復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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前回のあらすじ 「柿崎ぃぃぃぃ!!!」


艦隊戦

 第11遊撃艦隊ことシュヴァルツ・ランツェンライターとの戦闘に勝利したデリア率いる遠征艦隊は逃げ去る敵の残存艦艇を無視し、当初の目的地へ進行を再開した。

 

「提督、敵の残存部隊は放っておいて宜しいのですか?」

 

「精鋭部隊とはいえ、あれだけの損害を負ったのだ。反撃など不可能さ。彼等にはもう敗走でしか選択肢はあるまい」

 

 旗艦ウンター・ガングのブリッジにて、隣に立つ背丈が190㎝程はある長身の副官が問いに対し、玉座のような専用の椅子に腰掛けるデリアはそう答える。

 

「敵艦隊、レーダー圏外へ逃れました!」

 

「偵察機より報告、黒い騎兵隊、折レタ槍ヲ担ギナガラ敗走セリ」

 

「行ったとおりだ。彼等精鋭が再び戦場に戻るには、半年くらいはかかるさ」

 

「何しろ精鋭部隊ですからな。良くあれだけの手勢を揃えた物ですよ」

 

 レーダー手や通信士からの報告を耳に入れたデリアは、副官に表情を浮かべながら告げる。副官はそれに笑みを浮かべて答えた後、上官の代わりに指示を出す。

 

「各艦、警戒態勢を維持したまま待機。傷付いた艦は補修作業を急げ。補修が済み次第、目的地へ向けて進行を再開する」

 

 各艦艇は指示に応じ、傷付いた艦艇は工作艦から補修作業を受け、戦闘可能な艦艇は警戒態勢を取った。エネルギー切れ寸前なマリのガンダムMkⅡは母艦であるバルキュリャへと帰還する。録画していたマリの活躍を見ていたデリアは新たな期待を胸に抱き、受話器を取って第1分隊本部と連絡を取る。

 

「第1分隊本部へ、ロデリオン分艦隊に新しいMS一機の配備を願いたい」

 

 子供のような笑みを浮かべながら、デリアは相手に告げた。一方、母艦であるオリフラームへ帰投したザシャは自室に戻り、ベッドへ腰掛けて本を読んでいた。彼女の部屋はそれなりの戦果を上げたことを認められたのか、士官用の個室だ。

 部屋は少し変わっており、棚にはドイツ帝国時代の軍用複葉機フォッカーD.Ⅶ、ドイツ国防軍の偵察機・連絡機Fi156シュトリヒ、急降下爆撃機ユンカースJu87スツーカがぬいぐるみと共に飾られていた。とても女性の部屋とは思えない。

 脱いだパイロットスーツはクローゼットの中に掛けられ、今着ている制服の階級章には中尉を示す紋章が刻まれている。待機命令が出ているはずだが、代わりの部隊が展開している御陰でこうしてゆっくりと本を読むことが出来る。そんな本を読んでいるザシャの元へ来客が訪れた。

 

「どうぞ」

 

 ベルが鳴って入るように伝えると、相手が自動ドアを開けて入ってくる。その入ってきた相手は少佐扱いのマリであった。

 

「貴方は・・・!」

 

「やっほー、ザシャちゃんが乗ってたあのバルキリーの操作について教わりに来ちゃった」

 

「は、はぁ・・・?」

 

 突然やって来て少女のような笑みを浮かべて告げるマリに、ザシャはついてこられないでいた。長身の彼女の後ろには、チェリー、千鶴、ペトラのザシャの部下達が居る。どうやらマリに案内をさせられた様子だ。

 

「教えてくれるかな?あのバルキリーの乗り方」

 

「はい・・・それと、その格好はなんとかならないのですか?」

 

「え、これ?良いじゃん別に」

 

 マリの格好を見たザシャは、なんとかならないのかと注意した。その彼女の格好は、上の方はバルキュリャで着ていたいつもの勤務服であったが、下はミニスカにガーターベルトであった。黒いストッキングがマリの健康的な脚の魅力を際立たせ、さらにミニスカと黒いガーターベルトの間には、彼女の白くて肉付きの良い太腿が見える。

 ガーターベルトを身に着けた彼女の美貌は、同姓ですら目のやり場を困らせる程の威力だった。

 

「はぁ・・・じゃあ、ハンガーまで来てください」

 

「OK」

 

