転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について 作:飛び方を忘れてるカラス
アニメ2期放送おめでとうございます!
まず結論から言おう。俺は風邪をひいた。
は?突然何言ってんのこいつ?って思うのも無理はない。だって突然なんだもん。
別に俺は風邪をひくような行動をした覚えはない。なのにだ。
これで皆勤賞は無理か。
あーあ。どうせならひふみに看護してもらいたかった。けど平日だし、諦めよう。
などと思っていると、ピンポーン、とインタホーンの音が鳴る。
「…なんだ、宅配便か?」
現在、家に親はいない。
両親共働きである我が家では、風邪を引いたら自宅の警備は休んだやつに任せることになっている。なので、こうやって来客が訪れると、怠い体を起こして顔を合わせなければならない。
「はい、どちら様でーーー」
そこで、俺は言葉を失った。
目の前に現れたのは、来るはずもない人物だったからだ。
「き、来ちゃった……」
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さあ、なぜこうなった。
今日は9月15日の水曜日。ど平日だ。1週間のど真ん中。始まりと終わりから等しく遠い曜日だ。OK、そこまではいい。問題はそこからだ。
「大丈夫…?」
「少し待っててくれ。今俺は頭の中でパズルを解いている」
「あ、はい」
なんでど平日である今日にひふみはいる?ていうか来た?
あの真面目な子がなぜ学校をサボって俺の家まで来た?
落ち着かない様子で辺りを見回す。そりゃそうだろ。俺の家の中に来るの初めてなんだもん。
初めてのお宅訪問がこんなのでいいのか?いや、そりゃあ学校サボった日にお宅訪問とか結構記憶に残りはするだろうけど。
しかし、ここでこんな悩んでいても何も始まらない。
思い切って聞くとしよう。
「なあ、ひふみ?」
「…?」
「なんで、お前ここにいんの?学校は?」
言いづらそうに俺から視線を避けるが、しばらく間を置いて言ってくれた。
「…戒くんが、体調不良で休んだから…心配で……」
「…それだけのためにサボったのかよ……」
「いっ、一応、朝だけは行った。…1時間目受けて、すぐ帰った」
「サボったと言う事実に変わりはないだろう」
「…はい」
親に叱られている子供のように小さくなるひふみ。ちょっとウサギっぽくてかわいい。
「…まあ、別にいいけどさ。それで成績に響いても、俺は知らんぞ」
「自分の意思でここに来たから、大丈夫」
「そういう問題かよ…」
まあいい。なんにせよ、俺の事が心配でここに来てくれたことは非常に嬉しい。
「とりあえず…寝てて?いま、何か作るから…」
「そこをまっすぐ行って右だ。台所にあるやつは勝手に使ってくれていいぞ。どうせ俺が何か作る予定だったし」
ひふみは台所に向かっていった。
……待て待て。いまさらっと同棲2年目の恋人のようなコミュニケーションを取っていたが、俺とひふみが2人きりで、閉鎖された空間(厳密には違うが)で一緒にいるのは初めてじゃないか!?
やばい…そう意識したらなんか緊張してきた。たぶん今の俺の体温ハンパじゃないぐらい高いぞ。
そんな煩悩と戦うこと数十分。
ひふみが台所から戻ってきた。
「とりあえずお粥…」
「お、おう、ありがとう…ゴザイマス」
「…?なんで、敬語?」
もう意識しすぎて新たな人格が生まれそうだ。というか生まれかけたよな、確実に。
ひふみが差し出したのは、シンプルなお粥。梅干しが乗せられており、色合いがとてもいい。
「いただきます」
一口。レンゲで掬い、口に入れる。
瞬間、薄味ながらも、確かに存在する旨味が口の中を駆け巡った。
「うまい…」
「…!よかった…」
安堵した表情する。
いや本当にうまいぞこれ。病人なため、濃い味のものを食べるのは遠慮してしまう。しかし、かといって薄すぎるのもまた遠慮。
その中で、こうして薄味を保っておきながら、確かに「味」を感じさせる旨味が激しく主張をしている。
これは、もしかしたらお粥の完成形なのでは…?
