復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

60 / 74
なんか・・・一万字以上書いている気がしない・・・

今回は連邦&ジオンMS小祭り。むせるもあるよ!


休息は来ない

 ガラヤの町での戦闘を終えたマリとザシャ達を含むワルキューレ残存部隊の向かった先は、放棄された砦であった。

 滑走路らしき物は遠くの方に見えたが、至る所に穴が空き、使用不可能になっている。幸運にも残存部隊には離着陸を必要とする機体は存在せず、安心して降りられる。

 

「砦ね・・・あの旗は・・・?」

 

 ザシャを自分の太腿に寝かせているマリは、双眼鏡で砦に靡いているぼろぼろの旗を見て驚きの声を上げた。かつて自分が世界の主として君臨していた大帝国、神聖百合帝国の国旗だ。この国旗があると言うことは、この惑星にワルキューレの支配を拒んだメガミ人が居たという証拠である。

 砦周辺を見渡してみると、生い茂った草や枝の中に、ドイツ国防軍の野戦服を着た白骨死体が幾つか転がっており、死体の隣にはHKG3A4やMpi-KM等を始めとした旧東西ドイツの小化器も転がっている。攻撃を受けて穴だらけになった城壁、朽ち果てたトーチカ等の防衛設備がある。

 おまけに両国の戦闘車両や戦闘ヘリの朽ち果てた残骸まであった。

 錆び付いているからして、この砦が放棄されたのは十年ほど前だろう。双眼鏡から目を離したマリは、誘導灯が光っている箇所を見た。

 友軍機がそこへ入っていく事から、先に到着した味方の工兵が作った即席のハンガーか、元からあった物だ。地上機は、下にある大型ハッチから入っていく。

 砦の近くまで来ると、上手く地形にカモフラージュした見張り番が立っている。柿崎のVF-1Aの手に乗せられた一行がハンガー内へ入ると、入ってきた機体の整備を急ぐ整備兵達の姿があった。いつ敵がここを見付けて襲ってきてもおかしくないためか、動きは慌ただしい。

 

『降ろしますよ!』

 

 柿崎がそうスピーカーから知らせ、ハンガーに着陸すると、マリ達を乗せる手がハンガーに下ろされ、ある程度の距離を離れれば、ファイター形態へと変形し、キャノピーを開けて柿崎が降りてくる。晃とレイのVF-1Aも一度ガウォーク形態に変形して足を付け、ファイター形態に変形して機体から降りる。

 マリは熱を出しているザシャを抱えながら、近くを通りかかる整備兵に医務室は何処なのかを問う。

 

「ねぇ、医務室何処?」

 

「え?そんなの案内図でも見てくださいよ!」

 

 熱を出した女性士官を抱えたマリに構っている暇はないと判断したのか、連絡路前の壁にある案内図を指差した後、自分が担当する場所へと向かった。

 質問に答えなかった整備兵に舌打ちしたマリは、案内図で医務室の位置を確認した後、ザシャを抱えながら、チェリー、千鶴、ペトラと共に医務室へと向かう。柿崎も後に付いていこうとしたが、自分の上官と今は望まぬ再開をする。

 

「少佐ぁ~、待ってくださいよ!」

 

『柿崎!』

 

「げっ、隊長!?」

 

「げっ、じゃないわよ!聞きたいことは山ほどあるんだから、こっちにいらっしゃい!」

 

「そ、そんなぁ~!イテテ!」

 

 そのまま自分の上官であるコリンヌ・ビヤールに掴まり、耳を掴まれたまま連れて行かれた。

 医務室へと辿り着いたマリと三人は部屋へ入ったが、全てのベッドは重傷の負傷兵に占領されており、さながら野戦病院のような光景が広がっていた。入ってきた彼女等に気付いた血塗れの手術服を着た女医が近付き、血で真っ赤のゴム手袋を取り、ザシャの額に触れる。

 

「ただの熱じゃない。向こうに士官用の宿舎があるから、そこに寝かせておきなさい」

 

 この指示に応じ、四人は医務室を出て士官用の宿舎に向かった。

 

「やっぱり受け入れられませんね・・・」

 

 チェリーがもっともなことを言うと、三人は無視して目標に向けて歩く。道中、弾薬や設置用の火器を運んでいる包帯を巻いただけの軽傷者達と遭遇する。中には骨折した者達も居たが、十分に動けると判断され、働かされているのだろう。そうこうしている内に、士官用の宿舎があるエリアに到着した。

 空いている部屋を見付け、そこにあるベッドへザシャを寝かせると、マリは彼女の部下である三人に看病するよう命じ、着替えを調達するべく、被服類があるエリアへと向かう。

 係の女性士官に着替えを渡すよう告げる。だが、係が出したのはドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の飛行服の下に着用するフリーガーブルーゼと婦人用制服だった。

 

「なにこれ?」

 

「なにって、着替えです」

 

「こんな埃だらけの物出して良いの?」

 

「密封されてましたから大丈夫です。嫌なら持ってこなくて良いですよ」

 

 マリのクレーム対し、係はそう答えると、マリは自分と三人娘の着替えを受け取り、ザシャ達が居る部屋へと戻った。ザシャの着替えはあるので、許すことにする。

 

「あの、ヴァセレート少佐ですか?」

 

「なに?」

 

 戻る途中、女性士官に突然声を掛けられ、用件を聞くために足を止めた。

 

