ベル君が月山さんみたいになるのは間違えてるだろ。   作:くるしみまし

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今回もあんまり早く登校できなかったなぁ

みなさんのおかげでUAが6000を超えてました。有難うございます!
お気に入りも50人超えたのでこれからも頑張ります


最後の踏み込み

「んっ・・・うん・・・?

 

目が醒めるとそこはヘスティアファミリアの本部、というにはあまりにもボロい廃れた教会のベットの上だった

 

「あれ・・・ここは・・っいて!」

 

体を起こそうとすると体のあちこちに激痛が走る

 

見てみると自分は上半身裸で体はミイラのように包帯巻きにされている

 

しかも右腕にはギプスがはめられていた

 

「いてて・・・いつの間に帰ってきてたんだ僕?」

 

首をかしげるとギィと扉が開く

 

目を向けるとそこには僕の主神ヘスティア様がジャガイモ君を手にいっぱい持って立っていた

 

どうやら買い出し帰りのようだ

 

「お帰りなさい神様」

 

何気なく挨拶したら神様は持っていた荷物を全て床に落としてしまう

 

「ベル・・・くん」

 

神様は僕の名前を呼んだかと思ったら今度は目に涙を浮かべ

 

そして

 

「ベルクーーーーーん!」

 

両手を大きく広げて突進してくる

 

「え! ちょっ、まっ・・・ギャアアアアアアア!」

 

神様は僕に頭から突っ込み体をギリギリと締め上げる

 

「よかった〜! ベル君丸2日眠りっぱなしだったからこのまま起きないんじゃないかと僕は心配したよ!」

 

「か、神様! とりあえず手、手を離してください!」

 

このままじゃ神様に殺される!

 

「んっ・・・うわぁ!」

 

ヘスティア様は慌てて手を離し顔を真っ赤にする

 

「んもうベル君・・いきなり大胆すぎるよ・・・」

 

「いや・・・今のは・・・」

 

神様から飛びついてきたじゃないですか、と言おうと思ったが目の前でキャアキャア喜ぶ神様を見て言うのは悪いかなと思い静かに口を閉じる

 

しかしこのままでは話が進まないので話を振ることにする

 

「あのー・・どうして僕はここに?」

 

「ん? ああ・・・君はウェイトレス姿のシルとかいう女の子がここまで運んできてくれたよ・・・血まみれの君をね・・・」

 

「シルさんが・・・」

 

神様は重々しい表情で首を縦にふる

 

「応急手当はされていたんだけど君は虫の息でね、ミアハの協力がなかったらどうなっていたか・・・」

 

ミアハ様はミアハファミリアの主神でありポーションなどの販売をしている。神様とは親しく友人関係であり僕もよくお世話になっている

 

「そうですか・・・」

 

神様の言葉を聞いてベットにもう一度倒れこむ

 

「大丈夫かい、ベルくん!?」

 

「・・大丈夫です」

 

神様は僕の顔を覗き込んでくる

 

僕は油断したら泣いてしまいそうな気がして目を手で隠す

 

(そうだ・・僕・・・)

 

 

(負けたんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァ

 

もう何度目かもわからない衝撃が体を襲う

 

右手は持ち上がらず、ナイフを持つ左腕も気を抜けば二度と上がらなくなってしまうのでは思うほどに怠い

 

脇腹の鈍い痛みからして肋骨も数本折れているだろう

 

それでも

 

「ま・・・だ・・だ」

 

僕は立つ

 

「クソが・・・!」

 

ベートは目の前の男に恐怖すら覚えていた

 

確かに当てた

 

確かに砕いた

 

確かに潰した

 

なのに

 

「なんで立てるんだよ!?」

 

初めは騒ぎ立てていた観客達もすでに静まり返っている

 

ベルはすでに4度同じように弾かれている

 

その度ベルの体はゴムボールのようにはね、至る所に血痕ができている

 

この光景を見て喜ぶものはおらず、なお立つ少年の姿に尊敬あるいは畏怖の感情を抱いていた

 

「お願い・・・もう止めて」

 

シルは見ていられないというように涙を流し始める

 

だがそんなことは他所にベルはベートに向け歩き始める

 

最初のように走ることはできず足を引きずりながらだがその足は確かにベートに向け歩き始めていた

 

シルはそれをみてとうとう我慢できずベルに近づきベートとの間に割って入る

 

「もう止めてください! じゃないとベルさん本当に・・・!」

 

観客達も息を飲み見守る

 

ベルは何も言わずシルをかわそうとする、それをシルは抱きしめて止める

 

