復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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これは管理局アンチになってしまうな・・・(小並感


遠征編
サザーランドの戦い 前半


 時空管理局名、第88管理外世界、他の勢力の共通名、戦国ワールド。

 魔法を主力とする次元管理局が付けた管理外世界とは、他の世界への航行技術を持たない世界を示す意味であったが、今はその意味はなさなくなった。

 初めて見付けた管理局はこの世界の文明を持つ者達は宇宙航行が限界であり、別の世界への航行技術を到底持つことがないと判断して”管理外世界”と名付けた。

 

 その第88管理外世界では、今確認できるだけで北、西、東、南、中央の星系に多数の惑星が確認できる。

 五つの星系を束ねていた統合政府の崩壊に基づき惑星一つ一つが国家として名乗りを上げ、日本の天下統一争奪戦となった戦国時代と、混乱状態のアフリカと同じく戦乱の時代となっていたが、管理局は高みの見物を決め、何の干渉をすることなく戦乱の時代を安全地帯から眺めていた。

 だが、20年前に起きた次元震災の影響下により、その3年後からは初めて管理局の寮内に同等、否、さらに上回る次元航行技術を持つ統合連邦と呼ばれる巨大な勢力が入り込んだ。

 

 直ぐさま管理局は領土不可侵入した不届き者を排除すべく、艦隊を差し向けたが、戦略・戦術・経験に勝る統合連邦遠征調査艦隊の前では惨敗であった。連邦に対抗してか、惑星同盟も管理局領内へと侵攻を開始する。

 無論、管理局も艦隊を侵入してきた同盟軍艦隊に差し向け、対応に当たったが、結果は連邦と同じく、悲惨たる物である。

 こうして、堂々と先住者である時空管理局から一部の領土を奪い取った連邦、同盟の二つの巨大な勢力は互いに争い合う戦国国家群に対し、武器を与えて自らの勢力に引き入れる。

 その結果、連邦が西側、同盟が東側に別れ、さながら東西冷戦に似た形にはなったが、連邦と同盟は互いに砲火を交え、尚も星系各地で戦闘が続いていることから冷戦とは言い難い物である。

 管理局は北の星系で前哨基地と強固な防御線を拵え、このまま東と西が互いに砲火を交えるのをただ傍観するだけであり、何の干渉もしなかった。

 

 だが、連邦と同盟が第88管理外世界に侵入する前に、先に入り込んだ勢力が存在した。それはワルキューレである。この勢力は次元震災が起こる前から来ており、南の星系に腰を下ろし、惑星開拓に励んでいた。

 これと言った行動も起こさず、管理局は気付かず終いであったが、ようやく存在に気付いたのは二つの巨大な勢力に敗れた後であった。

 八つ当たりでもするかのように、管理局はワルキューレに第88管理外世界から即時撤収を勧告したが、ワルキューレ側はこれを拒否、管理局は攻撃艦隊を送り込んだが、二つの巨大な勢力とは違って技術力は劣るが、魔法は管理局と同等であり、戦略と戦術を持って撃退に成功した。

 三度の敗北により、管理局は第88管理外世界を手放そうと考えるが、大多数の反対意見で一部の部隊が留まることとなった。

 ワルキューレが居座る南の星系にも、連邦・同盟の勢力の危険が及んできた為、絶対防衛線と強力な大量破壊兵器を搭載した宇宙要塞アレスタントを築き上げ、侵略に対しては抵抗の意思を見せた。

 

 さて、話を戻して、時はマリがアリア達の世界で活動中の時間へと遡る。

 彼女達がその世界へ行った直後、時空管理局の様々な次元航行艦艇二五〇隻以上の大艦隊が、ワルキューレの勢力圏内のど真ん中にある訓練・演習目的で運用されている惑星サザーランド圏内へ侵入したのだ。

 当然ながら敵対勢力の大艦隊が自分等の勢力圏内のど真ん中に出現し、近場の勢力圏内にある自分等の星を目指しているなど、信じられない。

 

『コメット、レーダーの故障じゃないのか?何故、絶対防衛ラインを抜けて二百五十隻が我々の勢力内へと入り込むなど不可能だ。警戒ラインに入った時点で報告があるはずだ』

 

「ですが・・・目の前にホントに居るのです。私と僚艦も含め、この艦の乗員全員が見ています。彼等の目的地はサザーランドです、映像をそちらへ送信します」

 

