復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
各トーナメント制の大会で盛り上がっていたガラヤの町であったが、そこに連邦軍と現地軍の追撃を受けるワルキューレの残存部隊が逃げ込んできた。
町に逃げ込んできた残存部隊の指揮官は、自分等の勢力下にある町を攻撃しないだろうと考えたのだろう。だが、結果は予想外にも程がある物だった。
『た、隊長!町を盾にしても良いんですか?!これじゃ私達がまるで悪役・・・』
「馬鹿、戦争でしょうが!私達が生き残るにはこれが一番なの!」
VF-25メサイアの指揮官用機である頭部レーザー機銃が四門のSタイプに乗る若い女性大隊長は、画面に映る町を盾にすることに反対する少女パイロットに、怒鳴り付けた。彼女のVF-25Sの周りに飛んでいる機体は、同型だが一般機仕様のVF-25A、ドックファイト向けのVF-25F、狙撃仕様VF-25G、電子戦型RVF-25だ。
他に町の上空に逃げ込んでくる味方のファイター形態のままの大多数のVF-11CサンダーボルトやVF-117ナイトメアプラスである。MSのZプラスやムラサメも、飛行形態のままで町の上空に入ってくる。
町の住民達は見掛けぬ機動兵器の集団に、かなりの不安を抱いていた。地上の方を見れば、MSのジムⅡやジムⅢ、ネモシリーズ、M1アストレイ。戦術機のF-5EADVトネード、A-10サンダーボルトⅡ。KMFのサザーランド、パンツァー・フンメルが砂塵を上げながら向かってきている。
町の周囲の壁に設置されたトーチカに砲手が入ろうとしたが、VF117に妨害され、トーチカは踏み潰されてしまう。
『トーチカを潰しました』
「OK、これで町は完全に私達の物よ」
勝ち誇った笑みを浮かべる大隊長であったが、その余裕はぶち壊された。
『敵追撃部隊からミサイル発射を確認!数、八千!!』
「はぁぁぁ!?あいつ等、自分達の町のこと考えてんの!?各機反撃体勢!!」
敵が自分等の町に、大量のミサイルを発射したと索敵機から報告を受けた大隊長は、即座に反撃体勢を取った。
飛んでくる大量のミサイルをガンポッドやレーザー機銃等の弾をばらまく武器で迎撃するも、迎撃しきれず、何機かが被弾して町の建造物に墜落した。流れ弾のミサイルは町の至る所に命中し、数々の被害や死傷者を出す。
この追跡部隊の非道極まりない行為に、大隊長は敵の指揮官に向けて抗議の通信を送る。
「ちょっとあんた等、自分達の町にミサイルを撃ち込んでのよ?!被害とか考えないの?!」
町を盾にしようとした大隊長が言っても説得力は無いのだが、敵軍の指揮官からの返答は身の毛もよだつ物であった。
『町に被害だと?そこに住んでいるのはこの星のゴミ共だ。幾らゴミが戦闘に巻き込まれて死のうが、我々軍が気にすることはない』
「あんた等・・・狂ってるわよ・・・!各機、交戦開始。相手もその気なら、こっちもよ!」
その恐ろしい返答に、大隊長は悪意に満ちた言葉を返し、通信を切ってから指示を出す。
かくして、連邦軍と現地軍のグスタフカールやジェムズガン、ドートレスフライヤー、バリエント、ダガーL、ウィンダム、プテラス、レイノスを中心とした多数の航空部隊が接近すると、ワルキューレの残存部隊と交戦状態に入る。
闘技場にて、VF-11Cが墜落して空いた穴で行われている戦闘を見たマリは、そのまま出て行こうとするが、ガルナのガンダムとの試合でライガー・ゼロは足ががたついており、これ以上の戦闘は不可能であった。
「その機体で行くつもりか?」
腕組みをしていたガルナは、足ががたついているライガー・ゼロで戦場に飛び出そうとするマリに問う。流石に彼女も分かっていたのか、機体から降りて、ガルナの前に立つ。
「分かっているようだな。では、代わりの機体を紹介してやる。ついてこい」
ガルナはマリに代わりの機体がある場所へと案内した。その後にライガー・ゼロがついていく。
「フッ、まるで忠犬だな。後で修理してやれ」
ついてくるライガー・ゼロを見たガルナはそう呟くと、流れ弾の着弾で揺れる通路の中を歩いた。数分後には、代わりの機体がある場所へと到着した。そこにはライトブラウンのファイター形態のVF-1バルキリーがあった。
「これがお前の代わりの機体だ。VF-1Rバルキリー、別名三本角だ。操縦方法はVF-1系統とは殆ど変わらん。旧型だが、お前の腕なら最新鋭機でも渡り合えるだろう」
VF-1Rの解説をするガルナに耳を貸すと、マリはキャノピーを開け、機体に乗り込んだ。機器を操作し、機体を起動させると、ファイター形態からガウォーク形態へと変形させる。
「ライガー・ゼロは任せろ。俺は後から加わる」
「分かった」
「ようやく口を開いたか・・・」
ガルナがライガー・ゼロを預かると告げれば、マリがキャノピーを閉める前に答えた。ようやく口を開いたので、ガルナは感心した言葉を出したが、とうのマリは既に飛び立った後だった。
マリのVF-1Rが飛び去った後、ガルナはライガー・ゼロを連れて何処かへ去って行く。
一方のザシャは、競技用のフォッケウルフFw190D型を滑走路へ着陸させた後、機体から飛び降り、左腕に付けたVF-25用小型遠隔操作装置を使い、自分のVF-25Aを呼び出した。
柿崎も同様に呼び出そうと左腕に付けている物に触れてみたが、バルキリーマニアに売却したことを思い出す。
「あっ、俺のVF-25Aは売ったんだった!」
声に出した柿崎は近くの自動車に乗り込み、自分のVF-1Aのある倉庫へと向かう。晃とレイも一緒であり、近くの自動車に乗り込むや否や、自分のバルキリーがある倉庫へと向かった。
