復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
バトルロワイヤル開始のブザーが鳴り響き、出場選手達が乗る多種多彩な機動兵器は、手近にいる敵機に襲い掛かる。マリが乗るライガー・ゼロの元にも、出場選手が乗るゲルググの砂漠戦用タイプであるデザート・ゲルググが、ビーム長刀を振り回しながら斬り掛かってきた。
それを容易に回避し、空かさず飛び掛かってレーザークローで胴体を抉る。胴体を抉られたデザート・ゲルググは倒れ込み、左腕に付いたナックルバスターを撃とうとするが、右前足で振り払われ、コクピットにクローを刺し込まれてパイロットごとトドメを刺される。右前足を引き抜き、自分を攻撃してくるバトリング用スコープドックに飛び掛かり、レーザーファングで噛み付く。
「や、やめろ!」
パイロットが命乞いをしているが、彼女は容赦なしに中の人間ごと噛み砕いた。マリは目に映る敵を手当たり次第に攻撃し、戦闘不能に追い込むか撃破した。
「なんて奴だ!」
「あのライガー・ゼロ、やばいぞ!みんな固まって潰すんだ!」
余りにもマリが強すぎたのか、大半の出場選手達が一致団結し、彼女のライガー・ゼロに向けて一斉射撃を掛けてきた。これに対してマリは、一々相手をする手間が省かれると思い、操縦桿を巧みに動かした。次から次へと目に入る敵を手当たり次第に倒し、予選会場にスクラップと死体を増やす。
脱落者がマリの御陰で続出する中、弱肉強食の如く、強い者達だけが残る。自分を攻撃してきた最後の一機を潰し、その上に左前足を置くと、残っている者達に視線を向けた。
このバトルロワイヤルで生き残っているのは、異世界で運用されている機動兵器ヴァンツァーの一種であるフロスト。バトリング専用のATストロングバックス。灰色の塗装ザクⅡS型。ゴリラ型大型ゾイドアイアンコング。茶色の塗装のサページの五体だ。自分も含めて、殺し合いの場には合計で六体は残っている。
「残っているのは五匹・・・どいつもこいつも少しは楽しませてくれそう」
生き残っている五機の敵機を確認し、ザクⅡから放たれるザク・マシンガンを回避して飛び掛かかり、ファングでコクピットを噛み千切った。これを合図に、残った四機が頃試合を再開する。
次にストロングバックスをクローで引っ掻いて倒し、ASサイズの突撃銃を持ったサページにザクⅡS型を倒した手を使ってパイロットごと噛み千切る。フロストは後退しつつ、マシンガンを撃ち続けるが、容易に避けながら接近してクローで胴体を引き裂き、パイロットを殺した。
パイロットが居なくなったフロストは倒れ、煙を噴きながら動かなくなった。立っているのはマリのライガー・ゼロと、同じゾイドであるアイアンコングだけだ。
「こ、この野郎~!」
自棄になったパイロットが右肩の六連装ミサイルをマリのライガー・ゼロへ放つが、容易に回避され、懐に接近されてしまう。
だが、アイアンコングは射撃と格闘を両立するための大型ゾイドとして設計されたため、ゴリラの特性である強烈なパンチを食らわせようとするが、これも避けられてしまった。
マリは避けられて地面に突き刺さった腕を踏み台にして飛び掛かり、レーザークローで頭部のコクピットを引き裂いた。コクピットに迫る高熱の爪を受けたパイロットは、断末魔を上げながら斬られる前に蒸発する。
「ウギャァァァァ!!!」
パイロットの悲痛な叫びと共に頭部が無くなったアイアンコングは、バランスを失って倒れ、地面に横たわった。
このたった一枠の本戦出場を掛けたバトルロワイヤルの勝者はマリとなり、それと同時に終了のブザーが鳴り響き、勝者を宣言するアナウンスが行われる。
『勝者、マリ・ヴァセレート!』
