復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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宇宙戦終結は後半にて・・・


サザーランドの戦い 中編

 兵士の隣に着いたマリは、グレネードランチャー付きL85ブルパップライフルを構え、兵士が撃っている方向を見る。隠れたり出たりして、銃らしき物を撃っている人影を確認すると、自分等が来ている物とは違う迷彩効果も無い動きやすい服装の敵らしき人物が見えた。照準器を覗いて、数発ほど飛び出した敵らしき人物へ向けて撃った。

 飛び出した敵こと局員は頭に二発ほど穴を開け、後頭部から脳の一部を吐き出しながら倒れた。一人倒しただけで終わるはずもなく、こちらの手薄な方向から、何名かが杖や銃らしき物を持って突っ込んでくる。

 

「敵十六名、こちらに接近!」

 

「機関銃、直ぐに回って!」

 

「は、はい!」

 

 部下からの知らせに、大尉は即座に指示を出し、C6軽機関銃を持った兵士を向かわせる。二脚を立て、ストックに左手を置き、突っ込んでくる局員達に向けて他のC7A1ライフルを持つ兵士達と共に撃ち始めた。

 局員達は掩護射撃を受けているが、弾幕を避けることも出来ず、数十発の弾丸を受けて次々と倒れていく。一部四方が引き裂かれ、泣き叫ぶ局員達も居た。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 突撃してきた生き残りの局員が居たが、興奮状態の兵士達は容赦なく背中を向ける局員達に銃弾を浴びせた。最後の一人が背中に銃弾を受けて倒れると、立っている局員は一人も居なくなった。後に見えるのは、遮蔽物に隠れながら撃ってくる局員だけだ。

 空を飛んでいる局員は皆ワルキューレが飛ばしている戦闘機の相手に手を焼いており、暫くの間はこちらに攻撃を浴びせてくる気配はない。マリはグレネードランチャーの照準器を立て、引き金に左手の指を入れ込むと、敵が多い遮蔽物に向けて撃った。

 強い衝撃が右肩を襲い、砲口から榴弾が放たれ、局員達が多く隠れる遮蔽物へと飛んでいく。榴弾が命中し、当たった遮蔽物から局員が吹っ飛ぶのが見えた。四方のない死体も一緒に飛んでくるのが見え、同時に断末魔や悶え苦しむ声が耳に入ってくるのが分かる。

 多数の敵の排除を確認したマリは、照準器を仕舞い、銃撃を再開した。それから物の数分後、戦車の走行音が耳に入り、後方の森林から複数のM5軽戦車やM4中戦車が随伴歩兵と共に出て来た。

 

「味方だ!」

 

 森林から逃げるように出て来た局員達を機銃で薙ぎ払い、時には戦車砲で吹き飛ばして挽肉に変え、大尉と配下の兵士達を勇気づける。脚を失いながらも逃げる局員に対しては、随伴歩兵がリーエンフィールドNo4小銃で頭を撃ち抜いて、死体を戦車の進行方向から二人がかりで退かす。

 戦車や多数の歩兵が現れたことで、マリ達を攻撃していた局員達は撤退し始める。撤退とは言え、まともな統制は取れておらず、もはや逃げているようにしか見えなかった。そんな局員達に対し、やって来た援軍は容赦なく戦車砲や搭載機銃を浴びせ、無惨な姿へと変えていく。

 大尉はやって来た援軍の部隊長に会うため、小銃を抱えた童顔の女性兵士を捕まえ、部隊長の居場所を問う。

 

「あんた達の隊長は何処?」

 

「向こうにいます」

 

 兵士が指を指した方向を見ると、M4A2シャーマン中戦車のキューボラから指示を出しているベレー帽を被った小綺麗な女性士官が居た。

 

「ありがとう」

 

 礼を言った後、大尉は兵士を離し、部隊長が乗る戦車の元へと歩み寄る。マリとシューベリアも情報を得ようと彼女についていく。

 

「隊長は貴方?」

 

