋をするのか理解できませんね。同性愛など非生産的です。生物の意思に反しております。今、目の前にいる無能と同じ存在です」
瀕死状態のマリに手を翳しながら、アリアが殺意を覚える持論を吐き、理子を踏み付け始めた。
「人間は遺伝子に決まる。優秀な遺伝子を持ちながら、生む子宮に異常があってはならない。さらに同性愛者など以ての外!優秀な遺伝子を持たない人間は幾ら努力を積んでも限界を向かえるのです!今の貴方のようにね!」
そう言いながら、さらに小夜鳴は理子を踏み付けた。だが、これがアリアの感に障ったのか、彼女が止めるよう叫ぶ。
「止めなさい!瀕死の相手に追い打ちを・・・!」
「はい?あぁ、そう言えば貴方も4世でしたね。ただし、肝心な部分を受け継いでいない・・・」
今度はアリアに標的を向け、小夜鳴は狂喜した笑みで告げる。だが、キンジからの質問に、その笑みは止まる。
「一つ聞く、小夜鳴先生」
「はい、遠山君。なんです?」
「あんたの目は節穴か?」
「あぁ?」
このキンジからの問いに、小夜鳴は気分を害し、睨み付けた。
「遺伝子の専門家のアンタが言うことだ。理子にはその優秀な遺伝子は受け継がれていないんだろう・・・だが、それがどうした?」
キンジが拳銃を下げ、小夜鳴を指差した。これを見た小夜鳴は、キンジが言った事が余程自分に取って馬鹿げていたのか、笑い始める。
「あははは、一体何を言うかと思えば・・・遠山君。君は才能を否定するのですか?君自身は才能に恵まれているというのに?」
「いや、才能そのものを否定するつもりは少しもない。けどな、才能と言ってもピンからキリまである。確かに俺は強襲科や教務科から言われたとおり、戦闘力とかに関しての才能はあるだろう。でも、銃に関してはアリアより劣る。結局は以下に自分の才能を見付け、それを伸ばすかが問題だ。リュパンとしては無能?なら理子として有能になればいい。ただそれだけの話だ」
「ふふふ・・・あっははは!!」
キンジが放った言葉が余りにも自分にとっておかしかったそうで、今度は大きく笑い出す。
「あははは!実に面白いですよ、遠山君!とても面白い喜劇を見ている気分ですよ!全く・・・君達のその強気な顔が、絶望に染まると思うと堪らない物がありますね!!」
狂った表情を見せつけ、小夜鳴は強気なキンジとアリアに告げる。言い終えた彼は、目の前で倒れている理子に視線を向ける。
「まぁ、今は目の前にある絶望を楽しみとしましょうかね」
そう言って小夜鳴は、理子から十字架を奪って、ポケットに仕舞い、取り出した偽物の十字架を彼女の口に無理矢理こじ開け、十字架を押し込む。
「今の貴方には、このガラクタがお似合いでしょう。ほうら、しっかりと口に含んでおきなさい・・・以前からそうしていたのでしょう?」
無理矢理口に十字架を突っ込んだ後、理子の頭を何度も蹴り始める。それを見たアリアは、止めるよう叫んだ。
「止めなさい!理子を虐めて何の意味があるのよ!?」
止めるように叫んだアリアに愛し、小夜鳴は両手を広げながら答える。
「絶望が必要なんです。彼を呼ぶには絶望の歌を聴かせることが条件なのです・・・この十字架をわざわざ本物を盗ませたのもそう・・・より深い絶望に落とすためでしてね。御陰で、良い感じになってきました・・・遠山君、良く見ておいてくださいね・・・」
「何をする気だ?お前」
空気も読まずに問うレッドランサーに対し、小夜鳴は舌打ちをしながら答えた。
「チッ。まぁ、これから分かりますよ・・・私は人に見られている方が、気がかりの良い物でしてね・・・」
答えた小夜鳴の雰囲気が変わってきた。キンジは察したのか、それを口にした。
「ヒステリア・サヴァン・シンドローム・・・」
「そうです。遠山君。ヒステリア・サヴァン・シンドロームです。遠山君のお兄さんからDNAを得ました」
「ヒステリア・・・サヴァン・・・?」
アリアは銃を構えながら首を傾げているが、誰もその疑問には答えなかった。これから何が起こるかを知っているのは、レッドランサーだけである。
「皆さん、暫しのお別れです。が、その前に一つ講義しておきましょう」
こんな時にも、小夜鳴は講義を始めた。もし相手がマリであったら、その間にやられている頃であるが。
「ジャンヌ4世から聞いているでしょう。イ・ウーとは能力を教え合う場だと・・・しかし、それは彼女等のような階梯の低い者達のおままごとに過ぎません。私のような高い階梯にいる者は、能力を写す場になった・・・私とブラドがそのような革命を起こしたのです」
