復讐者の世界周り Weltdrehung des Rächers   作:ダス・ライヒ

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五十嵐の活躍・・・これで良いかな・・・?


私は戦艦だって余裕なの!

 マリが自分専用のIS「クウァエダム・デア」を試験運用している頃、IS学園がある人工島より少し離れた陸地にある日本国防空軍のIS学園防空戦隊の基地にて、ミーティングが行われていた。

 情報は収拾済みであり、対応策は直ぐに出されていた。

 試験場の警備兵が言ったとおり、IS学園防空部隊から二個戦闘機大隊に、本土から二個攻撃機大隊をIS学園に向かっているクーデター派の残党艦隊の攻撃に向かう。

 他にも、本土より発進した空軍の一個飛行団と、空母一隻を旗艦とした駆逐艦やフリゲートで編成された海軍の第三艦隊が敵艦隊殲滅のために急行している。

 既に日は沈んで月が空へ上がっている夜であり、ミーティングを行う戦隊指揮官の後ろには、ボードが置かれ、それに照明器が当てられている。

 防空戦隊に属する二個飛行大隊分のパイロット達が上官の前に集合すれば、それを確認した戦隊指揮官はミーティングを始める。

 飛行大隊のパイロット達の中には、第三大隊の大隊長である五十嵐裕也の姿があった。

 

「諸君、夜分集まってくれたのは他でもない。見ての通り緊急事態だ。クーデター派こと国粋主義派、あるいは諸君等が言う超国家主義者達が深海に沈んでいた戦艦を浮揚させて強化させた戦艦がIS学園へと向かっている」

 

 戦隊指揮官はこれから任務を行うパイロット達に状況説明を行った。

 当然ながら、現代戦では単なるデカイ的である戦艦が、自分達が守るべきIS学園に向かっていると聞いたパイロット達は笑い始める。

 それを指揮官が注意し、ミーティングを続行する。

 

「笑い事じゃないぞ。この戦艦は単なる的ではない。現在海軍の首都防衛任務に就いている現代戦艦信濃並の性能を誇っている。おそらく、朝鮮半島にある放棄された造船所で中止にされた計画を奴等が続行したのだろう」

 

 ボードに貼られている戦艦らしき艦影が映った写真を指し棒で示しながら、説明を行う。

 

「これがその戦艦だ。これを撮影した偵察機は命辛々近くの基地へ着陸した。見たところ、大和型戦艦の武蔵を模した用だが、大きさは大和型を上回る全長350mで全幅60m。主砲は良く分からないが、朝鮮半島で試し撃ちされた平地の痕跡を見れば、53口径50㎝の連装砲だと思われる」

 

「53口径50㎝?そんな大砲が詰めるのかよ。信濃なんか大和と同じの45口径46㎝連装砲のまんまだぜ」

 

 指揮官の説明を聞いてか、パイロットの一人が世界で唯一の現役である自国の戦艦の事を口にする。

 

「そうだ。現在我が国最大の艦艇である信濃すら遙かに上回る化け物だ。この大きさの艦艇の撃沈は、対艦ミサイルや魚雷を持ってしても困難を極めるだろう。そこで、君達には対艦ミサイルや対艦用魚雷を搭載した攻撃機を守って貰いたい。敵艦隊の注意は海軍の第三艦隊に引いてもらう予定だ」

 

「済みません。戦艦を沈めるなら、ミサイル駆逐艦の巡航ミサイルや潜水艦の魚雷だけでも十分なのでは?」

 

 任務の内容を説明した後、パイロットの一人が指揮官に質問した。

 

「残念ながら、標的の戦艦にはイージス艦が護衛に着いており、更に空母まで随伴し、防空も充実している。おまけに潜水艦も随伴して、対潜水艦機能も備えている。巡航ミサイルや魚雷などは直ぐに察知され、迎撃される。仮に潜水艦が戦艦の轟沈に成功したところで、その潜水艦は忽ち駆逐艦やイージス艦の餌食となるだろう。旧軍の言葉で言えば、一矢報いるとな」

 

「そうなりますか・・・済みません」

 