「そうだけど、何?」

 

 戦車の元へ辿り着いた大尉は、戦車に乗り上げている部下から報告を聞いている若い女性部隊長に問う。直ぐに答えが返ってきて、彼女は自分より年下な部隊長に次なる質問を投げかけた。

 

「合流地点はここだった筈だけど、連隊は何処へ行ったの?」

 

「連隊は敵の襲撃を受けて一時後退して、向こうの開けた場所を合流地点にしたわ。今からそっちへ行く予定なの」

 

 そう答えた若い部隊長は砲塔の装甲を叩き、局員達が逃げ去った方向へと向かう。後続の部隊も来る中、大尉は二人の肩を叩いて一緒に向かうことを告げる。

 

「聞いたとおり、平原が合流地点に変わったわ。取り敢えず、あんた等も一緒に来てね」

 

 二人に告げ、大尉は吊していた銃を持つと、部下達が待つ場所へと戻っていった。マリとシューベリアは平原に向かう部隊と一緒に向かうことにする。五分後には平原の長い塹壕へと到着し、その中に飛び込み、同じく塹壕の中へと入っている味方の兵士達を確認した。

 まだ顔に幼さが残る兵士や、徴兵されたばかりの若い兵士達、空挺兵、専用装備を与えられていない特別機動歩兵が突撃の合図を待っていた。突撃を待つ兵士達の中にはエッケハルト等の姿もあり、前の世界で自分を助けた東洋人の少女の姿もあった。

 

「ねぇ、あの()・・・」

 

「そう言えばあいつ等もここに来てたわね・・・」

 

 この星に降り立つ前に、別の輸送船に乗っていた特別機動歩兵の中に、彼女の姿があったことを思い出した。

 名前はミサカ・サキ、黒髪黒目の列記とした東洋人の少女であり、マリの記憶の中ではルリが助けた少女の一人らしく、ミサカはその少女が成長した姿なのだと思う。どうやら、エッケハルト等の同期であったらしく、彼女だけ装備を与えられていることを羨ましがっているように見えた。

 さらに、遙か後方から多数の砲声が聞こえ、上空をランカスター大型双発爆撃機がハリケーンやタイフーンと共に編隊を組んで、砲撃されている管理局が支配する地域へと飛び去っていく。

 双眼鏡を取り出し、爆撃へと向かった大型爆撃機と戦闘爆撃機を見てみると、飛んでいる魔道士に何機か撃墜されていた。

 

「あっさりとやられていくわね・・・」

 

 双眼鏡からは砲撃が防御魔法で防がれたり、折角の爆撃も無意味になろうとしていたが、局員達はかなり疲弊していたらしく、魔法が解けて、何名か爆弾で死んでいた。砲撃も防ぎきれなくなり、着弾した場所で局員が吹っ飛ぶのが見える。砲声が途絶えると、初老の高級将校が散弾銃を抱えて前に出て来た。

 手に抱えられているのは、自分と同じ最新式装備を身に着けている連射できる物とは違って、撃つ度に前座を引いて、空薬莢を排出するポンプアクション式のウェンチェスターM1897であり、被っているヘルメットは第二次世界大戦で米軍においてしようされたM1ヘルメットだ。

 塹壕に入っている全員を見渡して一息つくと、拡声器を持って口に当てて士気を高めるための演説を始めた。

 

『諸君!どういう経緯で来たか知らんが、北に引き籠もっていた魔法至上主義のアホ共がこの惑星に攻めてきた!だが、我々の奮闘で一ヶ月間耐えきることが出来た。連中は戦争なんぞやったこともないから長期戦でかなり疲弊し、今攻撃すれば我々の勝利は確定だ!宇宙でも、かなり長い戦闘で疲弊しておる!完全勝利確定じゃ!火薬の臭いや刃物が大嫌いな連中に”質量兵器”の便利さを教えてやれ!!』

 

