復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers 作:ダス・ライヒ
と、まぁ、長くなるので二分割。
遂に惑星パクスにおける決戦の火ぶたが切って落とされた。
現地軍であるアヌビス軍は総力を挙げ、連邦軍に二百万にも及ぶ大兵力を支援として派遣。その大規模な支援を受けた連邦軍の兵力は、五百万というたかが敗残兵と残党軍を排除するには余りにも多すぎる空前絶後の大兵力であった。馬鹿の一つ覚えのように多すぎる物量だが、連邦軍と敵対する同盟軍もそれに値するほどの兵力を動員し、同じ物量の連邦軍との戦争に明け暮れている。
そんな大規模な物量作戦に対するワルキューレ遠征艦隊の敗残兵と、残党レベルのパクス軍の兵力は、合わせて十万くらいにしかならなかった。
敗残兵達を除き、パクス軍は更なる増員が出来るが、人口百五十万人の内、メガミ人の百万人とダイヤ採掘のために外部から労働のために連れてきた人間の四十万、イクサ人の労働者十万人を全て動員しても、圧倒的物量を誇る連邦軍には足りず、力押しで倒されるのが関の山だろう。戦えるにしても、それは全員を成人にした例えであり、実際は戦えない人数を引けば、半分程度か三分の一程度にしかならない。
人間の方は、男女比率は女性の方が圧倒的に多い。男性は一万人程居るが、成人だけにしても二千人程度で、残り八千はまだ18にもなっていない少年か老人、乳幼児・幼児ばかりだ。女性は三万人近くだが、乳幼児・幼児、少女、妊婦、老婆を含める辺り、戦えるのはごく僅かだ。
戦うにしても、今から増員をしたところで、既に連邦軍と現地軍の大兵力は
刻一刻とメガミ人にとっての最後の地が、連邦軍の物量に呑み込まれて行く中、最後の決戦の地になる宇宙基地へと、マリとザシャ達は辿り着いた。
最初に出迎えたのは、車椅子に座り込んだ高級品度の高い軍服を纏った老婆が、勤務服を着た士官に押されながら彼女等を歓迎した。老婆を見た大佐等は敬礼を行う。どうやら、この老婆がパクス軍の総司令官のようだ。
「出迎えご苦労様です、総司令官殿!」
「良く戻った。戦況は刻一刻と悪い方向へ傾いておる。もう幾つかの鉱山と町、村が連邦軍の攻撃を受け、壊滅したそうじゃ・・・」
「なんと!もうそんなに早く・・・!」
総司令官より知らせられた連邦軍の進撃速度に、大佐は驚きの声を上げる。
それが信じられない大佐は、ダイヤの次に自分達を守っていた自然現象の事を問う。
「しかし、この我らの領地には、”自然の守り”がある筈では・・・?」
「どうやら連中、それを打ち破る兵器を使い、打ち消したようじゃ。現在、奴等は宇宙軍の支援を受けてここまで迫っておる。各所に防衛戦を引くのは無駄に損害を増やすだけじゃ、全兵力を未だに影響を受けてはおらんここへ集結させ、決戦に備えておる」
問うに答えた総司令官は、自分等を守っていた自然の守りが、連邦軍の自然の摂理すら変えかねない超兵器に寄って、打ち破られたと語る。
そのメガミ人達のレッツトラントを守っていた自然の守りとは、領地の周りを永世中立国であるスイスのように険しい山々が囲い、ダイヤを求めて入ろうとする欲深な者達をそれで払い除けてきた。
空からの侵入が考えられるが、領地を囲う山々には計器や電子機器を狂わせる謎の霧が発生しており、更には雷雲まで発生し、航空機による侵入を妨げている。唯一通行可能なルートがあるが、これは領地内にいるメガミ人にしか知らされて居らず、彼女等は外の世界へ殆ど出ることがないので、外部で知るものはごく僅かであり、ルートを通って領地に入っても、彼女等メガミ人達が、侵入者を歓迎するかどうかの問題である。
尚、人間より優れた体格と体力を持つ男ばかりの亜人であるイクサ人のみ、通行が可能であったようだ。
