復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
ISAって近未来の軍隊なのに、現代的な戦闘をするんだね。
ザシャがニコラと共に謎の武装集団に捕まった後、ここ惑星アヌビスで大きな変化が起きていた。
政府機能がある議事堂にて、統合連邦軍の歩兵科の中で尤も最強の兵科である機動歩兵が各地に展開しており、現地軍の議事堂守備隊を瞬く間に制圧し、議事堂に突入寸前まで迫っている。議事堂の出入り口へ向け、グレネードランチャーを撃ち込み、議事堂内部へ突入する。
「連邦軍だ!直ちに迎撃、ぐわっ!」
将校が迎撃命令を出す前に機動歩兵のアサルトライフルの弾丸を受け、胸に大穴を受けて絶命する。他の将校が指揮を変わるが、他の将兵諸共機動歩兵に制圧される。アサルトライフルや機関銃の銃声が鳴り止めば、辺り一面が硝煙と血の臭いで溢れかえり、肉塊と化した現地軍の将兵達の姿があった。
「相変わらずえぐい光景だな・・・」
一人の機動歩兵がこの光景のありのままの事を言った後、部隊長がハンドサインで全身の合図を出す。機動歩兵が議事堂の奥へ進んでいく間、それを待ち構えるように守備隊の将兵達が重機関銃やロケットランチャーを構えていた。
無論、突入した機動歩兵の部隊は待ち伏せがあるなど分かり切っており、それでも足を止めなかった。
何故、こうも彼等が前進するのか?
それは窓からラベリングで突入してきたブルパップ式のM82アサルトライフルやMP5に似たLS57サブマシンガン、M240に似たM224-1Aライトマシンガンを持った特殊作戦部隊のような装備の兵士達、
瞬く間に守備隊の兵士達を制圧し、部屋から出て来た敵兵すら、数秒単位で制圧した。機動歩兵と合流したISAの兵士達は、室内戦では効果的に適用であるCQBを取り、出て来る敵兵を倒しながら、政府関係者の居るエリアまで前進する。
三分で政府要人用の退避シェルターまで到着し、核攻撃に耐えられるハッチをハッキング用の機器で開け始めた。その間に機器を操作する兵士が無防備になるため、各隊員と機動歩兵が兵士を守るような陣形を取る。そんな彼等の元に、遠く離れた安全な地にいる総司令官が複数の護衛とスーツ姿の禿頭の中年と共に現れた。
総司令官を見た一同は、銃を構えるのを止めて一斉に敬礼する。敬意を表する彼等に対して、総司令官は気を緩めるよう告げる。
「ご苦労。脅威はあのシェルター以外、全て制圧した」
総司令官は左手に持ったホログラムから、首都周辺にいる黒煙の上がる守備隊の機動兵器の残骸の映像を指揮官に見せる。隣には、ISAのマークを付けたジェガンやダークダガーL、狐型中型ゾイドシャドーフォックス、オオカミ型大型ゾイドケーニッヒウルフ、特殊作戦装備のスコープドックが映っていた。
「君達機動歩兵とISAは強いな・・・もはや敵無しだ。あの威張り腐った連邦軍や連合軍とはえらい違いだ」
「はぁ・・・お褒めの言葉、有り難く受け取らせて頂きます・・・」
機動歩兵とISAの指揮官に対し、ホログラムを見せる総司令官が皮肉混じらせて彼等を褒めると、指揮官達は少し言葉を濁らせてから返答する。期待した返答が来なかった為、総司令官は損した様な表情を浮かべれば、丁度ロックが解除される。
「閣下、シェルターのハッチ、解除完了です」
「ご苦労。では、顔を拝みに行くか」
「あぁ、これでアヌビスは変わる」
ハッキングをしていた兵士が敬礼して報告すると、総司令官は内部にいる政府要人の元へ向かうと口にすれば、隣にいた禿頭の中年は、まるでこの惑星の支配者が自分になるような台詞を吐き、総司令官と護衛と共にシェルターの中へ入っていく。そんな彼等を出迎えたのは、シークレットサービスの拳銃であった。
入ってきた彼等に対し、家族連れの国家元首は酷く怒鳴る。
「き、貴様等!これはどういうつもりだ!?」
「これはどういうつもりと・・・?腐敗政権の打倒ですよ。隣にいる次期国家元首がね」
国家元首が指差しながら怒鳴り散らすように問えば、総司令官は隣にいる禿頭の男に手を翳しながら説明する。その男は前に出て、堂々と国家元首へ向けて告げる。
「そうだ。私は地方民のために立ち上がったアヌビス共和国次期国家元首兼大統領、チャールド・マーコフだ!貴方を国家反逆罪並び、スパイ容疑でこの場での死刑を言い渡す!」
「なにを勝手なことを!うぁ・・・!?」
そう宣言するチャールドに対し、国家元首は怒りを露わにしながら掴み掛かろうとするが、彼が取り出した拳銃で頭を撃たれ、床に倒れて絶命する。それを見た国家元首の妻が悲鳴を上げ、逃げようとしたが、チャールドに射殺された。同じくシェルターに避難していた政府要人と議員達は「自分達は脅されていた」と口々に無罪を主張する。
「ま、待ってくれ!我々は彼に脅されていた、ブハッ!?」
「黙れ、お前達も死刑だ。罪状は機密漏洩に資源の独占!我々アヌビスの国民達を脅かすテロリストと関係を持ったこと!十分な理由だ」
一人の要人を射殺した後、チャールドが罪状を突き付けるが、要人達はボロを出しながらも命乞いを始める。
「こ、殺さないでくれ!ダイヤで手をうとう!ダイヤなら幾らでも・・・ギャッ!」
「腐敗した要人は不要だ。これからは私の政権がこの惑星を動かす。貴様等は必要のない存在だ!」
「う、うわぁ、よ、止せ!グワッ!」
命乞いをする要人達に吐き捨てたチャールドは、ISAの機関銃手から軽機関銃を取り上げ、それを要人達に向けて撃った。
連続した銃声が鳴り響き、政府要人と議員達は蜂の巣となり、バタバタと床へ倒れていく。銃声が止む頃には、シェルターで立っている者はチャールドと連邦軍の者達だけであった。
「これで掃除は完了だ」
「おめでとう。これで君はこの惑星の新たな支配者だ」
「ありがとう。閣下、それでは早速、手始めに我が軍と貴方の指揮下の部隊を動員して、”先住民共”が立て籠もるダイヤモンド地方に進軍するのはどうですかな?」
機関銃をISAの機関銃手に返したチャールドはそう口にする。他の将兵達は、チャールドが行った行動を見て驚きを隠せないで居たが、隣にいる総司令官は新たなアヌビスの支配者となった彼を祝す。それを耳にしたチャールドは礼を言った後、恐ろしげな笑みを浮かべ、自分が予てから国家元首になった時の計画を総司令官に告げた。
「ほぅ、それは・・・詳しくお聞かせ願いましょう。大統領閣下」
総司令官は最初から意味が分かっていたようで、良からぬ事を企む笑みを浮かべ、チャールドと共にこの部屋を後にした。