アナウンスが終わった後、マリはエレベーターまでライガー・ゼロを進ませた。エレベーターに乗り込み、ハンガーへと上がった。
上がった先にハンガーへ辿り着くと、多数の整備員が待ち構えており、指定されたポイントに付けば、アームで固定され、整備が行われる。ライガー・ゼロから降りたマリは、案内役の係員の後へついていき、本戦出場の控え室へと足を運ぶ。着いた先では予選のバトルロワイヤルを勝ち抜いた猛者達が何名か先に控え室へ辿り着いていた。
「ここで暫くお待ち願います」
係員がそう告げれば、控え室を後にした。置かれている席へ座った後、部屋の高さと広さ、それに人数を確認する。
部屋の高さ15mで広さは60m程ある。彼女に取ってこれが何の意味を示すか分からないが、これは後から入ってくる勝ち抜いた選手が答えを示してくれる。次に人数を確認とどれほどの強さを持っているか見極める。
今この控え室にいるのはマリを含めて六人。誰も彼もがあのバトルロワイヤルを生き延び、勝利した猛者達だ。同姓の選手は居らず、全員が男であり、歴戦の強者と示す傷がある。
「(どいつもこいつも、強そうな感じ。特に奥にいるでっかい奴)」
特に奥の220㎝はある長身の男を見て、マリは彼がただ者でない事を察する。その男は目が見えないほどの銀色の特徴的な兜と軽い防具を身に着け、下は動きやすい青いタイプの作業服を身に着けている。
「おぉ・・・!」
「な、なんだこりゃあ!?」
「きょ、巨人だ・・・!」
暫く観察していると、10mはある巨人が控え室に入ってきた。鎧の男以外が驚きの声を上げる中、一緒に入ってきた係員の男は、良く聞こえるように拡声器を使って巨人に知らせる。
『この控え室でお待ち下さい!』
巨人の男は言われたとおり、空いている場所へと腰を下ろし、他の選手達と同じく試合開始を待つことにした。
また数分後、最後の男が入ってきたのと同時に、控え室の天上から大画面のモニターが降りてくる。全員の目線に合うような位置まで降下すると、そこで止まり、映像が映し出される。映し出された映像は八人式のトーナメント表だ。
彼女が属しているのは第一試合第三回戦の右で、左に表示されている相手選手はドクザレフ。椅子に腰掛けている男がそうだ。背丈は196㎝程ある。
搭乗機はミドゥヴィェーチと呼ばれる全高20mはある大型ハーディガン。それに乗り込むドグザレフはマリを見るなりにやついた表情を浮かべる。
係員が控え室へと入ってきて、確認を終えたかどうかを選手達に問う。
「皆様の出場試合の確認は宜しいでしょうか?」
この問いに一同は無言で頷いて答えた。それを受けた係員は、第一試合の第一回戦に出場する選手を呼び出す。
「それでは、第一試合第一回戦に出場する方達は私についてきてください」
呼び出されたのは、あのただ者ではない男と身長差で負けるが、目付きが細い大柄な男だ。
兜の男が乗っているV字型のアンテナ、人間の目を模した複眼式センサーカメラ、白、赤、青のトリコロールの機体は、全高18mのRX-78-2ガンダム。このMSはガンダム神話を生んだ根源と知られている。この骨董品を何処からか手に入れたのか一切分からないが、多少のコネクションを持ち合わせていると見える。
対する目付きが細い男の機体は、全高14mとガンダムより4m低い小型MSデナン・ゾンだ。連邦軍と対する同盟軍で制式採用されている機体だが、理由は横流しか宇宙に漂うデブリから集めた再生品であろう。
性能差はガンダムの40年程くらいに開発されたデナン・ゾンの方がどう考えても上だ。しかし、パイロットの腕の差で”もしも”の可能性はある。
控え室を出た二人は、そのまま自分の機体があるハンガーへと足を運ぶ。マリは兜の男の実力を図るため、選手用の観覧席へと向かう。
