虚無の使い魔ウルキオラ   作:零番隊

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随分更新が遅れてすいません。



第三話 破面の力

炎の中からの声に、誰もが目を見開き、硬直する。

 

無傷。

 

ウルキオラは燃え盛る業火の中で、火傷一つ負った様子もない。

 

ありえない、と誰かが呟いた。

 

甲冑の騎士ですらまともに受ければ数秒で焼け死ぬ灼熱から、何事もなかったかのように、そこに存在している。

 

「うっとおしいな」

 

次の瞬間。ウルキオラが右手を振るうと、周りの炎が全て消し飛んだ。

 

コルベールが放った炎は大きく、力強かった。それをローソクの火を消すかのように軽く消されてしまった。

 

人だかりの中誰かが言った。

 

エルフ。

 

 

 

 

 

コルベールが冷徹な視線を敵に向け、警戒する。

 

トライアングルメイジである自分の攻撃を、魔法を使った様子もなく全くの無傷。

だとすれば、目の前の男は生身の身体で炎を受け止めるほどの強度があるのか?

 

未知の相手に手が震えるものの、そばにいるのは自分が守るべき自分の生徒たちだ。

 

コルベールは、周りの生徒たちを見回す。

あれを召喚したルイズは、さっきの謎の攻撃で気絶しているようだ。自分の使い魔に攻撃された痛みとショックの上、一番近くから謎の攻撃を受けたのだから仕方がない。

 

「ミス・タバサ」

 

「・・・はい」

 

「君は使い魔に乗って学院へ飛びなさい。オールド・オスマンに救援を」

 

「・・・はい」

 

「ミス・ツェルプストー」

「は、はい?」

 

「気絶した生徒達を保健室へ先導してくれ。他の生徒も手伝って。ここからすぐ避難しなさい」

 

手短に指示を飛ばし、生徒たちが学院へと飛んでいくのを確認する。

 

コルベールは荒くなった呼吸を整え、得体の知れない男に鋭い視線を向けた。

「・・・貴様が何者かは知らないが、これ以上私の生徒達に手は出させはしない。私が相手だ!」

 

 

震える手を黙らせて、杖を構える。コルベールは自分からは動かない。

相手がどれほどの強者か分からない上、未知の存在だからだ。

 

ある程度の実力者ならば、対峙するだけである程度の力量が読める。しかし目の前の存在は、今まで感じた事のない得体の知れない何かだ。圧倒的な強者だというのは、経験から直感できる。だが勝算が何パーセントあるのか、どれだけ時間を稼ぐことが出来るのかまったく分からない。しかし、目の前の男は杖を持っていないし魔力も感じない。だが、それではコルベールの魔法を防げた原因が分からない。

 

ここで考えの一つとなるのは先ほどの攻撃だ。目に見える何かをされたわけではないが、目の前の男からの放たれる何か異様な感覚があった。次の瞬間、体から力が抜け落ちていき、魔力や体力や生命力。言葉に出来ない何かが吸い取られていった。これはかなりの知識をもつコルベールをして、未知の魔法だった

 

(どうすれば・・・・)

 

 

 

(さて、どうするか)

 

ウルキオラは考える。

 

どうやらこの男は時間を稼いで援軍が来るのを待つつもりらしい。

 

さきほどの炎を見たところ、単純な火力だけなら、死神で言えば席官の赤火砲を超える程度の威力はあった。

 

死神でもない人間にしては強いと言えるだろう。

 

だが席官以上程度なら、ウルキオラから見れば雑魚のように思えるが、今のウルキオラは霊圧だけならギリアン程度。

それに目の前の相手の攻撃は霊圧によるものとは違った。井上織姫のような人間とも違うようだ。

 

未知の力を使う相手に不安要素は大きい。

 

ここで戦って勝ったとしても、援軍が来るからには目の前の男以上の力を持つ者が何人も来るはずだとウルキオラは考えた。

 

だが、逃げるつもりもない。

 

逆にいい機会だと考えた。

 

今の自分の力、そしてこの世界の人間の実力を測ることが出来る。

 

「簡単には死ぬなよ?」

 

ウルキオラは指先に霊圧を収束させていく。

 

「――虚閃(セロ)――」

 

 

 

 

魔法学院生徒達。

皆持てる最大の速度で空を駆けていった。

キュルケは皆をまとめ、学院を目指している。

生徒達も少しずつ落ち着きを取り戻していた。

 

「何だったんだ、さっきの?」

「危なく気を失うとこだったよ」

「うぅっ、めまいがする」

「あいつは何だったんだ?エルフか?」

「ゼロもとんでもない奴を呼び出してくれたもんだぜ」

 

緊張が解れてきたのか、おのおのが喋り出す。

 

「皆そろいもそろって情けないな。よし、僕がコルベール先生の援護に・・・」

 

「きゃあああああっ!!!」

 

金髪美少年ギーシュ・ド・グラモンは勇敢さを披露しようとしたが、

その言葉は背後からやってきた翠色の閃光が襲い。生徒の悲鳴に掻き消された。

 

「なっ、何よ今の!!危なく私たちに直撃するところだったわよ!!!」

 

「・・・今の、使い魔召喚儀式の場所からじゃなかったか?」

 

「・・・結構距離があるはずなんだけど」

 

空気が凍りついた。

この距離から攻撃できる使い魔に恐怖が蔓延していった。

 

「そういえばギーシュ。さっき何か言いかけてたみたいだけど、どうしたの?」

 

「・・・あぁ、何でもないよミス・ツェルプストー。さっ、先を急ごうか」

 

生徒達は皆、コルベール先生の命を諦め、冥福を祈りながら学院へと急いだ。

 

 

 

 

 

(あっ、危なかった!!)

