転生したら滝本ひふみの彼氏になった件について   作:飛び方を忘れてるカラス

6 / 26
前話の設定を色々と変更しました。
ご確認のほどをお願いします。


ラッキースケベは案外つらい

八神コウとのファーストコンタクトから数ヶ月が経った。

八神とは会えば世間話をする程度の仲にはなった。

彼女はかなりの腕前を持っているらしく、新人とは思えないほどの仕事量をこなしているらしい。

そんなことを思いながら、会社を出ると。

 

「あら、立花くん帰り?」

 

「ん、ああども」

 

女性の声の主は、遠山りん。紫がかった髪の美人だ。八神とは違って、お淑やか、落ち着きのある女性だ。俺、ひふみ、八神、その他と同期の女性だ。八神と同じく、キャラ班である。

 

「滝本さんとは一緒じゃないの?」

 

「いつも一緒に帰ってるわけじゃないよ。今日は別」

 

「あらそうなの。なら、私と一緒に帰らない?」

 

…これはアレか。お誘いというやつか。

俺が考えてると、それを察したかの様に遠山さんは笑う。

 

「大丈夫よ。同僚の女の子の彼氏さんを取っちゃうほど、私も悪い女じゃないから」

 

それに…と遠山さんは付け足し

 

「陽が落ちるのも早くなってきたしね。女性1人じゃ帰り道が不安なのよ」

 

「…わかったよ。襲われた時は盾替わりなりなんなり使ってくださいな」

 

お手上げと表し、両手を上げる。

 

そうして駅まで歩き、電車に乗る。

 

「最近、コウちゃんとよく話をするよね」

 

突然話しかけられて、少し驚く。

 

「ああ、まあ同期だし。仲良くしとかないとね」

 

「仲良く…仲良く…ね」

 

「…?」

 

なんか遠山さんからドス黒いフォース的な何かを感じた気がするが気のせいだろう。気のせいなんだ、というか気のせいということしてくれ!

 

「…良かった」

 

そのドス黒いフォースはどこかへ消え去り、安堵したかの様に呟く。

 

「良かったってどういう…」

 

「うん…コウちゃんね、あまり周りと上手くやれてないの」

 

「……」

 

ひふみから聞いていたことだ。

 

「あなたの滝本さんとも、あまり話さなくて…」

 

「いいよいいよ。あの子、そういうの気にしないから」

 

「そう、ならよかった…」

 

そう言って胸に手を当てて安堵する。

 

「どうか、コウちゃんをよろしくお願いします。あの子、放っとくとすぐ1人になっちゃうから」

 

「なぜ俺に任せるんだ?」

 

「だって、貴方と話してる時のコウちゃん、すごく楽しそうなんだもの。私と話してる時以外で、あんな顔は初めて見たのよ」

 

そうやりとりをしてる内に、遠山さんが降りる駅に着いた。

遠山さんは立ち上がって、開かれた扉に向かう。

 

「それじゃあまた明日」

 

「ああ、また明日」

 

そう言って遠山さんと別れた。

八神を…ね。

彼女はツンケンしてるが、ひふみに比べれば話がよく繋がる人だ。

これからも仲良くはしていきたいが…任されたと言われてもね…。

そうこう思ってると、降りる駅に着いた。

駅を出て、家に向かう。

今日も無事、俺の1日は終わった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、俺はいつも通り仕事をこなしていると。

 

「なぁ立花、おまえ今日ここに泊まれる?」

 

先輩が問いかける。

 

「今日ですか、まあ大丈夫ですけど」

 

別段問題はないが、急なことなので少し驚く。

 

「しかしなんで突然」

 

「ああ、このままだと期限までに間に合いそうになくてな。そこで我がチームは全員お泊まりというわけだ」

 

「なるほど。ということは、先輩と倉橋も残ると…」

「あー…わり。俺今日予定があんだわ」

 

俺が言い終える前に、隣で作業をしていた倉橋が話に入ってきた。

すると次は先輩も口を開き

 

「右に同じ。俺はお偉いさん方と食事だ」

 

「じゃあ俺1人となるわけ?」

 

「「そういうことになる」」

 

なんでシンクロしてんだ…。

 

「つーわけで悪いけどよ、今日だけ1人で頑張ってくれ。出来るところまででいいから、な?」

 

正直、ちょっと不安でもあるが、この遅れは後々に響く。少しでも進めておく方が良いと判断し

 

「わかりました。出来るところまでやりますよ」

 

「サンキュー。んじゃよろしく頼むわ」

 

「悪いな」

 

それぞれ感謝の言葉を俺に送り、仕事に戻る。

…あとで寝袋買うか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃ、よろしくな」

 

そう言って先輩はエレベーターの扉を閉じる。

…さて、今この会社には多分俺1人だ。電気の消し忘れとかの確認をしなければ。

社内全体を見て回った結果、特に問題は無かった。

 

「さて、そんじゃ始めるか」

 

そう独り言を呟いて、パソコンに向かいあう。

 

ドカッ

 

が、その直前に何か音がした。

近い。…もしかして泥棒か?

