転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

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その名の通り、ひふみん視点です。
簡単に言うと、ひふみんによるあらすじ紹介です。


外伝
滝本ひふみの独白


 

『人生、楽しんでる?』

 

母から電話越しに聞かれた一言。

さりげなく、しかし重要にも聞こえるその言葉に、私はその場で答えを返す事が出来なかった。

その一言を、私は考え、思い出す。

 

私は昔から、人と面と向かって話すという事が苦手な性分なのだ。

いい歳こいて何言ってんだ、というのは自分でもわかっている。事実そうなのだから。

 

中学までは本当に酷かったのだ。人に話しかけられても上手く返す事が出来ず、流行などにも疎かった為、女友達もあまり出来なかった。

結果的にそうなった私は、次第に人と関わる事を避け、昔から好きだった絵を描くことや、パソコン、アニメ、漫画、ゲームなどの–––所謂オタクの世界に入っていった。否、逃げ込んでいった。

両親から、その事に対して度々注意を受けた。「そんな言い訳は通用しない」、「社会人になってから苦労するぞ」、「イラスト関係の仕事に就きたい?もっと安定したのにしなさい」など。

両親からの意見に、私は涙が出そうになった。でも、認めなければならない。私はそうして逃げている癖に、自分の希望を通そうしているのだ、と。

 

 

 

高校生になっても、私は人と関わる事を避けて過ごそうとした。

…だけど、それは出来なかった。

齢16にして、初めて好きな人を見つけたのだ。

名前は立花戒。自分のクラスメートだ。

 

彼のクラスの中での評価は中の上。顔はそれなりに整っていて、頭も良い。 だが、どことなく彼は浮いていた。私と同じように、何か人を避けている…というより、関わろうとしていなかった。

 

そんな彼に、私は少し親近感を覚えた。

まあ言ってしまえば、当初はまだ親近感を覚えただけで、何か行動に移したりという事はしなかった。…いや、する勇気がなかったのだ。

私は距離を縮めたいと思いつつも、縮めようとはしなかった。何て矛盾なのだろうか、自分でも笑える。 神様は何故私にこんな厄介な障害という名の性格を与えたのだろうか。恨めしく感じてしまう。

 

だが、そんな神様もただの悪党という訳ではなかったらしい。

その私の望みは、思わぬ出来事で叶ってしまった。

 

当時、私はお昼ご飯は誰もいない屋上で食べていた。無論、一人でだ。

だがそんな私のテリトリー(まあ別に人が来る分にはいいが)に、その立花戒がやって来た。

彼もまた、お昼ご飯を食べる為に屋上に来たというのだ。

その日からだ。私の様子が…心の様子が変わったのは。

 

彼は、私が持っていたスケッチブックを見せてくれと聞いた。別に断る理由もなかった為、許諾する。

彼はスケッチブックを開いて見た。その時の第一声は、今でも鮮明に思い出せる。

「すげぇ…」

 

彼はそう呟いたのだ。

たったの一言。しかし、私にとっては衝撃を受けた一言だった。

初めて、私の絵を褒めてくれたのだ。それは美術の先生が評価をしたり、幼児だった頃に、両親が絵を描けた、という事に対して褒めてくれたり、と。そういうのではなかった。

純粋に私の絵を、実力を、想いを見て言ってくれたのだ。

その時は思わず動揺して、顔を真っ赤にして感謝の念を述べた。

私は彼に顔を見られないようにと、足早に屋上から出て行った。初めて褒められた嬉しさにより、にやけてしまった顔を見られないように、と。

 

昼間に言われた一言を思い返し、考えた。

その日の夜、私は決心した。

もう逃げない。私は人を避けない。

私は、変わるんだ–––!

 

 

 

それから後も、私と彼はお昼ご飯を食べる度に話し合った。

それが暫く続き、私はある事に気がついた。

彼の笑顔を見ていると、何だか落ち着く、と。

今まで感じた事のない胸の高鳴り。その時感じていた事は、何もかもが初体験だった。

 

その感情の正体は何なのか。SNSツテで聞いてみれば「そりゃ恋っしょ」と素っ気なく返された。

その答えを、私はあまり抵抗せずに受け容れることができた。多分、心の奥底ではわかっていたのだ。

これが、私が初恋を自覚した瞬間である。

 

 

そして数日後。

彼…立花戒から告白をされた。

予想外すぎる展開に頭が追いつけない。

ショートしそうだった。何が起きているのかすらさっぱりだった。

でも、彼の目を見てクールダウンした。

そして私も、彼に想いを伝えた。

最初はお互いぎこちなかった。でも、次第にその答えを受け入れていった。

 

これが、私達が恋人になった瞬間である。

 

 

 

そして今。

隣を歩いているのは私の恋人の立花戒。彼の横顔を見て「やっぱりな」と

再認する。私はこの人が好きなんだ。愛しているんだ。愛されているだ、と。

 

「…ん、どうかしたか?」

 

私の視線に気がついた彼が聞く。

その問いに、私は首を横に振って

 

「ううん、何でもない…」

 

彼の手をギュッと握り、腕に頭を乗せた。

珍しく甘えた態度を見せた私に、彼は照れたのか、そっぽを向いてしまう。だが様子はすぐにわかる。耳が赤い。

 

拝啓、母上へ。

私は、人生を思いっきり楽しんでいます。愛しい人もいます。愛されてもいます。

そして何より…やりたい事も、ちゃんと出来ています!

 

 

 

 

【後日】

 

『同棲まだなの?』

 

『…まだ先になりそう』

 




同棲まだな理由…お互いヘタレだから。
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