 溜め息をついたザシャは、本にしおりを挟み、ベッドから立ち上がって部屋を出た。

通路を歩いている最中、通り過ぎていく空母の乗員達は足を止めてしまい、マリの脚に目を取られる。道中、ザシャは指でチェリーを呼び出し、後ろからついてくるマリに聞こえないよう小声で問う。

 

「ねぇ、チェリーちゃん。なんで案内したの?」

 

「すすすすみません!遂パフェを奢っちゃうと買収されちゃって」

 

「アホの子・・・」

 

 自分の上司が小声で問うたのに対し、チェリーは普通の声量で答えてしまい、千鶴に貶される。

 

「まぁ、そう言う事だから。さぁ、トレーニング♪」

 

 このマリの小悪魔のような笑顔に四人は呆れ返る。ハンガーへ着いた五人は予備のVF-25Aメサイアの元へ向かう。二十数機以上の各種類のVF-25が並べられ、いつでも出撃できるよう整備されている。

 近くにいた担当の整備班長にシミュレーターの許可を貰った後、マリはドックファイト用であるVF-25Fに乗り込む。

 

「本当は練習機に乗って欲しいのですが、生憎と戦闘以外は飛行禁止命令が出てますので・・・」

 

「へぇー、そうなの」

 

 コクピットの近くでザシャはマリに愚痴を漏らす。操縦席に座るマリは適当に返事をしてザシャからの講義を受ける。講義をほぼ理解した彼女はキャノピーを閉め、シミュレーションを開始する。

 

『それでは、戦闘シミュレーションを開始します』

 

「OK、戦闘シミュレーション開始。フィールドは宇宙」

 

 インカムを付けて端末機を持ったザシャが指示を出すと、マリは返答して戦闘する場所を告げる。

 

EX(エクス)-ギアとか言うのを着ないと乗れないってマニュアルに書いてあったわね・・・」

 

 独り言を喋りながら戦闘シミュレーションの設定を行う。

 

「設定完了。これより戦闘シミュレーションを開始する」

 

 設定を終えると、マリは戦闘シミュレーションを開始した。

 

 

 

「なに、虎の子の第11遊撃艦隊が敗れただと?」

 

 その頃、戦国ワールド連邦軍本部の司令室にて、フリッツ・アプト宇宙軍中将が率いる第11遊撃艦隊通称シュヴァルツ・ランツェンライターが破られたことが司令官に報ぜられた。

 

「はっ、現在攻勢中である同盟軍の一個艦隊を敗退させた後に敵遠征艦隊に側面から強襲を受けて敗退しました」

 

「漁夫の利をされたか・・・して、アプト中将は?」

 

 報告しに来た部下に対し、次に司令官はフリッツの生死を問う。

 

「シュプリンガーは少々の損傷であり、アプト中将には傷一つありません。しかし、中将の艦隊の再建はかなりの時間を要するでしょう」

 

「そうだな。では、アプト中将にはペガサス級でも与えて惑星アヌビスで地上勤務でもやらせるか」

 

「は、はぁ・・・では、アプト中将にはそう伝えます」

 

 窓の向こう側を見ながら告げる司令官に、戸惑いながらも部下は復唱する。次に司令官は遠征艦隊の動向を問う。

 

「で、遠征艦隊の監視はどうなっている?」

 

「傷付いた艦艇の修復を終えた後、目的地である北方を目指して現在進行中です。工兵隊による進行方向に機雷原構築の陽動のため、コロニー連合軍(UCA)の艦隊が側面から襲撃します。それと宇宙軍第28艦隊と第43艦隊、宇宙海軍の第7機動艦隊と第15艦隊が惑星アヌビス衛星軌道上に到達。そのまま予想進行宙域に直行し、そこで包囲陣形を取り、待ち伏せします」

 

 報告を聞いていた司令官は、部下の元へ振り返り、口を開く。

 

「あのシュヴァルツ・ランツェンライターを破った連中だ・・・おそらく指揮官はかなりの実力者・・・まぁ、包囲網構築の時間稼ぎにはなるだろう」

 

 口を動かしながら部下の元へ向かい、圧力を掛ける。

 

「では、私は同盟軍の対処に当たる。追い払うまでには奴等を掃除しておけよ?」

 

「は、はっ!同盟軍が我が勢力圏内から居なくなる前に、ヴァルハラ軍を倒して見せます!」

 

 部下は額に汗を浸らせながら復唱した。そんな部下の姿を見た司令官は、彼の肩を軽く叩き、司令室を後にした。

 

