復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
マリが壊滅させた町に到着した羽瀬川やカチヤ達を始めとする寄せ集めの混成部隊の兵士達は、地獄のような光景を見て絶句していた。
奴隷市場や食料庫、武器庫を除く倉庫以外は全て廃墟と化しており、街道には町の住民と思しき焼死体が多数転がっている。焼死体以外はあったが、酷く損壊した物ばかりであった。
余り見慣れない光景を見て、嘔吐してしまう者が出た。そんな彼女達に、解放された人々を大型トレーラーに乗せるマリが出迎える。
「ちょっと遅かったわね・・・運転できる人は動かしてね」
言いたいことを伝えると、マリは持ってきた大型トレーラーに乗り込む。この時、マリの指示に従って動く混成部隊の将兵達はこう考えた。
奴隷だった一人の少女の為に、どうして町を壊滅させ、住民を皆殺しにする必要があるのか?
そうマリに問おうと混成部隊の誰もが思ったが、町を壊滅させる前の彼女の殺意に満ちた表情を思い出し、殺されるかと思って震え上がって誰も聞こうとはしなかった。
戦闘を聞きつけた連邦軍か現地軍が駆け付けてくるかもしれないので、直ぐに物資収拾に移り、迅速に行動した。数十分後には町の物資は粗方収拾が終わり、町を出る準備が出来る。
「南方の警戒に当たっている班からの報告です。敵機甲一個中隊規模がこちらに接近中、おそらくこの町の戦闘を嗅ぎ付けたと」
「そう、それじゃあ虐殺女帝様とご一緒に町を出ましょう」
「えっ?で、では、直ちに撤収に掛かります!」
伝令に来た兵士は羽瀬川の例えが分からず、戸惑ったが、無言で肩を叩かれた後、羽瀬川と共にトレーラーへ乗り込む。全員が乗り込んだのを確認したトレーラーのドライバーは、直ぐにアクセルを踏み込み、化け物じみた女の手で廃墟と化した町を後にする。
数十分後、連邦軍の部隊が到着。町の有様を見て絶句した。数分間固まった後、彼等はまだ生存者が居ないかどうか探索を始めた。
町でマリが感情の意のままに町を壊滅させ、住民を虐殺してからの翌日。
熱で寝込んでいたザシャが回復した。付きっきりで看病していたペトラを除くチェリー。千鶴は直ぐに身体を起こした彼女に気付き、抱き付く。
「隊長!」
「ちょっと」
冷静に抱き付いた二人を引き剥がすと、壁に凭れて腕を組んでいるペトラに、自分が寝込んでいる間に何があったのかを問う。
「ねぇ。私が寝込んでいる間に何かあった?」
「あった。集結地点が今乗ってるこの馬鹿でかい戦艦が来た所為で、敵の凄腕傭兵部隊の襲撃を受けておじゃん。かなりの損害を出して、今は新しい合流予定ポイントに向かってる。大隊長は馬鹿でも見付けられるこの戦艦逃がすために戦死。それと戦闘に参加せず、ベッドに寝て戦傷もしてない隊長は他のパイロット達から恨みを買っています」
「それもそうだね・・・私はただ披露で寝込んでただけなんだよね・・・」
ペトラの嫌味混じった報告に、ザシャは暗い顔を浮かべた。
そんな暗い表情を浮かべるザシャに、報告を続ける。
「罰として、休んでた分まで働くことだって。それで済んで良かったね。闇市で分捕った機体で偵察飛行しろっだって」
「それでも十分な罰だよ。でも、分捕ったって・・・幾ら追い込まれてるからって・・・」
十分な処遇として受け止めるザシャであったが、盗賊的な行動を取る味方に少し嫌悪感を抱く。
「あぁ、それと隊長。中隊長に昇格ですよ!おめでとうございます!」
「中隊長に・・・柄じゃないのに・・・」
嬉しそうな表情でチェリーから自分が中隊長になった事を聞くと、ザシャは自分には全く見合っていない肩書きであり、不満を漏らす。
「まぁまぁ、これで周りからは余り文句は言われませんよ!偉くなったんですからね!」
「う、うん・・・じゃあ、早速任務に行こうか・・・」
まるで自分のことのようにはしゃぐチェリーに、ベッドから身体を起こしたザシャは、早速任務に当たることにした。
「着替えと中隊名簿はここにある・・・」
「ありがとう千鶴ちゃん」
着替えとパイロットスーツを用意していた千鶴に礼を告げると、それを手に取って着替え、一連の行事を済ませると、三人と共に部屋から出た。通路で出会す者達は長期にわたる警戒態勢のおかげで疲れ切っており、そこで雑魚寝する者まで居る。
昨日まで寝込んでいたザシャに対する視線は、軽蔑の目であり、彼女もそんな目を向けられることは覚悟していた。ハンガーまで着くと、自分の同僚達が待っていたが、復帰を祝う声は誰もしてくれなかった。
流石に疲労で寝込んでいた上に、昇進までしたのだから当然の反応であろう。そんな視線を感じつつ、ザシャ達は用意された機体へと向かう。彼女達を待っていたのは、ご丁寧に専用カラーに塗装されたVF-1系統と、晃、レイ、柿崎と隊長を失った部下達であった。
「中隊長、復帰おめでとうございます!」
第一声を放ったのは柿崎であり、しかも快く復帰を祝っていた。他の者達からの声はなかったが、表情で祝ってくれるのは伝わってくる。
次に何故自軍のパイロットスーツを着ている晃とレイに視線を向け、何故自分の部隊に入っているのかを問う。
「あれ、貴方達は確か民間人の筈・・・」