「ハンガーに白くて大きいゾイドを預けたら、貴女に言えとデカイ人に言われたので伝えに来ました」

 

「あぁ、そう。ありがとね」

 

 自分のライガー・ゼロをガルナが届けてくれたので、一応女性士官に礼を言って、士官用の宿舎へ戻る。ザシャが横になっている部屋へと入ると、額に冷たいタオルを乗せられてベッドに横になる彼女と、看病するチェリーと千鶴、部屋の隅に立つペトラの姿があった。

 

「あっ、お帰りなさい。その着替えは・・・?」

 

「なんか着替えないから、ここの使えとか言ってきた」

 

「埃とか入ってるんじゃないの?やたら死体だらけだったし」

 

「密封されてたから大丈夫みたい。着ても大丈夫だってさ」

 

 持っている着替えについてチェリーが訪ねれば、マリはそう答え、ペトラが悪態をついた。マリが「着替えは大丈夫」と追加で伝えれば、机の上に四人分の着替えを置き、ザシャの着ているパイロットスーツを脱がし始める。

 パイロットスーツと下に着ている衣服も脱がせば、マリよりは劣るが、十分にそそられるほどの体付きであるザシャの下着姿が露わとなる。さらに熱を出して顔を赤らめ、息を荒げている所為でこの場に異性でもいれば、我慢できず、飛び付いてしまうところだが、ここには同性しか居ない。

 身体に付いた汗を乾いたタオルで拭き取り、下着の中にまでタオルを入れ、汗を拭き取る。敏感なところに触れられたのか、ザシャは声を上げてしまう。

 

「ひゃっ・・・」

 

 声を上げたザシャであったが、マリは構わず続け、全身の汗を全て拭き取った。次に白い長袖のシャツと長ズボンに着替えさせる。

 

「あの、隊長の下着とか替えないんですか?」

 

着替えを終えた後、チェリーが聞いてきたが、それに対しては替えの下着がないと答えた。

 

「終わったし、私も着替えよっか」

 

 自分の作業着も汗でベタベタとしていたのか、マリは部屋の中で作業着を脱ぎ始めた。それと見ていたザシャを除く一同は、驚きの声を上げる。

 

「ななな何で脱いでるんですか!?ここは更衣室じゃないんですよ?!」

 

「え?だって、ここ女の子しか居ないじゃん」

 

「女子校みたいな感覚ね・・・」

 

 顔を赤らめて注意するチェリーの問いに、マリはそう答えれば、ペトラは軽蔑したかのような目をしながら口を開いた。その間にも彼女は遠慮なしに脱ぎ始め、下着姿となる。

 彼女の下着姿を見えた三人は、ただ息を飲み込むか、見取れるだけである。そんな三人を他所に、彼女は机の上に置いてあったフリーガーブルーゼに着替え始めた。着替え終えたマリは、三人に着替えるよう告げる。

 

「ほら、あんた等も着替えなさいよ」

 

 周りのことを気にしないマリは、三人に着替えを出して進めるが、この場で着替えるのは恥ずかしいと思ったのか、着替えを受け取り、部屋を出た。そんな彼女達を見て、マリは疑問に思う。

 

「男なんて居ないのに」

 

 出て行く彼女達を見て嘆いたマリは、つまむ物を探すためにザシャが眠る部屋を後にした。

向かう最中、廊下で出会す者達の服装は、自分と同じようなフリーガーブルーゼを着たパイロット達やドイツ国防陸軍の迷彩服を着た将兵達と遭遇する。どうやら着替えなどを持ち出せなかったらしく、仕方なく十年ほど密封されて倉庫に眠っていた物を引っ張り出してきたのだろう。流石に小火器類、弾薬は持ってはいないが。

 糧食類については、町で奪ってきた物か、敵の補給部隊から奪ってきた物で補っている様子だ。ある程度の日用品と衛生用品は無事であった。そんな事を気にしつつ、マリは開口部に体重を掛け、夜空を見上げた。

 

 

 

 マリとザシャ達が砦に到着した頃、全長1200mにも及ぶマクロス級を追う白い塗装が特徴的なペガサス級強襲揚陸艦の姿があった。追跡はマクロス級の長距離レーダー範囲や哨戒機から外れた距離で行われている。尤も、追跡の対象であるマクロスが巨大すぎ、遠くから見える程であるが。

 そのマクロスの追跡を担当し、ペガサス級強襲揚陸艦ネシェルに乗るのは、連邦宇宙軍の精鋭の将兵を大勢死なせ、敵に何の損害も与えられなかった罰として、地上勤務をやらされているフリッツ・アプト元第11独立艦隊の提督だ。

 

「中将。敵哨戒機、変形型要塞艦に戻っていきます」

 

 双眼鏡を持つ下士官からの報告に、フリッツは操艦手に指示を出した。

 

「よし、距離を詰めろ。ただし、レーダーの範囲に入るな」

 

「了解!」

 

 操艦手はネシェルをある程度の距離まで前進させた。追跡対象であるマクロス級は、フリッツ等が乗るネシェルに気付いていない。フリッツは左手に持った珈琲をすすりつつ、相手の巨大艦の動向を探った。

 フリッツの予想では、マクロス級はこの惑星に落下した残存部隊が集まる合流ポイントに向かっていると睨んでいる。そんな彼に、眼鏡を掛けた通信士が上層部からの連絡を報告する。