一方、謎の武装集団に連行かれたザシャは、彼女等の拠点とされる場所へ連れて行かれ、牢屋へ放り込まれていた。手錠も掛けられず、パイロットスーツのまま牢に放り込まれた彼女は、囚われる以前に治療を行っていたニコラの様態を古めかしい突撃銃を抱える看守に問う。
「あの、あの長身の人は・・・?」
「知らん!」
Stg44を持ち、外にいる女性将兵達と同じ軍服を着た少女の看守は、そう答えて銃口をザシャへ向ける。まだあどけなさが残る少女の顔だが、表情はいつでも自分を撃てるような構えだ。それに怯えたザシャは後退り、ベッドへ向かおうとしたが、先客が居たそうで、その存在に気付く。
「あの、何方ですか・・・?」
「私よ。わ・た・し」
「あ、貴方は・・・!?」
声でザシャは、先客がある人物だと直ぐに分かった。
正体は血塗れの戦闘服を着た見慣れた美女だ。一度見たら忘れそうもない外見に自分と同じドイツ系ゲルマン人、美しい金髪、宝石のように輝く碧眼、血色の良い白い肌と肉付きの良い体付き。マリ・ヴァセレートがそこに居た。
先客の正体がマリだと分かったザシャは、また何かされるかと思って警戒する。その反応を見ていた彼女はクスクスと笑い、警戒するザシャに落ち着くように告げる。
「そんなに警戒しなくても良いわよ、本当に何にもしないから・・・」
マリは警戒するザシャに告げるが、どうやら信用されていないらしい。彼女にとって愛くるしい反応を見せるザシャに、自分達をここに捉えている武装集団の正体を明かした。
「あいつ等、この惑星の先住民よ。正確には先に入植したけどね」
「入植者ってことは、つまり・・・私達と共存しないメガミ人、百合帝国の残党勢力ですか?」
直ぐにザシャは、ここに居る武装した女性や少女達、つまりメガミ人の武装勢力が百合帝国軍の残党勢力と分かった。
何故、自分等と共存しないメガミ人を、ワルキューレが百合帝国の残党として決め付けるのかは、破壊活動を行うメガミ人武装勢力に協力するからである。ただし、神聖百合帝国が崩壊してから領域内で行われた十年余りに続く残党軍と戦いが終わって以降、ワルキューレと残党軍は一発の銃弾はおろか、その残党狩りを行うワルキューレが残党軍に兵器や人員を横流し、私兵として飼い慣らしているという始末だ。
「そうそう。連中がそこらの町やここの軍隊に一人も居ないと察する辺り、後から来たあの欲深な人間に負け続けてここまで追い込まれたって事ね。全く、ワルキューレに入ってれば、こんな事にならずに済んだのに」
マリが言うように、始めにこの惑星に降り立った時、古戦場や放棄された砦に転がっていた亡骸は殆どがメガミ人だ。どうやら、後から来た住民との戦争で彼女等が敗北を重ね続け、ここまで追い込まれたそうだ。
惑星アヌビスの歴史をある程度理解した後、次にどうやってこの状況を切り抜けるかの課題に入る。だが、それを考える必要は無かったようだ。牢の鍵が開けられ、これまた古めかしい短機関銃であるMP40に、木製ストックのMP41を持ち、シュタールヘルメットを被る二人の百合帝国残党兵と、制帽を被った一人の将校が入ってくる。
「出ろ。大佐がお待ちだ」
腰のガンフォルスターにワルサーP38自動拳銃が差し込んだ将校が告げれば、マリとザシャはその指示に従って牢から出る。外へ出れば、焚き火を取るザシャを捕らえた将兵達が居た。
元女帝のマリが目の前にいるが、信用を失い、腰まである髪を短めに切っているので、誰も彼女が自分達の祖国の固定であることに気付かなかったようだ。
焚き火を取っている辺り、ここが気温の低い山中であることが分かり、二人の身体に冷気が襲う。身体を丸めて寒さを凌ぎ、マリは前を歩く将校に厚着を寄こすよう言う。
「ちょっと、厚着とか貸してくれないの?」
凍えながら問うも、将校は無視した。優しさも欠片もない前を歩く女将校に対し、カッとなったマリは飛び掛かろうとしたが、周りにいる小火器を持った山岳装備の将兵達が睨みを利かせているため、迂闊に手を出すことが出来なかった。
仕方なく指示に従い、何をされるか分からずに震えるザシャと共に、大佐が居ると思われる指揮所まで向かう。途中、マリは彼女を落ち着かせる為、ザシャに話し掛ける。話題は「どういう風に捕まったのか」だ。
「ねぇ、どうやって捕まったの?」
「小官は、現地軍の攻撃から助けられて・・・」
「フムフム。私は適当に空港や対空基地を潰してたらいきなりこいつ等のロボットが現れてさ、それで捕まった訳」
「そうですか・・・輸送機が無事なのは貴方のおかげでしたか」
「無駄口を叩くな!」
マリが捕まった経緯を聞き、輸送機を護衛している最中、一発の対空ミサイルが飛んでこなかった事に納得して答えると、後ろにいる短機関銃の銃口を向ける若いメガミ人の兵士が会話を強制的に終了させる。それにマリは舌打ちすると、その兵士は睨みを利かせ、彼女達を指揮所まで連行した。
大佐が居ると思われる指揮所まで到着すると、出入り口に立つ、自分等に向けている同じMP40を持つ警備兵が退いた後、指揮所の中へ入った。
「連れて参りました」
「ご苦労、下がってよし」
「はっ!」
大佐と思われる執務机の椅子に座る左眼に眼帯を付けた短髪の女性に、将校は連れてきたことを報告すれば、彼女から「下がれ」と告げられ、ブーツの踵を鳴らしてから後ろの兵士達と共に指揮所を出る。三人だけとなった指揮所内部で、先に口を開いたのは大佐だ。
「お二方の戦闘を安全な場所から拝見させていただいた。恐ろしい技量の高さだ、お二方で三個軍団以上の戦闘力があるな」
二人の技量の高さを過大評価する大佐であるが、人殺しの天才と勝手に呼ばれたザシャは、とても良い気分にはなれない。そんな彼女に、マリは呼んだ理由を問う。
「お世辞は良いから、どうして私達を呼んだのか教えなさいよ」
「そうだったな。では、これを見てくれ」
マリに理由を問われたので、大佐は資料を二人の前に投げた。それを手に取ったザシャは、驚きの声を上げる。内容は自分とマリが、連邦地上軍の一個軍相手に、僅かながらの戦力で攻撃を仕掛けることであった。
「わ、私達を攻撃に動員するつもりですか・・・!?」
「捕まえて挙げ句、私達を殺す気!?」
拒否しようとする姿勢を見せるザシャとマリに、大佐は交渉の手札を出す。
「そうだとも。そこの見覚えのある女は知らんが、ザシャとか言ったな?お前の患者は現在、我が軍の軍医が治療中だ。そちらは安心して良い。だが、お前達の母艦を拿獲したとの連絡が入った」
