復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

68 / 74
ごめん、予定通りにはいかなかった・・・

代わりにあの後半がスタッフの悪ふざけで世紀末救世主伝説になったロボットアニメの主人公を出すヨン。


蒼き流星との出会い

 数時間シャトルの中で揺られ、ようやく地球へと降り立ったマリ。

 シャトルから降り、足を付けた地球の光景は、思った通りにフォル・モーントの支配下にあるように見える。

 

「一目見れば占領済みに見えるわね・・・」

 

 平然と施設内を歩き回るメガミ人達を見て口にしつつ、受付に向かい、手続きを済ませようとする。

 マリが受付の前に立てば、ヨット型の略帽を被った受付嬢が謝ってから受話器を取り、相手から何かの指示を聞いていた。マリの顔を窺った後、小さく「はい(ヤー)」と呟き、受話器を戻し、カウンターから取り出した鞄を彼女の前に出す。

 

「このお荷物は、ヒルデ・フォン・グデーリアン様の物ですか?」

 

 問われたマリは何のことだかさっぱり分からず、首を横に振ろうとしたが、受付嬢に何かメモらしき物を渡される。

 

「これもどうぞ。お客様宛のようで」

 

 言われるがままメモを取ったマリは、メモに書かれている文字がラテン語だと分かった。それも中世において、カトリック教会の文語として用いられた中世ラテン語。

 百合帝国が使う公用語は基本的にドイツ語であり、日本語や英語、地球に今現在使われている言葉は一部の地域限定である。ラテン語も使われる事もあるが、一部の者達に限られ、主に重要資料や暗号などに使われている。ラテン語、しかもその手に精通した考古学者しか読めない中世ラテン語など、単なる受付の平民出のメガミ人が読める物ではない。

 メモに短く書かれているラテン語の文字にはこう書かれている。

 【汝、この手荷物を授かり、この星の真実を自らの目に焼き付けるべし】と。

 無論、マリはラテン語に精通しており、それ以外の言葉など自在に喋られる。中世ラテン語もある程度熟知しているのだ。

 かつて自分の世界に存在していた言葉であるが、マリが若いまま四半世紀の時を向かえた頃には死語と化していた。

 

「受け取るわ。ありがとう」

 

「え、えぇ・・・ありがとうございます。あっ、次の方どうぞ!」

 

 そのメモを読んだマリはカウンターに出された手荷物を受け取り、礼を言ってから施設を後にしようと、出入り口まで向かう。

 受付嬢は渡したメモに書いてある事が気になったが、後ろに並んでいる地球に駐在目的で来た他のお客様を待たせる訳にも行かず、勤務時間終了まで職務に励むことにした。

 一方の施設を出たマリは、外に広がる光景にやや拍子抜けとなっていた。

 何気ない現代日本の町並みその物だが、歩いているのは全て女性。それも日本人的なメガミ人が大半であること。

 皆、容姿も優れており、160~170と高身長が多かった。ここを日本だと勘違いしそうなほどだ。白人系も居るが、町を歩く人数の多さでは黄色系が優っているが。

 

「あら、貴方。地球は初めて?」

 

 施設の出入り口の前で、手荷物を持ちながら突っ立っているマリを地球に初めて降りた旅行者か移住者と勘違いしてか、大和撫子と表して良いほどの黒い髪と美しい外見を持つメガミ人が話し掛けてくる。時期が夏頃にも関わらずに肌は日差しで焼けて居らず、胸も腰つきも良く、女性しか居ないこの町から一歩出れば、男性に声を掛けられること間違いなしだ。

 そんな彼女に対し、マリは首を横に振って断る。

 

「いえ、煩わせるのも何ですし。地図を見ながら行こうと思います」

 

何故かと言えば、他にも地球に初めて降り立った者達が居るのに対し、他の者には目もくれずに自分だけに声を掛けたからだ。

偶然という線もあるが、何か見られては困る不都合な物を隠す線もある。

そう考えたマリは警戒心を隠しつつ、目の前に立つ大和撫子に断りの言葉を告げる。

 

「そうなの。じゃあ、あんまり”租界”から離れちゃ駄目よ」

 

「租界?」

 

 租界と言う言葉を聞き、マリは大和撫子にその事を聞いた。

 

