復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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アウトサイダー、また登場。

マクロスに出て来るバルキリーって、格好いいよね。


ロボット兵器が普及した世界

 視界が目の前で真っ暗になった後、次に目覚めた先は虚無の世界であった。

 周囲には、見慣れる頃合いのカオスな空間が広がっている。今回はわざわざ特定の場所へ出向くこともなく、アウトサイダーがわざわざ出て来た。

 

「今回はかなり不味い状況だな。マリ」

 

 やはり自分がかなりの重傷を負っていることは知っているようだ。この世界におけるマリの外見に特に目立つ外傷はないが、アウトサイダーが出した映像には、ライガー・ゼロのコクピットで死にかけている自分の姿が映されている。

 

「これが今のお前の状況だ。早くなんとかしなければな」

 

 映像を見ながらアウトサイダーは、左手に顎を当てながら口を開く。暫くすると、ライガー・ゼロのコクピットが突然開き、髪の毛が逆立った体格の良い男と、長い茶髪の女が自分を抱えている所が流れた。

 

「どうやら助かったみたいだな。さて、本題に入ろう」

 

 自分がコクピットから出される所で映像は消え、元の空間へと戻った。映像を消したアウトサイダーは本題に入る。

 

「運の良いことに次の能力が見付かったぞ。歴史がとある悪名高い男の手によって呼び出された少女の手によって変わりつつある世界だ。お前では少し生き辛い世界だろうが、今のお前なら、長い時間を掛ければ望むままの世界へと変えられるはずだ。尤も、それが少女を見た後でできるかどうかだが」

 

 腕組みをしながら告げると、アウトサイダーは別れを告げた。

 

「確かめたければ、今の試練と次の試練をこなす事だ。では、また何処かで会おう」

 

 目の前の青白い青年が告げれば、彼女の視界はまた真っ暗になった。

 

 

 

 次に目覚めた場所は、何処かの医務室のようだった。隣には、タンクトップと作業ズボンというラフな姿のザシャが椅子に腰掛けている。マリが目覚めたのが分かると、ザシャは彼女が横たわるベッドへ寄り添う。

 

「あっ、少佐・・・!余り無理をなさらない方が・・・」

 

 無理に起きようとするマリを、ザシャは優しく受け止める。

 

「重傷だったのですよ。左眼は完全に失明、左腹部には大口径の拳銃による銃創・・・死んでもおかしくなかったのですから・・・」

 

 心配そうにザシャが告げると、マリは笑顔で礼を言った。礼を言った途端、頭痛が彼女を襲う。どうやら大量出血した所為で、貧血になってしまったようだ。

 ザシャが寄り添って、身体を支える。

 

「頭痛い・・・これ貧血だわ・・・」

 

「無理もないですよ、コクピットは血塗れだったんですから。むしろ生きてるのが信じられないくらいです」

 

「あんなに血がいっぱい出ちゃったんだ・・・はぁ、ちょっと寝るわ。なんか起きたら起こして」

 

「えっ?は、はい・・・」

 

 溜め息をついたマリは、ザシャに何か起きれば起こすように指示をすると、彼女は布団を深く被って横になる。横になって寝息を立てたのを確認すると、ザシャは席を立ち、医務室を出て自分等を拾った恩人の元へ向かった。今、マリ達が居る場所は停車している大型トレーラーだ。

 この星に降りてきて、ザシャが乗っていたバルキリーVF-25Aメサイアと、小柄の男に整備を受けているマリが乗っていたライガー・ゼロ、誰かの物とは分からない旧式のVF-1Aバルキリーが、牽引車に連結されたトレーラーに収納されている。

 

「よぉ、血塗れのお姫様は目覚めたかい?ヒヨコの嬢ちゃん」

 

「その言い方やめてくださいよ」

 

「良いじゃねぇか。現に最新式のバルキリーにヒヨコちゃんが描かれているからよ」

 

「フフフ」

 

 ザシャが訪れたのは牽引車の操縦室であり、ハンドルを握る髪の毛が逆立った男と茶髪の女が彼女を茶化す。ちなみにその二人がマリを助けた張本人であり、治療を施したのはザシャである。