アルトはシェリルを連れ、ザシャと同様に小型遠隔装置を使って自分の愛機を呼び出していた。グラハムの方も同じように自分の愛機を呼び出している。
上空で幾つかの爆発が起こり、爆破音や銃声が響き渡る中、ザシャのVF-25Aがこの場に到着し、ガウォーク形態に変形して彼女の目の前に着陸する。キャノピーを開いてコクピットへ乗り込むと、今着ている飛行服を手早く脱ぎ、専用のパイロットスーツを着込み、計器の確認を迅速に行った。
「異常なし・・・そう言えば、あの人はどうしたんだろう?」
町が戦場になる前に、優勝を賭けて争っていたニコラの所在が心配になったが、鳴り響いた警報で即座に操縦桿に手を伸ばし、上から来た攻撃を回避した。空かさず上からビームライフルを撃ち込んでくるジェムズガンを右手に持つガンポッドで撃墜する。
防御する間もなく、上空で数十発の弾丸を受けた15m級の小型MSが爆発する中、キャノピーを閉め、ザシャはヘルメットを被る。
「ここは民間の施設なのに・・・」
二機のスコープドックが自分の期待を見るなり所構わず攻撃を加えるのを見たザシャは、攻撃を防御しながらガンポッドで反撃を行う。二機のATは遮蔽物に逃げる間もなくガンポッドの掃射を受けて蜂の巣になった。今度はドートレスが出て来たが、同型のガンポッドを受けて倒れた。
味方と思って攻撃した正体にカメラを向けたが、その正体は識別反応を示していない白いVF-25だった。さらに通信まで入ってくる。驚いたことに声はあの美女のような少年であるアルトだ。
『おい、そこのワルキューレ機!ここで俺達が離れれば連邦軍は攻撃を止める!離れるぞ!!』
「えっ?ちょっと、君あのお姫様みたいな男の子?なんでVF-25に!?」
『煩い!この場で戦ってたら犠牲者が増える!町で戦闘している連中も引き離す!良いから俺についてこい!』
向かってくるストライクダガーを撃破しながら、アルトは自身のVF-25Fをファイター形態に変形させ、町の方へと飛び去る。
「待って!」
ザシャは町の方へと飛んでいくアルトのVF-25Fを追うため、Fと書かれたレバーを引き、自機をファイター形態に変形させ、アルト機を追った。
その頃の町は、至る所で機動兵器同士の戦闘が行われ、既に市街戦と化していた。
上空でもワルキューレのバルキリーに可変系MSが連邦軍や現地軍の航空兵器と乱戦状態になり、墜落した双方の機体が更に町の被害を増大させている。早めに片付けねば、町が壊滅してしまうだろう。
この様子を上空に飛びながら見ていたマリは、連邦軍と現地軍が町の住民に何の配慮もせず、所構わず戦闘を行う様子を見て、皮肉った台詞を吐いた。
「あいつ等、マジで軍人なのかしら?」
そう毒づくと、目の前に見えるプテラス三機を標的に捉え、両翼に装備された四つのミサイルポッドからミサイルを放つボタンを押す。発射されたミサイルの数は十二発以上で、相手は逃げ切ろうとするが、三機とも撃墜される。
続いて現地軍の戦闘爆撃機の編隊をガンポッドと二連装レーザー機銃で次々と撃ち落とし、更にダブルソーダやジェットコアブースターまで撃墜した。
「十機以上撃破!まぁ、このガタ落ち同じSでもっと墜としてるけどね」
昔の自分を思い出しながら、見える敵機を次々と撃ち落としていると、町の上空に到達したアルトから通信が入ってくる。通信はスピーカーを使った物や全チャンネルに通してであり、この町で戦闘を行っている者達全てに届いている。
『この町で戦闘行為を行う全機に告げる!良心の心があるなら即刻戦闘を中止し、町からの退去を命ずる!軍人ならば、民間人を巻き込むな!』
町で戦闘行為を行う全ての者達に告げたが、連邦軍と現地軍の反応は冷ややかな物であった。
「うるせぇ!ここに住んでる連中は、盗品をさばいてる犯罪者共だ!幾ら死のうが知ったことか!!」
町の住民を全て犯罪者と見なす量産型ガンタンクに乗り込むパイロットは、アルトが乗るVF-25Fに向け、主兵装の120㎜低反動キャノン砲を撃ち込んだ。結果はあっさりと避けられて、町の建造物を破壊しただけだった。
「アルト!全然通じないじゃないの!!」
「クソッ、あいつ等本当に軍人なのか?!まだ民間人が避難してないって言うのに!!」
後部座席に座るピンク色の混じった金髪の大人びた容姿を持つシェリルが言えば、アルトは町の住民のことを考えずに戦闘を続ける彼等を止められなかったことに腹を立てる。
町を見下ろせば、電話ボックスほどの空薬莢が当たって死んでいく者。流れ弾に当たり、死んでいく者。撃破された人型兵器の下敷きになる者。町の至る所で、死で溢れていた。
戦闘を中止しない両軍に苛立つそんな二人に、マリは通信を入れる。
「ちょっとアンタ、何寝ぼけたこと言ってるの?うちの所は兎も角、あいつ等腐りに腐った馬鹿共にそんなのが通じるわけ無いでしょ!やるんだったら力尽くで叩き潰すのよ!」
「そう言ったてな!町にはまだ避難してない無抵抗な人々が居るんだよ!知らない間に殺しているかもしれないんだぞ!!俺はそんなのごめんだッ!!」
「そんな物に乗っておいて偽善ぶるんじゃないわよ!お姫様みたいな顔しちゃって!」
「お前もそれを言うか!自己中心女が!!」
つっかかってくるマリの通信に、アルトは八つ当たりでもするかのような返答すれば、口論が始まる。それを止めるため、シェリルが割ってはいる。
「アルトもそこの金髪デカ乳女も喧嘩してる場合じゃないでしょ!今は町の被害の最小限に食い止めると、ヒヨコちゃんの可愛い部下達の救出でしょ?!早くやりなさいよ!!」
「あぁ!分かってる!!」
『可愛い部下達!?それって、私の部下達のことですか?!』