これを耳にしたアリアは、思い出したのか、それを口にする。
「聞いたことがあるわ。イ・ウーの奴らは何らかの方法で、能力をコピーしているって」
「ブラドはそれを600年も前から、交配では無い方法でそれを行ってきました。つまり、吸血で」
「キンジ・・・ブラドの正体が読めたわ。ドラキュラ伯爵よ」
「ブラド・・・」
キンジは小夜鳴が串刺し肉しか食べていないことを思い出す。
「そうか、ブラド4世、串刺し公か」
「えぇ、ブカレスト武偵校で、聞いたことがあるの。胃までも生きているっていう怪談付きでね」
ブラドの正体が自分であることに気付いたキンジとアリアに、小夜鳴は拍手を送る。
「お二人とも正解です。ですが少し違います。間もなく、そのブラド公を拝謁できるのです。楽しみでしょう?」
だが、キンジはブラドに自分の兄のDNAが入っていることを信じない。
「出任せだ。そもそも、兄さんの能力をコピーしたとして、何故そこまで理子を傷付けられる!?」
「良い質問です、遠山君。私は
雰囲気が一変し、小夜鳴の細身の身体が筋肉質な巨漢の肉体へと変貌していく。
「さぁ・・・彼が・・・来たぞ・・・!!」
衣服を破り、歯が狼の牙になり、整った顔がどんどん狼に近くなる。
やがて肌の色は赤褐色に変色し、肩や腕の筋肉は牡牛のように盛り上がり、露出した脚は、もう獣のように毛むくじゃらだ。上半身の肌には、ツタ植物みたいな模様が浮き出ている。吸血鬼と言うより、狼男に近いだろう。
レッドランサー以外の者達は、その姿を見て驚きを隠せないでいる。
「初めまして、だな」
声帯が不気味に変わり、キンジとアリアに挨拶する。
「俺たちゃ、頭の中でやり取りするんでよ・・・話は小夜鳴から聞いている。分かるか?ブラドだよ、今の俺は」
黄金色の凶暴そうな眼で、キンジとアリアを睨みながらブラドは名乗った。キンジは何かを察したのか、舌打ちしながら呟く。
「そうか、そういうことだったのか」
「ど、どういう事よ!?」
「擬態だよ」
呟いた言葉にアリアが問い掛けてきたので、直ぐに答える。
「ぎたい・・・?」
「動物が自然界で有利に生きようとする時、他の動物の姿や動作をそっくりに真似するだろ?」
「う、うん」
「ブラドと小夜鳴は、それの吸血鬼・人間バージョンと考えられる。元々、あの化け物みたいな姿だったが、進化の過程で人間に擬態して生きるようになっていった。その擬態は高度で、姿だけじゃなくて、小夜鳴という人格まで作り出したんだ。つまり、少し変わった一種の二重人格だ」
キンジからの付け加えた説明に、アリアは納得した表情を浮かべる。ブラドは目の前に倒れている理子の頭を鎌のように長くて鋭くなった腕で切らないよう器用に掴み、持ち上げる。
「4世、久し振りだな。イ・ウー以来か?」
理子を掴んでいるブラドの隙をついて、キンジとアリアは銃撃した。放たれた銃弾は全て命中したが、その銃創は紅い煙のような物を盾ながら、簡単に、ほんの一秒で塞がる。放たれた銃弾は腕から排出され、ブラドの足下に落ちる。
「じゅ、銃弾が・・・」
「効かない!?」
この銃撃で、身体に付いてあるマークを全て同時に撃たないと、ブラドは倒せないと判断した。
「ぶ、ブラドぉ・・・!だ、だました、な・・・!お、オルメスを倒せれば、あ、あたしを・・・解放するって、い、イ・ウーで、約束、した、くせに・・・!」
悔し涙を流し、そうブラドに訴えかける理子であったが、ブラドは嘲笑うように答えた。
「お前は犬とした約束を守るのか?ゲゥゥゥアババハハハハ!!」
牙をむきながら笑い、そのまま続ける。
「檻に戻れ、お前は無能だが、優良種には違いない。そこにぶっ倒れてる良い血しか採れない女とは違ってな。交配次第では、品種改良された良い5世が作られ、そいつから良い血が採れるだろうよ!遠山、おめぇの遺伝子も掛け合わせてみるか?」
人間全体を侮辱するような言葉に、二人は怒りを覚える。
「良いか4世?お前は一生俺から逃れられない。世界の何処に逃げても、お前の居場所はあの檻の中なんだよ!ほれぇ!これが人生最後のお外の光景だ」
ブラドは理子の頭を振り回し、屋上の外へその目を向ける。
「よ~く目に焼き付けておけよぉ!ゲハッ、ゲバハハハ!!」
大笑いするブラドに、泣き顔を見せまいと強がる理子は目を閉じるが、頬に大粒の涙が浸り、涙が落ちる。絞り出すように、キンジとアリアの名を口にする。
「アリア・・・キンジ・・・」
その微かな声を聞いた二人は、理子の声に耳を澄ませる。
「たすけて・・・!」
「言うのが遅い!このバカ親友!!」