 管理局の大艦隊を監視する二隻の全長95m級のフリゲート艦の内一隻のブリッジにて、艦長が目の前の画面に映る上官へ報告するが、当然ながら信じる筈がない。証拠を示すべく、灰色の制服を着た艦長は航海士に録音した映像を送信するよう指示する。

 

「クヒョン上等航海士、本部に映像を中継しろ」

 

承知しました(アイアイサー)艦長(キャプテン)

 

 航海士は指示されたとおり、機器を慣れた手付きで操作し、映像を上官の居る場所へ中継した。

 

「キャプテン、中継しました」

 

「ご苦労。どうです?私の言ったとおりでしょう?」

 

『演習用の標的艦じゃないのか?呼び出してみろ、コード3-4-9だ』

 

「はっ。通信士、呼び出せ。コード3-4-9だ」

 

 映像を見ても上官は信用せず、呼び出しで確認しろと命令してきた。その指示に応じた艦長は、通信士に上官の命令を伝達した。指示に従った通信士はコードを入れて呼び出してみたが、応答はない。

 

「応答ありません・・・」

 

『管理局だ!警告して追い返せ!応じなければ威嚇射撃だ!!』

 

「はっ、大将閣下!マイクを持ってこい!」

 

 ようやく信じたと思った艦長は部下にマイクを持ってこさせ、それを手にして警告を行った。

 

『こちらワルキューレ宇宙軍第90パトロール艦隊傘下の第4分艦隊のオリビア・ファインズ中佐だ!貴官等は重大な領土侵犯を行っている。直ちに次元航行を行い、貴官等の領土内へ帰投せよ。応答がない場合は警告射撃を行う』

 

 暫く待って、反応を確かめてみたが、管理局側は何の反応も示さなかったので、威嚇射撃を命令する。

 

「砲術長、威嚇射撃だ。ミサイルを使え。信管を調節して、ど真ん中で爆発させ、火薬嫌いな奴らを驚かしてやれ!」

 

「アイアイサー!ミサイルだ、時限信管にセット、相手に当てるなよ」

 

『警告射撃を行う。警告に応じなかった場合は、貴官等を敵と見なし、攻撃する』

 

 艦長が警告を行った後、威嚇射撃のためのミサイルが発射された。ミサイルは管理局の大船団の真ん中に飛んでいき、一定時間後に爆発する。彼等にとっては単なる威嚇射撃であったようだが、管理局はこれを攻撃と見なした。

 

「こ、攻撃だ!反撃だ!反撃しろ!!」

 

 艦隊の提督である部隊長がミサイルの爆発に驚き、攻撃と勘違いして反撃を命じた。二百五十隻からなる艦船の凄まじい弾幕が二隻のフリゲートを襲う。

 

「て、敵艦隊!反撃してきました!!」

 

「か、回避!!」

 

 索敵手が直ぐさま報告してきたが、回避が間に合うはずもなく、二隻のフリゲートは宇宙の塵となった。

 通信が途切れた事により、直ちに攻撃目標にされたサザーランドに駐在する再編成中の宇宙軍第102艦隊分艦隊二百隻と各勢力圏内に再編成目的で駐屯する同艦隊所属の八百隻の分艦隊、絶対防衛線からピーチ・グラフム・ロデリオン宇宙軍中将率いる千五百隻の討伐艦隊が出動した。

 まず、時空管理局の大艦隊と初めに接触したのは最も近い勢力範囲の惑星から来た空母などの機動戦力を持たない戦艦や巡洋艦、駆逐艦で編成された三百隻からなる火力重視の分艦隊だった。

 火力重視の分艦隊の後ろからは、サザーランドから出て来た空母、軽空母を持つ二百隻以上の機動分艦隊だ。

 

「戦争を知らん腰抜け共目が!我らの領内に忍び込んだことを後悔させてやる!攻撃機発進!!」

 

「了解。第一次攻撃隊、発艦!」

 

 分艦隊の長から命令で、全長1000mはある大型空母や各空母、軽空母から、大多数の対艦ミサイルを搭載した攻撃機が発進する。その数は二千機超え、宇宙を海とするなら魚の群れのようだ。艦載機の大群と三百隻の艦隊が管理局の二百五十隻の艦艇に襲い掛かかる。