『さぁ、第一試合第一回戦。この闘技場のチャンプ、ガルナ・ネルー対ロルソン・スカジビア!性能差はどう見たって、スカジビア選手の方が上だぞぉ~?さぁ、チャンプであるネルー選手はどう勝つんだぁ?』
実況がふざけた口調でガルナがどう勝つのか期待を寄せる。観客の歓声が沸く中、左右の中央部に設置されたゲートから、ガルナが乗るガンダムとロルソンが乗るデナン・ゾンが出て来る。
ステージの広さは700m程、天井までの高さは100m程だ。互いに450mの距離まで近付くと、両者は立ち止まり、試合開始の合図を待つ。試合開始のブザーが鳴り響くと、デナン・ゾンが地面に足を付けるガンダムより高く浮遊し、ショットランサーのヘビィマシンガンをガンダムへ向けて放った。
『おっと!試合開始と共にスカジビア選手のデナン・ゾンが猛攻撃だ!!これにはネルー選手、ただ盾で防ぐしかない!』
実況が告げれば、一方的に撃たれ、ただシールで防ぐしかないガンダムの姿があった。
次々と弾丸が着弾し、シールドの耐久力が着々と無くなる中、デナン・ゾンはショットランサーを撃ち込む準備をしていた。このランスを撃ち込まれれば、ガンダムの装甲とで意図も容易く撃ち抜かれてしまうだろう。
ガンダムはビームライフルを撃ち込んで反撃するも、容易に回避されてしまった。
「これで終わりだ。チャンプ」
舌を舐めずりながら、スカジビアはショットランサーを撃ち込んだ。先端からランスが放たれるが、ガンダムはビームを連発しながらこれを避ける。
『おっと!流石はチャンプ、こんなにあっさりと負けるはずがない!!』
「チッ、流石はチャンプって所か」
実況が周りを盛り上げ、喚声を更に上げさせる中、スカジビアは舌打ちをしながらビームを回避し、腕部ディアルビームガンで反撃する。ガンダムが地に足を付けて移動する中、デナン・ゾンはそれを回避しつつ、引き続きビームガンを撃ち続け、ヘビィマシンガンも加えて弾幕を増やす。ステージ中から戦闘の影響で煙が吹き荒れる中、何を思ったのか、ガンダムはバルカン砲を地面に向けて無作為に撃ち始めた。
『おや?ガンダムが地面に向けてバルカン砲を乱射してるぞぉ?』
「気でも狂ったか?なっ!?」
舐めていたスカジビアだったが、煙幕を作っていることに即座に気付いた。レーダーに目を向け、相手のガンダムの居場所を確認するも、そのレーダーは全く動かない。
「クソっ!細工しやがったな!!」
自分の機体をここの整備員に任せたのが失敗と分かり、動かないレーダーに八つ当たりする。この間にガンダムはビームサーベルをバックパックから引き抜き、スラスターを噴かせて地面を強く蹴り、斬り掛かってきた。
『煙の中からチャンプのガンダムが登場だぁ~!!』
「馬鹿野郎、そんなに死にたいのか?!」
スカジビアは直ぐにビームガンを撃ち込もうとするが、相手のガンダムは物凄いスピードで迫り、彼が反応するよりも早くビームサーベルを振り下ろした。
「うわぁぁぁぁ!!?」
幾ら四十年は先を行くMSでもビームで切断されれば一溜まりもなく、スカジビアが断末魔を上げる中、彼が乗るデナン・ゾンは縦斜めに両断された。ガンダムが地面に着地すると、両断されたデナン・ゾンは空中で大破する。爆風が上がる中、マリは姿勢を戻すガンダムの姿を見て、乗っているパイロットが見掛け倒しではないことを察した。
「(これは結構きつそう・・・でも、相手は弱かったし)」
そう脳内で強がり、彼女は後の試合はつまらないと思い、自分の試合の番まで控え室で待つことにする。喫煙所に向かい、箱から煙草を一本取りだし、それを咥えて先に火を付け、煙を吸う。口から離して煙を吐くと、また加えるのを繰り返す。