アリアはブラドへ向けて突っ込み、その後にキンジも続く。構えていた狼が二人に襲い掛かかるが、レキが行った芸当をキンジは真似をし、脊髄と胸椎の間を掠めるように撃った。
襲ってきた全ての狼は、昏倒して倒れ、戦闘不能になる。
「ブラド!理子は私の獲物よ!!」
そう叫んで、アリアはベクターで理子を掴むブラドの手を撃ちまくる。数十発ほど撃ち込まれ、理子を掴む手は緩くなり、彼女を手放した。アリアは空かさず、短機関銃を構えつつ、キンジに指示を出す。
「キンジ、お願い!」
指示を出されたキンジの左手には、理子の
どうやらブラドに変異する際、破れた衣服に入っていた十字架が偶然にもキンジの方へ飛んできたのだろう。キンジは普段の物とは思えない速さで、理子の救出に成功する。
弾倉三十発分の弾を撃ち尽くしたアリアは、キンジが居る場所へと後退し、ケースから取り出した新しい箱形弾倉を取り、空の弾倉をマガジンキャッチボタンで排出、新しい弾倉を差し込み、ボルトを引いて初弾を薬室へ送り込む。
仕切り直しなのか、ベクターのスリリングを肩に掛け、短機関銃をぶら下げながら、ブラドに告げる。
「無限罪のブラド。あんたはあたしのターゲットの中でも正体不明で、見付けにくそうな相手だったけど、相当な間抜けで助かったわ。警戒心もなく、あたしの目の前で正体を現したんだからね、覚悟しなさい!」
「勢いのあるチビだな。俺はそんな奴を何千何万も殺してきたが」
途中、レッドランサーが割り込むように言葉を挟んできたが、アリアは気にせずに続ける。
「私はアンタを許さない!確かに人間は遺伝子で変わるかもしれない。だからと言って、その人の価値までもが遺伝子で決まるなんてことはあり得ないわ!例え、優秀な能力が遺伝しなくても、人は更なる高みに上がることが出来る!」
「ほざけ!ホームズの欠陥品が!!そんな減らず口、二度と吐けないようにしてやる!!」
撃たれた腕が再生したブラドは、努力論を叩き付けるアリアに向けて叫ぶ。だが、アリアは臆することなく、ブラドに向けて逮捕宣言を叩き付けた。
「ブラド、あんたを虐待の現行犯で逮捕するわ!」
宣言が終わったと同時にブラドが、キンジとアリアに向けて突っ込んできた。丁度その時、多数の極左テロリストの構成員と暴力団の構成員達が、見物人として何処からともなく出て来た。
ブラドの手下と思われるAK47突撃銃のルーマニアモデルであるAIMを持った男は、戦闘に巻き込まれると思って即座に瀕死状態のマリから離れた。負傷した理子を抱き抱えているキンジはマリの近くに理子を降ろし、ブラドの死闘を繰り広げるアリアに加勢しようとしたが、彼女に脚を掴まれ、止められた。
「どうした?」
「これを・・・あの化け物の弱点・・・」
マリは出来る限り持てる力で使って、懐からブラドの弱点を記したイラストを取り出し、キンジに渡す。
「ありがとう・・・」
ジャンヌよりより分かり易くなったイラストを受け取ったキンジは、マリに礼を言うが、レッドランサーがそれを目撃し、キンジとマリの間に槍を投げ込んだ。
「おい、くたばり底無い!これから殺処分される猿に何を渡している!?」
「瀕死の美しい女性を”くたばり底無い”と表すとは・・・それがレディに対する口か?」
槍を投げ込んだレッドランサーに敵意の視線を送りつつ、キンジは告げた。
「雑魚が・・・!生意気な口を・・・!」
レッドランサーは掌から槍を出現させ、キンジに投げようとするが、ブラドに止められる。
「おい、俺の獲物を捕るな!レッドランサー!!まずはテメェから始末するぞ!」
「クッ、犬ころ目。まぁ良い。後で貴様も・・・」
まさか敵に助けられるとは思いもしなかったキンジであったが、ブラドを倒した後にレッドランサーと戦うことになると、勝算は絶望的だ。だが、今はブラドを倒すしかないと決心したキンジは、アリアに加勢した。アリアは弾倉一つ分を使って、ブラドに再生に時間が掛かるほどの重傷を負わせた。
「アリア、ヴァセレートが詳しいイラストを渡してくれた。相手が間抜けで助かる」
戦場へ戻ったキンジは、若干血が染みたブラドの弱点図をアリアに見せた。
「あのレッドランサーっての、絶対脳筋だわ・・・普通、こういうのは没収するのが結束よ。それともあいつのことだから、何かの手を使って・・・」
図を見ながらアリアは、マリがこの図を何かしらの手を使って入手したと考える。
「おい小僧共。作戦会議は終わったか?こっちも丁度準備が終わったところだ」
その言葉と同時に、ブラドがキンジとアリアの元へ突っ込んでくる。
「おらぁ!