「貴方の上官に徴用されました。取り敢えず仮の階級は軍曹です」
「私は准尉よ。シミュレーションで腕前を疲労したら、准尉にしてくれたわ。それと復帰おめでとう」
「そ、そうなの・・・余裕が無いからって・・・」
何処から来たのかも分からぬ風来坊を入れ込む程、余裕がないと思っていたが、まさかこんなに軽々しく許可するのはどうかと思うザシャであったが、今度は自分達の為に用意されたVF-1バルキリー系統を見て、近くにいる整備兵に問う。
「それと・・・これが、私達が乗る闇市から”接収”してきた戦闘機・・・?」
「はい。粗末な部品は使ってはいません、正常に動きます。他の機体は調整中であり、VF-25の補充はまだまだです」
「そ、そうなの・・・」
「そうなります。貴方のはレーザー機銃が四門あるVF-1Sです、一番先頭の。では自分はこれで」
丁寧に自分が乗る機体を指差すと、その場を去っていった。
自分が乗る機体が分かったザシャは、早速部下達に各々の機体に搭乗するよう指示を出す。
「それじゃ、全員搭乗せよ!」
『了解!』
指示に応じた部下達は各々の機体に乗り込み、キャノピーを閉めた。自分のヒヨコのノーズアートが施されているVF-1Sに乗り込むと、キャノピーを閉め、計器チェックに入る。異常がないと判断すると、出撃するため、カタパルトまで機体を進めた。
『キューケン中隊、直ちに発艦せよ』
誘導員が前脚をカタパルトのシャトルに固定し、耐熱甲板が上がると、エンジンの動作確認を行う。これも異常なしと判断すれば、熱核反応ターボエンジンを噴かせる。管制官から発艦の許可を貰うと、カタパルトを操作する班にハンドサインを送った。
サインを受け取った班はシャトルを前進させるスイッチを押す。シャトルが高速に動き始めると、軽いGが身体に掛かり、甲板から投げ出される。空中に放り出された機体はノズルを吹かせて風に乗り、水平飛行を取る。
部下達が乗るVF-1系統が続々と発艦する中、ザシャは全機がついてきているかどうかをサイドミラーで確認する。全機が発艦したのを確認すると、ザシャはモニターに表示された空域へ向かう。その際、自分の部下達に告げる。
「こちらキューケンリーダー。これからポイントG-6の偵察飛行に移る」
そう告げてから機体を空域へ向かわせると、部下達も後へ続いていく。目標に向かう中、自分が率いる混成部隊に属する部下達の名前を確認するため、名簿に目を通す。部下全員の名前を覚えた後、部下達が乗り込む機種を確認した。
まずは数が多いチェリー、千鶴、柿崎、晃、レイが乗るVF-1A。通称三本角のVF-1R。本人が報告しなかった為、寝込んでいる間に小隊長に昇格していたペトラが乗り込むVF-1J。早期警戒管制機や電子戦機型であるレドームを搭載したVE-1エリントシーカー、副座席であり、探知・分析のオペレーターが搭乗している。
名前と機種の確認を終えると、担当空域へ飛んだ。
一方のトレーラーで合流地点へ急いでいたマリ達は、進行方向に行軍中の連邦軍の機甲部隊を確認した。数は大隊規模であり、中には巨大クラスに入る恐竜型ゾイドゴジュラスが居た。
「大型反応確認。恐竜型巨大ゾイドゴジュラスです!」
「ご、ゴジュラス・・・!今の戦力ではとても・・・」
通信士からの報告に、羽瀬川は勝率がゼロに限りなく近いことを察した。今まで相手にはしなかったが、相手がヘリック共和国の象徴となっているゴジュラスともなると、ライガー・ゼロとジムⅡ二機では厳しくなる。迂回して別ルートから集結ポイントへ向かおうとしたが、マリが突然席から立ち上がり、格納庫へ向かっていく。
「少佐、何処へ向かわれるのですか?!」
「なにって、あいつ等片付けて来んのよ」
「幾ら貴方一人でも正規軍相手では無理では!?」
羽瀬川はマリが一人で大隊規模の敵部隊と戦うつもりだと察し、止めに掛かる。
「はぁ?あんなの、この前戦った連中と比べれば余裕よ」
「ちょっと!比べてる訳じゃ!」
止めようとする羽瀬川の声を聞かず、マリは格納庫へ向かった。
しかし、彼女が乗る機体はまた変わった外装をしたライガー・ゼロだった。
「あれ、また変わってる・・・?」
濃い青色の外部装甲では無く、以下にも格闘戦仕様のオレンジ色の塗装で、ブレードが多数搭載された外装が取り付けられていた。これを見たマリは、直ぐに整備兵に問う。
「ちょっと、私のライガー・ゼロ。なんか刃物が沢山付いたオレンジ色になってるんだけど!」
「こ、これは、シュナイダーユニットと言う物です!」
「シュナイダー?また勝手に変なの付けちゃって」
基地から盗んできた物を、自分の物と豪語するマリは、自分の許可も得ずに勝手に装備を付ける事に苛立っていた。そんな彼女の元に、無断で装備を付けた本人がやって来る。
「気に入って貰えてないようですが・・・」
カチヤが来たので、気付いたマリは振り替える。
「当たり前よ。でっ、あいつ等を一掃できる装備なの?」
「多分、練度の高い傭兵部隊と戦って生き残った少佐なら出来ます。ゴジュラスが居る敵部隊相手では、保証は出来ませんが・・・」
「そう。まぁ、あんな雑魚共、私一人で余裕よ!」