試合会場から歓声と爆破音が耳に入ってくるが、マリは興味を抱くことはなく、自分の出番が来るまで煙草を吸い続け、珈琲を一杯ほど隣に置き、待つだけだ。数時間後、天上に設置された拡声器から、自分の名を読み上げる声が聞こえた。遂に自分の番が来たのだ。
椅子から立ち上がり、ハンガーへと足を運んだ。途中、彼女の相手であるドグザレフが下品な笑みを浮かべて声を掛けてきた。
「運が良かったなお前。生き残れるぜ、ただし公開レイプだけどな!」
そう告げたドクザレフは、下品な笑い声を上げながら自分の機体の元へと向かう。
この相手選手の発言に、マリは強烈な殺意を抱き、ドグザレフをただでは殺さないと誓い、どう殺すか考えながらライガー・ゼロに乗った。開かれたゲートへと進み、ステージに出る。
彼女のライガー・ゼロの目の前には、銃剣付きのライフルを持つ四本の太い腕と機銃や長砲身が多数ある四足歩行の大型ハーディガンの姿があった。両者位置へ着くと、相手のミドゥヴィェーチェの拡声器からドグザレフの卑猥な言葉を吐く。
『わざわざ公開レイプされに来たのか?随分とレイプ願望のお高いお嬢さんだぜ!』
拡声器から下品な笑い声を上げるドグザレフ。これがマリを怒らせる切っ掛けとなり、彼の人生の幕が閉じる要因となった。
『さぁ、第三回戦の目玉は当大会の紅一点、マリ・ヴァセレート!それに対するは、ドグザレフ・アフーノフ選手だ!大きさと火力の面では、アフーノフ選手が上回り、ヴァセレート選手は機動力で上回っている!どちらが勝利するかは神のみぞ知る!!』
実況が観客達を盛り上げる中、マリは操縦桿を強く握り、試合開始のブザーが鳴るのを待っていた。
今の彼女の脳内では、一瞬でドグザレフが乗るミドゥヴィェーチを叩き潰す事しか無い。対するドグザレフは、ライガー・ゼロの四方を自慢の大口径の主砲で吹き飛ばし、動けなくなったところをコクピットからマリを引き摺り出し、群衆の前で彼女を犯すことしか無かった。
試合開始のブザーが鳴り響くと、ドグザレフは予定通り大口径の主砲を撃ったが、そこにはマリのライガー・ゼロの姿はなく、代わりに巨体を支える四本の足が切り裂かれ、バランスを崩している自分の愛機だった。
「な、何が起きて!?」
ドグザレフが気付く頃には、腕も全て切り裂かれ、迎撃用の機銃ですら全て潰されていた。彼の愛機がダルマになるまで要した時間は三十秒余り。この出来事に、実況は驚きを隠せないでいる。
『い、一体何が起きたのでしょうか!?アフーノフ選手の機体が瞬く間にダルマ状態に!ここでヴァセレート選手のトドメが入るぞ!!』
実況が告げたとおり、マリはミドゥヴィェーチェのコクピットを両前足で抉り始めた。ドグザレフが命乞いをするが、彼女は全く聞き耳持たない。
「や、止めてくれ!さっきのはほんの冗談なんだ!た、頼むから命だけは!!」
必死で命乞いをするも彼女は止めず、遂にドグザレフの姿が外の人間にも分かるよう見えてしまう。殺されると分かった彼は泣き喚き始め、それに失禁までする始末だ。
「やめろぉ~!やめてくれぇ~!」
泣き叫びながら命乞いをするも、無慈悲なマリは操縦桿を巧みに操り、ドグザレフを噛みながらコクピットから引き上げた。興奮した観客達は、口を揃えて「噛み砕け」と叫ぶ。
『噛み砕け!』
『バラバラにしろぉ!!』
ここの観客達は血に飢えているようだ。そんな観客達の期待に応え、マリは操縦桿を動かし、ライガー・ゼロの口の中で暴れ回るドグザレフを一度空中に放り投げてから噛み砕いた。勢いよく血が吹き出て、頭部の白い装甲を血で紅く染め上げる。
頭部や手足、内臓類や骨が飛び散り、ステージがドグザレフの物で汚れる。目の前で人が噛み千切られた光景を見た観客達は更に沸き、期待に応えてくれたマリの名前を叫び始める。
『マリ!マリ!マリ!マリ!』