「行かせません・・なんで勝てないってわかってるのにこんなことするんですか・・・!」

 

ベルは何も言わない

 

「おい、そこどけ」

 

いつの間にかシルの後ろにはベートが立っていた

 

シルはキッとベートを睨んだがすぐ引き剥がされてしまう

 

ベートはベルの前に立つともう一度ベルに向けてデコピンのような形を作る

 

「おい・・・マジで死ぬぞ」

「誰か止めなさいよ!」

「無理だ! 俺たちが殺されるよ!」

 

観客がざわついたのをベートは睨んだだけで黙らせる

 

「質問に答えろ。嘘をついたらもう一発こいつを食らわせる」

 

場の緊張感が高まる

 

「なぜそこまでやる、馬鹿にされたくらいでそんだけの執念はみせらんねぇだろ。何がお前をそこまでさせる?」

 

ベルは視線をベートに合わせる

 

その目は

 

「・・・僕はアイズが何か食べながらアイズを食べたい」

 

ベルはベートにしか聞こえないほどの小さな声でボソボソと呟く

 

「は? なんだそれ意味が分から「分からなくていい」」

 

ベートの言葉にかぶせるように否定の意思を見せる

 

「君に僕の考えがわかるはずがない、僕は美食屋(グルメ)だからね・・・だから脳筋の君にも分かりやすく言うなら・・・」

 

どの言葉も声は小さいが力強い意思が伝わってくる

 

「僕が・・・男だから」

 

僕はまだ冒険者になってまだ間もない、冒険者として認められるのは今の僕には到底無理だ。

 

だったらせめて・・せめて男として認めさせてやりたかった

 

ベートはその言葉を聞いて目を見開く

 

気のせいかもしれないが少しだけ笑みをうかべた気がした

 

「いいぜ・・あと一回だけ打ち込んできな。 すこしでも緩い攻撃だったらぶっ飛ばしてやるけどな」

 

そう言うとベートはベルからは15メートルほど距離をとる

 

「そんな・・・無茶です! 今のベルさんは・・・」

 

しかしベルはシルを手で制す

 

「シル・・・お願いします」

 

ベルはどこか頼むような、しかしどこか強いるような目線でこちらを見る

 

シルはまるで二人の人間にすがられているような妙な感覚を覚える

 

ベルに気圧されてしまったシルはなにも言うことができずに下がってしまう

 

(ごめんなさい・・シルさん)

 

ベルは心の中で謝罪する

 

しかし

 

シルさんへの申し訳なさよりも、今は

 

「いつでもいいぜ」

 

このナイフをアイツに届かせることに集中するんだ

 

ベルは意識が朦朧とする中、攻撃のタイミングを探る

 

右、左、上、下、前、後ろ

 

あらゆる攻撃のパターンを予想し

 

そして驚くほどあっさりと気づいてしまう

 

(隙がない・・・な)

 

ベートはポケットに手を突っ込んでいるのにも関わらず、隙がどこにも見当たらない

 

どこから攻撃してもあっさり受け止め、反撃されてしまうだろう

 

ベルは今更ながらレベル5とレベル1の圧倒的な戦力差を理解する

 

だが

 

そんなことは分かっていた

 

今更、敵わないからやめるなんて言えない。 言うつもりもない

 

ナイフが届かないなら投げてでも当てる、投げて当たらないなら拳で殴る、拳が砕けるなら噛み付いてでもアイツに傷をつけてみせる

 

今更策を練る必要なんかない、策が無いなら正面突破するだけだ

 

覚悟を決めたベルが走り出そうとした時、ベートが口を開く

 

「いつまでそうしてるつもりだ? こちとら暇で死にそ「だったらここで死にたまえぇぇえええええぇぇぇぇ!!!」なあ!?」

 

ベルはベートに向け一度目以上のスピードで突っ込む

 

足がブチブチと音を立てる、それでも足から力を抜かず更に回転させる

 

体中の痛みに意識が飛びそうになるが目はベートを見据える

 

右目に熱が灯り視界が赤く染まる

 

どうやら血が出ているようだ・・・・だが

 

そんなことはどうでもいい

 

まだ足りない

 

アイツには届かない

 

体が壊れようが知ったことじゃない

 

だから

 

「食らえエェェッ!!」

 

右足で思いっきり踏切、空中で体を横にした状態で回転させる。遠心力でさらにナイフのスピードが増す

 

ナイフは寸分たがわずベートの頭めがけ振り落とされ

 

あと数十センチ

 

誰もが当たると確信した時

 

パキィン

 

甲高い音が響く

 

ベルの手にはナイフが握られている・・・柄だけの

 

ベートの手にはナイフの刃の部分が人さし指と親指でハサミ取られていた

 

ベートはそこら辺の冒険者では目で追うのがやっとの速さの斬撃をたった指2本で捉えたのだ

 

あれでもダメなのか! と観客たちが諦めたような顔を浮かべる

 

(・・・なかなかいい攻撃だったが・・やっぱこの程度か・・・)

 

ベートも少し期待していたのもあり、すこし落胆する

 

終わらせようと手を伸ばそうとした時に気づく

 

(!・・・こ、こいつ・・目が死んでねぇ!!?)