「えっ、知らないの?租界って言うのは私達が今居る場所の事よ。外にいる人間達には女性専用区画って事で通してるけど。まぁ、外にいる人間達にそんな事言っても信じないと思うけど。租界を知らないって、貴方海王星の出身?」

 

「あ、そうです・・・では、自分はここで・・・」

 

「あら、そうなの。じゃあ、租界の外では用心してね」

 

「はい、どうもです・・・」

 

 目の前に立つ大和撫子から租界についてある程度の情報を得ると、礼を言ってから立ち去った。

 何故立ち去ったと言えば、フォル・モーントに取って不都合な物を見た時、相手がスパイであった場合、拘束される可能性があるからだ。拘束されて連行された後、何かされる場合もある。そうこの場にいるメガミ人達が信用ならないマリは、近くにある租界の地図に目を通す。

 租界を囲むように蔽が並べられており、外に居る人間達から見られないようにしている。

 出入り口は四カ所に限られ、メガミ人ならいつでも出入りは可能だが、人間は許可がないとは居られない仕組みとなっている。

 

「それで租界って訳か・・・メガミ人居留地って事ね」

 

 条約改正で西暦1899年、日本で言えば明治32年まで続いた外国人居留地に例え、今入り場所を租界、つまりメガミ人居留地と表した。

 図面を覚えた後、マリは租界の外へ出るため、南の出入り口まで足を運んだ。

 道中、租界の中にある街は賑やかな物であり、地球をまるで自分達が住む土地のように暮らしているように見えた。

 

「(大分賑わっているわね・・・外の様子はどんな物かしら?)」

 

 街の賑やかな様子を歩きながら眺めつつ、出入り口まで足を運ぶ。

 南の出入り口へと辿り着けば、マリが思った通りに厳重な検問が敷かれていた。

 ボディアーマーやカバー付きPASGTヘルメット等の戦闘用防具を身に着け、先程の施設の警備兵と同様にHK G36アサルトライフルを持っており、引き金がいつでも引けるようトリガーガードに人差し指を当てている。おまけにハンヴィーと呼ばれる軍用車両も何台か駐機し、上部に搭載されている恐ろしい連射性を誇るM134ミニガンが銃口を輝かせている。

 そんな厳重な検問を眺めつつ、マリは外に出るために検問を通る。

 当然ながら呼び止められ、検問を警護する兵士がマリに身分証明書を見せるよう問い掛けてくる。

 

「許可無く租界の外へ出ることは禁じられています。身分証明書を出してください」

 

 問われたマリは、手荷物の中に入っている身分証明書となる手帳を取り出し、それを開いて目の前に立つ兵士に見せる。

 

「ヒルデ・フォン・グデーリアン様、名前からして貴族の方ですか。外出は仕事か観光ですか?」

 

「観光よ」

 

「観光で。では、外出を許可します。治安は良いですが、最近何かしらと租界から出て来る者達を狙う輩がおりますのでご注意下さい。それでは、お気を付けて」

 

「えぇ、ありがとう」

 

 外出目的を問われた偽名を名乗ったマリが「観光」と答えれば、兵士は注意してから彼女が外出許可を出す。

 それを笑顔で受け取って礼の言葉を述べたマリは、開かれた門から租界を出て、外の世界に足を踏み入れた。

 

「以下にも普通の日本の街って感じね」

 

 街を歩く黄色人種である日本人の男女を見て、マリは以前行ったことがある日本の街並みみを思い出し、それに例えて口にする。

 彼女が行った通り、特に変化もない日本の街並みであるが、よく目を凝らせば、信じられない光景が目に入った。

 

「なにあれ・・・?」

 

 その光景を人混みの中から見付けたマリは、ダーク・ビジョンを使って確認した。

 そこにあったのは、チンピラ風の男を通わしそうな女性が恫喝する光景であった。

 普通なら逆であるが、月で女性しか使えない機動兵器であるISが台頭し、女尊男卑の世界になっていると聞いていたマリだが、これには驚きを隠せないで居た。

 チンピラ風の男は土下座をしながら腕組みをする女性の前に札束を出し、「見逃してくれ」とみっともなく頭を下げている。

 札束を受け取った女性はその場を立ち去り、男はそれを確認すれば立ち上がって路上に向けて唾を吐く。

 一部始終を見ていたマリは、ダーク・ビジョンを解き、皮肉を漏らす。

 