まるで自分が敵わないかのような物言いをするカチヤに対し、マリは少し苛つき、当たるように彼女に告げてからライガー・ゼロシュナイダーに乗り込んだ。ハッチの近くまで機体を進め、ハッチを開けるよう操縦室に告げる。
「ハッチ、開けて!」
『正気ですか!?相手は一個大隊ですよ!ゴジュラス付きの!』
「あんなデカイの、余裕だから。ほら、ハッチ開けて!」
『もう、知りませんよ!後で助けて何て言ったって、助けませんからね!』
トレーラーから出て、敵の部隊と交戦しようとするマリをまた止める羽瀬川であったが、威圧感に圧され、ハッチを開けた。そこから背中のイオンブースターを噴かせ、行軍中の敵部隊へ強襲を掛ける。真後ろから仕掛けてきたので、流石に敵に気付かれてしまう。
「レーダーに反応、地上にアンノウンを捕捉。6時方向よりこちらに接近!数は一機です」
「一機だと?何処の馬鹿だか知らんが、威嚇射撃で警告でもしておけ!」
『了解!』
指揮車両に居る大隊長は、レーダー手からの接近してくるマリのライガー・ゼロシュナイダーの存在を知り、威嚇射撃でもして追い払うよう指示する。直ちにカノントータスが威嚇射撃を行う。もちろん、威嚇射撃であるので外れているが、マリは威嚇に応じずに敵本隊への突撃を続行した。
『アンノウン、威嚇射撃に応じず!こちらに尚も接近!』
「イカれた奴だ・・・殺せ!」
威嚇射撃に応じなかったマリに対し指揮官は、今度は確実に当てるよう指示を出す。直ちに傘下の中隊はこれに応じ、火力をマリのシュナイダーに集中させた。
機銃や砲弾、ミサイル、リニア、ビームが雨のように降り注いでくるが、彼女は巧みに機体を操作してこれを避けていく。大隊規模の機動兵器群が集中砲火を浴びせたのに対し、どれもこれもが容易に回避されたので、パイロット達は恐れ戦いた。
相手が動揺して陣形を乱している隙に、レーザーブレードを展開してから後衛部隊に接近し、ロングレンジキャノンを撃ってくるコマンドウルフACを斬る。一機を切ればもう一機も斬り、切断された敵機の残骸を増やしていく。次々と倒される友軍機を見て、更に動揺を覚え、軽い混乱状態に陥る。
『う、うわぁぁぁ!!来るな!来るな!!』
『落ち着け35番機!敵は4時方向から来る!!』
各部隊長が部隊長に落ち着くよう指示を出すが、ブレードで次々と切り裂かれ、クローでも倒されてしまう。レーダーから続々と味方機が消え、大隊長も焦りを見せる。敵部隊を狩るマリは、今相手にしている最新式の陸戦用機動兵器を持つ敵機甲部隊に物足りなさを感じる。
「前に戦った連中と手応えが全然しない・・・動きは統率されてるけど、型の古いのばっかり使ってた連中とはえらい違いだわ」
アロザウラーを切り裂いてから、短縮型のドッズライフルを撃ってくる二機のアデルマークⅡに接近する。二機とも同時に胴体を切断すると、情報にはなかったストライクダガーの上半身に昆虫を彷彿させる六本足の下半身を付けたモビルアーマーゲルスゲーに飛び掛かった。
両手に持ったビームライフルを飛び掛かってくるシュナイダーへ向けて連発するが、全く当たらず、懐に入られてしまう。両前足で串刺しにしようとするも、頭部のブレードで両足が切り落とされ、逆に串刺しにされる。爆発寸前のゲルスゲーがブレードを引き抜くと、次の獲物へ標的を定める。
「クソッ、これ以上はやらせんぞ!」
次々とシュナイダーに斬り捨てられていく味方機を見て、ゴジュラスに乗る大尉の位を持つパイロットはマリに立ち向かう。スコープドックや61式戦車を踏み潰していたマリは、ゴジュラスの接近を警告音で察知する。
「来たわね・・・!」
シュナイダーの首をゴジュラスが来る方向に向けさせ、モニターに映る恐竜型を確認してから声を出す。ゴジュラスが居る方向に全身を向け、頭部のブレードを仕舞い、背中のブレードを展開して突撃するが、腹部から70㎜機関砲や右腕と左腕のレーザーガンやビームガンによる弾幕で突撃を断念させられる。突撃から逃げに徹したマリのシュナイダーを見て、ゴジュラスに乗る大尉は弾幕を激しくしながら追い掛け始める。
「そら、逃げろ、逃げろ!この針猫目!!」
機関砲やレーザーやビームを撃ちつつ、逃げるマリのシュナイダーを追い込もうとする大尉であったが、シュナイダーはEシールドと呼ばれるエネルギーシールドを展開して弾幕を防いでいた。これを見た大尉は激昂し、接近戦で仕留めよう考えた。
「Eシールドだと!?ふざけやがって!クラッシャークローで引き千切ってやる!!」
ゴジュラスの攻撃の中で破壊力の高いクラッシャークローで仕留めようと、防御態勢を取るシュナイダーに攻撃を続けながら接近した。相手はゴジュラスの装甲と攻撃力に劣るが、機動力と性能は天と地の差である。動かずに防御に徹するシュナイダーに接近する大尉が乗るゴジュラスであったが、マリはライガー・ゼロシュナイダーが誇る必殺の大技を敵のゴジュラスに撃ち込もうとしていた。
「来る・・・!あの腕を降ろしてからの勝負・・・!」
向かってくる恐竜に対してマリは、攻撃のタイミングを待っている。数十秒後にはチャンスが到来し、ゴジュラスが撃つのを止めて腕を振り下ろそうとした瞬間、シールドを切り、前足で地面を蹴って後ろへ飛んで下がり、頭部のブレードを展開した。
「しまった!?」