二人の後ろにいつの間にか回った暴力団員が、ブラドに向けて叫ぶ。直ぐにキンジとアリアは退避したが、暴力団員の男は口を大きく開けて呆然とする。
「あっ・・・」
これが男の最期の言葉だった。ブラドに体当たりされた暴力団員の身体は、衝撃で四方が吹き飛び、肉塊となりながら壁にぶつかり、壁に血と内臓がこびり付いた。
「おっと、うっかりしてゴミに体当たりしちまった。まぁ、実際ゴミだから何でないがな」
ブラドはうっかりして虫を踏み潰したような感覚と、殺した相手が優秀な遺伝子を持たない理由で人を殺したのだ。これに怒りを感じたキンジとアリアは、ブラドの弱点を撃ち始める。
だが、同時に撃たないと意味は無いらしく、傷は塞がっていく。その時、ブラドが左腕で口を防御している事をキンジは見逃さなかった。
「兎に角ブラド!ママの罪の99年分はアンタの罪よ!!」
「あぁ?それとこれがどう関係ある?」
アリアがブラドに向けて叫ぶと、理子の力を借りてマリは立ち上がった。
「お姉ちゃん・・・大丈夫・・・?」
「えぇ・・・それより、あいつ・・・口を防御する姿勢を取ってた・・・多分、あの犬の弱点は・・・」
十分に動ける理子は、瀕死のマリを抱えつつ、彼女がブラドが銃を撃たれた時に、口を防御する姿勢を取ったことを伝える。それをキンジに伝えようと、指信号で伝えようとする。マリからのメッセージを受けたキンジは、ブラドの気をマリと理子から逸らすべく、問い掛ける。
「ブラド、俺達が恐いか・・・?」
「あぁ?何言ってやがる」
案の定引っ掛かり、野次馬達もブラドに視線を集中している為、気を逸らすことに成功した。
「不思議な
不老不死と聞いて、マリはかつての自分を思い出した。それを聞いたブラドは鼻で笑う。
「フン、ガキがいっちょまえの口を利くじゃねぇか。確かにお前等みたいなのがウロチョロしているのが鬱陶しいでな。取り敢えず、お前には退場して貰おうか、遠山!」
そうキンジに告げると、息を大きく吸い込み、胸を風船に膨らませた。
「ワラキアの魔笛に酔え・・・」
次の瞬間、ブラドは吸った息を大きく吐き、キンジとアリアに向けて咆哮した。凄まじい大音量が耳に轟き、レッドランサーを除く周りにいる者達は耳を塞ぐ。咆哮を直接受けたキンジの様子が一変した。
どうやら先の咆哮で、ヒステリアモードを解かれたようだ。
「ど、ドラキュラが吠えるなんて聞いてないわよ!」
アリアが騒いでいたが、ヒステリアモードが解けたキンジはそれどころではない。ブラドは近くにあったアンテナを引っこ抜いて、アリアに殴り掛かった。アリアはギリギリ回避できたが、見物人の一人が避けきれずに顔面を諸に受け、ビルから落下する。
「キンジ!何してるの!?