 

 

 VF-25Fのシミュレーションを終えたマリは、敵艦隊の襲撃のアラームを耳にする。

 

「アラーム・・・ここは連邦軍の勢力圏内だから、襲撃かな?」

 

 近くで整備を行う整備兵が呟くと、機体から降りていたマリは、先程乗っていたメサイアに視線を向ける。その場にいる整備兵やパイロット達が戦闘準備のために動き回っていると、アナウンスが流れ始めた。

 

『左側面より敵艦隊の強襲。敵艦隊の数は二十数隻ほど。艦載機の発進を多数確認。陽動と考えられる。小規模の敵艦隊の対処には左側面の分艦隊が担当するため、我が第6競合師団の出撃の必要は無い。各部隊は待機命令を継続せよ。以上』

 

 このアナウンスで、ハンガーにいた整備兵とパイロット達は動き回るのを止め、元の位置に戻る。

 

「ちっ、スコアはあちらさんのか・・・」

 

 パイロットスーツを着込んだ兵士が、悪態をつきながら自分が来た道を戻ろうとしていた。アナウンスが流れている最中にVF-25専用のパイロットスーツに着替えを終えていたマリは最後部分だけ聞いて落胆したが、無理にでも出撃しようと思い、先程乗ったVF-25Fの元へ向かう。

 

「あの、少佐。そんな格好をして、まだ出撃命令なんて・・・」

 

 ザシャがマリに話し掛けて止めようとするが、等の彼女は止まる気配はない。

 

「そんなの関係ないわ。私はやりたいことだけする」

 

 そう言って答えたマリは予備機のVF-25Fの元へ向かおうとした。それを見たザシャ達はマリを止めようとする。

 

「それは命令違反よ、デカ乳。憲兵!こっちに・・・」

 

 まず初めにマリに触れたペトラが憲兵を呼ぼうとした瞬間、気付く間もなく押され、尻餅をついた。次に千鶴が立ち向かうが、意図も簡単に倒されてしまう。

 

「ふにゃ!?」

 

 普段は出さない大きな声を出し、千鶴は床に転ぶ寸前でマリに抱き抱えられ、ゆっくりと降ろされる。残ったのはザシャとチェリーだが、敵わないと判断してマリに道を譲る。そんな彼女に次の挑戦者達が現れる。

 

「おい、これはうちの大隊の予備機だぞ!勝手に乗ろうとするな!」

 

 マリを指差して告げる大尉の階級章を付けた男は、部下達と共に立ち向かう。等の彼女は一々相手にするのが面倒臭かったのか、瞬間移動を使って一気に機体の元まで向かい、何気なくコクピットに乗り込む。

 

「ふぁ、ファル大尉!あの女がもうあんな所に!?」

 

「あいつ・・・能力者か!ハーラー、憲兵を呼んでこい!」

 

 ファル大尉と呼ばれた男はハーラーと呼ばれる部下に憲兵を呼んでくるよう伝える。VF-25Fに乗り込んだマリはエンジンを起動させ、計器チェックを行う。チェックを行っている最中、計器右のモニターにインカムを付けた女性管制官の顔が映る。

 

『D旅団第5大隊予備機に搭乗している佐官の方、直ちにエンジンを停止させ、降りてください!』

 

 管制官からの警告の通信が来るが、マリは無視して出撃の準備を進める。そんな彼女に管制官はしつこく降りるよう勧告してくるが、逆にマリは機体を人型形態であるバトロイドに変形させ、エレベーターをぶち破ってでも出撃しようとする構えを見せた。

 

「さっさとエレベーターを上げなさい!でないと突き破ってでも出るわよ!」

 

 軍隊として銃殺刑レベルの行動を起こすマリに対し、ハンガーに居たパイロット達は各々の機体へ乗り込み、彼女が乗るメサイアを撃つつもりでいた。周囲で銃口を向ける人型兵器達を見たヘルメットを被っていたマリは額に汗を浸らせる。緊張感が続く中、モニターにデリアの顔が映る。

 

「あんた、あのババアの・・・!」

 

『卿の出撃を許可する。専用の高機動オプションを身に着け、生け贄とされたUCAの艦隊を殲滅してまいれ』

 

 突然割り込んできては、勝手なことを言う本艦隊のデリアに対し、競合師団の師団長は講義する。

 

『し、しかし・・・それは側面の部隊が・・・』

 

