復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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今回は新キャラとゼントラーディやナメック星人みたいな男だけの亜人が登場。
が、戦闘シーン無し。そして中断メッセージも無し・・・

まぁ、中断メッセージはオマケ程度だし・・・
それと、なんだかアクセス数が増えてるぞぉ?

PS.柿崎は次回で。


三人娘を捜して

「子供・・・?」

 

 VF-1Jバルキリーに乗った少年の姿を見たザシャは、そう呟く。少年はヘルメットを被って座席へ座ると、機体に付いている拡声器で伝える。

 

『今の内に周囲にある敵機の残骸を回収しておいた方が良い』

 

「どうして?」

 

『生きていく上で必要なことだから』

 

 通信を繋げたザシャは少年に問い、相手はバトロイド形態に変形し、敵機の残骸から使えるパーツを回収し始める。マリのVF-1Aを担いでいるザシャのVF-25Aは、残骸を回収する少年のバルキリーを放っておき、担ぎながらトレーラーへと戻った。その戻るべきトレーラーはここまで移動して来て、少年と同じように自分達が破壊した敵機の残骸から使えるパーツだけの回収を始めた。

 

「どうしてこんな事を・・・?」

 

 クレーンや小型の人型作業機を使って、残骸を漁る彼等の姿を見て、疑問に思う。そんな軍学校育ちのザシャに疑問に、負傷の身であるマリは答える。

 

「まだ売れるパーツを探してるのよ」

 

「売れるパーツを?違法ですよ。許して良いですか?」

 

「多分無理ね、それとこの星の治安は最悪だわ。治安が良かったらあんなド素人の集団が出て来るわけないし。きっと命が安いのよ。ここは」

 

「そ、そんな・・・」

 

 軍に属するザシャは自分が降り立った星が命の安い無法地帯と知り、衝撃を受けた。トレーラーに辿り着いた二機は、格納庫専用の貨車に入り込み、負傷したマリを機体から降ろすと、先程の衝撃をなんとか堪え、ザシャは彼女を治療するために医務室へと運んだ。

 

 

 

 その頃、統合連邦軍方面軍総司令部では、惑星アヌビスの現地国家元首からの苦情が舞い込んでいた。

 理由は組織による無差別攻撃で惑星に墜落した連邦軍・ワルキューレ双方の宇宙艦艇の被害についてだが、モニターに映る惑星政府主席の告げていることは、首都周辺と主要都市、工業地帯、穀倉地帯の被害ばかりであり、地方の被害など全く気にしていない。元首のこの口振りからして、現地政府は地方をゴミ同然と思っているようだ。

 

『兎に角、あんた連邦が衛星軌道上で艦隊戦なんかするからこうなるんだ!今度衛星軌道上で戦闘でもしてみろ、そうなったら二度とこのアヌビスには入れないからな!分かったか?!』

 

「ですから、あれは優位的、戦術的撤退でありましてな・・・」

 

『喧しいっ!墜落した敵の軍艦に乗っていた生き残りが、首都や主要都市で暴れ回っているんだ!早くなんとかしろ!』

 

「駐屯軍による掃討は進んでいますが、こちらにも救出すべき我が軍の将兵が居まして・・・」

 

『もう、あんた等軍人とは話にもならん!直接統合連邦政府に文句を叩き付ける!以上だ!!』

 

 元首は司令官の言い訳も聞かず、通信を一方的に切る。司令官は懐から葉巻と高価なライターを取り出し、葉巻を口に咥え、先端に火を付けて一服した。

 

「これだから、戦場には行ったこともないボンボンな政治屋は大嫌いなんだ」

 

 相手が聞こえないことを良いことに、文句を言った司令官は専用の椅子に座り、通信機を使って指令を出す。

 

「地上軍の余剰戦力十個師団を増援として惑星アヌビスに派遣しろ。空いた分は本国から増援を仰げ」

 

『はっ、直ちに派遣します!』

 

 部下からの復唱を聞き終えると、司令官は葉巻の灰を受け皿へ落とした。

 

 

 

 して、ワルキューレの遠征艦隊の方はと言うと、惑星アヌビスから離れ、工作艦、生産と兵站を備えた超大型艦がある本隊と合流し、先程の戦闘で受けた傷を癒していた。

 

「救出作戦はまだなのですか?!」

 