シェリルに叱られたアルトは、口論を止めて行動に移った。ヒヨコと言われて自分のことだと思ったザシャは、直ぐにシェリルに部下の居場所を聞いた。それに彼女は直ぐに答える。
『そうよ、今から案内してあげるわ!しっかりとついてきなさい、ヒヨコちゃん!さぁ、アルト、行って!』
「・・・ようやく見付けた・・・!はい!」
探していた自分の部下達の居場所が分かったザシャは、その場所へと向かうアルトのVF-25Fの後へとついていった。
「あぁ、言いそびれちゃった・・・まっ、取り敢えず手当たり次第に行きますか!」
残されたマリは操縦桿を動かし、VF-117を追撃するレイノスをミサイルで撃墜した。続いてバトロイド形態に変形して、市街地に入ってライフル砲を撃ちまくるガンタンクⅡの乗っかり、ガンポッドをキャノピーに押し付けて撃った。
結果は中にいる砲撃手が機関砲クラスの口径でミンチとなり、コクピットに乗っていた操縦手も挽肉と化す。爆発寸前のガンタンクⅡから離れ、目の前に群がるドートレスやストライクダガーに向けてガンポッドを連射する。
敵MS部隊は市街地で戦っている所為で、面白いように弾丸が当たり、敵機が次々と道路の上に倒れていく。敵からの反撃もあるが、マリは機体をローリングさせてこれを回避し、防御の薄い箇所にガンポッドを撃ち込んで撃破数を増やす。次に数十機のコマンドウルフACが現れ、彼女が乗るVF-1Rへ向けてロングレンジキャノンを撃ち込んできた。直ぐに遮蔽物に隠れ、攻撃から逃れたが、遮蔽物から出られなくなってしまう。
「あぁ、ミスった・・・!」
判断を誤ったことを後悔するマリだが、問題のコマンドウルフは上空から来た複数のミサイルで全滅した。飛んできた方向を見ると、自分と同じVF-1系統の機体が三機がファイター形態からガウォーク形態に変形し、自分の近くまで来る。
『少佐、その機体に乗っているのは少佐でありますか?覚えていないと思うけど、柿崎伍長であります!』
「あぁ、あのおっさんみたいなの」
『おっさん!?俺はまだ17歳ですよ!!』
「あっ、そう」
バトロイド形態に変形した胸部が白のVF-1Aからの通信で、柿崎であることが分かった。他にもVF-1Jに乗った晃やVF-1Sに乗るレイから通信が入る。
『それに乗っているのは貴女でしたか。ライガー・ゼロはどうしたのですか?』
『お姉ちゃん!優勝したの?』
「チャンプに預けた。それと優勝したわよ」
『やっぱりお姉ちゃんはただ者じゃなかったんだ!』
二人の質問に答えたマリは、空から奇襲を掛けようとしたジェムズガンが撃破した。柿崎を除く他の二人も、向かってくる敵機を次々とガンポッドで撃ち落としていく。瞬く間に十機以上が市街地へ墜落し、被害が拡大してしまったが、既に人が居ない場所で、問題はない。
一方の柿崎は、三機を堕として舞い上がっていた。
「よーし!三機目撃墜!!」
『ちょっと、ちゃんと町のこと考えなさいよ!』
「分かってらい!」
レイから注意されると、地上から来る敵を撃墜した後、柿崎は生返事をする。
「五機目!やったね、俺エースだ!こんな旧型機で、って、な、なんだぁ!?ガルダ級輸送機!?」
柿崎が五機目を地上で撃墜した丁度その時、上空からガルダ級大型輸送機が現れた。
全長317m、全幅524m、最大積載量9800tと言う桁外れの輸送機である。ミノスキー核融合炉と二十基の熱エンジン/スクラムジェットエンジンで航続距離に制限が無く、無補給で地球一周が可能だ。さらには防空能力も高く、エースでも無い限り迂闊に近付くことは出来ない。
町の上空に到達したガルダ級大型輸送機はミサイルを数発撃ち込み、目の前のワルキューレの地上戦力を排除した。ガルダ級を墜とそうと、ワルキューレの航空戦力が立ち向かったが、多数搭載された対空火器に阻まれ、まともに近付けず、撃ち落とされる機体が多くなる。
『第81機動歩兵連隊、降下用意!!』
後部大型ハッチを開け、中に満載しているMSを降ろす。積荷はMSだけでなく、機動歩兵と呼ばれる歩兵科最強の兵科である。
二年もの訓練を受けた彼等は、専用の防弾制やブースター搭載により機動性に優れたパワードスーツに身を包み、優れた装備と知識を持って敵を圧倒する鋼鉄の兵士なのだ。
「各員、武装をチェック!」
指揮官の指示で、周りにいる鋼鉄の鎧に身を包んだ機動歩兵達は折り畳み式のアサルトライフルの点検を始めた。それが終えると、通信で「異常なし」と報告する。
『第一大隊、全中隊各装備問題なし!』
『第二大隊、全中隊各装備も異常なし!』
『第三大隊、こちらも問題なし!』
『第四大隊も異常なしであります!』
「よし、各大隊は即座にガラヤに降下。残っている連中を一人残らず片付けろ!!」
雨あられに落ちてきた機動歩兵は、着地の瞬間にブースターを噴かして着地の衝撃を和らげ、地面に足を付けた。何体かが地上から来た対空放火にやられるが、十分に脅威になるくらいの機動歩兵が地上へと降り立つことに成功した。
道路の上に降り立った機動歩兵は折り畳み式のアサルトライフルを開き、味方の部隊と交戦中である敵機動兵器の元へ向かう。友軍部隊と交戦しているのは、MSA-003ネモ三機だ。ビームライフルを連射し、追い詰めようとする味方のMS部隊を近付けまいとしている。
味方の機動兵器に気を取られている隙に接近し、携帯式対機動兵器用ランチャーを構え、間接部に照準を定め、引き金に指をかけさせた。
「照準完了!」
『よし、指示があるまで発砲するな!』
「了解!」
位の高いスーツを着た分隊長に砲手が報告すると、分隊長は他の分隊が位置に着くまで発砲はするなと部下に命ずる。それから物の数秒後、他の分隊から光信号で「配置完了」の合図が出た。
『よし、撃て!』