 

「中将、駐屯軍本部が攻撃しろとまた通達してきています」

 

「またか。無能共に現状の戦力では不可能と返しておけ!」

 

「はっ!」

 

「たくっ、安全圏に居る連中は、ペガサス級一隻で敵の大型戦艦を墜とせるとでも思っているのか?」

 

 通信士にその返答文を送信するよう伝えた後、安全圏に居る駐屯軍本部の将官達に対しての悪態をついた。そんな時に、通信士がまた連絡が来たと報告した。

 

「中将、また連絡・・・」

 

「えぇーい!ミノスキー粒子とか電波妨害を受けているとかで通信を切れ!」

 

 また本部からの通信だと思い、着るように命ずるフリッツであったが、違う物と通信士は報告する。

 

「いえ、追跡部隊本部からです」

 

「なに?貸してみろ!もしもし、こちらは宇宙軍所属シュヴァルツ・ランツェンライター隊の長であるフリッツ・アプト中将だ。貴官は何様で通信を掛けてきたのかを問う」

 

 報告した通信士からヘッドフォンを奪い取り、通信先の相手の動機を問う。

 

『単なる報告です。アプト宇宙軍中将殿。我が統合連邦地上軍並びアヌビス地上軍の連合追跡隊は、ガラヤの町で大損害を被った為、連邦地上軍所属のバルキリーで編成されるアグレッサー隊、アヌビス地上軍の二級戦部隊と外人部隊や懲罰部隊、傭兵部隊を編成に加え、再編を行いました』

 

「アグレッサーや外人部隊は兎も角、なんで懲罰部隊や傭兵部隊まで投入する必要があるんだ?現地軍や駐屯部隊から要請すれば良いではないか」

 

『それにつきましては、本部とアヌビス地上軍司令部から、近々大規模な掃討作戦を実行するそうで。作戦実行のため、増援は出せないと言われました』

 

「ふざけた事を・・・上の連中は何を考えているんだ?なら、拳銃で脅してでも引き抜いてこい」

 

 この報告にフリッツは本部に対して悪口を言った後、強硬手段を執ることを提案するが、相手は拒否する。

 

『そんな野蛮なことは私には出来ません。この連合部隊の長を貴方にしてもらいたいのですが・・・拒否しますか?』

 

「馬鹿野郎!誰がそんなことを・・・」

 

「中将、現地軍のヘビィ・フォーク級陸上戦艦がこちらに主砲を向けております!」

 

「なにぃ・・・!?」

 

 追跡部隊指揮官からの頼みに、フリッツは断ろうとしたが、レーダー手からの報告で中断される。

 

「拒否権は無いという事か・・・!」

 

『その通りです。お願いできますね?アプト閣下』

 

「ぬぅ・・・分かった・・・」

 

『それで良いのです、閣下。では、敵の潜伏先が分かり次第、攻撃を開始してください。露払いをお願いしますよ?』

 

 追跡部隊指揮官からの通信が切れると、苛立ちを隠せないフリッツは、ヘッドフォンを強く握った。そんな彼から通信士はヘッドフォンを恐る恐る手を伸ばすと、フリッツは投げ返し、苛々しながらブリッジを出ようとした。

 

「中将、どちらへ?」

 

「少し寝る!あの馬鹿でかい敵艦が潜伏先の連中と合流したら、直ぐに起こせ!分かったな?!」

 

「はっ!!」

 

 参謀からの問いにフリッツはそう答え、ブリッジを後にした。

 

 

 

 その頃、フリッツが追跡中のマクロス級は、彼が睨んだとおり、集結ポイントである砦の近くまで来ていた。マクロス級の巨体で着陸でもすれば、子供でも目的地が分かってしまう。直ちに残存部隊を纏める指揮官はコースを帰るようマクロス級に、秘匿回線で告げた。

 

「こちらは混成部隊指揮官メルヴィ・テア・クピアイネン中佐だ。そこのマクロス級、直ちにコースを変えよ!」

 

 砦の司令部にて、指揮官であるメルヴィがそう告げるが、マクロス級の艦長はそれを拒否する。拒否する声の主は、まるで少女のようであり、司令部にいる何名かが驚きの声を上げる。

 

『えっ、そっちが来いって言ってるんでしょ?(みんな)を乗せられるくらいの大きい船を敵の攻撃を受けながらここまで持ってきたのよ。感謝してよね』

 

 潜伏先が敵に察知される事など知ったことではないように告げる少女のような声の艦長に、メルヴィは反論する。

 

「その巨体をここに着陸させれば、ここが敵に察知されてしまうのだ。直ちにコースの返答を願う」

 

『察知される?だったらこのツェルベルスに積み込めば良いじゃないの。それなら早く着陸して、物資とか色々積み込まないとね』

 

「あぁ、その手があったか・・・時間稼ぎのために、防衛線を築かねば・・・」

 

 ツェルベルスの艦長からの返答に、メルヴィは直ぐさま防衛線を取るよう指示を出した。それに応じてツェルベルスから艦載機が発進し、迎撃態勢を取る。この指示はマリ達が居る士官用の宿舎にも響いた。

 

『各員に通達する。マクロス級要塞艦ツェルベルスが当砦に着陸し、諸君等を回収する。戦闘要員以外の者は、敵襲来に備え、ツェルベルスに当砦の物資の搬入と負傷兵の移送を速やかに始められたし。繰り返す!』

