復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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単なる説明回かも・・・


女だけが動かせる兵器と女尊男卑の世界

 IS。それはインフィニット・ストラトスの略称であり正式名。

 宇宙空間の活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。開発当初は全く注目されなかったが、開発者である篠ノ之束(しののの・たばね)の手で引き起こされた発表から一ヶ月後に引き起こされた白騎士事件により、従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能を世界中に知れ渡り、宇宙進出よりもパワードスーツとして軍事転用が始まり、核に変わる各国の抑止力として要となった。

 尚、白騎士事件とは、日本を射程距離内に収めたミサイルが配備された軍事基地全てのコンピュータが一斉にハッキングされ、二千三百四十一発以上物ミサイルが日本へ向けて発射された。

 あわや大惨事と思いきや、その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て捕獲または撃破を試みた多国籍軍、主に軍事力ランキングの上位を占める連合国海上・航空部隊の大半を無力化した事件。死者は皆無と公式には発表されているが、実際は巻き込まれた民間人、流れ弾で死んだ連合国部隊の将兵合わせて万の単位の死傷者が出ている。

 この事件は束が仕組んだISの性能と価値を知らしめる為のマッチポンプ、つまり自作自演であり、事実が明るみに出れば、篠ノ之束は大罪人だが、各国はISを台頭させる為に真相を闇に葬り去った。

 ISは攻撃力、防御力、機動力は非常に高い究極の機動兵器であり、その性能差は現在ISが台頭する世界以外の異世界で猛威を振るう各機動兵器に匹敵する物である。

 特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリアーや「絶対防御」などによってあらゆる攻撃に対処できる。その為、搭乗者の生命に危機に晒されることはほぼ無く、搭乗者の生命維持機能もあるのだ。

 核となるコアと腕や脚、装甲の必要がないため、搭乗者の姿がほぼ丸見えな形状である為に、これにより連続して伝わってくる強力な攻撃で搭乗者が恐慌状態(パニック)を引き起こす事もある。ごく初期や軍用の機体には、恐慌状態を防ぐために全身を覆う全身装甲、フルスキンが存在する。

 ISには武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域があり、操縦者の意思で自由に保存してある武器を呼び出すことが出来る。ただし、全ての機体で量子交換要領に限りがあり、装備には制限が掛かっている。ハイパーセンサーの採用により、コンピュータよりも早く思考と判断ができ、迅速に実行に移せる。

 また、学習装置のような自己進化も設定されており、戦闘経験を含む全ての経験を蓄積することにより、IS自らが自信の形状や性能を大きく変化させる形態移行を行い、より進化し、高性能な状態となる。現状では第三形態までが確認されている。コアの深層には独自の意思があるとされており、操縦時間に比例してIS自身が操縦者の特性を理解し、操縦者がよりISの性能を引き出せるようになっている。

 一見、ISは完成された究極の兵器であるとされるが、謎が多く、全容が明らかにされていない。特に心臓部のコアに対する情報は自己進化の設定以外、一切開示されておらず、完全なるブラックボックスとなっている。

 更に悪いことに女性にしか動かせないという事。これには最初に搭乗した女性であるからとされているが、原因は未だに不明である。開発者である束は知っているだろうが、それを話そうともしない。

 究極と評するほどの性能を持つ機動兵器であるが、男女平等に扱える兵器としては欠落品であり、ISに己の命を預けるのは余り良い気がしないだろう。

 おまけに唯一の製造方法を知る束はある時に製造を止めためにコアの数は四百六十七機。コアの数に限りがあるため、新型機体を建造する場合は既存のコアを初期化せねばならない。まさに欠落品と表すべき兵器だ。