確認した分隊長からの指示で、各分隊が潜む場所から携帯式対機動兵器用ミサイルランチャーが一斉に発射された。
発射されたミサイルはネモの足の間接部に向かって飛んでいき、見事命中した。三機とも足を狙われたらしく、足の脆い部分に当てられた三機はバランスを崩して地面に倒れ込む。
まだ動く部分で自分の機体を攻撃した機動歩兵を撃とうとするが、続けて発射されたミサイルランチャーで、武器を持つ手とバルカン砲が搭載された頭部を潰されてしまう。
パイロットはコクピットから出て、C8カービン(カナダ製M4カービン)を持ち出し、撃ちながら逃げようとするも、待ち構えていた機動歩兵のHK G11に似たアサルトライフルの掃射を受け、銃創から血を吹き出し、機体から落下して死亡する。
「片付けた!」
一人が死んだ女性パイロットから体温を感じず、死亡したことを確認して叫ぶと、次の敵が居る場所へと向かった。
機動歩兵一個連隊の投入により、町に逃げ込んだワルキューレは劣勢になりつつあった。
逃げ込んだワルキューレの残存部隊は宇宙軍所属であり、地上戦の訓練は一応受けている物の、敵の地上軍相手ではあまり長くは持たない。更に連邦軍の数も町を包囲するかのように増え、ワルキューレは徐々に町の中枢部へと追い込まれていく。
「捕虜になるなんかごめんよ!赤ん坊でもなんでも盾にしなさい!!」
連邦軍の機動歩兵や現地軍の歩兵部隊に追い詰められているワルキューレの士官は、遮蔽物に身を隠して持っているC8カービンを抱えながら、絶対に兵士がやってはいけない事を叫ぶ。当の本人は本気で言っているようではないが。
民間人を盾にするのは、軍に属する者が絶対にやってはならない事だが、戦時中若しくは戦闘中に戦時条約が守られることなど殆ど無い。つまり生き残るためなら手段は問わないと言うことだ。
早速少女の乗員が赤ん坊を抱えながら遮蔽物に身を隠している母親から赤ん坊を奪い、敵前の目の前に立ち、赤ん坊を高く掲げ、盾にした。
「ちょ、あんた!なにマジでやってるのよ!!」
まさか本気でやるとは追わなかった士官は、本気でやった少女乗員を見て怒鳴る。これを見ていた機動歩兵の小隊長は、ライフルを撃つのを止める。
「あのクソ餓鬼!なんてことを・・・!」
卑怯な真似に出た敵軍の少女兵士を見て、敵を撃つことが出来ないことに苛立ったが、この町の住民をゴミと見なす現地軍の反応は違った。
現地軍の狙撃兵は赤ん坊を掲げる少女乗員の胸に照準を合わせ、引き金を引いた。発射された弾丸は高速で目標に向けて飛び、胸に大穴を開けて背中を貫通し、地面に着弾した。
胸に穴が空いた少女は何が起こったのか分からない表情を浮かべ、泣き叫ぶ赤ん坊と共に地面に倒れ込んだ。赤ん坊はその場に倒れ、ひたすら泣き叫び、母親が我が子を助けようと、赤ん坊の元まで走るが、狙撃兵に撃たれてしまう。
この光景を目撃した機動歩兵の小隊長は、強く現地軍の前線指揮官に抗議する。
「おい!彼女は母親を助けようとしたんだぞ!どういうつもりだ?!」
『ゴミが一人死んだところでどうと言うことはない。貴官は周囲の被害を気にせず、敵残存戦力の掃討を続けろ』
「何なんだよ・・・!お前等は・・・!?」
血も涙もない返答に、機動歩兵の小隊長は呆然としていた。
同じくこの光景を見ていたアルトとシェリルは、赤ん坊を盾にしてまで生き残ろうとするワルキューレと、市民の被害を気にせず追撃を続ける現地軍の行動等、戦場では希に見られる光景に理解が出来ないでいた。
「なんだよ、これ・・・!?これが本当の戦争だって言うのか・・・!」
「ちょ、ちょっと・・・戦争映画だなんて比じゃないわよ!赤ちゃんを盾にしたって良いの!?」
初めて生の人間同士の戦争を見たのか、二人は戸惑っている。アルト機の後部座席に座るシェリルはザシャに怒鳴り付ける。これに対し、ザシャも初めてこの光景を写真でした見たことがなかったのか、答えられずにいた。
「こ、こんなの・・・私には・・・」
『クソ、あんた本当に軍人かよ!兎に角だ。早いとこあんたの部下を救い出して、こんな光景直ぐにでも終わらせてやる!!』
答えないザシャに対し、アルトは一刻も早くこの惨状を終わらせるべく、目の前に居る複数の敵機をミサイルで全て撃ち落とし、彼女の部下が囚われている場所へ急いだ。
「キャッ!もう!!」
思い詰めていたザシャは、攻撃を受けて我に返り、ガウォーク形態に変形し、しつこく後ろから撃ってくる複数の敵機を連続発射したミサイルで撃退すると、直ぐにアルトの後を追った。数秒もしないうちに、チェリー、千鶴、ペトラが囚われている場所へと到着する。
その場所は倉庫であり、先客と言えばアルトとシェリルが乗るガウォーク形態の白いVF-25Fだけだが、倉庫の中に多数の先客が待っていた。正体はトライアンフと呼ばれる旧型のハーディガンだ。既に二十年前に連邦軍から今動いているM型を最後に全機が退役し、二級戦部隊にも運用されていない機体だが、加盟国家に払い下げられ、そこで現役に付いている。
連邦軍における初の小型ビーム兵器搭載のハーディガンで、量産型より性能が低い試作器が敵陣からパイロット共に生き残ったという逸話を持っているが、それは単に運が良かっただけである。
「人身売買の組織がこんな物を!」
アルトは飛んでくるビームを回避し、ガンポッドでド素人同然の動きをするトライアンフM型を撃破する。バトロイド形態に変形させていたザシャもガンポッドでもう一機のトライアンフを撃破し、更に二機目を撃破した。
他にも雑多な機動兵器が居たが、乗っている者達がずぶの素人なだけであって、天才的な操縦技術を持つ二人に敵うはずもなく、物の数分で全滅する。