 

 砦中に設置されたスピーカーから流される放送に、砦にいるワルキューレの将兵達は慌ただしく動き始めた。戦闘要員であるパイロット達は直ちに自分の機体に急ぎ、そうでない者達は着陸しようとするツェルベルスに物資や負傷兵を詰め込むべく、それぞれの持ち場に向かった。

 スピーカーから流れる放送に、ザシャは身体を起こし、戦おうとしたが、三人の部下に止められる。

 

「敵が来る・・・戦わないと・・・!」

 

「隊長はツェルベルスに行ってください!」

 

「そんな、こんな状況で、熱でなんかで寝込んでいられないよ・・・!」

 

「良いから・・・」

 

 無理にでも身体を起こし、機体に乗り込んで戦おうとするザシャだが、バランスを崩し、チェリーと千鶴に抱えられる。そのまま部屋から連れ出される。そんな彼女等に、マリとペトラは同行する。

 一階に辿り着く頃には、ツェルベルスは砦の近くに着陸し、物資の集積と負傷兵の移送が行われていた。

 

「お願いします!」

 

「了解です」

 

「待って・・・!」

 

 衛生兵にザシャを引き渡すと、余っている機体が無いか探しに向かおうとするが、彼女に呼び止められる。三人の部下は振り替り、訳を問う。

 

「なんですか?」

 

「絶対に、死なないで・・・!」

 

『はい!(分かった)』

 

 チェリーと千鶴は笑顔で答え、ペトラは無言で頷く。それから三人は動ける機体を探しに向かった。

 一方のマリは、自分のライガー・ゼロの元へ向かっていたが、全く違う外装になっていることに驚く。元々ライガー・ゼロは、チェンジング・アーマー・システム、通称CASを搭載しており、今の外装はそれの一種である。

 直ぐに近くにいた少女整備兵を捕まえ、理由を問う。

 

「私のライガー・ゼロが違うのになっちゃってんだけど?!」

 

「ライガー・ゼロ?これはゼロイェーガーですよ!」

 

「イェーガー・・・?どんな機能なの?」

 

 整備兵からの答えに、マリは続けて問う。

 

「高速戦闘タイプであります!」

 

「成る程、前のよりも早いって訳ね!」

 

 答えを聞いたマリは、直ぐにゼロイェーガーのキャノピーを開けて乗り込む。キャノピーを閉めて直ぐにハンガーから出て行こうとしたが、先の整備兵から静止の声が上がる。

 

「待ってください!追加装備がまだです!!」

 

「追加装備?そんなの待ってらんないわよ!」

 

「そのままで出ると、火力が貧弱なので!」

 

「もぅ!早くしなさいよ!!」

 

 追加装備をするまで出撃が出来ない為、マリはコクピットの中で苛々とし始める。ゼロイェーガーに装備されるのは、専用の追加装備ではなく、別の機体の物ばかりであった。

 両前足には円形の八連装ミサイルポッドが二つずつ無理矢理付けられ、背中にはコマンドウルフ用の50㎜二連装ビーム砲を付けられる。整備兵は作業が終わったと、マリに報告する。

 

「終わりました!速度は落ちますが、ある程度の射撃戦は行えます。それと不要になれば、パージが可能です!」

 

「ありがと。それで貴方の名前は?」

 

 礼を言うマリに、整備兵は自分の名前を問われたので、それに答える。

 

「宇宙軍所属、艦載機整備士のカチヤ・フンメル二等兵であります!」

 

「そう。生き残ったらまた会いましょう」

 

「はい!」

 

 敬礼するカチヤを見た後、マリはキャノピーを閉め、ハンガーから飛び出した。彼女が外に出た頃には、既に戦闘が開始されていた。

 

「もう戦闘が始まってる・・・!」

 

 モニターからは連続する爆発や曳光弾が見え、外から収拾された音には、銃声や爆音が響いてくる。遠くに見えるフリッツ等シュヴァルツ・ランツェンライターが乗るネシェルを確認できた。

 ミサイルや左右の高出力メガ粒子砲を砦に向けて発射し、被害を与えている。味方のバルキリーが撃沈を試みるも、対空砲火で追い払われてしまう。マリは向こうの敵には届かないと思い、自分を攻撃してきた敵機の殲滅に集中した。

 まず目に入ったのは、懲罰部隊のスコープドックだ。背中のビーム砲を撃ち込んで撃破し、続いて二機目と三機目を撃破する。

 複数居る敵機に対しては、ミサイルでマルチロックオンしてから全弾発射し、ミサイルポッドをパージして、機体を軽くした。発射されたミサイルは目標に全て命中し、マリの撃墜数に十数機以上がプラスされた。

 高速移動をしながら上空に飛ぶ敵機を何機か撃墜していると、アグレッサー隊所属の可変戦闘機であるVF-5000Bスターミラージュが上空から襲来し、ガンポッドをマリのゼロイェーガーに向けて撃ち込んでくる。イェーガーが持つ好機動力を駆使し、ガンポッドの掃射を回避すれば、背中のビーム砲で対空射撃を行う。動きが速くて中々当たらなかったが、偏差射撃をすることで、撃墜することが出来た。

 

「次は・・・?居ないか・・・次が来るまで・・・」

 