ニコラが無事であることに安心したザシャであったが、マクロス級要塞艦ツェルベルスとそれに収納されている一個機甲旅団以上の戦力が纏めて百合帝国残党軍に拿獲された事に驚き、惑星アヌビスの百合帝国残党軍の実力の高さか、自分達が居ないだけでここまで弱体化するワルキューレの情けなさで、二人は声を上げる。
「あの馬鹿でかい戦艦を・・・!?」
「嘘・・・ツェルベルスには、一個旅団以上の戦力が居るのに・・・」
味方に対しての絶望なのか、百合帝国残党軍の実力の高さなのか分からぬ反応に、大佐は自分等を恐れていると判断し、更に話を進める。
「これでお前達は我が軍に従うしかなかったな。奴隷にされていた同胞を助けてくれた事に感謝するが、歓迎するほど我々は甘くはない。以前それで全滅した同胞達が居るのでな」
「そう言うと思ったわ・・・」
「そう言うことだ。その服では少し辛いな・・・着替えを持ってこい」
大佐は奴隷にされていたメガミ人達を助けたマリに一応の礼は言ったが、過去にあった出来事で、歓迎などするつもりはないと告げる。次に、マリとザシャの着替えを持ってこさせる。
入ってきた陸軍と空軍の士官が持ってきた着替えは、突撃砲兵の制服に士官用フリーガーブルーゼだった。
「着替えだ、その服では少し寒いだろ。一時間後には攻撃に出る。準備が出来てないのはお前達だけだ」
大佐はニヤリと笑みを浮かべ、二人に攻撃の準備をするよう告げた。それから着替えを持って、指揮所を出ると、更衣室まで連れて行かれる。陸軍の突撃砲兵の制服がマリで、空軍のフリーガーブルーゼがザシャは、双方の士官の監視の下、身体中の汗を流し、着替えを行う。
他人にジロジロと自分の裸体を見られるのは余りいい気がしない中、二人は着替えを終え、それぞれ自分の機体がある格納庫へ連れて行かれた。ザシャはニコラとの激闘で搭乗機であるVF-1Sバルキリーを失っているので、残党軍が用意した機体へ乗り込む。
格納庫に待っていたのは、捕まる前の白い外装ではなく、これまで格闘戦主体の兵装では無い砲撃戦主体の第三形態であるパンツァーと呼ばれる浅い緑色の外装に換装されたライガー・ゼロだ。
ザシャの方は何処からか調達したのか、ワルキューレでは最新鋭機とされているVF-25メサイアが、ファイター形態で駐機されていた。更には大気圏内外両用のスーパーパックが装備されている。これを見たザシャは、一言も発せずにあ然する。
ちなみにVF-25Fの”F”にちなんでか、フォッケウルフFw190F型の塗装にされている。他にもVF-27βルシファーが駐機されている。
「驚いたか?何故こんな物を我々が処置しているのかと」
ザシャが言いたいことを予知した女性パイロットは、彼女の隣に着く。
そんな彼女を見て、パイロットは鼻で笑ってから理由を告げる。
「理由はお前達ワルキューレだ。お前は知らないと思うが、我々を心配する元戦友達か、新装備の実戦における試験運用をやらせるためにこんなおもちゃを我々に流してくれる。分解して運ぶと計算して、これだけの機体と装備を揃えるのに、役一年は掛かっている。それだけ貴重な物をお前達にくれてやるんだ、しっかりとやれよ?ひよこ(キューケン)」
「は、はい・・・力の限り、やります・・・!」
「是非そうしてくれ、生半端な気持ちで挑まれると困る」
パイロットはザシャの肩を叩き、彼女の働きに期待した。意味も分からず期待されたザシャは、相手を失望させないためにしっかりとした返事をした。それを見届けたパイロットは、釘を刺してから自分の機体の元へ向かう。
「人質取って、強制してる癖に。勝手に期待するなんて」
人質を理由に自殺行為にも近い攻撃に強制参加させられ、失敗など許されないほどの期待を掛けられる彼女は、パイロットが聞こえないところで、ブツブツと小声で文句を口にする。キャノピーを開けて自分が乗るVF-25Fトルネードパックのコクピットに座り、計器の点検を行う。
「各部異常なし。凄い、うちの整備班より練度が高い・・・」
点検を終えたザシャはワルキューレの整備兵より、練度が残党軍の整備兵が高い事に驚愕した。単なる武装勢力として見ていたが、正規軍よりも高い練度に驚かされた。ワルキューレの練度が低い所為と思ったザシャだが、一睡もせずに整備を行う整備部隊に失礼だと思って訂正する。
出撃に備えるため、ザシャはカートに置かれているEXギアパイロットスーツを取り、それを上から着始める。着替え終えると、隣に置かれていたサンドイッチを手に取って、ヘルメット片手にそれを口に含む。用を足せば、作戦開始までコクピットで待機する。
マリの方も出撃の準備が終わり、頭に規格帽を被り、上からは通信用のヘッドフォンを付ける。革製の手袋を付けると、ライガー・ゼロパンツァーに乗り込み、点検を行う。
どれもこれもがザシャと同様にワルキューレの整備班より上と分かると、コクピットの中で残党軍の整備兵達を褒めた。
「結構やるじゃん。なんでワルキューレに入らないのかしら?」
これ程の腕があれば、ワルキューレなら高級部隊に入れるのに、マリは何故入らないのかを疑問に思う。こちらも軽い腹ごしらえとトイレを済ませると、腕時計を付けて作戦開始時刻まで待った。
「作戦開始時刻だ!総員搭乗せよ!!」
『エアレッシェン作戦開始!総員、搭乗せよ!繰り返す、エアレッシェン作戦開始!』
数十分後、腕時計の針が作戦開始時刻を刺した。開始時刻と共に、将校の怒号とアナウンスが聞こえ、ハッチが開き始める。警報も響き、待機室にいたパイロット達が、各々の機体へ乗り込む。
機体へ乗り込めば、誘導員の指示に従い、ハッチに近い機体からカタパルトに固定され、射出されていく。
空戦戦力であるバルキリーは滑走路に誘導され、そこから空へ飛び立つ。自分の出番が来たザシャは、見知らぬ大型爆弾を搭載したVF-27を目撃したが、敵の大戦力に対しての火力の問題であるため、気にも留めることなく機体を加速させ、高度を上げて空へ飛び立った。
マリはカタパルトにライガー・ゼロの足を固定させ、作戦エリアまで飛ぶ。陸戦戦力と空戦戦力が続々と出撃する中、砲兵隊による支援砲撃が始まる。
山頂にある砲撃陣地から砲声が響き渡り、榴弾砲やロケットが放たれ、本隊を守る為に展開している敵部隊が居る方向へ飛んでいく。展開している敵部隊は警戒態勢に入っていたが、壕を余り掘らずにそこで待機していただけなので、砲撃の格好の餌食となる。
