復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
今回からはザシャちゃんに台詞が入ります。
戦闘終了後、母艦である軽空母に帰還したザシャはVF-4ライトニングⅢDから降り、ヘルメットを脱いでから長い金色の髪を解放した後、床へ向けて嘔吐した。自分等の隊長が無重力の空間で吐いているのを見た一人を除く部下達が、直ぐに隊長であるザシャの元へ向かう。
「たたた、隊長!」
「ヒヨコ・・・しっかり・・・」
やや異様すぎる喋り方をする巨乳な女性や小柄で口数の少ない女性に寄り添われ、背中をさすられる。口元をハンカチで拭かれる中、攻撃機の近くで黙ってみていた長髪の女性であるもう一人の部下が、エチケット袋を持って、上官に手渡すために来た。
「あ、ありがとう・・・ペトラちゃん・・・」
エチケット袋を手に取ったザシャは、手渡してきた態度の悪い部下に礼を言った後、袋へ向けて嘔吐する。先程の天才的な操縦技術を見せつけ、多大な戦果を上げた天才女性パイロットとは思えない醜態だ。ペトラ・ハウルと呼ばれた長髪の女性は、周りの視線が癪に障ったのか、舌打ちをしながら格納庫を出て行く。
「もう大丈夫・・・千鶴ちゃんにチェリーちゃん・・・」
「あ、ああありがとうございます!水持ってきますね!」
礼を言われて照れたチェリー・ビュランと呼ばれる巨乳の女性が、水を持って来るためにザシャの元を離れた。小柄の長門千鶴は残り、ザシャの背中をずっとさすっている。その醜態ぶりを見ていた同中隊所属のパイロット達は、先程のことが信じられないようで、聞こえないように小声で語り合う。
「なぁ、あれ・・・マジで管理局の巡洋艦や駆逐艦クラスを九隻以上沈めた女か・・・?新兵が酷く損壊した死体を見て、ゲロってるみたいだぞ?」
「元が偵察部隊だったから仕方ないだろ。噂じゃ、一戦も交えていないらしいぞ」
「マジか。あいつも酷だよな・・・家柄と才能でヴァンキッシャー隊所属になるなんて・・・」
部下が持ってきた水を飲むザシャの姿を見て、ツチラトが隣にいたジョン・ボイスと呼ばれる青年に声を掛ける。ジョンは水を飲みながら答え、ツチラトはザシャを哀れんだ。
ちなみにヴァンキッシャー隊とは、ワルキューレで創設された競合部隊の一つで、英語で勝者を意味する通り、一定の戦果を上げれば、エリートや精鋭部隊の転属が可能である。
ヴァンキッシャー隊は二個の戦闘中隊と、一個整備中隊からなる大隊であり、一個戦闘中隊が三~四機からなる小隊四つで編成されている。このような競争力の激しい部隊の転属となったザシャは、さぞ地獄であろう。ストローから口を離したジョンは、左手に持っていたハンバーガーを口に含んだ後、何かを思い出したかのように口を開いた。
「そう言えば、第1中隊と整備中隊の連中が、H小隊が一ヶ月持つかどうか賭けてたぞ」
「うわぁ・・・そう言えばヴァンキッシャー創設以降、何度も全滅してからな・・・一ヶ月で一人も掛けずに持ったくらいで良いくらいだぜ」
「まぁ、あの調子じゃ、いつまで病院行きになるか分かんないけど」
ツチラトがこれまでにザシャの前任者達が散っていたことを口にし、ジョンは言い終えてから再びハンバーガーを口に含む。モニター付き通信機で上官に報告していたシャロン中隊長はザシャに少し目線を向けた後、目線をモニターに戻し、報告を再開した。
彼等ヴァンキッシャーが乗る全長700mの軽空母は命令でも受けたのか、サザーランドから上がってきたマリ等が乗ったシャトルを収容した後、軍需施設がある近くの小惑星へと進路を定め、二隻の護衛艦を引き連れてそこへ向かった。
「宇宙船に乗るなんて、いつ以降かしら・・・?」
船内の廊下にて、マリは自分の手荷物を持ちながら、辺りを見渡す。今着ている衣服は、サザーランド内で着ていた戦闘服とは違って、地味なカーキ色の作業服だ。