 だが、戦闘力がずば抜けていることには変わりなく、アラスカ条約において、戦争等の戦闘行為に対する運用は禁ぜられた。尤も、そうした方が正解であったが。

 何故、このような兵器が台頭したのかは理由があった。

 それは異世界よりやって来た未だに過去の栄光に縋り付く女だけの種族、メガミ人のために建国された大帝国、神聖百合帝国の残党の影の力があったからである。

 中でもISの世界に来た「フォル・モーント」と呼ばれる残党勢力は他の百合帝国残党勢力に比べて強大であり、大国を建国するには十分な物を誇っている。そればかりか地球侵攻の機会を窺ってか、地球より遙かに優れた科学力を駆使し、太陽圏外に抱えていた旧帝国臣民達を解き放ち、地球以外の星々に移住して生活圏を広げ、後は地球を残す物であった。

 月の裏側は既にフォル・モーントの手に落ち、表面上には一大拠点と都市まで出来上がっている始末だ。もし、地球に直ぐにでも攻め込めば、ポーランドやベルギー、オランダ、デンマーク、フランスを降伏させたナチス・ドイツの国防軍の如く、忽ち地球を屈服させるまでに至だろう。

 だが、敢えてフォル・モーントは直ぐには侵攻せず、地球に数万の工作員を放ち、侵攻作戦の手筈を整えようとしていた。工作員を送り込むだけではなく、現地でも工作員を作り、地形や天候、自然の状態の地理関連、敵軍の兵器の詳細、配備数や状況、士気の軍事関連などの情報を収集する。

 全てを知り尽くすことにより、地球を我が物にできる。

 この方針で何十年物間、ずっと地球侵攻の機会を待ったが、白騎士事件により、全ては水の泡と化す。

 突如と無く現れた究極の新兵器「IS」により、長年築き上げて来た作戦は崩れ去った。

 だが、長年反社会的活動を行う彼女等の執念はここでは潰えない。逆にISを我が物としようと考えたのだ。

 通常兵器では歯が立たないとされているが、メガミ人達は別の手を使った。

 それは長年築き上げたスパイ網でISを台頭させ、各国に自分達の傀儡となる政権を発足させ、影から地球を支配する事だ。

 影からの支配のため、政治に関連する裏社会を侵攻し、自分達の物へと変えていく。

 物の四年足らずで裏社会はフォル・モーントの物となり、影からの支配がやりやすくなった。

 ISを運用していると言えば、運用しているのだが、実戦経験豊富な彼女達は何かと欠点が多いISを戦闘などで投入しようとまでは考えず、式典用か試合用としての運用がなされている。殆どの兵器を知り尽くしているフォル・モーントとっても、ISは欠落品という事だろう。

 

 女性が世界を制すれば争いごとは無くなるはずだが、ISが登場して七年間程は政治、経済、宗教、民族、人種問題、各地域の風習と伝統文化、テロが立ち塞がり、絶え間ない紛争が続き、更には戦争まで起きた。

 特に中東、紛争の絶えないアフリカでは女性にしか扱えないISの登場により、イスラム教や女尊男卑を良く思わない勢力と女性主義者勢力が衝突。紛争は激化し、恐ろしい数の死傷者が出た。

 更にはISの登場によって大国の影響力を失い、同時に軍事力も衰退化し、それまで各世界で抑え込まれていた反政府組織、武装勢力による闘争が行われ、もはや危機的状況寸前まで達しようとしていた。

 一方のISの開発者、篠ノ之束の出身国である日本は、フォル・モーントから影の支援を受ける過激な女性至上主義を掲げるフェミニストの政党「国家女性社会進出」の政権を獲得し、月からの支援者の指示通りに日本を戦後とはまるで違う国家へと変貌させた。

 指示の一つである再軍備化を行い、単なる国家の防人である自衛隊は国防軍となり、それに伴う軍備拡大で国産戦闘機や兵器を持つことにより、撤退した在日米軍がいらぬほど拡大。戦前の大日本帝国軍以上の軍事力を保有し、保有周辺の領土の狙う国家群を脅かすような国家へと変貌する。

 同時に売国奴勢力、左派勢力、在日朝鮮人、韓国人、中国人に対する国内の敵勢力の排除を行うべく、合法的な排除を目的とした法案を設立。手駒として残しておいた右派勢力を使っての排除に乗り出し、国内から敵を一掃。フォル・モーントによる裏社会完全制圧も合ってか、日本をほぼ手中へと収める事に成功した。

