転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

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同時刻のコウちゃん視点です。


その恋は雪のように儚く…

 

「……遅い…」

 

女性、八神コウは腕時計を見ながら呟く。

今日はりんに呼ばれて、久々のクリスマスデートをしようということになった。なんでも、慰安旅行的な感じらしい。

 

「慰安旅行ならぬ、慰安デート…的な?」

 

言って、コウは思わず一人で笑った。我ながらクオリティ高くないか、今の。

 

「遅れてごめん、コウちゃん」

 

と、そこで待ち人の遠山りんが来た。

 

「遅いよ、りん」

 

「ごめんごめん。ちょっと人混みに…」

 

「…まあいいけどさ。さ、行こ行こ」

 

と、コウは先に歩く。

しかし、りんはついて来ず、コウの顔を見ていた。

 

「…どしたの、りん」

 

「…ううん。なんでもない」

 

「…そ」

 

そうして二人で並んで歩き始めた。

そういえば、同期で親友だというのに、こうして二人きりで出歩くというのはあまりない事だ。コウとりんはお互いに思い出す。

 

まあ、あまり経験してない事だ。今のうちにめいいっぱい楽しもう!

コウは思いながらも、しかし心の奥底の隅に置いてある、ひとつのわだかまりが気になっていた。

 

そしてコウの隣を歩くりんは、今回はコウと楽しむためだけにデートをしようと言ったわけではない。まあそれもあるにはあるのだが…今回は、少し気になっていることをコウに聞く気なのだ。

 

二人の目的、心境は正反対とも言える。しかし、楽しむということに関しては、お互いに本心から思っていた。

 

 

 

 

それからというものは、めいいっぱい遊んだ。

ゲームセンターに行って、久々に二人ではしゃいだり、プリクラを撮って写りが悪くて、コウを弄ったり。

体を動かしてお腹が空き、少し高めの夜ご飯を食べたり。

雑貨屋さんで、お互いにクリスマスプレゼントを買ったり。

 

そして今は公園。

気温はかなり低く、遊具も冷たいが、コウはブランコに座ってゆらゆらと、揺れている。

りんはそんなコウを見守るかのように、手すりに腰掛けていた。

 

「いやー…まさかプリクラの写りがあんなに悪いとは…」

 

「本当に、びっくり」

 

「夜ご飯も美味しかったし…」

 

「たまには贅沢もいいわね」

 

それはごく普通の当たり障りのない会話。しかし、5年の付き合いとなるコウには、僅かな違和感が気がかりになっていた。

 

「…りん、どうかしたの?」

 

「え?」

 

「今日、ずっと私のこと見てたよね?それも、いつもとは違う様子で」

 

「……」

 

コウからの指摘に、りんはやられたという顔をして答える。

 

「…うん。実はね、今日のデートは、コウちゃんにあることを聞きたくてひらいたんだ」

 

「…あること?」

 

「うん。コウちゃん、最近寝てる?」

 

「……っ」

 

やっぱり、とりんは心の中でため息を吐く。まつたく。何かあればすぐに仕事に逃げてしまうという癖はどうにかならないのか。

 

「今日ずっと見てて、隈がすごかったもん」

 

「…でも、それがどうしたの?私が寝てないのなんていつもの事でしょ?」

 

「そう。確かにいつものこと。でももう一つあるの」

 

りんは間を置き、そして鋭い目でコウに聞く。

 

「何か思い悩んでいるでしょう?」

 

「……っ…!」

 

「図星、ね」

 

コウの反応に、りんは呆れたような声を漏らす。やっぱり、隠すのは下手なんだ。

 

「…何も、ないよ」

 

「何もないはずないでしょ。そうやって溜め込むのはコウちゃんの悪い癖よ」

 

「何もないって!」

 

そこでコウは、初めてりんに対して声を荒げた。

いつもは相談に乗ってもらっているが、今回は尋問のように聞かれてばかりだ。

 

「何も…」

 

「そうやって一人で背追い込まないで!」

 

「っ!?」

 

突然響いたりの声に、コウはびっくりして体を震わせる。

 

「そうやって、なんでも一人で背追い込まないでよ……私にも、背負わせてよ…親友でしょう…」

 

「しん…ゆう……」

 

りんの声、言葉がコウの胸の中でこだまする。

 

確かにそうだ。

私たちは親友。なんでも二人で解決しよう。実際に今は仕事上のパートナーだ。あらゆる場面を支えてくれる、最高の親友だ。

 

しかし。

しかし、今回の件は…その親友でも、明かさなかった。

 

「……ごめん…それでも、言えない。言っちゃダメなんだ。これは、私個人の問題だから…」

 

「……」

 

りんは涙を流して、コウの言葉を聞く。

しかし、りんは尚も食い下がる。

 

「なら…言えないなら、せめて泣いてよ…」

 

「…え」

 

「コウちゃんの心にあるわだかまりが何なのかはわからない。でも、それが辛いことだっていうのはわかる」

 

そう、昔も何度かあった。

辛いことには、コウは一人で立ち向かっていってしまう。その時のコウを、りんは止められない。

 

「私には解決できないのかもしれない。けれど、コウちゃんの涙を受け入れることはできる」

 

きっと碌な答えも出せないから。

だから、私はただ受け止めるんだ。

 

「だから…私に、ぶつけて」

 

腕を広げる。その顔は優しい笑顔だった。何もかもを優しく包んでくれる。

 

親友のその姿と、その言葉に、コウは自然と涙が流れてきた。

 

「……なんで…」

 

ああ、なんで。

 

「なんで……私に…そこまでしてくれるの…?」

 

コウは涙を流しながらりんに聞いた。

 

その問いに、りんは笑顔で答えた。

 

「決まってるじゃない。コウちゃんに幸せになってほしいの」

 

その言葉が、決め手だった。

 

コウは一歩一歩、ゆっくりとりんに近づき、そしてりんの胸に顔を埋めた。

 

そしてめいいっぱいに声を上げた。泣いた。泣き叫んだ。

 

りんには明かしていない、悲恋の悲しさを。儚さを。厳しさを。

りんに、涙をぶつけた。

 

そんなコウを、りんは優しく撫でた。

よく頑張ったね、そう思いながら。

 

すると、りんの頬に白い粉がつく。

 

雪だ。

雪はしんしん、とあたりを白く染めていくく。

 

ホワイトクリスマスかぁ。

 

りんは複雑そうな笑顔で、しかし涙を少し流し、心の中でつぶやく。

 

コウは涙を流す。

その涙に雪が触れて、儚く消えていった。

そして。

八神コウの恋も、儚く、呆気なく消えていった。

 





さて、これにて転生ひふみんの本編は終わり、といったところでしょうか。
書きたい事はほとんど前の話の後書きで書いてしまったので、特にありません(笑)
次回作として、本作で悲恋を味わった後のコウちゃん作品を投稿する予定です。たぶん、この話を投稿してから数分後ぐらいに(笑)
ではまたどこかで会えたら会いましょう!それでは!
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