復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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※微エロ注意!


闘技場

 日が沈み、辺りが暗くなった時間帯にマリとザシャ、ポートリエ一行は目的地であるガラヤの町に着いた。町は高い防御壁に囲まれ、壁の上には二門の砲身を町の外へ向けているトーチカが幾つかある。まるで要塞のようで物騒だが、この星で機動兵器を所持する盗賊団が出て来たことから、これくらいが丁度良いと思われる。

 出入り口である門を潜ると、人々で溢れる明るいネオン街が広がっていた。まずポートリエ一行が目指すのは病院である。ハンドルを切るジェロームに、何処に向かうのか分かっていないレイが話し掛けた。

 

「ねぇ、何処行くの?」

 

「なにって、病院だろ普通」

 

「あっ、眼帯のお姉ちゃん!」

 

 今更理解したレイに対してジェロームは呆れ返り、病院を目指した。数分後、トレーラーは町の病院に到着。事前に連絡していた看護師達が、マリを治療室へと運び出す。

 

「なんで私は病院なのよ?」

 

「傷口開いたら大変でしょ?明日になれば完治してるから」

 

 寝台車に載せられたマリは、トレーラーへと戻る一同に問うが、代表してリュシーが答えれば、病院へと搬送されていく。マリを病院へと送り届けた一同は、休息を取るためにトレーラーを専用の駐車施設へ止め、近くのホテルを確保する。部屋割りはジェロームとリュシーが一部屋、ザシャ、晃、レイも一部屋、残りは一部屋ずつだ。

 一同はジェロームとリュシーの部屋に集合し、リーダーであるジェロームがこれからの予定を伝える。

 

「よし、怪我人を除いて全員集まったな?これからの予定を伝えるぞ。俺達はこのガラヤの町に五日間滞在する」

 

「えっ、五日も滞在するの?」

 

「んぁ?文句あんのか?」

 

 伝えている最中にレイが質問したためか、ジェロームは逆に質問で返して黙らせる。

 

「別に無いけど・・・」

 

「そうかぃ。町では機動兵器の闘技大会が開かれてるし、丁度品物が売れる時期だ。ここでジャンジャン売るぞ。それと、腕利きのパイロットが四人も居るしな」

 

 ザシャ、晃、レイの三人を見たジェロームは、良からぬ事を考えている表情を浮かべ、三人に告げた。

 

「飯を食わせてやってんだ、お前等には闘技会に出て貰うからな」

 

「はぁ!?そんなの無しでしょ!普通!アンタ何様のつもり?!」

 

「この馬鹿たれ!勝手に乗って来た奴が言うんじゃねぇ!」

 

 闘技大会の出場を勝手に決められたレイが反発するが、ジェロームが指差ししながら正論を叩き付ける。これに対して返す言葉も無いのか、レイは小さくなる。ザシャも反対しようとしたが、彼等には世話になったこともあり、泣く泣く従うしかなかった。

 

「取り敢えず、パツキン女は暴れたり無さそうだから、一番キツイ闘技場の方にして。ヒヨコちゃん達はレシプロ航空戦大会にでも出て貰うか」

 

「レシプロ航空戦大会・・・?」

 

「おうよ、レストアされたレシプロ機でドックファイトをする大会よ!」

 

 ジェロームからの熱い返答に、レシプロ機の操縦経験のあるザシャは少し興味を持った。可変戦闘機と言う名だが、一応ながら戦闘機であるバルキリー乗りである晃とレイも話しに釣られる。

 ちなみにレシプロ航空戦大会とは、彼が言うとおり、この世界の技術力でレストアされた第二次世界大戦時に各国で制式採用されたレシプロ戦闘機で航空戦を行う大会である。

 無論、仕様弾は競技用のペイント弾であり、航空戦は死ぬ恐れはないが、事故は起こることがあるので、主催者側が責任を取らない為の契約書にサインしなければならない。言わば自己責任と言う奴だ。

 

「後で参加すれば良かったなんて事にならなかったら、了承することだな」

 

 お高くとまる独創的な髪型の男からチラシを渡され、それを読んだ三人はその大会に出る事にした。興味津々で見る三人の様子を見たジェロームは、大会へと出場する気と察する。態とらしく大会へ出るかどうかを問う。

 

「それで、お前等大会へ出るか?」

 

『出ます(るわ)』

 

「(よし!)」

 

 即答した三人に、思惑通り上手く事が運んだので、握り拳を下げて内心喜ぶ。

 