 圧倒的勝利はワルキューレ側と思われたが、予想は裏切られた。

 

「敵戦闘艦艇から強力な魔力反応確認!」

 

 索敵手からの直ぐに報告を聞いた提督は、指令を出す。

 

「いかん、奴らの高出力魔道砲だ!直ぐに第一次攻撃隊を・・・!」

 

 指示を出したが、艦載機部隊の退避は間に合わず、強力なビーム攻撃を受け、強烈な閃光がした後、先行した艦隊諸共艦載機部隊は宇宙のデブリとなった。

 

「間に合わなかったか・・・!全艦、サザーランドまで後退。機雷を撒けるなら撒いておけ。戦艦は長距離砲撃をしつつ後退だ。衛星軌道上で地上からの支援を受け、交戦しつつ、味方の増援艦隊と本隊である討伐艦隊を待つ。早くあの大量破壊兵器の射線場から後退しろ、我々もデブリにされるぞ」

 

 アルカンシェルと呼ばれる管理局の大量破壊兵器の威力を見て、やや恐怖したが、臆することなく後退の指示を出す。艦隊はサザーランドまで後退し、600m級の戦艦が主砲からビームを撃ちつつ後退する。

 数の優位があると察した管理局の艦隊は、ワルキューレの艦隊を追って前進してくる。機雷を撒きつつ後退している為、先行した複数の管理局の艦が撃沈したり、大破したりしたが、砲撃して機雷を処分しながらも前進を諦めない。後方からもワルキューレの艦隊が集まってきたが、アルカンシェルの火力の前に損害を出す。

 しかし、彼等は諦めず、再編成を行って追撃を続行する。

 

「奴ら目、しつこいぞ!火薬が恐くないのか?」

 

 艦隊の内一隻の巡洋艦の艦長が執念深く追ってくる管理局の艦隊を見て、驚きの声を上げた。遂に艦隊は惑星サザーランド衛星軌道上へ到達し、予め集結していた第102艦隊所属の分艦隊と合流し、艦艇数は四百隻に達し、防衛の陣形を取っていた。

 無論、次元航行艦船に搭載されているアルカンシェルで薙ぎ払われる可能性があるので、乱戦覚悟で突撃する構えを行う。空母、軽空母から様々な機動兵器を含めた艦載機を出しつつ、数による殲滅を試みようとしている時に、サザーランドから全長20m程の迎撃機(インターセプター)が複数出て来た。

そ のまま管理局の艦隊に突っ込み、交戦状態となる。他にも、集結してきた艦隊とも交戦状態に入るが、管理局は損害が出ても前進を止めない。

 

「奴ら・・・何たってこれ程しつこく迫ってくるんだ・・・!」

 

 駆逐艦の艦長がサザーランドから来る迎撃機や弾道ミサイル等、艦隊のミサイル攻撃に晒されながらも突っ込んでくるブリッジから見える管理局の艦隊を見て、恐れ戦く。こちらの射程距離にまで管理局の艦隊が迫ってきた為、艦隊はアルカンシェルを撃たれる前に、敵艦隊に突っ込んだ。

 

「消し炭にされるぞ!敵艦隊に突撃!乱戦状態に持ち込め!!」

 

 提督の指示で、一部の護衛艦を残し、空母や軽空母を除く戦闘艦が管理局の艦隊に突撃した。もちろん、戦争、ましてや艦隊戦などやったことが無い管理局は突っ込んできた敵の艦隊に対処できるはずもなく、乱戦状態に持ち込まれる。

 

「敵艦隊、我が艦隊に・・・!あぁ!アルカンシェル、敵と味方の艦艇が入り乱れて撃てません!!」

 

「質量兵器を扱う野蛮人共目が!なんとしてもあの惑星に降下するんだ!」

 

 管理局艦隊の旗艦のブリッジにて、艦隊の提督が無理難題の命令を出した。

 

 

 

 その頃、軌道上で大規模な艦隊戦が行われている惑星サザーランド内の港町にて、今行われている艦隊戦から、開拓民の住民を守るべく、訓練を終えたばかりの新兵達まで動員した避難活動が行われていた。

 

「急いでください。なるべく荷物は少なくして」

 