「まさかここまでとは・・・この世界における男は奴隷的な存在かしら?」

 

 皮肉を漏らした後、この世界における情報を収集すべく、近くの新聞や週刊誌等を売っているコンビニへと向かった。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 コンビニへと入れば、店員の挨拶と電子音が耳に入ってくる。

 店内へ入った彼女は、早速雑誌コーナーへと足を運び、情勢関連の雑誌を手に取り、それを読み始める。

 週刊誌と言っても、殆どスキャンダルやゴシップ、政治に関連性が無いコラムばかりで得られる情報は少なすぎるが、この世界の情報を殆ど知らないマリに取っては収拾すべく情報源の一つだ。

 一ページずつ早読みで捲っていく中、マリの興味を引く特集があった。

 

「ISを唯一動かせる男、織村一夏は性同一障害者か?へぇ、男がISを動かせるんだ・・・」

 

 この時、マリは初めて唯一男でISを動かせる少年、織村一夏(おりむら・いちか)の存在を知る。

 後程彼と対面するとは、まだ彼女は知るよしもない。

 詳細を調べる内、記事を書いた著者の憶測な物ばかりであった為、読んでいる内に飽きてしまい、読むのを止めてしまった。

 

「あーぁ、週刊誌特有の盛り上げるためのガセネタ・・・ろくな情報も無いわね」

 

 そう言って手に取った雑誌を戻すと、マリは更なる情報を入手すべく、日本地図を購入してからコンビニを出た。

 外へ出れば購入した地図を早速開き、情報が集まりそうな場所である図書館を目指す。

 足を運ぶこと数分後、図書館へとたどり着いた。

 

「ここならマシな情報が入りそうね」

 

 図書館を眺めながら呟いたマリは図書館へと入り、ISについての情報を集める。

 

「へぇ・・・今から十年前に・・・」

 

 ISについての情報を仕入れた後、今から十年間の間に起こった出来事を知るため、過去に出た新聞が閲覧できる場所へと移動した。

 

「白騎士事件・・・ISが初めて世界に現れた・・・」

 

 まず彼女はISが初めて世界に現れ、世界の軍事バランスを覆した事件の詳細を知った。

 それを確認すれば、改革に日本の再軍備、軍備増大、日本と大韓民国、朝鮮民主主義共和国との戦争である第二次朝鮮戦争、西南戦争以降の大規模なクーデターなどを見ていく。

 数時間以上立てば、ISが登場して十年間の経歴を確認したマリは「これで十分」と判断し、新聞を戻してから図書館を後にした。

 

「何処に行こうかしら?」

 

 図書館から出て歩道を歩くマリは目的の情報収集も終えたところで、何をしようか悩んでいた。

 まだ昼の時間帯であり、人通りは多い。

 それに朝食も昼食も持っていなかった為、腹を満たすためにデパートへ行くことにする。

 

「ランチにしちゃいましょ」

 

 一人でそう呟き、近くのデパートを目指して足を動かす。

 数十分後にはデパートへ到着し、他の物には目もくれず、飲食フロアを目指した。

 気に入った洋食店へと入り、そこで腹を満たすことにする。

 席について接客に来た店員に食べたい物を注文すれば、ドリンクバーで紅茶を淹れ、席に戻ってから嗜む。

 それから数十分、腹を満たしたマリは会計を済ませてから店を出て、気紛れに決めた場所へと向かおうとする。

 だが、向かおうとした矢先、聞き覚えのある男の声に呼び止められた。

 

「随分と長い寄り道をしていたそうじゃないか、少佐殿」

 

 その声に反応したマリは即座に振り返り、声を掛けた男を見た。

 

「よっ、久し振りだな。復讐を忘れて観光かい?」

 

 軽口を叩く男の正体は、前の世界であるパクスでは姿こそは見せなかったが、援軍という助け船を寄こしたガイドルフ・マカッサーであった。

 パクスの時は文章しか寄こさなかったガイドルフに、マリは声も発することなく目の前に立つ浅黒い肌の男を睨み付け、殺意を放つ。

 そんな殺意を放つマリに、ガイドルフは全く気にせず、平気で軽口を叩いた。

 

「そう再会して早々、殺気を放ちなさんなって。まさか寄り道するなんて思わなかったんだ、それに死んだことになってるってこともな。随分と上手い手だ。連中、あんたが死んでるって本当に思ってるぜ?」