「おぉ~、だったらエントリーしにいかねぇとな!取り敢えずだ、これで上手い飯でも食ってきんしゃい」

 

 上機嫌なジェロームはこの惑星アヌビスで最高位の札を数枚渡す。

 

「えっ、良いですか?これ」

 

「良いも何も、明日からウンと稼いでもらわにゃならんのよ。それで英気を養いな」

 

 椅子に深く座り込み、ザシャからの問いに誇らしげに笑みを浮かべて答える。

 

「ありがとうございます。明日の大会で拾ってもらった恩を返します!」

 

「礼をきちんと返せと園長先生に言われていますので、自分も頑張りたいと思います」

 

「まぁ、勝手に乗ってきて、それなりの腕を見せないとね。優勝して、あんたを見返してやるんだから!」

 

 大会への出場を決めた三人は意気揚々と優勝する気を見せ付ける。

 

「その息だ。期待してるぜ!」

 

「はい!では、私達は外のレストランへ」

 

 外にある飲食店でザシャが声を掛けてから晃とレイを連れて部屋を出て行く。

 

「あんまり遠くへは行くなよ。それと食い過ぎて腹壊すな~」

 

 ジェロームがそう注意すると、ザシャは少女のような笑みを浮かべ、出入り口のドアを閉めた。三人が居なくなり、他の仲間達も部屋に戻って二人きりになったのを確認すると、黙っていたリュシーが声を掛けてくる。

 

「あんなに乗る気にさせて良いの?もし怪我でもしたら・・・」

 

「大丈夫だぜ、ハニー。あいつ等がヘマをするような連中に見えるか?俺の目には狂いはないぜ、あの戦いぶりを見れば分かる。特に左眼が失明しちまってるパツキンの姉ちゃんわな。あの四本頭に乗ってる嬢ちゃんもそうだ。ガッポガッポと儲かるぜ、こりゃあ」

 

 自慢げに答えるジェロームは、更に続ける。

 

「明日にはパツキンの姉ちゃんもライガー・ゼロも実戦可能状態さ。チャンプを倒せずとも、たんまり大儲けって訳でこの忌々しい星から出られるぜ。そして豊かで治安の良い星に移住して、そこで豪邸を建ててハニーと・・・」

 

「えぇ、そうね・・・あの子達には悪いけど、これも私達の幸せのため・・・」

 

「あぁ、これも俺達のためだ・・・」

 

 ジェロームの夢に、リュシーは賛同して彼に抱き付いた。一方、夜の町へ繰り出した自分達が良いような駒にされたとは思わないザシャ、晃、レイの三人は、空いていそうな中華料理店へと入った。

 

「ここが良さそう」

 

「えぇぇ!?もっと美味しそうな所に行こうよ!」

 

「他のお店は何処もいっぱいだよ?それにここのお店は席が空いてるし、ホテルからも近いし。ここが合理的だと思うよ」

 

「むぅ・・・!」

 

 文句を付けるレイであったが、尤もな事をザシャに言われ、ムスッとした表情を浮かべる。仕方なく中華料理店に入り、空いている席へと座る。チャイナドレスの店員が接客に来て、人数分の水の入ったコップを回転式のテーブルへ置く。

 

「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい。失礼します」

 

 一度お辞儀してから、店員は従業員の入り口の方へと去っていった。メニューボードで何を食べるか迷っている最中、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「いやー、美味い、美味い」

 

「あれ、この声・・・何処かで・・・?」

 

 気が付いたザシャは声がした方向へ視線を向けると、思わぬ人物がそこに居た。

 

「柿崎君・・・?」

 

「あぁ、中尉!店員さん、席移すよ!」

 

 思わず声を掛けると、その大柄の男は気付き、食事を中断してザシャ達の席へやって来た。席へ戻り、自分が食べていた料理を持って来て、彼女等の席へと移す。

 

「いや~、偶然ですな。ハハハ!中尉殿、貴女もこの惑星に墜落してきたとは」

 

「誰、このおっさん?」

 

「柿崎駿夫、確か、D中隊所属の伍長・・・」

 

「覚えて貰って光栄であります!中尉殿」

 

 突然やって来た大男の事を聞いてきたレイに対し、ザシャはフルネームを口にすると、覚えて貰ったことが嬉しかったのか、柿崎は敬礼した。その瞬間、周りで食事をしていた客達がざわめき始める。

 

「おい、兵隊だぞ・・・」

 