彼女の周りには、制服を身に着けたシューベリアにノエル、京香が歩いている。マリ等の目の前で歩いているのは、案内人の将校だ。
「ここです。案内図はここにありますから・・・詳しい話は近くの乗員でも捕まえて聞いてください。では、小官はこれで」
彼女等の部屋まで案内すると、将校は案内図を彼女等に見せてから、去っていった。
尉官専用の部屋であり、部屋は四つもある。ドアの横にある名札には、それぞれの部屋の名前が記されている。それぞれが部屋に入って手荷物を置くと、部屋から出て顔を合わせる。
「では、私達は情報収集に当たってきますので、失礼します」
ノエルは挨拶をした後、京香と共に情報収集用の設備があるとされる方向へと向かう。残ったマリとシューベリアは、部屋の前にあるソファーに座り、軽空母が目的地へ着くのを待つ。二人の目の前にあるテーブルには、近くの自販機で購入した飲料水の紙コップが置かれている。
「あれ、マリちゃんは飲まないの?」
紙コップは一つだけで、シューベリアの分だけだ。マリは席を立ち、案内図を見て、自分の行きたい場所へと向かう。
「ちょっと暇潰しにゲームしてくるわ」
そう言って戦闘シミュレータ室がある方向へと向かった。移住区を出て、数分間廊下を歩いていると、目標の部屋へと辿り着いた。戦闘シミュレータ室には何名かのパイロットも居り、その中にはヴァンキッシャー隊の面々の姿もあった。
突然入ってきた金髪の女に対し、パイロット達は視線を向けたが、物の数秒で飽きたのか、元の位置へ視線を戻す。ただ一人、マリの容姿を見て興味を持ったのか、口説こうとするパイロットが前に出て来た。
「やぁ、お嬢さん。こんな所へなんの・・・」
言い終える前に腹に強烈な一撃を受け、パイロットは余りの痛さに両膝を床に付け、腹を押さえて悶絶する。そんな男を無視してマリは並んでいる戦闘シミュレータを見る。
「なんかゲームセンターみたいね・・・」
シミュレータ機から出て来るパイロット達を見て、マリは思ったことを口にした。それを聞いて「馬鹿にしている」と受けた将校が彼女に絡んできた。
「おい、ゲームセンターみたいだとは何だ?」
「はい?」
「貴様はそれでもワルキューレ宇宙軍の将兵か?シミュレータをゲーム機呼ばわりとは・・・」
突っ掛かってくる将校に対し、マリは無視したが、答えない彼女に対して将校は胸倉を掴んできた。
「なんとか言え!」
胸倉を掴んだ将校に対し、マリは反撃しようとするが、偶然にもそこにいたツチラトに助けられた。
「まあまあ中尉殿、落ち着いてください。この新兵から見れば、ここはゲームセンターと勘違いするのも無理はありませんから。それにみんなの目線もあることですし」
「ちっ、覚えておけ!」
周りの目線を感じた将校は、捨て台詞を残して去っていった。
「大丈夫か?それにあんた・・・何処かの要人か?取り敢えず暇潰しで来たみたいだけど、ゲーセンじゃ無いぞ、ここ」
ツチラトはマリの階級が上級大尉であることに気付いていない。先程の一部始終を見ていたジョンも近付いてきて、ツチラトに問う。
「おい、ツチラト。先程将校がその女の胸倉を掴んでるのが見えたぞ」
「あぁ、丁度今追い払ったところだよ。それと、要人が乗ってる事は放送にあったか?」
「いや、聞いてない」
彼等が会話している間に、マリはポケットから階級章を取り出し、それを左腕に張る。
「や、やべ!上級大尉だぞ!!」
「け、敬礼だ!総員敬礼!!」
取り出して付けた階級章を見て、ツチラトとジョンが騒ぎ出すと、マリの階級章を見た周りにいたパイロット達が、彼女へ向けて右手を挙げて敬礼の姿勢を取る。
「もう良いわよ」
その一言で部屋にいた一同はそれぞれの作業に戻る。マリは興味本位である一つのシミュレータに目を向けた。
「これ面白そう」
「あぁ、これはMS、モビルスーツ用のシミュレータです。他にもASとか、戦術機とか、ゾイドとか、色々あります!後、KMFや可変戦闘機とか・・・」
緊張するツチラトの説明に、マリは目を付けた