大尉が回避行動を取るが、間に合わず、ゴジュラスの腹部に五本の刃が突き刺さった。
突き刺されたゴジュラスは断末魔を上げた後、機能を停止した。頭部の五本のブレードを引き抜けば、26mにも及ぶ巨体は地面に倒れ込み、その屍を晒した。キャノピーを無理矢理こじ開けた大尉は、ゴジュラスから一目散に離れる。
「他には・・・?」
次なる獲物を探すマリのシュナイダーであったが、ゴジュラスを倒した彼女の強さを間近で目撃した他の者達は、戦って全滅するのがオチだと判断し、脱出したパイロットや生存者達を回収して撤退を始めた。逃げるように撤退する連邦軍の部隊を見たマリは、拍子抜けして両手に頭を乗せ、シートに寝転ぶ。
「あ~あ、期待して損しちゃった。こいつ等雑魚過ぎでしょ」
モニターから映し出される蜘蛛の子散らすように逃げる連邦軍の機甲部隊を「雑魚」と貶すと、戦闘が終わったことを羽瀬川達に伝える。
「終わったわよ。あいつ等、ゴジュラスと人間蜘蛛みたいなのを倒すと逃げちゃった」
『敵の殲滅してくれて感謝します。それは貴方が強すぎるからですよ・・・』
「あら、そうなの?私だけでそこらの敵を殲滅できそうね」
周囲の安全を一人で確保したマリにそう告げると、マリはこの辺りの敵を全ての自分一人だけで排除できそうだと豪語する。次に羽瀬川は味方と交信が取れた事を告げた。
『ツェルベルスとの交信が取れました。直ぐにトレーラーを回収する輸送機を手配してくれるそうですが、到着は今から二時間後。貴方もついてきますか?』
「ちょっと早いわね。私は良いわ・・・ライガー・ゼロを元の状態に戻したら、そこらで適当に暴れて注意を引いておくから。データ回しといて」
マクロス級要塞艦ツェルベルスからトレーラーを収容する輸送機が手配されると告げる羽瀬川であったが、マリは囮になると言って告げてそれを断る。
『えっ、それじゃ・・・少佐が・・・』
「良いから、良いから。私強いし、この辺りの連中は雑魚みたいだから、一人で余裕よ、余裕」
意気込むマリに、これ以上説得しても無駄と判断した羽瀬川は諦め、彼女が囮になることを許可した。
『分かりました、上にはそう伝えておきます。本当に宜しいのですか?』
「フン、ばーか、私がやられるわけ無いでしょうが。まだまだやることは沢山あるんだから」
不安そうな表情を浮かべ、再度羽瀬川はマリに問う。その質問にマリは、鼻で笑って答えた。
彼女は補給と換装のためにトレーラーへ戻る。トレーラーへ戻れば、幻想日シュナイダーから最初に拾った時の白い外装への取り替えが行われている。何故、高速戦闘仕様のイェーガーではなく、ノーマルを選ぶのかをカチヤは、ドリンクを口にしているマリに聞く。
「あの、囮ならイェーガーの方が良いのでは?」
「これはこれで扱いやすいし、追加装備も取り付けやすいから、これで良いの」
「は、はぁ・・・」
マリのこだわりを理解できないカチヤは、少し理解できないでいた。数々のエースパイロット達は自分が使いやすいように機体をカスタマイズする物だが、マリもエースパイロット同様の考えを持つ人物だろう。そう思ったカチヤは敬礼してから作業へと戻った。
元の外装へ戻されたライガー・ゼロは、連邦軍か現地軍から横流しされたのか、闇市に流れている武装が無理矢理取り付けられている。武装は離脱が可能なほどの重量で抑えられており、余り重武装とは言えず、どちらかと言えば中間に入る位置だ。
「取り付け作業終わりました!」
取り付けが終われば、マリはライガー・ゼロに再び乗り込む。キャノピーを閉めると、通信用モニターに羽瀬川の顔が映る。
『では、無事に合流ポイントで再開しましょう』
「えぇ、そっちこそ。解放された人達、頼んだわよ」
用件を告げて軽い敬礼を済ませた後、モニターの映像は消え、再びハッチが開かれた。そこから飛び出たマリのライガー・ゼロは、地図に表示された対空陣地の破壊や野戦航空基地の襲撃に向かう。
現時点でのマリのライガー・ゼロの兵装だが、ロングレンジライフルにミサイルポッド、対空機関砲、スモークチャージャーなどのあり合わせで出来ている。無論のこと、それらの兵装は強制解除が可能である。
まずは近い場所にある対空自走砲を片付けるべく、マリのライガー・ゼロは雄叫びを上げながら標的に向かって走った。
その頃、担当空域での偵察飛行を終えたザシャが率いる
流石にツェルベルスに帰還する物だと思っていたパイロットが不満を漏らす。
『あいつ等、俺達は怪我から復帰したばかりだって言うのに』
『そうよ。この前の撤退戦で戦ってないからって、こんな旧型に乗せてこき使うなんて・・・』
口々に不満を垂らす隊員達を宥めるため、ザシャは全機にチャンネルを合わせ、隊員達に伝える。
「文句言わないで、私達が飛んでるのは敵地なんだから。それに休んだ分も頑張らないと、自分達を逃がすために戦ってくれた戦友達に迷惑掛けちゃう」
『まぁ・・・それもそうですけど・・・』
『なーに、こんな惑星で脱走して連邦軍に寝返ろうとしても、どうせ殺されるのが関の山さ。投降したって、あいつ等撃墜数欲しさに撃ってくるしな。傭兵に化けたって、いつ基地に帰れるかどうか分からないし』
『それもそうだな・・・隊長の言うとおりだ・・・』