『歓声がヴァセレート選手に向けられています!やはり敗れたアフーノフ選手を噛み砕いたからでしょうか?!私もアレには興奮しました!!』
興奮しきった観客達の歓声がマリに向けられている事を実況が伝える中、彼女は次の試合に備えるため、ライガー・ゼロと共にハンガーへと戻った。開いた門を潜って整備上へ辿り着けば、ライガー・ゼロの顔を見た待機していた整備士達が嫌な顔を浮かべる。
「うわぁ・・・マジでやりやがったぞ、あの女」
「観客の連中は、俺達の苦労も知んねぇのかよ」
「これを次の試合までに直せって言うんだろ?嫌だぜ、人のバラバラ死体を片付けるのは」
整備士達は文句を言いながらも、整備上に着いたライガー・ゼロの整備を始めた。キャノピーを開け、控え室へと向かうマリの姿を見た整備士達は睨み付けるが、彼女が殺気を感じるほど出せば、殺される恐怖を感じ、自分等の仕事に向かった。
控え室へ入って自販機から飲料水を取り出し、それを一気に飲み干すと、用を足すためにトイレへと向かう。
途中、彼女を背後から襲おうとする輩が出て来たが、殺意の波動を諸に受け、だらしない格好を晒す羽目となる。一般用の通路まで行って、女子トイレで用を足し終えた頃には、準決勝戦が終わっている頃だった。ガンダムに乗る兜の男が相手の機体を瞬時に倒してしまったようだ。
アナウンスが行われる中、マリは急いでハンガーまで向かう。
「早過ぎるでしょうが!」
愚痴をこぼしながら、整備が終わったライガー・ゼロのコクピットへ乗り込み、キャノピーを閉めると、機体をステージまで進める。
マリの次なる相手は、ビームやミサイルが搭載された専用のバトルスーツに身を包んだ巨人の異星人であるゼントラーディ人だ。指定の距離に立ち、試合開始のブザーが鳴るのを待つ。実況が観客達を盛り上げる中、マリは相手のゼントラーディ人が着込むバトルスーツを見た。
「(武装はビーム砲にミサイル・・・かなり強力そうだけど、懐に入ればやれそうね)」
声に出さず、頭の中で武装を観察すると、いつでも戦闘体勢に取れるよう警戒する。ブザーが鳴り響けば、バトルスーツは両肩のミサイルを一斉発射した。
「いきなり!?」
一斉に発射されたミサイルを回避すべく、相手に近付こうとするが、相手はスラスターを噴かし、後退しながらビームを撃つ。相手からの射撃線を予想し、距離を縮める。
このまま飛び掛かろうとするが、相手は上に飛んで、一方的に撃とうとする。
そうはさせまいと、地面を蹴って空へ飛び、左足をレーザークローで引っ掻いた。足を高熱の爪で引っ掻かれたゼントラーディ人は余りの痛さに呻き声を上げ、地面に倒れ込こむ。
「ヤック!」
高熱で焼き爛れた左足を押さえながら言語を叫び、怒りに我を任せてビームをライガー・ゼロへ向けて乱射した。
発射されるビームを回避しつつ、背中のスラスターを噴かせて一気に接近し、巨人に覆い被さり、相手の胸元に右前足を突き刺す。
「グァ・・・あ・・・!」
バトルスーツの装甲を貫き、深く突き刺されたゼントラーディ人は、胸から上がってきた血を吐き出し、突き刺さった胸元から血を勢いよく吹き出しながら力尽きた。物の数秒で試合終了のブザーが鳴り響き、マリの勝利を宣言する実況が入る。
『ヴァセレート選手、勝利です!』
観客の歓声が沸き上がる中、マリは決勝戦に備え、ライガー・ゼロをハンガーへと戻した。コクピットから出た後、暫しの休憩を知らせるアナウンスがなされたので、彼女は昼食を取るべく食堂へと向かう。選手用の食堂へ着くと、そこには決勝戦で相手であるガルナの姿があった。その男は奥の席へ座り、スプーンでスープを啜っている。
そんな質素な食事を取るチャンプに目を配りつつ、カウンターに向かってハンバーグとザワークラウトの付け合わせと珈琲を注文すると、奥の席を監視できる席へと座り、食事を始めた。