 レーダーを確認し、自分の周りに敵が居ないことを分かると、少し休憩を取ろうとする。だが、通信でツェルベルスのCICに居る年若い少女のような管制官の叱りを受ける。

 

『そんな所で休んでいる人、早く次の戦場へ向かうのです!』

 

「はっ?ここには敵なんか居ないわよ」

 

『敵陣からの砲撃で味方の被害が10%に達成したです!早く砲撃陣地へ行って、敵の砲撃をなんとかするのですよ!』

 

「はいはい。分かったわよ!」

 

 指示に応じたマリは、生返事をしてから背中のビーム砲を外し、機体を軽くした後、背中のブーストポッドを展開し、ブーストを噴かせて砲撃陣地へと向かった。

 座席が後方に下がり、Gの抵抗を薄くする。僅か数秒単位で敵陣へと到達し、敵機が迎撃してきたが、更に速度が増したイェーガーには全く命中せず、音速に達した速度で近くを通過され、その衝撃波で迎撃機は吹き飛んでしまう。

 

「は、早過ぎる!?」

 

 迎撃に当たったVF-5000Bに乗るパイロットは、イェーガーの速さに驚きを隠せないでいる。この間にもマリは音速の衝撃波で砲撃陣地を荒らし回り、敵を混乱させる。荒らし回っている最中、あの管制官からの通信が入ってきた。

 

『単機で突っ込んじゃ駄目です!誰かコンビを組んで・・・』

 

「遅いわよ!もう敵陣のど真ん中に居るんだから!」

 

『えっ、もう敵陣に!?うわっ、本当です!いつの間に!?』

 

 戸惑う管制官を無視し、砦に砲撃を行うヘビィ・フォーク級に向け、高速で突っ込んだ。

 余りにも速すぎたので、少し速度を落としたが、それでも対空機関砲の弾幕を回避出来るほどである。ジャンプして乗り越えると、弾幕が途切れた箇所から爆装したVF-25Aが侵入し、ヘビィ・フォーク級に向けて対艦爆弾を投下する。

 投下された爆弾は見事着弾し、ヘビィ・フォーク級を撃沈する。それを確認したマリは、追加爆撃を受ける砲撃陣地から高速で脱出した。出た先が外人部隊の担当戦区だったのか、マリのイェーガーを見るなり撃ってくる。

 高速戦闘を想定して作られたイェーガー形態は、ゼロタイプよりも防御力が低い。今撃ってきている攻撃を諸に受ければ、イェーガーは忽ち鉄くずと化す。

 だが、彼女の腕があれば容易に回避が可能であり、攻撃を回避しながら接近し、装備されたブレードを突き刺して、次々と敵機を撃ち落としていく。瞬く間に十数機以上がマリの手によって撃墜され、残っている敵は撤退を始めた。

 マリが逃すはずもなく、背中を向ける敵の足にバルカンポッドを撃ち込み、移動不可にさせれば、レーザークローでトドメを刺していく。残っている敵を全て排除したマリは、次の目標を確認すべく、モニター越しから周囲を見渡す。そんな時に、別の落ち着いた感じの女性管制官が新手の接近を知らせる。

 

『新手の部隊の接近を確認しました!敵の精鋭部隊かもしれません。注意してください!』

 

 知らせの後に、モニターに新手の敵部隊の位置情報が表示される。位置は二手に分かれており、北東と北西から接近してくる。

 

『レーダーに表示します。心して当たってください!』

 

 この戦場で戦うワルキューレの将兵に届いており、競合師団のメンバーにも聞こえていた。

 

「新手の敵部隊?どれどれ」

 

 VF-25Gに乗るツチラトが狙撃用の照準器を出し、北西の方を確認してみると、カスタムされたMSやAT、ゾイドなどが陣形を組みながらこちらに向かってきている。他にも、上空からは数々の飛行形態に変形するMSや可変戦闘機が確認できる。

 

「おいおい、また博物館かよ」

 

 現れた敵部隊がどれもこれもが古い機体だったので、それを見たツチラトは舐めきった言葉を吐いた。そんな彼に、VF-25Fに乗るエッカルトが注意する。

 

「油断するな。古い機体に乗ってあれ程の動きをする連中だ。おそらく相当な手練れだろう」

 

 敵部隊の統率が取れた動きを見て、エッカルトは分析してかなりの戦闘経験を持つ傭兵集団と判断する。

 もちろん彼の言うとおりであり、敵陣営に居るフリッツが、どんな者達であるのかを副官に問う。

 

「あの傭兵部隊、装備は旧式の物ばかりだが、動きはまるで精鋭部隊だな。一体何処の傭兵だ?」

 

「はっ、イクサ人で編成された戦闘団規模の傭兵部隊だと追跡部隊指揮官が仰有っていました」

 

「成る程、イクサ人の傭兵部隊か・・・これだけは正しい判断だな」

 

 副官からの答えに、フリッツは自分に露払いを強制させた追跡部隊指揮官を少しは褒めた。ドムキャノン、ドム・トローペン、ドワッジがフォーメーションを組み、ホバー移動をしながら砦の迎撃部隊に接近してくる。

 射程距離まで近付くと、マシンガンやジャイアントバズを撃ち込み、迎撃に当たる複数のジムⅡやM1アストレイを撃破し、更にネモⅡやⅢ、デストロイド・シャイアンⅡを撃破する。