 演説を終えると、腰に下げてある銃剣の鞘からM1917銃剣を抜き、取り付ける場所に取手の部分を付けて着剣した。これを見た将校や部隊指揮官は、指揮下の部隊に着剣を命ずる。

 

「総員着剣せよ!!」

 

「着剣!!」

 

 着剣命令が続々と出る中、エッケハルト等は困惑する。

 

「おい、やばい魔法を放ってくる連中に銃剣突撃するのかよ!?」

 

「とても正気の沙汰じゃない!」

 

「小僧共!お前等も銃に銃剣を付けろ!付けられない場合は、そのままワシについてこい!ワハハハ!!」

 

 髭面の幾度も戦場を駆け抜けてきた大男が笑いながら初の実戦となる特別機動兵等に掛けた。銃剣を持っている兵士達が続々と着剣する中、マリは着剣をしなかった。

 彼女と同じく、銃剣を持たない者達は塹壕から頭を出し、突撃の合図を待つ。全員の着剣が終わると、塹壕から将軍と同じ年齢ほどの士官が出て来て、将軍に告げる。

 

「総員、着剣が完了しました」

 

「よし!突撃だ!!」

 

 報告を受けた将軍が叫ぶと、その声を聞いた将校は呼子笛(ホイッスル)を口に咥えて吹いた。凄まじい音が鳴り響いた後、配下の兵士達が雄叫びを上げながら塹壕から飛び出す。先頭に立って走っているのは将軍であるが、左右から出て来た戦車に追い越されてしまう。

 

「き、来ました!!」

 

「撃てェー!撃てェー!」

 

 接近してくるワルキューレの大軍に対して管理局側の指揮官は恐怖し、十分な距離に引き付けぬまま攻撃を命じた。凄まじい弾幕が放たれるが、全く距離は届いていない。

 

「馬鹿たれ目、そう言うときはもっと惹き付けるんじゃい!」

 

 先頭に立って走る将軍は、十分な距離に惹き付けずに射撃を命じた敵の指揮官を叱る。小銃の射程距離まで近付くと、ライフルの類を持つ兵士達は走りながら撃ち始めた。

 管理局側に選抜射撃手(マークスマン)狙撃手(スナイパー)が居たらしく、走っている兵士の頭や四方が吹き飛んだ。マリの隣で走っていたリーエンフィールドNo4を持った女性兵士の胸に大きな穴が開き、平原の上に倒れた。

 狙撃銃のようなデバイスと呼ばれる魔道端末を持った局員等が手当たり次第に撃っており、周囲に走っていた味方の兵士が次々と頭や四方が引き千切れ、首がもげたりしている。

 陣地に近付いている内に死体が増えていった。戦車は次々と強力なデバイスによる攻撃で大破していき、突撃部隊への遮蔽物を増やしていく。やがて、突撃した大軍は管理局側の陣地に流れ込んだ。

 

「死ね!局員共!!」

 

 最初に辿り着いた将軍は目の前にいた局員を銃剣で突き刺し、引き金を引いて、反動で銃剣を引き抜く。周りにいた局員達は、将軍を殺そうと杖や銃のような形のデバイスを向けるが、将軍に次々と散弾銃で射殺される。

 

「お前達!鈍っとるぞ!!ハハハッ!!」

 

 笑いながら局員達を次々と殺していく将軍を見て、マリとエッケハルト等はやや恐怖を覚える。銃剣で次々と刺して殺し、散弾銃の弾が切れるまで出来るだけ殺し続け、ホルスターから45口径自動拳銃であるコルトガバメントを抜いて、一発で仕留めていく。マリ等もこれに続いてか、周りに見える目立つ服装の局員達に向け、攻撃を仕掛けた。

 兵士達も陣地に殺到して、銃剣で局員達を次々と刺し殺した。デバイスを向ける局員等をマリは次々と撃ち殺し、シューベリアは強力な魔法で局員達を打ちのめす。

 

「おらぁ!」

 