 ロデリオン分艦隊の旗艦の会議室にて、エルミーヌがピーチに救出作戦の実行を申し出ていた。取り巻きの二人も一緒で、エルミーヌと共にピーチに申している。

 

「貴方の分艦隊のトップエースが敵地に居るんですよ!」

 

「助けに行かないんですか!」

 

「喧しい!助けたいのは山々だが、連邦軍が鉄壁の防衛ラインを引いて、突破が難しい。それに、惑星アヌビスの攻略は元よりこの遠征には含まれてはいない」

 

 そう三人に出来ないと答えると、諦めるように付け足す。

 

「敵地に取り残された戦友を助けたいお前達には気の毒だが、諦めろ。少数を助ける為に、第1分隊を危険に晒す訳にはいかない。仮に脱出に成功したとしても、あの数だ。助かる見込みはないだろう。軍人らしい判断をしろ、中尉に軍曹」

 

 エルミーヌ達に告げたピーチは、案内役の士官を呼び出し、彼女等を部屋から退室させた。廊下を歩いている最中、ロアとエロディは大人しく引き下がったエルミーヌに粘るよう言い寄ってくる。

 

「どうして呆気なく引き下がったんですか!これではテーゼナー中尉が死んでしまいます!」

 

「私も同感です!もう少し粘れば、必ずや・・・」

 

「分かっていますわ!しかし、あれだけの数、今の戦力では返り討ち・・・」

 

 そんな二人に苛立ちを吐き出すように、窓から見える惑星アヌビスの前に立ち塞がる連邦宇宙軍の機動要塞と大艦隊を指差しながら告げた。エルミーヌの最後が弱々しくなり、表情を暗くして俯いてしまう。

 

「ザシャさん、貴女は私の好敵手。無事に帰ってくださるのよね?」

 

「え、エルミーヌ様が・・・」

 

「泣いていらっしゃる・・・」

 

 顔を上げ、アヌビスを見ながらエルミーヌは瞳から涙を流し、伝わらないであろうザシャに語り掛けるその様子を、ロアとエロディは心配そうにしていた。

 マリの母艦であったバリキュリャの展望室でも、彼女の安否を心配する者達が、八人ほど手の届かないアヌビスを眺めている。

 

「陛下・・・」

 

 その中の一人であるノエルが心配そうに呟く。しかし、彼女は心配しているのが自分だけだと思っており、他の者達はただ休憩しているだけだと思っていた。心配してアヌビスを見えているのはノエルだけでなく、彼女達も同じ気持ちだった。

 

「貴方達は?」

 

「あっ、少佐殿!」

 

 徐に訪ねてみると、乗員達は上官であるノエルを見るなり直ぐに敬礼し、即座に返答する。

 

「私達は、その・・・」

 

「マリ少佐に初めてを頂いた者達です!」

 

「はっ、はぁ・・・!?」

 

 この初心なまだ成人にもなしてない少女乗員の厚い答えに、ノエルは絶句した。

 

「(はぁ、あの女医ならともかくこんな娘達まで。しかも名前で呼んでるし・・・)」

 

 手摺りに体重を掛け、頭を抱える。マリに”初めて”を奪われた彼女達の目は真剣その物であり、いつ彼女の救出作戦が上がるのかを問う。

 

「あの、マリ少佐の救出作戦って、いつ始まるんですか?」

 

「ブリッジクルーや情報将校に聞いても知らないの一言なんです!」

 

「お願いです!教えてください!」

 

「あ、あぁ・・・はぁ・・・」

 

 言い寄ってくる乙女から女に変わった十六~二十の乗員達に対し、ノエルは返答に困る。揚陸艦バルキュリャで、一番美人の乗員の統計でも取れば、上位にランクインするほどの容姿を持つ彼女等を無造作に選び、遊び半分で処女を奪ったマリが心底憎いとノエルは思った。

 

「(はぁ、こんなにあの人が憎いと思ったのは、今は無き百合帝国の崩壊以降かしら?)」

 

 心の底で、昔のことを思い出しながら、ノエルは言い寄ってくる彼女等に視線を向けず、網を張る連邦軍が待ち受けるアヌビスの方へと視線を向けた。その様子を、胸元を大胆に開け、白衣を羽織ったあの女医もこの展望室へ入り、ノエルと同じ方向に視線を向けていた。