熱で寝込んでいて説得力がないと思うザシャであったが、柿崎が上手くフォローしてくれたので、脱走者を出さずに済んだ。フォローしてくれた柿崎に礼を言う。
「ありがとう、柿崎君」
『えっ?い、いや、隊長を補うのは、下士官としての務めなんたり・・・』
「フフフ、変なの」
モニターで礼を言われて顔を赤くして恥ずかしがる柿崎を見て、小さく笑ってから聞こえないように口にする。それから数十分後、合流ポイントで予定時刻通りに大型輸送機と護衛機四機と合流。制式採用機四機と共に輸送機の護衛の任に付いた。
ザシャ機を含める中隊本部四機が輸送機の上を飛び、他の三機編成の四つの小隊は輸送機を囲むように飛ぶ。護衛の最中、VF-117を見た柿崎は羨ましがる。
「あぁ、こっちにVF-117を回して欲しかったな・・・」
『柿崎、文句は言わない』
「ちぇ、分かってらい!」
千鶴から注意された後、キャノピーから肉眼での周囲警戒に当たった。
それから一時間ほどが経ち、敵に察知されることもなく輸送機が回収ポイントまで到着した。もちろん、マリが輸送機を射程距離に捕らえることが出来る対空陣地や野戦航空基地を襲撃しているおかげである。二台のトレーラーを回収する大型輸送機は、VTOL型にもなり、ある程度の場所なら着陸が可能だ。
大型輸送機が着陸すると、護衛のVF-117四機もバトロイド形態に変形して地面に足を付ける。輸送機が後部ハッチを開けば、二機のジムⅡと共にトレーラー二台の回収を始める。回収作業中、ザシャの中隊は周辺を上空から警戒に当たった。
「あの二台目のトレーラー、何を積んでんだ?」
柿崎は二両目のトレーラーの中身をどんなものか気になり、それを口にする。中身はマリが解放した奴隷達だが、輸送機を「ただ護衛しろ」と言われたザシャ達には中身は分からない。
回収を終えると、輸送機が護衛機と共に上空へ飛び、ツェルベルス目指して帰還の航路を進み始める。ザシャの中隊も帰還の航路に乗り、輸送機の護衛を続行する。二両目のトレーラーの中身が気になったチェリーは、輸送機のパイロットに通信で問う。
「あの、二両目のトレーラーの中身なのですが・・・何が入っていたのですか?」
その問いに対し、パイロットは即座に返してくる。
『解放された奴隷よ、エース級の少佐が助けたんだって。全く、ここを何処だと思ってるのやら・・・ヒーローごっこは他所でやってよね』
「で、でも、あのまま放置して、私達だけこの星から脱出したって・・・」
パイロットはマリが行った奴隷解放を偽善として否定するが、チェリーはマリの行った行動を賛美するような発言を取る。
『はぁ・・・これだからお子ちゃまは・・・まぁ良いわ、これ以上言い争うと、任務に支障が来ちゃうから』
「・・・偽善者扱いされちゃった・・・」
これ以上言えば、チェリーとの言い争うになると思ったパイロットは中断し、通信を切る。チェリーは相手に偽善者扱いされた事で、表情を暗くする。それからツェルベルスまで後半分の距離までになった時、味方の反応しか映ってないレーダーに、識別反応がないアンノウンが映った。
『アンノウン来襲!北東から急速接近!!』
「全機警戒体勢!敵の接近に備えて!」
早期警戒機からアンノウンの接近の方が知らされると、ザシャは全機に警戒するよう告げる。その言葉で全員が警戒態勢に入り、レーダーでアンノウンが近付いてくるのを確認し、来る方向に視線を向ける。
アンノウンの接近に対処の構えを見せるキューケン中隊であったが、そんな時に敵である現地軍の航空部隊が来る。
「あぁこんな時に・・・!西南より現地軍の航空部隊がこちらへ向けて接近中!数は、嘘!?五十機以上です!!」
「ご、五十機って!?大編隊じゃない!!」
VE-1のオペレーターが五十機以上物の航空兵器が接近を伝えれば、パイロットは驚きの声を上げる。この報は部隊全体に広がり、更なる脅威が現れたことで、ザシャは顔を真っ青にさせた。
『アンノウンに続いて現地軍の航空兵器五十機・・・!』
『どうする隊長。このままじゃどっち共に攻撃を受けるよ』
「あぁ、うん。全機、迎撃態勢!」
『了解。こちらエンデヴァー小隊、迎撃態勢に移る!』
『了解!』
映像に後方に視線を向ける柿崎の声が通信機から聞こえた後、ペトラはチェリーや千鶴を率いて西方から来る敵の大編隊を他の小隊と共に迎撃態勢に入る。
約三小隊ほどが迎撃態勢に入る中、自分は傘下の三機に残った小隊と共に護衛するよう告げた後、高速でこちらに向かってくるアンノウンに対処することにした。
機首をアンノウンの居る渓谷方面へ向けると、レーダーに目線を向ける。輸送機から離れれば、アンノウンは真っ直ぐこっちに向かってくる。どうやらザシャが目的らしい。
「私が標的・・・?あっ、敵機!数は八機・・・!」
向かってくるアンノウンに目を取られていると、敵の反応が八つ以上も現れる。今のザシャなら、相手にエースが居なければ容易に全機撃墜できるが、アンノウンとの戦いの前に弾薬を浪費してしまう。
かといってアンノウンとの戦闘中に乱入されても困る。どうするか摸作している内に、現地軍のプテラス八機と鉢合わせしてしまった。
獲物を見付けた八機の黒い塗装のプテラスはザシャのVF-1Sに襲い掛かる。