『私が許可したのだ。卿はそれに黙って従ってだけば良いことだ』

 

『か、畏まりました!D旅団第5大隊の予備機のメサイアにSPS-25Sスーパーパックを装備させろ!!』

 

 師団長に命令を受諾させたデリアは、何かを良からぬような笑みを浮かべながらマリに告げる。それを聞いたマリは、機体をファイター形態に変形させる。銃口を向けていた最新式の人型兵器達は、元の位置へと戻り始めている。

 

『さて、卿にはまた楽しませて貰うぞ。今宵の”前菜”としてな』

 

「あんたも親に似たわね・・・でっ、”主食の方”は?」

 

 専用の装備を取り付けている最中、マリは”主食”について問う。

 

『主食は連邦宇宙軍や海軍の艦隊だ。まぁ、有能な指揮官がいればの話だがな』

 

「そっ。流石はあのババアの娘ね、結構変わってるわ。本当にメガミ人なの?」

 

『ふん、母を美貌以外の物しか持たぬ弱い亜人と一緒にされては困る。母は特別なのだ。卿が百合帝国の皇帝に慣れたのは母の御陰であると知れ』

 

「ぷっ、マザコン・・・」

 

『なにか言ったか?では、楽しませてくれ』

 

 母を慕うデリアに対し、マリは聞こえないように小声で彼女を「マザコン」と表した。そんな会話をしている間に、目の前には宇宙空間が広がるカタパルトまで着いていた。デリアからの通信が途切れると、マリは電子掲示板のカウントダウン0になったのを確認すると、操縦桿を握り、ペダルを踏み込み、無数の味方の艦艇が航行する宇宙空間へと飛び出した。

 敵艦隊が来ている方向を目視で確認すると、メインブースターを噴かせ、戦地へと向かった。無線機で迎撃部隊の通信を傍受する。

 

『各中隊、迎撃フォーメーションAG-1を取れ。奴等はある程度やったら帰るわ』

 

 前方に見えるファイター形態のVF-11CサンダーボルトにVF-171ナイトメアプラス、MSの行動半径を三倍に伸ばす宇宙用の89式ベースジャンバーに乗ったジムⅡとジムⅢが迎撃編隊を取っていた。どうやらミサイルを撃って相手と撃ち合うらしい。

 レーダーを確認すれば、同じ数ぐらいの敵機が似たような編成を取りながら前進しているのが分かる。

 

「時間が掛かるわね・・・まぁ、最善策だけど」

 

 陣形を取る迎撃部隊の事を言った後、マリはミサイルが発射されるのを待った。数秒後、ミサイル発射の合図が無線機から聞こえ、各機体はミサイルを敵機に向けて発射する。それに合わせてか、敵部隊もミサイルを撃ってきた。

 発射された敵味方のミサイルがレーダーに映り、センサーに捉えた目標へと飛んでいく。敵味方のミサイルが互いに命中すると、残ったミサイルは敵機へと向かった。これに合わせて、マリはブースターを噴かせて前に出た。

 

『ちょっと!勝手に前に出ないで!!』

 

 迎撃部隊の隊長機から通信が入るが、マリは無視して敵機を叩きに向かう。ミサイル攻撃で何機か減っていたが、それでも迎撃部隊を十分に殲滅できるほどの数が居る。

 UCAの戦闘機や攻撃機、専用カラーであるカーキ色のジェガンやジェノアスⅡ、スコープドックがマリの乗るVF-25を見るなり機関砲やビームを撃ってくる。

 

「SU-27か?」

 

『馬鹿野郎、あれはVF-1の新型だ!』

 

 UCAのパイロット達はVF-25を通常のF-14ファントムやファイター形態が似たシルエットを持つVF-1バルキリーと勘違いした。先に目撃して口を開いたパイロットが乗る戦闘機はVF-25のガトリングポッドで蜂の巣にされ、爆散させられる。次に変則的な機動を取りながらヘビィマシンガンや無反動砲を撃ってくる複数のスコープドックをロックオンし、マイクロミサイルを撃ち込んだ。

 ロックオンされたATは手に持ったマシンガンでミサイルを迎撃するが、間に合わず、何機かが撃墜されてしまう。張り付いたジェガンは、シールドミサイルを撃ちながら接近を試みるが、バトロイド形態に変形したメサイアの頭部両耳部のレーザー機銃二問の掃射を胴体に受け、数秒後に爆発する。これを見たパイロット達は、単機で大多数の敵機を翻弄するマリの強さに恐れ戦く。

