復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
なんか・・・アニメ版銀英伝第一話・・・
そしてマリは今後の戦いのために髪を切る・・・うっ、頭が!
惑星アスターの地上戦から三日後、あの場にいなかったノエルと京香はこの世界における司令本部の通信室に居た。暗い部屋の中で、中央の壁に設置されたモニターに映し出された金髪の年配女性は、かつての神聖百合帝国総統クレメンティーネ・フォン・ブラウンシュバイクであった。
ワルキューレに鞍替えした彼女の今の役職は上級司令官であり、ノエルや京香より遙か上の存在である。
「そ、総統閣下・・・」
「総統閣下・・・?」
かつて属していた陸軍情報局の癖か、それとも緊張か、ローマ式敬礼を行うノエルを見て、通常式敬礼をしている京香は、上官をネオナチに属している人物なのかと疑う。画面に映る人物は、ノエルにその敬礼を止めるよう告げる。
『おやめなさい。もうあの帝国は滅びたのだから』
「は、はい!総統閣下!」
『その呼び名もやめなさい。今の私は百万人ほどいる珍しくもない上級司令官よ』
「失礼しました!」
謝罪の言葉を発したノエルは通常の軍隊式敬礼に変える。
『で、貴方は確か・・・』
「帝国陸軍情報局の東大陸北部地方出身のノエル・アップルビー少尉です」
『そう、陸軍の・・・貴方もワルキューレに入った口?』
「
ノエルが返答した後、クレメンティーネは視線を京香に向けた。
『そちらは・・・ただの人間ね』
「はい、ただの人間であります」
京香がクレメンティーネからの質問に答えた後、ノエルはかつて百合帝国の最高頭脳を誇った総統に、元皇帝陛下であるマリをどうやって組織から隠す知恵を貰おうとした。
「あの・・・ブランシュバイク上級司令官。皇帝陛下・・・ヴァセレート上級大尉をどうやって組織の襲撃から隠しましょうか・・・?」
『あの我が儘女帝を今話題になっている組織とか言うかつて我が帝国が滅ぼした筈のムガルの残党から守る?』
「はい、三日前に組織から送られてきた刺客にヴァセレート上級大尉が襲われた次第です」
三日前にマリが組織からの刺客に襲われたことを、かつての総統に報告する。その報告を耳にしたクレメンティーネは、即座に結論を出した。
『そう・・・じゃあ、一回マリには死んで貰いなさい』
『えっ!?』
クレメンティーネが出したマリに死ねと言う結論に、ノエルと京香は驚愕する。
「そんな!貴方は陛下に死ねと仰有るのですか!?」
「いくら上級大尉さんが貴方より綺麗とはいえ・・・!」
『別に死ねという訳じゃないわ。表向きはこれから行われる大規模な遠征作戦中に死んだってことにね』
この言葉に、ノエルと京香は直ぐに理解した。上官であるノエルよりも先に、京香が直ぐに画面の人物に再確認の質問を行う。
「表向きは、次の作戦で戦死ってことで?」
『表向きはね。その作戦中に戦死ってことになるわ。でも、死を偽装させるためにはなにか物足りないわね・・・そうだわ、あの女に髪を切らせなさい』
答えた後、女にとってはとんでもない事を思い付き、それを口にするクレメンティーネに、二人は少し困惑し、ノエルが何故髪なのかを問う。
「どうして髪を切るのですか?」
『あの美貌と腰まで届く長い金色の髪はワルキューレ内には殆ど居ないわ。同様の容姿に値する人物も手で数えられる人数しか居ない。内部に組織の内通者でもいれば直ぐに割り出される。同じ髪型にして上手く姿を暗ませるしかないわ』
この納得のいく答えに、二人は口を出すことが出来なかった。
一方のマリは本部の事務室にて、空いている席で始末書の山と格闘していた。