説明を読み、捜査方法を理解すると、次へ進める。
「地上戦と宇宙戦、どっちにするかって?」
地上と宇宙の選択肢が表示されたので、マリは迷うことなく校舎の方を選んだ。宇宙戦を選択すると、全天周囲モニターに宇宙における戦場が映し出される。周囲を見渡してみれば、爆発やビームが全方位で飛び交っているのが見える。
「綺麗ね・・・」
宇宙における戦場を見たマリが呟けば、無重力状態を知らせるアナウンスが流れる。
『無重力状態になります』
「わぁ・・・!」
自分の腰まである金髪が浮き上がると、マリは驚きの声を発した。MSの操作方法が近場にある制御板モニターに表示され、それに目を通して、操縦桿を握る。両足をペダルに付け、上下に動く操縦桿を押したり引いたりしてみる。
操作感覚を身に付けると、制御板モニターの下にある決定ボタンを押し、次へ進む。
「機種選択?どれが良いのか分かんないわ」
機種選択の画面が表示され、様々な機体が表示される。しかし、MS等を初めとした機動兵器など、マリは一切知らず、どれが高性能な機体で一番扱える機体なのか分からない。
適当にランダムボタンを押すと、
「なんか格好いいわね」
Zガンダムのスペックを見たマリは、迷うことなくその機体を選択した。選択すると、戦闘開始のアナウンスが耳に入ってくる。
『三秒後にシミュレーションを開始します』
目の前のモニターに戦闘開始までの番号が表示され、数字が0になれば、戦闘が始まった。
『戦闘開始』
アナウンサーが伝え終えると、目の前から様々な敵のMSが今操作している自分の機体に襲い掛かる。
「いきなり!?練習とかさせてくんないの!」
そう嘆いたマリは、敵機から来る攻撃を回避する。攻撃の回避に成功するが、彼女が乗るZガンダムを狙う敵機は休まず、こちらの反撃を受けないように動きながら攻撃してくる。
照準を合わせようとするが、敵はジグザグに動き回っているので定まらない。自動照準でロックオンし、長い縮小式ビームライフルを攻撃してみるも、不特定に動く敵機には全く当たらなかった。
「ゲームと軍用では違うってことね!」
ゲームセンターにあるシミュレータゲーム機とは別格と分かったマリはバルカン砲に切り替え、近場の敵機へ向けて無作為に乱射する。60㎜バルカン砲を何発か受けた敵機は、回避を止めて盾を構えながらバルカン砲を防ぐ。
それがマリの狙いであり、瞬時にビームライフルに切り替え、防ぐ体勢から攻撃の態勢に切り替えようとする敵機に狙いを付け、トリガーを引いた。
発射されたビームは、別の機体の盾を持つザクフリッパーと呼ばれるザクⅡと呼ばれるMSの頭を三連装カメラに変えたザクに命中し、防ぎきれなかった敵機はビームを受けて大破した。
「やった・・・!」
敵機を落とすことに成功したマリは小さく歓喜するが、敵機は先程彼女に撃破されたザクフリッパーとは違うMS、ゲム・カモフと呼ばれる連邦軍の主力MSジムの偽物MSが次に襲ってきた。
元のジムが持っているビームスプレーガンでは無く、MMP-80と呼ばれるジオン軍のMS用マシンガンを撃ってくる。
「あぁん?ジム?」
しかし、世代上で遙か上のスペックを誇るZガンダムの装甲を貫くことが出来ず、マリがビームライフルの銃口からビームサーベルと呼ばれるビームの剣を出し、串刺しにして撃破した。
穴が開いてから数秒後、サーベルを抜いて、爆風で視界が塞がるのを塞ぐために蹴る。爆風が晴れると、ザクⅠと呼ばれるザクⅡの前の機種と、ガフランと呼ばれる生物的な滑らかなMS合計六機がこちらへ向けて攻撃してきた。
これらも不特定に動き回っている物の、感覚を掴んだマリの敵では無かったので、ザクⅠは数秒で全機撃破、ガフランは瞬時に二機撃破に成功し、残る一機は蹴りで撃破した。
「そう言えば、このガンダムって変形できたっけ」
マリは機体説明に、Zガンダムが変形できることを思い出すと、直ぐに変形するボタンを押してみる。すると、機体は戦闘機のような形状に変形し、操縦方法がジェット戦闘機のような物になった。