「一体何しに来たんだ?またイチャモンを付けに・・・」

 

「ん?みんなどうしちゃったのかな?」

 

 何が起きているのか分からない柿崎は、周囲を見て不思議に思う。

 

「兎に角座ってください。ここの人達は兵隊が嫌いだそうで」

 

「あぁ、そうなのか。では、失礼」

 

 晃が気を利かせると、彼は遠慮なしに空いている席へ座り、食事を再開する。メニューが決まったので店員を呼び出し、注文すると、柿崎は食事をしながらザシャに晃とレイの事を問う。

 

「所で中尉殿、そこのちっこいの二人は何ですか?」

 

「晃君にレイちゃん。今お世話になっている人達の、預かってる子達・・・」

 

「あぁ、預かってる子達ですか!ハハハ!それで、貴女は保護者としてご同行を」

 

 苦手な柿崎の質問に答えるザシャは少し言葉が濁る。そんな柿崎に対して自分を子供扱いしたのか、レイは突っ掛かる。

 

「煩いおっさん!私は17歳よ!」

 

「誰がおっさんだ!俺だって17歳だぜ?」

 

「えっ、嘘・・・!柿崎君17歳!?」

 

「中尉までなにを、自分はまだ17歳ですよ!」

 

「見た目に反してか・・・」

 

 どうやら、柿崎が17歳であることを初めて知ったのか、ザシャは驚きの声を上げる。この事実に対し、晃は意外と思ってそれを口にした。

 

「ひっどいな~、俺はまだ17歳だって言うのに」

 

「外見と中身が一致しないのよ!あんた鏡みてるの?」

 

 後頭部を掻く柿崎に、ここぞとばかりレイは罵倒する。注文した物がテーブルへ置かれると、彼女等は柿崎と同じく食事を始めた。その間に柿崎はここまでの経緯を聞いてもないのに、勝手に話し出す。

 

「ここまでくるのにやや苦労しましたよ。機体の修理はできたのですが、空はひっきりなしに連邦軍の戦闘機と軍艦が飛び回っていましてね。ひたすら低空飛行でここまで来たんですよ」

 

「そ、そう・・・(聞いてないのに)」

 

 苦笑いして、聞いているフリをしようかと思っていたザシャであったが、次の柿崎が放った言葉が衝撃的であった。

 

「この星の通過なんか持ってませんから、VF-25A、売っちゃいました」

 

「ハァァ!売った!?」

 

 驚きの声を上げ、机を叩く。

 

「いや、だって、VF-25で飛んだら撃ち落とされちゃいますし、それにデータバンクはしっかりと壊してますよ!」

 

「てっ、そんなの駄目に決まってるじゃない!隠すとか考えないの?!」

 

「考えましたけど、どうやってここでの生活費を稼ぐんです?VF-25で飛んでたら、確実にお縄になりますよ」

 

 軍の最新鋭機を売った柿崎の言い訳に、ザシャは頭を抱えて呆れ返る。

 

「大丈夫ですよ、中尉殿。VF-25は高く売れましたし、そのお金で機体も調達しました。それに使い切れないほどのお釣りだってあるし」

 

「はぁ。で、売ったのは連邦軍の人じゃないよね?」

 

「それなら心配ご無用ですよ。売ったのは大金持ちのバルキリーマニアで、高く買い取ってくれました」

 

 続ける柿崎から聞いた答えにザシャは少しホッとする。次に、売った金で得購入した機体について問う。

 

「何を買ったの?」

 

「我々の勢力下に戻るため、VF-1Aバルキリーを購入しました。古い型ですが、最初に乗った機体ですし、操縦は慣れてますので」

 

「そう。それなら安心だけど・・・」

 

 答えを聞き、食事を再開するザシャに、今度は柿崎が話し掛ける。

 

「所で、中尉は機体を売らないのですか?」

 

「売らない!」

 

 即答したザシャは聞き手にレンゲを持ち、頼んだチャーハンを口に運んだ。この二人のやりとりを見ていたレイは柿崎が本当に軍人なのかザシャに聞いた。

 

「ねぇ、あの柿崎って人、本当に軍人でザシャ姉ちゃんの部下?」

 

「本当に軍人だよ。それと柿崎君は部下じゃないよ」

 

「部下じゃないの?別の隊の人?」

 

「そう、私と同じ階級の人の部下」

 

「その人大変そう・・・」

 