 杖のデバイスを持った局員を殴り倒し、エッケハルトは手に持ったMP40短機関銃の銃を向け、死ぬくらい撃ってトドメを刺した。他の特別機動歩兵の新兵達も次々と局員達を仕留め、訓練の成果を見せる。

 ミサカに関しては、空を飛ぶ局員にフックを発射して局員を剣で突き殺した後、同様に飛んでいる局員にフックを突き刺し、一気に接近して次々と仕留めていく。

 

()ぇ・・・」

 

 一方的な空中戦を行うミサカを見て、エッケハルトは呆然とした。これが隙を見せてしまい、残っている局員に背中を見せてしまった。

 

「このぉ、死ね!」

 

 デバイスから射撃魔法を発射しようとしたが、横からドラムマガジンのM1928A1トンプソン短機関銃を持った老婆の戦車兵が現れ、局員は踊りをするかのように撃たれ続けて倒れた。

 老婆は局員が完全に動かないのを蹴って確認すると、礼を言おうとしたエッケハルトを無視し、背を向けて逃げる局員を撃ちながらこの場を去っていった。

 

「クリア!」

 

 C7A1を構えたままの大尉が局員全員がこの場から逃走した事を確認し、全員に聞こえるよう叫ぶ。何名かが一息ついていたが、将軍は散弾銃の再装填を終えると、追撃する部隊の後へ続く。後続の部隊もやって来て、追撃に加わった。

 

「凄い殺気・・・」

 

「みんな殺気立ってんのよ・・・」

 

 返り血をハンカチで拭き取るシューベリアが呟いたことに、大尉は残弾を確認しながら答える。L85A2の再装填を終えたマリは、新しい弾倉を叩き込んでからボルトを引くと、陣地奥内へと進んでいく後続部隊の後へ続いた。この時、偶然にもエッケハルト等新兵達とミサカが属している部隊と合流した。

 呑気に話し込んでいる暇はなく、市街地へと後続部隊の歩兵と共に進んでいく。辺りを見渡せば、一ヶ月前の戦闘で破壊された戦闘車両と対空砲などの固定兵器の残骸や、墜落した航空機等が見えた。

 それらの兵器を操っていた者の死体がないと言うことは、管理局が回収してことになろう。戦闘で破壊され尽くした市街地の郊外にまで差し掛かると、空中を浮遊していた局員が地面にいるマリ達に向けて攻撃してきた。

 

「クソっ!」

 

 直ぐに遮蔽物となる場所へ身を隠そうとする。その必要はなかったらしく、飛んでいた局員を煙が噴いた単発機のハリケーンが突っ込んできた。局員は避けようとするが、拘束で突っ込んでくるハリケーンを避けることが出来ず、衝突され、高速で回転するプロペラに挽肉にされた。

 血と肉の破片が辺りに飛び散り、飛んできた局員の左腕が新兵等の一人であるロータルに命中した。

 

「衛生兵!」

 

 口から吐血したロータルを支えた同期の新兵が叫ぶ。大尉が全員に周囲を警戒するようハンドサインで伝えた。後続部隊以外、全員が銃を構えて周囲を警戒する中、声を聞きつけた赤十字を付けたブロディヘルメットを被り、右腕に赤十字の腕章を付けた衛生兵がやって来た。

 一人だけではなく、担架を持った四名も一緒に来ている。ロータルを新兵達と共に抱え、担架に乗せると、衛生兵達は急いで野戦病院があろう場所へと戻った。

 

「前進!」

 

 大尉の指示で警戒態勢を解除し、先に向かった部隊の後へ続く。

 通りに十人くらいの分隊規模のリーエンフィールドNo4を持った軽歩兵部隊が入ったことを確認し、後を付いていくと、特殊な銃声が鳴り響き、一人の兵士が地面に膝をついた。兵士の背中から光弾が貫いて絶命する。

 光弾は連続して発射され、女性兵士がバタバタとドミノ倒しのように倒れていく。ある者は腕が引き千切れ、ある者は引き千切れ、無惨な死体が次々と増える。童顔の女性兵士は近くにある遮蔽物に逃げ込んだが、腹が開いて内臓が飛び出しており、壁に凭れながら必死で内臓を戻そうとする。