呆然としているキンジに、ブラドは無情にアンテナを振るい落とそうとしたが、すんでの所でアリアに突き飛ばされることで九死に一生を得た。
「そう簡単にはやらせないわ!」
キンジを突き飛ばし、回避に成功したアリアは、二挺のガバメント自動拳銃を抜いて、ブラドへ向けて撃ち始める。
「効くか!」
放たれる銃弾をアンテナで防御し、キンジに視線を向けた。
「フン、今はおめぇの相手をしている暇はねぇ」
「キンジ!そこから逃げなさい!!」
アリアの宣告虚しく、キンジはアンテナに殴られ、先程顔面を殴られて落ちた男のように、ビルから吹き飛ばされる。
「キンジィーーーー!!」
落ちたキンジに向けて、アリアの悲鳴が木霊した。瀕死のマリを降ろし、理子がキンジを助けるために、屋上から飛び降りる。
気になったアリアが慌ててビルの下を見ると、改造制服を展開し、パラグライダーにした下着姿の理子と脚の両脇に抱えられたキンジの姿があった。アリアが安心する中、瀕死状態のマリは力を振り絞って立ち上がり、アリアに伝える。
「アリアちゃん・・・ここからは時間稼ぎよ・・・あの変態と理子ちゃんが戻るまでね・・・」
それを聞きつけたアリアは、警戒しつつ、マリの近くに向かう。
「何言ってるのよ。あんた、そんな状態で戦うつもり?」
今のマリの状態は、瀕死状態であることは一目瞭然だ。この調子で戦えば、いずれか死んでしまうだろう。
「そう言えば、貴方・・・疲れたって言葉は嫌いじゃ無かったっけ?」
「瀕死状態の人間を、わざわざ働かせようなんて思わないわ」
流石に死んでは困るのか、アリアはマリの参戦を拒むが、ベクターを奪われ、予備弾倉も奪われてお手上げとなる。
「それじゃあ、私はこれで援護に回るわ・・・」
「そう、じゃあ、死なないように私が頑張るわ・・・」
マリがベクターから空の弾倉を排出し、新しい弾倉を差し込みながら言うと、アリアは頷いてから、ブラドに立ち向かった。照準器を覗いたマリが、ブラドの脚へ向けて銃弾を放ち、動きを封じる。二挺の45口径自動拳銃を仕舞ったアリアは、二本の太刀を抜き、動きが鈍ったブラドを切り裂く。
「ほぅ、中々やるな・・・」
見物客であるレッドランサーは、マリとアリアの連携を見て、褒めの言葉を贈る。マリが足を撃って鈍らせ、アリアが腕を切り裂き、攻撃力を下げる。これをキンジと理子が帰ってくるまで何度も繰り返したが、やがて限界が来た。
「クッ・・・!」
無理が祟ったのか、レッドランサーに刺された下腹部から血が噴き出した。その所為で照準がぶれ、ブラドに弾かれる。
弾かれた45ACP弾は見物人の男の額に命中し、三人目の死者を出す。攻撃が遅れたアリアも、マリの元に弾き飛ばされ、傷が癒えたブラドは二人の有様を見て、大いに笑う。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「グバババ!もう限界か!小娘共!!」
トドメを刺しに来るブラドを見て、アリアとマリは死を覚悟したが、完璧なタイミングでキンジと理子が到来する。
「アリア!ヴァセレート!!」
キンジが叫ぶ中、アリアとマリは着陸する隙を与えようと、全力射撃を始める。何十発の45ACP弾を受けたブラドの身体は、凄まじいダメージを受け、少し再生に時間が掛かる程の傷を負わせる。
全力射撃を終えたマリは下腹部から来る激痛に耐えられず、跪いてしまう。心配したアリアはマリに寄り添うが、彼女は振り払った。
「行って!こいつは私が食い止めるから!!」
いつも自分に接する時とは違う表情だったので、アリアは内心ビビってその指示に従う。アリアが離れると、マリはベクターを手に取り、再装填した後、ブラドの脚へ向けてフル・オートで射撃した。
「このくたばり底無いが!!」
脚を撃たれて動けなくなったブラドは怒り、近くにあった排気口の蓋を引っこ抜き、マリに向けて投げた。瞬間移動を使って回避しようとしたが、思うように標的が決まらず、左腕を切断される。
「グハァ、アァァァァァァァ!!!」
腕を切断された余りの激痛で絶叫し、その声が木霊した。左腕の断片から大量の血が勢いよく噴き出し、マリは堅い床の上に倒れる。
「やられた・・・!」
この断末魔めいた叫びで、キンジ、アリア、理子はマリが死んだと判断する。だが、マリの御陰か、ブラドに隙が出来た。
それと同時に空からドイツの
「これは・・・!」