「…俺、ひふみの彼氏でよかったわ」
「…っ!?」
ポロリ、とそんな惚気を口にする。そのぐらい美味いのだ。俺は今、世界で1番いい女の彼なのかもしれない。
いいや、天に向かって公言しよう。
今、私は幸せであると。
その後も勢いを止めずに食べ終えた。
「美味かったわ…」
「お粗末様でした」
さっさと食器を片付けるひふみ。見ていて思うが、もう嫁にもらっていいかな?
「早く寝てね」
「わかってるが…あまり眠気がな…」
普段は起きている時間帯なので、生活リズム上、あまり眠気が無い。
「……ぅ」
「どうかしたのか?何かあるなら遠慮しなくていいぞ」
ここは俺の家だし、ひふみにも頼んでもないのわざわざ来てもらってるのだ。少しは彼女の希望にも答えるべきだ。
「別に、私の頼みじゃ無いけど…」
「なら、どうしたんだ?」
「寝れ、ないの…?」
「あ、ああ。今のところな」
相変わらず眠気は一向に訪れない。さて、催眠術でもかけて強引に眠ろうか、などと思っていると…。
「私の…膝なら」
「ああ、膝か。なら遠慮なく…ってえぇぇ!?」
と、大きな声をあげたことにより頭に痛みが。
普段はおとなしいこの子が、一体何を言っているのか、上手く理解できなかったのだ。
「…どこの知恵だ?」
そこで俺は真っ先にその知識をどこで仕入れたのかをひふみに聞いた。
「……ツ○ッター」
「それと?」
「……○ちゃんねる」
バカじゃないのか、と本当に思った。俺のために調べてくれたのか、それともただ目に入っただけなのか、どちらかはよくわからないけどバカじゃないの。
「やりたくないならやらんでもいいぞ。俺は使い慣れた枕でぐっすりするから」
「う、ううん!嫌じゃ…ない…」
顔を真っ赤にして答えても説得力がない。
その後も少し応戦を繰り広げたが、ひふみは一向に下がろうとしない。このまま寝るのを先延ばしにしても仕方がないため、俺はひふみの言葉に甘えることにした。
「……じゃあ」
「う、うん…」
こういうことをサラッとこなせるバカップルは何なのだろうか。羞恥心というのがないのか、理性が蒸発したのか?
あまり言葉を発さず、ひふみの顔を見ないように膝に優しく頭を乗せた。
「お、おお…」
何というか…新感覚。
枕ほど柔らかくなく、しかし硬すぎず。感じる体温が心地いい。
と、上を向くと顔をりんご飴なように真っ赤にしたひふみが。
「そんな赤くするならやめとけよ…」
「……」
俺の声が届いているのかいないのか、それすらもわからない。
息を一つ吐き、力を抜くことにした。すると、不思議とさっきまで感じなかった眠気に襲われた。
俺はその眠気を受け入れ、意識が遠くなっていった。
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目がさめると、窓からオレンジ色の夕陽が差し込んでいた。
「……」
上を向くと、スヤスヤと安らかに眼を閉じて眠っているひふみの顔が。
疲れてたのか、と心の中でつぶやいた。
それはそうだ。こうして俺の家にわざわざやって来てくれたのだ。慣れない作業に勤しむ。疲れる他ないだろう。
「……」
起こさないように頭を下ろそうと動くと、ひふみの顔がグラリ、と揺れたように見えた。
「……え」
コクッコクッ…と首が揺れた直後だった。
力なくひふみの顔は俺の顔に急落下した。突然の出来事に驚き、俺は動くこともできなかった。
そして俺の唇が何かによって塞がれた。それは、間違い無く、ひふみの唇だった。
「……っ!?」
「……!!!!?」
同時にひふみが目覚める。
自分の唇がふさがっていることに気がつくと、すぐさま顔を赤くし、急いで離す。
若干名残惜しさを感じたが、そんなこと今はどうだっていい。
「……」
「……」
続く無言の間。
お互いの行動を目で探り合う。
するとひふみはいそいそと鞄を持ち、立ち上がった。
「お、お邪魔した…!」
「お、おう…」
そのまま逃げるように走って玄関から出て行った。
「……」
唇をなぞる。
先ほどのひふみの行動に、遅れて同情した。そしてオレンジ色に染まった天に向かって問いた。
なあ神様、こういうことってあるのかな。ファーストキスがほぼ事故なことって、この世にあるのかな?
返ってきたのはカラスの鳴き声だけだった。
なんかNARUTOを思い出すファーストキスでしたね。