「まぁ、ジェット戦闘機みたいな物ね」
そう呟きながら、遠くからザクの胴体にジムのような手足を付けたザニーと呼ばれるMS二機が、こちらへ向けて右手に抱えたキャノン砲を撃ってくるのが見えた。戦闘機の操縦に慣れているマリは、機体上部に付けられたビームライフルでザニー二機を数秒単位で撃破する。
「よしっ!」
左手でガッツポーズを取り、爆発する敵機の横をすり抜けた。これまでにマリが撃墜した敵機の数は十機以上で、ボスとも呼べるMSが登場した。
「あいつ、早いわね・・・」
変形したZガンダムに追い付こうと、21m程あるジンハイマニューバと呼ばれる前身であるジンの強化型が右手に持つ重突撃銃を撃ち続けながら近付いてくる。それに対してマリは変形を解除し、ビームライフルでジンハイマニューバを撃墜しようとするが、先程のMS達とは違ってビームを回避する。
「さっきの奴等とは違う!」
重突撃銃を避けながら、マリは実戦慣れしたような動きを見せるジンの強化型を見て、気を引き締める。敵機が彼女の機体まで一気に距離を詰めると、左腰に付けていたMS用の剣を抜き、斬り掛かってきた。それを盾で防ぎ、右手のビームライフルを離してビームサーベルを引き抜き、切り倒そうとしたが、相手が蹴りを入れて距離を離す。
「雑魚の分際で!」
右前腕部にある二連装グレネードランチャーを放ち、敵機の左足を破壊する。左足を失ったジンハイマニューバは左手で重突撃銃を撃ってきたが、Zガンダムの装甲を貫通することが出来ず、接近を許してしまう。右手に持った剣で切り裂こうとしたが、Zの左手で受け止められ、パワーの違いで右手を握り潰され、ビームサーベルで上半身と下半身を引き裂かれた。
ジンハイマニューバが爆発を起こし、爆風がZガンダムを覆った。
「ハァ・・・ハァ・・・これで終わり?」
息を荒げながら、シミュレータが終わるのを待つ。だが、一分ほど待ってもシミュレータは終了しない。いつまで経っても終わらないので、ベルトを外そうとすると、警告音が響いた。
「ハッ!?」
警告音が響いた後、目の前からZガンダムが持つ強力なビームが拘束で迫ってきた。直ぐに回避行動を起こし、ビームを避ける。
「まだ終わってないようね・・・」
遠くの方から見えるジオン宇宙軍の軽巡洋艦ムサイと多数のザクⅡがこちらへと向かってくる。
「限界まで、やりますか!」
ニヤリと唇を曲げて、マリは敵中の中に突っ込んだ。
物の数時間後、戦闘シミュレータは終了し、マリは汗を袖で汗を拭いながら出た。
「ふぅ・・・結構きつかったわね・・・」
颯爽とした表情で汗を拭き終えた後、髪の汗を左手で弾く。彼女はただシミュレーションを終わらせただけであったが、マリが出て来た途端、周りにいたパイロット達が呆然としていた。
「(なにかしら?)」
イマイチ状況が理解できないマリは、近くにあったタオルを手にして頭を拭き始める。汗を拭き終えたマリに、沈黙を破って聞いてきたのはジョンであった。
「上級大尉殿・・・あんた・・・あれをクリアしたんですか・・・!?」
手を震わせながら聞いてくるジョンに対し、マリは無言で頷いた。
次にツチラトが話し掛けてくる。
「今、見ていたんですが・・・かなりの高難度ですよ・・・!?」
どうやら適当に難易度を選んだのが、高難度の難易度だったらしい。
初めに出て来る機体はZガンダムより低スペックの機体ばかりだが、中盤辺りから同機に開発された機体やスペックを上回る機体が登場し、最終的には性能を凌駕するMSが出て来た。
彼女が颯爽とした表情でシミュレータから出て来たからして、全て撃破したのだろう。無言で答えた途端に、周囲にいたパイロット達が騒ぎ始める。
「あの難易度をクリアするなんて、マジで素人か?」
「ありえねぇ・・・退役したパイロットじゃないのか?例えばメガミ人とか」
「元エースじゃないのか・・・?」