「クリア!」
熱源反応がないことを確認したザシャは、キャノピーを開いてEXギアパイロットスーツのまま飛び出し、ジェットを噴かして地面にゆっくりと着地すると、足裏のローラー型の走行装置を動かして、部下を捜し始める。
同じくキャノピーを開けて倉庫の中に入ろうとしたアルトであったが、この場にやってきた敵軍のATからの攻撃を受け、向かえないようになる。
「おい、待てよ!うわっ!?」
そんなアルト達の気にも留めることなく、ザシャは地下に降りて部下の探索を続けた。途中、組織の構成員がいきなり飛び出してきたが、パワードスーツを着たザシャに頭を殴打され、首があり得ない方向に曲がり、即死する。
「死ね!このロボット野郎!!」
続けて銃を持った複数の構成員が出て来たが、軍から払い下げられたか密造された銃では、ザシャの強化外骨格タイプのパワードスーツの装甲を貫ける筈もなく、手に持った専用のライフルを撃ち込まれて全滅した。
「何処にいるの?」
脅威を排除した彼女は周囲を見て、三人の少女の体温を探し始める。
案の定、直ぐに見付かるが、早く行かねばとんでもない事になりそうだ。即刻その場へ向かい、出会い頭に合う敵を排除しながら彼女達の元に辿り着いた。
「な、なんだお前は!?」
あられもない姿になっているチェリーを犯そうとした半裸状態の男が、パワードスーツを着込んだザシャを見て驚いていた。両手を縄で縛られた千鶴やペトラの姿も見える。ようやく部下を見付けたザシャは、チェリーを犯そうとした男を即座に殴り倒す。
「ブガッ!?」
顔面を強く殴られた男の顔面は強く陥没し、壁に強くぶつかって死亡した。周囲に脅威が無くなったと判断したペトラを除く部下達は、ザシャに抱き付く。
「たたた隊長!恐かったですぅ~!」
「隊長・・・!」
「良かった・・・無事で・・・!」
部下の無事を確認したザシャは感動して涙を少し流した。部下の方はいつレイプされるか分からない恐怖から解放されたのか、涙の量が軍人とは思えないほどだった。
「そんな事より早く脱出しないと!皆(みんな)、掴まって!」
『はい!』
アルトが持ち堪えている間に戻らないとならないザシャは、部下達に自分の身体に掴まるよう告げると、三人はそれに応じて彼女の身体に抱き付く。これを確認したザシャは走行装置を動かし、自分の機体がある地上へと向かった。
地上へ物の数秒で辿り着くと、飛んでくる銃弾を回避しながら機体に乗り込み、後部座席に三人を乗せる。
『遅いぞ!』
「ごめん、ちょっと遅れちゃった!」
アルトから叱りを受けると、自分等が居る倉庫を攻撃してくる連邦軍と現地軍のMSやAT、ゾイドを撃破する。数秒間くらい持ち堪えていると、ZEUSの援軍が現れた。
光の翼のような18mのガンダムタイプのMSが現れ、立ち向かってきた敵機を瞬時に撃破した。
「町をこんなに滅茶苦茶にして・・・!一体どれだけの人が死んでると思ってるんだ?!あんた達は!」
パイロットは町の住民の被害のことなど考えず、ひたすら殺し合いをする両軍の将兵達を見て、アルトと同じく怒りを覚える。
多彩な戦況に対応するため、差生様装備を持つこのMSの名はディスティニーガンダム。悪魔を思わせるような深紅の翼、涙のような縁取られたアイカメラのライン、薄銀色の鋭く光る機体色は、ダークヒーローのような風貌を持つ機体である。
この機体を見た両軍の将兵達は驚きを隠せないで居る。ディスティニーガンダムのパイロットであるシン・アスカは、住民ごとワルキューレ宇宙軍の将兵達を殺そうとする現地軍の部隊に単機で向かう。
「ガンダムタイプが一機で向かおうなどと!」
複数の連邦軍機がディスティニーガンダムに立ち向かうが、投げられたビームブーメランで蹴散らされてしまう。自分に向かってきた敵を全て片付けたシンは、現地軍の歩兵部隊に向けて頭部バルカン砲を撃ち込み、住民に銃を向ける歩兵を挽肉に変える。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
生き残った兵士達は我先に逃げ出す。攻撃を受けていたワルキューレの将兵達は、ディスティニーガンダムが振り向くと、今度は自分達の出番だと思い、別の方向へと逃げ出した。次にシンは、旋回しながら地上にメガ粒子砲を撃っているマリとザシャ達が知らぬ前に出て来たクラップ級巡洋艦に向かった。
「う、撃て!迎撃だ!!」
向かってくるディスティニーを見た艦長は、慌てながら迎撃態勢を取るよう指示した。対空レーザーが弾幕を張るが、ディスティニーはまるで分身しているかのようにそれを避け、クラップ級に近付いてくる。
迎撃機を墜としながら接近すると、背中から長距離ビーム砲を取り出し、それをクラップ級へ向けて撃ち込んだ。高エネルギーのビームは船体に命中して貫通したが、それでも尚ビームやミサイル、対空レーザーを撃ってくる。
「まだ動くのかよ!うぉぉぉぉ!!」
トドメにシンは大型ビームソードを取り出し、クラップ級に突き刺すと、スラスターを噴かせて町の外まで押し始める。町の外まで来れば、各所で火を噴いているクラップ級からビームソードを引き抜き、船体を蹴って、地面に叩き付けた。
向かってくるダガーLやウィンダムを撃墜しつつ、かなりの損害を与えたのに対し、未だに尚向かってくる連邦軍や現地軍を見て、まだ諦めないのかと叫ぶ。
「かなりの損害が出てるのに、まだ諦めないのかよ!」
更に現れた増援を見て、シンはそう叫ぶと、敵増援を排除する為、一人で敵陣に突っ込んだ。増援として現れたのは、シンだけではない。北からくる増援をたった一機で排除したMSが居た。
「待たせたな!この深紅の稲妻、ジョニー・ライデン様がいれば、百人力だぜ!」