 そう指揮官からの答えを聞いた一介のパイロットは、自分の考えが浅はかだった事を知ってか、謝罪した。

 それからは手順が説明されたが、指揮官は腕時計を見てもうすぐ作戦開始時刻だと言うことを知り、目の前にいるパイロット達に目線を向け、口を開いた。

 

「もうこんな時間か。そろそろ攻撃隊が発進している頃だ。それでは諸君、超国家主義者の艦隊を撃ち倒し、奴等が信じ込んでいる大艦砲巨砲主義が既に廃それた物と思い知らせろ!!」

 

『了解!』

 

 その指揮官の号令と共に、パイロット達は一斉に各々の搭乗機に乗るため、駆け足で向かう。

 裕也も向かう中、腐れ縁で戦友である同僚の荒井亮太(あらいりょうた)が話し掛けて来る。

 

「おい、五十嵐!あいつ等、戦艦なんて馬鹿じゃねぇのか」

 

「あぁ、戦艦なんて、現代戦じゃ単なる的だ。第二朝鮮戦争(ユギオⅡ)で信濃に巡航ミサイルが命中して大破しかけたのにな」

 

「大艦砲巨砲主義って奴に拘るって、あいつ等の脳内は前時代に退化したのかな?」

 

「多分、退化してるだろうな。信濃がそれを証明している。生き残れよ、荒井!」

 

「おう!お前も死ぬなよ!」

 

 出撃前の同僚との会話を済ませた後、裕也は自分のF/A4「紫電」に駆け足で向かい、開いているコクピットへ乗り込む。

 シートベルトを締めて、キャノピーを閉めて操縦桿を握れば、誘導員の指示に従って機体を滑走路まで移動させる。

 まず発進するのは、裕也が率いる第三大隊だ。裕也が乗る紫電が先に発進し、その後を彼の部下が飛び立っていく。

 飛び立つ前に、裕也は部下達にブリーフィングで聞かされた作戦失敗条件を再度告げる。

 

「良いか、第一防衛ラインに入られたら終わりだ。あの大口径の主砲の射程距離はIS学園を捉えられるかもしれない。防衛ラインに入られる前に沈めろ!」

 

『了解!』

 

「よし!こちら第三飛行大隊、出撃する!」

 

 部下達の返答を聞いた後、裕也は管制塔へ離陸を通達してからスロットルレバーを全快に上げ、基地から離陸して出撃した。

 その後を部下達が乗る紫電が続き、次々と基地から飛び立っていく。第三飛行大隊が全機飛び立てば、次は同僚の亮太が乗る第四飛行大隊だ。

 数秒後、第三大隊の機体が全て飛び立てば第四大隊の紫電が滑走路へと入る。

 更に数分後、任務に当たる飛行部隊は全機基地から飛び立ち、裕也の大隊が向かう敵艦隊が居る方向への針路を取った。

 

 

 

 一方、裕也達が出撃した頃、警備の兵士達の会話からIS学園に向かっている戦艦を旗艦とした敵艦隊の存在を知ったマリは、艦隊が居る方向にある海岸線まで走っていた。

 

「後どのくらいかな?」

 

 走りながらダーク・ビジョンで距離を測りつつ、海岸の位置を確認する。

 人目に付かない森へと入れば、瞬間移動を使って目標までの距離を縮める。

 国道を通り越し、海岸まで着けば、岸まで一気に向かい、転落防止の柵を跳び越え、崖を飛び降りる。

 海へと落下していく中、マリは待機状態のクウァエダム・デアを起動させ、自分専用のISを身に纏う。

 その時間は僅か数秒、ISを身に纏ったマリは落ちる寸前に一気に海面を加速し、水飛沫を上げながら実戦テストの標的である敵艦隊が居る方向へと向かった。

 レーダーで正確な位置を把握すれば、いち早くつこうと高度を上げる。

 

「こっちの方向ね」

 