 

 

 

 

 

ナイフを止められた

 

だけど

 

予想通りだ

 

左腕は防がれた、だったら

 

右腕が残っている

 

体の回転を止めることなく、むしろ加速させる

 

(グウッ・・・!)

 

腕がミシミシと悲鳴をあげる

 

それでも止めることなく振り抜こうとする・・・が

 

(だめだ!)

 

おそらくこの攻撃は当たる・・・が

 

これじゃベートに傷一つ入らない

 

(これだけやっても傷一つ付けられないのか!?)

 

今日ほど自分の非力さを嘆いた日はない

 

なんで僕にはこんなに力がないんだ

 

なんで僕はレベル1なんだ

 

力が・・・欲しい

 

右肩に熱が灯る

 

(せめて・・・なにか僕に魔法があれば)

 

物語の英雄達が敵を屠る時に使うような魔法さえあれば

 

《魔法なんてモノは君には使えないだろ?》

 

僕に『僕』が話しかけてくる

 

(そうだけどさ・・・)

 

《魔法ではないけど・・・こんなのはどうだい?》

 

頭の中にイメージが流れ込んでくる

 

(これは・・・すごいけど、こんなの使えないよ)

 

《使えるさ、君は僕なんだから》

 

(意味が分からないよ・・・だけど・・・信じていいのかい?)

 

《信じなよ『僕』を》

 

(・・・分かった。信じるよ『僕』を)

 

 

 

 

 

右肩に鈍い痛みが走る

 

グチャア

 

右肩から触手のようなものが飛び出す

 

触手はドリルのように螺旋を描きながら腕に巻きつく

 

体中の血液が迸るように流れている

 

(これが・・・)

 

「【赫子】!!」

 

 

 

 

 

 

 

ベートは目の前で急変したベルに驚愕していた

 

ベルの肩からは血が飛び散り、触手のようなものが飛び出し腕に巻きついている

 

ルベライト色の瞳は真っ黒に染まり血走っている

 

ベルのプレシャーが跳ね上がる

 

さらにベートの本能が告げる

 

(この攻撃はヤベェ!?)

 

あの右腕の攻撃だけは食らってはいけない

 

それだけは分かる

 

そこでベートは気づく

 

(俺がビビってんのか! こいつに!?)

 

苛立ちが積もる

 

(フザケンナッ・・・!)

 

「ふざけんなあああああ!!」

 

思いっきり腕を振りかぶり

 

殴ろうとする

 

しかし

 

 

「そこまでです」

 

少女が二人の間に割り込み

 

ベルの触手を刀で、ベートの拳を手で止める

 

割り込んだのはアイズ・ヴァレンシュタイン

 

ベートは怒りの形相でアイズを睨みつける

 

「ふざけんなよっ! まだ勝負は・・・」

 

「ついています」

 

「でもまだそいつは立っ・・・て・・・」

 

ベートは言葉途中で気づく

 

「気絶してやがる・・・」

 

気付いたら触手もなくなっており、白目をむいて気絶している

 

しかしその顔は、恐怖を抱かせるほどに

 

 

 

笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ベル君?」

 

黙りこくったベルを見たヘスティアが心配するような声音で話しかけてくる

 

その声を聞いてベルはとうとう我慢できずに泣き出してしまう

 

「神様・・・僕・・負けちゃいました・・・」

 

ヘスティアはベルを抱き寄せそっと頭を撫でる

 

「・・そうかい・・・大変だったね・・・お疲れ様」

 

ベルは今ばかりは黙って頭を撫でられる

 

「強くなりたいです・・・あんな奴に負けないくらいに・・・強く」

 

「うん・・・強くなろう、二人で・・・もっと」

 

 

教会の中では少年のすすり泣く声が響いていた

 

 

 




どうすればもう少し早く投稿できるんでしょうかね・・・
でも辞めるつもりはないのでこれからもよろしくお願いします
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