それらの自然の守りを打ち破った超兵器とは、未来において条約に違反する威力を誇る非人道的に環境破壊の意味合いを持つ兵器なのだろう。だが、そこに立て籠もる敗残兵と残党軍をテロリストとし、市民の生活を脅かす悪と断定すれば、条約は意味をなさなくなる。
古今東西、歴史を紐解けば、戦時中に条約を守って戦った軍隊は殆ど居ない。連邦軍も然り、同盟軍も然り、ワルキューレ・合衆国・社会主義連邦も然り、どの軍隊も馬鹿正直に条約を守ることなど一切していない。
そんな状況下の中、圧倒的に物量を誇る生き残るために戦うか降伏するしかなかった。脱出の手段はある物の、宇宙には一万隻近い連邦宇宙軍艦隊が待ち受けている。大気圏から抜ければ、一斉射撃を受けて木っ端微塵だろう。
仮に降伏を選んでも、どのような末路が待っているかは考えれば直ぐに分かる。つまり戦うしか無く、彼女等の脳内には「降伏する」と言う選択肢は無かった。
「予備兵役も増員し、奴等と血の一滴まで戦う。一人でも多く道連れにしてくれるわ!」
車椅子の上で拳を握り、惑星パクスで骨を埋める決心だ。周囲にいる大佐を含めるこの最後の地にいる者達も、玉砕を覚悟している。これに巻き込まれたマリとザシャ達敗残兵達は、彼女等と一緒に死ぬのはごめんだろう。
「(死ぬなら勝手に死になさいよ。私はまだやることがあるのに・・・)」
特にマリの方はまだ復讐の旅が始まったばかりであり、寄り道してこんな所で死ぬことなど出来ない。今からでも自分一人でも大気圏突破が可能なVF-25メサイアを奪い、自分だけで逃げ出そうかと聞いている振りをして駐機されているVF-25に目線を向けたが、ザシャに気付かれて手を掴まれる。
「少佐、自分一人で逃げようだなんて駄目ですよ」
「はぁ、分かったわよ・・・」
ザシャからの言葉にマリは罪悪感を覚え、手を振り払ってから脱走を断念した。次に、どうやって玉砕せずに生き残るかを問う。
「でっ、どうやって連邦軍の大軍から脱出するの?」
「それは・・・」
マリに問われたザシャは、回答に困る。都合良く味方が救援として駆け付けてくれるわけもないし、ましてや戦局を打開する兵器や条件など揃っていない。どうするか悩んでいる時に、ガラヤの町で現れたZEUSの面々を思い出した。
「あの滅茶苦茶強い人達が助けてくれるかもしれないんじゃないですか。ほら、なにか貴方がピンチになった時に駆け付けて来るかも・・・」
「飛び級した貴方らしくも無い答えね。あいつ等が来るのはムガルとか言うアホ共が来た時よ」
ZEUSの面々が助けに来てくれるというザシャからの答えに、マリはらしくない答えと受け取った。
「でも・・・例外とかありましたよ。大会にZEUSの人が出ていますし」
「息抜きじゃないの?まぁ、どうなるか分からないけど」
「きっと来てくれると思います。あの人達、貴方に死なれたら困る意図が見えますし」
「そっ。まぁ、助けてくれるなら、
グラハムとアルトが大会に出ていた例外を告げるザシャであったが、マリは息抜きと表す。ZEUSの面々が救援に駆け付けてくれると期待するザシャに、マリは助けに来ればZEUSを「英雄」とし、助けに来なければ「偽善者」と表した後、自分のライガー・ゼロがあるハンガーへと向かった。
ハンガーへ向かう最中、集められた予備役の将兵達の姿があった。殆どが軍服を着た女性ばかりで、装備は神聖百合帝国時代であり、武器はMP40短機関銃にStg44突撃銃、Gew43半自動小銃、MG42機関銃、M24柄付手榴弾、パンツァーファウストと言う時代遅れにも程があるものだ。これで未来式の装備を持つ敵軍と戦うなど、石斧を持った原始人が小銃を持った兵隊と戦うような物である。
中には老婆や十代後半の少女まで居り、燦々たる物だ。自分等が装備品を貸したところで、機動兵器によるゴリ押し戦略を取る連邦軍には敵わない。そんな哀れな彼女等の装備を見つつ、自分のライガー・ゼロの元へ向かう。