 月の光を浴びながらマリは広範囲レーダーに映る多数の赤い点を見て、位置を確認した後、赤い点がある方向へと向かう。

 途中、敵艦隊の迎撃へ向かう日本国防空軍のF3戦闘機と攻撃機型のF-35B戦闘機の編隊と遭遇したが、マリは遠慮無しに真ん中を突っ切った。

 

「邪魔!」

 

 高速で突っ切った為か、攻撃隊の編隊が乱れる。かなり恨みを買っていそうだが、マリは気にすることもなく敵艦隊へと向かう。

 近付くにつれ、砲声や爆破音が徐々に聞こえ、戦場が近い事を知らせてくる。

 中でも戦艦が放つ主砲の砲声が大きく、敵艦隊の旗艦である戦艦がどの位置に居るか分かる。

 

「そっちに居るのね」

 

 戦艦が居る方向に視線を向けたマリは、全速力でその方向へと向かった。

 途中、損傷した艦載機の着艦を受け入れている空母が見えた。

 空母の名は葛城(かつらぎ)型正規空母。損傷して収容されている艦載機は、壱式艦上戦闘機だ。

 負傷者や損傷機の収容や補給作業を行う空母の上を通過し、マリは主戦場へと向かう。

 

「見えた!」

 

 敵艦隊を捕捉したマリは全ての武装の安全装置を解除し、手近な敵を落とそうと標的を探す。

 マリが来る頃には正規軍側は劣勢であり、海面には黒煙を上げる駆逐艦やフリゲートが浮かび、助けを求める日本国防海軍の将兵達の姿が見える。

 生き残っている艦艇による救出活動は行われているが、敵艦隊は容赦なく砲撃を浴びせ、妨害している。

 それを見ていたら、敵の壱式艦上戦闘機三機がマリのクウァエダム・デアを見るや、何の警告も無しに攻撃してきた。

 

「IS目ぇ!死にやがれぇ!!」

 

 敵のパイロットは険悪感剥き出しで操縦桿のトリガーを引き、空対空ミサイルを発射した。

 当然ながらマリはそれを回避し、ビームライフルで三機とも撃墜する。

 三機を撃墜すれば、数十機や海面にいる敵艦がマリに向けて集中砲火を掛けてくる。

 ISでも避けられないほどの集中砲火が浴びせられ、流石のマリでも数発以上が当たってしまう。

 絶対防御が無ければ、一撃で撃墜されていただろう。

 周りにいるVTOLや戦闘機を一掃しようと、ビームビットを展開させる。

 展開した六基のビットは不規則に動きながら標的に向かい、標的を射程距離に捉えれば、ビームを撃ち込み、撃墜する。

 不規則に動くため、通常の戦闘機や戦闘ヘリである敵機は回避する間もなく、次々と撃ち落とされていく。

 

「うわぁぁぁ!た、助けてくれぇぇぇ!!」

 

 敵機のパイロットは仲間達が次々と撃墜されるのを見て、次は自分の出番だと思って恐怖に駆られ、戦場から逃げ出そうとする。

 だが、マリが逃すこと筈もなく、エンジンにビームライフルを撃ち込まれ撃墜される。

 敵機をある程度掃討すれば、今度は駆逐艦の出番だ。

 駆逐艦はISを近付けまいと、CIWSや対空機関砲、対空ミサイルを連発しているが、マリはそれを避けつつ、駆逐艦に接近する。

 

「う、撃て!奴を近付けるな!!」

 

 戦闘指揮所に居る艦長が必死で叫ぶが、マリはそれを軽やかに避け、近付いてくる。

 ダーク・ビジョンで駆逐艦の弱点を確認すれば、ビームライフルを量子化してバズーカを実体化させ、実弾にセットして、そこに照準を合わせる。

 照準が合えば、直ぐに引き金を引き、強力なロケット弾を撃ち込む。発射されたロケット弾は弱点部に直撃し、駆逐艦は真二つに割れて轟沈した。それを見たマリは、改めて凄まじい火力と認識する。

 

「凄いわね。これなら、行ける!」

 