 ブロディヘルメットを被り、第二次世界大戦下の英連邦軍のバトルドレスと呼ばれる戦闘服を纏った何人かの女性兵士が、持てるだけの荷物を持った大多数の避難民を誘導する。

 他にも同じ服装を纏い、見合った装備を身に着け、リーエンフィールドNo4小銃やステン短機関銃、ブレン軽機関銃を持った女性兵士も何人か居る。

 彼女等の盾となる装甲車両は、英連邦の傘下国家の戦車のラム巡航戦車やセンチネル巡航戦車、クルセイダー巡航戦車を対空戦車に改造したクルセイダー対空戦車、アメリカから給与されたM3スチュアート軽戦車、M3リー中戦車、M5ハーフトラック、M16対空自走砲が数量ほど。

 近くの港には、戦中に英海軍で運用されたC級駆逐艦が何隻かが、避難民を乗せている輸送船を守っている。

 空には同じく戦中に英空軍に運用された単発機のハリケーン、スピットファイア戦闘機、双発機のモスキートが飛び回り、町の各所ではヴィッカーズ水冷式重機関銃、ボフォース対空砲、QF3.7インチ高射砲が配置されていた。

 とてもこの装備では、管理局の武装局員と呼ばれる魔法を扱う戦闘員では相手にならないだろう。その様子を遠くから、大戦中のドイツ軍の10.5㎝高射砲を設置し終えた少年少女達が眺めていた。

 

「あいつ等も惨めだな・・・あんな演習用や映画の撮影にしかならねぇ物を持ち込んで迎撃態勢だなんて・・・」

 

 双眼鏡で、市街地で行われている避難活動と配置された古い対空火器を見て、背丈170㎝程のエメラルドグリーンの瞳を持つ白人の少年は呟く。

 

「仕方ないよ。ミサイルや最新式の火器はみんな前線部隊が持って行っちゃったんだから・・・」

 

 背丈が163㎝と白人の少年が訳を語った。

 この二人の少年の名は、エッケハルト・グリルパルツァーにアンゼルム・バルシュミーデ。長身な黒髪の少年がエッケハルトで、金髪の少年がアンゼルムだ。

 彼等の他にはクンツ、トビアス、ハンス、クラウス、アロイジア、ドーリス、黄色人の見田、和田尾、真子の9名が居る。少年少女等が肩にぶら下げているのは大戦中のドイツ軍で使われたkar98k小銃やMP40短機関銃だ。

 他にも高射砲が設置されており、エッケハルト等と同じ服装をして装備を身に着けた少年少女等が確認できる。彼等は特別機動兵と呼ばれるワルキューレの装甲擲弾兵や突撃猟兵と呼ばれる最強兵科の一つである。3年もの長い訓練を終え、特殊な技術を身に着けたエキスパートな者達だ。

 その特殊な技術を簡単に言えば、専用装備を身に着け、ターザンやサーカスのブランコ渡りのような立体的な機動を行う物である。管理局の武装局員に対応できる兵力であるが、彼等特別機動兵の配置を見る限り、サザーランドに居る司令官は訓練を終えたばかりの最強兵科の新兵達を失いたくないようだ。

 

「あぁ?なんだ、あれ?」

 

 ハンスが空に何かが浮いているのを見付けた。それに釣られて全員が空を見上げ、双眼鏡を持つ高射砲の照準手が見る。

 

「あれは・・・!見たこともない艦・・・敵だ・・・!」

 

「なっ!?もう突破されたのかよ!報告じゃあ、乱戦状態に持ち込んでいるんじゃなかったのか!?」

 

 高射砲の砲兵達が慌て始めた為、エッケハルト達は少し不安になってきた。直ぐに砲手がエッケハルト等、特別機動兵の新兵達に告げる。

 

「お前等、後方陣地まで戻れ。教導部隊と共に敵を迎え撃て」

 

「えっ、でも、俺達・・・」

 

「良いから行け!ここは俺達だけで十分だ!」

 

 エッケハルト達はこの場に留まり、共に戦おうとしたが、激しく怒鳴られ、渋々、言われた通り、やって来た陣地へと戻った。

 

「おいおい、あいつ等・・・俺達をまるで足手纏いみたいに!」

 

「仕方ないよ。僕達は経験の浅い新兵だし・・・パニックって貰っては困るだろうし・・・」

 

 10.5㎝高射砲で狙いを付ける砲兵達を見て、帰らされたクンツが文句をたれるが、アンゼルムは砲兵達が思っていたことを告げた。

 