「砲撃だ!!」
以下にMSやゾイド、AT、ハーディガンが強力とは言え、それを主力にして塹壕を掘るのを疎かにした彼等には、砲撃から身を守る術はなかった。
まるで弓から身を守る兵士達の如く、砲撃やロケットから盾やビームシールドで守ろうとするが、雨のように降り注ぐ砲撃に耐えきれるはずもなく、次々と撃破されていく。歩兵部隊や戦車部隊は砲撃から身を守るために、そこから退避し始めた。どうやら、砲撃されることを想定していなかったようだ。
瞬く間に戦力の半分を減らされ、砲撃が終わる頃には到着した残党軍の航空部隊の攻撃を受け、あっと言う間に敗走する。反撃もせずに逃げる連邦軍機を見て、編隊長を務める残党軍パイロットは鼻で笑う。
「フン、機動兵器ばかりに頼るからだ」
逃げおおせる連邦軍機に向けて吐き捨てると、逃げる敵の背中へ向けてビームガンポッドを撃つ。バックパックに当たった敵機は爆発を起こし、後退しながらビームやヘビィマシンガンを撃ち続けてきたが、まともに照準が合わず、差ほどが撃破された。
展開していた敵残存部隊を壊滅させると、早期警戒機から敵航空部隊の到来を知らせる通達が全機に入る。
『敵航空戦力到来!五分後に会敵します!』
五分ごと聞くと、ザシャのVF-25の隣に飛ぶVF-27のパイロットが、暇潰しに通信で話し掛けてくる。
『五分後か・・・確か、ザシャとか言ったな』
「はい。なんでしょうか?」
『少し言いたいことがあってな、この星の名前はなんだ?』
「アヌビスです。何ですか急に?」
質問に答えたザシャだが、表情を見る限り正解ではないので、相手に訳を問う。
『違うな、この惑星の本当の名は”パクス”だ。我々の祖先が平穏の地を求める為に先に見付けて名付けた。確か意味は、ラテン語で平和という意味だそうだ。アヌビスはこの惑星のダイヤ目当てに後から来た侵略者である人間共が付けた名前だ、そう易々と我々の目の前で人間共が付けた名で気安く呼ぶな』
「わ、分かりました・・・以後、気を付けます」
どうやら先住民であるメガミ人達は、後からやって来てダイヤ目当てに侵攻し、パクスから改名した名であるアヌビスが気に食わないらしい。アヌビスと言ってしまったことに、ザシャはプライドの高い士官級のパイロットに謝罪する。
『それから我々は正規軍だ。装備は横流しか、商人から買った物だが、どんな装備でも一流の兵士に優る物など・・・』
「えっ?敵襲!?」
『敵機からの遠距離攻撃!長砲身を搭載したサラマンダーだと!?各機散会せよ!!』
次に一カ所の地域へ追い詰められているにも関わらず、自分達を未だに正規軍と同等の扱いをするよう告げている最中、飛んできた砲弾がコクピットに命中し、血が噴き出した後に墜落するVF-27を見て、ザシャは物の数秒で入ってきた通達で味方機と共に散会する。
あのパイロットを
こちらはワルキューレの最新鋭機であるが、先程一機撃墜され、戦闘が出来ない早期警戒機を含めれば、三十三機機以上しか残っていない。
「こんな数と戦闘をするんですか・・・?」
目の前に見える敵の大編隊を見て、ザシャは編隊長に問う。
『そうだ、我々にはやらねばならんのだ。その為にお前の力が必要だ。各機、対空ミサイル、ファイヤー!!』
ザシャからの問いにそう答えた後、編隊長は全機へ向けてミサイルを発射するよう指示を出した。ザシャのVF-25を除くVF-27から、格納されている箇所から内臓式マイクロミサイルが発射され、編隊飛行する敵機へ向けて飛んだ。
向かってきたミサイルに対し、回避行動を取る敵編隊であったが、反応が遅れて何機かが撃墜される。特にサラマンダーとベースジャンバーに乗った連邦製MSは命中し、次々と地面へ落下していく。サラマンダーは大型機で重装甲を備えているため、撃墜は出来なかったが、後何発か撃ち込めば撃破できそうだ。
「みんな凄い・・・まずはあのサラマンダーを・・・!」
ミサイルを発射してから敵機との空戦を始めたパクス空軍を見たザシャは、旋回式連装ビーム砲をロングレンジキャノン搭載のサラマンダーに照準を合わせ、引き金を引く。発射されたビーム砲は見事サラマンダーの胸部に命中し、空中爆散を起こして墜落する。
一機を撃墜すれば、次の標的に合わせて撃ち、三機、四機、五機と次々と旋回式ビーム砲で撃墜していく。大多数の敵機が居るため、ザシャは目に見える敵機に出来る限りマルチロックオンした後、マイクロミサイルを発射。フレアを積んでいない敵機は自力でミサイルから逃げるも、逃げ切れずに命中して次々とハエの如く落ちていった。
『流石は見込んだとおりだな』
編隊長から褒められた後、ザシャは気にも留めずに自分を攻撃してくる敵機を確実に撃墜する。味方機も手際よく敵機をガンポッドやビーム砲、アサルトナイフを駆使して撃墜していく。二百機近くいた連邦軍が、数では劣るはずの三十二機に押し込まれ、壊滅状態に陥っている。
空だけではなく、地上でも少数のパクス陸軍に対し、一方的に連邦軍が押されるという空と同様な状況が起きていた。
「吹き飛べ!!」
ライガー・ゼロパンツァーに乗るマリは、サラマンダーと同じロングレンジキャノンを搭載するゴジュラスMkⅡ量産型へ向けてハイブリットキャノンを撃ち込む。発射された電磁誘導弾は容易くゴジュラスの装甲を意図も容易く貫き、あれ程強力なゴジュラスを次々と撃ち倒していく。他の連邦軍機も攻撃するが、後方支援型の意図を無視した強襲型のような機動性とマリの操縦テクニックで回避され、反撃を受けて撃破される。
瞬く間に一個機甲大隊規模の戦力がマリ一人により全滅させられ、他には数が自分等より少なく、化石同然の旧型機を運用するパクス陸軍に圧倒され、機動兵器に乗り込むパイロット達は動揺を抱き始める。
「な、なんて強いんだ・・・!」
「相手は大部分が博物館送りの機体なんだぞ!?なんで圧倒されるんだ!」
彼等の言うとおり、相手はマリのライガー・ゼロパンツァーやシールドライガーを除き、ジム・コマンド、ジム・スナイパーⅡ、ジム・ストライカー、ザクⅡF2型やドム・トローペン、ゲルググ、ゲルググキャノンに陸戦型ゲルググと言うまるで博物館のような光景だ。
そんな博物館送りの機体ばかり使うパクス陸軍相手に、性能が遙かに上な機体が意図も容易く一方的にやられている。恐らく、連邦軍基地から自分達の領内で豊富に採取されるダイヤと引き替えに横流しされたか、盗んだ部品を使って改造しているのだろう。それとも、単に連邦軍のパイロット達の質が悪いかである。