 自信を付けたマリは、自分に向けて艦砲を撃ち込んでくるフリゲート二隻に向けて、ビットを全て差し向けた。

 ビットを撃ち落とそうと、弾幕を張るフリゲート二隻だが、小さくて高速で動き回る的に当てられる筈もなく、数秒ほどで二席とも海の藻屑と化す。

 次に潜水艦を標的に捉え、見える範囲にいる潜水艦に向けてバズーカのロケット弾を撃ち込む。

 潜水艦は海面から来る攻撃を避けようとするのだが、マリは進路を予想してそこに撃ち込み、次々と沈めていく。

 ある程度の潜水艦を沈めれば、マリは上空へと高度を上げ、戦艦を捕捉した。

 

「あれね!あの大きさはやりがいがありそうね」

 

 標的である戦艦大和より巨大な戦艦を見付けたマリは、やりがいを感じ、そこへ行こうとした。

 やはり気付かれていたのか、戦艦から主砲が浴びせられる。

 

「うわっ!?」

 

 放たれたのは対空砲弾である三式弾に似た物だったのか、マリは炸裂する寸前で砲弾をビットに迎撃させた。目の前で爆発が起こり、視界が爆煙で防がれる。煙が晴れる前に、マリは回り込もうとしたが、地上からやって来たF3戦闘機を中心とした敵航空部隊の増援が現れ、戦艦への道を塞がれた。

 

「旗艦に近付けるな!!」

 

 長機が指示を出せば、マリに向けて地対空ミサイルを一斉に発射してくる。

 飛んでくるミサイルを回避するか、ライフルやビットで迎撃しつつ、敵機を撃ち落とそうとする。

 敵編隊は直ぐに散会するが、一機は逃げ切ることなく接近され、クウァエダム・デアのパイルバンカーをコクピットに撃ち込まれようとしていた。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

 パイロットは悲鳴を上げて脱出装置を作動させようとするが、マリの方が早く、発射されてキャノピーを貫通したパイルバンカーの杭に串刺しにされた。

 キャノピーが真っ赤に染まる中、マリは引き抜いて包囲して機銃を浴びせてくる敵機を撃ち落としながら海上の攻撃を回避する。

 敵機をある程度撃ち落としていると、正規軍とクーデター派の増援が一挙にこの空域に現れた。

 正規軍の増援は裕也達のF/A4戦闘機二個大隊分とF2支援戦闘機やF-35Bであり、敵は戦闘機と攻撃機の三個大隊ほどであった。

 

「正規軍側の援軍?」

 

 裕也達の部隊を見たマリはそう呟き、自分に襲い掛かってくる敵機や敵艦の対処に当たった。

 そんな矢先、部下に指示を出しや敵機との格闘戦を行っていた裕也は、マリのクウァエダム・デアを見付ける。

 

「IS?なんでこんな場所にISが・・・?」

 

 キャノピーから見えるマリのISが敵機を次々と堕としていくのを見て、そう声に出し、通信機を使って戦闘指揮所に居るアルファ1のコールサインを持つ航空管制官に問う。

 

「こちらシューターリーダーよりアルファ1へ、当空域にISの存在を確認せり。見たこともないISだが、何処の試験場の所属だ?オーバー」

 

『こちらアルファ1、ISだって?IS学園は一機も出してないって言ってるぞ』

 

「なに?じゃあ、一体あのISは何処の所属なんだ!?うわっ!クソッタレ!FOX3(フォックススリー)!!」

 

 アルファ1からの返答を聞いた裕也は、驚きの声を漏らす。

 どうやら、所属不明のISをマリ専用クウァエダム・デアとはまだ気付いていないようだ。

 そんな時に敵機からの攻撃を受けて損傷し、目の前に背中を晒した敵機を機関砲で撃ち、撃墜した。

 通信で損傷したのに気付いたアルファ1は、裕也に無事かどうかを問う。

 

『大丈夫か!?シューターリーダー!』

 

「大丈夫、ただの掠り傷だ。戦闘は継続可能。シューターリーダー、アウト」

 