 支援者からの指示の一つである反対勢力を抑え法案を設立すべく、国家女性社会進出党以外の政党を解散させ、一党独裁の政権を実行。支配力を完全にするため、特定機密法案を制定し、政権内で作られた法案や不正を機密して、更なる女性至上主義国家を目指す。

 これにより、戦後史上初めて日本で女性主体による独裁政権が誕生した。

 女性優遇社会となって女性が優先就職になった所為か、職に就けない男性が溢れていたが、軍隊の存在もあり、更なる軍備拡大へと繋がり、軍事力ランキングで日本は世界一位に上り詰める。

 陸海空軍合わせて総兵員数は三百万以上。かつてドイツで政権を獲得した国家社会主義ドイツ労働党、通称ナチス党が再軍備を行った際、第二次世界大戦開始直前のドイツ国防軍のように膨れ上がり、特に日本の領土を不法に占拠、あるいは占領を目論んでいた国家群を震え上がらせた。

 右翼的には女に政権を握られていることを気に食わないが、日本がこれ以上な戦後の屈辱を味合わずに済んで良かった物の、他国や民主主義者から見れば、非難されることは確実だろう。

 だが、反対する勢力は裏からの支配者や政府が制定した法案によって次々と排除される。

 もはや日本はフォル・モーントによって支配されたと言っても過言はないだろう。

 世界を二分するほどの勢力である米露もフォル・モーントの支配下だ。もはや世界は牛耳られたも同然である。

 

 しかし、何故人類の女性達が異世界からやって来たメガミ人の武装勢力の中で尤も危険な百合帝国残党軍であるフォル・モーントを受け入れたのか?

 理由は懐抱して自分等の支配下に入れようと考えているからだ。自分等より優れた科学力を持ち、強大な軍事力を持ち、強力な兵器や宇宙軍も所持している。彼女等を従わせれば世界の覇者、否、太陽系の支配権を握ることが出来る。

 そう脳内に秘めている男性指導者とは変わらない各国の女性指導者達であったが、フォル・モーントからの監視を受けており、反乱など起こせるはずもなかった。

 このようにして、彼女等は人類を支配することが出来た。

 フォル・モーントの支配に対して抗う者達が少なからずいたが、年々その数はフォル・モーントの軍隊や特殊部隊、人類の協力者達の手によって減りつつある。

 五年後、日本が韓国と北朝鮮の排除を行うべく、二カ国に宣戦布告。第二次朝鮮戦争が勃発した。

 この戦争は、フォル・モーントが長きにわたる平和でどれだけ日本人がどれだけ実戦で使えるかどうかを実験する為の物である。この時に女性のみを志願者とした世界各国から集め、自らが鍛え上げたナチスの武装親衛隊のような武装勢力を義勇軍として投入。同時に試験目的としたのだ。

 結果は技術力と軍事力の差で勝利。だが、苦い勝利であった。

 投入した二百万の内、数十万人が戦死または戦傷、数万名が心的外傷ストレス障害、通称PTSDを発症、手痛い勝利であったが、戦後の大勝利に酔う日本はそれから目を逸らした。

 対して義勇軍は戦死者や戦争者は少なからず出たが、PTSD等特に見られず、発症してもフォル・モーントによる治療もあり、直ぐに戦線復帰する。

 当然ながら、戦場では必ず起こる犯罪行為は行われた。それも攻撃を受けた彼等が事実と言って良いほどの・・・

 戦争から二年後、戦後の軍縮に反発する最大の反乱勢力である日本右翼勢力とクーデター派の同盟が大日本帝国の再建を狙い、女性社会に対し、大規模な軍事クーデターを起こしたが、平和的な国家を目指す有能な元自衛官や自衛官を目指す将兵等はクーデター参加を断り、現政権派に加わる。西南戦争以降大規模な内戦が行われた。