 

「目を覚ましましたが、貧血で寝込んじゃいました」

 

「そいつぁ、飯を大量に食わんとならないと治らないな。リュシー、お前の手料理を沢山作らんと」

 

「えぇ、それならジェロームにも手伝って貰わないとね」

 

「ヌッハハハ!俺様の料理の腕が鳴るぜ!」

 

 ジェロームと呼ばれる男と、リュシーと呼ばれる女のやり取りに、ザシャは呆れる。

 他の搭乗者はマリとザシャ、トレーラーも持ち主の二人を除き、先程のライガー・ゼロを整備している小柄な男とライフルを持って見張りをしているバンダナの男、老夫婦の二名が乗っている。新婚者のやり取りを行う二人を放置して、ザシャは操縦席を出た。

 医務室でマリが良く眠っているのを確認した後、自分の機体に何もされてないか確認に向かう。格納庫に入なり、整備をしていた小柄な男が触れていないと言ってくる。

 

「お前さんの新しいバルキリーなんかに触れてないぞ!」

 

「そ、そうですか・・・」

 

 そうザシャは返すと、コクピットから工具箱を取り出し、自分の機体であるVF-25の野戦整備を始めた。整備と言っても、専門的な整備でもなく、軍の士官学校の操縦科で習った程度の物である。

 慣れない手付きで一時間程被弾箇所の整備を終えると、工具箱をコクピットへ戻し、再びマリの様子を見に行った。一方の医務室で寝ているマリは、ジェロームとリュシーが作った料理を食していた。

 

「どうだい、俺達ポートリエ夫妻の料理は?」

 

 ジェロームが自分等の料理を食しているマリに問うが、等の彼女の反応は皆無だ。無視して、普通に口へと運び、黙々と食べるだけである。

 

「あの・・・味は・・・?」

 

「・・・」

 

 同姓のリュシーの問いにすら反応せず、ただ血を蓄える為の栄養を補給している。医務室へと入ってきたザシャは、命の恩人の問いを無視して食事を続けるマリを見て、注意しようかと思ったが、何かされるか分からないので、引き下がることにした。食事を三十分で終えたマリは淹れられた珈琲を飲み、ジェロームに無言で何かを強請る。

 

「な、なんだよその手は・・・?」

 

「煙草」

 

 彼がその手の意味を問うと、マリは煙草を渡すように言った。

 

「やっと口を開いたと思ったら煙草かよ!?この医務室は禁煙だっちゅーの!それに命の恩人に対して、感謝の言葉すら無い上に何だその態度は!」

 

 ジェロームが何の礼をも言わずに煙草を強請るマリに対して怒鳴り付けるが、妻であるリュシーに宥められる。

 

「まぁまぁ、落ち着いてジェローム。きっと気が立っているのよ」

 

「すまねぇなハニー。だがよ、例の一つすら無く、こんな態度でいられちゃ、助けた甲斐がないぜ。それに煙草まで強請ってきたってもんだ。助けたことを後悔しちまいそうだ」

 

 世話になった挙げ句に例の一つも言わないマリに、ジェロームはやりきれない気持ちだった。そんな彼に対し、リュシーは説得を始める。

 

「そんなこと言わないでジェローム。こんなに綺麗な人をあんな所へ放置したままにすれば、私達後悔すると思うの」

 

「はぁ・・・負けたよ、ハニーの頼みなら仕方がねぇ。感謝しろよ、血塗れのお姫さんよ。ハニーと俺の広い心の御陰で、胸くそ(わり)ぃ女に飢えた悪漢共から死姦されずに済んだんだ。ちゃんとお礼は言うんだぞぉ?もし言わなかったら、俺のトレーターから放り出してやるからな!」

 

 愛する者の説得が通じたのか、ジェロームはマリに自分の妻に礼を言うよう告げると、医務室を出て行く。マリはここがトレーラーの医務室だと言うことを理解する。夫が出て行くのを確認したリュシーは、無表情な彼女に謝る。

 

「ごめんなさいね、突然ジェロームが怒っちゃって。私の名前はリュシー・ポートリエ。ジェロームの妻よ、よろしくね」

 