「なんで軍人じゃないのに書かなくちゃいけないのかしら?」
長い金色の髪を退けながら、書類にペンを走らせる。
軍隊としては、あれ程の問題行為を立て続けて起こす人物に対し、反省の意思を見るためとして始末書を書くことは当然のことであるが、彼女は軍人としての自覚は一切無い。始末書の隣に煙草を一箱と灰皿、珈琲を置いている。何枚か仕上げた後、自分の前髪を掴んで弄ってから呟く。
「髪・・・切ろうかしら・・・」
そう呟いて前髪を離した後、始末書の執筆に集中した。数時間後、出された始末書は全て書き終え、受付に纏めて手渡す。
灰皿の炭を片付け、珈琲を全て飲み終えれば、火の付いた煙草を一本咥えながら事務室を出る。室内勤務の将兵が行き交う廊下で、自分の宿泊地まで向かっていると、上級司令官であるクレメンティーネから知恵を授かったノエルと京香と出会した。
「あら、どうしたの?そんな顔して」
先程の案で、浮かない顔をしている二人を見てマリが問う。問いに対して口籠もったままであったが、京香がようやくの所で口を開いた。
「か、髪・・・」
「紙?」
上手く言えない京香の代わりにノエルが答えた。
「あの、こちらで」
人気の少ない場所にマリを連れ込み、クレメンティーネから出された案を彼女に話した。
「そう・・・死を偽装するために髪を切れってね・・・」
「はい・・・どう申して良いか・・・」
悩むノエルと京香に対し、マリは気軽に口を開いた。
「良いわよ、丁度邪魔ぐらいに伸びてたし。それに一々ヘルメットを被る度に結ばないといけないしね」
髪を弄くりながら話すマリに対し、京香は疑問に思っている事を口にした。
「あの・・・つかぬ事をお聞きしますが・・・女王様は髪切ったら生えてこないじゃ・・・」
「はっ?不老不死でも伸びてたけど?ほっといたら凄く伸びて大変だったもん。短く切っても暫くすれば元に戻るから」
「そうですか。では、自分は仕事があるので。失礼しました」
「私も失礼します!」
頭を下げて礼をした後、京香は立ち去っていった。それと同時にノエルも立ち去る。一人残されたマリは伸びに伸びた髪を短くするべく、基地内の美容院を目指した。
「いらっしゃいませ。カットですか?それともパーマ?」
「カットで。髪型はショートカット」
「丁度席開いてるんで、そこにお座り下さい」
美容院にはいると、マリは挨拶をしてきた店主にカットを願い出た。数十分後、マリの腰まで届いていた金色の髪は項まで留まり、前髪もある程度切られ、視界がある程度確保できた。
「出来ました~ご注文のショートカットです」
「ありがとう。切った髪は束ね解いて」
「何でです?」
「使う予定だから」
切った髪で死の偽装を行う為、担当していた美容師にそう告げて束ねて貰う。束ねた切り落とされた自分の髪を持ち、軍票を支払ってから美容院を出た。
「ありがとう。じゃあ」
次の日、クレメンティーネの言っていた遠征に参加する為の搭乗艦の視察を行うべく、宇宙港へと向かった。ちなみにシューベリアは遠征には参加せず、総司令部があるこの惑星に残る。
「どの艦に乗艦しちゃ駄目ってこと?」
「そうなります。ちなみに、私達が乗る艦艇はブリュンヒルデ級万能次元航行揚陸艦バルキュリャです」
「古ノルド語かしら?」
宇宙港に向かう通路にて、ノエルから聞いた自分等が乗る艦の名前を知ったマリは、既に死語となっていか、ワルキューレにおいては未だに地方の極少数の言葉を口にする。数分後には宇宙港へ到着し、バルキュリャがある場所を確認してからそこへ向かう。艦のクルーの詳細を知る為、マリは隣に歩くノエルに聞いた。