勝手な憶測が交わされる中、シャロン中隊長がザシャを初めとしたH小隊の面々と共に入ってきた。たまたま近場に居た配下のパイロットに、マリのことについて問う。
「何事か?」
「はっ、中隊長殿!導入されてまだ誰も為し遂げていない難易度を、あそこで汗を拭いている上級大尉殿がクリアしました!!」
「あの難易度をクリアするとわな・・・上級大尉殿は何処の所属だ?」
「そ、それは・・・分かりません・・・」
「なに・・・?」
無所属なマリの事を知ったシャロンは、直接彼女に聞こうと近付く。突然、話し掛けてきたシャロンに対し、マリはタオルを置き、ストローを口に咥えながら答える。
「上級大尉、ヴァンキッシャー隊第2中隊中隊長シャロン・ロード大尉です。あの難易度をクリアするとは・・・何処の隊の所属ですか?」
「何処の所属って?何処だっけ・・・?分かんない」
「はっ?」
先程の答えの通り、マリは自分が何処の所属か分かっていないようだった。シャロンは保安要員を呼ぶ為、左上腕部に取り付けられている通信機を起動しようとしたが、一緒にいたペトラがマリに指差しながら口を開く。
「このデカパイは情報部所属です。情報士官と一緒に歩いているのを見ました」
「デカパイって・・・」
「ペトラちゃん、上官に向かってそんな事、言っちゃ駄目だよ」
ザシャは自分の部下が放った無礼極まりない言葉に呆れる。遙か上の階級であるマリに対し、失礼な態度を取るペトラをチェリーが注意した。
「部下の不手際、失礼しました」
「ごめんなさい・・・ペトラ、お前も謝る・・・」
変わりにシャロンとザシャがマリに謝罪する。続いて千鶴やチェリーは頭を下げて謝罪し、ペトラは強制的に頭を下げられて謝罪させられた。
彼女が「良し」と言ったので、シャロンは空かさずマリが何処で訓練を受けたのかを訪ねた。
「失礼でありますが、何処であの天才的な操縦方法を習ったので?」
「Bf109、いや、Me109で習ったかな?それとF-15?とか」
「め、メーサーシュミットで・・・!?」
「うん、そうそう。説明書読んでから適当に乗り回したわ」
とても考えられないマリの答えに、シャロンとザシャは驚愕した。彼女が初めに答えた戦闘機は、どれもMSの操縦方法とは全く違う。それを単に説明書を読んで、あの高難度を制覇したというのだ。
「て、天才だ・・・!」
この答えには、流石にベテランのシャロンでさえ、驚きの声を上げる。ザシャや部下の三人も、驚きを隠せない。
「ザシャより上かもしれんな・・・」
「もう帰って良いかな?」
「あぁ、良いですよ・・・」
「ありがと」
マリはシミュレータ室を出て、普通に移住区に帰っていく。彼女が出て行ったのを確認した後、マリが乗っていたシミュレータ機まで向かい、ランキングを確認してみる。
名前を入力しなかったのかマリの名前は入って居らず変わりに名無しが一位に君臨していた。
クリアと横に表示されており、ザシャ・テーゼナーが二位にランクインし、クリアと言う文字は一位から無かった。
「少尉、たしかお前が一番のランキングだったな?」
「は、はい・・・クリア出来ませんでしたが・・・」
「あの上級大尉、もしかしたらお前より上かもしれんぞ。それも遙か上の・・・」
「それは、嬉しいことです・・・」
「悔しくないのか?」
ザシャから返ってきた意外な答えに、シャロンは拍子抜けする。
「悔しくなんかありませんよ。ただ、私より上な人に出会えたことが、嬉しくて堪らないのです」
「ヴァンキッシャー隊には相応しくない人材だな。少尉は。どうしてお前がここに配属されたのか、私には全く理解できない」
自分より上な者に出会えたことを喜ぶザシャを見て、シャロンは笑みを浮かべながら告げる。
「自分は、競争とかそう言うのが苦手ですから・・・」
「納得の答えだな。ところで、お前の戦果はあれで良いのだな?」
次にシャロンは、前回の海戦でザシャが撃沈した艦船数が、彼女の部下達に分配されている事を問う。