 握手を申し出たので、マリはそれに応じた。

 

「そこにいる貴方の部下が心配してたわ。苦手な血を我慢して、貴方を治療したのよ」

 

 リュシーは出入り口の前で立っているザシャに手を翳しながら告げる。

 

「失礼ながら少佐殿を私の浅はかな医療知識で治療しました!」

 

 ザシャが敬礼しながら告げると、マリは他に医者が居なかったのかを問う。

 

「ザシャちゃんが私を治療?他に医者とか乗ってないの?」

 

「私達も一応応急処置くらいは出来るけど、本格的なのは医療ロボットに任せっきりだったから。壊れて修理に出したままで困ちゃったけど、貴方を助ける前にザシャちゃんを助けておいて良かったわ」

 

 リュシーはザシャの肩に手を置きながら彼女の頭を撫でる。長身の人妻に頭を撫でられているザシャは、顔を赤くして恥ずかしがっている様子だった。そんな愛らしい162㎝の女性中尉を見て、マリは心中で「可愛い」と思った後、他の乗員のことを聞く。

 

「それくらい技術力のある星なんだ・・・で、箒頭の他は?」

 

「箒頭って・・・えぇ、居るわよ。整備士をして貰ってるタンに見張りをしているリバス、ご老体のディアス夫婦よ。今はもう居ないけど、後は・・・」

 

「そいつの名を思い出すだけで、虫唾が走るぜ」

 

 リュシーの乗員達の哨戒に割って入ったのは、両手に人数分のアイスキャンディを持ったジェロームだった。マリとザシャに一本ずつアイスキャンディを投げた後、津まであるリュシーに手渡し、今は居ない乗員のことを代わりに告げる。

 

「ヒヨコちゃんはあの旧式のバルキリーの事は知ってるかと思うが、用心棒が乗ってた奴だ。まっ、乗ってた奴は女の敵。それも胸糞が悪くなるくらいで、女を食い物か性処理道具かと思っている脳が生殖器のトンデモねぇクソ野郎だ」

 

「彼ね・・・あんな性格じゃなかったら・・・」

 

「言うんじゃないハニー、自業自得さ」

 

 暗い表情を浮かべるリュシーに、ジェロームは寄り添って肩を抱く。下品な表現に引いたが、興味本位なのか、ザシャはあのVF-1Aの持ち主である男の事を聞いた。

 

「ど、どうなったんですか?その人」

 

「あぁ、前の町で小便をしてる最中、女に背中から刺されて便器に顔面を突っ込んで死んでたよ。言い様だぜ。雇ってやってるのに、ハニーをレイプしようとしやがった。死んで清々したぜ」

 

「同感。そんな男、みんな死んでしまえばいい」

 

 ザシャからの問いに答えたジェロームはマリが放った言葉に同意し、先程の彼女に対する苛立ちを撤回した。

 

「おっ、言うねぇ~!俺も同意見だ。あんな強姦魔なんかとっとと滅べばいいのに、殺しても殺してもゴキブリの如く増えやがる。全く世の中は不条理な(もん)だぜ」

 

 アイスキャンディの封を開けながら告げると、それを食べ始める。リュシーも封を開けてアイスキャンディを口に含め、ジェロームと同様に舐め始めた。

 

「血塗れの少佐さんもヒヨコちゃんもアイスキャンディを食べろ。煙たい煙草より健康的だぞ。さぁ、食べろ、食べろ」

 

 オレンジ味のアイスキャンディを勧めるジェロームの言葉に従い、マリとザシャはアイスキャンディを口に含んだ。

 

「そうだ、そうだ。煙草なんかより、アイスキャンディの方が上手いに決まってる。なんたって、二十歳になる前から・・・なんだ!?」

 

 自分の考えを力説している最中、爆音と共に強い衝撃がこのトレーラーを襲った。その後に、ジェロームが身に着けている無線機から着信音が鳴る。

 

「どうした!?」

 

『だ、旦那ァ!大変でさ!盗賊団が、盗賊団が攻めてきあしただ!!』

 

「な、なにぃ!盗賊団だとぉ!?」

 

