では、第八話スタート!
俺達はマゴトとの戦いの疲れを癒すために、休息を取っている。
燃えた場所が小規模だったので森は無事だったが、小屋が壊されてしまったので、今は森の近くにある碧愛が育った孤児院にお世話になっている。
周りには自然が溢れているため、エル(エスメラルダの愛称)とティアも過ごしやすそうだ。
そして俺は今、何故か子供達の中心にいる。理由は分からないが気付いたら集まっていた。
「遊ぼー!!!」
どうやら遊べばいいみたいだが、何をしたらいいのだろう?そんな事を考えていると、
「お兄ちゃんが鬼ね!」
と子供達は一斉に逃げていく。それを見て俺は、子供達の言わんとしている事を理解し、同じくらいのペースで追いかけた。
思い返してみれば、こうして子供達と遊ぶのは本当に久しぶりの事だな。最後にやったのは向こうにいた時だったか……
「いやー、貴方方が来てくれて、子供達がとても喜んでいますよ、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ突然来たのに受け入れて下さり、感謝しています」
いつの間にか後ろに院長先生がいた。彼は見た目は、かなりのお年のようだが、何故かとても身のこなしが軽い。何か武道の心得でもないとこれはありえないと思うのだが……
それに、彼の声は聞いていて皆を安心させるようなものなので、思わず返事をしてしまう。
そして、ここに来てすぐに聞いた事だが、この人が碧愛を子供の頃から育ててきた人らしく、碧愛はこの人を本当の父親のように、慕っている。
しかし、碧愛は知っているからともかくとしても、他の俺達とは初対面だったのもかかわらず、温かく迎え入れてくれた。
本当の親でないにしても、碧愛の優しさはこの人に似たのだろうと思う。
そんな事を考えながら周りを見渡すと、エルやティア、そして碧愛も子供達と遊んでいた。
エルは植物の精霊らしく、植物を使った遊具を作って子供達を遊ばせている。見たところ、子供達にはかなり好評だ。
ティアも様々な動物を召喚して、子供達を楽しませている。中には怖がっている子もいて、彼女も少し困った顔をしている。
碧愛は前から子供達と面識があったのだろう、その子達の好みに合った遊び方を選んでいた。
俺はとりあえず自分に寄ってくる子供達の希望通りに遊んでいるが、周りを見てこれが正しいのだと理解する事が出来た。すると再び院長先生が、こちらに歩いてきて、俺にこう言った。
「ラティス君、君に会いたいという人が来ていて、今応接室で待ってもらっているんだけど、大丈夫かい?」
「分かりました、すぐに行きます」
とりあえず、返事をしたは良いが、はて……一体誰だろうか?
俺の事を知っている人は、そんなにはいないはずだなんだがな……まぁ行ってみれば分かるか。
その人がいるという部屋の前に着いた。最低限の礼儀を学んでおいて良かった……ドアをノックすると、中から
「どうぞ」
と返事が返ってきた。声色からしてどうやら男性のようだ。
ゆっくりと扉を開けて部屋に入ると、ソファーの上に一人の青年が座っていた。
「私の事を覚えていらっしゃいますか?」
彼は俺に突然、そう問い掛ける。何の事だろうと今までを振り返ってみると、
「ああ、あの時の!」
「はい。先日はお役に立てず、申し訳ありませんでした」
あの時とは、俺が森に行く前に情報を集めていた時の事。この人はその時に情報を聞いた人だ。話すまで思い出せなかったが、そういう事か……
「いいや、あの後は色々とあったけれど、結果としては上手くいった。貴方が気にする必要はない」
「そうですか…良かった」
青年は安心したように、ため息をつく。そして俺は、今日はどうして来たのか理由を聞く事にした。
「それで、今日は俺に何のご用が?」
「……既にお気づきかもしれませんが、私もこの世界の者ではないのです」
やはりそうか……もしやとは思っていたが、どうやら俺の勘は当たっていたらしい。そのまま青年は話を続ける。
「そこで私の話を聞いて頂きたいのですが、構いませんか?」
正直、構わないも何も、呼ばれてしまっているのだから聞くしかないと思ったが、これも礼儀の一つかと納得する。
「ああ、聞こう」
「信じて頂けるかどうかは分かりませんが、私はこの世界にはいないのです。少なくとも肉体は。
これは私の魔力で作った思念体のようなもので、私の肉体自体は、別の次元に封じられているのです」
彼の話を聞いている限り、俺には何も出来ないような気がするのだが……どんなに今の俺が努力しようとも、次元を開く事など不可能だ。
「それで俺にどうしろと?生憎だが俺には次元を開く力はないのだが」
俺のこの言葉を聞くと青年は笑いながらこう言った。
「それは分かっています。しかし、貴方は私を閉じ込めた者と戦うのでしょう?奴が私がいる次元を開けさえすれば、後は自分で出られます」
「成る程……分かった。しかし、マゴトに命令を出せるのは現魔王のルシファーのみ。
魔王が命令を出してまで、貴方を閉じ込めたという事は、貴方は並みの悪魔ではない。その理由は? 貴方は何者だ?」
「さぁ? 理由は分かりませんが、大方私が邪魔だったのではないかと。私の正体は……まぁ、会ってからのお楽しみという事で」
彼はそう言い残し去ろうとするが、まだ謎が解けていない。俺は彼を必死に呼び止める。
「まっ、待ってくれ! 貴方はこの世界でも魔法が使えるんだろう?その方法を教えてくれないか!?」
彼は少し考えた後、こう言った。
「そうですね……では、一つ質問を。この世界に来てすぐの時、息苦しくはなかったですか?」
そういえば、最初の頃は戸惑っていたのもあるが、妙に身体が重く感じた。
「ああ、どうしてなんだ?」
「答えは自分で見つける方が良いでしょう、しかしヒントを一つ差し上げます。この世界は魔法が足りていないのです……では、私はそろそろ時間なので」
そう言って青年の思念体は、光の粒子となって消えていった。まるで、最初からその場にいなかったかのように。
「会ってからのお楽しみ」か…しかし、あの人のおかげでこちらの世界でも少しは魔法が使えそうだ。
とりあえず、あの人の頼みを解決するためにも、あの人がくれたヒントをよく考えて答えを見つけよう……
こうして俺達のわずかな休息は、静かに終わりを告げたのだった……
今回はいつもより少し長かった気がします。いつもこれぐらい書けるように精進していきたいです。
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