「誰が渡してきたのか?」とそんな疑問が浮かび上がるが、気にしている暇は一切無いので、安全装置を外し、照準器を覗いてブラドに構える。アリアが二挺のガバメントを、理子が胸から護身用拳銃であるデリンジャーを取り出し、ブラドへ向けて撃とうとした。
「撃て!」
キンジが叫んだ瞬間、雷が鳴り響いた。雷が苦手なアリアは怯んでしまい、若干狙いを外してしまう。このままでは右側が逸れてしまうので、キンジは一秒遅れて右側の弾に向けて、素早く抜いたベレッタで撃つ。今の彼の動体視力なら可能であり、口を塞ぐブラドへ向け、素早くベレッタを捨て、HK53で撃った。
飛んでいった9㎜パラベラム弾は45ACP弾に当たり、右側へ向かってゆく。
この撃ち方をキューと呼ばれる棒で球を打って点数を競うゲーム、ビリヤードからそのまま名を取って、
放たれた弾丸はブラドの弱点であるマークに全て命中し、最後の弱点である舌へと5.56㎜NATO弾が命中した。
「グオォォォォォ!ば、馬鹿なぁ!?」
弱点を全て撃たれたブラドは、急激に力を失い、膝をついた。さらには自分が引き抜いた鉄柱を受けたブラドは下敷きとなり、間抜けにも舌を出しながら力尽きた。力尽きたブラドに向かった理子はブラドの顔を踏み付け、舌を出しながら馬鹿にする。
「ぶぁーか」
ブラドが倒れたことを見た見物人達は、キンジとアリア、理子の三人に恐れおののき、戦意を失う。
「ば、化け物を・・・倒しやがった・・・」
「あいつを倒した・・・何て奴らだ・・・!」
「これが・・・武偵、なのか・・・!」
「無理だ・・・勝てるわけがない・・・!」
肝心の極左テロ集団のリーダーと暴力団の組長も三人を恐れている。
周囲の者達がざわつく中、あの集団には戦意はないと判断し、三人は気にせず、ブラドをどうするか考える。
「ブラドはどうする?」
「どうにも出来ないわ。こんな鉄柱、あたし達の力じゃ動かせない。そもそもこれはブラドが勝手に持ってきた物でしょ、自業自得よ」
実際にアリアの言うとおりであった。アリアはこちらに来た理子に問う。
「ねぇ、本当にアルセーヌ・リュパンとブラドは戦ってたの?」
「うん、当時のジャンヌ・ダルクと引き分けでね」
「へぇ、そうなの。じゃあ、あんた・・・今、初代を越えたわね」
腰に両手を当てているアリアが、理子が初代を超えたことを称えると、彼女は断片の方へと向かう。
「今回のことは貸しにしないよ、オルメス。今回はただ利害が一致しただけ・・・だけど、神崎・ホームズ・アリア、遠山キンジ。あたしはもうお前達を下に見ない。敵としてではなく、対等なライバルと見なす。だから、した約束は守る。
そうキンジとアリアにライバル宣言した理子は、屋上から落ちた。
「理子・・・!待て!こいつ等は・・・!?」
キンジが言い終える間もなく、理子は改造制服パラグライダーで、ワイヤーを確保し、何処かへと飛び立った。
「ははっ、やられたよ・・・あの子の一番の武器は、逃げ足なんだよなぁ・・・」
この場から脱出した理子を見ていたキンジは、そう言って理子のことは諦め、マリが生きているかどうか確認しに行こうとしたが、男の断末魔でレッドランサーの事を思い出す。
「ウワァァァァァ!!」
「おい、それで勝ったつもりか?」
先程殺した男の首を槍の先端に突き刺したレッドランサーが、キンジとアリアの目の前に現れた。
「どうするのよ、キンジ」
「何って、逃げるしか無いだろう?」
アリアは二本の太刀を握りながらキンジに問うが、彼の口から予想したとおりの答えが返ってくる。レッドランサーが脅しでも入れたのか、先程の反社会的組織の構成員達が、こちらに向けて雑多な銃器を突き付けていた。ブラドの手下は、鉄柱を退けようと必死になっている。
「万事休すか・・・」
キンジがHK53を握り締めながらその言葉を吐くと、二人は死を覚悟した。だが、奇跡はキンジとアリアを助けてくれた。屋上の出入り口から、様子のおかしい暴力団員が、乱雑にドアを開けて出て来た。
「助けて・・・くれ・・・!頼む・・・!助けてくれ・・・!」
暴力団員の足並みはフラフラであり、男の背中から血が流れ出てコンクリートを赤く染めている。物の数秒後、男の背後から全身を中世のような甲冑を身に着けた人物が男の背中に刺さった何かを引き抜くと、男は地面に倒れた。
男の背中に刺さって、命を奪ったのは大振りの両刃の西洋式斧であり、それを手に持ち、同じような甲冑を身に着けた者達は複数居た。全員が返り血を浴びていることを察すると、ここまで上がってくる最中に、ビル内にいた暴力団員達とテロリスト達を殺してきたようだ。
「うわぁ・・・!撃て!撃てぇ!!」