 

 

 

 残骸の回収を終えたマリ達は、一番近い距離にあった集落へと訪れた。そこで待ち受けていたのは、この惑星に墜落した連邦宇宙軍と宇宙海軍の艦艇に乗っていた大勢の負傷兵達であった。

 

「おぉ、昨日の戦闘で落っこちてきた軍艦の乗組員達か?見事に怪我人ばっかりだな?」

 

 牽引車の操縦席から見える範囲で、包帯を巻かれて担架に横たわる宇宙軍と海軍の負傷兵を見て、ジェロームは口にする。医務室の窓から見ていたザシャは、直ぐに腰のガンホルスターに差し込んであるHK USP自動拳銃の安全装置を外し、いつでも撃てるようにしていた。だが、先程の助けに来たVF-1Jのパイロットである少年に止められる。

 

「銃は必要ないよ、集落に居るのは大体負傷した将兵ばっかりだし。軍服を着たまま外に出なければ問題はない」

 

 少年の一言に、ザシャは拳銃の安全装置を掛け直す。次にジェロームが医務室に入ってきて、治療を終えてベッドに横たわっているマリとザシャに注意してくる。

 

「あんた等、ヴァルハラ軍のパイロットなんだろ?検問はやってねぇみたいだが、まぁ、敵地の中で軍服着ていくアホじゃねぇしな。それに、あのバルキリーはちゃんと隠しておいたから。外に出る時は気を付けて行けよ」

 

 言いたいことを言い終えたジェロームは、仲間達と共にトレーラーを降りた。ザシャも集落の様子が気になったのか、マリに一言告げてから少年と共に出て行く。

 

「ちゃんと寝ててくださいね。少佐」

 

 そう不機嫌な表情を浮かべるマリに告げると、部屋を後にした。トレーラーから降りるなり、ガウォーク形態になったVF-1Jが外に出ているのが目に入った。あの少年が乗っている物だろうと思い、集落の方へ目を向けると、墜落した宇宙艦艇から運び出された連邦軍の負傷兵で溢れかえっていた。

 

「うぅ、いてぇよ~!」

 

「目が、目が見えない!ここは何処なんだ!?」

 

「あ、赤いガンダムだ、赤いガンダムが!うぅ・・・!」

 

「母さん・・・母さん・・・!」

 

 担架で運ばれてくる負傷兵達が呻き声を上げる。治療を終えた将兵達は、テントの中へと運び込まれている。

 

「はぁ、まるで野戦病院だなぁ、こりゃあ。売れるかな?集めた奴」

 

「えぇ。怪我した兵隊さんが多くて、それどころじゃなさそう」

 

 同じくその光景を見ていたジェロームは、後頭部を掻きながらトレーラーに詰んである先程の残骸を見て口にすると、リュシーが負傷兵の治療をする集落の人々を見て心配そうに言う。そんな時に、年配の男が頭に包帯を巻いた連邦軍の将校と共に少年のVF-1Jに近付いた。

 

(ひかる)ぅ~!戻ってきたでか!」

 

 年配の男はVF-1Jに乗り込む少年に向け、大きな声で告げる。それに対し、晃は機体から降りて年配の男の前に立つ。

 

「どうしたの?」

 

「この将校さんがな、話があるって言うかからよ」

 

「君か、あの古いバルキリーを飛ばしたのは?助けに行くのは良いが、空を飛ばないでくれんか。MSはともかくバルキリーともなれば、兵達が怯えてしまう」

 

「分かりました。バトロイドで戻ります」

 

「そうしてくれると助かる。それでは」

 

 言いたいことを告げた将校は、奥地の方へと去っていった。話が終わったところで、ジェロームが年配の男に近付いて訪ねる。

 

「おっさんよ。ちょいと訪ねるが、この集落はイクサ人の集落って聞いて、寄ったんだが、居るのは人間ばっかりじゃねぇか。イクサ人は何処行っちまったんだ?」

 

「んあー、イクサ人の皆さんってか。連邦軍の落っこちてきた軍艦から兵隊さん達助けに行ったべ。長老さんか残ってるわい。カンタ、長老さを呼んでくるだ」

 

「はーい!」

 

 年配の男は近くにいた丸刈りの少年に長老を呼んでくるよう伝えた。物の数分後、少年が杖をつく老人にしてはえらく筋肉質な白い髭を蓄えた2mはあろう長身の老人を連れて現れた。