 次に重武装のスコープドック数機がヘビィマシンガンやミサイルを撃ち、上空から接近してくる可変系MSやVF-11CやVF-117を撃墜していく。行く先を塞ぐ地上にいる敵機に対しても猛威を振るい、味方の地上部隊の損害が増える。

 今までは動く棺桶でしか無かったATとは思えないほどの強さだ。余りの強さにVF-25Aに乗るジョンは驚きを隠せないで居る。

 

「ま、マジでATなのか・・・!?」

 

 驚きの声を上げるジョンであったが、空にも地上の同等な恐怖が待ち受けていた。VF-1バルキリー、VA-3Bインベーダー、VF-9カットラス、VF-14バンパイア、VA-14ハンター等の様々な既に退役済みのバルキリー群が、ワルキューレの制式採用型や最新型のバルキリーに襲い掛かる。

 可変MSであるアッシマーやギャンプラン、帝国ゾイドである黒い塗装のレドラまで襲ってくる。

 乱戦状態となるが、性能差を持って何機かを撃墜できた。だが、相手の実戦経験が上なのか、あっと言う間に巻き返された。

 

「各機、注意しろ!奴等は戦争のプロだ!!」

 

 VF-25Sに乗るチムーロヴィッチは、急降下戦法や一撃離脱戦法を二機一隊となって行う傭兵部隊に、交戦しながら部下達に注意して掛かるよう命ずる。その間にも性能差で優るはずのVF-25Aが一機撃墜された。

 

「ベーン!畜生、仇は取ってやる!」

 

 ジョンが撃墜されたVF-25Aを見て、それに乗っていた戦友の名を叫んだ。仇を取ろうと、目の前で後ろを見せる敵機にバルカン砲やガンポッドを撃ち込み、撃墜する。

 エッカルトも敵機を撃墜することに成功するが、撃墜できたのはVF-9一機だけである。

 

「やっと一機か・・・相手はどれだけの実戦を潜り抜けているんだ・・・!?」

 

 双方から来る敵機の攻撃を避けつつ、自分の予想の範疇を超えている事に驚く。バトロイド形態でスナイパーライフルを構えるVF-25Gに乗るツチラトは、この場にザシャが居ないことを悔やむ。

 

「クソッ、この場にヒヨコ中尉がいれば・・・!」

 

 定まらない照準に苛立てつつ、引き金を引いたが、標的にしたVF-14を小破させただけだった。

 

『各小隊、バトロイドになって互いを・・・わぁぁぁぁ!!』

 

「中隊長!!」

 

 その数秒後に、第1中隊長のベルントソン大尉が指示を出している最中に撃墜された。動揺する彼の部下達を抑えるため、VF-25Sに乗るシャロンが第1中隊の指揮権を引き継ぐと告げる。

 

「私が第1中隊を預かる!各小隊はバトロイド形態となり、互いの死角を補佐せよ!」

 

『了解!』

 

 動揺する第1中隊のパイロット達に指示を出して落ち着かせた後、コンバットナイフを投げてバトロイド形態のVF-1Aを撃墜する。

 各地区で防衛線がイクサ人の傭兵部隊によって崩れる中、担当地区で敵の排除をしていたマリに、CICの管制官から直ちに砦に戻るよう指示される。

 

『ポイントデルタに居る部隊は直ぐに砦に戻ってくださいです!敵の精鋭地上部隊が砦に取り付き、現在守備隊と交戦中です!!』

 

「突破されるの早過ぎでしょ!」

 

 ブーストを噴かせて砦まで一気に戻ろうとしたが、ビーム攻撃による正確な狙撃を受け、回避を余儀なくされ、失速してしまう。立ち立ち止まった瞬間にミサイルが近くに着弾し、正面に黒い塗装の重装型ガンキャノンとジム改が現れた。

 先にブルパップマシンガンを撃ってくるジム改をブレードで串刺しにして撃破し、向かってくる重装型ガンキャノンに襲い掛かる。相手はこれを待ち受けていたのか、跳び蹴りを食らわせ、マリが乗るイェーガーを吹き飛ばした。

 

「キャッ!」

 

 蹴り飛ばされた衝撃と共に強い衝撃がコクピットを襲い、マリは声を上げる。地面にイェーガーが倒れ込めば、重装型ガンキャノンが近付いてくる。

 

「良くも!」

 

 相手が近付いたところで体勢を立て直し、イェーガーの首を引き千切ろうとした重装型ガンキャノンのコクピットをレーザークローで引っ掻く。引っ掻かれたコクピットのハッチは吹き飛び、乗っているパイロットが丸見えとなる。

 重装型ガンキャノンのパイロットは機体に似合った帽子を被った大柄の男で、かなりの強面顔のイクサ人だ。しかし、イ腹にはハッチの破片が深く突き刺さっており、時期にイクサ人の傭兵は吐血し、重装型ガンキャノンを自らの棺桶として息絶えた。

 パイロットが死んだ重装型ガンキャノンは、まるで立ったまま死んだ弁慶の如くであった。

 直ぐにその場から離れ、砦に戻ろうとするが、マリの足止めを行うためか、狙撃が行われた後、陸戦型ジムや陸戦用ジム、陸戦型ガンダム、ザクキャノン、ザクⅡ改、グフ、ドムが現れ、さらにはライオン型ゾイドシールドライガー、ロングレンジ砲装備のコマンドウルフ、スティラコサウルス型ゾイドレッドホーン、セイバータイガー等のゾイド群も行く先を封じる様に現れる。