中国製AK47である56式自動歩槍を持った極左テロリストが叫ぶと、この場では全く似合わない存在である鎧の集団に向けて銃撃するが、銃弾は全く効かず、銃弾はただ下へ弾かれて落ちるだけだった。
銃撃が終わると、謎の鎧集団の反撃が始まった。
後ろからボウガンを持った数人と、ロシアの一人で運搬が可能なZID KORD重機関銃を持った一人が現れ、固まっている集団に向けて撃ち始めた。ボウガンから放たれた矢の威力は凄まじく、当たった構成員が屋上から吹き飛ばされる程だ。重機関銃で制圧射撃を掛ける鎧の人物は、次々とテロリストと暴力団員を挽肉に変えていく。
「死ねや、コラァー!」
射程から外れている一人の暴力団員が、斧を携えた鎧の集団に太刀一本で仕掛けた。
だが、隊長らしき中央にいる鎧の男に頭を掴まれ、右脚の膝で頭を叩き潰された。その威力が凄まじく、頭蓋骨が意図も簡単に割れ、目玉とピンク色の脳の一部が辺りに散らばる程であった。
「掛かれぇ!」
『ウォォォォ!!』
暴力団員の頭を扮さし、返り血塗れの隊長が指示を出すと、後ろに使えていた鎧の集団が掛け声を上げながら斧を持って、反社会的組織の構成員達に襲い掛かった。
「うわぁぁぁ!来るな!来るなぁ!!」
錯乱した構成員達は各々が持つ銃を鎧の集団に向けて撃つが、彼等は雨でも弾くかのように軽々しく銃弾を物ともせず、突っ込んでくる。続いてボウガンと重機関銃の射撃も行われ、テロリストと暴力団員達は次々と挽肉にされていく。
「この野郎、死ねぇ!」
一人も暴力団員が、掛け声を上げながら隙間へ向けて太刀を突き刺すも、刺す前に斧で両断された。勢いよく血が噴き出し、コンクリートが血で紅く染まる。他の者達も鎧の集団の接近を許し、次々と斬殺される。
ある者は脚を斬られた後にトドメを刺され、ある者は腕を切断され、ある者は首を飛ばされ、ある者は腹の傷口から手を突っ込まれ、内臓を引き抜かれ、絶命する。
キンジとアリアの目の前には、こういった
「な、なんだと・・・!?」
唯一の退路を塞がれ、焦りを見せるレッドランサーであったが、自分等を殺しに来た者達は鎧の集団だけでは無かった。
「な、なんだぁ・・・?俺の視界が歪んでるぞぉ?」
一人の暴力団員の頭の上部が、右に斜めずれ始めていた。周りにいる同僚達が、血が噴き出している事を知らせる。
「お、お前!頭が・・・!」
「あぁん?」
頭の上部が斜めにずれた男が振り向いた瞬間、上部が地面に落ち、断片から血が噴き出した。周りの男達は悲鳴を上げるが、次々と斬殺されていく。
「腕が!俺の腕が!!」
一人右腕を切断された男が左手で断片を押さえ、出血を止めようと試みたが、自分の腕を斬った正体に、左右に両断され凄まじい血飛沫を上げながら絶命する。
「な、何者だ・・・!?貴様ァ・・・!」
恐怖の余りに失禁する各リーダーの前で、レッドランサーは惨状を作り出した正体に問う。その正体は首にマフラーを巻いた黒髪のショートヘアーの背丈170㎝の東洋人の女性だった。両手には、周りに倒れている男達を切り裂いた剣が握られ、両腰にはアンカーのような物を放つ装置がぶら下がっている。
「邪魔・・・」
両手に剣を持つ女は両腰にある装備を外し、身軽になる。自分を撃ち殺そうとするシモノフSKS半自動小銃を持つテロリストに斬り掛かる。
「死ね、死ねぇ!!」
引き金を引こうとするが、その前にテロリストは首を落とされた。
断片から勢いよく血が噴き出す中、反社会的組織の構成員達の背後にある手摺りにアンカーが引っ掛かり、そこから女と同じ装備を持つHK33突撃銃やHK53等を持った兵士達が飛びながら現れ、屋上へ着地すると、周囲にいる敵に向けて発砲を開始する。
背後からの奇襲されたテロリストや暴力団員達は反撃もままならず、次々と地面に倒れていく。そして前には両手に剣を持った女に斬殺され、虐殺の光景へと変わる。
「クソぉ!」
苦虫を潰した表情を浮かべたレッドランサーは、呆然としているキンジとアリアに襲い掛かろうとしたが、周囲から現れた鎖に動きを封じられてしまう。
「な、なんだぁ!これは!?」
槍を手放してしまい、まだ動く首を動かして上を見てみると、上空を飛んでいるUH-60ブラックホーク多目的ヘリコプターから、動きやすい服装をした長いピンク色の髪で、胸の大きい女が落ちてきた。
「着地成功・・・!」
その女の正体はシューベリアであり、上手く屋上へ着地し、周りから斬り込んできた暴力団員達を風魔法で吹き飛ばし、倒れているマリの元へ向かった。