「所で、クルーとかは聞くとおりエリート揃い?」
「あぁ、その・・・陛下に配慮して、乗員は全て女性にしました・・・」
「それはありがたいんだけど、どうしてエリート揃いで口籠もっちゃったのかな?」
肝心なところを答えなかったノエルに対して怪しく思ったマリは続いて問うが、彼女はその事に関しては以前と口を開かない。しつこく聞いても、別の答えを返すだけだったので歩調を乱し、ノエルの背後に回って彼女の掴めるほどある胸を両手で鷲掴みにして揉み始めた。
「本当のことを言わないと止めないぞ~」
「ひゃっ!こ、こんな所で!?は、話しますからこんな所では止めてください!!」
「それでよし。でっ、本当の人員は?」
赤面するノエルの胸から手を離したマリは、周囲を気にする彼女に問う。
「貴方の思うエリート揃いの人材とは違い、人材は容姿だけが優れた適当な人員か新人ばかりです。艦長は退役した輸送艦の元艦長で実戦経験は一応あります・・・」
「あのババア、マジで私を殺す気ね」
目の前で未だに顔を赤らめているノエルからの答えに、彼女に聞こえないよう小声で愚痴を漏らす。実態を確かめようとドックへ急ぐと、全長460mはある大型艦艇が停泊している。その大型艦の甲板に、マリを出迎える為か、艦長を含めた乗員達が五列に整列していた。
乗員はノエルが通路で教えたとおり、全員女性で顔立ちは幼い者や妙齢、年配、少女の者まで居る。体付きも成熟し、特に妙齢や年配の者達は性的な魅力に溢れていた。乗員達が敬礼を終えると、京香と艦長らしき若い女性が二人の元へやって来る。
「ご視察ご苦労です。我々が乗艦する予定のバルキュリャの乗員達です」
敬礼してから例の言葉を告げ、乗員達に対して手を翳しながら説明する。
「そう。で、みんな私とする為か心中する為に集められたなの?」
「貴方専門の娼婦が乗った船じゃありません」
冗談めいた事をマリが言った後、もっともらしい事を京香が告げた。
次に隣に立っている艦長の紹介を始める。
「こちらがバルキュリャ艦長の・・・」
「お、オロンピア・カラマンリスです!」
名乗った艦長の若い女性は、マリを上位階級の者と勘違いし、緊張しながら敬礼する。それに気付いた京香はオロンピアにマリが下の階級の士官と告げる。
「カラマンリス艦長。ヴァセレート上級大尉だから敬語・・・」
「あっ、京香ちゃん。この前通達があって、陛下は少佐に昇進したよ」
「ありゃ、先輩と同じ階級に。艦長、ため口で良いですよ」
ノエルからの知らせで、京香はオロンピアに、マリに対して楽に接して良いと告げる。
「そうなんですか?よろしく、ヴァセレートちゃん」
言われたとおり楽に接してきたオロンピアは、マリに握手を求めた。
「えぇ、よろしく」
出された手をマリが気軽に取った後、バルキュリャ船内の案内を行った。
ワルキューレにおいて、時空管理局領内への武力制裁の遠征の為、15000隻編成の八個艦隊と25000隻編成の二個遠征艦隊、六個軍で編成された第9遠征軍が投入される事がそう参謀本部で決定された。
第9遠征軍は途中、中央の最前線区まで纏まって進むが、最前線から敵領域内へ入ると、二つの分隊に分かれ、第1分隊が連邦領土内の西から、第2分隊が同盟領土内の東へと北の星系の管理局領土内へ進むことになる。第1分隊と第2分隊も、纏まって行動せず、それぞれ西と東から北を目指して進む。
二つの分隊の陣形はどれも同じく、二個艦隊を後衛に担当させ、もう二個艦隊を側面の担当し、遠征艦隊は前衛を担当する。損害を受けたときも考慮して、損害の大きい部隊は三個軍の護衛について貰うことになる。航行不能となった艦艇に対しては、爆破処理を施し、乗員達は拿捕した敵艦か、三個軍の輸送艦隊に乗り込む。