 

「お、大きい・・・!」

 

 長老らしき老人の外見を見て、ザシャは驚きの声を上げる。そんな彼女を見ていたリュシーは、あの老人がイクサ人であることを教える。

 

「あの大きいおじいさんがイクサ人よ。以下にも純血って感じね」

 

「あ、あれが純血の・・・」

 

 女だけの亜人のメガミ人とは逆の男だけの亜人であるイクサ人は、ワルキューレでも他の亜人と共に見られるが、ザシャはイクサ人を殆ど見たことがない。

 驚きの声を上げ、ジェロームが長身の長老と商談を進める姿を眺めていた。

 自分より20㎝は高いジェロームが、210㎝はある老人では差は圧倒的である。何もすることがなかった為、リュシーが「辺りを見回っても良い」と告げた為、ザシャはお言葉通り集落を見回る事にした。それも含め、三人の部下の詳細について問うことにする。

 

「(連邦の人に聞くのは不味いかも)」

 

 手伝っている無傷や軽傷な敵軍将兵に流石に聞くのは不味いのか、選択肢に連邦兵を除外し、集落の者達に定める。まず、先に視界に入った包帯を抱えた女性に問うことにした。

 

「あの・・・」

 

「なんのようだ?」

 

「この集落の周辺に、見たこともないバルキリーとか墜落してましたか?」

 

「バルキリーならイクサ人が持っとるが、そんな話は聞いてねぇな。今忙しいから他所さ当たってくんろ」

 

 女性は包帯を抱えながら、呻き声がする方へと去っていった。次に、使用済みの包帯の山が入った箱を肩に抱えたイクサ人に問う。

 

「済みません・・・」

 

「なんだ?」

 

「わっ・・・!」

 

 自分よりは40㎝は高いイクサ人を見て、驚いたザシャは後退ってしまうが、威圧感に負けずに部下のことを聞く。

 

「その、この集落の外に見たこともないバルキリーとか墜落していましたか?」

 

「俺は守衛担当でここ暫く集落の外へ出たことがないから分からんな。孤児院のチャンドラが知ってるんじゃないのか?」

 

「そこに当たってみます。ありがとうございました・・・」

 

 イクサ人の男が立ち去っていくと、ザシャは胸を撫で下ろす。どうやら、ただならぬ威圧感に圧され、緊張してしまったようだ。

 孤児院へと向かっていくバトロイド形態の晃のVF-1Jが見えた為、後を追った。

後を追っていく内に、集落の奥地へと入っていく。ここにも連邦軍の負傷兵が運び込まれていたが、出入り口ほど煩くなく、呻き声も聞こえない。気にせずに追おうとすると、通りで連邦兵に声を掛けられた。

 

「おい、嬢ちゃんや。ちょいと面貸せ」

 

 無視していこうとしたが、叫ぼうとする素振りを見せた為、大人しくザシャはその連邦兵に近付く。

 

「なんですか?」

 

「あんた、ヴァルハラ軍のパイロットだろ?」

 

 見抜かれた事に驚き、腰にある拳銃を抜こうとしたが、連邦兵が口元に人差し指を賭け、静かにと言うジェスチャーを送る。

 

「安心しな、ゲロたりはしねぇよ。それより、仲間を捜してんだろ?早くしたほうが良いぜ、この星の治安は最悪でな、人身売買組織にでも捕まったら大変だ」

 

 この言葉に、ザシャは顔を真っ青にした。直ぐに向かおうとしたが、宥められる。

 

「落ち着け、まだそうと決まった訳じゃない。仮本部の将校共から盗み聞きした話じゃ、ここから東30㎞でヴァルハラの敗残兵と駐屯軍と現地軍がやり合ってる。仲間も合流してんじゃないか?礼はいい、精々頑張れよ」

 

 今の件とは関係ないが、有益な情報をくれた連邦兵から離れ、ザシャは確かな情報を得るべく、孤児院の方へ足を運んだ。孤児院へと辿り着けば、先程のVF-1Jは倉庫に収められ、庭にはまだ幼い子供達が遊んでいる。その子供達を避け、孤児院の出入り口のドアを開けて中に入った。

 

「いらっしゃい。来たんだ」

 

「あっ、晃君・・・」

 