 内戦は日本の軍事力を半数に減らすほどであったが、その甲斐あってか、早期に終結し、諸外国からの介入されずに済む。

 こうして、最後の抵抗勢力も居なくなり、反乱勢力となる軍を辞めさせられた各国の将兵達も外部勢力からの兵員補充のためにフォル・モーントの軍門に加えられた。

 百合帝国残党軍の最大の勢力、ドイツ語で満月を意味するフォル・モーントと言う名の勢力が人類を支配し、地球に帝国を建国して君臨する日は近い・・・

 

 

 

 月の裏側にある軍事基地への他の残存艦と共に宇宙港へ入港したマリ達が乗るバリキュリャはドックへと着艦した。

 そのまま宇宙専用強襲揚陸艦から下船する彼女達であったが、基地にいる残党勢力の将兵達の歓迎は無数の現ドイツ連邦の制式採用突撃銃のHK G36の銃口であった。

 おまけに入ってきたハッチは既に閉まっており、横流しか武器商人から揃えた物なのか、ガンダムMkⅡの純粋な量産型であるRMS-154バーザム改がバリキュリャの周りを包囲する形で何十機も展開している。

 

「どうやら、私達・・・歓迎されてないようです・・・」

 

 一緒に降りた京香がそれを口にすれば、マリ、ノエル、オロンピアの佐官クラスの士官は、両手を頭に添えられたまま当残党勢力の総司令官が居る部屋まで連行された。他の尉官からの兵クラスは、捕虜収容所へと送られる。

 通路で古めかしいデザインの黒い戦闘服を着た四人の百合帝国軍兵士に銃口を突き付けながら連行される中、ガラス張りの通路へと到着。そこから表面を削って作られた月面都市が見える。彼女等が思う通り、既に地球は支配下に落ちているだろう。

 

「凄い都市ね・・・これ作るのに何年掛かったの?」

 

「煩い。黙って私についてこい!」

 

 マリが月面都市を見て、建造年を聞いてくれば前を歩く士官にワルサーP99自動拳銃を向けられ、マリは口黙る。

 数十分後、彼女等は基地司令室の前に連れてこられた。

門のようなドアの前に立つこれまた古い突撃銃であるStg44を持つ二人の門番は、立て銃から担え銃の行動を取る。内側からドアが開き、案内役の士官に中に入るよう指示される。

 

「入れ」

 

 指示通り入った彼女達は周囲の壁に飾られている装飾を見て、上級階級の部屋であるかのような印象を受ける。

 部屋の面積は広く、まるで屋敷のようだった。見取れていれば、黒い制服を着て黒いシュタールヘルムを被る長身の白人女性に前に進むよう告げられ、執務机の席に座る初老の金髪の女性の前に立たされる。

 

「ご苦労、下がってよし」

 

はっ(ヤー)!」

 

 総司令官から下がるように告げられた黒い制服の女性は靴の踵を鳴らし、後ろを向いて下がった。

 四人以外居なくなったのを確認した総司令官は、目の前にいる三人に楽になるよう告げる。

 

「楽にしなさい」

 

「ふぅ・・・」

 

 解放された彼女達は腕を揺らして痺れを取ろうとする。この時マリは、皇帝時代の自分の肖像画が壁に掛けられているのが目に入り、不快感を表し、総司令官の方へ振り替える頃には表情を無表情へ変える。

 それを確認した後、総司令官は自分の自己紹介を始める。

 

「まずは私から自己紹介しましょう。私の名はドロテーア・ルン・シュナイゼル、この百合帝国残党、フォル・モーントの総司令官だ。神聖百合帝国健在頃はただの平民での師団長だった。して、そちらは?」

 

 名前を問われたため、彼女達は自分の名を名乗る。

 

「お、オロンピア・カラマンリス!階級は少佐!ワルキューレ宇宙軍所属でブリュンヒルデ級万能次元戦闘艦バリキュリャの艦長です!!」

 

 慌てながら敬礼し、自分の氏名と階級を述べる。

 言わなくても良い事まで敵か味方も分からないフォル・モーントの総司令官ドロテーア・ルン・シュナイゼルに告げたので、ノエルは注意なのか、肘でオロンピアの脇腹を殴る。それから自分の名を名乗る。無論、情報が流れるのを防ぐため、情報士官であることは伏せている。