「はい、そうすればあの子達もこの隊から安全な隊に転属できますから」
「部下思いだな。自分の戦果を他人に譲り渡すとは。それでは元の部隊に返るどころか、安全な後方勤務が出来ないぞ」
「自分はあの子達を安全な地帯に居る部隊に転属させてから行きます。私が先に転属しちゃうと、あの子達は死んじゃいそうですから・・・」
千鶴、チェリー、ペトラがシミュレータで少しでも腕を上げようとしている所を見ながら、ザシャはそう上官に答えた。
「つくづくと甘いな、少尉。この世界もとい、この部隊はそう柔な考えが通じるとは思えんぞ。それに自分がもしもの場合、残った部下はどうするつもりだ?良く考えておくんだな」
「・・・それは」
「安心しろ、ヒヨコ。望むとおりあの三人にお前の戦果を分け与えてやる。答えは考えれば直ぐに出る。余りにも簡単だがな」
シャロンに厳しく問われると、ザシャは不安になりながらも答えを出そうとしたが、彼女が部屋を出て行ってしまう。
「自分もあの子達も誰一人欠ける事無く戦果を上げろってこと・・・?」
直ぐに出て来た答えを口にしたが、もう上官は出て行った後だった。それから数時間後、軽空母は目的地の小惑星に到着、大気圏に突入はせず、護衛艦と共に衛星軌道上で待機する。マリ達は小惑星に降下するので、降りるシャトルに乗り込み、小惑星へと降下した。
『当機は大気圏突入に入ります。乗員の皆様はシートベルトを着用してください』
機内でアナウンスが流れる中、マリは隣に座るノエルにあることを問う。
「ねぇ、今降りる星に演習場とかあるよね?」
「あると思いますが・・・何を企んでいるのです?」
「ちょっとロボットを動かしたくなって」
「機動兵器を動かしたいのですか?まぁ、取り敢えずは動かせそうに見えますが・・・」
ノエルがシートベルトを付けながら、今降りる小惑星で機動兵器を乗り回せる演習場があるかどうかを思い出す。その間に京香が訪ねてくる。
「急にどうしたんです?ロボットに乗りたいなんて・・・アニメかゲーム、BL物の影響ですか?」
「違うわよ。シミュレータで動かしてみたらなんか楽しくて・・・他に動かしてみたくなったの」
「ハハ、ロボットに目覚めたようですね・・・それは置いといて、息抜きですか?」
「ぶっちゃけそんな所」
「息抜きに機動兵器・・・随分と皇帝陛下は変わっていらっしゃる・・・」
返ってきたマリの意外な答えに、京香は彼女を変人と思う。
「あぁ、ありました。丁度空港の近くに演習場がありますよ。自由には動かせないみたいですが」
ノエルが思い出して伝えると、マリは顎に手を当て、解決策を模索する。数秒後、シャトルは小惑星に降下し、目的地の近くにある空港へと無事に着地した。
「さーて、行きますか」
「えっ?ちょ、待って!」
シャトルから降りたマリは、早速地図を持って、ノエル達からの獅子の声も聞かずに目的地である演習場へと向かう。何故だかシューベリアも一緒についてきたが、彼女は気にも留めなかった。
「なんで淫乱ビッチが・・・」
「またマリちゃんがなにかするのかなー?て思って」
「まぁ良いわ。そこらの男とやってなさいよ」
「はいはい」
そう掛け合いながら、マリとシューベリアは近くの演習場へ向かい、その門を叩いた。門番を担当しているフランスのブルパップライフルFAMASを持った警備兵が、二人を見るなり声を掛けてきた。
「これはこれは、情報士官殿がこの演習場へ何のご用で?」
「ロボット動かしに来た」
「同じく私も・・・」
「はっ?」
その返事で警備兵はまるで鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべた。
「あの・・・許可書がないと、駄目なんですが・・・持ってます?」
「許可書?そんなの持ってないわよ」
「それならお帰り下さい。この演習場は第13機甲教導部隊が都市部模擬戦闘で使用する予定であります」