 ザシャからの答えに、柿崎の上官であるコリンヌが余程苦労しているのだと思った。デザートを終え、食事を終えると、代金を支払って四人は店を出る。雑談を交わしながら宿泊地へと戻っている最中、道路の中心で現政権打倒を掲げる者達が、宣伝カーに乗って現れた。

 

『腐敗した現政権を倒せ!』

 

『我々は人間だぞぉ!人権侵害だッ!!』

 

『我がアヌビス憂国会に協力を!現政権を倒し、このアヌビスに繁栄を!!愛国者達よ、立ち上がるのだ!!』

 

 高らかに叫ぶ彼等だが、周りの者達は協力する気など無く、むしろ迷惑がっている。

 

「まただぜ。あいつ等、暇だな」

 

「愛国心、愛国心って、うるせーんだよ」

 

「愛国心で飯が食えりゃ、誰でも愛国者だぜ」

 

 周りの者達は、聞こえないように小声で陰口を叩く。現政権の打倒を掲げる者達、所謂反政府勢力が現れたとなると、この星をいよいよ末期という事だろうか。

 

『志願せよ!我が正義の軍勢に参加し、現政権を打ち倒すのだ!!』

 

「あいつ等、まだメガミ人が生きてること知ってるのか?」

 

「知らねぇだろう。最近未開拓地から出てこないから、みんな死んだと思ってるんだ。馬鹿な奴等だぜ」

 

「メガミ人?」

 

 志願兵を募る反政府組織に呆れた市民の一人が「メガミ人」という言葉を発した為、ザシャは疑問を抱いた。そんなザシャの疑問に、少しは状況を知っている柿崎が答える。

 

「詳しい事は分かりませんが、どうやらこの星でのメガミ人は先住民で、昔の戦争に負けて何処かに潜んでるらしいですよ。全くおかしな話ですよ」

 

「そうなんだ・・・」

 

 未だに現政府打倒を叫ぶ反政府勢力を他所にザシャ達は柿崎と別れ、自分等の宿泊地へと戻る。そのままシャワーを浴び、着替えを行って就寝前の行事を済ませると、明日の大会に備え、ベッドへ入り、少し早めの就寝にはいることにする。疲労が溜まっていたのか、数分もしないうちに睡魔に襲われ、夢の世界へと引き込まれた。

 

 

 

 翌日、病院に押し込まれていたマリは目を覚まし、ベッドの上で上体を起こした。

 

「ふっ、んん・・・!」

 

 身体を伸ばすと、ベッドから離れ、手鏡で自分の顔を確認する。失明していた左眼が治っていることに気付くと、穴が空いていた腹部に触れてみる。

 

「治ってる・・・!」

 

 まるで最初から傷口が無かったかのように、ザシャが施した縫い跡は綺麗さっぱりなくなり、傷のないマリの雪のように白い肌に戻っている。ベッドから離れると、机の上に用意されていた着替えを取り、患者服から作業服へ着替え始める。身体のラインが浮き出る程であったが、これしかないので我慢するしかない。

 着替えの下に置かれていたメモに気付き、それを手に取って読む。

 

【お前が目覚める頃には、ライガー・ゼロはもう直っている頃合いだ。暴れられる場所は用意しておいた、闘技場へ向かえ。警備の男にエントリー表紙を渡せ。ジェローム・ポートリエより】

 

 メモを裏返すと、闘技場への道が記された簡単な地図が書かれていた。読み終えてからメモを捨てると、他に用意された物を全てポケットへ入れ、病院を後にした。朝の町に駆け出すと、朝食を取るために空いている飲食店を探す。

 探している途中、自販機で煙草を一箱買うと、仕事先へ向かう労働者に混じって、ファーストフード店へと入る。朝食用のメニューを頼み、それを受け取って代金を支払い、空いている喫煙用のテーブルの席へ座り、朝食を始める。食事を済ませれば、珈琲を飲み、一服してから店を出ると、バイクに跨った柄の悪い男達がマリに目を付けた。

 

「おい、見ろよ。すげぇエロい身体の女だぜ?」

 

「あんな格好で歩いてよ、ありゃぁ誘ってるって証拠だ」

 

 下品な台詞を吐く男達を無視して闘技場を目指すマリだが、彼女の身体、あわよくば性交渉をしたくなった男達は、バイクを走らせ、マリを包囲する。

 

「よう、姉ちゃん。そんな格好してるなら、俺達と気持ち良いことしねぇか?」

 

「ヒュー!たまんねぇ・・・!もうレイプしちまおうぜ?!」

 