 

「自分はノエル・アップルビー宇宙軍少佐。戦闘指揮所(CIA)のオペレーターです」

 

「あれ、貴方情報士官じゃ・・・」

 

「そんな事は良いの。貴方は正直すぎなんです。少佐、貴方も嘘の名前を・・・」

 

 ノエルが言ったことに疑問を持ったオロンピアが小声で口にするが、彼女も小声で反論すれば、マリに嘘の情報を与えるよう指示する。

 自分の番が来たマリは、少し深呼吸した後、口を開いた。

 それはノエルが驚くような事であった。

 

「マリ・ヴァセレート、あんた等の元主よ」

 

「ちょ、ちょっと・・・!それは・・・違うんです!この人は、その」

 

「おやおや、悪いご冗談を。確かに似ているが、雰囲気が少し違うが・・・」

 

 マリが告げた事に、ノエルは彼女が目の前にいるドローテア達百合帝国残党の主でないことを誤魔化そうとする。だが、彼女等は過激派のメガミ人達はこれを冗談と受け取る。

 それに対し、マリはありのままの事を告げる。

 

「えぇ、あんた達が見ていた私はただの演技よ。そう、あんた達の思い描いていた高貴で品格があり、容姿端麗のメガミ人達の夢の永遠なる帝国の皇帝で神であるマリ・シュタール・ヴァセレート・カイザーは単なる幻想。私が周りにいる連中に言われて演じていただけなの!」

 

 これを聞いてドローテアは腹を立てたのか、机から古めかしい自動拳銃であるルガーP08を取り出し、マリに銃口を向けた。しかし、銃を握る手は震えて居らず、冷静である。

 

「それ以上、我らの偉大なる皇帝陛下の侮辱は止めていただこう」

 

 安全装置は外してはいない物の、十分脅しにはなり、それに先程の黒い制服を着た体育系の衛兵達がマリ達を取り囲むように出て来る。

 暫く銃を構えていると、執務机の上に置かれた古い黒電話が鳴り響く。それをドローテアは手に取り、電話に出る。

 

「はい。え?はい、今すぐ代わります」

 

 空いている手で受話器を取って電話に出た彼女は、受話器をマリに差し出す。

 

「あの方がお前と話したいそうだ」

 

「はっ?なんで私よ?」

 

「良いから取れ」

 

 ドローテアに受話器を持つように強制されたマリは、それを手に取り、相手の声を耳に入れる。

 

「もしもし?」

 

『おぉ・・・その声は・・・!久しいの、三百年ぶりじゃ・・・!』

 

「あんたは・・・!?」

 

 相手の声で誰だか分かったマリは受話器を強く握り、誰なのか聞こうとする。

 

『まぁ、そうカッカするではない。貴様だけはわしの元まで来て貰おう』

 

 電話の相手から来るように伝えられたので、マリは受話器をドローテアに返す。

 

「代わりました。はい。えっ、この無礼な女目を入れるのですか!?分かりました、担当の物に案内させます」

 

 受話器を戻したドローテアは、マリに拳銃を向けながら、衛兵の一人に部屋から彼女を出すように告げる。

 

「衛兵、そこの無礼な女をこの部屋から出し、案内の物に身柄を引き渡せ」

 

了解(ヤヴォール)

 

 指示を受けた衛兵は靴の踵を鳴らし、マリだけをこの部屋から追い出した。

 追い出されたマリは、予め待機していたコートを纏い、シュタールヘルムを被ってハルバートを持った兵士三名に捕まり、別の部屋へと案内された。

 

「ここに入れ」

 

 兵士に指示されたとおり、マリは案内された部屋に入れば、そこに待っていたのは生命維持装置に取り付けられた百歳は超えていそうな寝たきりの老婆であった。

 マリの姿を見た老婆は僅かな力で動く手を動かし、彼女を手招きする。

 

「こっちへ来い・・・」

 

 言われたとおり、マリは近くに寄る。

 