 無事を告げてから、裕也は通信を切った後、前から来る敵機を照準に捉え、発射のタイミングを見計らってトリガーに指を掛ける。

 そのタイミングが来れば、トリガーを引き、空対空ミサイルを発射した。

 敵機は混戦でフレアを使い尽くしたのか、高速でミサイルから逃れようとするが、逃げ切れることもなく、ミサイルが命中し、大破する。

 ある程度の敵機を堕とした裕也はISの正体を掴もうと、敵機を撃ち落としているマリのクウァエダム・デアに出来るだけ近付く。

 

「あいつか!」

 

 正体がマリだと分かった裕也は、巻き込まれないようにそこから離れて、同僚の亮太に通信を繋ぐ。

 

「こちらシューターリーダーより、バーミリオンリーダーへ。あのISに乗ってるのはあいつだ!あの金髪の女だ!!」

 

『マジか!?哨戒飛行の時にちょっかい掛けてきたあの女か!!』

 

 裕也からの知らせに、彼からその時のことを聞いていた亮太は興奮して声を上げる。

 

『しかし、どうしてあのISなんかに乗ってるんだ?』

 

「知らん。ISの実戦試験か何かだ。どちらにせよ、迷惑なことに変わりない。ISはスポーツでもやってれば良いんだ!下から来るぞ!」

 

 亮太からの疑問に、裕也は皮肉を混ぜて答えた後、部下に敵機が下から来ていることを知らせた。

 一方のマリはと言えば、包囲して四方八方から仕掛けてくる敵機の攻撃を避けつつ、敵機を撃破していた。

 対IS戦用の戦法であるが、これを退けるマリの腕前を見て、敵機のパイロットは驚きの声を上げる。

 

「なんだこいつは!?対IS戦法が効かないぞ!」

 

 そう声を上げた後、コクピットにビームを撃ち込まれ、そのパイロットは高熱の熱で蒸発し、機体は大破した。

 通常のISなら効くはずの戦法であるが、マリには通じなかったようだ。

 それもその筈、彼女は元戦闘機のパイロットであり、この空域で戦う戦闘機パイロット達よりも遙か先の撃墜数や実戦経験を誇る撃墜王なのだから・・・

 マリは目の前に見える全ての敵機の動きを読みつつ、進路を予想してそこへ20㎜機関砲やビームを撃ち込む。

 先の世界でザシャ・テーゼナーがやっていたアフリカの星の異名を持つドイツ空軍のエースパイロット、ハンス・ヨアヒム・マルセイユの偏差射撃だ。

 しっかりとザシャの偏差射撃を見ていたマリはそれを覚え、この空戦で超人的な偏差射撃を実行したのだ。

 これには敵機のパイロット達は、自分等の動きが分かっているようなISの操縦者に恐怖を覚える。

 

「お、俺達の動きを分かってるのか!?」

 

 一人のパイロットがそう叫べば、彼が乗る戦闘機は機関砲で蜂の巣にされ、空中爆発を起こした。

 超人的な偏差射撃を敵の攻撃をかわしながら行うマリを見て、裕也は彼女が人間でないと錯覚し始める。

実際、彼女は人間ではないのだが、マリのことを良く知らない裕也達に取ってはそう思えてしまう。

更に彼等が驚き、敵の戦意が削がれるような事をマリはやってみせた。

それは敵機が特攻を仕掛けてきた後である。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 特攻を行うパイロットは、マリも道連れにしようと、全速力でクウァエダム・デアに突っ込んできたが、彼女は特攻が来るのを分かっていたが、敢えて撃墜しようとせず、相手が仕掛けてくるのを待っていた。

 特攻してくるF3戦闘機を軽やかに避けた後、マリは接近専用の武器であるビームサーベルを実体化させ、敵機の胴体を突き刺す。

 刺した部分から自動的に斬れていき、割れた敵機は大破する。

 敵機が大破した直後、マリの目に二機の敵機が同時に重なり合う瞬間が見えた。空かさずビームライフルをそこへ向け、引き金を引いた。

 

「なっ!に、二機抜きだと・・・!?」

 