ライガー・ゼロが駐機されたハンガーへ辿り着いたマリは、機体を見上げて戦えるかどうか見定める。
「数十万機相手じゃきつそうね・・・あれにしようかな?」
連邦軍の大兵力相手では、ライガー・ゼロではキツイだろうと思い、横にあるストライクガンダムへ視線を向ける。ライガー・ゼロと同じく兵装を選択できるシステムを搭載しており、宇宙海軍の艦隊戦で行ったパーフェクトストライクがあれば、大多数の敵機相手に善戦がある程度可能だろう。
「これよね・・・ライオンで大勢の人間と戦うにはちょっときついから同じ人間じゃないと」
ストライクガンダムを見上げてそう口にした後、近くにいた整備兵に、装備をパーフェクトするよう告げた。
「ねぇ、この格好いいの、全部載せしといて」
「全部載せって・・・?」
「パーフェクト装備よ、それくらい分からないの?」
「は、はい・・・」
恍ける整備員に、マリは再度告げれば、ミーティングルームへと向かった。ザシャが圧倒的な戦闘力を持つ集団であるZEUS到来に掛けるという彼女らしくないもない作戦の説明だ。
作戦に組み込まれていたツェルベルスの面々は、自分等だけで脱出を行おうとしたが、待ち受けているのは連邦軍の大艦隊であり、大気圏を突き抜けて衛星軌道上へと上がれば、直ぐに蜂の巣にされるだけなので、嫌々と来るかどうか分からないZEUSを待つ作戦に参加することになる。
これで手数は揃ったわけだが、来るかどうかは分からないので、押し寄せてくる圧倒的な数の敵に対し、長期間持ち堪える必要がある。防衛線を二重三重に厚く敷き、防衛陣地の構築、偽の陣地や地雷原の構築、罠の設置だ。
宇宙基地までの敵進攻ルートは予めパクス軍が潰しており、空から侵入してくる敵航空機に対しては、飛行妨害用の気球が張り巡らされている。後は航空機による防衛線を展開し、無限のように来る敵機の迎撃を行うだけだった。
宇宙から攻撃を行ってくる衛星軌道上の敵艦隊に対しては、宇宙基地にある宇宙にまで届く戦略兵器の支援射撃でツェルベルスには宇宙へ飛んで貰い、全ての艦載機を持って敵宇宙艦隊が地上部隊を支援できないほど暴れて貰う。この時に、最終手段である反応弾を思う存分撃ちまくり、一万隻程の敵艦隊を撤退寸前まで追い込んで貰うつもりだ。
それら思い付く限りの作戦をボードに書き、ツェルベルスの艦長と幹部達、パクス軍の総司令官と参謀達に述べたザシャ。好評だったが、物足りない物があると指摘される。
「物足りない物があるわね。使わない機動兵器を無人として、囮の陣地に配置しようっと」
「少し長旅には不安なシャトルとHLVが大量にある。爆薬を積み込ませて打ち上げ、敵艦隊にぶつけるのも良いな」
「対機動兵器壕も必要だ。報告では、大量の機動兵器が押し寄せてくるとある。直ぐに工兵隊を派遣して構築させよう」
ツェルベルスの艦長と参謀達が、次々とザシャの作戦に付け足していく。
無人の機動兵器を配置した囮の陣地。対戦車壕ならぬ対機動兵器壕。長旅には不安定なシャトルやHLVを圧倒的数の連邦艦隊へぶつけるという案。
圧倒的数の連邦軍の進撃を停滞させるほどの案が出される中、敵の指揮官の判断力を鈍らせる案も出された。その案を出したのは、パクス軍総司令官である。
「敵の指揮官の判断力を鈍らせるというのはどうじゃ?」
「どのように怒らせるのですか?」
案を出したパクス軍総司令官に、ザシャはどのようにしてかを問う。
マリは直ぐにその答えを見出し、それを口にした。
「分かった。ダイヤ鉱山を爆破して、全部駄目にするんでしょ?」
「正解じゃ。
自慢げに答える老婆に、ザシャは鉱山を爆破する手段があるかどうかを問う。問われた老婆は、起爆装置を片手に満面の笑みで答えた。
「我々がダイヤをただで渡すと思うてか?幾つかは解除されてそうだが、あれ程の物量じゃ。かなりの金額が掛かっているじゃろう。それを賄う程でお釣りが来る程のダイヤが吹き飛べば、怒り狂うことよ」