 

「内臓・・・私の内臓・・・!」

 

 泣きながら必死に戻そうとするが、内臓は全く戻らない。その間に次々と突撃を敢行した兵士達は倒れてゆく。突撃している兵士に気を取られている間に、マリがグレネードランチャーでデバイスを撃っている局員を仕留めようと構える。

 引き金を引くと、榴弾は飛んでいき、爆発音と共に悲鳴が耳に入った。急いで内臓を戻している若い兵士の元へ駆け寄り、続いて出て来る局員達を他の兵士達と共に撃ち始める。一緒に来たシューベリアが内臓を戻している兵士に寄り添い、内臓を戻すのを手伝う。

 隣で銃を構えていたエッケハルトは、無惨な形となった女性兵士等の死体を見て、誰にも居ない場所で嘔吐する。他の新兵達も同様であったが、何人かは失禁しているようだった。後続部隊や戦車の支援もあり、制圧はスムーズに進み、突破できた。

 それと同時に若い兵士の内臓も腹に収まり、傷口はシューベリアの治療魔法で塞がりつつある。完治を待てないため、マリ等は先に進むことにした。

 

「治療が終わってから来なさい」

 

 大尉はシューベリアの肩を叩いてから、自分の部下と新兵達を率いて銃声が激しい市街地へと向かった。進む度に前線から後方へと運び出される負傷兵が増えていき、銃声も途絶えることなく、頭に両手を当てて抵抗の意思を見せていない降伏した局員達が増えていく。

 そればかりか降伏しても撃ち殺された局員の姿もあった。

 前線に到着すると、遠くに次元航行艦船が墜落しているのが見え、空には海上の戦艦や巡洋艦を中心とした艦隊と群がる戦闘機と交戦しているまだ健在の次元航行艦船が見える。

 

「海上の艦隊が注意を引いているようね・・・ちょっとあんた、状況は?」

 

 双眼鏡を取り出して状況を窺う大尉は、指揮を執っている若い前線指揮官にさらに詳しい状況を問う。

 

「えっ?はい、海上の艦隊が管理局の次元航行艦艇を足止めしてます」

 

「それは分かるのよ。今の詳しい状況はどうなの?」

 

「あぁー、残った敵が全てあちらへ集結している為か、抵抗が厳しくて進めません。それで先頭に立った閣下が負傷なされました」

 

 前線指揮官は、葉巻を吸いながら衛生兵から応急処置を受ける血塗れの将軍に手を翳し、大尉に説明した。

 

「そう。じゃあ、この子等の装備ある?」

 

 左手の親指でエッケハルト等の指差し、次に彼等特別機動兵の装備があるかどうか問う。

 

「えっと、取り返した倉庫にあります。部下に案内させます」

 

 前線指揮官はM1A1トンプソン短機関銃を持った部下を呼び出し、エッケハルト等に案内するよう指示する。

 

「ありがとう。じゃあ、私らは突撃するわ」

 

「なら援護します。総員援護射撃!!」

 

 大尉が突撃すると伝えると、遮蔽物に身を隠していた兵士達は各々が持つ銃の残弾を確認し始めた。突撃の準備をする大尉達とマリに、シューベリアとミサカが合流する。

 

「治ったのね」

 

「うん、ちゃんと全部収まった」

 

 銃口を下に下げて様子を伺う大尉がシューベリアに問うと、彼女は血塗れな手をハンカチで拭きながら答える。マリがミサカに目を向けると、彼女は尋常じゃないくらい返り血を浴びていた。左肩には掠り傷らしき物が見え、両手に握る剣は何十人も斬り捨ててきたのか、少し刃こぼれしている。

 少し息を切らしている彼女の状態を見ながら、マリはグレネードランチャーの残弾を確認した。

 

「残弾残り三発・・・装填済みを入れて四発」

 