 ジェロームは外へ出て屋上へ上がり、双眼鏡を取り出して砲弾が飛んでくる方向を見る。双眼鏡に映ったのは、機種がバラバラすぎる機動兵器の集団だった。

 列車砲並の火砲を四門も搭載した大型機動兵器デストロイド・モンスターに、数種類の小型ゾイド、軍から退役して払い下げられた数々のMS、横流しされたAT類、他には払い下げられたのか、民間で売買されているハーディガンや、連邦・同盟にも流通していない機動兵器もある。数は見る限り六十機は超えているだろう。

 生身ならともかく、相手は通常兵器を上回る性能を有する機動兵器なので、もはや大人しく金目の物を渡すか、逃げるしかない。逃げようと、操縦席へ走るジェロームであったが、ザシャは盗賊団に立ち向かおうとする。

 EXギアパイロットスーツに身を包んだザシャが自分の搭乗機であるファイター形態のままのVF-25Aに乗り込み、開いたハッチから出撃した。

 

「お、おいおい!ヒヨコちゃん!相手は大隊規模だぞ!!」

 

『大丈夫、敵は動きが疏らで統制が取れていません!隊長機を叩けば敵は退きます!』

 

「そんな事言ってもなぁ・・・って、病人は寝てろ!!」

 

 こちらへ向けて重砲を撃ち込んでくる盗賊団へ向けて飛んでいくザシャのVF-25Aを見て、ジェロームは無線機を使って止めようとするが、制空権を握っている彼女は、盗賊団の動きがバラバラであることを見抜き、単機で敵陣へと突っ込んでいく。

 そんな危険な行動を取るザシャを注意するジェロームだが、マリも戦闘へ参加しようとしたので、怒鳴って止めようとする。

 

「煩いわね!こんな傷、どうって事ないわよ!」

 

「貧血なんだろ!大人しくしてろ!!」

 

「煩い!」

 

「こらっ!ギャッ!?」

 

 彼女の腕を掴んで無理にでも止めようとするジェロームであったが、砲撃の衝撃で手を離してしまい、マリを取り逃がしてしまった。そんな彼女が来た先は格納庫であり、ライガー・ゼロに乗り込もうとしたが、整備士のタンに止められる。

 

「姉さんよ、そいつぁ暫くの間、動かせねぇぜ?」

 

「何でよ!?」

 

「そんなに怒鳴りなさんな。何をしたのかは知らんが、アンタが荒っぽい事をした所為でかなり大掛かりな修理が必要だ」

 

 タンはライガー・ゼロの損傷箇所を全て修理しない限り、動かせないとマリに告げた。

 

「なら早く直しなさいよ!」

 

「今は戦闘中だ。こんなに揺れてちゃ、手元が狂って、指の二、三本は持ってかれるかもしれねぇ。大人しく病室のベッドで寝ているこった」

 

 的確なことを告げたタンは、応戦するために階段を上がっていった。ここで大人しく引き下がる訳ではないマリは、ファイター形態のまま収容されているVF-1Aに目を付ける。

 

「使える機体、あるじゃない」

 

 早速マリはVF-1Aバルキリーに乗り込み、操作系統の確認、装備の確認を行う。

 

「古いけど、操縦には問題ないみたいね。装備も現行のバルキリーには劣るけど、雑魚相手にはこれで十分だわ」

 

 確認を済ませたマリはキャノピーを閉め、ガウォーク形態になって固定具を無理矢理外し、ハッチを開けて出撃した。ある程度速度を付けると、ファイター形態に変形してザシャの後を追う。VF-25の半世紀前に開発された旧式のバルキリーであった為か、全くザシャ機に追いつけなかった。

 

「あーもう、このポンコツ!早く追いつきなさいよ!」

 

 最高速度の違いに文句を付けるマリであったが、当のザシャは既に盗賊団と交戦状態に入っていた。

 

「馬鹿野郎!そいつの弾は高いんだぞ!!」

 

 ジープに乗って立っている盗賊団の頭が撃っては外すデストロイド・モンスターの砲手に怒鳴り散らしている最中、一人のモヒカン頭の部下が知らせに来る。

 