「まずは俺から味見をさせてもらいてぇな!」

 

 次々と下品な台詞を吐く彼等に対し、マリは面倒臭くなったのか、周囲に強烈な殺意を放つ殺意の波動を使い、男達を再起不能にさせた。

 

「ひっ、ヒィィィィ!!こ、殺さないでくれ!!」

 

「うわぁ、うわぁぁ・・・!」

 

「た、頼む・・・!殺さないで・・・!」

 

 先程の威勢は嘘のように消え去り、バイクから転げ落ちて悲鳴を上げ、失禁や脱糞もして、命乞いや泣き出し、情けない姿へ変わる。

 

「チンピラ風情が、粋がってんじゃないわよ・・・」

 

 そんな男達にマリは唾を吐き捨て男達から財布を盗り、闘技場へと向かった。闘技場近くまで辿り着くと、入ろうとする観客で溢れかえっていた。

 

「大分人気な大会みたいね・・・ああいう連中が居るから、殺人系のバトル物かしら?」

 

 どんな闘技大会が開かれているか想像し、関係者用の出入り口へ向かった。

 

「なんだお前は?」

 

 警備の男が問うと、マリはメモに書かれたとおり、エントリー表を渡した。それを手に取った男はエントリー表に目を通し、ネームタグを渡してからマリを中へ通す。

 

「入って良いぞ」

 

 出入り口へ入り、ネームタグを服に付けてから見取り図を読み、控え室へと向かった。出場選手専用の控え室へ入ろうとすると、待っていた女性係員に話し掛けられる。

 

「マリ・ヴァセレート様ですね。こちらへお越し下さい」

 

 言われたとおり、マリは女性係員についていき、出場選手用の格納庫(ハンガー)へと辿り着いた。

 

「貴女の搭乗機はライガー・ゼロで間違いないですか?」

 

「えぇ、間違いないわ」

 

「ありがとうございます。予選開始十分前には自分の機体に搭乗してください。失礼します」

 

 手を翳した方向に、白い塗装の装甲を持つライオン型大型ゾイドライガー・ゼロがあることで、自分の所有物だと答える。分かった瞬間、女性係員は元の位置へと戻ろうとするが、マリに手を掴まれてしまう。

 

「あの、冗談なら止めて貰えませんか?」

 

「ねぇ、私ちょっと溜まってるの。貴女が相手くれるかしら?」

 

「止してください!そう言う係は向こうでお願いします!」

 

 掴まれた手を振り払った女性係員はマリの元から去っていく。誘いを断られたマリは、見取り図で確認した選手用性的サービスエリアへ向かいつつ、パンフレットを手に取って闘技場のルールを確認する。

 

「一対一の勝負でルール無用ね、武器は何でもOKと。簡単ね」

 

 トーナメント制の闘技大会のルールを理解したマリは、次に自分の出場グループを確認、まだまだ時間のある予選Cブロックであることが分かる。

 一人勝ち残れば、本大会に参加できるバトルロワイヤルと分かり、歩みながらこれから地獄へ送る参加選手の搭乗機体に目を通す。確認していると、いつの間にか性的サービスエリアに到着した。

 部屋から女の甘い嬌声が聞こえ、肌が互いにぶつかり合う音が耳に入ってくる。受付まで向かうと、出場選手がマリの姿を見るなり絡んできた。

 

「おい、姉ちゃん。俺とやらねぇか?」

 

 どうやら、彼女を闘技場専属の娼婦として見ているようだ。そう選手の男に思われたマリの堪忍袋が切れ、男の顔にかなりの力を込めた拳を食らわせた。

 

「ホゲッ!?」

 

 叩き付けられた鼻は完全に潰れ、衝撃で歯も数本抜け、男は顔面陥没し、凄まじい余りの痛さで気絶した。むかついて男をぶちのめしたマリは受付の台に胸を寄せるように体重を掛け、空いている娼婦が居るかどうかを聞く。

 

「ねぇ、空いてる娘って居る?」

 

「あぁん、レズかぁ?うちはレズはお断りなんだよ」

 

 この受付係の返事に腹が立ったのか、胸倉を掴み、殺意に満ちた瞳で睨み付ける。

 

「ひっ、な、なにを・・・!?」

 

「良いから、空いてる娘は居るの・・・?」

 

「い、居るよ・・・!今呼んでくるから!」

 