 更に航空部隊の余剰戦力が回されたのか、もはや砦に向かうことは不可能だった。

 

「なんで私にこんなにも集まってくるのかしら・・・?」

 

 まるで自分を足止めするために集まってきたような旧型の機動兵器群に、マリは頭をフル回転させた。ほんの数秒で答えは出て来る。

 

「私を足止めするためだけにこんなに集めたのね・・・さっきの雑魚共は様子見の為の生け贄って訳ね」

 

 答えはマリが口にした通りだ。先程の外人部隊と砲撃陣地は彼女の実力を図るための生け贄であり、イクサ人の外人部隊が遅れて現れた理由はそれだった。

 今、目の前と上空を飛ぶイクサ人の傭兵達が乗る機動兵器は、マリを足止めするだけに選ばれた隊の中で上位に君臨する技量の高いパイロット達である。彼女は強行突破を試みるも、凄まじい弾幕で阻まれてしまう。

 

「クッ、砦に戻らないと行けないのに!こいつ等は!!」

 

 ヒートロッドを撃ち出してくるグフの攻撃を回避し、近付いて頭部のブレードで串刺しにして、攻撃を回避しつつ、次なる敵機に攻撃を仕掛けた。何機潰しても、泉の如く湧いて出て来る。そんな敵部隊に、マリは必死に突破を試みようと、敵を倒し続けた。

 一方のマリが必死に戻ろうとする砦では、ツェルベルスの物資搬入と負傷兵の移送は終了し、撤退の準備が始められていた。しかし、砦にイクサ人の傭兵部隊の侵入を許してしまい、上手く撤退が進んでいない。砦内部で撤退中のワルキューレの機動兵器隊に、先行して入ってきたグフのエース仕様機であるグフ・カスタムが襲い掛かる。

 

「き、来た・・・!」

 

『迎撃準備!』

 

 ジムⅢとネモ改の混成MS部隊五機が迎撃態勢を取ったが、イクサ人の傭兵が乗るグフ・カスタムは混成部隊のMSが撃つ前に近くまで迫ってきた。直ぐにビームサーベルを抜いて、性能が遙かに劣る敵機を切り裂こうとしたが、相手はそれよりも早く動き、瞬く間に混成部隊のMS三機をヒートサーベルで片付けてしまう。

 残りの二機はビームライフルを撃ちながら後退しようとしたが、側面から現れた近接戦闘特化型のジムであるジム・ストライカーのツイン・ビーム・スピアに切り裂かれる。最後の一機は引き抜いて後ろに回り込んできたジム・ストライカーのグラップ・シールドの先端にあるクロー・アームでコクピットを串刺しにされた。

 この二機による攻撃で、砦に未だ残っていた部隊はほぼ壊滅する。

ツェルベルスへの最後の道を塞ぐかのように、宇宙用に改装された戦術機F-4ファントム七機が突撃砲を撃ちながら敵を近付けまいと必死で死守するが、プロの傭兵集団を食い止める事は出来なかった。

 ミサイルランチャーを構えた数機のスコープドックからのミサイル一斉掃射を受け、壁が崩される。爆煙が晴れる前に、右腕にパイルドライバーと同じ原理を持つ武器であるパイルバンカーを装備した一機が突撃する。壁になっていたF-4は立ってはいなかったが、倒れ込んだ一機はまだ戦闘継続が可能であり、突撃砲を敵が居そうな場所へ乱射し続けている。

 そんな敵機にトドメを刺すべく、煙の中をかいくぐってきたパイルバンカーを装備したスコープドックが近付き、杭をコクピットへ向けて打ち出した。杭を打ち込まれたF-4は動かなくなり、ずっと突撃砲をあらぬ方向へと撃ち続けるだけである。手に持った銃身を切り詰めたヘビィマシンガンを撃たれ、突撃砲を持つ腕が落とされ、銃声は止む。

 遮蔽物に身を隠していたATやMS達は、先にあるツェルベルスに向かって突撃した。

 

「来やがったな、傭兵共!この柿崎様が相手だ!」

 

 待ち受けていたVF-1Aのバトロイド形態に乗る柿崎は、ハッチから出て来た傭兵部隊に向けてガンポッドを撃ち始める。敵の反応は早かったが、数機以上が弾幕を浴びて爆算する。

 迎撃に参加したのは柿崎機だけでなく、先にツェルベルスに撤退した地上機や帰還した航空戦力も参加し、砦から出て来る激しい弾幕を浴びせる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 ジムⅡに乗ったチェリーや、VF-1Jに乗った千鶴やペトラも迎撃に参加。さらに晃とレイも参加して徹底的に撃ちまくり、完全にハッチ内に釘付けにすることが出来る。

 その間に、空で迎撃を行っていたバルキリーや可変MSを始めとした航空部隊が戻ってくる。残ったVF-25系統の数は殆どが撃墜され、まともに動けるのは一機と少ないという有様である。残りは修理すれば飛べるが、今すぐでは不可能だ。搭乗していたパイロット達は、人型形態の可変機に抱えられて帰還した。