 受付にいたのは晃であり、ザシャは少し驚きの声を上げた。孤児院には負傷した連邦兵は運び込まれていないため、早速隠さずに部下達のことを問う。

 

「晃君、私と同じバルキリーが三機くらい墜落した場所とか知ってる?」

 

「貴女が乗ってたあのバルキリーと同じ型?それなら父さんと一緒に町に出掛けたとき、三機くらいが乗り捨てられて、下手だけどデータバンクが復元できないほど壊されたバルキリーがあった。多分、パイロットは捕まっているみたいだけど」

 

 情報を聞いたザシャは、急いで孤児院を出ようとしたが、察した少年に手を掴まれる。

 

「離して、私は行かないと・・・!」

 

「止めなよ。ここであのバルキリーを動かせば、確実にこの集落は戦場になる。もし無理にでも行こうとするなら、集落を守るために僕は貴女を殺さなくてはいけない」

 

 いつの間にか抜いた拳銃を額へ向けられ、ザシャは抵抗を止めて立ち止まる。そんな晃に、身長の差がありすぎる男が頭に拳骨を食らわせて銃口を下げさせる。

 

「晃、こんな所で拳銃を撃つんじゃない。済みません、うちの晃が」

 

「い、いえ・・・こちらこそ、済みません・・・」

 

「そんなに謝る必要はありません。申し遅れましたが、この孤児院の園長をしているチャンドラと言う者です」

 

 先程のイクサ人とは身長が30㎝は高い別格の強面の巨漢に、ザシャは恐る恐る後退り、謝ってしまった。

 

「ごめんなさい。でも、あのバルキリーで・・・」

 

「言い訳は良い。兎も角だ、外人部隊に手を出したのが悪かったのか、先程通信施設でお前を引き渡せと言ってきた。後は分かるな?」

 

「あぁ、分かってる。みんなによろしくって伝えて」

 

 チャンドラと思われるこの孤児院の園長に告げられ、答える晃の表情が暗くなる。余り宜しくない状況であるため、ザシャは勇気を出して問う。

 

「あの、失礼なんですが、それってどういう・・・」

 

「出て行って貰うと言うことですな。酷いようだが、全てはこの集落から火の粉を払うためです」

 

「そ、そんな・・・」

 

 チャンドラの答えに、ザシャはショックを受けた。

 

「致し方ないことです。ここには孤児(みなしご)やここに暮らす難民の為です。ご了承下さい」

 

 付け加えたチャンドラは受付から去った。お茶を出されたので、暫く席に座って休憩していると、荷物を持った晃とチャンドラが出て来た。

 

「おや、丁度良いところに。済みません、迷惑なのは承知で頼みますが、晃とあのバルキリーを預かっては貰えないでしょうか?」

 

「えっ?ま、まぁ・・・ポートリエさん達に聞かないと・・・」

 

 謝りながら、チャンドラは晃を搭乗機のVF-1Jと共に預かっては貰えないかと聞いてくる。直ぐにザシャは返答して、集落の出入り口前に居るジェローム一行の元へ、チャンドラと晃を案内した。

 

「なぁにぃ、その餓鬼を連れて行ってくれだぁ?園長先生の頼みなら兎も角、なんで餓鬼も連れて行かにゃ、ならんのかい?」

 

「実はですね、彼は・・・」

 

 ジェロームが理由を聞いてきたので、チャンドラがその理由を話すと、大きな声を上げた。

 

「外人部隊に目を付けられただとぉ!?なんで俺に押し付けるんだ?!チャンドラの旦那!」

 

「これもこの集落の安全のためです。何なりと晃をお使い下さい」

 

 怒りをぶちまけるジェロームだが、あの強面でかなりの修羅場を潜り抜けたチャンドラが気持ちを込めて頭を下げてきた為か、彼はやるせない気持ちになり、あっさりと了承してしまった。

 

「う、うぅ・・・わ、分かったよ!餓鬼の一人や二人くらい連れてってやらぁ!」

 

「ありがとうございます!お礼と言ってはなんですが、うちの倉庫にある物資をある程度お渡しします」

 

「あ、あぁ、どうもなぁ・・・」

 

「それでは、倉庫にある物資を持ってきますので、暫くお待ちを」

 