 残った榴弾の数を確認した後、専用のポーチに仕舞った。ミサカと同じ装備をしたエッケハルト等が来ると、大尉は彼等に指示を出す。

 

「あんた等は、立体機動で上に飛んでいる魔道士を対応して。私らは地上の敵に対応するから」

 

「えっ、俺等これが初なんですよ!立体機動の実戦なんて・・・」

 

 Stg44突撃銃を抱えた新兵等のリーダー格の金髪の青年が異議を唱えた。だが、一喝されてしまう。

 

「あんた等は特別機動兵でしょう。三年間の訓練は無駄にするつもり?」

 

 これには反論する余地が無いのか、彼等は命令に従うことにした。

 

「それで良いわ。地上の敵は私達がやるから、あんた等は気にせず空の敵をやりなさい」

 

 大尉はリーダー格の青年の肩を叩いて、彼に自信を付けさせる。ミサカと共に新兵等がフックを使って屋根に上がると、道中で出来る限り集めた原隊が壊滅した敗残兵達と共に突撃準備を始める。敵陣の様子を伺う大尉が、ハンドサインで狙撃銃や機関銃を持った兵士達に合図を送った。

 合図を確認した士官が頷き、援護射撃を命じた。援護射撃が始まれば、大尉はハンドサインで特別機動兵に突撃を指示する。指示を出し終えると、目の前に見える局員の銃を撃ちながら、大尉とマリ達は敵陣へ突っ込んだ。

 

行け(ムーブ)!」

 

 空から航空機や地上にいる敵に射撃魔法を食らわしている局員達が撃ってくるが、隠れていた特別機動兵の新兵達に急襲され、次々と殺虫剤にやられた蚊のように地面に落ちていく。

 手足が落ちてくる中、マリは飛び出してくる局員達を走りながら性格に撃ち倒す。シューベリアは強力な炎の魔法で数名の局員を焼き殺し、突破口を開く。

 

「な、なんて魔力だ!」

 

「S級クラスか!?」

 

 局員達がシューベリアの強さを見て恐怖し、足を震わせる。

 

「タァァァ!!」

 

 手から氷で剣を作ったシューベリアは、自分に拳銃型のデバイスを向けて撃とうとする女性局員を斬り捨てた。

 

「クソっ!奴を噛み殺せ!」

 

 一人の局員が狼の使い魔に背中を晒しているマリに襲うよう命じたが、気付かれて眉間に穴が開き、絶命してしまう。

 

「使い魔!まだ生きてる!!」

 

 シューベリアから知らせに、主が死んでも使い魔が未だに自分の命を狙っている事を知ったマリは、使い魔に強力な蹴りを食らわせ、ライフルで脳天を撃ち抜いて使い魔を始末した。

 

「この、死ね!」

 

 数名を撃ち倒した腕の良い局員が、マリを殺そうと強力な砲撃で仕留めようとするが、大尉と部下達の射撃で邪魔をされる。まずは大尉から始末しようとするが、銃弾で動きを封じられる。

 

「こんな雑魚なんかに!俺はA級なんだぞ!!」

 

 防御魔法で必死に銃弾を防ぐA級局員であったが、投げられた手榴弾に怯み、防御魔法が解けて蜂の巣にされ、周囲に血を撒き散らしながら絶命する。

 

「魔法が使えない奴等なんかに!」

 

 見下したような台詞を吐く女性局員は、手に持つデバイスで周囲から攻撃してくる特別機動兵に射撃魔法を放つが、全く当たらず、灰屋の屋上にいる彼等のフック攻撃を受ける。

 彼女は回避するが、放たれたフックの数は多く、やがて何本も身体に突き刺さり、吐血して死亡した。何名かの局員が一カ所に集まって抵抗していたが、新兵達の銃撃を受け、次々と撃ち殺されていく。マリ等もその場に到着し、彼等と共に頑なに抵抗する局員達に銃弾を浴びせる。

 

「ま、待て!降伏する!!」

 