陸と空からの圧倒的強さと連携を誇る少数のパクス軍の攻撃で、軍本隊を守る地上軍の二個機甲師団は壊滅状態に陥り、本隊からの増援を要請する羽目となった。
ここで一端、時はパクス軍による攻撃が行われる二時間前に遡る。
キューケン中隊が輸送機の護衛の最中、アンノウンの接近と現地軍の大編隊に接近に対し、アンノウンは中隊長であるザシャが一人で対処することになり、自分達が敵大編隊と交戦することになる。敵本隊との交戦している最中に、何人かの戦友が堕とされたが、幸運にも死者はなかった。
「なんなんだこいつ等・・・?」
ツェルベルスまで後少しとなったところでパクス軍が現れ、目標であるツェルベルスが旧型MSやVF-19シリーズに拿獲され、輸送機と護衛機も纏めてVF-19Fエクスカリバーに捕獲された。直ぐに取り返そうと接近するが、先程交戦していた現地軍の航空部隊は、機体性能をフルに活用した機動力と阿吽の呼吸のような連携で瞬く間に一掃されるのを見て、残ったペトラ達は戦意を損失する。
「こいつ等・・・強すぎる・・・!まともにやったら、勝ち目がない・・・!」
今まで幾度かの強敵と戦ってきたが、それは装備が充実していた事と神の領域へ踏み入れる思われるほどのザシャが居たから生き残ってきた物だが、今の自分達には頼りの上官は居ない。この場で最適な考えは、直ぐに思い付いた。
「チェリー、ペトラ、逃げるよ!」
『えっ、でも・・・まだ・・・』
「良いから早く!晃とレイはとっくに逃げてる!」
『了解・・・!』
『りょ、了解・・・!』
同じ中隊の所属機が続々と捕獲されていく中、ペトラは一目散に離脱した晃とレイのVF-1Aバルキリーを見て、チェリー、千鶴を率いてこの場を離脱した。VF-1JとVF-1Aを合わせた三機が戦闘空域から離脱するのを目撃した柿崎は、他四名の同僚と共にエンデヴァー小隊の後を追う。
「おい、待ってくれよ!」
自身のVF-1Aバルキリーをファイター形態に変形させ、同じく変形させていた同僚達と共に全速力でエンデヴァー小隊に追い付く。パクス軍の航空部隊は追跡してこなかった。
追ってくる柿崎に気付いたペトラは、彼にパクス軍に捕獲されるよう告げる。
「ちょっと、あんた。大人しく捕まってなさいよ!」
『そんな、酷いじゃないか。俺達だって、捕まったら何をされるか!』
「ちっ、好きにしな」
仕方なく柿崎達も連れて行くことにしたペトラは、彼等も連れて地図にある独立都市へと向かった。
都市へ着いた後、パイロットスーツの下に着ていた軍服を私服に着替え、町へと繰り出した。まずは周囲の情報収集と先に逃げた晃とレイの捜索だが、久し振りに美味いご馳走に有り付けると思った柿崎は、真っ先にレストランへと入る。
「うぅ、ステーキ・・・最近は乾パンにビスケット、肉入りスープだけだったしな・・・もう我慢出来ない!」
「俺もだ!」
「久し振りのご馳走だ!」
「あっ、ちょっと・・・!」
止めようとするペトラであったが、柿崎に続いて他のパイロット達も後へ続いた。
チェリーとペトラも我慢が出来なかったようで、遂に我慢できず、掛け出してしまう。
「私もちょっと・・・」
「こんなのは目が離せない・・・!」
「もう・・・みんな・・・まぁ、隊長でも止められないか」
これは流石にザシャでも止められないと悟り、ペトラも彼等と共にレストランへ入った。
迅速に行動し、席を確保していたチェリーと千鶴が座る席へ座ると、やって来たウェイトレスに早速注文する。
柿崎はと言うと、同僚達と共にカウンターの席へ座り、好物を注文したのか、嬉しそうに待っていた。
そして数十分後、三人が頼んだ物が席へ店員の手によって運ばれると、店長が美味しく焼けた分厚いステーキを柿崎の前に置く。それを見た一同は驚き、そのステーキに注目する。
「ミディアムでサーロインのお客様」
「お、来たきた!う~、うまそう!」
「柿崎、お前・・・それ全部食うのか?」
同僚からの問いに対し、柿崎はナイフとフォークを持ちながら嬉しそうな表情を浮かべて答える。
「食えなかったら、包んで貰うさ!はっははは!」
一切れをナイフで切ると、フォークで刺してそれを口に含んだ。噛み終えると、上手そうな表情を浮かべて感想を述べる。
「くぅ~、うまい!ほっぺが落ちちまいそうだ!肉入りスープなんかより断然うまいぜ!」
この柿崎の例えに、チェリーと千鶴は彼に聞こえないよう耳を寄せる。
「凄く古い例えですね・・・」
「多分、育ったところがね・・・」
それから柿崎は食欲に駆られ、ステーキをほおばっていき、数十分後には平らげてしまう。腹を叩き、爪楊枝で歯に挟まった肉を取り除き始める。
「ふぅ・・・食った、食った」
「ほ、本当に平らげた・・・」
「凄い食欲だな・・・」
柿崎の食欲に驚かされた同僚達は、驚きの声を上げる。チェリー、千鶴も驚きを隠せず、ペトラは呆れた表情を浮かべながら、柿崎の体格に納得する。
「通りであの体型な訳ね・・・」
「す、すす凄い食欲!」
「まさに巨漢・・・!」
口々に柿崎の事を言っていると、男が慌てながらこの店に入ってきた。
「おーい、大変だ!ここから50㎞の所で、ダイヤモンド地方からやって来た連中が連邦軍の大軍相手にやり合ってるぞ!!」
「本当かよ!?この辺で連邦軍に喧嘩売る奴は、居ないはずだぞ!」
「それがよ、見たこともねぇバルキリーに乗ってるそうだ。いつここまで来るか分からねぇぞ」
それを耳にしたペトラ達は、互いに顔を向き合わせる。
「見たこともないバルキリー?」
「多分、隊長!」
「直ぐに行きましょう!」
ザシャが戦っている事を知った一行は席を立ち上がり、勘定を置いてからレストランを出た。それを目撃していた柿崎の顔なじみが居たが、彼は気付かない。直ぐに自分達の機体がある場所へと向かい、スクランブルと同様に迅速に動き、パイロットスーツを上から着て、キャノピーを開けてコクピットへ乗り込む。
ガウォーク形態に変形させて機体を上昇させると、ファイター形態へ変形し、全速力で戦場へ向けて飛ぶ。大気圏内をほぼ無限に飛行できるVF-1なら可能なレベルだ。一刻も早く隊長の下へ駆け付けるべく、キューケン中隊の隊員達は急いで戦場へと向かう。
そんな彼等の行動を見ていた者達は、各々の機体へと乗り込み、後を追った。
もちろん、多種多彩な機動兵器が追ってくるので、流石に気付かれる。
「なんだ、あいつ等・・・ツェルベルスを拿捕した連中の仲間か?」