北の包囲網を意図も容易く突破した赤いザクⅡS型に乗り込むパイロットは、目の前にいる量産型ガンタンクやドートレス、ストライクダガーを瞬く間に撃墜すると、市街地で釘付けになっているワルキューレの部隊の救出に向かう。
自分等からしてみれば、博物館送りの旧型に値する機体と教科書に出て来たパーソナルカラー色の機体が現れたため、連邦軍のパイロット達は驚いたが、昔の戦争の敵軍のエースが出て来るはずがないと信じなかった。
「あ、あれは!深紅の稲妻、ジョニー・ライデン!?」
「そんな筈がないだろう!どうせ模倣犯だ!ザクでジェムズガンに勝てるかってんだ!」
ライデンのザクより遙かに性能が高い機体に乗り込むパイロット達はそう意気込み、自分が生まれる前のエースパイロットが乗り込むザクに挑む。
「へっ、ハイテクに頼りすぎた機体なんかに乗りやがって!」
数と性能差で優る複数のグスタフカール、ヘビーガン、Gキャノン、ジェムズガンが襲い掛かるが、蘇った英霊が乗り込むザクに敵うはずもなく、次々と撃墜されていく。
「ば、馬鹿な!?たかが旧型のMSが一機だぞ!」
「機体の性能に頼り切ってるからよ!」
博物館送りの機体で最新鋭機を次々と撃破するライデンの腕前を見て、連邦軍のパイロット達は恐怖した。
援軍に来たのは彼だけではない。衛星軌道上の戦闘で助けに来たYF-19に乗り込むイサム・ダイソンも駆け付けてきたのだ。
「水臭いな!お前等!そんな大会があったら、なんで俺も呼ばないんだよ!」
『そうだぜ!レシプロ戦闘機大会なんて物があるんなら、このジョニー・ライデン様を呼ばないとはどういう事だ?!アルト姫は良くて、なんでこの俺は駄目なんだ?!』
『済まないな。だが、君達が参加すれば、大会は面白くなくなってしまうからだ!』
どうやらイサムとライデンの二人は、レシプロ戦闘機大会に出たかったらしく、グラハムに僻んでいた。当のグラハムはブレイブ指揮官用試験機に乗り込み、たった一機で現地軍の一個機甲師団を食い止めていた。
「そう言うことかよ!たくっ!!」
大会に参加できなかったイサムは、苛つきながら連邦軍と現地軍の航空戦力を蹴散らす。数秒の内に数十機以上が墜とされる。
「なんだよこいつ等、雑魚ばっかじゃねぇか。下手くそな奴ばかり揃えやがって!エースの二~三十人でも呼んでこい!!」
手応えもない連邦軍と現地軍のパイロット達に告げると、イサムは次々と敵機を撃破する。
彼等ZEUSの登場により、制圧が進まぬどころか逆に押し返されそうな状況になったため、現地軍の追撃部隊本部では、まだ味方の居るガラヤの町に砲撃しようとしていた。
「クソッ、どうして鎮圧出来んのだ!ええい、もう我慢ならん!砲撃開始!!」
「し、しかし!まだ味方の部隊と連邦軍の部隊が・・・!」
「黙れ!押し返されとるではないか!このままでは俺の面子に関わる!良いから砲撃を開始だ!!」
まだ味方の部隊が居るにも関わらず、前線指揮官は砲撃を強行した。だが、砲撃は実行されず、近くで爆破音が鳴るだけだ。
「どうした!何故砲撃しない!?」
『そりゃあ、この俺がぶっ潰してるからさ』
本部のモニターに映ったのは、左眼に三眼の眼帯を付け、オレンジ色のバンダナを巻いた青年だった。外を見れば、敵側勢力のチーター型中型ゾイドであるライトニングサイクスが、砲撃用装備のゴルドスやカノントータス、量産型ガンタンクを手当たり次第に破壊していた。
本来のキャノピーの色は緑だが、青年が乗り込むライトニングサイクスはオレンジ色となっている。
砲兵部隊を襲撃し、破壊し続ける青年に、前線指揮官はモニターに映る青年に何者かを問う。
『だ、誰だお前は!?』
「俺か。そうだな・・・俺は英霊に祭り上げられ、蘇った哀れな賞金稼ぎさ」
そう答えた青年の名はアーバイン。彼が乗るライトニングサイクスは、前に乗っていたゾイドのメモリーバンクが移植されている。その所為でキャノピーの色がオレンジ色である。
ゴドスやコマンドウルフ、スコープドックが迎撃に出るが、高速戦闘と奇襲戦法を得意とするライトニングサイクスには通じない。空からプテラスが迎撃に出るも、パイロットの技量があって、次々と撃ち落とされる。
砲撃陣地までZEUSに潰された現地軍の士気はガタガタであり、連邦軍に至っては撤退を考え始める部隊指揮官が続出していた。彼等の活躍を見ていたマリとザシャは、驚きの声を上げるしかない。
「またあいつ等・・・」
「相変わらず人とは思えない・・・」
瞬く間に敵に撤退を考えさせるまで疲弊させた為、ただ己が出来なかった結果を認めるしかなかった。だが、脅威は連邦軍と現地軍だけでは無かった。
「これで二十機・・・ん、なんだ?」
二十機目を撃墜した晃は、レーダーに自分の近くまで迫る機影を確認した。その機影は敵味方問わず目に映る物を撃墜か撃破している。新たな脅威と判断した晃は、単機でそれに立ち向かった。
「早い・・・!あれはVF-22SシュトゥルムフォーゲルⅡ。僕のVF-1Jじゃきついな・・・」
機影の正体が同じバルキリーVF-22SシュトゥルムフォーゲルⅡと分かった晃は、ミサイルを全て撃ち込み、一気に撃墜を試みたが、敵はフレアを使うまでもなく、全て避けきると、ミサイルで反撃してきた。バトロイド形態に変形し、ガンポッドと両耳の二門のバルカン砲で迎撃を試みる。
辛うじて飛んできたミサイルを全て撃ち落とすことに成功したが、懐に接近されてしまい、ピンポイントバリアパンチを諸に受けてしまう。パンチを受けた箇所はへこみ、ガンポッドを鈍器として反撃を試みる晃であったが、蹴りでガンポッドを持つ手を蹴られ、手放し、空中でなぶり殺しにされる。