「クソッ!これじゃあ、いつまで経っても・・・」

 

 拳を強く握り、自分等を除け物扱いされて悔しがるエッケハルトが言い終える前に、高射砲の砲声が彼等の耳に入ってきた。

 

「近いな、早く戻ろう!」

 

 両耳を塞いだ見田が、街や近くの対空砲や高射砲の砲声には負けないような声量で伝え、一同は直ぐに陣地へ急いで戻った。エッケハルトが振り返ってみれば、管理局の大型次元航行艦船が街の上空に到達し、地上からの激しい弾幕を受けていた。地上からの攻撃は、余り意味はなく、艦船から出て来た武装局員に次々と制圧され、次々と弾幕が消えていく。

 空のハリケーンやスピット、モスキートはハエの如く落とされ、港のC級駆逐艦も次々と撃沈され、数分後には、街はほぼ完全に制圧された。未だに街からは銃声が響いているが、徐々に静かになっていき、やがては周囲にある対空砲や高射砲の砲声で掻き消される。

 対空ミサイルなどが艦船に向けて何発か飛んでいくが、迎撃されてしまう。迎撃機や海から来た艦艇など尚更のこと、地上から来る部隊も反撃を受け、壊滅状態になる。

 

「クソっ!滅茶苦茶じゃねぇか!!二級戦装備じゃまるで歯が立たないぞ!」

 

 この惨状を目撃したエッケハルトは黙って入られず、戦場へと向かおうとするが、仲間達に止められる。

 

「離せ!」

 

「よせ!お前が言っても何ら変わりないぞ!!」

 

 クンツの言葉にエッケハルトはそれでも向かおうとしたが、持ち場を離れて配送する街にいた残存部隊の有様を見て、今の自分では無駄死にだと分かってしまった。

 

「装備が無いんだ!ちゃんと攻勢に機会は考えているはずだよ。今は戻って、装備の受理を」

 

「チッ、分かったよ!」

 

 アンゼルムから説得を受け、エッケハルトは仲間と同じ方向へと走った。道中、兵員を乗せている最中のトラックを見付けたので、彼等は有り難く乗せて貰うことにした。

 

「街に居た部隊はもう壊滅だな」

 

「住民がどんな目に遭わされているか・・・」

 

「えっ、時空管理局は比較的な蛮行行為はしない組織じゃ・・・」

 

 和田尾が黒煙の上がる街を見て言った後、トビアスが放った言葉にアンゼルムが異議を唱えた。

 

「馬鹿、あいつ等だって人間でしょ。絶対胸くそ悪いことしてるに決まってるじゃない」

 

 隣にいるアロイジアの言い放った言葉に、アンゼルムは黒煙が上がる街を見た。「あの街では武装局員達は職務を全うしているのか?それとも欲望のままに暴れ回り、蛮行行為に及んでいるのか?」そんな考えが彼の脳内を支配していた。

 エッケハルトの方は、揺れるに台の上で手摺りに掴みながら街を睨み付けるように眺めている。数十分もすると、彼等は元から来た後方陣地に戻り、さらに合流した同期の新兵達と共に、後方陣地の予備兵力として配置された。

 無論、管理局からの攻撃を受けている場所はエッケハルト等が居た港町だけと限ったことではない。港町を含む約九カ所が攻撃を受けており、先程陥落した港町も含めて内七カ所が陥落、一カ所の要塞だけしか撃退に成功していなかった。そして、今戦いにおいて最大の悲劇が起こることとなる。

 大規模な市街地を攻撃した管理局の大型次元航行艦船三隻と言う編成の部隊は、市街地各所から来る激しい攻撃を受け、部隊長はパニックを起こしていた。

 

「市街地全土から攻撃を受けております!」

 

「周囲から敵質量兵器多数接近!!」

 

「うわぁ・・・うわぁ・・・!」

 

 大規模な戦闘は宇宙にて行われていたが、今度は違った形の戦闘であった為、先の戦闘でかなり疲弊しており、もはや部隊長に冷静な判断など出来るはずもなかった。

部隊長はサザーランドに降りれば対した抵抗はないと楽観視していたらしい。

 恐慌状態に陥った部隊長は周囲の脅威を排除しようという考えに囚われ、市街地にはまだ避難民が多数残されているにも関わらず、揺れる船内の中で市街地に向けての無差別攻撃を命じた。