サイドミラーで自分等を追ってくる彼等を見て、それを口にする。下を覗いてみれば、上空だけではなく、地上にも何機か確認できた。早速ついてくる集団の長が、共同通信を開いて、接触を図ってくる。
通信用モニターに映った強面の男に、ペトラは何者かを問う。
「あんた等誰よ?」
『安心しろ、俺達は味方だ。お前等を売ったりはしねぇよ。今から連邦軍とドンパチしてる奴らの応援に行くんだろ?俺達も連邦軍にはちと恨みがあるんでな、俺達も勝手について行かせてもらうぜ!』
「はぁ?そんな勝手に!」
『へっ、それでも勝手にやらせてもらうぜ!あいつ等の所為で、俺達は失業だ!日頃の鬱憤、晴らさせて貰うぜ!』
『無茶苦茶だな・・・』
ペトラの言葉も聞かず、集団の長は部下や賛同する者達を引き連れ、マリとザシャ達が居る戦場へと向かっていった。
それを見た柿崎は、馬鹿の一つ覚えに突っ込んでいく彼等を見て呆れ返る。そんな彼に、レシプロ戦闘機大会の第一試合で、ザシャに瞬殺されたあの男が確認のために通信を入れて来た。
「あっ、お前は・・・!中尉殿に瞬殺された零戦のパイロット!」
『誰が瞬殺されただ!俺は”大板光男(おおいたみつお)と言う名前があるんだぞ!』
「わ、分かってるって!そんなに怒鳴るなよ・・・鼓膜が破れちまうよ」
自分にとって屈辱的な事を口走った柿崎に、モニター越しから怒鳴ってくる大板光男と言う男に対し、余り怒鳴らないよう告げる。その後、光男はこれからの事も考えてか、連れ達の紹介を始める。
『俺も連邦軍には少し恨みもある・・・まぁ、こいつ等も恨みを持っている。紹介しよう、天知(あまち)と加奈子(かなこ)だ。こいつ等は孤児でな、連邦軍にテロリストが居るからだとか言う理由を付けられて壊滅させられた町の生き残りだ』
「それって・・・酷い・・・」
連邦軍の武力制裁で破壊された町の生き残りと聞いたチェリーは、不安げな表情を浮かべる。
光男に紹介された少年と少女は、共同通信を開き、モニター越しからの挨拶を行う。
『天知です、よろしくお願いします』
『加奈子です、こちらもよろしくお願いします』
『こ、こここちらこそよろしくお願いします!』
「ど、どうも・・・」
チェリーと千鶴が挨拶すると、二人とも頭を下げてからモニターを切る。その後、光男は指揮下に入ると告げ、晃とレイの事を告げる。
「と、言うことだ。俺達はお前達の指示通りに動く。それから先客の無愛想な小僧と小生意気な小娘は、別の機体に乗り換えているぞ。もうすぐ到着する頃だ」
『なにぃ!?あいつ等、機体を乗り換えてたのかよ!俺も乗り換えたい・・・!』
悔しがる柿崎の後に、機体を乗り換えた晃とレイが合流してきた。
晃の機体はVF-1を大型化したVF-3000クルセイダーと呼ばれる白い塗装のバルキリーに乗り込み、レイはワルキューレの主力機であるVF-11Cサンダーボルトの前型であるB型に乗っている。塗装はカーキ色だ。合流してきた晃とレイからの通信が元中隊全機に入ってくる。
『済みません、機体の調達に少し手間取りました』
『ちょっと遅れちゃった。でも、私が来たからには百人力なんだからね!』
『てっきりそのまま逃げたと思ってた・・・』
「クソォ、俺達より上の機体に乗りやがって・・・!」
晃が謝罪の言葉を掛けるが、レイは全く謝る様子が無い。そんな二人にペトラは、逃げたと思ったと口にする。自分等の乗るVF-1より上位機種の機体に乗る晃とレイに、柿崎は悔しがる。
ちなみに、光男が乗る機体は彼の性格を表してか、バッファッロー型大型ゾイドであるディバイソンである。天知と加奈子が乗る機体は、直ぐ調達出来そうなビームサーベルを二本装備したジム指揮官型とジムキャノンだ。
編隊を組みつつ、先程連邦軍に突っ込んだ者達が、最新兵器ばかりの連邦軍機相手に、膠着状態に陥っているのが見える。それを見た何名かは怖じ気づくが、向こうに自分達の中隊長が居るため、突破しなければならない。代わりの隊長を務めるペトラは、指揮下の全機に通達する。
「これより戦闘エリアに突入する。連邦軍は最新兵器だけど、あいつ等が殆ど惹き付けているから合流できるかも。各機、三機一隊で行動するように。でないと死ぬわよ」
『了解!』
各員から伝わる良い返事を聞き、自信が付いたペトラは指示を出す。
「よし、それじゃあ隊長に会いに行くわよ。全機、アタック!」
突撃命令を出すと、戦闘エリアへ全速力で突撃するエンデヴァー小隊の後を、柿崎を含む各機が続いた。地上にいる光男達も、置いて行かれないようなんとかついて行った。
「はぁぁぁ!」
バトロイド形態のVF-25トルネードパックに乗るザシャは、サラマンダーのコクピットへガンポッドを連射し、撃墜した後、周囲にいる敵機の数をレーダーで確認し、索敵を行う。レーダーには味方の反応しか無く、迎撃部隊はパクス空軍の精鋭部隊によって全滅したようだ。直ぐに早期警戒機から敵本隊への突撃命令が出される。
『グランツより各機へ通達。幸運かもしれませんが、敵は別勢力の迎撃のために戦力を裂いています。今なら我が軍への防衛戦力が低下していることでしょう。更なる増援で補佐される恐れがあります!直ぐに本隊への突撃をお願いします!』
『
『
「や、
隊長であるノルト・リヒトの指示に、慌てて返答した後、敵本隊へと突撃する数十機のファイター形態となったVF-27の後に、自機もファイター形態に変形させて続いていく。先程の戦闘で三機ほどが失われているが、それでも彼女等は本番である敵本隊への攻撃に移る。ザシャは離陸の最中に見た大型爆弾を搭載したVF-27を探したが、何処にも居なかった。
探すのを止め、敵本隊から来る対空砲火に警戒する。防空網に入れば、無数の近接信管対空砲弾頭が雨のように飛んでくる。他にも対空ミサイルが飛んでくるが、一度編隊を取っていた攻撃隊は散会し、各自の判断での回避行動を行う。対空砲火が止んだ後、次に現れたのは大多数の迎撃機であった。
数は先程現れた迎撃部隊より圧倒的に多く、戦意を喪失するほどであったが、パクス空軍のパイロット達は挑むつもりでいた。地上で進撃するマリ達の元にも軍団規模の機動兵器が現れ、戦闘状態に突入する。ザシャ達の方も交戦状態に突入、次から次へと来る攻撃を回避しつつ、敵機を確実に撃破する。
「本当にキリがない・・・!」
キャノピー越しから見える尋常ではない数の敵機に、ザシャは攻撃を回避しながらビーム砲で敵機を撃墜する。マイクロミサイルを辺りに発射して数機以上の敵機を堕としてからバトロイド形態となり、ガンポッドを撃ちながら敵機を確実に撃破していく。