 一人の局員が手を挙げて出て来たが、ワルキューレ側はお構いなしに銃弾を浴びせ、彼等が全員地面に倒れても銃撃を続けた。

 

「撃ち方止め!撃ち方止めぇ!!」

 

 大尉が数回ほど叫んだところで、彼等は銃を撃つのを止めた。煙が晴れる頃には、無惨な形となった局員達の死体が重なるように倒れていた。

 内臓を出したまま死んだ者もおり、目玉や脳の一部が地面に転がり、脳が露出している死体もあった。一人が物言わぬ死体となった彼等に近寄って唾を吐いた後、墜落した次元航行艦船まで向かう。

 

「おい、今更魔道士のお出ましかよ」

 

 大尉の部下の一人が空を見上げて呟き、それに釣られて空を見上げると、空を飛ぶ複数に人影が見えた。ワルキューレも魔法を運用しているので、時空管理局のような魔道士が居てもおかしくない。空を飛んでいる彼等は管理局の局員達と交戦状態に入った。

 特別機動兵の新兵達は空を飛ぶ局員達の掃討を彼等に取られた為、地上部隊と合流することにした。

 

「後もう少しね・・・」

 

「うん!」

 

 少し立ち止まって息を整えてから、マリとシューベリアは墜落した次元航行艦船の周囲へと辿り着いた。気が付けば、制空権はワルキューレが握っており、空から海上の艦隊に攻撃を加えていた次元航行艦船は、煙を噴きながら海へ向かって落下している。

 数分後には艦船は地面に墜落し、向こう側にいた友軍部隊の機甲部隊に傾れ込まれる。こちら側も決着が付きそうなので、マリとシューベリアは急いで次元航行艦船へと向かった。しかし、最後の門番が彼女等に立ちはだかる。

 

「グォォォォ!!」

 

「嘘っ!?」

 

「ど、ドラゴン!?」

 

 向かっている最中に、ドラゴンの使い魔が彼女達を襲った。大尉の部下達はドラゴンが吐く炎に焼かれ、悶え苦しみながら焼け死んだ。戦車はエンジンにドラゴンからの火焔放射を食らい、炎に包まれ、車内から全身に火を纏った戦車兵達が飛び出してくる。

 こんな時に限って、味方の魔道士は局員達の排除で忙しく、応援に駆け付けてくれない。仕方なく、自分等でドラゴンを倒すこととなった。

 

「やるわよ、淫乱ピンク」

 

「淫乱ピンクって・・・」

 

 名前で呼ばずに渾名で伝えてきた為、シューベリアは少し顔が引きつったが、この場にいる者達と共に攻撃した。マリはブルパップライフルでシューベリアは氷魔法だ。だが、攻撃は使い魔に乗り込む主が防御魔法を唱えて攻撃を無効化する。

 銃弾でドラゴンの堅い皮膚を貫くなど不可能であり、もっと強力な武器、対戦車クラスの火器が必要だ。ドラゴンをシューベリアと同じく攻撃する兵士達に任せ、マリはロケットランチャーの他軍を探し始める。高い建物に上がれば、余りに余った榴弾をドラゴンに向けて放った後、グレネードランチャーを外した。

 先に向かっていた者が居たらしく、M3カールグスタフ無反動砲を背負った女性兵士が居たが、騎乗していたドラゴンの主の射撃魔法に当たり、絶命する。身体に直径20㎝ほどの穴を幾つか開け、目を見開いたまま死んでいる女性兵士からアメリカの無反動砲を手に取り、まだ無事なのを確認した後、ドラゴンに照準を向ける。

 胴体に照準を合わせると、軌道を読み、未来予知射撃を行う。そして、ドラゴンが来る方向に照準を合わせ、引き金を引いた。

 

「あっ・・・外れた・・・」

 

 だが、発射されたロケット弾はあろうことか使い魔の主に命中。主の身体は木っ端微塵に吹き飛び、ドラゴンの胴体を血で赤く染め、残った臓器を振るい落とした。ドラゴンに気付かれてしまい、視線がマリの居る場所に向けられ、焼き殺そうとドラゴンが向かってくる。