そう当たって欲しくない予感を胸に抱きながら、音の発生源に近づく。

 

場所は給湯室だ。さっき電気を消したはずなのに、なぜか電気が付いている。

…ますます嫌な予感が現実味を帯びてきた。

いざという時の為に利き手の右拳に力を込め、左手で携帯を操作し、すぐに警察に通報できる様にした。

…ゴクリ

唾を飲み込み、扉を開ける。

 

「誰かいるんですか…」

 

外が真っ暗な為か、かなり明るい光が目に入り、思わず目を手で隠してしまった。が、すぐに慣れたので目をゆっくり開けるとそこにら…

 

「………」

 

…問題発生、状況確認だ。

口を開け、目を見開いた幽霊、いや金髪の女性が立ってこちらを見ている。

まあ別に、そこまでは問題ない。問題は、その女性の格好だ。上半身は別いい。普通に服を着ているのだ。だが下半身はどうだろう。何も着てないのだ。否、正確には〈〈下着しか着ていない〉〉のだ。

 

「………!」

 

目の前の女性が顔を赤くする。

俺はその女性の名前を知っている。リンゴの様に顔を赤くしていてもわかる。

 

女性の名前は八神コウ。俺の入社時の同期であり、最近仲が良くなっている人である。

いやしかし、人間ってこう普段体験しないことに遭遇すると、こうも冷静になれるんだな。

漫画とかアニメでよくあるラッキースケベ的展開。世の男子どもの殆どは一度でいいから体験したいイベントであろう。

…はっきり言おう。あまりオススメはしないぞ。

実際、遭遇したら遭遇したで、かなり気まずい。

その気まずさを紛らわす技を俺は知っている。いざ遭遇した時のために、その方法を教えよう。

まずはしっかり息を吸おう。

そしたら限界まで口を開け。そしてデカイ声を出せ。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

八神も叫び、手に持っていた八神愛用ステンレス製コップを投げつける。

前言撤回。やっぱり使わない方がいい。痛い目見るから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…で、なんでおまえは下着丸出しでコーヒーを入れてたんだ?」

 

あの後、俺と八神はなんとか平静を取り戻した。そして今は八神のデスクで、なぜあの状態になったのかを説明してもらおうと取り調べを行なっている。

無論、八神はロングスカートを履いている。

 

「…いや、その、いつもの癖というか…」

 

少し顔を赤く、目を泳がせながら答える。

 

「いつもの癖だあ?じゃあおまえ、いつも泊まりの時はあんな格好してんのか」

 

俺がそう問うと、八神はコクリと頷く。

 

「……」

 

呆れてため息をこぼす。と、八神のパソコンの横にある資料に目が止まった。

かなりの量だ。

ひふみや遠山さんから聞いているが、八神はかなり仕事ができるらしく、既に新作タイトルのキャラデザを担っているほどだ。

だが、これはあまりにも多すぎではないか。

 

「…おまえ、もしかして虐められてる?」

 

資料に目をやりながら聞く。

 

「そんなわけないでしょ!そ、そんなわけ…」

 

心当たりアリか。

 

「俺が出来る範囲でなら、サポートするよ」

 

出来ることなら手伝ってやりたいが、背景画班の俺では毛ほどの役にも立たないだろう。

デザインは出来ないが、プログラミングぐらいなら出来る。プログラミングでなくとも、飯かなんかを買ってくることぐらい出来る。

 

「…大丈夫、気遣いありがと。今ここにいるってことは、立花もあんでしょ?」

 

「まあな。おまえほどの量じゃないから、手伝ってほしい時は呼んでくれ」

 

「ヤバくなったらそうするよ。じゃ」

 

「おう」

 

そう言って俺は自分のデスクへ向かう。

…不安だから寝る前に見に行くか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こんなところでいいか」

 

目の前のパソコンから目を離し、伸びをする。長い間、体を動かさなかったからか、身体中からバキボキと音がなる。

時間の割にはよく出来た方だと思う。俺はそう自己納得して寝袋を探す。

と、そこで手を止める。

…そういえば、八神の様子見に行くんだった。

疲れで忘れてしまっていた。

 

八神のデスクに向かう。

まだ明かりがついてる。よくやるな。もう24時近いぞ。

 

「おーい、だいじょ…」

 

声を掛けた主は両腕を枕代わりにし、静かな寝息を立てていた。

つーかまたスカート脱いでやがる。

 

「……」

 

参ったな。こうも気持ち良さそうに寝ていると、「寝袋で寝ろー」とか「スカート履け」と言いづらい。

俺は自分のデスクに戻り、コートを持ってくる。八神を起こさせないように、そのコートを掛ける。10月の下旬とは言え、もう十分に寒い。暖房なしで、しかも寝袋なしでは流石に風邪をひく。

 

「…おやすみ」

 

起こさないようにと静かに呟く。

電気を消し、大きな音を立てないように、自分のデスクもとい寝床へ向かう。

 

俺の人生初の泊まり込みは、中々に波乱に満ちた泊まり込みとなった。

 

 

翌日、掛けられたコートで寝ている間に俺が来たということに気づいた八神は、自分の下着姿をもう一度見られたという羞恥心に駆られて、朝イチで俺のことを雑誌で叩いたのは、また別の話。

 




ひふみん出てねえ…(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。