「お頭、上空から奴等の用心棒らしき戦闘機が出て来あした!」

 

「なにぃ!戦闘機だと!?」

 

 直ぐに双眼鏡で向かってくるザシャのファイター形態のVF-25Aを見る。

 

「一体何処の軍隊の戦闘機だ・・・?」

 

 そう言っている内に、バトロイド形態になったVF-25Aのガンポッドの掃射を受け、ジープから投げ出される。隣で砲撃していたデストロイド・モンスターは、蜂の巣になって大破した。

 

「く、クソッタレ!あの見たことのないバルキリーをぶっ潰せ!!」

 

 直ぐに頭は指示を出し、自分だけ逃げようとする。指示を受けた盗賊達は即座にザシャ機に向けて下手くそな対空射撃を行う。ただ目標へ向けて闇雲に撃つだけであり、容易く避けたザシャの反撃を受けて返り討ちにされるばかりだ。

 

「な、なんだこいつは!?うわぁぁぁ!!」

 

 ザシャの強さに驚いている盗賊は、追い付いてきたマリのVF-1Aのガンポッド攻撃を受けて破壊される。この後、物の数秒で六機以上が破壊され、更に被害を拡大していく。

 

「やっと追い付いた!」

 

 敵機を潰しながら、マリはザシャに追い付いたことを喜ぶ。マリが援護に駆け付けたことに驚いたザシャは、直ぐに戻るよう通信で伝える。

 

『なんで来たんですか!?安静にしてなきゃ行けないのに!』

 

「だって、こんなにドンパチされちゃ、安心して寝られないじゃない。だからこうやってお掃除に来たのよ!」

 

 言い争いながら敵を掃討するマリとザシャに、操縦室で戦闘を見ていたジェローム達は呆然とする。

 

『傷口が開いたらどうするんですか?!』

 

「そんなの自分で治せるわよ!一々煩いわね、もう!!」

 

 尚も言い争いを続けるマリは、ガウォーク形態に変形させ、装備されたマイクロミサイルを標的にした複数の敵機へ向けて発射した。盗賊達は発射されたミサイルを回避する術もなく次々と命中し、数を続々と減らしていく。ミサイルを装備してないザシャのVF-25Aは、性能差で盗賊団の旧式の機動兵器を圧倒し、面白いようにやられる。

 

「私はそんなに柔じゃないの!こんな傷、飽きるくらい受けてきたんだから!」

 

 ミサイルランチャーを撃とうとしたジープ群をガンポッドで一掃しながら、ザシャに告げる。

 

『それが駄目なんですよ!そう言って、死んだらどうするんですか!?』

 

 盾から取り出したコンバットナイフをMSのコクピットへ突き刺した後、ガンポッドを撃ち続けているマリを叱る。尚も言い争いが続き、敵機は続々と平地に倒れていく。

 仕舞いには六十機以上も居た盗賊団は三十分で全滅。平地に残骸が黒煙を上げる。その頃になると、言い争いはもう終わっていた。バトロイド形態に変形していた二機のバルキリーは、互いに向き合う。

 

『はぁ、はぁ・・・傷口は開いていませんか?少佐』

 

「開いてないわよ。貴方の治療が効いたみたい」

 

『光栄の極みです。少佐』

 

 ザシャからの問いに、包帯を巻いた自分の腹部に触れ、血が出ていないことを確認して返答すると、モニター越しからVF-25Aに乗る彼女は敬礼する。そんな時に、レーダーに新たな機影が映り、ジェロームが通信で知らせる。

 

『おっ、おい!嬢ちゃん達!治安維持局の外人部隊だ、撃つんじゃないぞ!』

 

 ジェロームの知らせに、マリ機とザシャ機はガンポッドの銃口を下げる。東より現れた大隊規模の外人部隊は、盗賊団とは違って動きも統制も取れ、装備も優れていた。トレーラーの操縦室にいるジェロームは、リュシーと共に金塊の用意を始める。

 

「あいつ等も盗賊とは変わらんゴロツキの集団だからな。急いで駄賃を用意せんと」

 