「避難勧告は?」
「なに、もうとっくに避難は出来取るわ」
あれ程の兵力と物量を作戦に投入する金額は相当な物だと読み、ザシャから避難状況について対しては、避難は終了と答え、老婆は起爆装置のボタンを押した。
ボタンが押されたと同時に、モニターに表示された赤く光る鉱山の位置を示す点滅が、真っ先に占領された四つの鉱山以外、全て消えた。これは爆破されてダイヤの採掘が不可能になったという意味だ。
まだ四つ以上は残っているが、五百万とあれだけの物量の費用を賄うには足りなさすぎるだろう。これならば、敵の司令官は正気を失い、怒り心頭での物量によるゴリ押しに走る筈だ。そう予想した 彼女等の予測は見事的中したのであった。
最初に占領したダイヤ鉱山に居た方面軍総司令官とチャールドは基地の私室にて、占領予定地だった残りのダイヤ鉱山が爆破された報告を部下から耳にしていた。
「報告いたします!当鉱山を入れ、遠隔操作式爆弾を解除した四つの鉱山以外、全て敵に爆破されました!占領下の鉱山における解除中の工兵隊に多数の死傷者が出た様子であります!!」
「なんだと!?それではこの大規模作戦の多額の費用が・・・賄えんではないか!」
報告を聞いたチャールドは、自軍の二百万もの兵力の投入をお釣りが来るほど賄える程のダイヤの大半が失われたことを受け、ショックで声を上げる。隣に立つ総司令官は、拳を強く握り、歯ぎしりを始める。
そんな彼に、部下は額に汗を浸らせ、緊張しながらどのようにするか問う。
「閣下・・・いかが致しましょう・・・?」
返答が恐ろしい物だと思い、部下は息を呑みながら返答を待つ。数秒後、総司令官は怒気に帯びた横顔を見せながら答えた。
「皆殺しだ・・・爆撃隊に通達、奴等が立て籠もるありとあらゆる場所へ絨毯爆撃だ。宇宙からの艦砲射撃も続行、砲撃も制圧射撃!この土地を火の海に変えるぐらいに徹底的にやれ!!」
「りょ、了解!」
鉱山を爆破したパクス軍に対する怒りを混ぜ込んだ総司令官からの指示に、部下は踵をならして敬礼した後、指示を全部隊に通達するために指揮所へと彼からまるで逃げるかのように向かった。部下が立ち去った後、チャールドは総司令官から伝わってくる危険な臭いを感じ、彼も立ち去る。
「で、では、私もこれで・・・失礼する・・・」
相手の部下と同じく逃げるように立ち去り、部屋のドアを閉めた。一人になった彼は、独り言で怒りをぶちまける。
「クソッ、害虫共目・・・!一人たりともこの惑星から出さんぞ!」
壁に苛立ちをぶつけるように拳を叩き付けると、彼も私室からドアを開けて出て、司令本部まで向かった。
連邦軍において、彼にはこの世界の地上軍・宇宙軍・宇宙海軍の三軍を全て配下に置く役所に着いている男だが、総司令官は方面軍統合司令官という肩書きでも満足できない。惑星アヌビスことパクスに眠る豊富なダイヤで、議会に属する政治家達を買収し、行く行くは本土の統合総司令部の将官として属し、快適な暮らしをするつもりであった。
だが、パクス軍にダイヤ鉱山を爆破されたことにより、その望みは断ち切られた。怒りに満ちた総司令官は、今ある連邦軍五百万と現地軍二百万を合わせた七百万の大軍勢で、腹いせと憂さ晴らしにマリとザシャ達敗残兵とパクス軍を殲滅する事にした。
子供じみているようだが、怒りに燃え、腹の虫が治まらない彼は、彼女等を圧倒的な強さで叩き潰さねば収まらなかった。それを実行するため、総司令官は司令室へと向かう。
腹の虫が治まらない総司令官からの指示を受けた連邦軍・現地軍の侵攻部隊は前進した。先遣隊は鉱山の爆破で被害が出ていた為、師団内で別の先遣隊を編成し、即時任務に当たらせる。生き埋めになった友軍に関しては、工兵隊による救出作業が行われる。