 

「な、なんて強さだ・・・!」

 

「博物館送りのVF-1じゃねぇ!最近出て来た可変戦闘機だ!!」

 

 ようやくメサイアが新型機に気付いたパイロット達であったが、どうこうしている間に迎撃部隊のVF-11やVF-171、ジムⅢが到着し、乱戦状態となる。この時を待っていたのか、マリはVF-25をファイター形態に変形させ、艦砲射撃を行う敵艦隊に向けて飛ぶ。それに気付いてか、手が空いた戦闘機やジェノアスⅡが追ってくる。

 機銃やビームが後ろから放たれるが、マリは器用にそれを開始し、敵艦隊へ向けて突撃する。

 敵の艦艇の数は二十五隻、UCAの標準的な巡洋艦と駆逐艦、護衛艦、空母、軽空母を合わせて十五隻隻であったが、残る八隻は参加国の連邦軍のマゼラン改級戦艦、サラミス改級巡洋艦であった。直援機や艦載機が護衛についていたが、今のUCAにマリに敵うパイロットは居ない。

 

「ヤフォーイ!!」

 

 気分が高騰したマリはコクピット内で大きな声で叫び、右端のマゼラン改級戦艦一隻とサラミス改級三隻の方へ向かった。四隻全てにマイクロミサイルをロックオンし、一斉に放つ。標的にされた四隻は対空弾幕を張るが、撃ち落としきれず、全艦撃沈された。

 巻き上がる爆煙の中からマリが乗るバトロイド形態のVF-25が現れ、護衛艦に向けて左腕シールドから取り出したアサルトナイフを投げ付ける。船体に突き刺さったナイフを手に取り、横に思いっ切り切り裂いて、ガンポッドをエンジンに向けて撃ちまくって撃沈させた。

 

「無駄無駄ぁ!」

 

 護衛艦を沈めたマリは飛んでくるミサイルや機銃、ビームを回避しながらありったけのマイクロミサイルを全ての標的に向けて放つ。何発かは迎撃された物の、迎撃しきれずに命中し、数隻ほど撃沈できた。

 残った艦艇は前線から艦載機を戻して護衛に当たらせてはいたが、マリの猛攻は止められず、次々と沈められていく。遂に旗艦である巡洋艦にまで接近され、ブリッジへとナイフを突き刺した。ナイフを引き抜いた後、巡洋艦の船体にガンポッドと頭部両耳レーザー機銃で一斉射撃し、旗艦を沈めた。

 

「これで終わりみたいね・・・」

 

 撤退していく残存艦隊を見て、マリは戦闘が終わったことを確認する。護衛機を引き連れた円盤型のレドームを搭載したVE-11サンダーシーカーが現れ、敵が潜んでいないか探索を行っている。

 後続に任せることにして、マリは発進した空母オリフラームへと帰投した。遠征艦隊進行上に機雷原が構築されるはずであったが、構築途中で前衛部隊に強襲され、撤去されてしまった。ある程度の足止めにはなった物の、遠征艦隊を待ち受ける宇宙軍と宇宙海軍の連合艦隊の予定は大幅に狂うこととなる。

 

 

 

 して、待ち伏せを行う惑星アヌビスの衛星軌道上に展開する宇宙軍と宇宙海軍の連合艦隊は、陽動と機雷原構築の失敗が報ぜられる。

 

「UCAが陽動と機雷原構築に失敗したか・・・」

 

 旗艦”呉”のブリッジで、専用の席に座る宇宙海軍第7機動艦隊の提督であるチェ・ボム中将は報告を聞き、腕組みをしながら目を瞑り、黙り込む。暫く黙り込むと、何かを思い出したかのように目を開き、指示を出した。

 

「各艦隊、包囲陣形を組みつつ前進だ。当初の予定通り両翼から圧力を掛けて包囲する!」

 

「アイアイサー!全艦前進、各艦隊にも伝えろ!」

 

 打って出ることにしたボムは、包囲陣形のまま艦隊を前進させた。連合艦隊の指揮権は彼に与えられている。この様子を見ていた少佐の階級章を付けた青年は、呆れるような表情でボムを見ていた。

 

「はぁ・・・これは包囲が崩されてしまうな・・・」

 

「メン中佐、なにを言っているのですか?」

 

「いや、何でもない。どうぞ聞き逃してくれ」

 