 その信じられる光景を見ていた裕也は、驚愕の表情を見せていた。

 それは一発のビームで二機の敵機を撃墜したからだ。

同時に重なり合った瞬間、マリはライフルを撃ち込んだ。発射された強力なビームは一機目を貫通した後、二機目に命中した。

高速で動き回る戦闘機を二機とも撃ち抜くことなど、並の人間では出来る物ではない。

超人的な反射神経を持つ者でしか出来ぬ離れ業だ。

 

「これである程度は片付けたわね!」

 

 敵機をある程度の数を撃墜したマリは、敵艦隊に向けて突貫した。

 裕也は負けずとマリの後を追おうとするが、敵艦隊からの凄まじい対空砲火やミサイルで阻まれ、引き離される。

 

『こちらシューター18!被弾した!離脱する!!』

 

「クソッ、戦闘機じゃここが限界って言うのかよ!」

 

 通常兵器の戦闘機では突破できず、部下の機体が離脱したのを見た裕也は悔しがり、情けなさを感じて左手でキャノピーを殴る。

 そしてISに乗り込むマリは、まず空母から仕留めようと、音速の速さで敵空母へと接近する。

 対空放火を避けつつ、空母の間近まで接近すると、飛行甲板を突き破って艦内へと強引に入り込む。

 

「ISだ!!」

 

「撃て!撃てぇ!!」

 

 艦内へと入り込めば、乗員達が手に持つ銃をマリに向けて撃ち始める。

 当然ながらISの絶対防御で守られたマリには銃弾は通じず、ただ弾かれて床に落ちるだけである。

 周りにいる乗員達を鬱陶しいと思うマリは、20㎜機関砲を回転しながら撃った。

 忽ち周囲にいる乗員達は20㎜弾を受け、肉塊と化し、内臓や血が周囲に散らばる。

 とても恐ろしい光景であり、生き残った乗員は怯えながらマリのクウァエダム・デアから逃げる。

 左手に実体化させたバズーカを持てば、マリは周囲に向けてビームライフルと一緒に手当たり次第に撃ち込んだ。

 周囲にある弾薬や燃料タンク、駐機してある敵機に当たり、艦内で誘爆が起こり、あちこちで火災が発生する。

 乗員達は火を消そうとはせず、一刻も早く空母から脱出しようと脱出艇へと走る。

 炎を浴びて全身火達磨になった乗員や、身体の一部や下半身を無くした乗員も居たが、誰一人助けることなく、外へと向かう。

 ある程度撃ち込んだ後、マリは地獄と化した空母から抜け出し、外で目に見える敵艦にその牙を向けた。

 駆逐艦やフリゲートが続々とマリの手によって沈められる中、標的にされている53口径50㎝の主砲を持つ戦艦は、主砲を彼女のクウァエダム・デアに向けて撃ち込む。

 

「うわっ!?」

 

 間一髪避けたマリは、弾着した方を見た。勢い良く水飛沫が上がり、衝撃がマリの金髪を揺らす。

 

「結構な威力ね・・・」

 

 53口径50㎜連装砲の威力を知ったマリは、戦艦の方へと視線を向ける。

 その戦艦に乗り込み、戦闘指揮所に居る提督は、急いで次弾を撃つよう砲雷長を急かす。

 

「再装填急げ!大艦巨砲主義がISを打ち破る瞬間を世界に見せ付けるのだ!!」

 

 マイクで怒鳴るように告げる提督だが、小型で戦闘機よりも早く動くISに当てるなど糸を針の穴に通すことよりも難しいことだ。

 砲手がマリのような偏差射撃が可能な者でない限り、当てることなど不可能だろう。

 その間にマリは、旗艦である戦艦の周りにいる護衛艦をビームビットやビームバズーカで全て沈め、戦艦に向けて全武装を使った集中砲火を浴びせる。

 

「こんなに撃ってもやっても沈まないなんて!」

 

 主砲やミサイル発射機等を初めとしたありとあらゆる場所へビームやロケット弾を撃ち込んだが、戦艦は全く沈まず、黒煙を上げながらも未だに浮かんでいた。

 同じ箇所へまたビームを撃ち込むも、それでも戦艦は沈まず、対空砲火を絶やさない。

 マリが何発撃ち込んでも沈まない戦艦に対して苛立ちを覚えた頃に、裕也からの通信が入ってくる。

 