 

「あぁもう、最悪」

 

 急いで再装填を行うマリであったが、イマイチ手元が狂って装填が遅れる。近付いてきたドラゴンが炎を吐こうとした瞬間、地上から多数のロケット弾が放たれ、腹に何発か受けて血を吹き出す。下を覗けば、様々な携帯式ロケットランチャーを持った兵士達が居た。

 砲口から煙が出ている辺り、彼等が撃ってくれたのだろう。次にこの場では全く耳にしなかったジェットエンジンの耳が割れるほどの音が聞こえてくる。大きいエンジン音がする方向を見てみると、アメリカの一度も撃墜されたことがない大型戦闘機F-15がこちらへ向けて飛んできている事が分かった。

 

「ジェット機・・・なんで今更・・・」

 

 航空会社マクドネル・ダグラス社こと現ボーイング社によって開発され、初飛行が四十年経った今でも、世界トップクラスの性能の戦闘機である。だが、運用コストが高く、アメリカの親密的な経済大国しか運用されていない。

 二基のブラッド・アンド・ホイットニー社のF100ターボファンエンジンを噴かせながら、C型と呼ばれたF-15Cは、ドラゴンを空対空ミサイルで照準(ロックオン)する。

 ドラゴンは生物であるが、両翼に装備されているミサイルは特殊な物であり、ちゃんとロックオン出来る。パイロットがミサイルの安全装置を外し、ボタンを押すと、ミサイルは翼から離れ、ドラゴンに向けて飛んでいった。ミサイルはドラゴンの胴体に突き刺さり、内部爆発を起こしてドラゴンを肉片に変える。

 ドラゴンの身体が四方八方に散らばり、その血飛沫がマリの身体を赤く染めた。

 

「うわぁ・・・最悪・・・」

 

 全身がドラゴンの返り血で紅く染まり、ほぼ真っ赤な手を見て苦言を漏らす。ハンカチを取り出して顔を拭くと、当たりから銃声が途絶えたことに気付いた。どうやらドラゴンが爆発したのと同時に、抵抗していた局員達が一斉に降伏したようだ。

 全長19.43mのF-15が目の前を通り過ぎた後、強烈な風から顔を守り、それが過ぎ去れば双眼鏡を取り出し、手を挙げた多数の人影が見える方向を見た。

 続々と窶れた顔の局員達が、C7A2と呼ばれるC7A1を縮小ストックに変えたモデルやカナダ製M4カービンであるC8カービンを持つ現行装備をした兵士達とフードを被った魔道士達に銃口を向けながら歩いているのが分かった。

 局員達の中には年端のいかない子供の姿もあり、時空管理局の人手不足の理由が理解できた。

 次に、シューベリアや大尉、新兵達と無事を確認しようと下を覗くと、壁にもたれ掛かって休息を取るシューベリアと大尉や、過度なストレスからようやく解放されてその場で仰向けになって倒れ、座り込んでいるエッケハルト等も見え、無事を確認した。

 衣服が所々に穴が開いているシューベリアを除き、かなり動き回っていたミサカも含めて他の者達は幾つかの傷を負っていたが、対したことは無い。

 

「これで地上は終わりね・・・」

 

 地上における戦闘が完全に停止した事を感じたマリは、座り込み、未だに戦闘が続く宇宙(そら)を見上げながら呟いた。カールグスタフを床へ置き、懐から煙草を一本取り出し、それを咥え、先に火を付けて一服した。




ビッテンフェルト「俺の艦隊なら、サザーランドなど12時間で制圧できる!管理局とか言う魔法に頼り切り、戦争をやったこともない腰抜け共より遙かに効率よくな!」

ビッテンフェルトを送ったら、惑星ごと敵が消滅する気がするな~

後編は宇宙戦。sakuraさんから許可とったキャラが出るよ~
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