許可書がないと分かると、警備兵は二人を門前払いしようとする。だが、偶然にも演習場を使用する教導部隊の隊長がやって来る。
「入れろよ。うちの隊の丁度良いウォーミングアップになる」
「えっ?これは中佐殿!で、ですが・・・いきなり来てそんなことを言われても・・・規則ですし・・・」
突然やって来て、マリとシューベリアの演習場へ入ることを許可した教導部隊隊長に対し、警備兵は規則に則って、上官に進言するが、ジープを降りてきた彼に肩を叩かれる。
「別に良いだろう。こんな美人の願いだぞ、断る訳にもいかんだろ?」
「わ、分かりましたよ・・・警備主任に報告します」
警備兵が無線機を持って、報告しようとすると、教導部隊隊長である中佐は警備兵から無線機を取って、代わりに報告する。
「聞こえるか?これから当演習場を使用する予定の第13機甲教導部隊の隊長だ。模擬戦を始める前に、素人相手のウォーミングアップをする。以上」
報告を終えれば、無線機を警備兵に返し、自分が先程乗っていたジープに戻り、副官らしい女性士官に、マリとシューベリアの元へ向かうよう指示し、座席へと座り、女性士官を向かわせた。
門が完全に開くと、中佐が乗ったジープを先頭に、隊員達を乗せたトラックと大型トレーラーが数台ほど後へ続く。
「では、こちらへ」
一方のマリ等は女性士官の案内で、徒歩で戦術機専用保管倉庫まで向かう。
ちなみに戦術機とは、戦術歩行戦闘機の略称であり、第三世代まである人類に敵対的な生物対BETA用の機動兵器だ。
数分後、戦術機専用の保管倉庫へ到着し、女性士官がどれを選択するか問う。
「どの機体をお選びで?」
倉庫に保管されて並べられているのは、目に見えるだけで左右に十五機ずつ、合計三十機は見える。種類と形は様々であり、同じ型でも、何処か細部が違う機体もある。元の世界で開発され、設計図のコピーを取って安全な世界に持ち込んで生産された戦術機を眺め、どれに乗るかを選ぶ。
「私、これにしようかな?」
シューベリアはラファールと呼ばれる現実のフランスの戦闘機と同じ名を持つ戦術機を選んだ。辺りを歩いて、マリは乗ったことがあるジェット戦闘機と同じ名前を持つF-15に目を付け、その戦術機を選ぶ。
「これにするわ。F-15と同じ名前だし」
型はストライク・イーグルであり、現実の戦闘爆撃型ではなく、やや形が変わった強化型のE型だ。
「ラファールにストライク・イーグルですか。では、強化装備にお着替え下さい」
機体選択を完了した二人からの報告を受け、女性士官は女性更衣室へと案内した。案内された更衣室に入り、ロッカーを開けて中身を確認すると、訓練用衛士強化装備と呼ばれるパイロットスーツが一着入っていた。
「・・・なにこれ?」
強化装備を手に取ったマリは、その際どさにドン引きする。生地の厚さは薄く、指を立ててみれば指の皮膚が薄く見えた。
「なにこのエロに都合の良いスーツ」
そう吐き捨て、ロッカーに無着色半透明なスーツを投げ込み、女性士官にマシな物はないかと問う。
「ねぇ、こんなの着れないんだけど?マシな
「今のところ、それしかサイズの合う物がありませんので。あちらの方は、平然と着ておりますが?」
苦笑いしながら女性士官が手を翳した方向を見てみると、自分がロッカーに投げ付けた強化装備を平然と身に着けているシューベリアの姿があった。その姿は「際どい」の一言であり、彼女のボディラインをさらに強調させるほどだ。
「あれ、マリちゃんは着ないの?これ結構きついけど、とても動きやすいよ」
際どい強化装備を身に着けたシューベリアは、準備運動をしながらマリに着ないのかを問う。彼女が動く度に、大きなバストがかなり揺れていた。仕方なくマリは訓練用の強化装備を身に着ける事にした。
女性士官も自分の強化装備を身に着け、マリとシューベリアと共に更衣室を出る。流石にこの格好で歩くのはマリにとっては屈辱的なのか、専用の上着を羽織って、自分が選んだ搭乗機まで向かう。