 

 自分が死んだことになっている事を知っているガイドルフに、マリは驚きの表情を隠せないで居たが、この男に対しては一切の言葉を放たず、ただ睨み付けているだけである。

 

「ノーコメントって訳か。寂しい女だな・・・それはそうだ」

 

 睨んで殺気を放つだけのマリに対し、ガイドルフは苦言を漏らした。

 話題を切り替えるためか、懐からある資料を出す。

 

「あんた、この世界について調べてただろう?」

 

 自分がこの世界についての情報を収集していた事を口にしたガイドルフに、マリは眉を歪める。

 

「図星か・・・週刊誌や図書館に保管してある過去十年間の新聞なんかアテにならん。なんたってこの世界を影から支配している百合帝国の残党が世間の皆様に漏れないようにしてるからな。この資料は月にいる影の支配者共が驚く程の物が書かれている。集めるのに苦労したぜ」

 

 そう言って、ガイドルフはマリがパクスにいる間に集めた資料を彼女の前に出す。

 資料を礼も言わずにマリは手に取り、それを読み始める。

 

「第二次朝鮮戦争・・・世間じゃ、戦後最大で生まれ変わった日本の初の大勝利と騒いでいるが、戦争ってのはいつでもつらい物(もん)さ。脱走兵やら味方同士の殺し合い、虐殺なんかやらの都合が悪い物は全部隠してやがる。まぁ、俺の手に掛かれば軍が隠してることなんか分かっちまう物だがな」

 

 資料を読んでいるマリに、ガイドルフは集めた資料の苦労さを自慢げに話すが、彼女は全く聞いていない。

 

「ISが初めて登場した白騎士事件なんかは、死傷者0なんて大層に言ってるが、死傷者が出ている。それに乗ってた女はその事で酷くショックを受けていてな、罪滅ぼしに被害者の遺族全員に送金なり、謝罪周りなりしているそうだ」

 

 マリが知らないことまで告げた後、煙草を取り出し、一本加えて先に火を付けて煙草を吸う。

 煙を吐いた後、ガイドルフはマリに渡した資料をどうするかどうかを彼女に任せる。

 

「その資料をどうするかどうかはあんた次第だ。警察なり情報機関なり届けてるが良い。まぁ、月に居る連中の息の掛かった奴等に揉み消されちまうがな」

 

 ガイドルフが煙草を吸いながら告げれば、マリは資料をある程度読み終えた後であり、資料を一目見た後、持ってきた鞄に入れ込む。

 

「読み終えた後でどうするかだな。それじゃ俺はここからずらかるぜ。ちょいとヘマをやらかして、月の連中に目を付けられているようでな。じゃ、無事に能力を見付けられることを祈る」

 

 自分だけに無口になるマリに、ガイドルフは煙草の灰を携帯型の灰皿に灰を落として別れの言葉を告げれば、煙草を咥えながらその場から立ち去った。

 

「ストーカー・・・」

 

 再び目の前に現れ、資料を渡せば背中を見せて立ち去っていくガイドルフに、マリはストーカー呼ばわりした後、気紛れにデパート内を歩き回る。

 大方デパート内を回れば、地図を取り出し、この地域の場所を調べる。

 

「IS学園?」

 

 湾の中に、人工島があった。そこにはIS学園と書かれている。

 気になったマリは書店へ足を運び、IS学園関連の本を読み漁る。

 

「へぇ・・・ISの操縦者を育成する高校なの」

 

 読み漁った本で、IS学園がIS操縦者育成用の国立特殊学園であることが分かる。

 学園の土地はどの国家機関にも属さず、いかなる国家や組織であろうとも学園の関係者には一切干渉できない国際条約まであり、それゆえ他国のISとの比較や新技術の試験にも適した面で重宝されている。

 ここに通うのは成人女性ではなく、15~18歳の少女達だ。唯一男性でISを動かせる少年、織村一夏もこの学園に通っている。女性でしかISは動かせない為、教師も女性しか居ない。

 その事が分かったマリは、屋上にある展望台へと上がり、双眼鏡からIS学園を見る。

 

「これがIS学園ね」

 