『こちらエグザクター2、エネミータリホー!あのF-14擬きを攻撃・・・うわぁぁぁぁ!!』
「やられた!九時方向よりアンノウンが急速接近!各機散会しろ!!」
先にザシャのVF-1Sを捕捉したプテラスが攻撃に移ろうとしたが、アンノウンから放たれたビームを受け、撃墜された。他の七機は散会して第二射目のビームを回避したが、瞬く間に三機が撃ち落とされる。
アンノウンの正体は、デルタガンダムと呼ばれる百式というMSの原型機だ。可変機であり、この機体を開発した会社が、デルタガンダムを元に量産を目的として開発した同じ可変MSのデルタプラスと呼ばれる試作機がある。
本来は可変機としての性能は劣っている筈だが、パイロットの腕もあってか、限界まで引き出されている。塗装も元の金色から黒色になっており、機体の動きからしてパイロットの性格を表しているような感じだ。
MS形態になったデルタガンダムは、飛んできた空対空ミサイルを頭部のバルカン砲で迎撃すると、四機一隊で接近してくるプテラスを全機をビームライフルの早撃ちで撃ち落とす。それを見たザシャは、動きでガラヤの町で自分を襲ってきたVF-22SシュトゥルムフォーゲルⅡのパイロットだと確信する。
「あ、あの機体は・・・!」
『その動き、その飛び方・・・やはりお前だったか・・・さぁ、リベンジマッチだ。私の顔に泥を塗った罪、死んで詫びて貰うぞ!』
「はっ・・・?」
共同通信で問い掛けてきたパイロットは女性の声であったが、ザシャには身に覚えはなかった。
そのデルタガンダムのパイロットの正体は、あの大会荒らしの異名を取るニコラだ。VF-22でザシャに襲ってきた理由は、彼女が少女のような外見にありながらも自分より技量が高く、決勝戦では邪魔立てが入った物の、負けそうになり、それで顔に泥を塗られた為と言う小さい物であり、まるで負けず嫌いな幼い少女のような理由だった。
そんな理由で襲われ、大事なVF-25メサイアを撃破されたザシャは堪った物ではないだろう。目の前にいるニコラは機体をMA形態に変形させ、ザシャのVF-1Sに向けてビームライフルを連発してきた。自分の機体へ向けて飛んでくるビームに対し、操縦桿を巧みに動かし回避した。
ガウォーク形態になり、ガンポッドを数十発ほど撃ち込んで相手を怯ませると、下にある渓谷まで降下して岩陰に隠れる。バトロイド形態となって自分を探すデルタガンダムにミサイルをロックオンし、トリガーを引いてミサイルを発射する。背中の主翼から発射された四発のミサイルは敵機へ向けて飛んでいくが、相手はミサイルをバルカン砲で迎撃し、飛んできた方向からザシャの隠れ場所を割り出し、ビームを数発ほど撃ってきた。
隠れている岩を貫通して沸きの側をビームが掠める。ザシャは直ぐに爆発寸前の岩からファイター形態になって離れ、渓谷に入るが、敵も飛行形態に変形してビームを撃ちながら追ってきた。
「中々やるな・・・!」
ジグザグに動いて照準を絞らせないザシャのVF-1Sを見て、ニコラは楽しげな表情を浮かべ、照準にザシャの機体が重なったと同時にトリガーを引く。ビームは当たったが、擦れた程度であり、操縦に支障はない。ニコラのデルタガンダムよりやや上に上昇させれば、後緑フラップを下げてスピードを落とし、敵機の後ろへ付けば、機首の下にある頭部四門レーザー機銃を敵機へ向け、ガンポッドと共に撃ち始める。
やはり可変MSにはフラップは搭載されておらず、直撃は逸れた物の、胴体に何発か受けてしまう。装甲は機関砲の120㎜弾でも弾き返すほどの堅さだが、翼竜型大型ゾイドのサラマンダー対策に徹甲弾が装填されている為か、突き刺さって煙を噴く。
「ちっ、所詮は戦闘機の真似をするために作られた可変MSか!」
変形するMSの悪口を言った後、機体をMS型に変形させ、左手でビームサーベルを抜き、撃ってくるファイター形態のVF-1Sに斬り掛かる。
「わっ!?」
キャノピーから見えるサーベルを抜いて斬り掛かってくるデルタガンダムに驚いたザシャは、Gのレバーを引いて両足を開かせて逆加速を掛け、回避した。空かさずガウォーク形態に変形してガンポッドを撃ち込むが、相手は紙一重で回避してバルカン砲を撃ってくる。これをバトロイド形態に変形し、ガンポッドを敵機へ向けて撃ちながら落下する。
「うっ!この程度で!!」
真下から来る攻撃を盾で防ぎつつ、ニコラはVF-1Sを追おうとするが、ザシャは地表まで50mとなったところで攻撃を止め、ガウォーク形態に変形してマイクロミサイルを数発撃ち込み、撃った直後にファイター形態に変形させる。向かってくるミサイルの警告音を聞いたニコラは機体を飛行形態に変形させ、ブースターを全快にさせてミサイルを突っ切った。
小型空対空ミサイル群は目標を追うことが出来ずに互いに激突し、他のミサイルと共に誘爆した。数発分のミサイルの爆発の所為か、崖崩れが発生する。無論、彼女達には関係のない事であり、ドックファイトを続行する。
速度はやはり飛行形態のデルタガンダムの方が速く、ビームライフルの射程距離に捉えられてしまう。ロックオンされた警告音と共にVF-1Sにビームが撃ち込まれる。
「追い付かれた!」