少数の将兵が付き合わされて迷惑がっていたが、作戦に参加した全将兵にダイヤを授与するという約束があったが、鉱山を爆破されたことで授与されるのは将官のみとなり、下端の多くの将兵が怒りに満ちており、総司令官と同じく、腹いせに敗残兵やパクス軍を皆殺しにしようと思っていた。敵の女性将兵に対しては、所為の捌け口にするつもりで居るだろう。
そんな感情を抱きつつ、彼等は侵攻作戦の最終目標地点である敗残兵とパクス軍の残りが立て籠もる宇宙基地へと進軍した。
だが、パクス軍は前進を少しでも遅らせるために、様々な罠とトンネルや橋などの交通手段爆破により、思ったより進軍は進まないで居た。更に地雷のみならず、ブービートラップも仕掛けられ、狙撃兵による部隊長狙撃もあり、行軍する将兵の怒りと疲労は増すばかりであった。
その御陰でパクス軍は防御陣地構築が順調に進む。砲撃や爆撃対策の偽の陣地と地雷原の構築が完了し、飛行妨害用の気球の配置も完了した。後は避難民が宇宙基地まで辿り着くのを待ち、敵の攻撃に備えるだけだ。
一日経つ頃には、各地域から避難してきた避難民が宇宙基地へ辿り着いた。避難民達はこうなることを予定しており、早々とここへ来たわけである。防御陣地もそれと同時に完成する。
避難民を収容する宇宙船だが、この時のためにパクス軍が用意していた大多数の避難民を収容できる2000mの超大型避難船があるので、大丈夫かと思われる。多すぎれば、マクロス級であるツェルベルスにもある程度のスペースがあるので、避難民の収容は可能である。超大型避難船でも収容できない人数も予想してか、その為の避難船が何隻か用意されている。
後は戦闘のために長旅に疲れた避難民を収容するだけだが、数は徴兵されたか連邦軍の攻撃を受けたのか、予備の避難船が必要ないほどであった。撤退してきた軍は、負傷兵を除けばなんとか足しになる程度だ。
「随分と予想より人数が少ない・・・」
「奴等、民間人まで・・・!」
少ない民間人の数を見て、パクス軍の将兵達は連邦軍と現地軍に対する怒りを露わにする。同じく見ていたマリは、周りにいる将兵達のように怒らず、自分の機体まで向かう。
注文通り、ストライクガンダムはパーフェクト装備になっており、これで大多数の敵機と戦闘が出来る。想定外の数の敵と戦う為なのか、両腕と両足と腰に他の機体のミサイルポッドが取り付けられていた。直ぐに彼女は、この装備を施した者を呼び出す。
「ねぇ、ミサイルポッド付いてるんだけど、付けたの誰?」
「私です!」
呼び出されて現れたのは、カチヤであった。直ぐにカチヤはミサイルを取り付けた理由をマリに話す。
「少佐なら一人で防衛線を張ると思い、自己の判断で装備させて貰いました。武器もビームガトリングがあります。かなりの重量になり、機動性が落ちますが、少佐なら上手く扱えます」
カチヤが理由を告げた後、装備に対しての説明をし始める。次に今の装備の説明を終えると、エール・ソード・ランチャーを全て合わせたかのようなストライクパックに手を翳し、その装備についての解説も始める。
「少佐のために簡単に説明しますと、あちらはストライクガンダムの全パックを一つに纏めた物です。ビームブーメラン以外実弾主体ですが、少佐なら上手く・・・」
解説を行っている最中、マリに抱き締められ、中断される。
「ありがとう。これで思う存分出来そう」
「ど、どうもです・・・」
マリに抱き締められたまま礼を言われたカチヤは、顔を赤くしながら感謝の言葉を述べる。彼女に離されると、額に口付けされ、更に顔を真っ赤にした。
「あっ、あぁぁ・・・」
「頑張って生き残りなさい」
顔を赤くして放心状態になっているカチヤに、マリはそう告げた後、手を振ってから何処かへ去った。
地上で勝ち目のない戦いを行う彼女等の避難船は無いとされるが、ザシャが「勝機がある戦いだと」と言い、防衛戦に参加する全ての将兵の為の避難船をパクス軍に無理言って用意させた。パクス軍全将兵は玉砕する気であったが、彼女が用意させた避難船を聞いて、やる気を失せてしまう。