 一睨みでマリに屈した受付係は、殺されないうちに空いている娼婦を直ぐに呼んだ。

 止めるはずの用心棒は彼女から漂う殺意で怯み、迂闊に近付けないで居た。

 呼び出された娼婦の容姿は白人であり、顔立ちは整って美人の類に入る程で黒髪、豊満なバストに肉質の良い美脚で、かなり性的魅力に溢れている。服装は豊満な体付きを強調させるためか、胸元が大きく開き、太腿を大胆に見せるためのスカートが短いドレスだ。

 それを見たマリは受付係から手を離し、呼び出された若くて美しい娼婦を見て、顔を赤くする。

 

「はーい!ご指命ありがとうございまーすって、指名したの女の人?もしかしてレズプレイ?」

 

「そ、そうなんだよカリナちゃん。試合開始間近までにサービスしちゃって・・・!」

 

「はいはーい!カリナ、パンパンやっちゃいまーす!空いている部屋、奥ですよ~」

 

 カリナと呼ばれた娼婦は、マリの左腕に自分の胸を押し付け、空いている部屋へと向かう。部屋はその気にさせるためなのか、見えないように壁を引いておきながら防音など一切しておらず、中から聞こえる嬌声と肉と肉がぶつかる音がはっきりと聞こえる。空いている部屋は奥であり、向かっている途中で出場選手達と行為に勤しむ娼婦達の甘い嬌声が耳に入ってくる。

 周りから聞こえてくる声に、マリは自分の行為が見られたり聞かれたりと思って恥ずかしくなり、顔を下に俯いてしまう。そんな様子なマリを楽しんでいたカリナは、左手でマリの胸を作業着の上から掴み、ゆっくりと揉み始め、彼女から声を出させた。

 

「ひゃっ・・・!?」

 

「お姉さんさ、周りでやってる声聞いて発情しちゃったでしょ?ほらほら、あそこ丸見えだよ~」

 

 カリナが指差した方向には、裸の娼婦に何度も腰を叩き付ける下半身に何も穿いていない大柄な出場選手が見えていた。ドアは開きぱっなしであり、丸見えになっている。恥ずかしくて顔を背けていると、カリナが追撃を掛けてくる。

 

「私さ、さっき二、三発くらい出された後で、一回しかイってないから。満足してないんだよね。レズのお姉ちゃんなら、色々気持ちいい所知ってるみたいだしさ。満足させてくれる?」

 

「クッ・・・」

 

 妖艶な笑みを浮かべ、誘うような言葉を掛け、マリの股間に手を忍ばせ、撫でるように触れる。そうしているうちに、指定された簡易すぎる部屋へと到着した。中へ入り、マリが来ている作業着を脱がせる。

 下着姿となり、露わになった彼女の見事なボディラインに、カリナは驚きの声を上げる。

 

「わぁ・・・凄いナイスバディ!ここで働いたらマジで大儲けできるよ!」

 

 大いに騒ぐカリナだが、マリは娼婦になって働く気など一切無い。男相手に身体を売るなど、彼女にとってはあり得ないことなのだ。

 

「まぁ、バストの方は、私が上だけど」

 

 自分のマリよりは大きいであろう胸を強調する姿勢を取るカリナだが、数々の誘いで我慢が出来なくなったマリが胸元の布を掴み、一気に下げて抑えられていた巨乳を露わにさせた。謎こうも簡単にはだけたのかは、どうやらカリナの服はそう言う仕組みになっているらしい。

 

「あん・・・!」

 

 周りを気にしなくなったマリは、カリナをベッドへ押し倒し、自分の下着を全て取り払って、一糸纏わぬ姿となると、ベッドへ倒れ込んで誘うような姿を見せる彼女の服を全て脱がした。こういうときに備えてか、カリナは下に一切の下着を身に着けてはいなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

 マリは息を荒げながらベッドへ上がり、カリナの上から覆い被さり、彼女の豊満な胸に自分の顔を挟み込む。顔を数回ほど擦り合わせ、カリナから甘い嬌声を吐き出させると、彼女の表情を見る。

 

「集合時間までにいっぱいしても良いよ・・・」

 

 そのカリナの言葉にマリの理性が飛び、彼女の突起した乳輪にむしゃぶりついた。奥のマリとカリナの行為に勤しむ声は、周りの行為中の娼婦達の嬌声に負けないほど強く響き渡った。

 一方、マリが極上の娼婦と情を交わしている中、ザシャ、晃、レイの三人はレジプロ機航空戦大会会場まで来ていた。エントリーは既にジェロームが済ませておいたのか、受付に彼に渡された許可証を出して入るだけだった。中へ入れば、控え室へと通される。