既に五機以上どころか、二十機以上は墜としているが、数える暇もなく、ただ目に見える敵機を墜とす。それでも尚、敵機は現れ続け、レーダーは真っ赤に染まって味方機との区別が付かなくなる。
マリの方でも空と同等の状態が起きていた。何機撃破しても次から次へと現れ、味方の損害が徐々に増えていく。
「一体何機潰せば終わるのよ!」
モニターに見える敵機に対し叫んだ後、ミサイルを一斉射して周囲にいる敵を薙ぎ払う。だが、敵は連隊規模で湧いて出て来るように増え、攻撃を容赦なく加えてくる。
これでも連邦軍に恨みのある者達に戦力が裂かれている程である。
優勢から劣勢へと一気に逆転されたパクス軍であったが、頼もしい援軍が敵の大軍の中から現れた。ザシャが数機以上の敵機へ囲まれ、一斉に攻撃されよう時に、ミサイルが包囲していた敵機へ命中し、全滅する。彼女を助けたのは自分の中隊メンバーである一面であった。
『隊長!無事だったんですね!』
「この声は・・・チェリーちゃん!」
チェリーの声に、無事に再会できて喜びの声を上げるザシャ。続々と中隊所属機や晃のVF-3000とレイのVF-11Bが現れ、ザシャの周りにいる敵機を一掃していく。
見事な連携と機動で群がる敵を倒していき、彼女のVF-25に合流する。
『遅くなりました隊長!ちょっと、野暮用がありまして!それにしてもいつVF-25を調達したんです?はっははは!』
敵機をガンポッドで撃墜した柿崎からの報告に、ザシャは部下が全員生きていてホッとし、胸を撫で下ろす。それから指示を出し、向かってくる敵機の迎撃を命ずる。
「良かった・・・」
『隊長、早速指示を!』
「うん!各機、防戦隊形!」
『了解!』
全機がガウォーク形態に変形して円陣を組み、向かってくる多数の敵機へ向けて迎撃を行う。ガンポッドの掃射を受け、数十機以上が被弾して撃墜される。数秒間続けていると、敵部隊は態勢を整えるためか、キューケン中隊から離れていく。
『やったー!俺達にビビって、連邦の奴等、逃げていきますよ!』
「でも、また仕掛けてくる。パクス軍の人達も助けないと行けないから、移動するよ!各機、油断しないで!」
『了解!』
柿崎が逃げていく敵部隊を見て言った後、ザシャが油断しないように告げた後、各機ファイター形態になってザシャのVF-25へ続く。包囲されている味方機を発見すると、直ぐそこへ向かうが、中隊規模敵機が阻んでくる。
『前方に中隊規模のMS!』
先に見付けた晃が知らせた後、ファイター形態からガウォーク形態に変形し、ガンポッドで次々と撃破する。ザシャも即座に反応し、機体をバトロイド形態に変形させて一気に中隊規模の敵部隊に壊滅規模を与え、後退させる。
「おぉぉ、すげぇ・・・!うわぁ!!」
先程の晃より多くの敵機を撃墜するザシャの動きに見取れた柿崎は、至近距離からビームサーベルで斬り掛かってくるジェムズガンに気付かず、着られ掛けたが、そのジェムズガンはレイのバトロイド形態のVF-11が持つガンポッドの銃剣に串刺しにされ、彼女に助けられる。
『油断するなって言われたんじゃないの?』
「すまんすまん」
レイにお礼を言った後、VF-27を包囲している敵機にミサイルを撃ち込む。包囲していた複数の敵機は逃れられずに被弾し、何機が撃墜されれば包囲を解いて後退し始め、包囲されている友軍機の救出に成功する。
『ありがとう(ダンケ)・・・!』
包囲されていたVF-27に乗るパイロットは礼を言った後、再び戦場へ戻った。
それからのキューケン中隊は、友軍であるパクス空軍の救援活動を行い、彼女等を自由に動き回れるようにしていく。連邦軍は撃墜してもまだ出て来るが、パクス軍が電子戦をしているのか、連携が殆ど取れていない。
そんな矢先、本隊へと通じる防衛ラインが後一押しで崩れ去る予兆が見えようとしていた。近くにいるマリに、指揮官である大佐が直々に通信で攻撃を命ずる。
『後一押しで、奴等の防衛ラインが崩れる。お前が乗るゾイドの秘技を使うのだ!』
「一斉射撃ね。なんか引っ掛かる事があるけど、使ってあげるわ」
『それでよい。後は我々に任せろ』
大佐が直々に命令を出したことに、マリは何かの思惑を察し、口にするが、彼女は何も知らないような表情を浮かべ、何事もなく続けた。マリはそれに応じ、ライガー・ゼロパンツァーの必殺技であるバーニング・ビックバンの作動作業に入る。
モニターの前に多数のロックサイトが展開され、防衛ラインに展開する敵機と地上戦艦に照準を合わせていく。やがて全ての敵機に照準を合わせ終えると、マリは叫んでからトリガーの引き金を引いた。
「吹っ飛べ!!」
その叫びと共にライガー・ゼロパンツァーの全武装から一斉射撃が行われ、本隊との最終防衛ラインへ向けて飛んでいく。本来なら小型ゾイドを部隊ごと殲滅する威力ではある筈だが、火力はそれを遙かに上回っていた。展開していた敵部隊は強大すぎる火力で吹き飛び、大穴が空いた。
放たれたバーニング・ビックバンは本隊にまで届き、待機していた連邦軍機を巻き込みながら運悪くそこで駐機していたトリケラトプス型超巨大ゾイドであるマッドサンダーの横腹まで到達。貫通はしなかった物の、戦闘不能に追い込んだ。これを見たマリは、口を大きく開けて驚きの声を上げる。
「凄い・・・」
この高火力過ぎる攻撃は、ザシャ達にも見えており、余りの凄さに呆然とする。
「す、すげぇ・・・」
唯一言葉を発したのは、柿崎だけであった。
それから物の数秒後、穴が大きく空いた箇所から大型爆弾をVF-27βが通過し、本隊の奥にある目標の軍本部へ向けて飛んでいく。
「いけない!」
それを目撃したザシャは、あれが五十万の軍ごと一掃できるほどの火力を持つ爆弾と分かり、止めようとしたが、対空砲火と塞がるように現れた敵機に阻まれ、止めることが出来なくなる。
大型爆弾を搭載したVF-27は、並のパイロットでは耐えきる事が出来ない速度で突き進み、目標である丁度中央にある軍本部まで後少しになると、パイロットはGに耐えながら大型爆弾の安全装置を解除し、投下用のボタンに指を添えた。
目標まで到達すると、それと同時に爆弾を軍本部へ向けて投下し、全速力で爆心地とこれからなる場所から上昇して離脱する。投下された大型爆弾は対空弾幕に当たることなく軍本部に着弾。中に搭載されていた何かしらの爆薬が落ちた衝撃で信管が起動し、爆発した。