 

ウルキオラの指先が光るのを見て、何らかの遠距離攻撃が来ると予測したコルベールは、即座に「フライ」の魔法を使い、全力で空に逃げた。

 

翠色の閃光がコルベールの近くを通過していった。

 

(速度が桁外れな上、効果範囲も広い。間一髪よけられたが、何度も撃たれたら厳しいな。だが、あんな出鱈目な魔法をそう何度も撃てるはずがない)

 

コルベールは冷や汗を流し、杖を手が食い込むほど強く握りしめる。

 

ウルキオラは響転(ソニード)で上空にいるコルベールと距離を詰め、

手刀がコルベールめがけて振り下ろされた。

 

「うおっ!!」

 

コルベールは後ろへ飛び、どうにか回避する。

 

しかし、今回避できた理由は、コルベールの本能と経験からの危険察知だけではなく、先ほどの様に攻撃を読んだわけでもない。

 

今のはウルキオラの攻撃が若干遅かったのだ。

正確には、ウルキオラが響転で距離を詰めてから攻撃に入るまでの時間が遅かった。

 

 

(・・・何だ今のは?)

 

響転を使った時、一瞬身体に走った痛み。たいした痛みではなかったが、理由が分からない。一瞬相手からの攻撃かと思ったほどだ。

 

一瞬の戸惑いがウルキオラの攻撃を遅らせた。

 

(・・・やはり身体に何らかの異常があるようだな)

 

響転を使ったのが原因なのは分かるが、理由が全く思い浮かばなかった。

 

(それに、さっきの虚閃もおかしい)

 

虚閃の収束が思うようにいかなかった。

おかげで普段より発射までの時間がかかってしまった。

 

(これは俺の身体ではなく、周囲の霊子、霊質や環境そのものが原因か?)

 

単に霊質が低い悪いの問題ではなく、環境が現世とも虚圏(ウェコムンド)とも大きく違っている。

 

(やはり詳しく調べてみないことには分からんな。こいつらから詳しく聞き出せば何か分かるか?)

 

ウルキオラが本気になれば簡単に殺せる。それをしないのは今の自分の力と身体、そしてこの世界の人間の力を正確に測るためだ。

 

(まあ、殺してしまっても援軍で試せばいいだけだがな)

 

ウルキオラは相手の様子を見る。

 

 

 

そしてコルベールも改めて疑問を持っていた。

 

(なぜ浮いている!?)

 

人間が宙に浮くのは珍しいことではない。

あくまで魔法を使うことが前提だが。

しかし目の前の相手からは全く魔力を感じない。

 

先程の瞬間移動もそうだ。杖もなく詠唱もした様子もないのに平然と理解不能な力を行使している。最初は先住魔法かと思ったが、それとは違った異質さを感じる。

 

今は考えても仕方ないと、コルベールは攻撃を決断する。

 

二度と破壊の為に炎を使う事はしないという誓いを破ることを改めて決意した。

 

コルベールは距離をとって地面に降り立ち、杖を掲げる。

 

その先に宿るのは蒼い炎。不要なものをそぎ落とした純炎。

 

コルベールの炎が密度を高くし、逆巻くようにして大きくなる。

 

己の最大の魔力を込めて、最強の魔法を展開させる。

 

コルベールの杖から、青い波動が放たれて暴風の様に炎が吹き荒れる。

 

「・・・・ほう?」

 

ウルキオラは相手の切り札であろう攻撃を観察する。

 

炎が収束していき、ウルキオラめがけて放たれる。

 

「これで、終わりだ!!」

 

炎がウルキオラの全身を包み込む。

 

とぐろを巻き、大気を貪りながら燃え盛る蒼い炎は、球形のドーム状に渦巻いている。

 

灼熱といっても過言ではなく、ひとたび触れれば焼け焦げる。広がり、燃えて、待つのは死。

 

(仕留めた!!)

 

コルベールがそう思ったまさにその瞬間。

 

 

 

 

 

「それが全力か?」

 

炎の中から聞こえてきた声に、コルベールは凍りついた。

 

ウルキオラが炎の牢獄から歩み出る。

 

ありえない。この数時間で何度そう思ったことか。

 

一部では神の裁きとも地獄の業火とも言われる炎から、まるで何事もなかったかのように平然とそこに存在している。

 

「中々の攻撃だ。破面が相手でも弱いギリアン相手ならこれで終わっていただろうな」

 

まるで退屈しのぎのパフォーマンスを見たかのような気軽な感想。

 

自分とは格が違うのだと思い知らされた。

 

 




更新が遅れてすいません。
遅れた割にご指摘いただいた文章量が4000程度な上、前話等の地の文やプロローグから2話までまとめるのもまだでした。
これから先は文章量を増やし、地の文や心理描写を取り入れ、更新速度も上げていきたいです。
あくまで目標なので思うようにいかないかもしれませんが、頑張っていきます。

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