「は、はぁ・・・」

 

 独り言を呟いた彼は、自分より階級の低い尉官に告げた後、自室へと戻っていった。この男の名はメン・ロン、後程第7機動艦隊を救い、デリアに一泡吹かせ、連邦軍でマリに唯一対応できる人物とは誰も思いはしない。部屋に戻った彼はベッドへ座り込み、窓から見える宇宙の光景を見ながら独白する。

 

「はぁ・・・戦死確定か・・・私の人生も短かったな・・・」

 

 紙コップに入れたウィスキーを一杯飲みながらメンは溜め息をつく。暫くウィスキーを飲みながら宇宙の光景を眺めていると、睡魔が襲ってくる。

 

「酔ってきたようだな・・・戦闘宙域に着くまで、一眠り・・・」

 

 紙コップをゴミ箱に捨て、飲み干したウィスキーを机に置いたメンは、ベッドの上で横になり、酔いが覚めるまで仮眠を取ることにした。

 

 

 

「提督、偵察機からの報告です。進路方向に敵四個艦隊が包囲陣形を取りながら展開中」

 

「ふん、最初から待ち伏せをすればいい物を・・・座標をモニターに映せ」

 

 ウンター・ガングのブリッジにて、通信士が待ち伏せを行う宇宙軍と宇宙海軍の連合艦隊の事を報告する。デリアは来ると分かっていたのか、冷静に敵艦隊の座標をモニターに映すよう指示を出す。

 

「網のような陣形だな・・・」

 

 敵四個艦隊の配置は、宇宙軍の艦隊が西に展開し、宇宙海軍の艦隊が東へと展開している。残っている宇宙軍と宇宙海軍のそれぞれ一個艦隊は連合艦隊を組み、中央端を陣取っている。

 

「お得意の数の多さを生かした包囲殲滅戦法でやる気か・・・迂回するか、後方に増援を頼んで、中央突破でもしますか?」

 

 隣に立っている長身の副官は、デリアにどう進むのかを問う。モニターの配置表を見ていたデリアからは、とても大胆な答えが返ってくる。

 

「左翼に展開している艦隊、随分と突出している・・・連邦軍の十八番である物量で、まずはあの艦隊から数の差で叩く」

 

 この返答に、副官はモニターを見ながら納得した。

 

「そう言えば突出していますね。これでは包囲網が完成できない、有能な指揮官にここから攻めてくれと言っているような物だ」

 

「そうだ。その後は北の連合艦隊三万隻との交戦を避け、右翼の艦隊を叩く。メインディッシュの連合艦隊は両腕をもぎ取ってからだ」

 

「流石はブラウンシュバイク提督だ・・・その若さで大将まで上り詰めたことはある」

 

 彼女が出した戦略に、副官は笑みを浮かべながら多大に評価する。だが、当のデリアはそれが気に食わない。

 

「お世辞は結構だ。あの動きようからして、自信家の態とでも無い限り、艦載機の出撃は不要だ。艦隊戦で仕留める。敵艦載機は対空火器で対処せよ。右翼との艦隊では艦載機を使う。パイロット達には待機命令を出しておけ」

 

「はっ、純粋な艦隊戦ですか。演習以降ですな」

 

 敵艦隊と艦隊戦をすると聞き、副官は期待を抱く。

 

「そうだ。連邦宇宙軍がどれほど艦隊戦を出来るかどうかを試すためな。右翼の艦隊はあの女とパイロット達に譲ってやる」

 

 副官にそう伝えると、デリアは受話器を手に取り、全艦に指示を飛ばした。このアナウンスは、オリフラーム船内でも聞こえ、カードゲームをしていたマリとザシャ達が居る部屋にも届いていた。

 

「もうすぐ戦闘になりそうです」

 

「忙しいわね、さっきドンパチしてきたばかりなのに」

 

 アナウンスを聞いたザシャが口を開くと、マリが頭を抱えながら愚痴を漏らす。

 

「ここは敵地だから仕方ないじゃない」

 

 ペトラが尤もなことを言うと、全員が納得して一回頷いた。そんな彼女の部屋に、新しい来客者達が訪れる。

 

「いやぁー、棚に飛行機の模型とは、妙齢の女性の部屋とは思えない・・・あっ、良いですかな?お嬢さん方」

 

 ノックもしないで入ってきたのは、陽気な大柄の青年だった。青年の後ろにドイツ系の青年とサングラスを掛けた長髪の青年が二人ほど廊下に立っている。

 