「マリちゃん!」
シューベリアが周りの敵を倒しつつ、マリの元へ向かう中、マフラーの女がレッドマーカーに近付いてくる。近場にいたテロリストのリーダーと暴力団の組長は、女から放たれる殺気で気絶する。レッドランサーは必死に鎖を解こうとするが、魔王の娘の魔力は凄まじく、全く解けない。
「クソ!外れろ!槍さえあれば俺は勝てるんだぁ!!」
引き離そうとするも、鎖はびくともせず、近付いてきたマフラーの女に両手両脚を切断された。
「グワァァァァ!ヌワァァァァァ!!おのれぇぇぇぇぇ!!」
四方を切り裂かれたレッドランサーは、首だけにも形ながらも、マフラーの女に噛み付こうとしたが、首を剣で突き刺され、四方や首から大量の血を吹き出しながら絶命した。
それと同時に虐殺は終わり、辺り一面が血で真っ赤となり、その上には大量の空薬莢と武器、内臓、頭、脚、腕、眼球、死体が散乱し、地獄絵図と化していた。
アリアはこの地獄絵図に慣れていないのか、床へ向けて嘔吐する。同じく、鎧の集団とアンカー装備の新兵達も床へ向けて嘔吐した。
一方、マリを介抱していたシューベリアは左腕の断面に手を翳し、治療魔法で止血しようとしていた。介抱されているマリの顔色は非情に悪く、血を失いすぎて失血死の可能性があった。
「誰か!マリちゃんの左手持ってきて!まだくっつくかもしれないから!!」
周囲へ向けてシューベリアが叫ぶと、その他のみを耳にした者達が、切断されたマリの左手を探し始めた。案の定、マリの綺麗な左手は直ぐに見付かり、持ってきた者から左腕を取ると、シューベリアは左腕の断片に付け合わせた。
脅威の排除を確認した上空を旋回していたブラックホークが、ヘリポートへと着陸し、ヘリからノエルと京香が降りてくる。おぞましい光景を見た京香は嘔吐してしまうが、ノエルは直ぐにマリの元へ寄り添う。
「大丈夫ですか!皇帝陛下!?」
両手で口を覆い、今のマリの状態を見たノエルはショックを受ける。同じヘリから衛生兵も降りてきて、シューベリアの治療魔法による腕を付ける手術に参加する。暫し呆然としていたキンジとアリアではあったが、やって来たマフラーの女にHK53を取られる。
「これ、君のだったのか・・・」
キンジはHK53を取ったマフラーの女に向けて言ったが、彼女は無視して同じ対の者達の元へ戻る。
「おいおい、滅茶苦茶やってくれたな・・・」
屋上の出入り口から、部下達と共に不甲斐ない容姿の男、ドン・アシェルが姿を現した。鉄柱に下敷きになっているブラドを見て、部下に指示を出す。
「よーし、通報通りデカイ犬は倒されているようだな。ヘリを使って回収しろ」
「はい、中佐殿」
「通報・・・?理子の奴に助けられたか・・・」
キンジは、ここにワルキューレを呼んだのは、理子だと察した。出入り口からワルキューレの作業員達が入ってくる中、フランスのブルパップ式突撃銃FAMASを持つ戦闘員達がキンジとアリアに銃を向ける。ドンはキンジ等にも気付いたのか、指差しながら忠告する。
「おい、お前等。このデカイ犬を俺らが倒したことにしておけよ?手配中の不穏分子を渡してやるからよ」
「事実をもみ消すつもりか・・・!」
キンジはドンに反抗の態度を見せるが、アリアが止めた。
「止めなさい、キンジ・・・こいつ等、多分イ・ウーよりヤバイ連中だわ。ここは一端手を退きましょう・・・」
「そうだ、そうだ。そこの中学生の言うとおりだ。大人しく言うこと聞いておけ」
「なっ!?誰が中学生よ!私は高二だ!!」
「ウッセー!どっからどう見ても中学生だろうが!!」
言い争いを始めるアリアとドンを他所に、キンジはヘリに乗せられるマリに視線を向けた。瀕死の状態のマリが、シューベリア、ノエル、京香と三名の衛生兵と共に乗ると、ブラックホークは太陽が昇る空へと舞う。十分な距離まで高度を上げると、ワルキューレの拠点がある方向へと、マリ達を乗せた多目的ヘリコプターは飛び去った。
それをただキンジはみているだけだった。
久しぶりの淫乱ピンクの登場。
これで緋アリ編は終了、長くし過ぎた・・・良く思えばご都合主義ばっかりですな・・・
アリアが最新型の45口径短機関銃ベクターを使うのは本作オリジナル。
フランス語が不安だ・・・緋アリはアニメしか見たことないから・・・大丈夫かな・・・?
それと本作品は、銀河英雄伝説及び進撃の巨人とは一切関係ありませよ~
誤字脱字の報告は、感想にて御願いします。
そして、次回はスペースオペラと民族浄化・・・になるかな・・・?
では、この辺で。