シューベリアと女性士官は上着を身に着けず、平然と歩いている。保管倉庫に乗り込んで、調整を済ませたF-15Eのコクピットに乗り込むと、上着を脱いだ。コクピットに入ってみると、モニターがないことに驚く。
システムを起動させると、チュートリアルと言う文面が網膜に表示される。後に付けたヘッドセットが、その効果をもたらしているようだ。
「こっちは網膜で表示されるのね。それ以外の動かし方はMSと一緒なの」
感心しながら、網膜に表示された操縦方法を見て、ペダルや操縦桿を動かし、操作のコツを掴もうとする。チュートリアルを終えると、ヘッドセットのイアフォンから声が流れてくる。声は女性オペレーターの物であり、声が聞こえたのと同時に網膜に外の映像が映し出される。
『上級大尉、失礼します。自分は貴方の補佐を担当する水城マナと言います。大体の操縦方法は分かりましたか?それじゃあ、演習場に向かいながらコツを掴んでください。目的地は網膜に表示されます』
「この矢印?」
『そうです。目標の場所へ向かってください。ペダルを踏めば歩けます』
オペレーターのマナの指示に従い、保管倉庫のゲートが開いた場所へ向かって歩き始めた。シューベリアの乗っているラファールは鈍くさい動きをしていたが、随伴していた別の戦術機に支えられながら、なんとか前へと進んでいる。外から差す光が段々と近付き、やがてマリが乗ったF-15Eは倉庫の外へと出ることに成功した。
カミーユ「セ○クス!」
Zガンダムは出ましたが、カミーユは出て来ません(笑)。
それとザシャの部下達のキャラ・・・完全に"アレ"だな、うん。
ヴァンキッシャー隊メンバーから漂r
~今週の中断メッセージ~
超簡単な説明。
MSZ-006 Zガンダム
機動戦士Zガンダムの後期の主人公機。
機体性能は凄く高く、40年後の機体に匹敵するほどである。
ちなみにキレやすいパイロットは、TV版と劇場版で末路が違う(笑)。
MS-06-E3 ザクフリッパー
頭部がモノアイじゃなくて、三つ目になったザク。
クソ脆いザク強行偵察機の強化型である。ちなみにZガンダムには出てない。
持っているシールドはゲルググの物。
ゲム・カモフ
IGLOOに出て来る偽ジム。ジオンが開発したジムのぱちもの。
連邦艦隊の侵入する為に使用された。遠くで見れば、ジムと見違うが、近場で見ればはっきりと違いが分かる。
MS-05 ザクⅠ
通称旧ザク。史上初めての実戦配備用MS。
一年戦争では旧式化しているのか、後方支援に回されている。
ガデムがこれに乗ってガンダムに勝負を仕掛けて死んだ。
ovvーf ガフラン
ヴェイガンが地球圏に初めて投入した量産型MS。
生物的な滑らかなデザインをしており、変形すればドラゴンみたいになる。
投入から数年ぐらいは優位であったが、ガンダムAEG1の登場により、優位が崩れた。
最終決戦にまで運用される程、愛着が持たれている。
RRf-06 ザニー
連邦軍がぶん捕ったザクをベースにして作ったMS。
頭はジムみたいなバイザーで、ガンタンクの大砲を担いでいる。
手足も独自な物に変えた所為なのか、ザクみたいな性能だったので、陸戦型ジムが配備されると、早々と配備は打ち切られた。
ZGMF-1017M ジンハイマニューバ
ザフトの新型機の足繋ぎとして開発されたジンの高性能機。
実はクルーゼが量産型一号機に乗って、月でフラガと戦っている。
ちなみにエンジンはミーティアの元である。
MS-06F ザクⅡF型
言わずとしれたジオンの主力機ザク。派生型が沢山ある。
初の投入から終戦まで使われ続けた愛着のあるMS。ぶっちゃけジオンを象徴するMS。
屈指のやられMSである。
ムサイ軽巡洋艦
ジオンがMS運用目的で設計して開発した宇宙の軍艦。
大気圏突入ポッドであるコムサイが艦体下部付いている。
対空砲らしき物が見当たらないので、連邦軍の艦艇より滅茶弱い。
派生型は沢山あり、ムサカと呼ばれる艦艇も終戦から13年後に出て来ている。