 

「緊張するね・・・」

 

「う、うん・・・でも、散々飛んできたからレジプロ機くらい楽勝よ!」

 

「そうとも言えない」

 

 緊張を解すためにザシャが口にすれば、レイは意気込むが、晃は周りにいる出場選手達を見ながら言う。マリが出場する機動兵器を使った闘技大会とは違って、殺気に溢れた選手達は居ないが、誰も彼もがただならぬ物を感じさせていた。更に、参加してきた自分等に視線を集中させている。

 控え室に入ってきた係員が、テストフライトの時間を知らせに来た。

 

「出場選手の皆様、係員から飛行服を受け取ってください!」

 

「着替え終えたら、飛行場へ集合してください!そこでテストフライトを行います!」

 

 係員の指示に従い、テーブルに並んでサイズにあった飛行服を受け取る。女性専用の更衣室へと向かい、飛行服に着替えると、もう一人の係員の指示に従って、飛行場へ出た。

 

「わぁ・・・プロペラ機がいっぱい・・・!」

 

 整備された飛行場には、選手用のプロペラ機の練習機が並べられている。

レイはそれを見て口に出す。

 

「では、皆様には単発エンジンの練習機に乗って貰い、十分間のテストフライトをしてもらいます!操縦経験のある方も受けて下さい!テストフライトが終われば、仮想シミュレーションでの予選を開始します!」

 

 係員の指示で、ザシャ等を含む出場選手達は練習機に乗り込み、エンジン音が響かせながら、空へ飛び立っていく。練習機は複座席であり、教官役のパイロットが先に搭乗していた。

 十分間のテストフライトを終えた出場選手達は滑走路を使って地上へと戻り、暫しの休憩の後、予選会場であるシミュレーションルームへと入り、それぞれが仮想戦闘訓練を開始する。入りきれない者達は並んで待つことになる。ルールは簡単、出て来る無名のエースが乗った敵機を倒すだけである。

 何故こんな予選にしたのかは、参加者が多すぎることが理由だった。

 当初は三十二人制のトーナメント方式であったが、参加者が予想より多く、篩いに掛けて腕の良いパイロットだけを選別することに決めた。その御陰か、脱落していく選手達が続出した。

 流石に三桁台のエースパイロットでは話にならないのか、二桁台の六十機以上を撃墜したドイツ空軍のエースパイロットが担当する。

 数十分も持ち堪える者が居たが、結局は第二次世界大戦時の東部戦線に従軍していたエースに勝てず、脱落してしまう。開始から二十分ほどが経つと、黄色人種で融通が利かなそうな熱血漢が大きな声を上げて勝ったと宣言していた。

 

「勝ったぞぉ!零戦は最強だぁぁぁ!!」

 

 大きな声で予選を突破した男は、係員に案内されて本戦専用の控え室まで案内された。それに続いてか、白人の金髪の青年や長い水色の髪を纏めたポニーテールの容姿が美女のような少年がエースに勝利し、本戦選手用の控え室まで案内されるのが見える。

 

「あの人達・・・周りとは全然違う・・・!」

 

「次、貴女の出番ですよ」

 

「あっ、はい!」

 

 遂にザシャの出番が来たのか、彼女は仮想戦闘用のコクピットへ入り、キャノピーを閉めた。周りが明るくなり、画面が映し出されると、機体選択の一覧が出る。

 迷わず相手と同じ国のフォッケウルフFw190D型を選択すると、キャノピーの外が青空へ変わり、両翼と機体後部に鉄十字を付けたメーサーシュミットBf109Gが向かってきた。

 

「では、予選を開始します」

 

 その声と共に、エースが乗るBf109が機銃を撃ち込んできた。

 一撃離脱戦法を取ろうとする敵に、ザシャは高度を下げて回避し、格闘戦に持ち込んで後ろを取ったが、ただ者ではないパイロットが乗った敵機はジグザグに動いて的を絞らせないようにしている。

 照準に敵機が重なる瞬間に撃ち込むが、一発も被弾せず、敵は高度を上げて引き離そうとする。しつこく追い回し、機銃を数発ほど撃ち込めば、何発か命中させる事に成功した。

 煙を噴く敵機は一回転してから速度を落として彼女の後ろを取ろうとするが、ザシャはこれを読んでか、宙返りを行って再び後ろを取り、取っておいた20㎜機関砲を浴びせ、エースを撃墜に成功し、見事本戦への出場を勝ち取った。