キャノピー越しから飛行形態のデルタガンダムを確認すると、ザシャはまたフラップを下げて後ろへ回ろうとしたが、同じ手は通じず、MS形態に変形したデルタガンダムに取り付かれてしまった。
「しまった!?」
『これで!』
ビームサーベルを抜いて突き刺そうとするニコラであったが、ザシャは咄嗟の判断でまた両足を展開して逆噴射を掛け、デルタガンダムを引き剥がす。急ブレーキで引き剥がされたデルタガンダムは地面へ落下するが、バックパックのブースターで立て直し、追撃を続行する。
「まだ追ってくる!へっ?うわっ!?」
ニコラとのドックファイトで夢中になって、いつの間にか渓谷を抜けており、マリの攻撃目標の対象外である現地軍の野戦基地の近くまで来ていた。基地からの対空砲火の弾幕の嵐がザシャのVF-1Sとニコラのデルタガンダムに来る。所々掠めるが、彼女達の技量では、これくらい本気を出せば回避できる。
そこにMSやAT、ゾイドの対空射撃も加わり、更に弾幕が厚くなるが、ザシャとニコラは操縦桿を巧みに動かし、弾幕を神業の如く回避する。かの有名な世界で尤も多くの陸戦兵器を破壊したナチス・ドイツ空軍のルーデルでも確実に撃墜されるほどの弾幕であるが、彼は航空機を七機程が撃墜している程度なので、二人の腕前は三桁の航空機の撃墜数を誇るエースパイロット並である。
「邪魔だぁぁぁぁぁ!!!」
自分達に向けて砲火を集中してくる多数の敵機へ向け、ニコラはビームライフルを撃ち込む。一機、二機と瞬く間に十機以上がニコラの逆鱗に触れ、スクラップとなる。ビームサーベルで切断されて両断された機体もある。固定砲台や戦闘車両、戦闘ヘリに対してはバルカン砲で撃墜される。
「このままあの人に・・・キャッ!」
主力はニコラのデルタガンダムに集中しているが、ザシャのVF-1Sにも基地守備隊の攻撃が来る。数はニコラに向かっている主力ほどではないが、自分を殺すには十分な数だ。ミサイルを撃ち込んでから直ぐにバトロイド形態に変形して地面に火花を散らしながら着地すれば、視界に入る敵全てにガンポッドを撃ち込む。数十秒間目に入った敵を撃っていれば、動いているのは自分の機体だけとなる。
後ろから不意打ちを食らわそうとするATが居たが、ザシャに気付かれ、ガンポッドを撃ち込まれて撃破される。ここで動くのはザシャのVF-1Sだけだ。
「後は・・・!」
ニコラが居た方向に視線を向けると、集音機器から外から聞こえる戦闘音が聞こえなくなったのが分かった。
物の数秒で共通通信からニコラの声が聞こえてくる。
『さぁ、邪魔者は居なくなった。続きだ!』
「クッ・・・!」
ビームライフルを撃ちながら高速で接近してくるデルタガンダムの攻撃を回避しつつ、ガンポッドで反撃するザシャ。相手のニコラは、ガンポッドの弾幕を避けつつ接近してくる。
VF-1Sのありとあらゆる箇所にビームが擦れるが、直撃は避けているので戦闘続行は可能だ。相手も何発かガンポッドの弾を食らうも、デルタガンダムも直撃ではなく、こちらも戦闘続行は可能である。ニコラのデルタガンダムがザシャのVF-1Sまで到達すると、サーベルを抜いて斬り掛かってくる。
ザシャはそれを避けつつガンポッドを撃ち込むも、ニコラは直撃を与えさせる訳がない。ザシャも直撃ではない物の、左肩を斬りつけられた。頭部の四門レーザー機銃を浴びせるも、紙一重で回避され、一門切り落とされる。
両者至近距離で暫く交戦するが、この状況をザシャがミサイルを発射してニコラを怯ませ、離れさせることで脱し、直ぐさまガンポッドをデルタガンダムに撃ち込み、デルタガンダムに致命的な損傷を与える事に成功した。コクピットにまで破片が及び、ニコラは機体を飛行形態に変形させ、その場から逃亡する。
「ちっ!」
「逃がさない!」
機体に致命的なダメージを与えられたニコラは渓谷へと逃亡するが、ザシャはVF-1Sをファイター形態に変形させ、煙を噴くデルタガンダムを追撃する。彼女の機体もあちこち切り刻まれ、こちらも直撃とは行かない物の、自動修復が間に合っていない様子だった。
後ろを見せる敵に対し、今まで微かに感じていた躊躇いもなしにロックオンしてトリガーを引いた。この時のザシャは興奮しており、冷静さを失って十代前半で大学まで飛び級した頭脳は、ただ相手をどうやって撃ち落とせるしか無い。発射された八発ほどのミサイルは、煙を噴く飛行形態のデルタガンダムへ向けて飛んでいく。
「クソッ!私は負けるのか!!」
モニターに映るザシャのVF-1Sに向けて拳を振り下ろすと、自機に迫ってくるミサイルを避けるため、取っておいたフレアをばらまいた。ばかまかれたフレアの数はミサイルより多く、ミサイルはフレアを標的と誤認してそちらに向かい、着弾して爆発する。八発分の爆風が巻き起こる中、ザシャは煙を噴く標的を見失う事は無かった。
「渓谷に!」
煙を噴くデルタガンダムの逃げた先を確認したザシャは、ガンポッドを撃ちながら追撃を続行する。渓谷で命がけの鬼ごっこをしている最中、高さ40m程の洞窟の中へニコラが逃げ込んだ。即座にザシャのVF-1Sも暗い洞窟へ入り、ライトを照らし、ガンポッドを構え、ニコラのデルタガンダムを探す。