「良く来た・・・この時をどれほど待ち浴びた事か・・・」

 

 どうやらいつの日かマリがこの世界へ訪れる事をずっとここで待っていたらしい。

マリもこの老婆を知っているらしく、脳の片隅の記憶から掘り出した彼女の名を口にする。

 

「貴方、もしかして・・・サトコ・・・?」

 

「ほぅ・・・貴様が皇帝になって以降、顔すら合わせることもなく忘れられたと思ったが、覚えて追ったとは、流石は天才を自称するだけのことはあるの・・・」

 

 サトコとは、マリがまだ人間だった頃の顔馴染みのメガミ人だ。人間から不法不死の神に近い存在となって以降、全く顔すら合わせていない。久々の再会を楽しむ場合ではないと察してか、サトコはマリの事情のことを口にし始める。

 

「貴様も昔話に馴染んでおる場合ではないじゃろうて。風の噂で聞いたぞ。貴様、不死でなくなり、能力も殆ど失ったとな」

 

「それを何処で・・・!?」

 

「なに、風の噂と言っても、ワルキューレに情報を流してくれる間者がある物でな・・・貴様のことはぜーんぶ知っておる」

 

「嘘・・・!?」

 

 マリはサトコが自分の素性を知っていることに驚きを隠せずにいた。

 自分が行く能力がある所に毎回現れるガイドルフと繋がっているのではないか?

 そう思うマリであったが、ノエルか彼女の部下達の可能性も否定できない。

 誰が目の前の寝たきりの老婆に自分の情報を流しているのかを冷静さを装って悩んでいる最中、サトコに「地球へ降りないのか」と提案される。

 

「大分慌てておるようじゃが、まぁ、一度、お前の能力があろう地球へと降りてみぬか?」

 

「地球へ?みんな、サトコの部下達が占領しちゃってるんでしょ?」

 

 その提案にマリは、地球は既にフォル・モーントに支配されていると思ったが、サトコはそれを否定した。

 

「まだ占領などしておらん。あの世界の支配者ぶっておる女共を飼い慣らしておるだけよ」

 

「飼い慣らしてる?じゃあ、占領したも同然じゃない」

 

「そう事は上手く進まん。まぁ、真実は地球へ降りれば分かることじゃ。お前の部下達は、ここに居るワルキューレにでも返してやろう」

 

「ワルキューレもこの世界にいるの?」

 

 ワルキューレがいる事にマリは次なる質問を掛けた。

 通常なら百合帝国残党軍はワルキューレの敵対組織なのだが、ここ最近砲火を交えた形跡はない。どうやら、フォル・モーントとは”グル”のようだ。

 

 それからマリは、挨拶してからサトコが寝ている部屋を出て行った後、ノエル達が解放されたのを確認した。

 更にはシャトルの用意まで出来たのか、伝令が知らせに来て、案内までしてくれる。

 宇宙港へ辿り着けば、バリキュリャも解放され、ノエル達を乗せて港から出港していくのが見えた。こちらも無事に解放してくれたようだ。

 そのままシャトルに乗せられたマリは指定された座席に座り、シートベルト付ける。

 ここまでサトコが手配してくれるとは、ありがたい物だが、何か裏がありそうな気がする。

 そこまで考えていたマリはこの手厚い加護を有り難く頂戴しておき、他にシャトルに乗っている面子の確認を行った。

 一番近い席には陸軍の勤務服を着た将校、後ろには休暇帰りの将兵達、他には同じ地球へと向かう民間人か貴族達で溢れている。殺し屋らしき人物は居なさそうだ。

 

「特に殺し屋ぽいのは居ないわね」

 

 殺し屋が居ない事を確認したマリは席へと座る。この時、自分が乗っているシャトルに自分の身内とも言える人物が乗っている事は思いもしなかった。

 数十分後、シャトルは港から発進し、月の周回軌道に乗って地球へと針路を取った。




次からは・・・マリ専用のISと、フォル・モーントのコードギアスのナイトオブラウンズと同じような連中を出す予定です。
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