シャトルやHLV、使わない宇宙艦船に爆薬が積み込まれる中、ザシャは戦線復帰してきたシャロンに呼び止められる。
「ザシャ、お前は宇宙へ来ないのか?他の戦友達は皆宇宙へ上がるぞ」
「大尉、私は宇宙へ上がれません。なにせ言い出しっぺですから」
そう問われたザシャは自分が正気とは思えない作戦を提案した責任者であるので、地上に残って戦うと告げる。地上よりもマシな宇宙へ行かせようと説得するシャロンであるが、ザシャはそれを断り続ける。
「どうしてもか?来る保証など無いんだぞ、少佐が死ぬのが困る連中だと聞いていたが、余り助けには来なかったのだろう。本当に来るのか?」
「必ず来ますよ。可能性は高いです。あれ程の数は少佐でも無理ですので、死なせないためには助けに行かせるしかありません。宇宙にも来ると思いますし、それに大尉がついています。私が居なくても、貴方は十分強いです」
「そうか・・・では、健闘を祈る。来ると良いな、連中」
ザシャの答えに説得を諦めたシャロンは、敬礼してからツェルベルスがある宇宙港まで向かった。宇宙へと向かうシャロンを見送ったザシャは敬礼した後、敵がこの基地に接近してくるまで、用意された自室へと眠ることにした。マリも同様に待つことにして、ザシャと同じく眠ることにする。
『警報、敵の強行偵察隊が索敵範囲に接近!』
翌日、敵の強行偵察部隊がこの宇宙基地へと接近してくる警報が鳴り響いた。その警報と共に目を覚ましたこれから戦闘に備える将兵達は起き上がり、歩兵は装備を身に着け、パイロットは機体へ向かえば、予め決められた配置に着き始める。
『大型対空レーザー砲エネルギー充填完了。発射シークエンス開始五秒前。
マリとザシャも各々の機体へ乗り込み為、ハンガーへと急ぐ。その間に宇宙基地の迎撃用兵器である巨大な口径広角レーザー砲塔が地表に現れ、宇宙にいる敵宇宙艦隊へ向けて砲身を向ける。今更ながら何故撃つ必要があるのかと言えば、これでツェルベルスの巨体を通らせるほど雲が晴れ、尚かつ一万隻ほどの敵艦隊に大きな損害を与え、敵艦隊は体勢を立て直すのに時間を費やす羽目になる。
『
エネルギー充填が完了すると、直ぐに巨大レーザー砲は宇宙にいる敵艦隊へ向けて発射され、雲が晴れた空から幾つもの光が点いたり消えたりしている。それと同時にツェルベルスは連続して打ち上げられていく爆薬を積んだシャトルやHLV等と共に上空へ浮上し、トランスフォーメーションと言う人型形態の強行型に二分掛けて変形、敗残兵と一定の志願兵を乗せたツェルベルスは宇宙へと飛んでいった。
地上にいるマリとザシャは機体へ乗り込んで出撃した後、自分等の配置へと向かった。
マリは地上へ。ザシャは空へ。
それぞれが戦う戦場へ赴き、ZEUSの英霊達が救援に来るまで戦うことになる。
パクス軍はこの日のために、ダイヤを使って各勢力から裏で回させて手に入れた高性能の機動兵器を惜しまなく投入。性能の腕の差で少しでも数の差を埋めようとするも、敵軍はそれを遙かに上回っており、数の差はどうしても埋まらなかった。その上用意された高性能機も足りず、仕方なく旧型の機体が運用されている始末だ。
それらの機体が歩兵や戦闘車両と共に塹壕に隠れるか、航空機と共に上空で浮遊する中、マリのストライクガンダムは堂々と敵前の前に姿を晒していた。戦闘指揮所に居る戦闘オペレーターは、通信で直ちに塹壕に隠れるよう告げる。
『そこのMS!そんな所へ立っていれば、砲撃の餌食になる。直ちに塹壕へ退避せよ!』
通信で何度も告げるが、マリはずっと敵が来る方向を見据えたまま聞かない。戦闘ペレーターは何度も呼び続けるが、彼女はしつこいと思って通信を切る。