「(あんなデカイ図体なのに、なんで食べる物は質素なのかしら?)」
フォークでキャベツの煮物を口に運んでいると、ガルナは兜を取り、それを自分のテーブルの上に置いた。兜から見える彼の顔は傷だらけであり、かなりの激戦を潜り抜けてきた証拠であった。
かなり厄介な敵と推定すれば、奥の席に座るガルナは食事を再開した。そしてスープを飲み終えた彼はカウンターに空の皿を戻し、次の試合に向けての準備か、食堂を後にする。
マリも食事を終えれば、身体の汗を流すべく、浴室へと向かう。
あのガルナと言う男と戦うこととなると、これが最後のシャワーと風呂なのかもしれない。そう脳裏に思い浮かべたマリは浴室に辿り着けば、脱衣所で作業服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿となり、広い浴室へと入った。
闘技場の浴室はかなりの豪華さであり、闘技以外では上流階級の者達によって、使用されているようだ。
闘技場専属の娼婦達の姿もあり、彼女達もここでマリと同じく汗を流している。美しい髪と身体を持つ彼女が入ってくれば、知れずと視線がマリに集中した。
等の彼女は視線を気にせず、シャワーの蛇口を捻り、全身に熱いお湯を浴びて汗を流す。シャワーを浴び終えれば、石鹸を取って泡立たせ、それを自分の肌に付けて洗い始める。
自身の体を洗いつつ、マリは周りにいる娼婦達の裸体を見て、性欲を発散させようと思った。
「(後でお金払えば良いか・・・)」
そう自分に言い聞かせつつ、自分の身体を洗い終えたマリは、一番性欲が貯まっていそうな娼婦を選ぶ。その彼女の後ろから接近し、自分の胸を直に背中へ押し付け、耳元に唇を近付けて性行為を強請る。
「ねぇ、後でお金払うからさ。私とセックスして」
妖艶な笑みを浮かべ、肩に両手を添えて頼み込むが、娼婦は仕事以外の性行為はしたくないのか、断りの言葉を告げる。
「あんた、この私が金で誰でも金で売る女かと思っているのかい!」
怒気に満ちた表情でマリを睨み付け、彼女の身体を振り払うと、苛々しながら浴槽へと向かった。娼婦に断られたマリは不貞腐れた表情を浮かべ、個室の浴槽へと向かう。
「なにさ、男共よりも高い料金と気持ちよくさせてあげるのに。私のこの触り心地の良い身体より、男の堅い筋肉と肉棒で中を掻き回される方が良いって言うの?」
個室に入って髪を纏め、湯船に身体を沈めながらマリは不満を漏らした。
自分で慰めようかと思ったが、自らの指で絶頂するのが嫌になり、決勝戦に備えるために、湯船から上がり、個室を出て浴室を出る。脱衣所で濡れた身体をタオルで拭き終えれば、作業服に身を包み、ハンガーへと足を運ぶ。
滑り止めのために指抜きグローブを両手に填め、ハンガーに着けばライガー・ゼロの元へ真っ先に向かい、コクピットへ乗り込んだ。
ステージに出れば、決勝戦の相手であるガルナが乗り込むガンダムの姿があった。身を守るのは盾が一つに、武装はビームライフルとビームサーベルが二本、頭部60口径バルカン砲が二門と随分とシンプルであるが、軽くて丈夫なガンダリュウム合金の装甲と高い機動力を有している。
「今までの奴とは段違いね」
機体から漂ってくるオーラに、マリは緊張する。今の彼女の脳内には「本当に勝てるのか?」と言う思考が支配しており、操縦桿を握る両手が震える。
実況が観客を盛り上げる中、彼女は試合開始のブザーが鳴り響くまでに幾つかの作戦を脳内で立て、如何にして自分が無傷で勝利することだけを摸作した。脳をフル回転させ、ライオンが武器を持った人を効率よく殺す戦術を思い浮かび、その戦術で行くことに決める。
考えが纏まったと同時に、タイミング良く試合開始のブザーが鳴り響いた。