 IS学園がある人工島を見たマリは、そう呟いて興味を持つ。

 学園本館の隣に、未来都市のような施設があった。

 気になって地図を調べてみたが、なにも記載されておらず、携帯端末を取り出そうにも、鞄には入ってはいない。

 諦めたマリは潤すべく、自販機まで向かおうとする。

 下に降りている最中、下から日本では聞くことが筒底はない連発した銃声が聞こえた。

 

「っ!?」

 

 銃声に反応したマリは様子を確かめるべく、屋上から下の階まで降りようとしたが、日本では手に入らないであろうアメリカの小型短機関銃イングラムM10を持った男が前に現れた。

 銃口は彼女の方へ向いており、安全装置も解除され、いつでも撃てる構えだ。

 

「動くな!」

 

 覆面を着けている男は小型の短機関銃の銃口をマリに突き付け、動かないように告げる。

 数秒後、男の後ろからは様々な銃を持った男達が屋上に入り込んできた。

 どうやらこのデパートに入り込んだ武装した男達は客達を人質に取って、立て籠もる気だ。

 銃を持った男達を見た屋上にいる客達は悲鳴を上げたが、一人の良く紛争地域で見られるAK系統の突撃銃を空に銃口を向けて数発ほど撃ち、客達を黙らせた。

 

「テメェ等!静かにしねぇと鉛玉ぶち込むぞ!分かったら一カ所へ集まれ!!」

 

 発砲した男は客達に向けて怒鳴り散らし、一カ所へ集まるよう指示を出した。

 マリは隙あれば周囲にいる強盗達を倒すことが出来たが、白い学生服を着ている女子高生の髪を掴んだ強盗がおり、下手に動けば彼女の危険が及ぶと思い、手を出すことが出来ず、大人しく従うことしかなかった。

 人質達が集められている場所へと、手を挙げながら移動し、そこでチャンスを待つことにした。

 途中、女子高生の髪を掴む二連装散弾銃を持つ強盗を、M14自動小銃の民間モデルを持つ男が注意する。

 

「おい、IS学園の生徒は大事な人質だぞ!丁重に扱え!」

 

「ちっ、分かったよ!」

 

 注意された散弾銃を持つ強盗は舌打ちをして女子高生の髪から手を離し、代わりに腕を掴む。

 どうやら、捕まっている女子高生はIS学園の生徒のようだ。

 

「人質を前に出して狙撃が出来ないようにしろ!」

 

 AK-103突撃銃を持つサングラスを掛けたリーダー格のバラクラバの男は、狙撃対策のために仲間に人質を盾にするよう指示する。

 仲間が指示通りに動いたのを確認すると無線機を取り出し、他の場所にいる仲間に問う。

 

「こちらA1、屋上は抑えた。一階と地下はEチームが抑えている。B1はどうだ?」

 

『こちらB1、二階は抑えた。目標の女は見付からない!オーバー』

 

『こちらC1、三階を抑えたが目標は見付からず!』

 

『D1、四階は抑えてる。こっちは女を見てない!』

 

「クソッ、あのちくり屋、ガセネタだったら頭を吹っ飛ばしてやる!なんとしても見つけ出せ!アウト!」

 

 目標の女を捕らえる為にデパートに武装して乗り込んできたようだ。

 それを確認した後、マリはチャンスが来るのをひたすら待つ。少しでも情報を得るべく、彼女は強盗の装備を見る。軍用銃も幾つかあるが、殆どは密造された物だろう。

 銃をマリ達に突き付けている者達以外の者達は大半が銃口を上に向けるなりしていたが、何名かは銃口を足に向けていた。

 この動作を取っていると察するに、元軍人だ。

 ISの登場か、はたまた前の戦争で退役した将兵が金銭に困って起こしたのだろう。

 動きが組織的であると言うことは、入念に計画を立てて装備も長い期間を掛けて集めた人質作戦を取ったと思われる。

 そう思ったマリは、更に情報を得るため、強盗の装備を見ていたが、サイレン音が耳に入ってきた。

 

「おい、サツのお出ましだ!」

 

「予想通りに来たな。お前等、サツが入らないように人質を前に出せ!」

 

 見張り台に立つ男がリーダー格に知らせれば、リーダーは無線機を手にとって、他の階に居る仲間達に指示を出した。

 その時、リーダー格が持つ無線機がアラートを鳴らした。

 

「なんだ?」

 

『こちらD4、女を捕まえた!何人かやられたが人質を取れば楽勝だったぜ!計画通り、今すぐ屋上へ連れて行く!』

 