一方のザシャは、多数のVF-19エクスカリバーシリーズやVF-22Sシュトゥルムフォーゲルが待つ上空へと飛び立っていた。他にはVF-27ルシファーや空中浮遊が可能なMSやハーディガン群も居り、無人機も含めた航空機と共に全機が敵の軍勢の迎撃に備えている。
今乗っているVF-25Fメサイアをガウォーク形態に変形させてホバリングし、敵がくるのを待った。ちなみに
敵が来るまで待っている間、敵が来る方向をずっと眺めていると、レーダーに自分と同じVF-25系統の機体が四機来るのが分かった。その四機は編隊を組みながらザシャのVF-25Fまで接近し、ガウォーク形態に変形して横に付き、通信を入れてくる。
それにザシャは答えることにした。
「誰?」
『私だ。お前に撃墜された女パイロットだ』
通信用のモニターに映ったのは、渓谷での上空戦で撃墜したニコラであった。VF-25Gのキャノピー越しから彼女が手を振っているのが見える。直ぐに怪我は直ったのかを問う。
「えっ、怪我はもう良いんですか?」
『私は長寿のイクサ人とメガミ人のハーフだからな。あの程度、掠り傷程度だ』
「掠り傷程度って・・・どう見たって重傷でしたよ!あの時は死ぬんじゃないのかと思ったんだから!」
自分から見て重傷だったニコラがあれを「掠り傷程度」と表したので、ザシャは彼女を叱り付ける。だが、ニコラは聞く耳を持たず、ザシャについていくと突然言い出し始める。
『ん、そうか?まぁいい、私は私を撃墜したお前についていくことにするぞ』
「何を勝手に!?なんでそうなるの?!」
余りにも身勝手すぎる事に、ザシャは直ぐにでも断ろうとするが、チェリー、千鶴が通信に割り込んでくる。
『ちょっと!勝手に隊長についていくなんて、貴方何なのですか?!』
『一体何処のRPG・・・?』
部下二人に問われるニコラだが、それを無視して二人の顔を見定める。
「ほぅ、これがお前の部下達か。皆ひよこみたいだが、ここまで生き残るとは、余程の運が良いか腕が良いかだな」
『ちょっと、ひよこは言い過ぎ・・・』
顔を見定めて感想を述べた後、ペトラが注意してくる。それでもニコラは気にすることなく続ける。
『まぁ、これほど良い戦友が生きていけるのは、お前の御陰だろう。ザシャ・テーゼナー。流石は私が認めたパイロットだ』
「えっと、ど、どうも・・・」
今度は褒めてきたので、どう返答するか分からないザシャは礼を言っておく。それからはニコラと部下達のやり取りに戦闘に対する緊張感が解れ、クスクスと笑い始める。
「なんか、貴方達を見てると、さっきの恐怖感が薄れちゃった。ありがとうみんな。これで存分に戦えるかも」
『えっ、あぁ・・・どうも・・・』
『あ、あぁ』
ザシャから感謝の言葉を述べられた一同は一応ながら礼を言う。その物の数秒後で前線指揮官から、敵の接近を知らせる通信が入る。
『宇宙基地を守る全将兵に告げる。敵の強行偵察部隊のみならず、第一陣が索敵ラインまで入り込んできた。数は我々より遙かに上だ。だが、ワルキューレの一介の中尉が言うには、救世主が到来し、我々を助けてくれるそうだ。各員、救世主が現れるまで、持ち堪えよ。以上』
前線指揮官からの通信が終わると、ザシャはニコラを含めた部下達に指示を出す。
「各機、防御フォーメーションに展開!」
『了解!』
部下達の返答を聞いた後、ニコラのコールサインを決める。
「尚、ニコラさんのコールサインはキューケン5とします!」
『心得た!』
これに応じたニコラはペトラ機しか居ない右端に着き、防御フォーメーションを取る。
そしてキャノピーから敵爆撃機と随伴機の大編隊が見えると、航空部隊指揮官からの迎撃命令が通信で入ってくる。
『全機、対空気化弾安全装置解除!
この指示の後にザシャ達を含めた航空部隊は、両翼に搭載された二発の対空気化弾を全て敵爆撃部隊に向けて発射した。
かくして、ZEUSの救援を来ることを信じて戦う彼女等の絶え間ない戦いが今始まった。
キートン山田「後半へ続く」