『決勝戦、開始ぃ!!』
予想通り、相手はビームライフルを撃ち込んできた。戦艦に匹敵するほどのビームが連続して発射されるが、彼女は射線を予想し、回避しながら二連装ショックキャノンを撃ち込んで反撃を行う。盾で防がれたが、これはマリの予想の範囲であり、動きを止めるための攻撃であった。
一気に接近して、レーザークローで切り裂こうとしたが、頭部から放たれたバルカン砲を受けた。衝撃で攻撃がずれてしまい、空中で浮遊している間に腹を大きく蹴られ、吹っ飛ばされる。
「キャッ!」
蹴りの衝撃でマリは声を上げる。ライガー・ゼロが壁に叩き付けられ、地面に倒れ込む。ガルナは動けない相手に対して、無情にもビームライフルの銃口を向け、トリガーを引いた。だが、地面を蹴ってビームを間一髪で回避し、再びショックキャノンをガンダムに浴びせる。
流石に同じ手は食らわないのか、相手も移動しながらビームを撃ってきた。彼女も負けじとショックキャノンを撃ち込むが、機体を正面に向けねば操縦は合わせられず、自分が一方的に撃たれる羽目になる。
「いい気になって!」
側面からビームライフルを撃ってくるガンダムを横目に、マリは相手のビームライフルが切れるまで撃たせることにしたが、相手はその彼女の考えを予想したのか、余りビームを撃ってこなくなった。
寧ろビームライフルの残弾を余す為なのか、ガンダムから接近してきた。
「嘘っ!?」
接近しながらビームを撃ってくる相手にマリは驚き、後退してしまう。ガンダムはライフルを腰に装着し、バックパックのビームサーベルを抜いて向かってくる。
「そっちがその気なら!」
これを倒せる好機と見たマリはビームサーベルを持ちながら来るガンダムに立ち向かい、自ら飛び掛かった。だが、ガンダムはビームサーベルを振らず、盾をライガー・ゼロに当てて吹き飛ばした。
吹き飛ばされたライガー・ゼロは地面に倒れ込み、乗っているマリは頭を天上へぶつけてしまう。
「キャン!」
頭を強く撃ったマリは軽い脳震盪を起こして頭を抱えた。
マリが頭を抱える間にも、ガンダムがビームサーベルを振り下ろそうと、倒れ込んだライガー・ゼロへと向かってくる。頭部から出血する血を引き払い、操縦桿を素早く動かして、振り下ろされたサーベルを回避する。
地面が高熱のビームで焼かれ、焼き焦がれる中、マリは即座に飛び掛かり、反応が遅れたガンダムにクローで斬り掛かる。相手の反応は早く、直ぐにシールドでガードされ、表面に大きな引っ掻き傷が出来るだけになってしまう。
ガルナも直ぐに反撃に移り、ビームサーベルで斬り掛かってくる。それを回避してクローを振るも、盾で防がれてしまうだけだ。
『おーと!一進一退の攻防が続いているぞ!!チャンプと互角だ!!』
実況が告げたとおり、それは一進一退の攻防であった。
この戦いは、鋭い牙と爪を持つライオンと剣と盾を持つ戦士が戦っているように見える。もう一つ例えるならば、古代ローマ帝国のコロッセオで剣闘士と猛獣が死闘を演じているかのようにも見えるのだが、その役目は槍を持つ闘獣士が務める。
膠着状態が続く中、遂にガンダムのシールドが使い物にならなくなってきた。
身を守る物はガンダムの装甲のみとなったが、ライガー・ゼロのレーザークローとファングは防げる物ではない。あっと言う間に高熱で溶かされ、その勢いで高熱の牙と爪で噛み千切られるか、引き裂かれるだけだ。
一定の距離まで地面を蹴って下がった後、使い物にならなくなった盾をマリのライガー・ゼロへ投げ付ける。案の定、避けられてしまうが、少しは前進を阻むことは出来た。
サーベルをバックパックに戻してライフルを抜き、出し惜しみをせず、弾切れまで撃ち続けた。全弾は回避されてしまい、噛み付かれる寸前まで近付かれるが、バルカン砲で牽制して相手を下がらせた。