「よし、これで外国に高飛びだ。警察と交渉を始める!」

 

 良くそれを耳にしていたマリは、強盗達が目標の女を捕まえたことを知った。

 他の人質達にも聞こえているが、銃を向けられて動きが取れない以上、意味がない。

 数分後、強盗達に囚われた女がマリ達の前に姿を現した。

 その女はこの世界ではかなり名の知られているIS乗りであり、現IS学園教師の織村千冬(おりむら・ちふゆ)であった。

 これには人質達は驚きを隠せず、鋭い吊り目に、黒いスーツが似合う長身とボディラインが特徴的な彼女の名を口にする。

 

「織村千冬だ・・・!」

 

「IS学園が近いからなの・・・!?」

 

「初代モンド・グロッソの優勝者を人質に取るなんて、あんた等正気なの!?」

 

 口々に人質達は、人質にした女性に手を出したことが、どれだけ愚かしいことなのかを強盗達に向けて言い立てる。

 それに苛ついてか、イングラムM10を持つ覆面の男が空へ向け、持っている銃を乱射した。

 

「うるせぇぞ!IS学園の関係者だか、モンド・グロッソの優勝者なんか関係ねぇんだよ!テメェ等は黙ってろ!!」

 

 連発した銃声で悲鳴を上げた人質達は、床に伏せる。

 それを見た千冬は銃声に臆せず、鼻で笑ってから平然と口を開く。

 

「フッ、何人かは統率が取れているが、他はチンピラだな」

 

「んだと?このアマ・・・!偉そうにしやがって・・・!」

 

 覆面の男は千冬に銃口を突き付けようとしたが、これを徴発と見抜いたリーダー格の男は、覆面の男を抑えた。

 

「よせっ、こいつは徴発だ!徴発は止して貰おうか、ブリュンヒルデさん」

 

 その名を口にしたリーダー格は、銃口を慣れた手付きで千冬に向けながら告げる。

 銃を向ける男にブリュンヒルデと呼ばれた千冬は眉を歪め、鋭い目付きで目の前にいる銃を向ける男を睨み付けた。

 どうやら、ブリュンヒルデと呼ばれることを嫌っているらしい。

 話を変えたのか、千冬は強盗達に人質を解放するよう説得を始める。

 

「貴様、その素振り、元軍人だな?IS学園の関係者を人質に取れば、どうなるか承知の上でか?今すぐ人質達と私を含めるIS学園の関係者を解放すれば、死刑にはならないよう取りはからってやるが?」

 

 自分を含めた人質達を解放すれば、死刑だけは勘弁してやる。

 そう説得する千冬であったが、リーダー格はそれを鼻で笑って断った。

 

「失礼だが、織村先生。我々は死を覚悟している。俺はあの戦争を生き抜いた。だが、軍は何の勲章も出さず、俺を軍から追い出した。三年前のクーデターに参加したが、失敗して追われる身だ」

 

 自分がこの人質事件を起こした経緯を話すリーダー格。

 表情をバラクラバやサングラスで見せないリーダー格は更に続ける。

 

「三年にも及ぶ潜伏生活は酷い物だった。だから俺はお前等を人質にして、多額の退職金と慰謝料を貰うって訳さ」

 

「金が目的か・・・!」

 

「そうだ、政府と軍は俺達退役兵に慰謝料を払うべきだ。申請しても奴等は払いもしない。だからこれで申請してるって訳よ。その金で高飛びすりゃ、解決だぜ」

 

 自慢げに語るリーダーに、千冬は拳を握る。

 そんな時に、リーダーが持つ無線機が鳴った。

 

「どうした?」

 

『こちらC7!トンファーを持った男が!ギャッ!!』

 

「おいどうした!?応答しろ!一体何が起こってるんだ・・・?」

 

 悲鳴と共に通信が途切れたので、リーダーはやや動揺を覚える。

 マリはこれを好機と見たが、動き出すにはまだ早い。

 

 

 

 一方、強盗の仲間を倒したトンファーの男は、次々と出て来る強盗達を倒しつつ、屋上を目指していた。

 男は青い髪とガッチリした体格を持つ青年であり、身長は182㎝と高身長だ。

 身のこなしは抜群で、銃を持った強盗達が、各々が構える銃を撃つ前に素早く接近して武器であるトンファーを器用に使って殴り倒す。

 