洞窟の中は20mほどある人型兵器でも身を隠せる場所は幾らでもあり、何処から撃たれるか分からない。神経をすり減らしながら警戒していると、背中からビームとバルカン砲を連射する音が鳴り響いた。暗い洞窟の中で閃光と爆風が舞い上がり、ザシャのVF-1Sが見えなくなる。
「やった・・・!」
倒したと思ったニコラであったが、その直後に警告音が響き、煙の中からバルカン砲を数発ほど被弾したザシャのVF-1Sが現れ、ガンポッドを撃ち込んできた。持ち前の反射神経で回避するも、全弾回避は流石に出来ず、数発ほど被弾する。直ぐにビームを撃って反撃に出る。
ビームライフルを諸に受ければ一撃で撃破されるので、自分がローリングする感覚でバトロイド形態のVF-1Sを回転させ、ビームを回避した。追撃を掛けようと、ビームライフルを捨てたニコラのデルタガンダムがサーベルを抜いて斬り掛かってくる。
一振り、二振り、三振りとサーベルを振るが、擦れる程度で致命傷は与えられて等居ない。逆にガンポッドやレーザー機銃で被弾箇所を増やされていく。負けまいと頭部バルカン砲を撃つが、十秒ほどトリガーを引いたところで弾切れを起こした。それでもザシャの機体に被弾箇所を増やせる事に成功する。
唯一この暗い洞窟を照らすのはデルタガンダムのビームサーベルだけであり、ザシャはそれを頼りにニコラのデルタガンダムの位置を特定し、ガンポッドをそこへ向けて撃つ。閃光が洞窟を照らし、一進一退の交戦が続く中、ようやく決着の時が来た。勝者はニコラのデルタガンダムよりも性能が劣るザシャのVF-1Sバルキリーである。
VF-1Sの脇腹を斬られながらも、ガンポッドでデルタガンダムの頭を叩き折り、そこから胴体を何度も殴打して、機能停止まで追い込むことに成功した。何度も装甲の堅いデルタガンダムを殴り付けた所為で、ガンポッドはへし折れ、使い物にならなくなっていた。ガンポッドを捨てて拳で相手にトドメを刺そうとしたが、機体が限界を超えたのか、ザシャのVF-1Sは地面に倒れ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
倒れ込んだVF-1Sからサバイバル装備を持って降りたザシャは、戦闘の影響でバイザーが割れたヘルメットを脱ぎ捨て、呼吸を乱しながらニコラのデルタガンダムの元まで向かう。H&K社の短機関銃MP5の縮小型の
「どうした、殺すなら今の内だぞ・・・?」
「こんな瀕死の人・・・撃てないよ・・・」
「ふっ、つくづく甘い奴・・・だな・・・」
「っ!?」
ヘルメットを脱いで問うニコラに対し、ザシャは「瀕死の人間は殺せない」と答える。その答えを聞いたニコラは気を失い、機体から転げ落ちて地面に倒れ込む。それを見ていたザシャは鉛のように重い身体を動かし、ニコラの元へ駆け寄った。
緊急医療キットをこじ開け、直ぐにニコラの治療を開始する。元々彼女は看護師を目指していたので、医者ほどではないが、衛生兵ほどの応急処置は出来る。
「キャッ!」
気を失ったニコラの治療を行っている最中、真上に砲弾が掠めた。どうやら先程二人で壊滅させた野戦基地の生き残りが、ここを嗅ぎ付けて来たようだ。運が悪いことに嗅ぎ付けた敵はコマンドウルフであり、今の装備では二人とも纏めて殺されてしまう。
「ここで、死ぬ・・・!?」
『戦友達の仇だ!纏めてミンチに・・・』
一瞬死の覚悟をしたザシャは、重傷のニコラを庇うが、拡声器から聞こえてくるパイロットは言い終える前にコクピットをロケット弾らしき物で吹き飛ばされ、操縦者が居なくなったコマンドウルフはその場へ倒れ込む。
「へっ?」
死ぬと思っていたが、何者かに助けられたので、洞窟の入り口の方を見ると、そこには先程撃ったばかりのバズーカを抱えたMSジムの発展型であるジム・コマンド陸戦仕様が居た。一瞬味方だと思ったザシャであったが、洞窟に明かりを照らしながら入ってきたワルキューレ宇宙軍が持つ銃火器とは違う冷戦期の東西ドイツの銃火器を持ったドイツ国防軍陸軍の山岳装備の女性将兵達を見て、即座に味方ではないと判断する。
「動くな!」
HF G3A4やMPi-AK74Nの銃口を向けながら告げる女性将兵達に対し、ザシャは驚きの余り何の言葉を発することなく、大人しく両手を挙げて彼女等に降伏した。
散々死闘を繰り広げて、その結果がこれとは、流石の彼女も流石には予想できなかった。
重傷者のニコラと共に、ザシャは女兵士の集団と共に洞窟を出たのだった。
また詰め込みすぎた・・・
ゴジュラスがTVアニメ版並に扱いが酷い・・・
ザシャとニコラの戦闘シーン。「愛・おぼえてますか」を見た奴は分かるな?
sakuraさんが、現在お借りしているザシャの腕前は、ルーデルとハルトマン、マルセイユとバルクホルンのミックスだそうで・・・チャットで仰ってました。
これはもう、マックスもミリアもビックリやで・・・熱気バサラに追い着けそうな気がする・・・
通常のジェット戦闘機で、インチキ性能の機動兵器もぶっ壊しそうです。
つまりザシャ一人居るだけで、アルノドア・ゼロの火星のスーパーロボットと張り合えるのです。はい(超理論)。
こんな結末にして、sakuraさん、マジでごめんなさい(スライディング土下座)。