「柿崎伍長、いきなり女性の部屋に入るのは失礼だと思うぞ」

 

「すみません、軍曹殿。VF-25で敵艦隊を壊滅寸前までに追い詰めた美人パイロットに会いたいと思いまして、ハハハ!」

 

「(なんかこの人嫌だ・・・)」

 

 豪快に笑う柿崎と呼ばれる男に、ザシャは嫌悪感を抱いた。嫌悪感を抱いたのはザシャだけでなく、マリを含めた三人も抱いていた。そんな柿崎は嫌悪感を抱かれていることに気付かず、勝手に自己紹介を始めた。

 

「これは失礼を。自分は第5大隊D中隊所属の柿崎駿夫伍長であります!以降よろしくおねがいします!ハハハ!」

 

 軍人らしい見事な敬礼をする柿崎であったが、最後の印象が最悪であった。次に軍曹と呼ばれた青年が自己紹介を始める。

 

「自分は同中隊所属ヘクター・ディーリング軍曹であります。伍長の失礼をお詫びします」

 

「私はレリック・ジーナス軍曹です。ちゃんと小隊長から許可を貰っております」

 

 礼儀正しく名乗ったヘクターとレリックに対し、マリは無反応であった。

 

「では、皆さん。ご一緒で我々と共にお茶でも・・・」

 

「私帰る」

 

 柿崎はザシャ達を誘うつもりであったが、マリが部屋を出て行こうとする。それを柿崎は止めようとしたが、彼女の一睨みで怯み、尻餅をついてしまった。

 

「うわぁ・・・恐い人。あれは彼氏が出来ないな・・・では、お茶に・・・」

 

「ごめんなさい。私達、着替えて出撃待機するから」

 

「私も行きますので」

 

「以下同文」

 

「他に周りな」

 

 部屋にロックを掛けて、待機室へと向かうザシャ達に柿崎は落ち込む。

 

「何が悪かったのかな・・・」

 

「お前がノックもしないで部屋に入るなり、相手が気にしていたことを言うからだ」

 

「納得がいく答えですね。では、我々も着替えて待機しましょう」

 

「そ、そんな!酷いじゃないか~」

 

 慰めずに尤もらしいことを告げて待機室へと向かうヘクターとレリックに対し、柿崎は泣きつくように追い掛けていった。マリがバリキュリャに帰った頃には、デリアが彼女のために後ろから続いている輸送船団に注文した機体が届いていた。

 

「新しい機体が届いたの?」

 

「はい、貴方専用の機体です」

 

 母艦へ帰るなり整備兵が慌ただしく動いていたので、近くにいた整備兵問い、彼女が指差す方向に視線を向けた。そこには灰色の全高18m程のガンダムMkⅡとは違うタイプのガンダム、ストライクガンダムが置かれていた。

 

「中々格好いいじゃないの。どうして私宛に?」

 

「まぁ、ブラウンシュバイク提督が貴方にと・・・」

 

「へぇー、そう」

 

 整備兵からの返答で、デリアの仕業と察し、早速パイロットスーツに着替えるために更衣室の方へと向かった。彼女がコクピットへと入り、マニュアルを読んでいる頃には包囲陣形を取る左翼の艦隊に対する攻撃が始められる。

 

『立った今、我が艦隊は敵艦隊との交戦状態に入る。戦闘要員、防空要員、修復要員は速やかに所定の位置に着け。搭載機のパイロットは機体に搭乗後、出撃命令が出るまで待機せよ。繰り返す』

 

「はぁ、出撃命令無し?まぁ、休めるなら良いけど」

 

 コクピットでマニュアルを読みながらOS調整を行っていたマリは、出撃命令が出ないと知ったが、休めると思って気にも留めなかった。そして不意を突かれた連合艦隊の左翼艦隊は、予想外の事態に対応が遅れてしまう。

 

「敵艦隊、我が艦隊へ向かってきます!」

 

「どうなっている!?偵察機はどうした!」

 

「それが、敵が電子戦を開始したか、撃墜されたかで連絡が取れません!それどころか他の艦隊との連絡も不能!!」

 

「なんだと・・・!?こうもあっさりと予想が・・・」

 

 報告を受けて動揺する左翼艦隊提督であったが、指示を出す前にデリアの遠征艦隊の攻撃が始まる。

 

「敵艦隊、攻撃開始!前衛分艦隊壊滅状態!!」

 