マリ達は西から北へ向かう第1分隊の遠征艦隊の所属となる。
遠征艦隊の提督はクレメンティーネ・フォン・ブラウンシュバイクの娘、デリア・フォン・ブラウンシュバイク大将が務める。
この艦隊には偶然にも艦隊所属の競合師団に組み込まれたヴァンキッシャー隊や、艦隊の人員が全て女性に編成された2500隻はある分艦隊の長を務めるアスター戦で対地支援を担当したピーチ・グラフム・ロデリオンも居た。ちなみに、マリ等が乗るバルキュリャはピーチの分艦隊所属となる。
この作戦の準備期間はサザーランドにおける戦いが終わったときから進められていた。先の惑星アスターの叛乱軍蜂起の鎮圧については、管理局領内にある惑星制圧のデータ収集にしか過ぎないとされる。準備期間を終え、第9遠征軍が中央に位置する防衛線に集結する中、ピーチの分艦隊に属するバルキュリャのブリッジから集結する大艦隊をマリは眺めていた。
「蛍が集まってるみたい・・・」
「まぁ、ぶっちゃけ宇宙軍の人じゃないと遠目で見たら、蛍が集まっているようにしか見えないから」
隊列を組む艦艇をマリが見てそう表すと、オロンピアは「見方が合ってる」と告げた。軍属が短い彼女から見れば、蛍が集まっているようにしか見えなかったのだろう。
大艦隊の中に自分達の分艦隊が入り込み、隊列を組むと、多数の補給艦が補給のために分艦隊の艦艇に接触してくる。どうやらここまで来た分を補充する為であろう。補充が満タンになれば、補給艦は離れて行く。
集結を終えた第9遠征軍はエンジンを吹かして防衛線から出発し、安全なルートとされる中央を通って最前線基地を目指した。道中、前線なだけに敵の襲撃があったが、随伴した他の艦隊の御陰で遠征軍の損害も皆無であった。やがて四日掛けて最前線基地へ着くと、随伴していた艦隊は戦列から離れ、遠征軍は十分な補給を終えた後、当初の予定通り西と東に分かれ始める。
『各艦隊に通達する。我が第1分隊は西へ目指す。この先補給は帰るまで受けられない。いわゆる自給自足だ。だが、何らかの場合によって備蓄が尽きれば、海賊行為で物資を奪って賄う。各員この事態に陥ないよう節約に努力せよ。以上だ』
「補給が受けれない・・・マジで私を殺すつもりかしら?」
西から北へ向かう第1分隊の陣形が組まれる中、モニターから第1分隊の司令官の通達が入ってくる。それを見ていたマリはそう呟いた。陣形が整うと、マリ等第1分隊は予定された陣形を組みながら北西に向かって進み始める。
こうして、彼女に取っての殺戮の旅となる遠征が始まった。
ぶっちゃけ主人公以外、女だけの軍艦ってどうよ?まぁ、マリが女だから女性だけだけど。
~今週の中断メッセージ~
魔術師ヤン・ウェンリーによる次回予告。
ヤン「えっ、この私に次回予告をやれと?台本は?」
台本が出される。
ヤン「成る程・・・しかし、この私にはナレーターの才能は無いんだぞ。それでもやれって言うのか?」
コクリ
ヤン「仕方がない。やるか・・・えーと、【次回、ワルキューレの遠征軍は二手に別れ、管理局の領内へと目指すことになった。】」
ヤン「【西から向かう第1分隊は連邦軍と対処し、東から向かう第1分隊は同盟軍と対処する。】」
ヤン「【マリが属する第1分隊の存在を知った連邦軍は、当戦線の火消しであるフリッツ・アプト中将率いる宇宙軍第11遊撃艦隊と、宇宙軍二個艦隊と宇宙海軍二個艦隊を差し向ける。】」
ヤン「【果たして、マリは第1の試練を乗り越えることが出来るのか?次回、
ヤン「ふぅ~、柄じゃないな・・・」ベレー帽を被り直しながら。