「えぇ。本当に地方の治安局員は大半が腐ってるから」

 

 せっせっと用意しながらこの惑星の地方における現状を口にするポートリエ夫妻達。金塊が詰まったケースの用意が出来ると、マリに取ってくるよう指示を出す。

 

「お駄賃の用意が出来た。取りに来てくれ」

 

『お駄賃?何のことよ?』

 

「良いから早く取ってこい!そうせにゃ、また戦う羽目に・・・どわっ!?」

 

 言い終える前に、外人部隊の戦車部隊が砲撃してくる。他にも戦闘ヘリや戦闘機、コマンドウルフにハイザック、重武装スコープドック、可変系MSアシュマーが警告も無しに、マリ達へ向けて攻撃してきた。

 

「な、なんで攻撃してくるの!?」

 

「お前等なんかやった!?」

 

 外人部隊からの攻撃を受けつつあるジェロームは、直ぐにマリとザシャに問う。彼女等は正直に彼の問いに答えた。

 

「基地をライガー・ゼロで滅茶苦茶にしたけど?」

 

「この惑星のスクランブル機や迎撃機を数十機以上撃墜しました」

 

「お前等、なんちゅうことしてんだぁぁぁぁ!?」

 

 返ってきた答えに、ジェロームは絶叫した。更に彼の恐怖を煽り立てる最悪な事態が起きる。

 ヒルドルブと呼ばれる戦車をMSと融合したような機体が、30サンチ砲から焼夷弾頭を長距離で戦場から逃げようとする生身の盗賊団へ向けて放った。忽ち盗賊団の残党は高熱の炎に包まれ、悶え苦しむ叫び声を上げて死んでいく。これを見たジェロームは絶句し、即刻マリとザシャに指示を出す。

 

「お、おい!先にあの戦車とMSみたいなのを潰せッ!早くしろぉ!!焼夷弾を撃ち込まれたら一環の終わりだぁ!!」

 

 無論、彼女等は向かえる状況ではなかった。

 9連装ロケットランチャーやミサイルポッド、ハンディ・ソリッドシューター、脇に付いたガトリング砲を装備したカスタムタイプスコープドックに、ザクキャノンやコマンドウルフLCのロングライフルによる砲撃、ザクⅠスナイパータイプによる狙撃、ハイザック、デュエルダガー、ジェノアス、サーベルタイガー、数々の連邦製輸出用ハーディガン、その他諸々の通常兵器による攻撃で釘付けにされていた。

 

「こんな状態で来れる訳ないでしょうが!」

 

 ここが古戦場だったのか、巨大な穴を塹壕代わりにし、敵の攻撃から身を守りながら向かえないと返す。撃ち返しても、敵はプロの傭兵であり、容易に避けて攻撃を加えてくる。

 

「戦闘慣れしてる・・・!このままじゃ・・・!」

 

 包囲陣形を取りながら十字砲火を加え、前進してくる外人部隊に、ザシャは勝機がないと悟る。その間に、ヒルドルブがトレーラーに主砲である30サンチ砲を向ける。

 

「だ、旦那!戦車MSがこっちに大砲を!!」

 

「そ、そんな・・・!」

 

「こんな所で終わりかよぉ~!?あの嬢ちゃん達が悪いってのにぃ!!」

 

 リバスからの知らせに、死を覚悟するジェローム達であったが、空より新たな戦士が現れた。

 上空からマリと同じファイター形態のVF-1だが、髑髏のような塗装のレーザー機銃が二門のJ型だ。

 即刻目の前に見える戦闘機や戦闘ヘリを両翼に付いたミサイルを使わず、ガンポッドで撃ち落とし、ヒルドルブへガンポッドを掃射しながら向かう。

 

「く、クソ!何(もん)んだ!?」

 

 射撃を中止し、両腕を出して護身用火器のマシンガンで追い払おうとするが、ザシャには負けないほどの腕前で回避し、距離を詰めてくる。対策として配置されていた護衛機からの弾幕を回避しながら、VF-1Jはガウォーク形態へと変形、二発のミサイルを同時発射で二機の護衛機を撃墜する。