抜け出そうにも、敵は逃してはくれず、ズタズタにされる頃には、変形すらままならい状態になっていた。
「もう持たない・・・!」
無表情だった晃も、額から血を流しながらこれ以上は持たないと判断し、死を覚悟していたが、レイに助けられる。
「なにやってんのよ!」
『ごめん。でも、これに乗っている人、かなり強いよ』
「そんなの、私が倒してあげるわ!」
相手の強さが分かっていないレイは、晃のVF-1Jがファイター形態に変形して離脱したのを確認すると、バトロイド形態に変形し、ガンポッドとミサイルを撃ち込んだ。凄まじい弾幕だが、敵は反撃をしながらこれを器用に避ける。
「なんで当たらないのよ!」
ミサイルを全弾使っても当たらず、ガンポッドの掃射を避けながらVF-22Sは近付いてくる。接近はさせまいと、レイはVF-1Sをファイター形態に変形させ、市街地へと逃げ込んだ。敵もファイター形態に変形し、ガンポッドやビーム砲を撃ちながら追撃を掛けてくる。
レイはそれに逃げるので必死であり、後ろから一方的に撃たれ続けていた。それもそのはず、相手は後年に開発されたバルキリーであり、性能的にもそれに乗るパイロットの技量的にも敵うはずもない。追い付かれてしまい、胴体とエンジン部に当たられて墜落寸前にまで至った。
バトロイド形態に変形して墜落のショックを和らげたが、VF-22Sにガンポッドの銃口を突き付けられる。
「こんな所で、終わりなの・・・!?」
レイは死を覚悟したが、思わぬ相手に助けられる。
「これでも食らえぃ!」
ASであるM9に登場した何者かが、VF-22Sに向けてアサルトライフルを乱射した。しかし、ライフルの弾は全て回避され、一気に懐まで接近され、ピンポイントバリアパンチを受け、吹っ飛ばされる。
「ドワァァァ!!?」
吹き飛ばされたM9はビルに激突し、機能を停止した。役に立たなかったように見えるが、レイが逃げる時間を稼ぐには役に立った。次にVF-22Sに乗るパイロットは、多数の敵と空中戦を繰り広げるマリのVF-1Rに向けて飛んだ。
「まだ来るって言うの?」
多数の敵を相手にしているマリは、敵機を撃墜しながら言う。数秒後、自分の周りにいた敵機がVF-22Sに全て撃ち落とされた。
「あっ、なに?」
次々と敵を撃ち落としていくVF-22Sを確認した。
「げっ、この機体より高性能な機体じゃん!」
VF-1では分が悪いと判断したマリは、ファイター形態に変形してVF-22Sから逃げる。獲物は逃さまいと、ガンポッドやビームを撃ちながら相手は追ってくる。
最高速度では相手が乗るVF-22Sが優っているため、直ぐに追い付かれ、バトロイド形態になったVF-22Sから両腕のビームの弾幕を受ける。
「相手を雑魚キャラみたいな物だと思って!」
一方的に嬲られるのを嫌って、ムキになったマリは機体を同じくバトロイド形態に変形させ、ガンポッドで反撃する。二~三発程相手に被弾させたが、倍返しを受け、市街地に降下し、ガウォーク形態に変形して道路を滑るように飛行する。
相手も同じくガウォーク形態に変形し、追撃を掛けてきた。マリは追撃を掛けてくる敵にガンポッドを撃ちながら撃墜を試みるが、後ろ向きで撃っている為に全く当たらず、向こうからの攻撃を一方的に受けてしまう。
追撃を受けている内に、ザシャとアルトのVF-25が居る倉庫まで来てしまった。
丁度その時に機体を撃墜され、機体は火花を上げながら数十m進んだ後、ようやく止まる。トドメを刺される前にマリはVF-1Rから脱出すると、ザシャのVF-25Aの元まで走る。
「あっ、少佐・・・!」
走ってくるマリに気付いたザシャは、現れたVF-22Sに向け、ガンポッドを撃ち込んだ。この間にマリは倉庫に入り、安全そうな場所へ隠れる。
『あいつは?!』
「多分、敵だと思う!」
アルトからの問いにそう答えると、ザシャはガンポッドやミサイルを撃ち込んだ。
倉庫を包囲する陣形を取っている機動歩兵やATをアルトに任せ、ザシャはVF-22Sの迎撃に集中した。攻撃は全て回避され、上からの攻撃を受け、防御に徹するしかない。
「つ、強い・・・!」
強すぎる相手にザシャは追い込まれていた。ガウォーク形態からバトロイド形態に変形し、バトロイド形態になって近付いてきたところをコンバットナイフで対処しようとしたが、相手はガウォーク形態で高速で接近し、ナイフを握る右手をピンポイントバリアパンチで破壊した。
VF-25はVF-22Sより性能は勝っているが、パイロットの技量の差があるために、押され気味になってしまう。それにザシャには守るべき部下も居り、思う存分戦えないで居る。
「キャン!」
後部座席でシートベルトをしていない三人は、衝撃で身体を打ち付けられ、ぶつけた皮膚から切れ、そこから出血している。
一方的になぶり殺しにされてしまい、このままでは殺されてしまうと四人は思ったが、敵である機動歩兵やATに助けられた。背中を被弾したVF-22Sは、攻撃を続ける機動歩兵と連邦軍機に対し、その牙を向けた。
ミサイルで複数の機動歩兵とATを纏めて排除すると、残っている集団をガンポッドやビーム砲で排除する。連邦軍は反撃がまともに出来ず、一方的に黒いバルキリーにやられるだけだった。
「今だ・・・!」
残っている左手でガンポッドを持ち、ザシャは機体をガウォーク形態に変形させ、背中を向けているVF-22Sに向けて撃ち込んだ。邪魔者を一掃するのに忙しかった黒いバルキリーは諸に背中に銃弾を受け、道路の上に倒れた。
「やった・・・!?」
後部座席に座っていたチェリーは、道路に倒れているVF-22Sを倒したと思い、その台詞を吐いた。この台詞を吐いて、成功したという保証はない。物の数秒で黒いバルキリーは立ち上がる。