「は、反撃しろ!艦載機も直ちに発進だ!!」

 

 ようやく反撃に出た左翼艦隊であったが、全く反撃できずに艦艇は次々と沈んでいく。それどころかワルキューレの艦艇に着ず一つ付けられない始末であった。この左翼艦隊の有様を見たデリアは手応えが無くて落胆する。

 

「なんだ、連邦宇宙軍の艦隊は突然の強襲や、数の多い敵に対してこの様か・・・艦載機の発進は不要だ。艦砲射撃と魚雷、ミサイルだけで殲滅せよ」

 

 椅子にふんぞり返りながら、デリアは指示を出す。その指示を出された数秒後、ロケットや魚雷、ミサイルが混乱する左翼艦隊に向けて放たれた。向かってくるロケット、魚雷、ミサイルに対応できず、次々と沈む。

 搭載機を持つ艦艇はその搭載機を発進する間もなく撃沈してしまう。着々と敵は掃討されつつあるが、時間が掛かってしまう。一気に殲滅して右翼艦隊の攻撃に向かいたいデリアは、大量破壊兵器を持つ艦艇に指示を出した。

 

「このままでは埒があかん。新マクロス級並び、クォーター級は変形(トランスフォーメーション)し、マクロスキャノンを敵旗艦がいそうな方向へ発射しろ」

 

「五百秒程お待ち下さい」

 

「フン・・・」

 

 ふんぞり返りながら指示を出すデリアに、副官はそう告げ、彼女は鼻を鳴らす。指示を受けた変形が出来る大型艦艇である新マクロス級とクォーター級はトランスフォーメーションを開始する。バトロイド形態に変形している最中、獲物の数は減りつつある。

 変形を終えれば、直ぐに旗艦がいそうな方向へ向けてマクロスキャノンが発射された。巨大なレーザーが壊滅状態の左翼艦隊に浴びせられ、爆発が連続して起こる。掃討速度が飛躍的に増し、敵は既に壊滅寸前となり、もう勝ち目すらなかった。

 敵は反撃するのは止め、白旗を揚げて戦闘の意思が無いことを知らせる。

 

「敵残存艦、降伏しました」

 

「拿捕する暇はない。直ぐに右翼艦隊へと向かえ」

 

 そう言って残っている敵残存艦を放置し、デリアは右翼艦隊攻撃へと向かう。マクロスキャノンを撃った御陰で予想より早く殲滅できたので、連合艦隊に位置を悟られずに済んだ。数時間後には右翼艦隊である宇宙海軍の艦隊が居る宙域へと辿り着く。

 偵察機は撃墜することには成功したが、襲撃を察知されてしまう。

 

「流石に二度目は無いか・・・」

 

「安心しろ、数は我々の方が上だ。艦載機発進させよ」

 

「はっ!」

 

 副官が迎撃態勢を取る敵艦隊を見て呟くと、デリアは温存しておいた艦載機の出撃を命じる。遂にマリの新しい機体であるストライクガンダムの出撃の時が来た。

 格納庫では大型可変翼と四基の高出力スラスターを持つ高機動型ユニットであるエールストライクパックが付けられ、標準兵装と防御兵装であるビームライフルと対ビームシールドが渡される。

 コードが背中に付けられたままカタパルトまで移動すると、発射機に両足を着け、出撃の合図を待つ。CICからの声を聞きながら、出撃の合図を待っていると、電子掲示板がカウントダウンを始める。

 

『出撃命令確認。進路オールグリーン、エールストライクガンダム、どうぞ!』

 

「さぁ、今度はもっと堕としまくるわよ!」

 

 そうマリは意気込むと、発射台から射出された彼女のストライクガンダムは宇宙へと飛び出す。宇宙空間へと飛び出たストライクの逃走は、灰色から白と青、赤の三つの塗装へと変わり、大型可変翼が開く。

 彼女が乗る派手に目立つガンダムは、四基のスラスターを噴かせ、こちらを迎え撃つために出撃した連邦宇宙海軍の多数の敵機へと向かっていった。




この回のイメージEDはこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=jr9kO9Jlx7c

西川兄貴のINVOKE(イヴォーク)
だってストライクガンダムが出て来てるもん・・・

~今週の中断メッセージ~

時間がないので、ラインハルト・フォンローエングラムの一言。

ラインハルト「姉上の誕生日に勝利を持ち帰った戦いに似ているな・・・」
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