 固定脚も付けず、バトロイド形態になったVF-1Jに対し、ヒルドルブのパイロットは無理にでも砲撃しようとしたが、一機に距離を詰められ、コクピットにガンポッドを数十発撃ち込まれた。搭乗者が死んだヒルドルブは機能を停止し、被弾部分から黒煙が上がり、トレーラーの脅威が排除される。

 

「な、何か知らんが、助かった・・・」

 

 奇跡のような出来事で、命拾いしたジェロームは、ホッと一息つく。ヒルドルブを排除した乱入者が乗り込むVF-1Jは、ファイター形態に変形して直ぐさまマリとザシャの元へと向かった。

 二人が乗るバルキリーに砲撃する敵機に照準すると、両翼に付いたマイクロミサイルポッドを掃射した。先程の盗賊達とは違い、何機かに避けられたが、砲撃が止んだことに変わりなく、二人に反撃の隙を与えることが出来た。

 

「攻撃が止んだ・・・?」

 

「今です!」

 

 直ぐに二人は塹壕からブースターを噴かせて飛び出し、互いの搭乗機の背中を合わせ、ガンポッドを構え、撃ちながら回転した。周囲に銃口から発射された弾丸が撒き散らされ、地面に足を付ける敵機は回避する間もなく次々と被弾、大破していく。戦車や装甲車、戦闘ヘリも巻き込まれ、外人部隊は突然の乱入者で、大きく足並みを崩される。

 敵がようやく反撃してきた所で、回転攻撃を解き、飛んでくるミサイルを頭部のレーザー機銃で迎撃し、攻撃を避けながら手近な敵を撃破する。

 マリはスコープドックカスタムを三機、ザシャはサーベルタイガー、レッドホーン、ステルスバイパー、ハイザック、デュエルダガーを撃墜した。

 制空権を抑えていたアッシマーやギャンプラン改、レドラ、シンカー等の航空メカに対しては、VF-1Jが攻撃を加え、次々と撃ち落としていた。地上と上空の数十機も撃墜され、被害が戦闘不能レベルまでに近付いた為か、外人部隊のジム装甲強化型が閃光弾を放ち、彼女等の目を眩ませた。

 動きが一時的に鈍くなった隙に、手に持った火器を撃ちながら撤退を始める。回復したマリは、残ったミサイルを全弾撤退する外人部隊へ放ち、何機かを撃墜したが、取り逃がしてしまう。

 

「後、もう少しだったのに・・・」

 

 全ての敵を排除できず、悔しがっていると、負傷した腹部から血が噴き出し、痛みが彼女を襲う。

 

「ヤバイ・・・ちょっと、無理しすぎた・・・」

 

 痛みに耐えながら傷口を抑える。機体も無理させすぎたのか、間接部に電流が走っていた。先程のような戦闘を行えば、今乗っているVF-1Aは戦闘中に分解を起こすだろう。

 バトロイド形態に変形し、肘を地面に付けると、応急処置を始めた。処置を施している最中、ザシャの通信が入り、開いた傷口のことがばれてしまった。

 

『あぁ!やっぱり・・・急いでトレーラーに戻って治療しましょう!』

 

 直ぐにザシャのVF-25Aが近付いてきて、自機の肩を担ぐ。先程、自分達を助けたVF-1Jがガウォーク形態で地面に着地し、コクピットのキャノピーを開けた。即座に警戒態勢を取る二機だが、機体に乗るザシャに近い身長なパイロットは戦う意思を見せず、操縦席から立ち上がり、ヘルメットを脱いだ。

 VF-1Jバルキリーのパイロットの正体は、黒髪の日本人の少年だった。




明らかにポルナレフみたいなのが出た・・・それとザシャちゃん、再び大暴れ。
そして最後の日本人の少年パイロット・・・輝じゃないよ!

VF-1Aにマリを載せてみたけど・・・まぁ、一般機なので、マリの反射速度についてこられないから壊れる・・・
J型やS型に乗せないとね。
作画崩壊で生まれた海外設定のR型を出そうかと思ったけど、止めました(汗)。

今回も中断メッセージは無し。

次回は柿崎が出るかもよ?
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