「な、なんて野郎だ!」

 

「こっちは銃だぞ!」

 

 強盗達はそれぞれが持つ銃を青年に向けて撃つが、青年はそれを避け、素早く動いて接近してトンファーで次々と強盗を殴り倒していく。人質を持ち出して投降するように応じる強盗も居たが、投げられたトンファーで呆気なくやられてしまう。青年は易々と屋上まで続く防衛線を突破していく。

 やがて、最上階にまで上り詰める。

 待ち伏せていた強盗達が十字砲火を浴びせるも、青年は煙球を投げ込み、強盗達の視界を奪う。

 

「スモークグレネードか!?グワッ!」

 

 強盗の一人が叫んだ途端、トンファーによって殴り倒された。

 他の強盗達も次々と倒され、たった一人のトンファーを持った青年に、屋上まで続く階段の守りを突破されてしまった。

 

 

 

「クソッ、CチームとDチームの誰からの応答がねぇ!B1とE1!何名か増援を寄こせ!!」

 

 冷静さを失い始めたリーダーは、一階と二階にいる仲間達から増援を出すように無線で伝える。

 これを好機と見たマリは、目の前で視線をリーダーの方へ向けている強盗の首をへし折り、強盗がサイドワームとして持っているベレッタPT92自動拳銃を奪い取り、安全装置を外して屋上で狙撃対策をしている強盗達へ向けて撃った。

 瞬く間に狙撃対策を担当していた強盗達は、頭に9㎜パラベラム弾を一発ずつ撃ち込まれ、床の上に倒れ込んだ。

 

「てめぇ!」

 

 仲間を数人ほど撃ち殺したマリに、強盗は怒りで猟銃であるレミントンM700を撃とうとしたが、彼女の方が早く、数発ほど撃ち込まれて絶命する。

 マリが強盗を次々と仕留める中、千冬も反撃に転じ、近くにいた強盗が彼女の方へと向いたのを見てからその強盗の頭を掴み、背負い投げをして床に叩き付ける。

 千冬の脅威に気付いた強盗達は彼女にも銃を向けるが、やはりただ者ではなく、次々と殴り倒されていく。

 銃を撃った者が居たが、千冬は人とは思えない速さでそれを避け、強盗の腹に強烈なパンチをお見舞いした。

 強盗が残り三名となった所で、二人はリーダーを含める三人を倒そうと思ったが、リーダー達は幼い子供を人質に取っていた。

 

「動くな。この餓鬼の頭を吹っ飛ばすぞ」

 

 リーダーはP220自動拳銃の銃口を幼い少年の頭に突き付け、拳銃を向けるマリと、拳を構える千冬に向けて告げる。

 二連装散弾銃を持つ強盗は一カ所に集められた人質達にも銃口を向けており、二人は迂闊に手が出せないで居た。

 

「良くも仲間をやってくれたな。本当にお前等二人はただじゃ済まさんぞ!」

 

 リーダーが二人に向けて告げている最中、エレベータから上がってきた各々の強盗達が持つ銃をマリと千冬に向けてくる。

 絶体絶命と二人が思ったとき、階段からあのトンファーの青年が現れた。

 

「あいつは・・・!」

 

 一人が銃を向けて撃とうとしたが、青年は銃を撃つ前に接近してトンファーで殴り倒す。

 続けて数名以上を連続で倒し、瞬く間に増援を全滅させれば一気にリーダーの所まで向かってくる。

 

「動くな!餓鬼と人質が・・・!」

 

 リーダーは少年の頭に銃口を突き付けながら青年に警告するも、もう既に近付かれてしまった後であり、頭をトンファーで殴り付けられて吹き飛び、他の二人も蹴られるか殴られるかで倒されてしまった。

 

「す、凄い・・・!」

 

「好みのこなし・・・何処の所属だ・・・?」

 

 強盗達を制圧した青年に、マリが驚きの声を上げ、千冬が所属を問う中、その青年は千冬の問いには答えず、IS学園がある方向へと歩き出す。

 そして、IS学園を指差すと、青年は固く閉じていた口をようやく開いた。

 

「俺の名はエイジ。あの人工島、IS学園は狙われている!」




ガイドルフ、クソ久々な登場。

それにあのエイジさんが登場。

「僕の名はエイジ。地球は狙われている!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。