 他の機体に搭乗しているパイロット達も、腕に抱えられてツェルベルスに帰ってきた。航空戦力が撤退したので、傭兵部隊の航空部隊が編隊を組みながら接近してくる。対策は出来ていたのか、フルアーマー装備のVF-1系統やVF-11C、対空ミサイル装備の機動兵器群が待機していた。

 

「目標、敵編隊。ミサイル一斉射用意!」

 

 アーマードバルキリー群や対空ミサイル装備の機動兵器群の中央に、双眼鏡を覗く尉官と受話器を持った佐官が居り、指揮を執っている。ミサイルが十分に当たる距離まで近付くと、受話器を持った佐官はミサイル発射の指示を出した。

 

「撃てぇぃ!」

 

 指示が出されると、ミサイルは一斉発射される。発射された大量のミサイルは傭兵部隊の航空部隊へ向けて飛んでいく。散会する敵バルキリーや可変MS、航空ゾイド群であったが、流石に回避しきれず、何機かがミサイルの弾幕を浴び、撃墜された。

 これにより空からの攻撃もなくなり、ツェルベルスは上昇し、ある程度の高さまで上昇した後、バーニアを一気に噴かせて安全圏へと向けて飛び立つ。取り残された者達もいるが、間近までに近付かれたために回収できず、置いていくしかなかった。

 戦っている間に置いてきぼりを食らったマリは、戦いながら離れていくツェルベルスに通信で待つように呼び掛ける。

 

「ちょっと待ちなさいよ!私がまだ・・・!」

 

『許してくださいです・・・敵の増援が接近していますのです。ここに留まっていれば、確実に数の暴力で抑えられてしまうのです・・・合流ポイントを出しますので、戦場から脱出できれば、直ぐにそのエリアに向かうのです・・・』

 

 通信に答える少女管制官は、申し訳なさそうに答え、合流ポイントをイェーガーのモニターに表示させる。敵の増援まで現れ、もはや乗ることは不可能と悟ったマリは、少女管制官に対し、自分と性交渉をするよう相手の同意を得ずに約束させる。

 

「そう。生きて再開したら私とセックスしてね」

 

『せ、セックスぅ!?あわわわ!!』

 

 それを聞いてモニター越しで顔を赤くして慌てふためく少女の表情を数秒間見た後、通信を切り、周囲から襲ってくる敵機を倒し続ける。それから暫く戦っていると、先程まで向かう目標であった砦から爆発音が聞こえ、崩れ始めた。どうやら少しでも足止めをするために、中枢部に爆薬を仕掛けたらしい。

 風塵が巻き起こる中、マリはイェーガーの機動力を生かして防備が薄い箇所へ突っ込み、包囲から突破する。それからブーストを全力で噴かし、音速のスピードで戦場から脱出した。

 

「追ってこない?私を引き離すだけだったようね」

 

 戦場から脱出したマリは、追ってこずに撃つだけの傭兵部隊の機動兵器群を見て呟き、出来るだけ遠くまで移動する。

同じく戦場から離れていくツェルベルスであったが、増援として現れた連邦軍と現地軍の連合追撃部隊が、行く先を塞ぐように展開してくる。数は先に襲撃してきた混戦部隊とは比べものにならない物であり、このままでは包囲され、今度こそ確実にやられてしまうだろう。

 

「敵部隊!前面に展開開始!!このままでは進路が!」

 

「ど、どうしよう・・・マクロスキャノンを撃ったら速度が遅くなっちゃうし・・・」

 

 レーダー手からの報告に、ツェルベルスの艦長は戸惑い始める。後ろからは先程の傭兵部隊の残りが接近し、前からは敵の大部隊が展開しつつある。

 八方塞がりになりそうな時に、アーマードパック装備のVF-25Sが単独で前衛の敵部隊に突っ込んでいく。知らせは負傷してコクピットから降ろされたシャロンから来る。

 

『こちらロード・・・!大隊長が・・・!』

 

「えっ、誰かが無断出撃してる!?艦長!ボギンスキー少佐がアーマードパックで無断出撃をしています!」

 

「か、勝手に!?直ぐに取り抑えて!」

 

『私が道を開きます!その間にツェルベルスは安全圏に!』

 

 モニターに映っているチムーロヴィッチはそう告げた後、敬礼してからモニターを切る。彼が乗る機体は前方を塞ごうと展開する敵部隊に突入し、交戦状態に入る。チムーロヴィッチの御陰で進路を塞がれずに済み、戦場からの退避が可能となる。

 彼の勇気ある行動で脱出が可能となり、ブリッジクルーはチムーロヴィッチが居るとされる爆発が連続する方向に向けて敬礼し、艦内にいる部下達も敬礼を行った。

何機かの敵機は抜けてきたが、ツェルベルスの巨体を沈めるには少なすぎ、多数の対空砲火で蜂の巣にされたか追い払われた。チムーロヴィッチ一人の犠牲で数千人の乗員と敗残兵、負傷兵達が乗るツェルベルスは敵の射程圏外から離れることが出来た。

 それと同時にチムーロヴィッチが乗るVF-25Sアーマードパックは、敵からの集中砲火により爆散。過剰なまでの集中砲火を受けているからして、完全に彼は死んでいるだろう。見事にチムーロヴィッチは、ツェルベルスを安全圏まで退避の時間を稼ぐことに成功した。




またまた長くなってしまったズラ・・・!

今回も詰め込みすぎた。次回もそうなるかもしれない・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。