「ちょこまかと!」
バルカン砲を何発か受けたライガー・ゼロだが、全て弾かれている様だった。マリは早期に決着を付けるべく、操縦桿を動かし、サーベルを抜いて待ち構えるガンダムに飛び掛かる。
これを待っていたのか、ガルナは飛び掛かってきたライガー・ゼロを空いている左手で抑え付け、サーベルを突き刺そうとしたが、クローでコクピット付近を切り裂かれ、自信は焼かれずには済むが、自分の姿がマリに見えるほどになる。
「やるな・・・!」
彼女のライガー・ゼロから離れた後、寡黙のガルナがようやく口を開いた。
引き裂かれて出来た穴から見える白いライオン型のゾイドを見たガルナは、遂に自分を倒す者が現れたことを察し始める。
「(ここで長くやってきたが、まさか俺を倒す者が現れるとはな。そろそろ運が尽きる頃か)」
ガルナはショックキャノンを避けながら、マリに討ち取られる覚悟を取る。向かってくるライガー・ゼロに対し、ビームサーベルを構えながら身構え、飛び掛かってきたところを横にサーベルを振って、両前足の装甲を斬り取る。
着地した途端に次が振り翳される前に、体当たりを食らわし、ガンダムを吹き飛ばした。
起き上がる前に直ぐに覆い被さり、両足をクローで切り裂き、後ろ足で地面を大きく蹴り、両腕の付け根に向けて高熱の爪を振り翳し、武器を持っている右手諸共両手を切り裂いた。
ダルマ同然となったガンダムにトドメを刺そうと、クローを振り翳したマリであったが、爪を突き立てたのはコクピットではなく、象徴であるV字型アンテナと人間の目を模した複眼センサーカメラ、マスクと尖った顎を持つ頭部であった。
吹き飛ばされた頭部がステージに転がる中、試合終了のブザーが鳴り響き、トドメを刺さなかったマリに対しての観客達からのブーイングが巻き起こる。
「おい!なんで殺さないんだ!?」
「良いからトドメを刺せぇ!」
「こっちは高い金を払ってんだぞぉ!!」
観客達からの罵声の後には、マリのライガー・ゼロに向けてありとあらゆる物が観客席から投げ込まれる。どれもこれもがたまたまそこにあった物で、何の影響もない。実況が観客達を宥めようとする。
『皆様、落ち着いてください!優勝者に対して物を投げ付けるのはお止め下さい!!お願いします!!』
実況のこうした努力は通じず、観客達は罵声も物を投げ付けるのも止めなかった。遂に強硬手段に出たのか、銃を持った係員が現れ、天上へ向けて銃を撃って観客達を黙らせた。
『静粛にお願いします!では、優勝者に優勝賞品を!!』
銃声で静まった観客達を確認した実況は係員達に、優勝者であるマリに優勝賞品の授与を命じた。優勝賞品の準備が行われる中、マリはコクピットから出て、ダルマ同然となったガンダムからガルナを見る。
「どうして、俺を殺さなかった?」
コクピットから自力で出て来たガルナは、マリにどうしてトドメを刺さなかったのかを問う。彼女は何も答えず、ただ黙って優勝賞品が来るのを待っていた。そんなマリの態度を鼻で笑うと、ガンダムから降りて皮肉を漏らす。
「フッ、ただの気紛れか・・・これから再就職を考えないとな」
ガルナはそう言った後、煙草のケースを取り出して一服した。そんな彼を放っておき、マリは優勝賞品を待った。
暫く待っていると、ようやくの優勝賞品が運ばれてきた。それを受け取ろうと、爆音が外から聞こえた。それから数秒後、この闘技場に何かが当たった爆破音が響き、天上が崩れた。
「なに・・・!?」
観客達が逃げ惑い、声を上げる中、マリは聞こえてくる爆音の方へ視線を向けると、自分が所属しているワルキューレのマークを両翼に付けたVF-11Cサンダーボルトが闘技場に落ちてきた。
次回は、ザシャのレジプロ戦闘機航空大会です。