 

「う、撃て・・・!下に・・・!」

 

「はっ?今なんと!?」

 

「僚艦とも撃つのだ・・・!市街地に・・・!」

 

「少将、市街地にはまだ住民が・・・!」

 

 副官の反対を押し切り、部隊長は強行しようとする。

 

「黙れっ!脅威の排除を優先だ!!」

 

 正気を失ったかのような目付きで告げた為、部下達は止めようという考えもあったが、状況が状況で、敵の正確な位置などほぼ特定が出来ておらず、もうこの手しか思い付かなかった。

 直ぐにアルカンシェルを下に広がる市街地に向けて発射した。

 

「正気か!?」

 

 攻撃を受け、四方八方から飛んでくる対空ミサイルや対艦ミサイルの迎撃に負われていた僚艦の艦長が正気の沙汰でもない攻撃を敢行する部隊旗艦の有様を見て、部隊長の正気を疑う。

 他二隻の僚艦が止められる間もなく、アルカンシェルが発射された。発射された光が市街中心部に命中すると、強烈な閃光が市街地を包み込む。光が晴れる頃には、市街地は瓦礫の山と化した。

 

「せ、生体反応無し・・・!民間人諸共敵は全滅です・・・周囲の敵は撤退しました」

 

 索敵手からの報告に、部隊長はホッと息を撫で下ろし、椅子に腰を下ろす。

 

「報告は武装した敵の戦闘員が市街地全土に居たことにしろ、民間人など一人も居なかったとな・・・」

 

 部隊長からの指示に、上層部に民間人ごと敵戦力を排除した事を責められたくない部隊長と同じ気持ちの部下達は従うことにした。無論、咎められずに済むのは「勝てば」の話である。

 管理局はワルキューレの勢力範囲のど真ん中で戦闘を行っており、仮にサザーランドの戦いにおいて勝ったとしても、直ぐにワルキューレの奪還部隊が向かってくるだろう。

 時空管理局にとってはこの戦いが数少ない新世紀が始まってから大規模であり、そればかりか兵員こと局員の実戦経験がほぼ皆無だ。最初の攻撃で既に疲労が溜まっており、宇宙では休む暇もなく数で勝るワルキューレの宇宙艦隊の攻撃を受け続けている。

 地上で勝っても、宇宙がこの有様ではもはや勝利するなど奇跡でも起こらない限り無理だろう。かくして、後にサザーランドの戦いと呼ばれる管理局とワルキューレとの地上と宇宙の一ヶ月以上に及ぶ大規模な戦闘が開始された。

 

 

 

 一ヶ月後、戦いの終わりを告げる女神と表すべきかどうか分からない女がサザーランドへ舞い降りた。

 

「大丈夫?神経が何本か繋がっていないみたいだけど・・・」

 

 サザーランドへ降り立つ輸送機の船内にて、シューベリアが現行英陸軍の歩兵装備のような物を纏ったマリの左腕を掴みながら問う。

 

「大丈夫よ。これまで何本も斬られたり、引っこ抜かれたり、潰されたりしてるんだから」

 

 右手にドイツのG36用グレネードランチャーと互角性を持つイギリスのブルパップライフルL85A2を握りながら、シューベリアの手を払う。マリとシューベリアの他には、カナダ製AR15であるC7A1突撃銃を持つ、現行のカナダ軍のような装備をした複数の兵士達が居る。

 年齢は隊長の黒人女性以外20代ほどであり、実戦経験は一回か二回ほどの顔付きだ。左手を何回か握って感覚を確かめていると、輸送機のパイロットが知らせてくる。

 

「大尉。もうすぐ着陸地点です」

 

「分かったわ。全員、良く聞いて。最初に説明したとおり歩兵連隊と合流、他の部隊も来るから。連隊と共に作戦行動よ。英雄になろうと出しゃばらない限り死にはしないわ、兎に角言われたとおりにするのよ。分かった?」

 

 大尉が立ち上がり、左右の座席に座るマリとシューベリアも含めた部下達に告げる。

 

「そこの二人は・・・取り敢えず、私の指示に従って」

 