 礼を言うチャンドラに負けたジェロームは、巨漢な男が立ち去ると、後頭部を両手で押さえ、がに股になってブツブツと呟き始めた。そんな旦那を放っておき、リュシーは新しく入った仲間である晃をトレーラー内へと案内する。同じく戻ってきたザシャはマリの様子を見るべく、医務室へと向かった。

 

「あれ、少佐は何処に・・・?」

 

 ベッドの上にマリの姿がなかったので、ザシャは捜しに出掛けた。「また何かをやらかしているのではないだろうか」と思い、外に出て、いつの間にか立ち直ったジェロームに訪ねる。

 

「あっ、パツキンの女がどうしたって?そこらで丸太を顔面に叩き付けられたような連邦の女軍人と一緒に向こうへ行ったぞ。そっち系の女だったんだな、ヤってる最中に傷口でも開いたら・・・ありゃ?」

 

 ジェロームが言い終える前に、ザシャは彼が指差した方向へと向かった。

 案の定、人目に付かぬ場所で女性将校を壁に押し付け、自分の舌を女将校の舌と絡め合わせていた。直ぐにマリの肩を無言で掴み、敵軍の女将校から離すと、手を掴んで無理矢理彼女を連れ帰る。

 

「ちょっと!どういうつもりなの!?誘っておいて!」

 

 女将校が叫んでいるが、ザシャは無視してトレーラーへと向かう。

 

「なにすんのよ!」

 

「もう出発の時間です。少佐」

 

 マリが立ち止まってザシャの手を振り払うが、彼女がまた手を掴んで連れて帰ろうとする。

 

「もうちょっとだけでも」

 

「駄目です!ここは敵地なんです!何処から敵が来るか分からないんですよ!ちゃんとしてくださいよ!」

 

「分かったわよ・・・それじゃ、気が付いた敵が気付く前に行きましょう」

 

「ひゃっ!?や、やっちゃった・・・どうしよう・・・?」

 

「ほら、早く行く」

 

 自分より階級も身長も低いザシャに叱られたマリは、彼女をからかってから逆に引っ張り、トレーラーへと戻った。戻ってみれば、格納庫にMSのジムが同サイズの箱を入れ込んでいるのが見える。詰め込んでいるのを見守っているジェロームに、マリは何を詰んでいるのかを問う。

 

「何詰んでるの?」

 

「なにって、あのイクサ人の園長先生が物資を分け与えて下さってるのよ。助けに来た餓鬼付きで」

 

「へぇー、そう」

 

 関心がなかったのか、マリはザシャと共に医務室へと向かった。夕暮れになる頃には、物資の詰め込みも終わり、もうすぐ出発の時間となると、孤児院の子供達が晃を見送ろうと集まってくる。

 

「晃の兄ちゃん、さようなら~!」

 

『さようならー!!』

 

 年長者の少女が告げると、子供達は一斉に晃へ別れの言葉を告げる。それに対し、晃は搭乗しているバトロイド形態のVF-1Jで手を振り、子供達に答える。集落の者達も晃との別れを惜しんでか、集まってきて彼に手を振った。

 さらにザシャに情報を流したあの連邦兵まで居る。

 

「んじゃ、行くぜぇ!」

 

 間もなくトレーラーが発進すると、VF-1ファミリーの高級機である頭部レーザー機銃が四門でカメラがバイザー式のS型が飛び乗ってきた。トレーラーにしがみついてきた為、強い震動が走り、ジェロームがブレーキを踏み、トレーラーを急停止させる。

 

「な、なんだぁ!?」

 

 驚いてトレーラーの方を見て、飛び乗ってきたVF-1Sが晃のVF-1Jと対峙しているのが見える。VF-1Jより高性能なVF-1Sから出て来たパイロットは、少年と差ほど年は変わらない赤髪の少女であった。

 

「どうして君が・・・?」

 

「自分だけ抜け出して、私だけ置いてきぼり?そんなの、許さないわよ!」

 

 少女はそう晃に告げると、機体から降りた。

 

「園長先生、今頃怒ってるよ?」

 

「良いもん。私、もう17歳だし。それにこのバルキリーは余ってた奴だし」

 

 晃がチャンドラの事を告げると、少女は言い返して、荷物を見せびらかす。直ぐにジェロームが追い出そうとしたが、負傷兵を回収に来た連邦軍の地上戦闘艦艇や軍用輸送トレーラーが来た為、検問を受ける前に急いで離れる必要があった。