 

「予選突破おめでとうございます。こちらへどうぞ」

 

 キャノピーを開き、待機していた係員の案内を受ける。

 

「ここで予選終了までお待ち下さい」

 

 本戦出場選手専用控え室に案内され、中へ入って椅子に座ると、係員は立ち去って行った。先程の三人が椅子に座って選手が集まるまで、椅子に座って待機している。予選を勝ち抜いたのは三人だけでなく、他に十数人以上も勝ち抜くことに成功していた。

 数十分後、エースに勝ち抜いた選手達が控え室へと入室してくる。その中には、知った顔である晃とレイのも含まれており、彼女はホッと胸を撫で下ろした。さらに数十分程経つと、驚くべき人物が、予選を突破した選手等と共に入ってきた。

 

「か、柿崎君・・・!?」

 

「おや、中尉殿もこの大会へ?偶然ですな。ハハハ!」

 

 なんと、柿崎もこのレジプロ機航空戦大会に出場していたのだ。彼が次の台詞を吐こうとした瞬間、係員による次の指示が出された。三十二人制のトーナメント方式で一グループが八人で、A~Dの四つのグループに分かれることとなる。

 机の上に置かれた箱の前に並んで、箱の中に手を入れ込み、英数の書かれたボールを取り、所属グループをランダムに決める。ザシャはDグループとなり、晃はAグループ、レイはBグループで、柿崎はザシャと同じDグループだ。

 

「いや~、出場する大会と言い、所属グループも一緒と言い、何から何まで偶然ですな!ハハハ!」

 

「ははは・・・」

 

 大笑いする柿崎にザシャは苦笑いして、指示された空港へと向かった。集められた簡易的な空港には、自分が予選に選んでいた機体が用意されていた。それから暫しの休憩の後、第一試合が始まる。

 

「これよりAグループ第一試合を始めます。出場選手は直ぐに出撃の準備をしてください!」

 

 係員に呼び出されたエメラルドグリーンの長い髪を持つ女性パイロットと長身の男が、それぞれの搭乗機へと向かった。その頃のマリは行為を終え、体中に着いたカリナと自分の体液をシャワーで洗い流し、身体を清らかにしていた。シャワーを浴び終えれば、全身の水滴を全てタオルで拭き取り、それが終われば作業服を身に着ける。

 未だに周りで娼婦達の甘い嬌声が響いているが、マリは気にすることなく娼館を出ようとする。彼女が入っていた簡易的な部屋には、糸一つ纏わぬ姿でベッドの上で横たわり、息を荒げるカリナの姿がある。

 

「スッキリした・・・」

 

 娼館を出たマリはそう一言呟くと、自分の機体があるハンガーへと向かう。

 ハンガーへ着けば、早速キャノピーを開けてコクピットへ入り込み、座席に腰を下ろし、自分の出場する予選の知らせが来るまで待つことにした。暫くすれば。自分が所属するグループの集合を知らせるアナウンスが耳に入ってくる。

 

『予選Cグループの皆様にお知らせします。機体に搭乗し、予選開始まで搭乗機にて待機を願います。繰り返します・・・』

 

 そのアナウンスが鳴ってから十分後、ライガー・ゼロが固定されていたハンガーが上へと上昇し、広い空間まで着くと止まった。周囲には、同じく先程のエレベーターで上がってきた出場選手達の乗る機動兵器群が予選開始の合図を待っている。合図は物の数秒で出された。

 

『それではCグループバトルロワイヤルを開始します!派手に殺し合い、本戦への出場権を取れぇ!!』

 

 その狂喜染みた予選開始の合図が出されると、各機一斉に動き出し、本戦出場を掛けた壮絶な殺し合いが始まるのだった。




今回はやや長め。無駄な部分多いかな・・・?

夢のようなレジプロ戦闘機大会・・・あると良いな~
それと、出場してる選手の中に、CVが中村悠一でロボット物の主人公とライバルキャラ、後は分かるな?
パトレイバーの太田みたいなのは、本人じゃないです。外見がベースのキャラです。
髪の色がエメラルドグリーンな美人女パイロットも、何処かの作品のキャラじゃありません。オリキャラです。

マリの方は娼婦とレズセックスして、スッキリしてからバトルロワイヤルへ。
正直言って、機動兵器が一般に普及してる世界ってどうなの?
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