 マリとシューベリアの存在に気付いた大尉は、ヘルメットを外しから、ついで代わりに言った。ヘルメットを被り直した大尉が、席に戻ろうとした瞬間、機内が大きく揺れた。直ぐに大尉がパイロットに問う。

 

「何事!?着陸地点にはまだ敵が迫ってない筈よ!」

 

「多分、敵の斥候部隊に攻撃されているかと!」

 

「なら着陸地点を変更しなさい!」

 

 報告したパイロットへ、大尉は直ぐに指示を出す。だが、パイロットがハンドルを切るよりも前に期待に穴が開いた。マリの目の前にいた新兵の左脚が吹き飛び、血飛沫が彼女とシューベリアを汚した。

 

「うわぁぁぁぁぁ!俺の脚が!脚がぁ!!」

 

 無くなった左脚を抑えながら悶え苦しむ新兵を見て、マリとシューベリア、大尉を除く他の者達は恐怖する。次いで他の者達も貫通してきた魔力の球で身体を貫かれ、四方を裂かれ、頭を吹き飛ばされ、死んでゆく。

 船内が内臓や脳の一部、腕や脚など血で真っ赤に染まっていく中、シューベリアは不老不死でないマリを庇うように覆い被さる。

 

「被害甚大!墜落、墜落します!!」

 

 報告を終えたと共にパイロットは胸に大きな穴を開けて絶命し、コントロールを失った輸送機は、大きく回転しながら墜落した。

 

「うぅ・・・ここは・・・?」

 

 マリが目を覚ますと、久々に虚無の世界へ来ていた。周囲を見渡し、幾つもの細切れた建造物が浮いている。

 

「久し振りに来たわね・・・」

 

 特に変わっていない光景を見て一人呟く。「暫くすれば、アウトサイダーが出て来る」と思ったマリは、見通しの良い場所へと向かった。その場所へ辿り着いた瞬間、案の定、死人のような肌の男性青年の容姿を持つアウトサイダーが何処からともなく出て来た。

 

「やぁ、マリ。何日ぶりの虚無の世界だな」

 

 腕組みをしながら挨拶をするアウトサイダーに対し、マリは黙ったままだった。

 

「コルヴォと同様、寡黙を貫くか・・・お前はもう少し彼とは違って口数が多いと期待していたが、この際はどうでも良い。私とここで再会するまでに能力を三つ取り戻したようだが、今はそんな所ではないようだ」

 

 今、自分が置かれている状況をアウトサイダーが告げる。

 

「ここで私と話している間に死なれては困る。目を覚まさせる前に、次のお前の能力がある世界は、インフィニット・ストラトスと呼ばれる女性のみにしか扱えない兵器が支配する女尊男卑の世界だ。そこにはお前の懐かしい物がある。今の戦いを終わらせるか、その次の戦いを終わらせてから行くのもお前の自由だ」

 

 アウトサイダーが言い終えれば、突然視界が真っ暗になる。次に目覚めた時は、銃声や断末魔が聞こえる戦場だった。

 

「あぁ、起きた・・・!」

 

 先に気付いたのはシューベリアだ。周りを見渡し、周囲がどのような状況なのかを確認する。

 目に見えているのはシューベリアと、輸送機の残骸を遮蔽物代わりにして反撃している兵士、カナダ製FN MAG軽機関銃であるC6を撃ち続ける兵士と、数発撃った後、シューベリアの知らせでこちらに来る大尉だ。

 

「どうやら起きたみたいね」

 

 立ち上がったマリに、大尉は近くに立て掛けてあったL85A2を渡した。重い銃を受け取ったマリは、ストックの近くにある弾倉を引き抜き、重さで残弾を確認し、再び差し込むと、身を屈めながら近くで銃撃戦を行っている兵士の元へ向かった。




なのは二次で、管理局が敵にされていると同じ様な扱い・・・

あの場でビッテンフェルトが居れば、管理局の艦隊は一撃で宇宙の塵となっていますわ・・・

~今週の中断メッセージ~

カナダ製AR-15やFN MAGについて簡単な説明。

C7A1
カナダのM16A3のライセンス生産品。カナダ軍正式採用モデル。
A3と同じくM203グレネードランチャーが装着できる。

C6 GPMG
カナダのFN MAGのカナダ軍正式採用モデル。
特に変わった事はなく、採用国家と同じ。
一般的に、一個ライフル小隊に一挺が割り当てられている。
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