 仕方なく、勝手に乗り込んできた少女を仲間に引き入れることにして、連邦軍から見えない場所で収納する羽目になる。収納した格納庫で、聞けなかったことを聞いた。

 その少女の名はレイ、晃と同じチャンドラの孤児院で育った家族同然の少女だ。何故二人がバルキリーを動かせるのかは、孤児院を建てる前に傭兵として戦場に出ていたチャンドラが教え込んだそうだ。

 

「それじゃ、これからもよろしくね!」

 

 今までのことを離したところで、自分の機体の前でレイは愛らしく全員に挨拶する。この場にマリとザシャの姿がないと気付いたレイは、二人は何処にいるのかを問う。

 

「それで、眼帯付けたおっぱいの大きい人とヒヨコみたいな子は何処なの?」

 

「二人なら医務室にいるよ」

 

「へぇ、それじゃあ、挨拶しに行きますか!」

 

 晃からの答えで、彼女は早速医務室へと向かった。物の数分で辿り着くと、ベッドに横になっているマリとザシャに挨拶した。

 

「初めまして、レイよ。これからよろしくね!」

 

「え、こちらこそ初めまして・・・」

 

「こちらこそ初めまして。マリよ」

 

 突然入ってきた少女に、ザシャは少し戸惑うが、マリは笑みを浮かべて返した。レイはザシャに近付き、身長と外見が近い所為か、同い年と思って接してくる。

 

「あら、気が合いそうね。よろしく」

 

「あの、私・・・21歳なんだけど・・・」

 

「嘘っ!?全然見えないんだけど!」

 

 ザシャが年上だと聞いたレイは驚きの声を上げた。当然ながら、外見の所為で良く十代後半の少女と間違われてしまう事が多い。それから暫くして、トレーラーは目的地である町へと進路を定め、走行を再開した。

 数㎞先を移動すると、晃が言っていた墜落現場へと辿り着いた。

 

「ここかい?ヒヨコちゃんの部下の機体が墜落してるってのは」

 

「はい」

 

「早くしてくれよ。いつ夜盗が襲ってくるか分からねぇ」

 

 ジェロームが問うと、卵色の作業服な格好のザシャは即答し、地に足を付けた。晃が言ったとおり、三機のVF-25Aメサイアが砂地に横たわり、キャノピーが開いたままで、機体の横には壊されたデータバンクが残されている。ちゃんとチェリー、千鶴、ペトラの物かどうかを確かめるため、自分の小隊のトレードマークであるヒヨコのノーズアートを確認する。

 

「なにやってんの?ザシャ姉ちゃん」

 

「自分の部下の機体かどうかを調べているんだ」

 

「へぇ、あの人隊長さんで軍人だったんだね・・・」

 

 晃とレイもついてきたのか、それぞれのバルキリーに乗って盗賊や夜盗の襲撃に備えている。そしてザシャの方は、墜落した三機の機首にヒヨコのノーズアートが描かれている事が確認され、これが部下達の物と判断された。

 

「何処に行ったんだろ?」

 

 足跡を直ぐに捜して見付けると、地図を開いて足跡が続いている方向を確かめる。向かった先は、偶然にも自分達が目指しているガラヤの町だった。

 

「見付けた・・・」

 

 地図を仕舞ったザシャは、町がある方向へ視線を向けた。首に掛けてある双眼鏡を持ち、覗いてみれば、輸送車や輸送機の出入りが激しいと分かる。そこに居ることを確信した彼女は双眼鏡を下ろし、町に向かうためにトレーラーへと戻る。

 ザシャが背中を向ければ、待機していた二機のVF-1JとSは墜落した三機のVF-25の回収に向かった。




今回は主人公であるマリマリの出番が少ないです。

次回からはちゃんと主人公しますよ?

VF-1AとJに続き、Sも登場。
塗装はJとSは輝専用カラーです。ただしAは一般機。

イクサ人は男しか居ない亜人で、男同士で子供が作れるという腐女子御用達な設定・・・
でも、むさ苦しい強面ばっかで、イケメンは極僅か・・・美人ばっかりのメガミ人とは大きな違い。
しかし、性欲は薄い。よって殆どの人口をクローンで補っている。ワルキューレに居るイクサ人以外は。
そんな設定です。
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