『そこのIS!こちらは日本国防空軍の五十嵐裕也少佐だ!後は我々が引き継ぐ。お前は当空域に留まり、国防空軍所属のIS部隊に投降せよ!良いな?!』

 

 どうやら、残っていた敵機の掃討を終えたようで、対艦爆弾や魚雷、ミサイルを搭載した攻撃機を護衛しながら接近してくる。

 獲物を捕られたくないマリは、どうやって倒そうかと脳をフル回転させている最中、目線の前に出された武器選択覧に「光の弓矢」と表示された覧があった。

 

「これは・・・」

 

 何の迷いも無しにマリはそれを選択した。

 それをタッチすれば、固定武装である二門の20㎜を除く武装が全て量子化し、左手に神聖的デザインの弓が現れた。

 

「なにこれ・・・?」

 

 美しいデザインに惚れるマリだが、一発の対空弾が彼女を我に戻す。

 

「キャッ!どうやら、迷っている暇は無さそうね・・・!」

 

 そう意気込んだマリは生身と同様に弓を引こうとする動作を行い、黒煙を上げながらも対空放火を行う戦艦へと狙いを定めた。

 矢がないように見えたが、弦を引く右手から光る矢が召還され、弓に自動的にセットされる。

 

『おい、聞いているのか?早くそこから去れ!』

 

 裕也の声が通信機から聞こえてくるが、マリは邪魔になると思って通信回線を切る。

 ダーク・ビジョンで戦艦の弱点である機関部を見付け出し、風速と重力を計算しつつ、そこへ矢を当てようと神経をすり減らして集中する。

 やがて自分の息遣いと弦を引っ張る音しか聞こえなくなると、狙いが定まる。射るタイミングが来れば、マリは躊躇いも無しに弦から手を離した。勢い良く発射された光の矢は、戦艦の動力部がある場所へと向かって飛んでいく。

 マリが矢を射る姿を見ていた裕也は、彼女が何を理解できないでいた。

 放たれた光る矢は戦艦にまで届き、当たる寸前の距離まで行く。

 彼女以外の誰しもがビームにすら耐える戦艦の装甲に弾かれると思ったが、なんと矢は戦艦の装甲を鋭いナイフが肉を抉るかのように貫通、そのまま機関部へと真っ直ぐ突き進んでいく。

 やがて弱点である機関部に光の矢は突き刺さり、動力部が大きく欠けた機関部は大爆発を起こした。

 機関部を射抜かれた戦艦は内部爆発を起こし初め、炎上しつつ横に傾いて沈み行く。

 

「せ、戦艦が!?」

 

「弓矢で轟沈した!?」

 

 たった一矢で沈み戦艦を見た裕也達は、驚きの声を上げる。

 中でも攻撃隊の面々は余りの衝撃に、言葉が出ない者達が多かった。

 夜が明けて日が空へ上ろうとしている頃には戦艦は完全に海へと沈み、建造のために一部を切り取られてサルページされたパーツは、海中で待っている元の艦艇へと帰る。

 

「凄い威力・・・」

 

 戦艦が完全に沈んだところで、マリは光の矢を圧倒的貫通力の高さに驚きの声を上げる。

 同じく敵艦が完全に沈んだのを見送った裕也達は、マリのクウァエダム・デアの高速へと向かう。

 

『そこのIS!直ちに武装解除し、投降せよ!』

 

 マリのクウァエダム・デアの周囲を部下達と共に跳び続けて投降を呼び掛ける裕也であったが、彼女がそれに従うはずもなく、包囲を抜け出されてしまう。

 

「あっ、クソ!待てぇ!!」

 

 直ぐに追い掛けようと、後を追うが、通常のISより倍の速度を持つクウァエダム・デアに追い付くことは出来ず、逃げられてしまった。

 こうして、マリ専用のIS「クウァエダム・デア」の実戦テストは終わった。




通常兵器を機動兵器で無双する・・・

他のロボットアニメと同じだがや・・・
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