この大型爆弾の正体は、核兵器を上回る火力を持つアルス・マグナと呼ばれる戦略兵器だ。放射能を撒き散らさないことで、核兵器に変わる新たな戦略兵器となった。
その火力は、今ここにいる軍をマリとザシャ達ごと全て消滅させるほどだ。パクス軍が何処から手に入れたかは、ダイヤで一刻早く出来るだけ遠くに逃げなければ、爆風に飲まれて消滅する。着弾を確認したパクス軍は作戦通りだったのか、即座に退却を始め、自分達の領内へ向けて全速力で去っていく。
爆発を見たザシャは、爆心地から巻き起こる今この場にいる全員に、共通無線で爆心地から出来るだけ遠くに逃げるように叫んだ。
「逃げて!!」
そう叫んだ後に、聞いていた空中戦艦の上にいたペトラ達は機体をガウォーク形態に変形させ、十分な高度まで上げる。ファイター形態に変形させれば、全速力でパクス軍が退却した方向へと向かった。
柿崎機の変形が遅れたが、全員逃げるのに必死で気付かない。連邦軍機も流石に戦闘などせず、全速力で戦場からの脱出に専念する。本隊近くにいた連邦軍機は運が悪いとしか言いようが無く、爆発に呑み込まれて消滅した。
地上にいる防衛ライン近くにいたマリと光男達も、パクス軍と共に爆心地から来る爆発からの退避を始める。
「こんなの、聞いてないわよ!!」
巻き起こる爆発を見てマリは、こんな所では死ぬわけにはいかないため、パンツァーを強制パージし、機体を軽くして全速力での退避を図る。
「お前等、俺の機体に掴まれぇ!あいつ等が逃げた方向まで行くぞ!!」
光男は天知と加奈子に、自分の機体に捕まるように告げる。天知のジム指揮官型と加奈子のジムキャノンが自分のディバイソンの身体に張り付いたのを確認すると、全速力で爆発から逃げ始める。連邦軍に攻撃してきた恨みのある者達は、爆発が起こってから戦闘を止めて即座に逃げ出したそうだ。
爆発が広がり、連邦軍機が続々と呑まれて消滅する中、VF-25に乗るザシャは、即座にこの場から離脱が可能であったが、部下達を残していくわけにはいかないため、速度を合わせて一緒に飛ぶ。しかし、柿崎のVF-1Aが遅れていた。
「柿崎君、遅れないで!!」
爆発が間近まで近付いてくる中、必死に柿崎についてくるように告げるが、スタートダッシュが遅れた事もあり、間に合いそうにない。爆発の光で目が眩み、柿崎機が影でしか確認しかできなくなる。
「駄目です!隊長、間に合いません!!グワァァァァ!!!」
「柿崎!!」
柿崎の悲惨な叫びと共に、彼が乗っていたVF-1の反応が途絶えた。一同は柿崎が爆発に呑まれて死んだと判断。しかし、誰も柿崎が爆発に呑まれているのを確認していない。
爆発はそこで止まり、爆風が中隊を襲ったが、飛行には支障はない。そのまま中隊の隊員達を引き連れて基地まで到着すると、彼等の気持ちも理解せずに作戦成功を祝うパクス陸・空軍の将兵達が待っていた。遅れてマリと光男達がその場に姿を現す。
「良くやった。これで連邦も我々を認め、ダイヤモンド(ディアマント)を我々から買うしかないだろう」
爆弾を投下したVF-27のパイロットに勲章を授けようとする大佐に、ザシャは抗議しようとしたが、そんな暇は無かったようだ。伝令の将校がマリとザシャ達とは違う深刻な表情を浮かべながら大佐の元に近付き、それを彼女へ報告した。
「大佐、真に申しにくいのですが・・・」
「なんだ、言ってみろ」
「我らメガミ人の
レッツトラントとは、彼女等メガミ人に最後に残された領地のことであり、一般にはダイヤモンド地方とされる。その地方では、豊富にダイヤが採掘されるため、数十年前に行われた連邦軍との戦争に敗れてこの地に逃れてきたメガミ人達は、ダイヤを売ることを口実にダイヤという名の停戦条約をアヌビス政府と連邦駐屯軍と条約。ダイヤの御陰で長らく生き存えていた。
だが、彼女等が知らぬ間に起きたクーデターで、完全にダイヤで飼い慣らされていた現政権は崩壊し、代わりに連邦の傀儡とも言える政権が発足。欲深な連邦の高官達と同じ考えを持つクーデターで新政権は、与えられるダイヤだけでは我慢できず、ダイヤという名の停戦条約を無視して彼女等の最後の領地へ攻め込んだ。
これを耳にした大佐はショックを受け、動揺し始める。直ぐに基地にいるパクス軍全将兵に、彼女等にとって世界の終わりに近い事態が報ぜられる。
『緊急事態発生!コードプリュンデラー発令!繰り返す、コードプリュンデラー発令!!』
「つ、遂にこの時が・・・」
「私が生きているときに・・・!」
基地内で勝利に酔いしれていたパクス軍の将兵達が先程の騒ぎ様から一変し、絶望したような言葉を次々と吐く。それから慌ただしく動き始め、撤収作業を始める。周りの空域が変わったことに気付いたマリとザシャ達は、目の前にいた大佐に問う。
「ねぇ、コードプリュンデラーって何?」
「意味の通り、略奪者達が我々の領内に侵入してきた。つまり、我らメガミ人の領内が侵略されていると言うことだ!この基地は放棄し、我々は守備隊と合流して、そこで侵略軍と戦う!これで失礼する!全く、五十万もの兵力を囮にするとは、恐ろしい指揮官だ!」
大佐はマリの質問に答えた後、先程の装備が充実した軍単位が、更に上の侵攻軍の囮であることが分かり、それを口にしながら撤収作業に加わる。
「無駄死だったなんて・・・でも、私がしっかりしないと」
柿崎が無駄死にだと分かったザシャは、少しショックを受けるが、なんとか立ち直って、自分等も撤収の準備を始める。
マリもここに居るパクス軍が総力戦の準備に入っていると思い、自分も光男達と共に撤収作業を行う。撤収作業が終わり、パクス軍と共に基地を出たマリとザシャ達は、放棄されて爆破される基地を見て、この惑星における最後の決戦が来たと確信した。
「絶対に生き残ってやるんだから・・・!」
乗っている輸送機の窓から見える黒煙に、マリは必ず生きてこの地獄のような惑星から出ることを決心した。
今回も詰め込みすぎたわい・・・まじでやっつけだな・・・
柿崎ぃぃぃぃぃ!!!にドイツ語、厨二的なネーミングセンス、僕の考えた戦略兵器。
まぁ、なんで敵地にいるレジスタンスみたいな連中が、あれ程の装備を持っているのかは豊富に採掘されるダイヤのお陰と言うことで。
それにしても、冷戦期の東西ドイツ軍混合装備する軍隊ってどうよ?格好いいでしょう。思えるのは自分だけだけど・・・
ちなみに、柿崎は死んでませんよ。
次回はやっとこさ最終決戦です。多分前半と後半に別れるかも。
これが終われば、IS編だ!!