「まだ生きてる・・・!」
「早くトドメを!」
千鶴が立ち上がった敵を見れば、ペトラがザシャにトドメを刺すよう指示する。指示通り、ガンポッドをVF-22Sへ向けるが、標的は既に間近に迫っていた。
回避しようとしたが、間に合わず、ピンポイントバリアパンチを胴体に受け、貫かれてしまった。拳を引き抜かれたザシャのVF-25Aが倒れ込むと、機体各所に電気が走り、機体が動かなくなる。
「脱出を!」
機体の操縦桿が動かなくなったため、機体のキャノピーを開け、部下と共に脱出した。不思議にも、VF-22Sのパイロットは逃げるザシャ達には攻撃せず、ただずっと逃げる四人を見ているだけだった。
「あの女は・・・!?」
黒いバルキリーに乗る女性パイロットは逃げるザシャ達を見てそう呟くと、爆発する機体から離れた。マリの元に来たザシャ達はそこへ隠れ、アルトがVF-22Sを追い払うまで待つ。
「あのパイロット、かなりの腕前ね」
「はい。乗っているのはベテランのパイロットらしいです」
アルトのVF-25FとVF-22Sとの交戦を見たマリがそう呟くと、ザシャは黒いバルキリーに乗るパイロットが、先程の交戦でベテランと分かった。
数分間、VF-25FとVF-22Sが交戦していると、何処かへ行っていた柿崎のVF-1Aがバトロイド形態で現れる。
『手伝うぜ!そこの友軍機!!』
味方と分かって貰うようスピーカーから声を出すと、ガンポッドでVF-22Sを撃ち始めた。流石に分が悪いと判断したVF-22Sのパイロットは、舌打ちしてから機体をガウォーク形態からファイター形態に変形させ、この場から去っていった。
「チッ、次はこの手で必ず仕留めてやる」
『よーし、追い払ったか。大丈夫ですか?少佐、中尉殿!』
追い払ったのを確認した柿崎は、二人の無事を確認するため、スピーカーから声を出しながらマリとザシャ達の元へ近付く。
『無事でしたか。それに三人娘も無事に助け出したようですね!これで一件落着だ!うぉはははは!!』
ガンポッドを右腕に付け、VF-1に両手に腰を付けさせた柿崎は、スピーカー越しから大声で笑う。外にいる五人には堪った物ではないので、マリが怒鳴る。
「煩い!そんなこと良いから早く私達を乗せなさい!!」
『あっ、そうだった!しっかりと掴まっていて下さいよ!』
マリの怒鳴りで、柿崎は機体をガウォーク形態に変形させると、両腕に五人を乗せた。
アルトのVF-25Fを見て、通信を入れると、乗っているのが大会で顔を合わせた彼だと分かり、驚きの声を上げる。
「う、うわぁぁぁ!な、なんでお前がVF-25に乗ってるんだ!?」
『それはこっちの台詞だ。なんでお前達がVF-25をあんなに持っている?あの機体は元々俺達の世界の物だぞ。それにバルキリーは元々俺達の世界の物だ』
柿崎の問いに対し、アルトは元々自分の世界の物だと答える。答えを聞いた柿崎はやや戸惑うが、脱出を優先する。
「そんなこと俺が知るか!取り敢えず、今は脱出だ!連邦軍が突然現れた変な連中に襲われて混乱してるんだ!今がチャンスだ!」
『お、おい!待てよ!!』
柿崎はアルトの静止を聞かず、柿崎は五人を抱えながら空へと飛び立った。上空には、包囲網が途切れた方角に進む味方のバルキリー群と飛行形態のMS群が見える。地上でも損傷した機体を抱えながら走る陸上機動兵器も見えていた。
数は町に入り込んできたよりも大分減っており、無傷な機体は殆ど無い。地上で損傷した機体を抱えている陸上機は、まるで地獄へ向かう戦死者の列のようだ。
弾薬は先程の戦闘で殆ど残らず、ワルキューレ宇宙軍の将兵の気力も無かった。次に連邦軍の追撃を受けたら、全滅は確実だろう。五人を抱える柿崎のVF-1Aに、同じ機種の機体がファイター形態で近付いてくる。速度を合わせた機体に、直ぐに柿崎は所属を問う。
「ん?そこのVF-1!所属は?!」
『晃です。代わりの機体を調達してきました』
『私よ。前のが壊れちゃったし、時間もないから、晃と同じVF-1Aだけど』
「まぁ、そんな所ね。私のライガー・ゼロは届いてるかしら?」
二人から聞こえる通信に、マリはそう呟くと、自分のライガー・ゼロがどうなっているのか気になる。その後、柿崎は疑問に思ったことを口にした。
「お前等、そう言えばどうやって編隊に入れて貰えたんだ?」
『警告されましたが、テーゼナーさんとヴァセレートさんの知り合いだと言ったら、通してくれました』
「そんな簡単な理由で良いのかな・・・?まぁ、良いか」
細かいことを気にしない柿崎は、その問題を白紙にし、味方が向かっている場所へと続いた。そんな時、ザシャの様子がおかしかった。それに気付いたマリは、彼女の隣に寄り添う。
「だ、だだだ大丈夫ですか!?隊長!」
「隊長・・・どうしたの?」
「こんな時に冗談は止めてよね」
三人の部下はザシャを心配して声を掛けるが、彼女からの反応はない。そんなザシャにマリは額に手を当てると、体温が常温と違うことに気付く。
「熱が出てるじゃないの。まぁ、連戦続きとか重荷とだからか仕方ないけど・・・」
ザシャが連戦続きや部下を死なせてはならない重荷で耐えきれずに倒れた事を知らせたマリは、そう彼女の部下達に告げた。マリはザシャを横にして、自分の太腿に頬を赤くして小さく息を荒げる彼女の頭を乗せる。
チェリー、千鶴がザシャの腕を掴み、ペトラが他の二人と同様に心配そうに見る中、マリは向かう方角に視線を向けた。そんな彼女等をVF-25Fに乗るアルトは、遠くの方から眺めていた。
詰め込みすぎちまったぜ・・・
追記 バジュラでも出せば良かったかな・・・シェリルも居るし・・・